以下、本発明を更に詳細に説明する。[1]芳香族ポリカーボネート樹脂(A1成分) 本発明における芳香族ポリカーボネート樹脂(以下、「A1成分」と略記することがある。)は、例えば、芳香族ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体とを、または、これらに併せて少量のポリヒドロキシ化合物などを反応させて得られる、直鎖または分岐の熱可塑性芳香族ポリカーボネート重合体、または共重合体である。この芳香族ポリカーボネート樹脂(A1成分)の製造方法は、特に限定されるものではなく、従来から知られている方法によって製造することができる。製造方法としては、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法などを挙げることができる。
原料として使用される芳香族ジヒドロキシ化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=テトラブロモビスフェノールA)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1−トリクロロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサクロロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンなどで例示されるビス(ヒドロキシアリ−ル)アルカン類;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどで例示されるビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンなどで例示されるカルド構造含有ビスフェノール類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエーテルなどで例示されるジヒドロキシジアリールエーテル類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィドなどで例示されるジヒドロキシジアリールスルフィド類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシドなどで例示されるジヒドロキシジアリールスルホキシド類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホンなどで例示されるジヒドロキシジアリールスルホン類;ハイドロキノン、レゾルシン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルなどが挙げられる。
これらの中で好ましいのは、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン類であり、特に耐衝撃性の観点から好ましいのは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[=ビスフェノールA]である。これらの芳香族ジヒドロキシ化合物は、一種類でも二種類以上を併用してもよい。
芳香族ジヒドロキシ化合物と反応させるカーボネート前駆体としては、カルボニルハライド、カーボネートエステル、ハロホルメートなどが挙げられる。具体的にはホスゲン;ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネートなどのジアリールカーボネート類;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどのジアルキルカーボネート類;二価フェノールのジハロホルメートなどが挙げられる。これらのカーボネート前駆体もまた、一種類でも二種類以上を併用してもよい。
また、芳香族ポリカーボネート樹脂(A1成分)は、少量の三官能以上の多官能性芳香族化合物を存在させて共重合させた、分岐した芳香族ポリカーボネート樹脂であってもよい。三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−3、1,3,5−トリ(4−ヒドロキシフェニル)べンゼン、1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタンなどで例示されるポリヒドロキシ化合物類、または、3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール(=イサチンビスフェノール)、5−クロロイサチン、5,7−ジクロロイサチン、5−ブロムイサチンなどが挙げられ、これらの中でも1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。多官能性芳香族化合物は、前記芳香族ジヒドロキシ化合物の一部を置換して使用することができ、その使用量は、芳香族ジヒドロキシ化合物に対して0.01〜10モル%の範囲が好ましく、0.1〜2モル%の範囲がより好ましい。
