JP2008088527A - コンロッド及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐焼割れ性の改善による連接部の高強度化と、大端部破断時の変形量低減を両立させることができ、破断分離工法が適用可能な、軽量かつ高強度のコンロッドと、その製造方法を提供する。
【解決手段】大端部Mと、小端部Sと、これらの間を連結する連接部Iを備え、大端部Mを破断、分離するコンロッドにおいて、0.2〜0.5質量%の炭素を含有する鋼から成るコンロッドの大端部Mにおける破断予定部Bに焼入れを施し、当該破断予定部における炭素含有量とマルテンサイト面積率の関係が次式(1)を満足するようにする。
炭素含有量(質量%)×マルテンサイト面積率(%)>10 ・・・ (1)
【選択図】図1
【解決手段】大端部Mと、小端部Sと、これらの間を連結する連接部Iを備え、大端部Mを破断、分離するコンロッドにおいて、0.2〜0.5質量%の炭素を含有する鋼から成るコンロッドの大端部Mにおける破断予定部Bに焼入れを施し、当該破断予定部における炭素含有量とマルテンサイト面積率の関係が次式(1)を満足するようにする。
炭素含有量(質量%)×マルテンサイト面積率(%)>10 ・・・ (1)
【選択図】図1
Description
本発明は、レシプロエンジンにおいて、ピストンの往復運動をクランクシャフトに伝達して回転運動に変換するコンロッド(連結棒)に係わり、特に座屈強度に優れ、かつ軽量な高強度コンロッドと、このような高強度コンロッドの製造方法に関するものである。
高強度コンロッドを製造するひとつの手法として、コンロッドの加工を施さない部位に焼入れを施し、焼入れ部位を高硬度化することによって座屈強度を向上させることが知られており、その場合の焼入れ手段として高周波を用いることが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
このようなコンロッドの製造法としては、従来、一体に成形された成形部品から機械加工によりロッドと大端部キャップとを切断分離するという方法を用いていたが、機械加工を用いるということは切り代として失われる部分がある上に、切断後の切削や研磨といった工程を必要とするために製造コストが高くなってしまう。
一方、コンロッドを軽量に、かつ安価に製造しようとする場合、熱間鍛造や焼結により部品形状に成形し、その後に衝撃を与えて大端部をロッドとキャップの2部品に破断・分離(かち割り)し、再度組付けることことにより使用する破断分離工法が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
このような破断分離工法をロッドとキャップの分離法として適用することによって、加工コストの削減が可能となるうえに、破面の凹凸によりロッド‐キャップ合わせ面の位置決め行うため、高い密着性を確保することができるようになり、この密着性を最大限に活用することで、コンロッドの大端部を軽量形状にすることが可能となる。
特開2005−59013号公報
特開2005−36310号公報
このような破断分離工法をロッドとキャップの分離法として適用することによって、加工コストの削減が可能となるうえに、破面の凹凸によりロッド‐キャップ合わせ面の位置決め行うため、高い密着性を確保することができるようになり、この密着性を最大限に活用することで、コンロッドの大端部を軽量形状にすることが可能となる。
しかしながら、上記した2つの方策により、コンロッドの高強度化と軽量化の両立を検討する場合、これら2つの方策の相反する要求課題により、その達成が困難となっている。
すなわち、コンロッドの高強度化のために、熱処理による高硬度化を適用する場合、熱処理時に発生する焼割れが問題となる。このような焼割れを抑制するためにはC量の低減が有効であり、コンロッドに適用する場合は強度を確保し得るできるだけ少ないCを含有した鋼材の使用が望ましい。
これに対して、コンロッドの大端部を破断分離する場合には、破断した両面を合わせることによって密着力を高めることから、いかに延性破壊を防止して大端部の変形を抑制するかが問題となる。つまり、破断時の変形量が大きいと、組付け時に破断面同士が一致しないために密着力が得られなかったり、エンジン組み付け時に発生するクリアランスが大きなものとなって異音や焼付き発生の要因となったりすることがある。
このような破断分離時の変形を抑制するには、材料を脆化する必要があり、高C化やPの添加が有効である。
このような破断分離時の変形を抑制するには、材料を脆化する必要があり、高C化やPの添加が有効である。
