[第1実施形態]
以下、本発明に係る第1実施形態について説明する。第1実施形態は、ノズルからインク滴を噴射するインクジェットプリンタに本発明を適用した一例である。
図1(a)は、第1実施形態に係るインクジェットプリンタ1の概略斜視図であり、図1(b)は、図1(a)から記録用紙P、搬送ローラ5及び制御装置9を除いた図である。図2は、図1の平面図である。図3は図2のA−A線断面図である。図1〜図3に示すように、インクジェットプリンタ1は、キャリッジ2(移動手段)、ガイド軸3、インクジェットヘッド4(液滴噴射ヘッド)、搬送ローラ5(被噴射媒体搬送手段)、光検知装置6、ワイピングユニット7、パージユニット8及び制御装置9を有している。
キャリッジ2は、図1の左右方向(走査方向、第2方向、第4方向)に延びたガイド軸3に沿って移動自在に固定されている。インクジェットヘッド4は、キャリッジ2の下面に設けられており、その下面であるインク噴射面4a(液滴噴射面、図6参照)に設けられたノズル15(図4参照)の噴射口15(図6参照)から真下に、遮光性のインク滴(液滴)を噴射するシリアル式のヘッドである。搬送ローラ5は、記録用紙P(被噴射媒体)を、インク噴射面4aに対向する位置において、図1の手前方向(紙送り方向、第1方向、第3方向)に搬送する。そして、インクジェットプリンタ1においては、キャリッジ2をガイド軸3に沿って移動させることによりインクジェットヘッド4を走査方向に往復移動させつつノズル15からインク滴を噴射することによって搬送ローラ5によって紙送り方向に搬送された搬送された記録用紙Pに印刷を行う。
光検知装置6は、図1のインクジェットプリンタ1の左端部付近のインク噴射面4aに対向する位置に配置されている。また、インクジェットヘッド4がキャリッジ2とともに走査方向に移動することにより、インクジェットヘッド4と光検知装置6とは、走査方向(第2方向)に相対移動する。光検知装置6の詳細については、後で詳細に説明する。
ワイピングユニット7は、光検知装置6の左方に位置し、上下方向に移動可能に構成されており、その上部に配置されたワイパ7aの先端を走査方向に移動するインクジェットヘッド4のインク噴射面4a(図6参照)に当接させることによって、インク噴射面4aに付着したインクを除去する。パージユニット8は、ワイピングユニット7の左方に位置し、上下方向に移動可能に構成されたパージキャップ8aを有しており、パージキャップ8aを全てのノズル15の噴射口15aを覆うようにインク噴射面4aに当接させて、図示しないポンプなどによりインク噴射面4aとパージキャップ8aとに囲まれる空間内の圧力を減少させることによって、複数のノズル15からインクを吸い出すパージを行う。
次に、インクジェットヘッド4について図4〜図7を用いて説明する。図4は、図1〜図3のインクジェットヘッド4の平面図である。図5は、図3の一部分を拡大した図である。図6は、図5のB−B線断面図である。図7は図5のC−C線断面図である。図4〜図7に示すように、インクジェットヘッド4は、圧力室10、マニホールド流路11などのインク流路が形成された流路ユニット31と、流路ユニット31の上面に配置された圧電アクチュエータ32とを有している。
流路ユニット31は、キャビティプレート21、ベースプレート22、マニホールドプレート23及びノズルプレート24の4枚のプレートが積層されることによって構成されている。これら4枚のプレートのうちノズルプレート24を除く3枚のプレート21〜23は、ステンレスなどの金属材料からなり、ノズルプレート24はポリイミド等の合成樹脂材料からなる。なお、ノズルプレート24も他の3枚のプレート21〜23と同様の金属材料から構成されていてもよい。
キャビティプレート21には、複数の圧力室10が形成されている。複数の圧力室10は、走査方向(図4の左右方向)を長手方向とする略楕円の平面形状を有しており、紙送り方向(図4の上下方向)に10個ずつ走査方向に4列に配列されている。
ベースプレート22には、平面視で複数の圧力室10の長手方向における一方(図4の左側)の端部に重なる位置に、複数の貫通孔12形成されている。また、ベースプレート22には、平面視で複数の圧力室10の長手方向における他方(図4の右側)の端部に重なる位置に、複数の貫通孔13が形成されている。