次に、A1成分の製造方法について説明する。A1成分の製造方法のうち、まず界面重合法について説明する。この製造方法における重合反応は、反応に不活性な有機溶媒、アルカリ水溶液の存在下で、通常pHを9以上に保ち、芳香族ジヒドロキシ化合物、および、必要に応じて分子量調整剤(末端停止剤)、ならびに、芳香族ジヒドロキシ化合物の酸化を防止する目的で酸化防止剤を使用し、ホスゲンと反応させた後、第三級アミンまたは第四級アンモニウム塩などの重合触媒を添加し、界面重合を行うことによってポリカーボネートを得ることができる。分子量調節剤の重合系への添加時期は、ホスゲン化時から重合反応開始時までの間であれば特に限定されない。なお、反応温度は、例えば、0〜40℃で、反応時間は、例えば、数分(例えば、10分)〜数時間(例えば、6時間)である。
界面重合法で使用される反応に不活性な有機溶媒としては、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどの塩素化炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素などが挙げられる。また、アルカリ水溶液調製用のアルカリ化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物が挙げられる。分子量調節剤としては、一価のフェノール性水酸基を有する化合物が挙げられる。一価のフェノール性水酸基を有する化合物としては、m−メチルフェノール、p−メチルフェノール、m−プロピルフェノール、p−プロピルフェノール、p−t−ブチルフェノールおよびp−長鎖アルキル置換フェノールなどが挙げられる。分子量調節剤の添加量は、芳香族ジヒドロキシ化合物100モルに対して、好ましくは0.5〜50モル、より好ましくは1〜30モルである。
重合触媒としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリヘキシルアミン、ピリジンなどの第三級アミン類のほか、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライドなどの第四級アンモニウム塩類が挙げられる。
次に、溶融エステル交換法について説明する。この製造方法における重合反応は、例えば、炭酸ジエステルと芳香族ジヒドロキシ化合物とのエステル交換反応である。炭酸ジエステルとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−t−ブチルカーボネートなどの炭酸ジアルキル化合物、ジフェニルカーボネートおよびジトリルカーボネートなどの置換ジフェニルカーボネートなどが挙げられる。炭酸ジエステルの中で好ましいのは、ジフェニルカーボネートまたは置換ジフェニルカーボネートであり、より好ましいのはジフェニルカーボネートである。
この製造方法においては、一般的に、炭酸ジエステルと芳香族ジヒドロキシ化合物との混合比率を調整したり、反応時の減圧度を調整したりすることによって、所望の分子量および末端ヒドロキシル基量を有するポリカーボネート樹脂が得られる。より積極的な方法として、反応時に別途、末端停止剤を添加して調整することもできる。この際の末端停止剤としては、一価フェノール類、一価カルボン酸類、炭酸ジエステル類などが挙げられる。末端ヒドロキシル基量は、A1成分である芳香族ポリカーボネート樹脂の熱安定性、加水分解安定性、色調などに大きな影響を及ぼす。末端ヒドロキシル基の量は、最終的に得られる樹脂組成物の用途にもよるが、実用的な物性を具備させるためには、好ましくは1000ppm以下であり、より好ましくは700ppm以下である。また、エステル交換法で製造する芳香族ポリカーボネート樹脂では、末端ヒドロキシル基量は100ppm以下が好ましい。このような末端ヒドロキシル基量とすることにより、分子量の低下が抑制でき、色調もより良好なものとすることができる。従って、芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対して、炭酸ジエステルを等モル量以上、例えば、1.01〜1.30モルの量で使用するのがより好ましい。
溶融エステル交換法により芳香族ポリカーボネート樹脂を製造する際には、通常、エステル交換触媒が使用される。エステル交換触媒は、従来から使用されているものが特に制限されずに使用できる。具体的には、アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物が挙げられる。また、補助的に、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物などの塩基性化合物を併用することもできる。上記原料を用いたエステル交換反応としては、通常、100〜320℃の温度で反応を行い、最終的には300Pa以下の減圧下、芳香族ヒドロキシ化合物などの副生成物を除去しながら溶融重縮合反応を行う方法が挙げられる。
溶融エステル交換法は、バッチ式または連続的に行うことができるが、最終的に得られる樹脂組成物の安定性などを勘案すると、連続式で行うのが好ましい。溶融エステル交換法により得られた芳香族ポリカーボネート樹脂中には、残存触媒が含まれ、この残存触媒が芳香族ポリカーボネート樹脂の成形時に熱安定性などに悪影響を及ぼすので、これを失活させる失活剤を添加するのが好
