JP2008091243A - 燃料電池システム - Google Patents

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Abstract

【課題】水素循環方式の燃料電池システムにおいて、補機の消費電力を抑制しつつ、不活性物濃度上昇による発電効率の低下を抑制しながら燃費の向上を図る。
【解決手段】燃料電池1の水素極から排出されるオフガスを燃料電池1に再循環させる水素循環経路10内に、オフガス中の水素濃度を検出する水素センサ部17と、オフガス中の不活性物を外部に排出させる不活性物排出手段12、30とを備え、不活性物排出手段12、30は、電解質膜18aを挟んで水素循環経路10と対向して配置されるバッファ室18bと、水素循環経路10と外部との連通状態を制御する排出部19とを有しており、水素濃度が所定値を下回っている場合に、電解質膜18aに電流を流すことでオフガス中の水素を選択的にバッファ室18bへと移動させ、その後、水素循環経路10と外部とを連通させるように排出部19を作動させることで不活性物を外部へ排出する不活性物排出処理を行う。
【選択図】図3

Description

本発明は、水素と酸素との電気化学反応により電気エネルギを発生させる燃料電池を備える燃料電池システムに関するもので、車両、船舶及びポータブル発電機等の移動体用発電機に適用して有効である。
従来より、燃料電池の水素極出口から排出される未反応水素を含む排気ガス(以下、オフガスという)を水素供給経路に再循環させる水素循環経路を備えた水素循環方式の燃料電池システムが知られている。このような燃料電池システムでは、オフガス中の未反応水素は燃料電池の発電に使用されるが、空気極側から電解質膜を通過した窒素や水等の不活性物は水素循環供給経路に残留するため、水素極における水素分圧が低下し、燃料電池の発電効率が低下する。
これに対し、水素循環経路に接続され、水素循環経路から大気中に排出されるオフガスが流れるオフガス排出経路と、このオフガス排出経路に設けられ、オフガス排出経路の開閉を行うバルブとを備える燃料電池システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この燃料電池システムにおいては、不活性物の濃度が高くなった場合に、オフガス排出経路のバルブを開くことで、大気中にオフガスと共に不活性物を排出するようにしている。しかしながら、バルブを開いて不活性物を外部に放出する際に、同時に未反応水素も多く排出してしまうため、燃費が悪化するという問題がある。
これに対し、水素循環経路に電気化学的水素ポンプと、電気化学的水素ポンプを迂回するバイパス経路とを設け、オフガス排出経路を電気化学的水素ポンプの入口極側に接続する構成の燃料電池システムが提案されている(例えば、特許文献2参照)。この燃料電池システムにおいて、電気化学的水素ポンプは、電解質膜を挟んで入口極と出口極とが対設されてなり、電解質膜に電流を流すことで入口極に供給されたオフガス中の水素を選択的に出口極へと移動させるものである。これにより、オフガスが流れる水素循環経路に蓄積される不活性物を選択的に外部に排出することで、燃費の悪化を抑制している。
特開2002−93436号公報 特開2006−19120号公報
しかしながら、上記特許文献2に記載の燃料電池システムでは、電気化学的水素ポンプに常に電圧を印加しているため、補機の消費電力が増大するという問題がある。また、燃料電池に供給する水素の圧力を所望の圧力に調整するために、電気化学的水素ポンプへの印加電圧を増加させる必要があるので、補機の消費電力がさらに増大してしまう。また、電気化学的水素ポンプを迂回するバイパス経路が設けられているため、水素循環経路内を流れるオフガス中の不活性物を排出しきれないという問題もある。
