本発明は、LCD(液晶表示装置、以下「液晶ディスプレイ」と記載することがある。)に用いる光拡散シートに関する。
液晶ディスプレイ装置等においては、観察者の視認性を高めるため液晶パネルの観察者側に光拡散シートを用いたものが知られている。この光拡散シートは、例えば、透光性フィルムの表面を凹凸処理したもの(特許文献1等)、樹脂フィルムの内部に光拡散性微粒子を含有させたもの、円柱状のレンズが一つの平面上に並列配置されたレンチキュラーレンズシート等がある。また、これらのシートを二、三枚組み合わせて用いることも行なわれている。これらは、フィルム、大気、微粒子等の各屈折率の差を利用してこれらの境界において映像光を多方向に屈折させ、映像光を広範囲に拡散して観察者側に出射することで視認性の向上を図ろうとするものである。
しかし、光拡散性微粒子や凹凸が形成されたシート表面によって、映像光が乱反射して多くの迷光を生じさせることになり、ディスプレイの表面輝度、コントラストの低下等を招いていた。また、表面の凹凸処理により拡散性を有するものは、その拡散性および透明性に角度依存性があるため、ディスプレイを見る角度によって視認性が変化するという問題があった。一方、光拡散シートの光拡散性は、外光の散乱反射を増加させることにもつながり、コントラストが著しく低下して映像がボケやすいという問題点もあった。一枚の光拡散シート単独で使用した場合、水平または垂直いずれかの方向の視野角の拡大が不十分となるという問題もあった。
そこで本発明は、迷光により表面輝度が低下したりコントラストが低下することがなく、角度依存性が少なく、かつ外光の散乱反射の少ない液晶ディスプレイに用いる光拡散シート及び液晶ディスプレイを提供することを課題とする。
以下、本発明について説明する。
請求項1に記載の発明は、液晶ディスプレイの観察者側に配置されるとともに、複数の単位レンズを一次元又は二次元方向に形成した光拡散シートであって、単位レンズはその断面形状が略台形であり、台形の下底を入光部、上底を出光部とするとともに、所定の屈折率N1を有する材料にて形成されており、隣接する単位レンズの間の断面形状三角形の部分は、N1より低い屈折率N2を有する材料で形成され、台形斜辺が前記出光部の法線となす角度をθとした場合、
sin(90°−θ)>N2/N1
かつ
N1<1/sin2θ
なる関係を有していることを特徴とする光拡散シートを提供することにより前記課題を解決する。
請求項2に記載の発明は、液晶ディスプレイの観察者側に配置されるとともに、複数の単位レンズを一次元又は二次元方向に形成した光拡散シートであって、単位レンズはその断面形状が略台形であり、台形の下底を入光部、上底を出光部とするとともに、所定の屈折率N1を有する材料にて形成されており、台形斜辺の前記観察者側にはN1より低い屈折率N2を有する透明低屈折率層が形成され、台形斜辺が出光部の法線となす角度をθとした場合、
sin(90°−θ)>N2/N1
かつ
N1<1/sin2θ
なる関係を有していることを特徴とする光拡散シートを提供することにより前記課題を解決する。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の光拡散シートにおける透明低屈折率層の観察者側に、光を吸収可能に形成された光吸収部が備えられることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載された光拡散シートにおける単位レンズの間の断面形状三角形の部分には光吸収粒子が添加されていることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載された光拡散シートのさらに観察者側に拡散剤を含有するシートが設けられていることを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の光拡散シートのさらに観察者側に反射防止層、ハードコート層、偏光フィルター層、帯電防止層、防眩処理層、防汚処理層、タッチセンサ層のうち少なくとも一つが設けられていることを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、液晶ディスプレイの観察者側に配置されるとともに、複数の単位レンズを一次元又は二次元方向に形成した光拡散シートであって、単位レンズはその断面形状が略台形であり、台形の下底を入光部、上底を出光部とするとともに、隣接する前記単位レンズの間の断面形状三角形の部分には、単位レンズの屈折率より低い屈折率を有するとともに光吸収粒子が添加された材料、又は、単位レンズの屈折率より低い屈折率を有し着色された材料、により形成されていて、台形の上底の長さをT、高さをH、台形斜辺が前記出光部の法線となす角度をθ、とした場合、
0<H<T/(tan(2θ+10°)−tanθ)
なる関係を有していることを特徴とする光拡散シートを提供することにより前記課題を解決する。
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれかに記載の光拡散シートにおける入光部の面にはエンボス加工が施されていることを特徴とする。
液晶ディスプレイの観察者側に配置されるとともに、複数の単位レンズを一次元又は二次元方向に形成した光拡散シート又はフィルムであって、単位レンズはその断面形状が略台形であり台形の下底を入光部、上底を出光部とするとともに、所定の屈折率N1を有する材料にて形成されており、隣接する単位レンズの間の断面形状三角形の部分にはN1より低い屈折率N2を有するとともに光吸収粒子が添加された材料により形成されていて、台形の上底の長さをT、高さをH、台形斜辺が出光部の法線となす角度をθとした場合、
sin(90°−θ)>N2/N1
N1<1/sin2θ
0<H<T/(tan(2θ+10°)−tanθ)
なる関係を有することを特徴とする光拡散シート又はフィルムによれば、出光面法線に平行な入射光は、斜辺の透明低屈折率層表面にて全反射され、出光面においては反射を起こすことなく観察者側に出光される。また、出光面法線に対して最大10°の傾きをもって入射し、単位レンズ断面が形成する台形斜辺の透明低屈折率層表面にて反射された光は、隣接する単位レンズ断面が形成する台形斜辺の透明低屈折率層にいたることなくの出光面から観察者側に出光される。また、本発明では、断面形状三角形の部分全体を光吸収性の材料とはせず、透明材料に光吸収粒子を分散させる構成をとったので、斜辺部での全反射が効率よく行われる。したがって輝度とコントラストが高く、迷光の少ない光拡散シート又はフィルムを得ることができる。
また、単位レンズを板状又は膜状の透明基材上に形成した場合には、ロール状の型を使用して、配列された単位レンズを連続的に生産することができる。
また、観察者側に拡散剤を混入したシートを張り合わせた場合には、観察者側の面を平面とすることができるので、表面への加工が容易になる。また、拡散剤の光学的作用により、出光側のゲインを均一にならすことができる。