マニホールドプレート23には、4列に配列された複数の圧力室10に対応して、紙送り方向に配列された10個の圧力室10に跨って延びたマニホールド流路11が形成されている。マニホールド流路11は平面視で、圧力室10の図4の略左半分に重なっており、貫通孔12を介して圧力室10と連通している。マニホールド流路11には、後述する振動板40に形成されたインク供給路17からインクが供給される。また、マニホールドプレート23には、平面視で貫通孔13に重なる位置に複数の貫通孔14が形成されている。
ノズルプレート24には、平面視で複数の貫通孔14に重なる位置に、複数のノズル15が形成されており、ノズルプレート24の下面がノズル15の噴射口15aが形成されたインク噴射面4aとなっている。そして、流路ユニット31においては、マニホールド流路11は貫通孔12を介して圧力室10に連通し、さらに、圧力室10は貫通孔13、14を介してノズル15に連通している。このように、流路ユニット31には、マニホールド流路11の出口から圧力室10を経てノズル15に至る、複数の個別インク流路が形成されている。
圧電アクチュエータ32は、振動板40、圧電層41及び個別電極42を有している。振動板40は金属材料からなり、流路ユニット30の上面に複数の圧力室10を覆うように配置されており、キャビティプレート21の上面に接合されている。また、振動板40は導電性を有する金属材料から構成されており、常にグランド電位に保持されている。
圧電層41は、チタン酸とジルコン酸鉛との固溶体であり、強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を主成分とする圧電材料からなり、振動板40の上面の平面視で複数の圧力室10に重なる部分に跨って連続的に形成されている。また、圧電層41は予めその厚み方向に分極されている。
個別電極42は、金属など導電性材料からなり、圧力室10よりも一回り小さい走査方向を長手方向とする略楕円の平面形状を有しており、平面視で圧力室10の略中央部に重なる位置に形成されている。個別電極42の一方(図4の左側)の端部は平面視で圧力室10に対向しない部分まで左方に延びており、この部分が接点42aとなっている。接点42aには、図示しないフレキシブルプリント基板(FPC)を介してドライバIC50(図11参照)が接続されており、複数の個別電極42には、ドライバIC50により個別に駆動電位が付与される。
ここで、圧電アクチュエータ32の動作について説明する。圧電アクチュエータ32においては、個別電極42は予めグランド電位に保持されている。そして、ドライバIC50により個別電極42に駆動電位が付与されると、駆動電位が付与された個別電極42とグランド電位に保持された振動板40との間に電位差が発生し、圧電層41のこの個別電極42と振動板40とに挟まれた部分には厚み方向の電界が生じる。この電界の方向は、圧電層41の分極方向と平行であるので、圧電層41のこの部分は厚み方向と直交する水平方向に収縮し、これに伴って、振動板40の対応する圧力室10に対移行する部分が圧力室10内に凸となるように変形する。これにより、この圧力室10内の容積が減少し、圧力室10内のインクの圧力が増加して、この圧力室10に連通するノズル15からインク滴が噴射される。
次に、光検知装置6について図8〜図10を用いて説明する。図8は、図1〜図3の光検知装置6の平面図である。図9(a)は、図2のD−D線断面図であり、図9(b)は図9(a)において、インク滴によってレーザ光L1、L2が遮断されているときの図である。図10は複数の噴射口15aとレーザ光源52a、52bが出射するレーザ光L1、L2との位置関係を示す図である。
図8、図9に示すように、光検知装置6は、基材51、2つのレーザ光源52a、52b、及び、2つの受光素子53a、53bを有している。基材51は、紙送り方向(図8の上下方向、第1方向)に長い略長方形の平面形状を有しており、紙送り方向における下端部及び上端部には、図9の上方に突出した突出部51a、51bが形成されている。