これらの理由から、焼割れ抑制を目的に成分調整した材料に対して破断分離工法を採用した場合には、大端部破断時の変形量が大きくなる一方、大端部の変形抑制を目的に成分を調整した材料においては焼割れが発生し易くなるために、耐焼割れ性と破断変形量の低減(かち割り性)とを両立させることができないという問題があった。
本発明は、破断分離工法を採用するコンロッドにおける上記課題に着目してなされたものであって、その目的とするところは、耐焼割れ性の改善による連接部の高強度化と大端部破断時の変形量低減(かち割り性の付与)とを両立させることができ、軽量かつ高強度のコンロッドと、その製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成すべく、鋭意検討を重ねた結果、耐焼割れ性に優れた低炭素材料を用い、大端部の破断部位に、炭素含有量に応じた焼入れを施して硬化させ、当該部位を脆化させることによって上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに到った。
すなわち、本発明は上記知見に基づくものであって、本発明のコンロッドは、大端部を破断して分離するコンロッドであって、質量比で0.2〜0.5%の炭素を含有すると共に、当該コンロッドにおける大端部の破断予定部における炭素含有量とマルテンサイト面積率の関係が、炭素含有量(質量%)×マルテンサイト面積率(%)>10を満たすように、大端部の破断予定部が焼入れされていることを特徴とする。
また、本発明のコンロッドの製造方法においては、当該コンロッドに焼入れを施すに際して、高周波焼入れによって行うことを特徴としている。
また、本発明のコンロッドの製造方法においては、当該コンロッドに焼入れを施すに際して、高周波焼入れによって行うことを特徴としている。
本発明によれば、0.2〜0.5質量%の炭素を含有し、大端部の破断予定部における炭素含有量とマルテンサイト面積率が所定の関係式を満たすように当該破断予定部が焼入れされていることから、大端部のかち割り破断時の変形量を少なくすることができ、耐焼割れ性の優れた低C鋼材に破断分離工法を適用することができるようになり、コンロッドの軽量化と高強度化を両立させることができる。
以下、本発明のコンロッドについて、化学成分など各種数値の限定理由と共に、さらに詳細かつ具体的に説明する。なお、本明細書において、「%」は特記しない限り、質量百分率を表すものとする。
本発明においては、上記したように、0.2〜0.5質量%の炭素を含有する鋼からなるコンロッドの大端部の破断予定部に焼入れを施し、当該破断予定部における炭素含有量とマルテンサイト面積率の関係が後述する(1)式を満たすようにしているので、破断予定部が硬化して延性がなくなり(脆化)、これによってかち割り破断による変形量が少なくなって、組付け時に破断面同士が一致し易くなることから、耐焼割れ性に優れた低炭素高延性鋼にも破断分離工法を適用することができるようになる。一方、このような低炭素鋼から成る連接部に焼入れを施すことによって、焼き割れを惹き起こすことなく連接部の強度を高めて、座屈強度を向上させることができ、コンロッドの高強度化と破断分離工法による低コスト化、軽量化(破断分離後、破面を合わせて連接するため、接合部の剛性が高くなり、回転中の大端部変形を抑制でき、大端部の軽量化が可能となる)を両立させることができる。
このとき、大端部の破断予定部における炭素含有量とマルテンサイト面積率は、次式(1)を満足していることが必要であるが、この式における左辺が10以下の場合には、炭素含有量に対して焼入れが不十分であることから、破断予定部の脆化が十分に進まず、かち割り破断時の変形量が大きくなって、再度の組付けに際して破面同士が合わなくなって、十分な密着力が得られなくなる。
炭素含有量(質量%)×マルテンサイト面積率(%)>10 ・・・ (1)
炭素含有量(質量%)×マルテンサイト面積率(%)>10 ・・・ (1)
また、炭素含有量については、質量比で0.1〜0.5%の範囲内とすることが必要であるが、これは強度と耐焼割れ性を考慮した結果に基づく。
すなわち、連接部に焼入れを施すことによって高強度化を達成しようとする場合、実機使用中の破壊の起点となり、強度低下の原因となる焼入れ時の割れを抑制する必要がある。コンロッドに含まれる炭素量、言い換えると鋼材中の炭素量が0.5%を超えると、焼入れ時の割れ発生率が増大する上に、被切削性が著しく低下するために、機械加工を要する部位の加工が困難となる。
一方、炭素量が0.2%に満たない場合には、熱処理を施さない部位の強度を所望のレベルにすることが難しくなると共に、熱処理部位においても、焼入れ性が低下することから、所望の強度を得るために、より高温での処理が必要となり生産性が悪化することになる。
