JP5872315B2 - 燃料電池システムの起動方法および起動装置 - Google Patents
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Description
しかしながら、特許文献1に開示された燃料電池装置は、アノード流路内の空気のパージが終了するまで(特許文献1請求項1における「燃料/空気前線がアノードの流れ場内を移動している間」に相当する。)、カソード流路に空気を供給しないようになっている(特許文献1請求項1参照)。
このため、特許文献1に開示された燃料電池装置は、アノード排ガスをカソード排ガスで希釈することができず、燃料電池装置から排出される排ガスの水素濃度が高くなるおそれがある。
即ち、水素を燃料電池セルのアノード側に供給し始めた時、燃料電池セルのアノード内で水素供給入口に近い側がアノード出口側に比べて水素リッチとなり、水素の濃度勾配が生じる。このように燃料電池セルのアノード内に水素濃度勾配が生じると、燃料電池セルのアノード出口側(水素リッチでない)でプロトン(H+)が不足する。このため、燃料電池セルの出口側においてアノード側からカソード側に到達するプロトンが不足する状態となり、出口側のアノード−カソード間の電位が過剰に上昇し、この電位上昇がエネルギとなってカソード電極触媒の腐食反応を生じるおそれがある。また、出口側領域ではプロトン不足を補うため、カソード電極触媒を担持しているカーボンと水とが反応するようになる。その結果、カソード電極触媒の活性領域が低下し、劣化を引き起こす。
このように、燃料電池の電解質膜のアノード側における水素濃度が不均一となることにより、カソード触媒が高電位となり、腐食電流が発生して、触媒や触媒支持体を劣化し、燃料電池の寿命を低減させるおそれがある。
また、酸化剤ガスバイパス路制御装置により酸化剤ガスバイパス路を作動させて、酸化剤ガス供給装置から希釈器へ酸化剤ガスを供給することができるので、アノード残存ガスとともに排出された燃料ガスを希釈器で希釈することができる。
また、酸化剤ガスバイパス路制御装置により酸化剤ガスバイパス路を作動させて、酸化剤ガス供給装置から希釈器へ酸化剤ガスを供給することができるので、アノード残存ガスとともに排出された燃料ガスを希釈器で希釈することができる。
まず、本実施形態に係る起動処理が実施される燃料電池システムSの構成について、図1を用いて説明する。
図1に示す燃料電池システムSは、例えば、図示しない燃料電池車(移動体)に搭載されている。
燃料電池システムSは、燃料電池スタック10(燃料電池)と、燃料電池スタック10のアノードに対して水素(燃料ガス)を給排するアノード系と、燃料電池スタック10のカソードに対して酸素を含む空気(酸化剤ガス)を給排するカソード系と、アノード系からの燃料排ガスおよびカソード系からの酸化剤排ガスを燃料電池システムSの外へ排気する希釈排気系と、燃料電池スタック10の出力端子(図示せず)に接続され、燃料電池スタック10の発電電力を負荷に供給する電力供給系と、これらを電子制御する制御手段であるECU80(Electronic Control Unit、電子制御装置)と、を備えている。なお、燃料ガス、酸化剤ガスの具体的種類はこれに限定されるものではない。
燃料電池スタック10は、複数(例えば数十〜数百枚)の固体高分子型の単セル(燃料電池)が積層して構成されたスタックであり、複数の単セルは直列で接続されている。単セルは、MEA(Membrane Electrode Assembly;膜電極接合体)と、これを挟む2枚の導電性を有するセパレータと、を備えている。MEAは、1価の陽イオン交換膜等からなる電解質膜(固体高分子膜)と、これを挟むアノード及びカソード(電極)とを備えている。
O2+4H++4e-→2H2O ……(2)
アノード系は、図示しない水素タンクと、遮断弁21と、エゼクタ22と、水素ポンプ23と、アノードパージ弁24と、を備えている。
なお、燃料排ガスは、アノードにおける電極反応で消費されなかった水素、及び、水蒸気を含んでいる。また、配管33には、燃料排ガスに含まれる水分(凝縮水(液体)、水蒸気(気体))を分離・回収する気液分離器(図示せず)が設けられている。
水素ポンプ23は、ECU80により運転が制御され、配管32aからの燃料排ガスを圧縮し、配管31cへ圧送することができるようになっている。
アノードパージ弁24は、常閉型の遮断弁であり、ECU80により開閉が制御されるようになっている。ECU80は、燃料電池システムSの運転時において燃料電池スタック10の発電が安定していないと判定された場合、所定開弁時間にて、アノードパージ弁24を開弁するようになっている。