本発明は、上記点に鑑み、燃料電池の水素極出口から排出される未反応水素を含む排気ガスを水素供給経路に再循環させる水素循環方式の燃料電池システムにおいて、補機の消費電力を抑制しつつ、不活性物濃度上昇による発電効率の低下を抑制しながら燃費の向上を図ることを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明では、酸素を主成分とする酸化剤ガスと水素を主成分とする燃料ガスとを電気化学反応させて電気エネルギを発生させる燃料電池(1)と、燃料電池(1)の燃料極に燃料ガスを供給する燃料ガス供給手段(9)と、燃料ガス供給手段(9)から燃料電池(1)の燃料極に供給される燃料ガスが通過する燃料ガス供給経路(8)と、燃料電池(1)の燃料極から排出される未反応水素を含む排気ガスを燃料電池(1)に再循環させるための燃料ガス循環経路(10)と、燃料ガス循環経路(10)内に設けられ、排気ガス中の水素濃度を検出する水素濃度検出手段(17)と、燃料ガス循環経路(10)内に設けられ、排気ガス中に存在する電気化学反応に使用されない不活性物を外部に排出させる不活性物排出手段(12、30)とを備え、不活性物排出手段(12、30)は、プロトン伝導性を有する電解質膜(18a)を挟んで燃料ガス循環経路(10)と対向して配置される水素回収室(18b)と、燃料ガス循環経路(10)と外部との連通状態を制御する排出部(19)とを有しており、水素濃度検出手段(17)で検出した水素濃度が所定値を下回っている場合に、電解質膜(18a)に電流を流すことで排気ガス中の水素を選択的に水素回収室(18b)へと移動させ、その後、燃料ガス循環経路(10)と外部とを連通させるように排出部(19)を作動させることで不活性物を外部へ排出する不活性物排出処理を行うように構成されていることを第1の特徴としている。
なお、本明細書中において、電解質膜(18a)とは、プロトン伝導性を有する電解質膜の両面に触媒が担持されたもののことをいう。
このように、排気ガス中の水素を選択的に水素回収室(18b)へと移動させた後、燃料ガス循環経路(10)と外部とを連通させることで、排気ガス中の不活性物のみを外部へ排出することができるので、水素が無駄に排出されることを防止できる。これにより、不活性物濃度上昇による発電効率の低下を抑制するとともに、燃費を向上することができる。また、燃料ガス循環経路(10)は分岐していない、すなわち不活性物排出手段(12、30)を迂回するバイパス経路等は設けられていないため、排気ガス中の不活性物をより確実に排出し、不活性物濃度上昇による発電効率の低下をより抑制することができる。
このとき、排気ガス中の水素濃度が低下した場合のみ、不活性物排出処理を行うようになっているため、不活性物排出手段(12、30)の消費電力を抑制することができる。したがって、補機の消費電力を抑制しつつ、不活性物濃度上昇による発電効率の低下を抑制しながら燃費の向上を図ることが可能となる。
また、本発明では、不活性物排出手段(12、30)は、不活性物排出処理を行った後、水素回収室(18b)と燃料ガス循環経路(10)との水素濃度差によって発生した起電圧により、水素回収室(18b)内の水素を燃料ガス循環経路(10)へと移動させる水素帰還処理を行うように構成されていることを第2の特徴としている。
これにより、不活性物を外部へ排出した後、水素回収室(18b)内の水素を燃料ガス循環経路(10)へ戻すことができる。さらに、水素回収室(18b)と燃料ガス循環経路(10)との水素濃度差によって発生した起電圧を利用することで、水素を燃料ガス循環経路(10)へ戻すための動力(電力等)を外部から供給するのを不要とすることができるため、補機の消費電力をより抑制することが可能となる。
また、本発明では、不活性物排出手段(12、30)は、その上流側および下流側において排気ガスの流れを遮断する遮断機構(13、16)を有しており、不活性物排出処理を行う前に、排気ガスの流れを遮断するように遮断機構(13、16)を作動させることを第3の特徴としている。
これにより、不活性物排出手段(12、30)の上流側および下流側において排気ガスの流れが遮断された状態で不活性物排出処理を行うことができるため、水素が無駄に排出されることをより確実に防止できる。したがって、燃費をより向上させることが可能となる。
また、本発明では、水素回収室(18b)には、不活性ガスが充填されていることを第4の特徴としている。
水素回収室(18b)には、電解質膜(18a)を透過したり、水素と化学反応を起こしたりする物質を充填することはできない。一方、水素回収室(18b)に何も充填しない、すなわち水素回収室(18b)を真空にすると、電解質膜(18a)に負圧がかかり、電解質膜(18a)が破壊されてしまう場合がある。これに対し、電解質膜(18a)を透過せず、水素と化学反応しない不活性ガスを水素回収室(18b)に充填することで、電解質膜(18a)が破壊されることを防止できる。