また、複数の単位レンズを一次元又は二次元方向に形成した光拡散シート又はフィルムであって、単位レンズはその断面形状が略台形であり台形の下底を入光部、上底を出光部とするとともに、所定の屈折率N1を有する材料にて形成されており、隣接する単位レンズの間の断面形状三角形の部分にはN1より低い屈折率N2を有するとともに光吸収粒子が添加された材料により形成されていて、台形の上底の長さをT、高さをH、台形斜辺が出光部の法線となす角度をθとした場合、
sin(90°−θ)>N2/N1
N1<1/sin2θ
0<H<T/(tan(2θ+10°)−tanθ)
なる関係を有し、入光部の面はエンボス加工が施されていることを特徴とする光拡散シート又はフィルムによれば、入光部の面はエンボス加工が施されているので、シート出光部側から入射した外光のうち、シート入光面まで達して反射される光は拡散されて、斜辺部へ大きな角度をもって入射するので、斜辺部にて全反射されることなく断面形状三角形の部分に入光し、光吸収粒子により吸収される。したがって光拡散シート又はフィルムのコントラストを向上させることができる。さらに、光拡散シート又はフィルム内にて出光面法線に平行な入射光は断面形状台形斜辺の表面にて全反射され、出光面においては反射を起こすことなく観察者側に出光される。また、シート内の迷光や観察者側から入射した光は光吸収粒子又は着色された材料により吸収される。したがって輝度とコントラストが高い光拡散シート又はフィルムを得ることができる。
また、エンボス加工が施された部分の斜面が入光面とのなす角のθと同方向の成分をφ、エンボス部を形成する材料の屈折率をN3とするとき、
sin(90°―(sin−1(N3 * sin(2φ)/N1)+θ))<N2/N1
なる関係を満たすエンボス加工が施された部分の面積が、入光面全体の面積の20%以上であるように構成した場合、上記不等式を満たす条件のもとでは、出光側から出光面に対して垂直に入射した外光は、エンボス面にて反射され、光吸収粒子に吸収される。したがってこのような条件を満たすエンボス面を入光面全体の20%以上設けることにより、コントラストの高い光拡散シート又はフィルムを構成することができる。
また、入光面に施されたエンボス形状により、20°以上拡散される光の成分が20%以下であることとした場合には、光拡散シート又はフィルムに入光した映像光の多くが、レンズ間部分の光吸収粒子に吸収されることなく観察者側に達することができる。したがって、透過率の高い光拡散粒子を実現することができる。
また、さらに上記において、
sin(90°―(sin−1(N3/N1)* sin(φ−sin−1(sinφ/N3)))+θ)<N2/N1
なる関係を満たす条件下においては入光面に垂直に入射した映像光が光吸収粒子に吸収される。したがって、このような条件を満たすエンボス加工が施された部分の面積が、入光面全体の面積の20%以下にコントロールすることにより、透過率の高い光拡散シート又はフィルムを提供することができる。
また、単位レンズを板状又は膜状の透明基材上に形成した場合には、ロール状の型を使用して、配列された単位レンズを連続的に生産することができる。
また、観察者側に拡散剤を混入したシートを張り合わせた場合には、観察者側の面を平面とすることができるので、表面への加工が容易になる。また、拡散剤の光学的作用により、出光側のゲインを均一にならすことができる。
本発明のこのような作用及び利得は、次に説明する実施の形態から明らかにされる。
以下本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。
(第一実施形態及び第二実施形態)
図1及び図2は、本発明の第一及び第二実施形態の光拡散シート又はフィルムS1及びS2の水平断面を示す図である。これらの図においては、図面右側に映像光源が配置され、図面の左側に観察者が位置している。
図1は、本発明の第一実施形態の光拡散シートS1を示している。この光拡散シートS1は、観察者側から映像光源方向に順に、拡散剤入りシート101、単位レンズ102、ベースシート103が張り合わされて配置されている。単位レンズ102は高屈折率N1を有する物質により形成されている。さらに、隣接する単位レンズ102、102にはさまれた断面形状三角形の部分(以下において「レンズ間部分107」という。)には、N1より小さな屈折率N2を備えた透明な物質(以下において「透明低屈折率物質106」という。)中に光吸収粒子105が添加された材料で埋められている。
本実施形態においては、高屈折率部(単位レンズ102)の屈折率N1と、透明低屈折率物質106の屈折率N2との比は、光拡散シートS1の光学特性を得るために所定の範囲に設定されている。また、レンズ間部分107と高屈折率部(単位レンズ102)とが接する斜辺が、出光面の法線(当該光拡散シートS1に対する垂直入射光に平行である。)となす角度は所定の角度θに形成されている。
高屈折率部(単位レンズ102)は通常、電離放射線硬化性を有するエポキシアクリレートなどの材料にて構成されている。また、透明低屈折率物質106として通常、電離放射線硬化性を有するウレタンアクリレートなどの材料が使用されている。光吸収粒子105は市販の着色樹脂微粒子が使用可能である。また、拡散剤入りシート101、及びベースシート103は、高屈折率部(単位レンズ102)と略同一の屈折率を有する材料にて構成されている。拡散剤入りシート101の観察者側には、反射防止層、ハードコート層、偏光フィルター層、帯電防止層、防眩処理層、防汚処理層、タッチセンサ層などの機能層が適宜設けられている。
次に光拡散シートS1の単位レンズ102内に入光した光の光路について、図1を参照しつつ簡単に説明する。なお、図1において、光L11〜L14の光路は模式的に示されたものである。いま、図1において、映像光源側から単位レンズ102の中央部付近に入射した垂直光L11は、そのまま光拡散シートS1の内部を直進して通過し、観察者に至る。映像光源側から単位レンズ102の端部付近に入射した垂直光L12は、高屈折率部(単位レンズ102)と透明低屈折率物質106との屈折率差により斜辺にて全反射され、所定の角度をもって観察者側に出光される。映像光源側から単位レンズ102の端部付近に角度をもって入射した光L13は、斜辺にて全反射され、入射時とは反対方向にさらに大きな角度をもって観察者側に出光される。斜辺に所定以上の大きな角度をもって入射する迷光L14aは、高屈折率部(単位レンズ102)と低屈折率物質106との屈折率差によっても反射されることなくレンズ間部分107の内部に入光して、光吸収粒子105に吸収され、観察者側に至ることはない。また、観察者側からレンズ間部分107に入光した迷光L14bは、光吸収粒子に吸収されるので、観察者側に反射光となって、出光されることがない。このようにして水平方向に広い視野角をもち、コントラスト、輝度の高い光拡散シートS1を得ることができる。