ましい。失活剤には、使用した触媒を中和する化合物、例えば、硫黄含有酸性化合物またはそれより形成される誘導体が好ましい。このような触媒を中和する化合物は、使用した触媒が含有するアルカリ金属に対して、好ましくは0.5〜10当量、より好ましくは1〜5当量の範囲で添加する。さらに加えて、このような触媒を中和する化合物は、芳香族ポリカーボネート樹脂に対して、好ましくは1〜100ppm、より好ましくは1〜20ppmの範囲で添加する。
本発明において芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量は、成形材料として使用できる範囲のものであれば特に制限はなく、溶液粘度から換算した粘度平均分子量[Mv]で、10000〜50000の範囲のものが好ましい。芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量が10000以上であると、機械的強度が向上し、高い機械的強度が要求される用途に使用する場合により好適である。一方、粘度平均分子量が50000以下であると、流動性の低下を改善でき、成形加工性の観点から好ましい。粘度平均分子量のより好ましい範囲は、12000〜40000であり、さらに好ましい範囲は14000〜30000である。また、粘度平均分子量の異なる二種類以上の芳香族ポリカーボネート樹脂の混合物であってもよい。混合物が、分子量が異なる二種類以上の芳香族ポリカーボネート樹脂よりなる場合には、混合物の分子量が上記範囲内にあれば、粘度平均分子量が上記範囲外の芳香族ポリカーボネート樹脂を含んでいてもよい。
本発明において粘度平均分子量[Mv]とは、溶媒としてメチレンクロライドを使用し、ウベローデ粘度計を使用し、温度20℃での極限粘度[η](単位dl/g)を測定し、Schnellの粘度式、すなわち、η=1.23×10−4M0.83から算出される値を意味する。ここで極限粘度[η]とは、各溶液濃度[C](g/dl)での比粘度[ηsp]を測定し、下記式(A)により算出した値である。
本発明における芳香族ポリカーボネート樹脂(A1成分)は、成形品外観の向上や流動性の向上を図るため、芳香族ポリカーボネートオリゴマーを含有していてもよい。この芳香族ポリカーボネートオリゴマーの粘度平均分子量[Mv]は、好ましくは1500〜9500であり、より好ましくは2000〜9000である。芳香族ポリカーボネートオリゴマーは、A1成分の30重量%以下の範囲で含有させるのが好ましい。
芳香族ポリカーボネート樹脂(A1成分)は、いわゆるバージン原料だけでなく、使用済みの製品から再生された芳香族ポリカーボネート樹脂、いわゆるリサイクルされた芳香族ポリカーボネート樹脂であってもよい。使用済みの製品としては、光学ディスクなどの光記録媒体、導光板、自動車窓ガラス・自動車ヘッドランプレンズ・風防ガラスなどの車両透明部材、水ボトルなどの容器、メガネレンズ、防音壁・ガラス窓・波板などの建築部材、ヘルメット・防弾盾などの安全用具類が挙げられる。また、製品の不適合品、スプルー、ランナーなどから得られた粉砕品またはそれらを溶融して得たペレットであってもよい。再生された芳香族ポリカーボネート樹脂は、A1成分の80重量%以下が好ましく、より好ましくは50重量%以下である。
[2]熱可塑性ポリエステル樹脂(A2成分) 本発明における熱可塑性ポリエステル樹脂(以下、「A2成分」と略記することがある。)は、ジカルボン酸類またはその反応性誘導体からなるジカルボン酸成分と、ジオール類またはそのエステル誘導体からなるジオール成分とを主成分とし、これらを縮合反応により得られる重合体または共重合体である。
熱可塑性ポリエステル樹脂(A2成分)の製造は、従来から知られている方法に従い、チタン、ゲルマニウム、アンチモンなどを含有する重縮合触媒の存在下に、加熱しながらジカルボン酸成分とジオール成分とを反応させ、副生する水または低級アルコールを反応系外に排出することによって行われる。製造方法は、エステル交換反応、重縮合反応とも、バッチ式でも、連続式でもよく、一方をバッチ式とし、他方を連続式として組み合わせた方法であってもよく、固相重合によって重合度を高めることもできる。
ジカルボン酸類としては、芳香族ジカルボン酸および脂肪族ジカルボン酸のいずれでもよいが、最終的に得られる樹脂組成物からの成形品の耐熱性、寸法安定性などの観点から、芳香族ジカルボン酸が好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルメタンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルスルホンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルイソプロピリデンジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、2,5−アントラセンジカルボン酸、2,6−アントラセンジカルボン酸、4,4’−p−ターフェニレンジカルボン酸、2,5−ピリジンジカルボン酸などが挙げられ、これらの置換体(例えば、5−メチルイソフタル酸などのアルキル基置換体など)や反応性誘導体(例えば、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチルなどのアルキルエステル誘導体など)なども挙げられる。