2つのレーザ光源52a、52bは、それぞれ突出部51a内側の側面の図8における左端部付近及び右端部付近に固定されており、2つの受光素子53a、53bは、それぞれ突出部51b内側の側面の図8における右端部付近及び左端部付近に固定されている。さらに、紙送り方向に関して、2つのレーザ光源52a、52bと、2つの受光素子53a、53bとの間に(図9に示す2つの点線の間に)全ての噴射口15aが位置している。つまり、レーザ光源52a、52bは、インク噴射面4aに対向する一平面上の、紙送り方向に関して複数のノズル15の噴射口15aと対向する領域よりも外側に配置されており、受光素子53a、53bは、この一平面上の、紙送り方向に関して複数のノズル15の噴射口15aと対向する領域を挟んでレーザ光源52a、52bと反対側の領域に配置されている。
そして、レーザ光源52aは受光素子53aに向かってレーザ光L1を出射し、レーザ光源52bは受光素子53bに向かってレーザ光L2を出射する(一平面に沿ってレーザ光L1、L2を出射する)。このとき、図9(a)に示すように、レーザ光源52aと受光素子53aとの間にインク滴が位置していないときには、レーザ光源52aから出射されたレーザ光は受光素子53aまで到達し、レーザ光源52bと受光素子53bとの間にインク滴が位置していないときには、レーザ光源52bから出射されたレーザ光は受光素子53bまで到達する。一方、図9(b)に示すように、レーザ光源52aと受光素子53aとの間にインク滴Iが位置しているときには、レーザ光源52aから出射された光はこのインク滴によって遮られ、受光素子53aには到達せず、レーザ光源52bと受光素子53bとの間にインク滴Iが位置しているときには、レーザ光源52bから出射された光はこのインク滴によって遮られ、受光素子53bには到達しない。
また、2つのレーザ光L1、L2は、図10に示すように、それぞれ紙送り方向に対して時計回り方向、反時計回り方向にθだけずれた方向に出射されており、2つのレーザ光L1とL2とは互いに交差している。ここで、この角度θは、インクジェットヘッド4がキャリッジ2とともに走査方向に移動する間、平面視で(一平面と直交する方向から見て)、レーザ光L1、L2が、それぞれ2以上の噴射口15aに同時に重ならないような角度となっている。
次に、インクジェットプリンタ1の動作を制御する制御装置9について図11を用いて説明する。図11は、図1の制御装置9の機能ブロック図である。
制御装置9は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)RAM(Random Access Memory)等からなり、これらが図11に示す各部として動作する。
図11に示すように、制御装置9は、正常位置記憶部60、インクジェットヘッド制御部61、キャリッジ制御部62、位置検出部63、ずれ判定部64、ずれ量算出部65、基準量記憶部66、異常判定部67、噴射判定部68、メンテナンス制御部69を有している。
正常位置記憶部60は、平面視で各ノズル15の噴射口15aとレーザ光L1、L2とが重なるときのキャリッジ2の位置(あるノズル15から噴射されたインク滴の噴射方向が正常である場合に、受光素子53a、53bがそれぞれレーザ光L1、L2を受光しなくなるときのキャリッジ2のインクジェットヘッド4に対する位置)を記憶している。インクジェットヘッド制御部61は、ドライバIC50を制御することによりインクジェットヘッド4の動作を制御する。キャリッジ制御部62は、キャリッジ2の動作を制御する。位置検出部63は、キャリッジ2の走査方向に関する位置(走査方向に関する光検知装置6のインクジェットヘッド4に対する位置)を検出する。
ずれ判定部64は、インクジェットヘッド4においてノズル15から噴射されるインク滴の噴射方向にずれが生じているか否かを判定する。ずれ量算出部65は、位置検出部63によって得られたキャリッジ2の位置から、走査方向及び紙送り方向に関するノズル15の噴射方向のずれ量を算出する。基準量記憶部66には、走査方向及び紙送り方向に関する、許容できるインクの噴射方向ニ関するずれ量の最大値である基準量を個別に記憶している。
図12(a)は図2の4列に配列された複数のノズル15のうちの一列に属する10個のノズル15から正常にインク滴が噴射されたときの記録用紙Pにおけるインク滴Iの着弾位置を示す図であり、図12(b)は図2の上から2番目のノズル15におけるインク滴の噴射方向が走査方向(図12の右方)にずれている場合の記録用紙Pにおけるインク滴Iの着弾位置を示す図であり、図12(c)は図2の上から2番目のノズル15におけるインクの噴射方向が紙送り方向(図12の上方)にずれている場合の記録用紙Pにおけるインク滴Iの着弾位置を示す図である。図12(b)に示すように、インク滴Iの噴射方向が走査方向にずれている場合には、ずれ量が小さければ、印刷品質の低下は比較的小さくてすむが、図12(c)に示すように、インク滴Iの噴射方向が紙送り方向にずれている場合には、ずれ量が小さくても、走査方向に連続して延びたインク滴が噴射されない筋状の領域W1ができてしまい、印刷品質の低下は大きなものとなってしまう。したがって、印刷品質の低下を防止するために、基準量記憶部66に記憶されている紙送り方向に関する基準量は、走査方向に関する基準量よりも小さいものとなっている。