図2は、本発明の第二実施形態の光拡散シートS2を示している。この光拡散シートS2も、観察者側から映像光源方向に順に、拡散剤入りシート101、単位レンズ102、ベースシート103が張り合わされて配置されている。単位レンズ102は高屈折率N1を有する物質により形成されている。さらに、隣接する単位レンズ102、の斜辺には、N1より小さな屈折率N2を備え透明な物質により形成された層104(以下「透明低屈折率層104」という。)が形成されている。また隣接する単位レンズ102の間に挟まれた断面形状三角形の部分は、N2より高い屈折率を有する物質108中に光吸収粒子105が添加された材料で埋められている。以後の説明においてはこの断面形状三角形の部分を「レンズ間部分109」という。
高屈折率部(単位レンズ102)の屈折率N1と、透明低屈折率層104の屈折率N2との比は、光拡散シートS2の光学特性を得るために所定の範囲に設定されている。また、透明低屈折率層104と高屈折率部(単位レンズ102)とが接する斜辺が、出光面の法線(当該光拡散シートS2に対する垂直入射光に平行である。)となす角度は所定の角度θに形成されている。これらについては後に詳述する。
高屈折率部(単位レンズ102)は通常、電離放射線硬化性を有するエポキシアクリレートなどの材料にて構成されている。また、透明低屈折率層104は、シリカ等透明樹脂の屈折率より低い屈折率を有する材料にて形成されている。光吸収粒子105は市販の着色樹脂微粒子が使用可能である。また、拡散剤入りシート101、及びベースシート103は、高屈折率部(単位レンズ102)と略同一の屈折率を有する材料にて構成されている。拡散剤入りシート101の観察者側には、反射防止層、ハードコート層、偏光フィルター層、帯電防止層、防眩処理層、防汚処理層、タッチセンサ層などの機能層が適宜設けられている。
次に光拡散シートS2の単位レンズ102内に入光した光の光路について、図2を参照しつつ簡単に説明する。なお、図2においても、光L11〜L14の光路は模式的に示されたものである。図2において、映像光源側から単位レンズ102の中央部付近に入射した垂直光L11は、そのまま光拡散シートS2の内部を直進して通過し、観察者に至る。
映像光源側から単位レンズ102の端部付近に入射した垂直光L12は、高屈折率部(単位レンズ102)と低屈折率部(透明低屈折率層104)との屈折率差により斜辺にて全反射され、所定の角度をもって観察者側に出光される。映像光源側から単位レンズ102の端部付近に角度をもって入射した光L13は、斜辺にて全反射され、入射時とは反対方向にさらに大きな角度をもって観察者側に出光される。斜辺に所定以上の大きな角度をもって入射する迷光L14aは、高屈折率部(単位レンズ102)と低屈折率部(透明低屈折率層104)との屈折率差によっても反射されることなく透明低屈折率層104の内部に入光する。迷光L14aはレンズ間部分109の光吸収粒子105に吸収され、観察者側に至ることはない。また、観察者側からレンズ間部分109に入光した迷光L14bも、光吸収粒子105に吸収され、観察者側に反射光となって、出光されることがない。このようにして水平方向に広い視野角をもち、コントラスト、輝度の高い光拡散シートS2を得ることができる。
次に、図3及び図4を参照しつつ光拡散シートの単位レンズ部に入射した光拡散シート内の光が斜辺にて全反射され、かつ出光面においては、全反射されずに観察者側に透過する条件について説明する。
図3は、光拡散シート内において第二実施形態の光拡散シートS2の斜辺に垂直光L15が入射した場合の光路を示す図である。図3においては、映像光源は図面上方に、観察者は図面下方に位置しているものとする。また拡散剤入りシート101、及びベースシート103は説明の簡略化のため省略している(以下図4及び図5において同じ。)。
図3において、斜辺に入射した垂直光L15が、斜辺のA点において全反射され始める条件(臨界条件)は、スネルの法則により、
sin(90°−θ)=N2/N1
であるから、垂直光L15が常に全反射されるためには、
(式1) sin(90°−θ)>N2/N1
なる条件を満たす必要がある。
また、斜辺のA点にて反射された光L15が、出光面のB点において全反射され始める条件(臨界条件)は、大気の屈折率を1とした場合、スネルの法則により、sin2θ=1/N1
であるから、光L15がB点から観察者側に確実に出光されるためには、
(式2) sin2θ<1/N1
なる条件を満たす必要がある。
なお参考のために図4を参照しつつ、光拡散シートS2の斜辺に10°の傾きを持った光L16が入射した場合の光路について以下に簡単に説明する。
図4において、斜辺に入射した10°の傾きを持つ光L16が、斜辺のA点において全反射され始める条件(臨界条件)は、スネルの法則により、
sin(80°−θ)=N2/N1
であるから、10°の傾きを持った光L16が常に全反射されるためには、
(式3) sin(80°−θ)>N2/N1
なる条件を満たす必要がある。
また、斜辺のA点にて反射された光L16が、出光面のB点において全反射され始める条件(臨界条件)は、大気の屈折率を1とした場合、スネルの法則により、sin(2θ+10°)=1/N1
であるから、光L16がB点から観察者側に確実に出光されるためには、
sin(2θ+10°)<1/N1
すなわち
(式4) N1<1/sin(2θ+10°)
なる条件を満たす必要がある。
次に、図5を参照しつつ光拡散シートS2の斜辺にて反射された光が、隣接する斜辺に到達しない条件について説明する。この条件を見出すためには、出光面法線に対して最も大きな角度(現実的には10°)を持つ入射光L17が、低屈折率部(透明低屈折率層104)がなす三角形の頂点付近の斜辺上の点Cにて全反射された場合に、その反射光が隣接する斜辺に到達しないように、三角形の高さHと単位レンズの上底の長さTとの関係を定めればよい。
図5において、三角形の底辺の長さを2Sとすれば、
tanθ=S/H
tan(2θ+10°)=(S+T)/H
したがって、
H=T/(tan(2θ+10°)−tanθ)
Hが上記値より小であれば、反射光が隣接する斜辺に到達しない。したがってその条件は、
(式5) H<T/(tan(2θ+10°)−tanθ)
で表される。
次にθが5°〜15°であるとして、その範囲においてさらに具体的にN1とN2の値を考察する。5°<θ<15°の範囲においては、
sin(90°−θ)<0.996
であり、式1により、N2/N1の値はこれより小さいから
(式6) N2/N1<0.996
一方、5°<θ<15°の範囲では、
1/sin2θ<5.76
であるから、式2より、
(式7) N1<5.76
さらに、入手しうる現実の材料を考慮した場合、N2の最小値は1.30なので、