これらのうち、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸およびこれらのアルキルエステル誘導体がより好ましく、テレフタル酸およびそのアルキルエステル誘導体が特に好ましい。これら芳香族ジカルボン酸は、一種類でも二種類以上を併用してもよい。これら芳香族ジカルボン酸と共に、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸類、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸類などの一種類または二種類以上を併用することもできる。
ジオール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、トリエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールなどの脂肪族ジオール類;1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、トランス−またはシス−2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオールなどの脂環族ジオ−ル類;p−キシレンジオール、ビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2−ヒドロキシエチルエーテル)などの芳香族ジオール類などが挙げられ、これらの置換体であってもよい。
これらのうち、最終的に得られる樹脂組成物からの成形品の耐熱性、寸法安定性などの観点から、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールがより好ましく、エチレングリコールが特に好ましい。これらは一種類でも二種類以上を併用してもよい。また、ジオール成分として、分子量400〜6000の長鎖ジオール類、すなわち、ポリエチレングリコール、ポリ−1,3−プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどの一種類以上を、上記ジオール類と併用することもできる。
また、本発明における熱可塑性ポリエステル樹脂(A2成分)は、A2成分の製造時に、少量の分岐剤を添加して分岐させることもできる。分岐剤は、熱可塑性ポリエステル樹脂製造時に従来から使用されているものであれば、その種類に制限はない。具体例としては、トリメシン酸、トリメリチン酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。
本発明における熱可塑性ポリエステル樹脂(A2成分)は、上記熱可塑性ポリエステル樹脂のほか、他の熱可塑性ポリエステル樹脂であってもよい。他の熱可塑性ポリエステル樹脂としては、例えば、ラクトンの開環重合によるポピバロラクトン樹脂、ポリ(ε−カプロラクトン)樹脂などや、溶融状態で液晶を形成する液晶ポリマー(Thermotropic Liquid Crystal Polymer;TLCP)などが挙げられる。具体的には、市販されている液晶ポリエステル樹脂とし、三菱エンジニアリングプラスチックス社のノバキュレート(商品名)、イーストマンコダック社のX7G(商品名)、ダートコ社のXyday(ザイダー)(商品名)、住友化学社のエコノール(商品名)、セラニーズ社のベクトラ(商品名)などが挙げられる。
熱可塑性ポリエステル樹脂(A2成分)として好適なものとしては、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリプロピレンテレフタレート樹脂(PPT)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリへキシレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)、ポリブチレンナフタレート樹脂(PBN)、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)樹脂(PCT)、ポリシクロヘキシルシクロヘキシレート(PCC)などが挙げられる。中でもポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリプロピレンテレフタレート樹脂(PPT)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)が流動性、耐衝撃性の観点から好ましい。中でも、熱可塑性ポリエステル樹脂(A2成分)が、このA2成分100重量%中にポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)を10重量%以上含有するものが好ましく、とりわけ好ましいのはPETを12〜50重量%含有するものである。