カソード系は、インテイク41と、エアポンプ42と、加湿器43と、入口封止弁44と、出口封止弁45と、CPCV(Cathode Purge Control Valve;カソード背圧弁)46と、を備えている。
希釈排気系は、希釈器60と、バイパスバルブ61と、を備えている。
バイパスバルブ61は、常閉型の遮断弁であり、ECU80により開閉が制御されるようになっている。
電力供給系は、燃料電池スタック10の出力端子(図示せず)に接続され、コンタクタ71などを備え、燃料電池スタック10の発電電力を負荷72に供給する。
コンタクタ71は、燃料電池スタック10の出力端子(図示せず)と負荷72との接続を遮断することができるようになっており、ECU80により制御されるようになっている。
ECU80は、燃料電池システムSを電子制御する制御装置であり、CPU、ROM、RAM、各種インタフェイス、電子回路などを含んで構成されており、その内部に記憶されたプログラムに従って、各種機能を発揮し、遮断弁21、エゼクタ22、水素ポンプ23、アノードパージ弁24、エアポンプ42、入口封止弁44、出口封止弁45、CPCV46、バイパスバルブ61、コンタクタ71等の各種機器を制御するようになっている。
また、燃料電池システムSには各種センサが設けられており、検出された信号はECU80に送信されるようになっている。
次に、図2および図3を用いて、本実施形態に係る燃料電池システムSの起動処理について説明する。図2は、本実施形態に係る燃料電池システムSの起動処理のフローチャートである。図3は、本実施形態に係る燃料電池システムの起動処理のタイムチャートである。
なお、燃料電池システムSの運転停止時において、図3に示すように、遮断弁21およびアノードパージ弁24は閉弁され、燃料電池スタック10のアノード流路10aは封止されており、アノード流路10a内はアノード残存ガス(例えば、空気)が充填されているものとする。また、入口封止弁44および出口封止弁45は閉弁され、燃料電池スタック10のカソード流路10cは封止されており、カソード流路10c内はカソード残存ガス(例えば、空気)が充填されているものとする。
ECU80は、燃料電池システムSの起動指令(IG−ON)を検出すると、図2に示す軌道処理を開始する。
これにより、酸化剤ガスバイパス路が形成され、インテイク41から取り込まれた空気が、配管51a、エアポンプ42、配管51b、配管62a、バイパスバルブ61、配管62b、配管52dを介して、希釈器60に供給される。
なお、入口封止弁44および出口封止弁45は閉弁されており、燃料電池スタック10のカソード流路10cには、エアポンプ42から圧送された空気が流入しないようになっている。
これにより、燃料ガス供給路および燃料排ガス再循環路が形成され、水素タンク(図示せず)から供給された水素が、配管31a、遮断弁21、配管31b、エゼクタ22、配管31cを介して、アノード流路10aの入口に供給される。そして、供給された水素およびアノード流路10aに残存していたアノード残存ガスが、アノード流路10aの出口から、配管32a、配管33、エゼクタ22、配管31cを介して、アノード流路10aの入口へと循環するようになっている。また、アノード流路10aの出口から、配管32a、配管34a、水素ポンプ23、配管31cを介して、アノード流路10aの入口へと循環するようになっている。
なお、アノードパージ弁24は閉弁しているため、燃料ガス供給路から水素が供給されることにより、アノード流路10aにおけるガス圧(アノード圧力)が上昇する(図3参照)。
ここで、パージ許可圧力P1は、アノードパージ弁24を開弁することにより、アノード流路10aの燃料排ガスを希釈器60にパージ可能な圧力の閾値であり、予め設定されている。
アノード圧力がパージ許可圧力P1以上である場合(S103・Yes)、ECU80の処理はステップS104に進む。アノード圧力がパージ許可圧力P1以上でない場合(S103・No)、ECU80の処理はステップS103を繰り返す。
これにより、燃料排ガス排出路が形成され、アノード残存ガス(例えば、空気)を水素とともに希釈器60に排出する。
なお、希釈器60では、配管32b(燃料排ガス排出路)から排出された水素およびアノード残存ガスを配管52d(酸化剤ガスバイパス路)から供給された空気で希釈して外部へ排出されるようになっている。
ここで、アノード置換パージ量は、アノード流路10aからアノード残存ガスが排出され、水素で置換されたと判断するための閾値であり、予め設定されている。