図11に戻って、異常判定部67は、ノズル15におけるインク滴の噴射方向に異常が発生しているか否かを判定する。より詳細には、ずれ量算出部65において算出された走査方向及び紙送り方向に関するずれ量の少なくともいずれか一方が基準量記憶部66に記憶された各方向に関する基準量よりも大きいときに異常が発生していると判定する。
噴射判定部68は、ノズル15からインク滴が噴射されている否かを判定する。メンテナンス制御部69は、ワイピングユニット7の上下方向の移動、パージキャップ8aの上下方向の移動、パージキャップ8aに接続された図示しないポンプ等の制御を行う。
次に、ノズル15においてインク滴の噴射方向のずれを解消する過程について説明する。図13は、この過程の全体を示すフローチャートである。
ノズル15においてインク滴の噴射方向のずれを解消するためには、図13に示すように、複数のノズル15の中からインク滴の噴射方向にずれが生じているノズル15を特定する(ステップS101、以下単にS101などとする)。そして、インク滴の噴射方向にずれが生じているノズル15が存在しない場合には(S102:NO)動作を終了し、インク滴の噴射方向にずれが生じているノズル15が存在する場合には(S102:YES)、インク滴の噴射方向にずれが生じているノズル15に関してのみ、ずれ量算出部65において走査方向及び紙送り方向に関するずれ量を算出する(S103)。
そして、算出された走査方向及び紙送り方向に関するずれ量の両方が、それぞれ、基準量記憶部66に記憶された各方向に関する基準量以下のときには(S104:NO)動作を終了し、算出された走査方向及び紙送り方向に関するずれ量少なくとも一方が、基準量記憶部66に記憶された各方向に関する基準量よりも大きいときには(S104:YES)後述するメンテナンス動作を行って(S105)動作を終了する。
次に、図13のS101で示す噴射方向にずれが生じているノズルを特定する過程に付いて説明する。図14は、この過程を示すフローチャートである。
インク滴の噴射方向にずれが生じているノズル15を特定するには、図14に示すように、全てのノズル15からインク滴を噴射させながら(S201)、正常位置記憶部60に記憶された、あるノズル15の噴射口15aとレーザ光L1とが重なる位置まで、キャリッジ2(インクジェットヘッド4)を移動させる(S202)。
このときに、受光素子53aがレーザ光を受光していれば(S203:YES)、ずれ判定部64がそのノズル15においてインクの噴射方向にずれが生じていると判定し(S204)、その後、以下に示すS205に進む。一方、受光素子53aがレーザ光を受光していなければ(S203:NO)、そのままS205に進む。
そして、全ての噴射口15aとレーザ光L1とが重なり終わるまで(S205:NO)、上記S202〜S204を繰り返し、全てのノズル15のレーザ光L1とが重なり終わった後(S205:YES)、正常位置記憶部60に記憶された、あるノズル15の噴射口15aとレーザ光L2とが重なる位置までキャリッジ2を移動させる(S206)。
このときに、受光素子53bがレーザ光を受光していれば(S207:YES)、ずれ判定部64が、そのノズル15においてインクの噴射方向にずれが生じていると判定し(S208)、その後、以下に示すS209に進む。一方、受光素子53bがレーザ光を受光していなければ、そのままS209に進む。
そして、全ての噴射口15aとレーザ光L2とが重なり終わるまで(S209:NO)、上記S206〜S208を繰り返し、全てのノズル15のレーザ光L1とが重なり終わった後(S209:YES)、S102に進む。以上の過程により、全てのノズル15に関して、インク滴の噴射方向にずれが生じているか否かを判定することができる。