また、本発明では、水素濃度検出手段(17)は、燃料ガス供給経路(8)における燃料ガス供給手段(9)近傍から燃料ガスが流入する基準水素室(17b)を有しており、基準水素室(17b)と燃料ガス循環経路(10)との水素分圧比より、排気ガス中の水素濃度を検出するようになっていることを第5の特徴としている。
このように、基準水素室(17b)と燃料ガス循環経路(10)との水素分圧比より直接排気ガス中の水素濃度を求めることができるため、水素濃度を正確に検出することができる。また、燃料ガス循環経路(10)は分岐していない、すなわち水素濃度検出手段(17)をバイパスする経路等は設けられていないので、排気ガス中の水素濃度をより正確に検出することができる。
また、本発明では、基準水素室(17b)と燃料ガス循環経路(10)とは、プロトン伝導性を有する濃度検出用電解質膜(17a)を挟んで対向するように配置されており、水素濃度検出手段(17)は、基準水素室(17b)と燃料ガス循環経路(10)との水素濃度差によって発生した起電圧を検出する起電圧検出手段(17d)を有しており、起電圧検出手段(17d)により検出された起電圧値から燃料ガス循環経路(10)内の水素濃度を検出するようになっていることを第6の特徴としている。
なお、本明細書中において、濃度検出用電解質膜(17a)とは、プロトン伝導性を有する電解質膜の両面に触媒が担持されたもののことをいう。
このように、起電圧検出手段(17d)により検出された起電圧は、一般に知られるネルンストの式に基づき、一方の水素濃度が一定ならば他方の水素濃度に依存する。基準水素室(17b)内の水素濃度は一定なので、起電圧値から燃料ガス循環経路(10)内の水素濃度を検出することができる。このとき、濃度検出用電解質膜(17a)は水分を含んだ湿潤状態になっているため、濃度検出用電解質膜(17a)に新たに水分が付着しても問題は生じない。したがって、水素濃度検出手段(17)の耐水性を向上させることができる。
また、不活性物排出手段(12、30)は、水素濃度検出手段(17)を有しており、不活性物排出手段(12、30)における水素濃度検出手段(17)の上流側には、排気ガスを撹拌する撹拌部(14)が設けられていることを第7の特徴としている。これにより、オフガス中の水素濃度をより正確に検出することが可能となる。
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
以下、本発明の一実施形態を図1〜図6に基づいて説明する。本実施形態は、燃料電池システムを、燃料電池を電源として走行する電気自動車(燃料電池車両)に適用したものである。
図1は、本実施形態の燃料電池システムの全体構成を示している。図1に示すように、本実施形態の燃料電池システムは、水素と酸素との電気化学反応を利用して電力を発生する燃料電池(FCスタック)1を備えている。
本実施形態では燃料電池1として固体高分子電解質型燃料電池を用いており、基本単位となるセルが複数積層されて構成されている。各セルは、電解質膜が水素極(アノード)と酸素極(カソード)で挟まれた構成となっている。燃料電池1では、以下の水素と酸素の電気化学反応が起こり電気エネルギが発生する。
(水素極側) H2→2H++2e-
(酸素極側) 2H++1/2O2+2e-→H2
燃料電池1は、車両走行用モータ、二次電池等の電力機器2に電力を供給するように構成されている。燃料電池システムには、燃料電池1の出力電流を検出する電流センサ3と、燃料電池1の出力電圧を検出する電圧センサ4とが設けられている。
燃料電池1の酸素極側に空気(酸化剤ガス)を供給するための空気経路5における燃料電池1の上流側には、空気圧送用の圧縮機6が設けられている。空気経路5における燃料電池1の下流側には、空気経路4を開閉して空気背圧を調整する空気背圧弁7が設けられている。
燃料電池1の水素極側に水素(燃料ガス)を供給するための水素経路(水素供給経路)8には、水素ガスが充填された水素ボンベ9が設けられている。水素経路8には、図示を省略しているが、水素ボンベ9を開閉する開閉弁、燃料電池1に供給される水素の圧力を調整するレギュレータ等が設けられている。
水素経路8における燃料電池1の下流側は、燃料電池1から排出される未反応水素を含むオフガス(排気ガス)を燃料電池1に再循環させるための水素循環経路10となっている。水素循環経路10には、オフガスを循環させるためのオフガス循環ポンプ11が設けられている。