本発明におけるA2成分として特に好適なポリエチレンテレフタレート樹脂は、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を主成分とし、かつ、ジオール成分としてエチレングリコールを主成分とし、これらの縮合反応によって得られる飽和ポリエステル重合体または共重合体であり、繰り返し単位としてエチレンテレフタレート単位を好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上含む熱可塑性ポリエステル樹脂である。ポリエチレンテレフタレート樹脂中には、重合時の副反応生成物であるジエチレングリコールが含まれるが、このジエチレングリコールの量は、重合反応時に使用するジオール成分の全量100モル%中、0.5モル%以上が好ましく、通常6モル%以下、中でも5モル%以下が特に好ましい。
熱可塑性ポリエステル樹脂(A2成分)の固有粘度は、0.4〜1.5dl/gの範囲が好ましい。固有粘度が0.4未満であると、得られる樹脂組成物の耐衝撃性が低下し、1.5を超えると流動性が低下し、いずれも好ましくない。固有粘度のより好ましい範囲は、0.5〜1.3dl/gである。本発明において固有粘度とは、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒に、試料ポリエステル樹脂を精秤し、1.0g/dlの溶液を調製し、温度30℃でウベローデ型粘度計によって測定した値を意味する。また、熱可塑性ポリエステル樹脂の末端カルボキシル基量は、好ましくは5〜50μeq/gの範囲である。末端カルボキシル基量が5μeq/g未満の場合は、得られる樹脂組成物の耐熱性、耐衝撃性が低下し易く、50μeq/gを超える場合には耐湿熱性、熱安定性が不十分となり易く、いずれも好ましくない。末端カルボキシル基量のより好ましい範囲は、10〜30μeq/gである。
本発明における熱可塑性ポリエステル樹脂(A2成分)は、いわゆるバージン原料だけでなく、使用済みの製品から再生された熱可塑性ポリエステル樹脂、いわゆるリサイクルされた熱可塑性ポリエステル樹脂であってもよい。使用済みの製品としては、主として、容器類、フィルム類、シート類、繊維類などが挙げられるが、より好適なものはPETボトルなどの容器類である。また、再生熱可塑性ポリエステル樹脂としては、製品の不適合品、スプルー、ランナーなどから得られた
粉砕品、またはそれらを溶融して得たペレットであってもよい。
[3]エポキシ基含有ビニル系単量体をグラフトしたポリオルガノシロキサン/ポリアルキル(メタ)アクリレート複合ゴムグラフト共重合体(B成分)本発明に係る熱可塑性樹脂組成物には、この熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性などの機械的特性を改良する目的で、エポキシ基含有ビニル系単量体をグラフトしたポリオルガノシロキサン/ポリアルキル(メタ)アクリレート複合ゴムグラフト共重合体(以下、「B成分」と略記することがある。)を含有させる。ポリオルガノシロキサン/ポリアルキル(メタ)アクリレート複合ゴムグラフト共重合体にグラフトさせるビニル系単量体としては、エポキシ基含有ビニル系単量体(X成分)や、X成分とX成分以外のビニル系単量体(Y成分)との混合物(Z成分)であってもよい。本発明におけるエポキシ基含有ビニル系単量体をグラフトしたポリオルガノシロキサン/ポリアルキル(メタ)アクリレート複合ゴムグラフト共重合体(B成分)の製造方法は、特開平5−5055号公報、特開2003−277450号公報に詳細に記載されている。
B成分を構成するポリオルガノシロキサンゴム(S)は、オルガノシロキサンとポリオルガノシロキサンゴム用架橋剤、および、所望によりポリオルガノシロキサンゴム用グラフト交叉剤の存在下、乳化重合法によって重合させ、ラテックスから回収された微粒子として得られたものが挙げられる。ポリオルガノシロキサンゴムの調製に使用されるオルガノシロキサンとしては、3員環以上の環状オルガノシロキサンが挙げられ、中でも3〜6員環のものが好ましい。このような環状オルガノシロキサンの例として、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、トリメチルトリフェニルシクロトリシロキサン、テトラメチルテトラフェニルシクロテトラシロキサン、オクタフェニルシクロテトラシロキサンなどを挙げることができ、これらは一種類でも、二種類以上の混合物であってもよい。
B成分を構成するポリアルキル(メタ)アクリレートゴム(R)は、以下に示すアルキル(メタ)アクリレート、ポリアルキル(メタ)アクリレートゴム用架橋剤、および、ポリアルキル(メタ)アクリレートゴム用グラフト交叉剤からなるアクリルゴム原料混合物を共重合することにより得られたものが挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートなどのアルキルアクリレート、および、ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、トリデシルメタクリレートなどのアルキルメタクリレートが挙げられる。これらは一種類でも、二種類以上の混合物であってもよい。これらの中では、n−ブチルアクリレートは特に好ましい。