N2/N1>1.30/5.76=0.23
したがって上式と式6から
(式8) 0.23<N2/N1<0.996
上記式7及び式8が5°<θ<15°の範囲での、N1及びN2の値がとりうる条件である。
また、式5においては、θ=15°の時にHに対する条件が決定され、
H<T/0.57
となる。
図6は、レンズ間部分107又は109の形状の諸態様を示す図である。このレンズ間部分107又は109は、隣接する二つの単位レンズ102、102の斜辺により形成される略三角形の形状を基礎としている。図6(a)は、斜辺が直線にて形成されている場合を表している。この場合には、斜辺と出光面法線とがなす角度θ1は斜辺上のどの点においても一定である。図6(b)は、斜辺が滑らかな曲線で形成されている場合を表している。また図6(c)は、斜辺が2本の直線にて構成されている場合を示している。これらの場合、斜辺と出光面法線とがなす角度θ2、又はθ3若しくはθ4は、斜辺上の位置により異なる。本発明において図6(b)や図6(c)の場合のように斜辺と出光面法線のなす角度が一定でないときは、斜辺の長さの90%以上において、以上に説明してきた式1〜8の各条件を満たせば本発明の効果を得ることができる。
図7及び図8は、第二実施形態の光拡散シートS2の構成の一例を示す図である。図7に示される光拡散シートは水平断面形状が垂直方向に一定な単位レンズ102を備えている。隣接する単位レンズ102、102の間には、透明低屈折率層104を介して、レンズ間部分109に光吸収粒子105が添加された樹脂材料108が充填されている。出光面側には拡散剤入りシート101が、入光面側にはベースシート103が配置されている。図面では理解のためにこれら三者が離れて表されているが、実際にはこれらは貼り合わされている。
一方、図8に示されている光拡散シートにおいては、半載円錐状の単位レンズが垂直平面上に二次元状に配列されている。各単位レンズの半載円錐の頂部平面は同一面上に形成されており、この平面に拡散剤入りシート101が貼り合わされている。隣接する単位レンズ102、102との間の空隙は透明低屈折率層104を介してレンズ間部分109に光吸収粒子105が添加された樹脂材料108が充填されている。図7及び図8のいずれに示されている光拡散シートの構成によっても本発明による効果を得ることができる。
図8では上下左右の2方向へレンズによって拡散させることができる。さらに、一次元の光拡散シート又はフィルムを2枚直交させて配置しても図8と同様な効果のある二次元の光拡散シート又はフィルムとすることができる。
図9は、第二実施形態の光拡散シートS2において、単位レンズ102の出光面(断面形状台形の上底に相当する部分)が観者側に凸に形成されている例を示す図である。このような構成をとることにより製造工程において、先に単位レンズ102の部分を形成して、その後レンズ間部分107に光吸収粒子105を添加した材料108を充填する工程をとる場合、充填後にブレードにて出光面に残った光吸収粒子105を完全に取り去ることができる。
次に図10及び図11を参照しつつ第一及び第二実施形態の光拡散シートの製造方法について説明する。図10は第一実施形態の光拡散シートS1、図11は第二実施形態の光拡散シートS2の製造方法をそれぞれ示すものである。
この製造方法に使用される製造装置は、型ロール110と、ミラーロール120と、ベースフィルム供給ロール116と、補助ロール群119、122、124と、電離放射線硬化型樹脂を供給するフィーダー112、115、121と、電離放射線照射機114、118、123とを備えている。さらに第二実施形態にかかる製造装置は透明低屈折率層を形成する物質の蒸着装置125を備えている。
図10の第一実施形態にかかる光拡散シートS1の製造装置において、所定の速度で回転する型ロール110の表面にはレンズ間部分107を構成する断面形状三角形の部分に対応する雌型が彫られている。黒色粒子(光吸収粒子)が添加され、所定温度に加温された低屈折率樹脂が樹脂フィーダー112から型ロール110上に供給され、三角形の凹部に充填される。余剰の樹脂をドクターブレード113にて掻き落とした後、電離放射線照射機114にて電離放射線をロール表面に照射して、黒色粒子入り低屈折率樹脂を硬化させる。次いでフィーダー115から透明樹脂をロール幅のほぼ全長にわたって供給し型ロール110の表面に透明樹脂層を形成する。さらにその上面にベースフィルム117を、供給ロール116から巻き出して形成したのち、再び電離放射線照射機118にて電離放射線を照射して、透明樹脂を硬化させる。そして補助ロール119により折り返してミラーロール120へと供給する。この折り返しの工程により、型ロール110の表面凹部に形成されていた断面形状三角形の黒色粒子入り低屈折率部は、ロール表面から剥離される。この時点では、E点拡大図で示されるように、ベースフィルム上に透明樹脂層が形成され、さらに透明樹脂層の上面に黒色粒子入り低屈折率樹脂が断面三角形に形成されている。
ミラーロール120側では、あらかじめロール表面に単位レンズを構成する高屈折率樹脂がフィーダー121から供給されて、硬化前のやわらかい状態で高屈折率樹脂層が形成されている。この高屈折率樹脂層と型ロール110から供給されてきた中間製品とがミラーロール120と補助ロール122とにより圧着される。柔らかな高屈折率樹脂は圧着されることにより透明低屈折率層が形成される断面形状台形の谷間に隙間なく入り込む。さらにミラーロール120の表面に電離放射線照射機123にて電離放射線を照射して、高屈折率樹脂を硬化させる。そして補助ロール124により反対方向に折り返して、硬化した高屈折率樹脂をミラーロール120から剥離する。この時点では、F点拡大図に示されるように、断面形状三角形の透明低屈折率層の上面に断面形状が台形の高屈折率樹脂層にて形成された単位レンズ群が形成されている。その後このシートは巻き取り機へと送られロール状に巻き取られる。
図11の第二実施形態にかかる光拡散シートS2の製造装置においては、樹脂フィーダー112から供給されるのは黒色粒子が混入された透明高屈折率樹脂(単位レンズ部と同程度の屈折率)である。またこの製造工程においてはE点通過後のライン状に蒸着装置125が設けられている。蒸着装置125においては、黒色粒子入り透明高屈折率樹脂の上方から、透明低屈折率物質を蒸着して、透明低屈折率層104を形成する(F点拡大図参照)。その他の構成は図10に示されている光拡散シートS1の製造装置と同様である。
なお、上記工程は、型ロール110にて断面形状三角形のレンズ間部分107又は109を形成するものであるが、型ロール110により断面形状台形の高屈折率部(単位レンズ102)を先に形成して、ミラーロール120側のフィーダー121からレンズ間部分107又は109を形成する黒色粒子入り高屈折率樹脂、又は黒色粒子入り透明低屈折率樹脂を供給するように構成してもよい。