水素循環経路10におけるオフガス循環ポンプ11の上流側には、燃料電池1から排出されるオフガス中の水素濃度を検出するとともに、オフガス中に存在する燃料電池10の電気化学反応に使用されない窒素や水蒸気(水)等の不活性物を外部に排出させる不活性物排出装置12が設けられている。
続いて、不活性物排出装置12の詳細な構成について説明する。
図2は、本実施形態に係る燃料電池システムの不活性物排出装置12を示す斜視図である。図2に示すように、不活性物排出装置12は、その内部で水素循環経路10に連通している。不活性物排出装置12は、オフガス流れ上流側から、上流側シャット機構13、撹拌部14、パージ部15および下流側シャット機構16を備えており、各部材13〜16は互いに連結された状態で固定されている。
上流側シャット機構13および下流側シャット機構16は、不活性物排出装置12の上流側および下流側においてオフガスの流れを遮断することができるように構成されている。2つのシャット機構13、16は、後述するパージ処理を行う時のみ不活性物排出装置12の上流側および下流側をそれぞれシャットする常開式の構成になっている。
また、撹拌部14は、長方形平板材を180°捻った形状のエレメントを有して構成されたいわゆるスタティックミキサである。このため、本実施形態ではオフガスを撹拌するための動力(電力等)を外部から供給するのを不要とすることができる。
図3は、本実施形態における不活性物排出装置12のパージ部15を示す模式図である。図2および図3に示すように、パージ部15は、略円筒状の本体部16と、オフガス中の水素濃度を検出する水素センサ部(水素濃度検出手段)17と、オフガス中の水素のみを選択的に回収する水素回収部18と、本体部16と外部との連通状態を制御する排出部19とを備えている。本実施形態では、水素センサ部17および水素回収部18は、本体部16の鉛直方向上方側に設けられており、排出部19は本体部16の鉛直方向下方側に設けられている。
本体部16は、水素循環経路10と連通しており、オフガスが通過する流路を構成している。
水素センサ部17は、プロトン(水素イオン)伝導性を有する電解質膜(濃度検出用電解質膜)17aを挟んで本体部16と対向して配置される基準水素室17bを有している。基準水素室17bには、基準水素経路17cの一端が接続されている。基準水素経路17cの他端は、水素経路8における水素ボンベ9近傍に接続されており(図1参照)、水素ボンベ9から供給された水素が基準水素経路17cを介して基準水素室17b内に流入するようになっている。また、水素経路8内の水素分圧は一定なので、基準水素室17b内の水素分圧は一定になっている。
電解質膜17aは、両面の水素濃度差に応じて起電力Vsを生ずるものであり、いわゆる水素濃淡電池の働きをする。本実施形態では、本体部16と基準水素室17bとの水素濃度差に応じた起電力Vsが生じ、その起電圧Vsを起電圧センサ(起電圧検出手段)17dで検出するようになっている。検出した起電圧Vsは、一般に知られるネルンストの式に基づき、一方の水素濃度が一定ならば他方の水素濃度に依存する。したがって、本実施形態では基準水素室17b内の水素濃度が一定なので、起電圧Vsから本体部16内の水素濃度が求めることができる。なお、水素センサ部17にて求められた水素濃度は、後述する制御部30に水素濃度信号として出力される。
図4は、本実施形態における不活性物排出装置12の水素回収部18を示す模式図である。
図3および図4に示すように、水素回収部18は、プロトン伝導性を有する電解質膜18aを挟んで本体部16と対向して配置されるバッファ室(水素回収室)18bを有している。バッファ室18bには、不活性ガス(希ガス)であるアルゴンが充填されている。
電解質膜18aには、電解質膜18aに電力を供給する駆動回路18cが電気的に接続されている。電解質膜18aと駆動回路18cとを結ぶ電流経路上には、電解質膜18aと駆動回路18cとの間を電気的に開閉可能な第1のスイッチSW1が設けられている。また、電解質膜18aの両端を結ぶ電流経路上には、電解質膜18aの両端を電気的に開閉可能な第2のスイッチSW2が設けられている。