一方、炭素量が0.2%に満たない場合には、熱処理を施さない部位の強度を所望のレベルにすることが難しくなると共に、熱処理部位においても、焼入れ性が低下することから、所望の強度を得るために、より高温での処理が必要となり生産性が悪化することになる。
他の化学成分については、それぞれSi:0.1〜1.5%、Mn:0.5〜1.8%、Cr:0.01〜0.8%、Cu:0.01〜0.5%、V:0.02〜0.4%の範囲とすることが望ましい。
また、被切削性を向上する観点からは、上記に加えて、S:0.03〜0.15%、Pb:0.3%以下、Bi:0.3%以下若しくはCa:0.0001〜0.01%を単独で、又はこれらの2種以上を任意に組み合わせて添加することが望ましい。これら成分の数値限定理由について、以下に示す。
また、被切削性を向上する観点からは、上記に加えて、S:0.03〜0.15%、Pb:0.3%以下、Bi:0.3%以下若しくはCa:0.0001〜0.01%を単独で、又はこれらの2種以上を任意に組み合わせて添加することが望ましい。これら成分の数値限定理由について、以下に示す。
Si:0.1〜1.5%
Siは、鋼の溶製時に脱酸剤として用いられる元素であると共に、フェライト相に固溶して鋼の強化に寄与する元素である。
所望の強度を得るためには、0.1%以上の添加が望ましいが、1.5%を超えて添加した場合には、熱間変形抵抗が著しく増大し、鍛造性が悪化することがあるため、添加量としては、上記範囲内とすることが好ましい。
Siは、鋼の溶製時に脱酸剤として用いられる元素であると共に、フェライト相に固溶して鋼の強化に寄与する元素である。
所望の強度を得るためには、0.1%以上の添加が望ましいが、1.5%を超えて添加した場合には、熱間変形抵抗が著しく増大し、鍛造性が悪化することがあるため、添加量としては、上記範囲内とすることが好ましい。
Mn:0.5〜1.8%
Mnは、熱間加工性および被削性の改善に有効な元素であり、十分な熱間加工性を得るためには、0.5%以上の添加が望ましい。また、焼入れ性の向上効果があるため、この目的で本発明のコンロッドにも添加する。しかし、多量の添加は、鍛造後のベイナイト生成を促し、疲労強度及び被切削性の低下を招く傾向があることから、上限値を1.8%とすることが望ましい。
Mnは、熱間加工性および被削性の改善に有効な元素であり、十分な熱間加工性を得るためには、0.5%以上の添加が望ましい。また、焼入れ性の向上効果があるため、この目的で本発明のコンロッドにも添加する。しかし、多量の添加は、鍛造後のベイナイト生成を促し、疲労強度及び被切削性の低下を招く傾向があることから、上限値を1.8%とすることが望ましい。
Cr:0.01〜0.8%
Crは、鍛造後の強度を高めると共に、焼入れ性を向上するのに有効な元素であり、本発明のコンロッドにも、このような目的で0.01%以上を添加することが望ましい。しかし、多量の添加は、鍛造後のベイナイト生成を促し、疲労強度および被切削性の低下を招く傾向があるので、その上限を0.8%に設定することが望ましい。
Crは、鍛造後の強度を高めると共に、焼入れ性を向上するのに有効な元素であり、本発明のコンロッドにも、このような目的で0.01%以上を添加することが望ましい。しかし、多量の添加は、鍛造後のベイナイト生成を促し、疲労強度および被切削性の低下を招く傾向があるので、その上限を0.8%に設定することが望ましい。
Cu:0.01〜0.5%
Cuは、鍛造材中に析出することにより強度を確保すると共に、焼入れ性を向上させる元素であり、焼入れによる強度確保に好適な元素である。しかし、高価な元素であり多量に添加しても効果が飽和する傾向があるため、0.01〜0.5%の範囲内で添加することが望ましい。
Cuは、鍛造材中に析出することにより強度を確保すると共に、焼入れ性を向上させる元素であり、焼入れによる強度確保に好適な元素である。しかし、高価な元素であり多量に添加しても効果が飽和する傾向があるため、0.01〜0.5%の範囲内で添加することが望ましい。
V:0.02〜0.4%
Vは、NやCと反応して炭窒化物を生成し、鍛造後の強度を高め、耐力比の向上に効果があるため、非調質部を所望の強度とするために、0.02%以上添加することが望ましい。また、鋼中に析出するVの炭窒化物は、亀裂の伝播経路となることから、かち割りによる破断分離性向上に効果がある。しかし、多量の添加は被切削性の低下やコストの上昇に繋がるため、上限を0.4%とすることが好ましい。