単位レンズを構成する高屈折率部(単位にレンズ102、台形部分)の材料としてエポキシアクリレート、レンズ間部分107の透明低屈折率樹脂としてウレタンアクリレート、光吸収粒子として、大日精化工業(株)製「ラブコロール」(登録商標)を使用した。
「ラブコロール」の平均粒径は8μmで、添加量を50質量%とした。
高屈折率部(単位レンズ102)の屈折率は1.57、レンズ間部分107の屈折率は1.48であった。このように構成したシートの入光側にフレネルレンズシートを、観察者側には拡散板を配置した。拡散板は、アクリル製三層構造で、中間層に拡散剤を混入したものを使用した。高屈折率部のレンズピッチは50μmとした。また、高屈折率部(単位レンズ102)の台形部分の上底長さと、低屈折率部の三角形底辺の長さを等しくなるようにし、いわゆるブラックストライプ率が50%となるようにした。さらに頂角θを10°に設定した。
このように構成した光拡散シートは、透過率が80%、反射率が5%、ゲインが4であった。また、垂直視野角(半値角:ある方向から観視したときの輝度が正面から観視したときの半分になる角度)は12゜、水平視野角(半値角)は25゜であった。
(第三実施形態及び第四実施形態)
図12及び図13は、本発明の第三及び第四実施形態の光拡散シートS3及びS4の水平断面を示す図である。これらの図においては、図面右側に映像光源が配置され、図面の左側に観察者が位置している。
図12は、本発明の第三実施形態の光拡散シートS3を示している。この光拡散シートS3は、観察者側から映像光源方向に順に、拡散剤入りシート201、単位レンズ202、ベースシート203が張り合わされて配置され、さらにベースシート203の映像光源側の面にはエンボス加工が施され、エンボス部Eが形成されている。単位レンズ202は高屈折率N1を有する物質により形成されている。さらに、隣接する単位レンズ202、202にはさまれた断面形状三角形の部分(以下において「レンズ間部分207」という。)には、N1より小さな屈折率N2を備えた透明な物質(以下において「透明低屈折率物質206」という。)中に光吸収粒子205が添加された材料で埋められている。またエンボス部Eは屈折率N3を有する物質にて形成されている。
本実施形態においては、高屈折率部(単位レンズ202)の屈折率N1と、透明低屈折率物質206の屈折率N2と、エンボス部Eの形状及び屈折率N3は、光拡散シートS3の光学特性を得るために所定の関係を有するように設定されている。また、レンズ間部分207と高屈折率部(単位レンズ202)とが接する斜辺が、出光面の法線(当該光拡散シートS3に対する垂直入射光に平行である。)となす角度は所定の角度θに形成されている。
高屈折率部(単位レンズ202)は通常、電離放射線硬化性を有するエポキシアクリレートなどの材料にて構成されている。また、透明低屈折率物質206として通常、電離放射線硬化性を有するウレタンアクリレートなどの材料が使用されている。光吸収粒子205は市販の着色樹脂微粒子が使用可能である。また、拡散剤入りシート201、及びベースシート203は、高屈折率部(単位レンズ202)と略同一の屈折率を有する材料にて構成されている。拡散剤入りシート201の観察者側には、反射防止層、ハードコート層、偏光フィルター層、帯電防止層、防眩処理層、防汚処理層、タッチセンサ層などの機能層が適宜設けられている。
次に光拡散シートS3の単位レンズ202内に入光した光の光路について、図12を参照しつつ簡単に説明する。なお、図12において、光L21〜L24の光路は模式的に示されたものである。いま、図12において、映像光源側から単位レンズ202の中央部付近に入射した垂直映像光L21は、そのまま光拡散シートS3の内部を直進して通過し、観察者に至る。映像光源側から単位レンズ202の端部付近に入射した垂直映像光L22は、高屈折率部(単位レンズ202)と透明低屈折率物質206との屈折率差により斜辺にて全反射され、所定の角度をもって観察者側に出光される。映像光源側から単位レンズ202の端部付近に角度をもって入射した映像光L23は、斜辺にて全反射され、入射時とは反対方向にさらに大きな角度をもって観察者側に出光される。斜辺に所定以上の大きな角度をもって入射する迷光L24aは、高屈折率部(単位レンズ202)と低屈折率物質206との屈折率差によっても反射されることなくレンズ間部分207の内部に入光して、光吸収粒子205に吸収され、観察者側に至ることはない。また、観察者側(出光面側)からレンズ間部分207に入光した迷光L24bは、光吸収粒子に吸収されるので、観察者側に反射光となって、出光されることがない。さらに観察者側から垂直に単位レンズ202の出光面開口方向に入射した光L24cは拡散剤入りシート201、単位レンズ202、及びベースシート203を透過後、エンボス部Eの映像光源側内面にて反射され、比較的大きな角度を持って、レンズ間部分207に達する。したがってこの光はレンズ間部分207表面では反射されることなく、レンズ間部分207に入光し、光吸収粒子205により吸収される。このようにして水平方向に広い視野角をもち、コントラスト、輝度の高い光拡散シートS3を得ることができる。
図13は、本発明の第四実施形態の光拡散シートS4を示している。この光拡散シートS4も、観察者側から映像光源方向に順に、拡散剤入りシート201、単位レンズ202、ベースシート203が張り合わされて配置され、さらにベースシート203の映像光源側の面にはエンボス加工が施され、エンボス部Eが形成されている。単位レンズ202は高屈折率N1を有する物質により形成されている。さらに、隣接する単位レンズ202、202、の斜辺には、N1より小さな屈折率N2を備え透明な物質により形成された層204(以下「透明低屈折率層204」という。)が形成されている。また隣接する単位レンズ202の間に挟まれた断面形状三角形の部分は、N2より高い屈折率を有する物質208中に光吸収粒子205が添加された材料で埋められている。以後の説明においてはこの断面形状三角形の部分を「レンズ間部分209」という。エンボス部Eは屈折率N3を有する物質にて形成されている。
高屈折率部(単位レンズ202)の屈折率N1と、透明低屈折率層204の屈折率N2と、エンボス部Eの形状及び屈折率N3は、光拡散シートS4の光学特性を得るために所定の関係を有するように設定されている。また、透明低屈折率層204と高屈折率部(単位レンズ202)とが接する斜辺が、出光面の法線(当該光拡散シートS4に対する垂直入射光に平行である。)となす角度は所定の角度θに形成されている。これらについては後に詳述する。