図1および図2に戻り、不活性物排出装置12の排出部19には、不活性物排出装置12内に存在する不活性物を大気中に排出する不活性物排出経路20が接続されている。そして、排出部19は、不活性物排出装置12と不活性物排出経路20との連通状態を制御できるように構成されている。通常、不活性物排出装置12と不活性物排出経路20とは、非連通状態になっている。また、不活性物排出経路20には、不活性物排出経路20の開閉を行う排出バルブ21が設けられている。
図1に戻り、燃料電池システムには、各種制御を行う制御部(ECU)30が設けられている。制御部30は、CPU、ROM、RAM、I/Oなどを備えた周知のマイクロコンピュータによって構成され、ROMなどに記憶されたプログラムに従って各種演算などの処理を実行する。制御部30には、電力機器2からの電力要求信号、電流センサ3からの電流信号、電圧センサ4からの電圧信号、不活性物排出装置12の水素センサ部17からの水素濃度信号等が入力される。また、制御部30は、圧縮機6、背圧弁7、オフガス循環ポンプ11、不活性物排出装置12、排出バルブ21等に制御信号を出力するように構成されている。なお、不活性物排出装置12および制御部30が、本発明の不活性物排出手段に相当している。
また、制御部30は、オフガス中の水素濃度に基づいて、オフガス中に存在する不活性物を外部に排出するパージ処理を行う。パージ処理は、不活性物排出装置12の本体部16に供給されるオフガスから水素のみをバッファ室18bに回収する水素回収処理、不活性物排出装置12と不活性物排出経路20とを連通状態にする外部連通処理、バッファ室18bに回収された水素を本体部16へ戻す水素帰還処理という3つの処理を含んでいる。
まず、水素回収処理について図3および図4を参照して説明する。水素回収部18の電解質膜18aと駆動回路18cとを結ぶ電流経路上の第1のスイッチSW1のみを閉じることで、駆動回路18cの作動により電解質膜18aに電流が流れる。これにより、本体部16に供給されるオフガス中の水素を選択的に電解質膜18aを透過させてバッファ室18bへと移動させる。すなわち、本体部16側では、オフガス中の水素が水素イオンと電子とに解離する反応が起き、水素イオンは電解質膜18aを通過し、電子は駆動回路18cによって水素回収部18外部を流され、それぞれバッファ室18b側へと移動する。そして、バッファ室18bにおいて、電解質膜18aを通過した水素イオンと、駆動回路18cにより水素回収部18外部を流された電子とが結合して水素が生成される。これにより、本体部16に供給されるオフガスから水素のみを回収することができる。
次に、外部連通処理について図3を参照して説明する。上述した水素回収処理を行った後、不活性物排出装置12と不活性物排出経路20とが連通状態となるように排出部19を作動させるとともに、排出バルブ21を開放する。そして、予め設定された所定時間が経過した後、不活性物排出装置12と不活性物排出経路20とが非連通状態となるように排出部19を作動させるとともに、排出バルブ21を閉塞する。これにより、本体部16内に溜まっている不活性物(オフガスから水素を取り除いたもの)を大気中に排出することができる。なお、水素回収処理および外部連通処理が、本発明の不活性物排出処理に相当している。
次に、水素帰還処理について図3および図4を参照して説明する。上述した外部連通処理を行った後、第1のスイッチSW1を開くとともに第2のスイッチSW2を閉じ、電解質膜18aの両端部を短絡することで、バッファ室18側の水素濃度α1が、本体部16側の水素濃度α2よりも大きいため、この濃度差によってバッファ室18と本体部16との間に起電力が発生する。そして、この起電力が推進力となって、バッファ室18b側の水素が、プロトン状態(H+)にて電解質膜18aを通り本体部16側へ拡散移動する。これにより、バッファ室18bに回収された水素を本体部16に戻すことができる。
次に、本実施形態の燃料電池システムの水素濃度制御処理について図5に基づいて説明する。図5は、制御部30がROM等に格納されたプログラム100にしたがって行う水素濃度制御処理を示すフローチャートである。
まず、燃料電池1の出力電流値Iが0か否かを判定する(S110)。この結果、燃料電池1の出力電流値Iが0である場合は(S110:YES)、燃料電池1の出力が0、すなわち負荷がない(発電していない)と診断し、パージ処理を行うためのサブルーチン200を呼び出す(S170)。このパージ処理によって、オフガス中に存在する不活性物が外部(大気中)に排出される。このサブルーチン200の処理については、後述する。