Vは、NやCと反応して炭窒化物を生成し、鍛造後の強度を高め、耐力比の向上に効果があるため、非調質部を所望の強度とするために、0.02%以上添加することが望ましい。また、鋼中に析出するVの炭窒化物は、亀裂の伝播経路となることから、かち割りによる破断分離性向上に効果がある。しかし、多量の添加は被切削性の低下やコストの上昇に繋がるため、上限を0.4%とすることが好ましい。
S:0.03〜0.15%
Pb:0.3%以下
Bi:0.3%以下
Ca:0.0001〜0.01%
これら元素は、被切削性の改善を主目的に添加される元素であり、必要に応じて単独、又は2種以上を組み合わせて添加することができる。
Pb:0.3%以下
Bi:0.3%以下
Ca:0.0001〜0.01%
これら元素は、被切削性の改善を主目的に添加される元素であり、必要に応じて単独、又は2種以上を組み合わせて添加することができる。
このうち、SはMnと反応し、微細なMnSとなって鋼中に分散することによって被削性を改善する。このような効果を発揮させるには、0.03%以上添加することが望ましい。しかし、多量の添加は熱間加工性を悪化させる傾向があることから、上限値を0・15%とすることが望ましい。
Pbは、低融点金属であり被削性を改善する元素であるが、多量に添加すると、鋼中で分散させることが困難となり、凝集物が欠陥となってしまうことがあるので、その有効性との関係から、0.3%以下の範囲内で添加することが好ましい。
Pbは、低融点金属であり被削性を改善する元素であるが、多量に添加すると、鋼中で分散させることが困難となり、凝集物が欠陥となってしまうことがあるので、その有効性との関係から、0.3%以下の範囲内で添加することが好ましい。
また、Biは、低融点金属であり被削性を改善するが、Pbと同様に多量の添加は、鋼中で凝集し、凝集物が欠陥となってしまうことがあるので、0.3%以下の範囲内で添加することが望ましい。
そして、Caは、Sと反応してCaSを形成して被切削性を改善させる元素であるが、このCaSは高融点であるため、多量に添加すると製鋼工程におけるインゴット鋳造時に欠陥となり、割れを生じさせてしまうことがあるので、その有効性との関係から、0.0001〜0.01%の範囲内で添加することが好ましい。
そして、Caは、Sと反応してCaSを形成して被切削性を改善させる元素であるが、このCaSは高融点であるため、多量に添加すると製鋼工程におけるインゴット鋳造時に欠陥となり、割れを生じさせてしまうことがあるので、その有効性との関係から、0.0001〜0.01%の範囲内で添加することが好ましい。
本発明のコンロッドにおいては、上記大端部の破断予定位置に、ノッチ(切り欠き)を形成することができ、これによって、かち割り破断時に、破断予定位置への応力集中を図ることができ、破断分離性を改善して、より平坦で、良好な破断面を得ることができる。 ノッチの形成位置については、特に限定されないが、より良好な破断分離性を確保するためには、摺動面(大端部孔の内周面でクランクシャフトピンとの周接面)上への加工が望ましい。
また、上記コンロッドの連接部や大端部の破断予定部に焼入れを施す際には、焼入れを行う手法の一つとして、高周波誘導による加熱手法(高周波焼入れ)を採用することが望ましく、これによって短時間での処理が可能となる。
以下、本発明を実施例に基づいて、さらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
表1に示すような化学成分を有する18種類の非調質鋼から、それぞれ22mm径の棒状鍛造材を作成し、熱間鍛造によって、小端部S、連接部I、大端部Mを備えたコンロッド粗形状に成形した後、鍛造成形材の大端部摺動面の内周側をほぼ真円に機械加工して供試品とした。
表1に示すような化学成分を有する18種類の非調質鋼から、それぞれ22mm径の棒状鍛造材を作成し、熱間鍛造によって、小端部S、連接部I、大端部Mを備えたコンロッド粗形状に成形した後、鍛造成形材の大端部摺動面の内周側をほぼ真円に機械加工して供試品とした。
得られた供試品に対し、大端部Mの破断予定部Bに、図1に示すように高周波コイルC2をセットし、表2に示す4条件のもとに高周波焼入れを施し、その後に破断分離試験を実施した。なお、供試品の素材鋼種と高周波焼き入れ条件との組み合わせについては、表3に示すとおりである。
破断分離試験においては、くさび型治具を大端部の破断分離位置に設置し、治具を加圧することによって大端部を破断し、分割した。その結果を図3に示す。
破断分離試験においては、くさび型治具を大端部の破断分離位置に設置し、治具を加圧することによって大端部を破断し、分割した。その結果を図3に示す。