高屈折率部(単位レンズ202)は通常、電離放射線硬化性を有するエポキシアクリレートなどの材料にて構成されている。また、透明低屈折率層204は、シリカ等透明樹脂の屈折率より低い屈折率を有する材料にて形成されている。光吸収粒子205は市販の着色樹脂微粒子が使用可能である。また、拡散剤入りシート201、及びベースシート203は、高屈折率部(単位レンズ202)と略同一の屈折率を有する材料にて構成されている。拡散剤入りシート201の観察者側には、反射防止層、ハードコート層、偏光フィルター層、帯電防止層、防眩処理層、防汚処理層、タッチセンサ層などの機能層が適宜設けられている。
次に光拡散シートS4の単位レンズ202内に入光した光の光路について、図13を参照しつつ簡単に説明する。なお、図13においても、光L21〜L24の光路は模式的に示されたものである。図13において、映像光源側から単位レンズ202の中央部付近に入射した垂直映像光L21は、そのまま光拡散シートS4の内部を直進して通過し、観察者に至る。
映像光源側から単位レンズ202の端部付近に入射した垂直映像光L22は、
高屈折率部(単位レンズ202)と透明低屈折率層204との屈折率差により斜辺にて全反射され、所定の角度をもって観察者側に出光される。映像光源側から単位レンズ202の端部付近に角度をもって入射した映像光L23は、斜辺にて全反射され、入射時とは反対方向にさらに大きな角度をもって観察者側に出光される。斜辺に所定以上の大きな角度をもって入射する迷光L24aは、高屈折率部(単位レンズ202)と低屈折率部(透明低屈折率層204)との屈折率差によっても反射されることなく透明低屈折率層204の内部に入光する。迷光L24aはレンズ間部分209の光吸収粒子205に吸収され、観察者側に至ることはない。また、観察者側からレンズ間部分209に入光した迷光L24bも、光吸収粒子205に吸収され、観察者側に反射光となって、出光されることがない。さらに観察者側から垂直に単位レンズの出光面開口方向入射した光L24cは拡散剤入りシート201、単位レンズ202、及びベースシート203を透過後エンボス部Eの映像光源側内面にて反射され、比較的大きな角度を持って、レンズ間部分207に達する。したがってこの光はレンズ間部分207表面では反射されることなく、レンズ間部分207に入光し、光吸収粒子205により吸収される。このようにして水平方向に広い視野角をもち、コントラスト、輝度の高い光拡散シートS4を得ることができる。
なお、図12及び図13においては、光拡散シ−トS3、S4の入光面側にベースシート203が配置されている構成を示したが、これを取り除いても同様な光学的効果を得ることができる。
また、図12において、光拡散シ−トS3、のレンズ間部分207には低屈折率透明物質に光吸収粒子が添加された例を示したが、これに代えてレンズ間部分207に着色した低屈折率物質を充填する構成をとっても同様の効果を得ることができる。
同様に、図13において、光拡散シ−トS4、のレンズ間部分209には高屈折率透明物質に光吸収粒子が添加された例を示したが、これに代えてレンズ間部分209に着色した高屈折率物質を充填する構成をとっても同様の効果を得ることができる。
なお、第一実施形態及び第二実施形態において、図3〜図5についてした説明は、第三実施形態及び第四実施形態にも適用される。
次に図14を参照しつつ、出光面側から光拡散シートに垂直に入射しエンボス部Eにて反射された光L28が、レンズ間部分207により吸収される条件について説明する。図14においては、図面左側が観察者側、図面右側が映像光源側として表されている。なお、説明のためにエンボス部Eが誇張して描かれており、拡散剤入りシート201及びベースシート203は省略されている。
出光面側から光拡散シートS3内に入射した垂直光L28は、エンボス部Eの映像光源側内面のA点にて反射され、エンボス部Eと単位レンズ202との界面を点Bで横切り、点Cでレンズ間部分207に達している。ここにエンボス部断面が単位レンズ202との界面となす角度をφ、反射された光L28が光拡散シート内にて出光面法線となす角度をαとする。A点において反射された光L28がエンボス部内B点において出光面法線となす角度は2φであるから、スネルの法則により、
(式9) N1sinα=N3sin2φ
が成り立つ。また、C点において、光L28がレンズ間部分207の斜面の法線となす角度βは
(90°−α−θ)であるから、C点において、臨界条件下におけるスネルの法則は、
N2sin90°=N1sinβ
にて表される。すなわち
(式10) N2=N1sin(90°−α−θ)
式9及び10から
(式11) sin(90°−(sin−1(N3 * sin(2φ)/N1+θ)))=N2/N1
したがって、光L28がレンズ間部分207に入射し得る条件は、
(式12) sin(90°−(sin−1(N3 * sin(2φ)/N1+θ)))<N2/N1
にて表される。
式12の条件を満たすエンボス部Eの面積が多いほど、出光面側から入射した外光がレンズ間部分207の光吸収粒子205により吸収される割合が多くなる。この結果、光拡散シートのコントラストを高くすることができる。本願発明者の知見によれば、このような条件を満たすエンボス部Eの面積を、入光面全体の面積の20%以上とすれば、良好なコントラストを備えた光拡散シートを得ることができることが判明している。
次に図15を参照しつつ、映像光源側から光拡散シートに対して垂直な角度をもってエンボス部Eに入射した光L29(映像光)が、レンズ間部分207により吸収される条件について説明する。図15においても、図面左側が観察者側、図面右側が映像光源側として表されている。なお、ここではエンボス部Eはランダムなマット形状に誇張されて描かれており、拡散剤入りシート201及びベースシート203は省略されている。なお、参考までに、映像光源側から垂直な角度をもってエンボス部Eに入射し、レンズ間部分207により完全に反射される光L29Rも点線にて示されている。
映像光源側からエンボス部Eに入射した垂直光L29は、エンボス部Eの映像光源側のP点にて屈折され、エンボス部Eと単位レンズ202との界面を点Qで横切る。さらに点Qにおいて屈折されて単位レンズ202に入射し、点Rでレンズ間部分207に達している。ここに垂直光L29が侵入する位置におけるエンボス部断面の接線が単位レンズ202との界面となす角度をφ、エンボス部E内において、光L29がエンボス斜面の法線となす角度をγ、単位レンズ202との界面の法線となす角度をδ、単位レンズ202内で光L29がレンズ間部分207の斜面の法線となす角度をμとする。また、P、Q、Rの各点を通過する3つの法線の交点をそれぞれS、Uとし、エンボス部断面斜面とレンズ間部分との界面との交点をTとする。
いま四角形PSQTにおいて、
∠PSQ=360°−90°* 2−φ=180°−φ
したがって
(式13) δ=180°−γ−∠PSQ=φ−γ
P点においてスネルの法則が成り立つので
(式14) sinφ=N3sinγ
Q点においてもスネルの法則が成り立つので
(式15) N3sinδ=N1sinλ
一方、三角形RUQにおいて、