一方、燃料電池1の出力電流値Iが0でない場合は(S110:NO)、燃料電池1の出力が0でない、すなわち負荷がある(発電している)と診断し水素センサ部17でオフガス中の水素濃度を検出する(S120)。
次に、オフガス中の水素濃度が第1の閾値を下回っているか否かを判定する(S130)。ここで、第1の閾値は、例えばオフガス中の水素濃度がこの値より高ければ、燃料電池1の水素極に水素が十分供給されているという値に設定される。この結果、オフガス中の水素濃度が第1の閾値を下回っていない場合は(S130:NO)、燃料電池1の水素極に水素が十分供給されていると診断し、ステップ110に戻る。
一方、オフガス中の水素濃度が第1の閾値を下回っている場合は(S130:YES)、オフガス中の水素濃度が第1の閾値より小さい第2の閾値を下回っているか否かを判定する(S140)。ここで、第2の閾値は、例えばオフガス中の水素濃度がこの値より低ければ、燃料電池1の水素極に供給される水素量が許容得できない範囲まで減少しているという値に設定される。なお、第2の閾値が、本発明の所定値に相当している。
この結果、オフガス中の水素濃度が第2の閾値を下回っていない場合は(S140:NO)、燃料電池1の水素極に供給される水素量が不足しているが許容できる範囲であると診断し、燃料電池1に供給する水素量を増加させる(S150)。具体的には、オフガス循環ポンプ11の回転数を増加させる。これにより、燃料電池1の発電量を低下させることなく、燃料電池1の水素極に供給される水素量を増加することができる。
一方、オフガス中の水素濃度が第2の閾値を下回っている場合は(S140:YES)、燃料電池1の水素極に供給される水素量が許容できない範囲まで減少していると診断し、燃料電池1の出力電流値Iが所定電流値を上回っているか否かを判定する(S160)。この結果、燃料電池1の出力電流値Iが所定電流値を上回っている場合は(S160:YES)、燃料電池1が高負荷状態であり、パージ処理を行うことで一時的に供給水素量が減少すると、発電に必要な水素量を確保することができなくなると診断し、ステップ150に進む。
一方、燃料電池1の出力電流値Iが所定電流値を上回っていない場合は(S160:NO)、燃料電池1が低負荷状態であると診断し、パージ処理を行うためのサブルーチン200を呼び出す(S170)。このパージ処理によって、オフガス中に存在する不活性物が外部(大気中)に排出される。
ここで、ステップ170のパージ処理について詳しく説明する。ステップ170においては、図6に示すサブルーチン200をこの順に1回実行するようになっている。なお、サブルーチン200はプログラム100の一部である。
まず、不活性物排出装置12の上流側シャット機構13および下流側シャット機構16を閉じ(S210)、不活性物排出装置12の上流側および下流側においてオフガスの流れを遮断する。
次に、上述した水素回収処理を行う、すなわち水素回収部18の第1のスイッチSW1のみを閉じ、電解質膜18aに電流を流す(S220)。これにより、本体部16内のオフガスから水素のみを選択的にバッファ室18bに移動させ、本体部16内に不活性物のみを滞留させることができる。
次に、上述した外部連通処理を行う、すなわち本体部16と外部とを所定時間連通させる(S230)。これにより、本体部16内に滞留している不活性物を大気中に排出することができる。
次に、上述した水素帰還処理を行う、すなわち第1のスイッチSW1を開くとともに第2のスイッチSW2を閉じ、電解質膜18aの両端部を短絡する(S240)。これにより、バッファ室18bに回収された水素を本体部16に戻すことができる。
次に、不活性物排出装置12の上流側シャット機構13および下流側シャット機構16を開け(S250)、不活性物排出装置12内をオフガスが流れるようにする。
ステップ250の後、サブルーチン200の処理が終了し、処理はステップ110の開始時点に戻る。
以上説明したように、オフガス中の水素を選択的に不活性物排出装置12のバッファ室18bへと移動させた後、本体部16と外部とを連通させることで、オフガス中の不活性物のみを外部へ排出することができるので、水素が無駄に排出されることを防止できる。これにより、不活性物濃度上昇による発電効率の低下を抑制するとともに、燃費を向上することができる。