B成分を構成するポリオルガノシロキサンとポリアルキル(メタ)アクリレートとを含む複合ゴムとしては、ポリオルガノシロキサンゴム(S)とポリアルキル(メタ)アクリレートゴム(R)とからなり、ポリオルガノシロキサンゴム(S)とポリアルキル(メタ)アクリレートゴム(R)とが相互に絡み合った架橋網目構造を形成した複合ゴムが挙げられ、前述したポリオルガノシロキサンゴムラテックスの存在下に、前記アクリルゴム原料混合物を添加し、乳化重合法によって製造することができる。かかる複合ゴムを製造する際、ポリオルガノシロキサンゴムラテックスに、アルキル(メタ)アクリレート、架橋剤およびグラフト交叉剤からなるアクリルゴム原料混合物を添加する場合には、一括して添加する方法でも、連続的に添加する方法でもよい。重合の進行とともに、ポリアルキル(メタ)アクリレートゴム(R)成分がポリオルガノシロキサンゴム(S)成分と両者の界面において相互に絡み合った架橋網目を形成し、グラフト交叉剤の存在により、ポリオルガノシロキサンゴム成分へのポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分のグラフトも生じて、実質上相互に分離できない複合ゴムが、ラテックスの形態で得られる。
ポリオルガノシロキサンとポリアルキル(メタ)アクリレートとを含む複合ゴムの組成は、ポリオルガノシロキサンゴム(S)成分が1〜99重量%、ポリアルキル(メタ)アクリレートゴム(R)成分が99〜1重量%{ポリオルガノシロキサンゴム(S)成分とポリアルキル(メタ)アクリレートゴム(R)成分との合計量が100重量%}のものが好ましい。ポリオルガノシロキサンゴム(S)成分が99重量%を越えると、最終的に得られる熱可塑性樹脂組成物から成形される成形品の表面外観が低下する傾向にあり、ポリアルキル(メタ)アクリレートゴム(R)成分が99重量%を越えると、最終的に得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が低下する傾向にあり、いずれも好ましくない。複合ゴムの組成は、ポリオルガノシロキサンゴム(S)成分が5〜95重量%、ポリアルキル(メタ)アクリレートゴム(R)成分が95〜5重量%のものがさらに好ましい。
ポリオルガノシロキサン(S)とポリアルキル(メタ)アクリレート(R)とを含む複合ゴムの質量平均粒子径は、0.2〜1.0μmの範囲のものが好ましい。質量平均粒子径が0.2μm未満では、最終的に得られる熱可塑性樹脂組成物に含まれる複合ゴムの総表面積が増大するために、最終的に得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性向上に必要なエポキシ基の量が増加し、熱可塑性樹脂組成物の流動性が低下する傾向にある。一方、1.0μmを超えると耐衝撃性発現に対するゴムの添加効率が低下する傾向にあり、いずれも好ましくない。ポリオルガノシロキサンとポリアルキル(メタ)アクリレートとを含む複合ゴムの質量平均粒子径のより好ましい範囲は、0.3〜0.7μmである。
質量平均粒子径は、例えば、ラテックスを蒸留水で固形分濃度約3%に希釈したもの0.1mlを試料とし、米国MATEC社製、CHDF2000型粒度分布計により、流速1.4ml/min、圧力約2.76MPa(約4000psi)、温度35℃の条件下で粒子分離用キャピラリー式カートリッジ、およびキャリア液を用いて測定することができる。粒子径の検量線は、例えば、米国DUKE社製の粒子径既知の単分散ポリスチレンを標準粒子径物質として、0.02〜1.0μmの合計13点の粒子径を測定して作成することができる。
ポリオルガノシロキサン(S)とポリアルキル(メタ)アクリレート(R)とを含む複合ゴムに、グラフト重合させるエポキシ基含有ビニル系単量体(X成分)としては、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートのグリシジルエーテル、グリシジルイタコネートなどが挙げられ、これらの中でもグリシジルメタクリレートがより好ましい。これら単量体(X成分)は一種類でも、二種類以上の混合物であってもよい。グラフト共重合体(B成分)全体に占めるエポキシ基含有ビニル系単量体(X成分)の比率は、0.1〜10重量%の範囲とするのが好ましい。この比率が0.1重量%未満であると、最終的に得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が低下する傾向にあり、10重量%を超えると最終的に得られる熱可塑性樹脂組成物の流動性が低下する傾向にあり、いずれも好ましくない。グラフト共重合体(B成分)全体に占めるエポキシ基含有ビニル系単量体(X成分)の比率は、前記範囲の中では、0.5〜8重量%の範囲がより好ましい。