図3において、横軸は破断面の断面積に対するマルテンサイトの面積率(%)と炭素含有量(質量%)の積を示し、縦軸は楕円量の測定値を示すが、ここではエンジン中にて異音や焼付きが生じず、通常使用が可能となる基準楕円量を1としたときの相対比で表してある。
なお、楕円量とは、破断分離後のコンロッド大端部を再度組付け、一定のトルクで締付けた状態で、図2に示すように破断面に垂直な方向の大端部径aと、略平行な方向の大端部径bを測定したときに、これらの差(a−b)として定義されるものであって、この値が小さいほど破断分離特性が優れることの指標となる。
なお、楕円量とは、破断分離後のコンロッド大端部を再度組付け、一定のトルクで締付けた状態で、図2に示すように破断面に垂直な方向の大端部径aと、略平行な方向の大端部径bを測定したときに、これらの差(a−b)として定義されるものであって、この値が小さいほど破断分離特性が優れることの指標となる。
この結果、大端部Mの分離予定部Bに高周波焼入れを施さない状態、つまり鍛造組織のままの状態(マルテンサイト面積率=0)で破断した場合には、鋼材の成分によっての楕円量が大きく異なり、概ね炭素含有量が増すほど楕円量が小さくなる傾向を示した。
一方、破断予定部Bに高周波焼入れを施した場合では、分離面に占めるマルテンサイト面積率が大きくなるほど、楕円量も小さくなり、横軸、すなわち炭素量(質量%)×マルテンサイト面積率(%)の値が10を超えることによって、エンジン中において使用可能となる基準楕円量を満足するようになることが確認された。
一方、破断予定部Bに高周波焼入れを施した場合では、分離面に占めるマルテンサイト面積率が大きくなるほど、楕円量も小さくなり、横軸、すなわち炭素量(質量%)×マルテンサイト面積率(%)の値が10を超えることによって、エンジン中において使用可能となる基準楕円量を満足するようになることが確認された。
なお、マルテンサイト面積率の測定は、破断予定面近傍を切断し、研摩の後に腐蝕させて光学顕微鏡による組織観察を行い、得られた断面組織を画像解析することによって面積率を導出した。
(実施例2)
各供試品の連接部Iに、図1に示すように高周波コイルC1をセットし、表2に示したNo.1〜4の条件によって、当該連接部に高周波焼入れを施したのち、静的荷重下での座屈強度を評価した。その結果を図4に示す。
連接部Iに焼入れを施すと、当該部分のマルテンサイト化率が増加するに伴って、座屈強度の向上が確認された。このとき、C含有量が0.2%よりも少ない鋼材を用いた場合には、焼入れの効果が少なく、目標とする座屈強度が得られないことが判明した。なお、マルテンサイトは鋼の組織において最も高硬度となる。材料の硬度が上がれば座屈強度Pもも増加するため、高強度のマルテンサイトの面積率が増加すると座屈強度も向上することになる。
各供試品の連接部Iに、図1に示すように高周波コイルC1をセットし、表2に示したNo.1〜4の条件によって、当該連接部に高周波焼入れを施したのち、静的荷重下での座屈強度を評価した。その結果を図4に示す。
連接部Iに焼入れを施すと、当該部分のマルテンサイト化率が増加するに伴って、座屈強度の向上が確認された。このとき、C含有量が0.2%よりも少ない鋼材を用いた場合には、焼入れの効果が少なく、目標とする座屈強度が得られないことが判明した。なお、マルテンサイトは鋼の組織において最も高硬度となる。材料の硬度が上がれば座屈強度Pもも増加するため、高強度のマルテンサイトの面積率が増加すると座屈強度も向上することになる。
(実施例3)
供試品の破断予定部Bに、表2に示したNo.1の条件で高周波焼入れを施したのち、その破断予定位置に深さ約0.5mmのノッチをレーザによって形成したうえで、破断分離試験に供し、それぞれの楕円量を測定し、ノッチを形成しない場合と比較した。その結果を図5に平均値として示す。なお、楕円量平均値は、A〜Jの鋼種から得た供試品を用いた破断分離試験の結果を平均したものである。
この結果、大端部Mの破断予定位置にノッチを形成することにより、破断後の楕円量が大幅に減少することが確認された。
供試品の破断予定部Bに、表2に示したNo.1の条件で高周波焼入れを施したのち、その破断予定位置に深さ約0.5mmのノッチをレーザによって形成したうえで、破断分離試験に供し、それぞれの楕円量を測定し、ノッチを形成しない場合と比較した。その結果を図5に平均値として示す。なお、楕円量平均値は、A〜Jの鋼種から得た供試品を用いた破断分離試験の結果を平均したものである。
この結果、大端部Mの破断予定位置にノッチを形成することにより、破断後の楕円量が大幅に減少することが確認された。
(実施例4)