また、水素循環経路10は分岐していない、すなわち不活性物排出装置12を迂回するバイパス経路等は設けられていないため、オフガス中の不活性物をより確実に排出し、不活性物濃度上昇による発電効率の低下をより抑制することができる。
このとき、オフガス中の水素濃度が低下した場合のみ、不活性物排出処理を行うようになっているため、不活性物排出手装置12の消費電力を抑制することができる。したがって、補機の消費電力を抑制しつつ、不活性物濃度上昇による発電効率の低下を抑制しながら燃費の向上を図ることが可能となる。
また、不活性物排出装置12は、不活性物排出処理を行った後、バッファ室18bと本体部16との水素濃度差によって発生した起電圧により、バッファ室18b内の水素を本体部16へと移動させる水素帰還処理を行うようになっている。このため、不活性物を外部へ排出した後に、バッファ室18b内の水素を本体部16へ戻すことができる。このとき、バッファ室18bと本体部16との水素濃度差によって発生した起電圧を利用することで、水素を本体部16へ戻すための動力(電力等)を外部から供給するのを不要とすることができる。これにより、補機の消費電力をより抑制することが可能となる。
また、不活性物装置12に、その上流側および下流側においてオフガスの流れを遮断するシャット機構13、16を設けることで、不活性物排出装置12の上流側および下流側においてオフガスの流れが遮断された状態で不活性物排出処理を行うことができる。このため、水素が無駄に排出されることをより確実に防止できるので、燃費をより向上させることが可能となる。
ところで、水素を回収するためのバッファ室18bには、電解質膜18aを透過したり、水素と化学反応を起こしたりする物質を充填することはできない。一方、バッファ室18bに何も充填しない、すなわちバッファ室18bを真空にすると、電解質膜18aに負圧がかかり、電解質膜18aが破壊されてしまう場合がある。これに対し、電解質膜18aを透過せず、水素と化学反応しない不活性ガス(本実施形態ではアルゴン)をバッファ室18bに充填することで、電解質膜18aが破壊されることを防止できる。
また、水素センサ部17は、基準水素室17bと本体部16との水素濃度差によって発生した起電圧値からオフガス内の水素濃度を検出する構成になっている。このとき、電解質膜17aは水分を含んだ湿潤状態になっているため、電解質膜17aに新たに水分が付着しても問題は生じない。したがって、水素センサ部17の耐水性を向上させることができる。また、水素循環経路10は分岐していない、すなわち水素センサ部17を迂回するバイパス経路等は設けられていないので、オフガス中の水素濃度をより正確に検出することができる。
また、不活性物排出装置12における水素センサ部17の上流側に、オフガスを撹拌する撹拌部14を設けることで、オフガス中の水素濃度をより正確に検出することが可能となる。
(他の実施形態)
なお、上記実施形態では、水素センサ部17を、電解質膜17aを備え、濃淡電池の原理を利用する構成としたが、これに限らず、オフガス中の水素濃度を検出できれば任意の構成にすることができる。
また、上記実施形態では、水素センサ部17を不活性物排出装置12に設けたが、不活性物排出装置12とは別に設けてもよい。
また、上記実施形態では、バッファ室18bにアルゴンを充填したが、これに限らず、ネオン等の他の不活性ガスを充填することができる。
本発明の実施形態に係る燃料電池システムの全体構成を示している。 本発明の実施形態に係る燃料電池システムの不活性物排出装置12を示す斜視図である。 本発明の実施形態における不活性物排出装置12のパージ部15を示す模式図である。 本発明の実施形態における不活性物排出装置12の水素回収部18を示す模式図である。 本発明の実施形態における制御部30がROM等に格納されたプログラム100にしたがって行う水素濃度制御処理を示すフローチャートである。 本発明の実施形態におけるパージ処理を示すフローチャートである。
符号の説明
1…燃料電池、8…水素経路(燃料ガス供給経路)、9…水素ボンベ(燃料ガス供給手段)、10…水素循環経路(燃料ガス循環経路)、12…不活性物排出装置(不活性物排出手段)、13、16…シャット機構(遮断機構)、14…撹拌部、17…水素センサ部(水素濃度検出手段)、17a…濃度検出用電解質膜、17b…基準水素室、17d…起電圧センサ(起電圧検出手段)、18a…電解質膜、18b…バッファ室(水素回収室)、19…排出部、30…制御部(不活性物排出手段)。