∠RUQ=90°+θ
だから、
(式16) μ=90°−λ−θ
さらにR点において、臨界条件におけるスネルの法則により、
(式17) N2=N1sinμ
したがって式13〜17から、
sin(90°−(sin−1(N3/N1) * sin(φ−sin−1(sinφ/N3)))+θ)=N2/N1
よって、光L29がレンズ間部分207の光吸収粒子に吸収される条件は、
(式18) sin(90°−(sin−1(N3/N1) * sin(φ−sin−1(sinφ/N3)))+θ)<N2/N1
にて表される。
式18の条件を満たすエンボス部Eの面積が少ないほど、映像光はレンズ間部分207の光吸収粒子205に吸収されることなく観察者側に達する割合が多くなる。この結果、透過率の高い光拡散シートを得ることができる。本願発明者の知見によれば、式18の条件を満たすエンボス部Eの面積が入光面全体の面積の20%以下であれば良好な透過率が得られることが判明している。
なお、第一実施形態及び第二実施形態に関して図6についてした説明は、第三実施形態及び第四実施形態にも適用される。
なお、本願発明者の知見によれば、エンボス部のピッチは、出光面側単位レンズのピッチの1/1.5以下であること、さらに好ましくは1/4.5以下であることが望ましい。エンボス部のピッチをこのように設定することにより、上記した光学的特性を十分に発揮させることができ、さらにモアレの発生を回避することもできる。
図16及び図17は、第四実施形態にかかる光拡散シートS4の構成の一例を示す図である。図16に示される光拡散シートは水平断面形状が垂直方向に一定な単位レンズ202を備えている。隣接する単位レンズ202、202の間には、透明低屈折率層204を介して、レンズ間部分209に光吸収粒子205が添加された樹脂材料208が充填されている。出光面側には拡散剤入りシート201が、入光面側にはベースシート203が配置され、ベースシート203の映像光源側にはエンボス部Eが形成されている。図面では理解のためにこれら三者が離れて表されているが、実際にはこれらは貼り合わされている。
一方、図17に示されている光拡散シートにおいては、半載円錐状の単位レンズが垂直平面上に二次元状に配列されている。各単位レンズの半載円錐の頂部平面は同一面上に形成されており、この平面に拡散剤入りシート201が貼り合わされている。隣接する単位レンズ202、202との間の空隙は透明低屈折率層204を介してレンズ間部分209に光吸収粒子205が添加された樹脂材料208が充填されている。図16及び図17のいずれに示されている光拡散シートの構成によっても本発明による効果を得ることができる。
図18は、第四実施形態の光拡散シートS4において、単位レンズ202の出光面(断面形状台形の上底に相当する部分)が観者側に凸に形成されている例を示す図である。このような構成をとることにより製造工程において、先に単位レンズ202の部分を形成して、その後レンズ間部分209に光吸収粒子205を添加した材料208を充填する工程をとる場合、充填後にブレードにて出光面に残った光吸収粒子205を完全に取り去ることができる。
図19は、エンボス部Eの断面形状の例を示すものである。これらの図からも明らかなようにエンボス部Eの断面形状は、三角形(図19(a)のE1参照)でもよく、楕円形の一部(図19(b)のE2参照)であってもよく、また多角形の一部(図19(c)のE3参照)であってもよい。さらに図19(d)に示されるように、各エンボス部E4の断面形状は台形で、それぞれのエンボス部が離れて形成されていてもよい。
次に図20及び図21を参照しつつ第三及び第四実施形態の光拡散シートの製造方法について説明する。図20は第三実施形態の光拡散シートS3、図21は第四実施形態の光拡散シートS4の製造方法をそれぞれ示すものである。
この製造方法に使用される製造装置は、型ロール210と、エンボスロール220と、ベースフィルム供給ロール216と、補助ロール群219、222、224と、電離放射線硬化型樹脂を供給するフィーダー212、215、221と、電離放射線照射機214、218、223とを備えている。さらに第三実施形態にかかる製造装置は透明低屈折率層を形成する物質の蒸着装置225を備えている。
図20の第三実施形態にかかる光拡散シートS3の製造装置において、所定の速度で回転する型ロール210の表面にはレンズ間部分207を構成する断面形状三角形の部分に対応する雌型が彫られている。黒色粒子(光吸収粒子)が添加され、所定温度に加温された低屈折率樹脂が樹脂フィーダー212から型ロール210上に供給され、三角形の凹部に充填される。余剰の樹脂をドクターブレード213にて掻き落とした後、電離放射線照射機214にて電離放射線をロール表面に照射して、黒色粒子入り低屈折率樹脂を硬化させる。次いでフィーダー215から透明樹脂をロール幅のほぼ全長にわたって供給し型ロール210の表面に透明樹脂層を形成する。さらにその上面にベースフィルム217を、供給ロール216から巻き出して形成したのち、再び電離放射線照射機218にて電離放射線を照射して、透明樹脂を硬化させる。そして補助ロール219により折り返してエンボスロール220へと供給する。この折り返しの工程により、型ロール210の表面凹部に形成されていた断面形状三角形の黒色粒子入り低屈折率部は、ロール表面から剥離される。この時点では、E点拡大図で示されるように、ベースフィルム上に透明樹脂層が形成され、さらに透明樹脂層の上面に黒色粒子入り低屈折率樹脂が断面三角形に形成されている。
エンボスロール220側では、あらかじめエンボスのメス型が形成されたロール表面に単位レンズを構成する高屈折率樹脂がフィーダー221から供給されて、硬化前のやわらかい状態で高屈折率樹脂層が形成されている。この高屈折率樹脂層と型ロール210から供給されてきた中間製品とがエンボスロール220と補助ロール222とにより圧着される。柔らかな高屈折率樹脂は圧着されることにより透明低屈折率層が形成する断面形状台形の谷間に隙間なく入り込む。さらにエンボスロール220の表面に電離放射線照射機223にて電離放射線を照射して、高屈折率樹脂を硬化させる。そして補助ロール224により反対方向に折り返して、硬化した高屈折率樹脂をエンボスロール220から剥離する。この時点では、F点拡大図に示されるように、断面形状三角形の透明低屈折率層の上面に断面形状が台形の高屈折率樹脂層にて形成された単位レンズ群が形成されている。また単位レンズの上面にはエンボス部が形成されている。その後このシートは巻き取り機へと送られロール状に巻き取られる。
図21の第四実施形態にかかる光拡散シートS4の製造装置においては、樹脂フィーダー212から供給されるのは黒色粒子が混入された透明高屈折率樹脂(単位レンズ部と同程度の屈折率)である。またこの製造工程においてはE点通過後のライン状に蒸着装置225が設けられている。蒸着装置225においては、黒色粒子入り透明高屈折率樹脂の上方から、透明低屈折率物質を蒸着して、透明低屈折率層204を形成する(F点拡大図参照)。その他の構成は図20に示されている光拡散シートS3の製造装置と同様である。