なお、燃料排ガスのパージ量は、例えば、配管32bに設けられた流量センサ(図示せず)により検知してもよく、アノードパージ弁24の開弁経過時間から推定してもよい。
パージ量がアノード置換パージ量以上である場合(S105・Yes)、ECU80の処理はステップS106に進む。パージ量がアノード置換パージ量以上でない場合(S105・No)、ECU80の処理はステップS105を繰り返す。
これにより、燃料排ガス排出路が封止され、希釈器60への燃料排ガスの排出が停止する。なお、希釈器60は、前記したように、酸化剤ガスバイパス路を介して、希釈器60に空気が供給されている(S101参照)。
ここで、所定の時間(希釈時間)は、ステップS104からステップS106までの間にアノード残存ガスとともにパージされた水素を、酸化剤ガスバイパス路を介して供給される空気で希釈するための時間であり、予め設定されている。
所定の時間(希釈時間)が経過した場合(S107・Yes)、ECU80の処理はステップS108に進む。所定の時間(希釈時間)が経過していない場合(S107・No)、ECU80の処理はステップS107を繰り返す。
これにより、酸化剤ガス供給路および酸化剤排ガス排出路が形成され、インテイク41から取り込まれた空気が、配管51a、エアポンプ42、配管51b、加湿器43、配管51c、入口封止弁44、配管51dを介して、カソード流路10cの入口に供給される。そして、供給された空気および運転停止時にカソード流路10c等に残存していたカソード残存ガスが、カソード流路10cの出口から、配管52a、出口封止弁45、配管52b、加湿器43、配管52c、CPCV46配管52dを介して、希釈器60に供給される。
ここで、所定の時間(カソード置換時間)は、アノード置換パージ量は、カソード流路10cからカソード残存ガスが排出され、空気で置換されたと判断するための閾値であり、予め設定されている。
所定の時間(カソード置換時間)が経過した場合(S109・Yes)、ECU80の処理はステップS110に進む。所定の時間(カソード置換時間)が経過していない場合(S109・No)、ECU80の処理はステップS109を繰り返す。
これにより、酸化剤ガスバイパス路が封止される。なお、以後の工程における燃料排ガス排出路からパージされた燃料排ガスに含まれる水素は、酸化剤排ガス排出路から排出される酸化剤排ガスで希釈される。
ここで、起動許可電圧は、カソード置換が十分に行われたか否かを判定するための閾値であり、予め設定されている。なお、カソード置換が十分に行われておらず、酸素の不足が発生している状態において、燃料電池スタック10を発電させると、触媒が劣化して、燃料電池スタック10の寿命を低減させるおそれがあるためである。
FC電圧が起動許可電圧以上である場合(S111・Yes)、ECU80の処理はステップS112に進む。FC電圧が起動許可電圧以上でない場合(S111・No)、ECU80の処理はステップS111を繰り返す。
これに対し、本実施形態に係る燃料電池システムSは、ステップS102に示すように、遮断弁21を開弁して水素をアノード流路10aに供給しながら、水素ポンプ23によりアノード流路10a内のガスを循環させるので、燃料電池スタック10のスタック面内や積層方向での水素の濃度勾配を低減させることができるので、腐食電流の発生を抑制し、触媒の劣化を抑制し、燃料電池スタック10の寿命が低減することを抑止することができる。
なお、本実施形態に係る燃料電池スステムSは、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。
10 燃料電池スタック(燃料電池)
10a アノード流路(アノード側)
10c カソード流路(カソード側)
21 遮断弁(燃料ガス供給装置)
22 エゼクタ
23 水素ポンプ(燃料排ガス再循環路制御装置)
24 アノードパージ弁(燃料排ガス排出路制御装置)
41 インテイク(酸化剤ガス供給装置)
42 エアポンプ(酸化剤ガス供給装置)
43 加湿器
44 入口封止弁(酸化剤ガス供給路封止装置)
45 出口封止弁(酸化剤排ガス排出路封止装置)
46 CPCV
60 希釈器
61 バイパスバルブ(酸化剤ガスバイパス路制御装置)
71 コンタクタ
72 負荷
80 ECU
31a,31b,31c 配管(燃料ガス供給路)
32a,32b 配管(燃料排ガス排出路)
34a,34b 配管(燃料排ガス再循環路)
51a,51b,51c,51d 配管(酸化剤ガス供給路)
52a,52b,52c,52d 配管(酸化剤排ガス排出路)
62a,62b 配管(酸化剤ガスバイパス路)
Claims (5)
- アノード側に供給される燃料ガスおよびカソード側に供給される酸化剤ガスの電気化学反応により発電する燃料電池と、