次に、Z成分に含有されるエポキシ基含有ビニル系単量体(X成分)以外の単量体(Y成分)は、エポキシ基含有ビニル系単量体(X成分)と同様の条件でラジカル重合できるものであれば、特に制限なく、目的に応じて適切な単量体を選択して使用することができる。Y成分としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレート類、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−t−ブチルマレイミドなどのマレイミド誘導体、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシ基含有単量体、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、ジアセトンアクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリレートなどの窒素含有化合物、ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどのジエン系単量体、スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系単量体などが挙げられる。これらは一種類でも、二種類以上の混合物であってもよい。
B成分において、ポリオルガノシロキサン(S)とポリアルキル(メタ)アクリレート(R)とを含む複合ゴムに、グラフトさせるエポキシ基含有ビニル系単量体(X成分)と、X成分以外のビニル系単量体(Y成分)とからなる混合物(Z成分)の量は、グラフト共重合体(B成分)の質量を100重量%としたときに、5〜50重量%の範囲で選ぶのが好ましく、中でも10〜30重量%の範囲が特に好ましい。ポリオルガノシロキサン系グラフト共重合体は、前述したポリオルガノシロキサン(S)とポリアルキル(メタ)アクリレート(R)とを含む複合ゴムラテックス存在下で、エポキシ基含有ビニル系単量体を含む一種類以上のビニル系単量体を、一括仕込みまたは連続式に仕込み、乳化グラフト重合することにより得ることができる。なお、グラフト重合においては、グラフト共重合体の枝にあたる成分(ここではエポキシ基含有ビニル系単量体を含むビニル系単量体に由来する成分)が、幹成分(ここでは複合ゴム)にグラフトせずに、これら単量体のみで重合して得られる所謂フリーポリマーも副生し、グラフト共重合体とフリーポリマーの混合物として得られるが、本発明においてはこの両者を合わせてグラフト共重合体(B成分)という。
[4]リン系化合物(C成分)本発明に係る熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて、リン系化合物(以下、「C成分」と略記することがある。)を配合することができる。本発明におけるリン系化合物(C成分)は、最終的に得られる熱可塑性樹脂組成物の滞留熱安定性を向上させて、ガス発生や変色および機械的強度の低下を防止するように機能する。リン系化合物(C成分)は、従来から樹脂添加剤として知られている各種リン化合物、例えば、有機ホスフェート化合物、有機ホスファイト化合物、または有機ホスホナイト化合物が挙げられる。有機ホスフェート化合物としては、次の一般式(I)で表される化合物、有機ホスファイト化合物としては、次の一般式(II)で表される化合物、有機ホスホナイト化合物としては、次の一般式(III)で表される化合物が好ましい。リン系化合物(C成分)は、一種類または二種類以上を併用することもできる。
上記一般式(I)において、R1は、好ましくは、炭素原子数1〜30のアルキル基または炭素原子数6〜30のアリール基であり、より好ましくは、炭素原子数2〜25のアルキル基である。mは好ましくは1または2である。炭素原子数1〜30のアルキル基の具体例としては、オクチル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、トリアコンチル基などが挙げられる。
一般式(II)で表される有機ホスファイト化合物の具体例としては、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、4−4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシル)ホスファイト、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジトリデシルホスファイト−5−t−ブチルフェニル)ブタン、トリス(ミックスドモノおよびジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、4,4’−イソプロピリデンビス(フェニル−ジアルキルホスファイト)などが挙げられ、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどが挙げられる。
一般式(III)で表される有機ホスホナイト化合物の具体例としては、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンホスホナイトが挙げられる。リン系化合物(E成分)として、特に好ましいのは、上記一般式(I)で表される有機ホスフェート化合物である。