単位レンズを構成する高屈折率部(単位レンズ202、台形部分)の材料としてエポキシアクリレート、レンズ間部分207の透明低屈折率樹脂としてウレタンアクリレート、光吸収粒子として、大日精化工業(株)製「ラブコロール」(登録商標)を使用した。「ラブコロール」の平均粒径は8μmで、添加量を41質量%とした。
高屈折率部(単位レンズ202)の屈折率は1.55、レンズ間部分207の屈折率は1.48であった。このように構成したシートの入光側にフレネルレンズシートを、観察者側には拡散板を配置した。拡散板は、アクリル製三層構造で、中間層に拡散剤を混入したものを使用した。高屈折率部(単位レンズ202)のレンズピッチは50μmとした。また、高屈折率部(単位レンズ202)の台形部分の上底長さと、低屈折率部の三角形底辺の長さを等しくなるようにし、いわゆるブラックストライプ率が50%となるようにした。さらに頂角θを10°に、エンボス部Eのピッチ6μm、断面形状を頂角160°の二等辺三角形に設定した(図19(a)参照)。
このように構成した光拡散シートは、透過率が85%、反射率が5%、ゲインが4であった。また、垂直視野角(半値角:ある方向から観視したときの輝度が正面から観視したときの半分になる角度)は12゜、水平視野角(半値角)は30゜であった。
また、エンボス部Eによって映像光は約5°の拡散角となり、シート内部では、約3°の角度となった。スクリーンに垂直に入射した外光のうち、エンボス部映像光源側内面での反射光は、約20度の角度を持って反射され、ブラックストライプ部に到達して吸収された。
単位レンズ202を構成する高屈折率部(台形部分)の材料としてエポキシアクリレート、レンズ間部分207の透明低屈折率樹脂としてウレタンアクリレート、光吸収粒子として、大日精化工業(株)製「ラブコロール」(登録商標)を使用した。「ラブコロール」の平均粒径は5μmで、添加量を41質量%とした。
高屈折率部(単位レンズ202)の屈折率は1.55、レンズ間部分207の屈折率は1.48であった。このように構成したシートの入光側にフレネルレンズシートを、観察者側には拡散板を配置した。拡散板は、アクリル製単層構造で、拡散剤を混入したものを使用した。高屈折率部のレンズピッチは60μmとした。また、高屈折率部(単位レンズ202)の台形部分の上底長さと、低屈折率部の三角形底辺の長さをブラックストライプ率が45%となるように調製した。さらにレンズ間部分207の斜辺が出光面法線となす角度を観察者側で10°、映像光源側で8°に設定した。また、エンボス部Eは、底角10°の等脚台形断面形状とし(図19(d)参照)、ピッチ7μm、頂部は1μm長さの平坦部とした。
このように構成した光拡散シートは、透過率が83%、反射率が5.2%、ゲインが4.5であった。また、垂直視野角(半値角)は12゜、水平視野角(半値角)は25゜であった。
[比較例1]
実施例2の光拡散シートで、エンボス部Eを省略して評価した。このように構成した光拡散シートは、透過率が84%、反射率が7.5%、ゲインが2.7であった。また、垂直視野角(半値角)は15゜、水平視野角(半値角)は30゜であった。
以上の結果から、エンボス部Eがない場合には、拡散剤入りシート201の拡散量を多くとるように構成しないと、水平拡散の特性が維持できないことが判明した。
図22は、本発明にかかる二次元視野拡大部材を備えた表示装置の構成を示している。図22において、紙面手前左下方向が観察者側であり、紙面奥側右上方向を映像光源側とする。本発明の表示装置は、観察者側から順に、反射防止、ハードコート、偏光フィルター、帯電防止、防眩処理、防汚処理、タッチセンサのうち少なくとも一つの機能を備えた機能性シート301と、単位レンズが垂直方向に配列された光拡散シート302と、単位レンズが水平方向に配列された光拡散シート303と、フレネルレンズ304と、液晶ディスプレイパネル305とを備えている。なお、光拡散シート302と、光拡散シート303の配置を入れ替えてもよい。図22においてはこれらが互いに離れて表されているが、これは図面の理解のためであり、実際にはこれらは互いに接するか、または接着されている。
また本発明において、「二次元視野角拡大部材」とは、2枚の光拡散シート3
02、303の組み合わせを構成の中核とするが、図22にあるように、これらの出光側に機能性シート301や、入光側にフレネルレンズ304などが配置されている場合には、これら機能性シート301やフレネルレンズ304をも含む概念である。
第一実施形態の光拡散シートの断面を示す図である。
第二実施形態の光拡散シートの断面を示す図である。
光拡散シートに垂直光が入射した場合の光路を示す図である。
光拡散シートに10°の傾きを持った光が入射した場合の光路を示す図である。
光拡散シートに10°の傾きを持った光が、低屈折率部がなす三角形の頂点付近に入射した場合の光路を示す図である。
低屈折率部の形状の諸態様を示す図である。
光拡散シートの構成の一例を示す図である。
光拡散シートの構成の、他の一例を示す図である。
第二実施形態の光拡散シートの、一変形例の断面を示す図である。
第一実施形態の光拡散シートの、製造方法の一例を示す図である。
第二実施形態の光拡散シートの、製造方法の一例を示す図である。
第三実施形態の光拡散シートの断面を示す図である。
第四実施形態の光拡散シートの断面を示す図である。
出光面側から垂直に入射した光がエンボス部で反射され、さらにレンズ間部分に達して吸収される条件を示す図である。
入光面側から垂直に入射した映像光が、レンズ間部分において吸収される条件を示す図である。
光拡散シートの構成の一例を示す図である。
光拡散シートの構成の、他の一例を示す図である。
第四実施形態の光拡散シートの、一変形例の断面を示す図である。
エンボス部の断面形状の例を示す図である。
第三実施形態の光拡散シートの、製造方法の一例を示す図である。
第四実施形態の光拡散シートの、製造方法の一例を示す図である。
二次元視野角拡大部材の構成の一例を示す図である。
符号の説明
S1 光拡散シート
S2 光拡散シート
101 拡散剤入りシート
102 単位レンズ
103 ベースシート(透明基材)
104 透明低屈折率層
105 光吸収粒子
106 低屈折率物質
107 レンズ間部分
108 高屈折率樹脂
109 レンズ間部分
S3 光拡散シート
S4 光拡散シート
201 拡散剤入りシート
202 単位レンズ
203 ベースシート(透明基材)
204 透明低屈折率層
205 光吸収粒子
206 低屈折率物質
207 レンズ間部分
208 高屈折率樹脂
209 レンズ間部分
302 光拡散シート
303 光拡散シート
305 液晶ディスプレイパネル