前記燃料電池に前記燃料ガスを供給する燃料ガス供給路および燃料ガス供給装置と、
前記燃料電池からの燃料排ガスを排出する燃料排ガス排出路と、
前記燃料排ガス排出路の作動状態を制御する燃料排ガス排出路制御装置と、
前記燃料排ガスを前記燃料電池の前記アノード側へ再循環させる燃料排ガス再循環路と、
前記燃料排ガス再循環路の作動状態を制御する燃料排ガス再循環路制御装置と、
前記燃料電池に前記酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給路および酸化剤ガス供給装置と、
前記燃料電池からの酸化剤排ガスを排出する酸化剤排ガス排出路と、
前記酸化剤ガス供給路から分岐し前記燃料電池をバイパスして前記酸化剤排ガス排出路に接続する酸化剤ガスバイパス路と、
前記酸化剤ガスバイパス路の作動状態を制御する酸化剤ガスバイパス路制御装置と、
前記酸化剤ガス供給路における前記酸化剤ガスバイパス路との分岐部よりも下流で前記酸化剤ガス供給路を封止する酸化剤ガス供給路封止装置と、
前記酸化剤排ガス排出路における前記酸化剤ガスバイパス路との接続部よりも上流で前記酸化剤排ガス排出路を封止する酸化剤排ガス排出路封止装置と、
前記燃料排ガス排出路の下流側および前記酸化剤排ガス排出路の下流側が接続される希釈器と、を備える燃料電池システムの起動方法であって、
前記酸化剤ガス供給路封止装置により前記酸化剤ガス供給路を封止し、前記酸化剤排ガス排出路封止装置により前記酸化剤排ガス排出路を封止した状態で、前記酸化剤ガスバイパス路制御装置により前記酸化剤ガスバイパス路を作動させて、前記酸化剤ガス供給装置から前記希釈器へ前記酸化剤ガスを供給するとともに、
前記燃料ガス供給装置により前記燃料電池に前記燃料ガスを供給し、前記燃料排ガス再循環路制御装置により前記燃料排ガス再循環路を作動させ、前記燃料排ガス排出路制御装置により前記燃料排ガス排出路を作動させて、前記燃料電池の前記アノード側に残存するアノード残存ガスを前記希釈器へ排出するとともに、前記燃料電池の前記アノード側を前記燃料ガスに置換する燃料ガス置換工程を有する
ことを特徴とする燃料電池システムの起動方法。 - 前記燃料ガス置換工程の後に、
前記燃料排ガス排出路制御装置により前記燃料排ガス排出路を封止するとともに、
前記酸化剤ガスバイパス路による前記酸化剤ガス供給装置から前記希釈器への前記酸化剤ガスの供給を所定時間継続する希釈工程を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システムの起動方法。 - 前記希釈工程の後に、
前記酸化剤ガス供給路封止装置による前記酸化剤ガス供給路の封止を開放し、前記酸化剤排ガス排出路封止装置による前記酸化剤排ガス排出路の封止を開放させて、前記燃料電池の前記カソード側に残存するカソード残存ガスを前記希釈器へ排出するとともに、前記燃料電池の前記カソード側を前記酸化剤ガスに置換する酸化剤ガス置換工程を有する
ことを特徴とする請求項2に記載の燃料電池システムの起動方法。 - 前記酸化剤ガス置換工程の後に、
前記酸化剤ガスバイパス路制御装置により前記酸化剤ガスバイパス路を停止させる
ことを特徴とする請求項3に記載の燃料電池システムの起動方法。 - 燃料電池システムの起動装置であって、
酸化剤ガス供給路封止装置を作動させて燃料電池に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給路を封止するとともに、酸化剤排ガス排出路封止装置を作動させて前記燃料電池から酸化剤排ガスを排出する酸化剤排ガス排出路を封止する手段と、
前記封止した状態で、酸化剤ガスバイパス路制御装置を作動させて前記酸化剤ガス供給路から分岐し前記燃料電池をバイパスして前記酸化剤排ガス排出路に接続する酸化剤ガスバイパス路により、酸化剤ガス供給装置から希釈器へ前記酸化剤ガスを供給する手段と、
燃料ガス供給装置を作動させて前記燃料電池に燃料ガスを供給し、さらに、燃料排ガス再循環路制御装置を作動させて燃料排ガス再循環路により前記燃料電池から燃料排ガス排出路を介して排出される燃料排ガスを再び前記燃料電池に供給する手段と、
燃料排ガス排出路制御装置を作動させて前記燃料排ガス排出路から前記燃料電池のアノード側に残存する前記燃料ガスを含むアノード残存ガスを前記希釈器へ排出するとともに、前記燃料電池の前記アノード側を前記燃料ガスに置換する手段を有する
ことを特徴とする燃料電池システムの起動装置。
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