それぞれの材料から熱間鍛造によりコンロッド形状に成形した成形部品に対して、表2中のNo.1に示す条件によって連接部高周波焼入れを実施し、焼割れの発生状況の調査を行った。焼割れは、対象部品を磁化させ、割れ部位で発生する磁束の変化を鉄粉を用いて観察しる磁気探傷法を用い、目視により評価した。
それぞれの材料から熱間鍛造によりコンロッド形状に成形した成形部品に対して、表2中のNo.1に示す条件によって連接部高周波焼入れを実施し、焼割れの発生状況の調査を行った。焼割れは、対象部品を磁化させ、割れ部位で発生する磁束の変化を鉄粉を用いて観察しる磁気探傷法を用い、目視により評価した。
図6は、その結果をMs点(マルテンサイト変態開始温度)で整理したものであって、Ms点が300℃以下の鋼材には焼き割れが発生することが判明した。
ここで、Ms点温度は、MnやCr、Vなどの含有量によっても影響されるものの、C含有量の影響が支配的であることから、鋼種記号K、O及びQのように、C量が0.5%を超えると、Ms点が300℃以下となって、焼割れが発生することが確認された。
ここで、Ms点温度は、MnやCr、Vなどの含有量によっても影響されるものの、C含有量の影響が支配的であることから、鋼種記号K、O及びQのように、C量が0.5%を超えると、Ms点が300℃以下となって、焼割れが発生することが確認された。
S 小端部
M 大端部
I 連接部
B 破断予定部
M 大端部
I 連接部
B 破断予定部
Claims (6)
- 大端部を破断して分離するコンロッドにおいて、
質量比で0.2〜0.5%の炭素を含有すると共に、上記大端部の破断予定部における炭素含有量とマルテンサイト面積率の関係が次式(1)を満たすように、当該大端部の破断予定部が焼入れされていることを特徴とするコンロッド。
炭素含有量(質量%)×マルテンサイト面積率(%)>10 ・・・ (1) - 上記大端部と小端部とを繋ぐ連接部が焼入れされていることを特徴とする請求項1に記載のコンロッド。
- 上記大端部の破断予定位置にノッチを備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンロッド。
- 質量比で、0.2〜0.5%のC、0.1〜1.5%のSi、0.5〜1.8%のMn、0.01〜0.8%のCr、0.01〜0.5%のCu、0.02〜0.4%のVを含有し、残部がFe及び不可避不純物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載のコンロッド。
- 質量比で、0.2〜0.5%のC、0.1〜1.5%のSi、0.5〜1.8%のMn、0.01〜0.8%のCr、0.01〜0.5%のCu、0.02〜0.4%のVと、0.03〜0.15%のS、0.3%以下のPb、0.3%以下のBi及び0.0001〜0.01%のCaから成る群から選ばれた少なくとも1種を含有し、残部がFe及び不可避不純物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載のコンロッド。
- 請求項1〜5のいずれか1つの項に記載されたコンロッドの焼入れに際して、高周波焼入れを用いることを特徴とするコンロッドの製造方法。
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Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2006272834A Pending JP2008088527A (ja) | 2006-10-04 | 2006-10-04 | コンロッド及びその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2008088527A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2017101272A (ja) * | 2015-11-30 | 2017-06-08 | 株式会社神戸製鋼所 | 破断分割型コネクティングロッドの製造方法 |
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2006
- 2006-10-04 JP JP2006272834A patent/JP2008088527A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2017101272A (ja) * | 2015-11-30 | 2017-06-08 | 株式会社神戸製鋼所 | 破断分割型コネクティングロッドの製造方法 |
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