[5]配合比率 本発明に係る熱可塑性樹脂組成物としては、芳香族ポリカ−ボネート樹脂(A1成分)10〜90重量%と、熱可塑性ポリエステル樹脂(A2成分)90〜10重量%の合計100重量%よりなる樹脂成分(A成分)50〜99重量部に対し、エポキシ基含有ビニル系単量体をグラフトしたポリオルガノシロキサン/ポリアルキル(メタ)アクリレート複合ゴムグラフト共重合体(B成分)を1〜50重量部含有し、A成分とB成分の合計100重量部に対して、リン系化合物(C成分)を0.005〜1重量部含有するのが好ましい。
A1成分とA2成分の含有比率は、A1成分とA2成分の合計100重量%に占めるA1成分の量は、10〜90重量%の範囲で選ばれる。A1成分が10重量%未満では、最終的に得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が十分ではなく、90重量部を超えると、最終的に得られる熱可塑性樹脂組成物の流動性に劣り、いずれも好ましくない。上記範囲で好ましいA1成分の量は30〜90重量%、より好ましくは50〜85重量%、特に好ましくは55〜80重量%であり、A2成分は90〜10重量%、好ましくは10〜70重量%、より好ましくは15〜50重量%、特に好ましくは20〜45重量%である。
B成分は、A成分50〜99重量部に対し、1〜50重量部の範囲で選ばれる。B成分が1重量部未満であると、最終的に得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が不十分であり、50重量部を超えると荷重撓み温度と剛性が低下するので好ましくない。B成分の量は、好ましくは2〜40重量部であり、より好ましくは3〜30重量部である。
C成分は、A成分とB成分の合計100重量部に対して、0.005〜1重量部の範囲で選ばれる。C成分が0.005重量部未満では、最終的に得られる熱可塑性樹脂組成物の熱安定性および滞留熱安定性が十分でなく、C成分が1重量部を超えても、最終的に得られる熱可塑性樹脂組成物の熱安定性や滞留熱安定性の悪化の原因になり、他の性能に悪影響を及ぼすことがあり好ましくない。C成分の好ましい量は0.01〜0.7重量部であり、さらに好ましい量は0.03〜0.5重量部である。
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて本発明の目的を損なわない範囲で、上記A成分〜C成分のほかに、他の樹脂(D成分)および各種の樹脂添加剤(E成分)を配合することができる。他の樹脂(D成分)としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリメタクリレート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。また、樹脂添加剤(E成分)としては、酸化防止剤、離型剤、染顔料、熱安定剤、耐候性改良剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤・アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、防菌剤、無機フィラーなどが挙げられる。無機フィラーは、A成分とB成分の合計100重量部に対して1重量部未満の範囲で選ばれる。D成分およびE成分は、一種類でも二種類以上を併用してもよい。
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、従来から知られている方法により調製することができる。具体的には、前記A成分〜C成分および必要に応じて配合される添加成分を所定量秤量し、タンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用いて予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどで溶融混練する方法が挙げられる。また、各成分を予め混合せずに、または、一部の成分のみ予め混合し、フィダーを用いて押出機の途中で押出機に供給して、溶融混練して樹脂組成物を調製することもできる。
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、各種製品(成形品)の製造(成形)用樹脂材料として使用される。成形方法は、熱可塑性樹脂材料から成形品を成形する従来から知られている方法が、制限なく適用できる。具体的には、一般的な射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシストなどの中空成形法、断熱金型を用いた成形法、急速加熱金型を用いた成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、インモールドコーティング(IMC)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法などが挙げられる。