Claims (7)

  1. 酸素を主成分とする酸化剤ガスと水素を主成分とする燃料ガスとを電気化学反応させて電気エネルギを発生させる燃料電池(1)と、
    前記燃料電池(1)の燃料極に燃料ガスを供給する燃料ガス供給手段(9)と、
    前記燃料ガス供給手段(9)から前記燃料電池(1)の燃料極に供給される燃料ガスが通過する燃料ガス供給経路(8)と、
    前記燃料電池(1)の燃料極から排出される未反応水素を含む排気ガスを前記燃料電池(1)に再循環させるための燃料ガス循環経路(10)と、
    前記燃料ガス循環経路(10)内に設けられ、前記排気ガス中の水素濃度を検出する水素濃度検出手段(17)と、
    前記燃料ガス循環経路(10)内に設けられ、前記排気ガス中に存在する前記電気化学反応に使用されない不活性物を外部に排出させる不活性物排出手段(12、30)とを備え、
    前記不活性物排出手段(12、30)は、
    プロトン伝導性を有する電解質膜(18a)を挟んで前記燃料ガス循環経路(10)と対向して配置される水素回収室(18b)と、前記燃料ガス循環経路(10)と外部との連通状態を制御する排出部(19)とを有しており、
    前記水素濃度検出手段(17)で検出した水素濃度が所定値を下回っている場合に、前記電解質膜(18a)に電流を流すことで前記排気ガス中の水素を選択的に前記水素回収室(18b)へと移動させ、その後、前記燃料ガス循環経路(10)と外部とを連通させるように前記排出部(19)を作動させることで前記不活性物を外部へ排出する不活性物排出処理を行うように構成されていることを特徴とする燃料電池システム。
  2. 前記不活性物排出手段(12、30)は、前記不活性物排出処理を行った後、前記水素回収室(18b)と前記燃料ガス循環経路(10)との水素濃度差によって発生した起電圧により、前記水素回収室(18b)内の水素を前記燃料ガス循環経路(10)へと移動させる水素帰還処理を行うように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
  3. 前記不活性物排出手段(12、30)は、その上流側および下流側において前記排気ガスの流れを遮断する遮断機構(13、16)を有しており、前記不活性物排出処理を行う前に、前記排気ガスの流れを遮断するように前記遮断機構(13、16)を作動させることを特徴とする請求項1または2に記載の燃料電池システム。
  4. 前記水素回収室(18b)には、不活性ガスが充填されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の燃料電池システム。
  5. 前記水素濃度検出手段(17)は、
    前記燃料ガス供給経路(8)における前記燃料ガス供給手段(9)近傍から燃料ガスが流入する基準水素室(17b)を有しており、
    前記基準水素室(17b)と前記燃料ガス循環経路(10)との水素分圧比より、前記排気ガス中の水素濃度を検出するようになっていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の燃料電池システム。
  6. 前記基準水素室(17b)と前記燃料ガス循環経路(10)とは、プロトン伝導性を有する濃度検出用電解質膜(17a)を挟んで対向するように配置されており、
    前記水素濃度検出手段(17)は、
    前記基準水素室(17b)と前記燃料ガス循環経路(10)との水素濃度差によって発生した起電圧を検出する起電圧検出手段(17d)を有しており、
    前記起電圧検出手段(17d)により検出された起電圧値から前記燃料ガス循環経路(10)内の水素濃度を検出するようになっていることを特徴とする請求項5に記載の燃料電池システム。
  7. 前記不活性物排出手段(12、30)は、前記水素濃度検出手段(17)を有しており、
    前記不活性物排出手段(12、30)における前記水素濃度検出手段(17)の上流側には、前記排気ガスを撹拌する撹拌部(14)が設けられていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の燃料電池システム。
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