ここで、全ての噴射口15aがレーザ光L1、L2にそれぞれに重なる位置にキャリッジ2を移動させてインク滴の噴射方向にずれが生じているか否かを判定したのは、噴射口15aをレーザ光L1、L2の一方に重なる位置にのみキャリッジ2を移動させてインク滴の噴射方向にずれが生じているか否かを判定すると、インク滴の噴射方向がレーザ光L1、L2と平行にずれている場合にもインク滴によってレーザ光L1、L2が遮られて受光素子53a、53bがレーザ光L1、L2を受光せず、このような場合に、インク滴の噴射方向にずれが生じていることを検出できないからである。
また、前述したように、レーザ光L1、L2が同時に2以上の噴射口15aに重ならないので、全てのノズル15からインク滴を噴射させながらキャリッジ2を走査方向に関して、光検知装置6の一方の端の外側に隣接する位置から他方の端の外側に隣接する位置まで一度だけ移動させることにより、全てのノズル15についてインク滴の噴射方向にずれが生じているか否かを短時間で判定することができる。
以上説明したS101のインク滴の噴射方向にずれが生じているノズルを特定する工程において、キャリッジ2の移動は連続的であってもよいし、あるノズル15の噴射口15aとレーザ光L1またはL2とが重なる位置で間欠的に停止し、ノズル15からの噴射とキャリッジ2の移動が同時に行われない(ノズル15からの噴射とキャリッジ2の移動が交互に行われる)ものであってもよい。
次に、上記S103の、インク滴の噴射方向にずれが生じていると判定されたノズル15に関してインク滴の噴射方向のずれ量を算出する過程について説明する。図15は、この過程示すフローチャートである。図16、図17は、このときのインクジェットプリンタ1の動作を示した図である。ただし、図16、図17においては、正常にインク滴が噴射された場合のインク滴I1(噴射口15aの位置)を一点鎖線で示し、実際に噴射されるインク滴I2を実線で示している。
ノズル15におけるインク滴の噴射方向のずれ量を算出するには、図16(a)に示すように、正常位置記憶部60に記憶された、あるノズル15の噴射口15aとレーザ光L1とが重なる位置までキャリッジ2(インクジェットヘッド4)を移動させ(S301)、る。
次に、このノズル15からインク滴を噴射させ(S302)、このとき、受光素子53aがレーザ光を受光していれば(S303:YES)、キャリッジ2を走査方向に所定量だけ移動させた(S304)後、上記S302に戻り、図16(b)に示すように、このノズル15から噴射されたインク滴I2がレーザ光L1に重なり、受光素子53aがレーザ光を受光しなくなったときには(S303:NO)、位置検出手段63によりこのときのキャリッジ2の位置を検出する(S305)。そして、正常位置記憶部60に記憶されたS301におけるキャリッジ2の位置と、上記S305において検出したキャリッジ2の位置とから走査方向に関するキャリッジ2の移動量xを算出する(S306)。なお、上記所定量は、走査方向に関するインクジェットヘッド4の長さと比較して十分に短くなっている。
次に、図17(a)に示すように、正常位置記憶部60に記憶された、そのノズル15の噴射口15aとレーザ光L2とが重なる位置までキャリッジ2を移動させ、(S307)、このノズル15からインク滴を噴射させる(S308)。
このとき、受光素子53bがレーザ光を受光し続けていれば(S309:YES)、キャリッジ2を走査方向に所定量だけ移動させた(S310)後、上記S308に戻り、図17(b)に示すように、このノズル15から噴射されたインク滴I2がレーザ光L2に重なり、受光素子53bがレーザ光L2を受光しなくなったときには(S309:NO)、位置検出手段63によりそのときのキャリッジ2の位置を検出し(S311)、正常位置記憶部60に記憶されたS307におけるキャリッジ2の位置と上記S311で検出したキャリッジ2の位置とから走査方向に関するキャリッジ2の移動量yを算出する(S312)。そして、算出した移動量xと移動量yとから、走査方向及び紙送り方向に関するインク滴の噴射方向のずれ量を算出する(S313)。そして、インク滴の噴射方向にずれが生じていると判定された全てのノズル15に関してずれ量の算出が終了するまで(S314:NO)上記S301〜S313を繰り返し、これらのノズル15全てについてずれ量の算出が終了したときに(S314:YES)、S104に進む。
ここで、インク滴の噴射方向のずれ量を算出する方法について詳細に説明する。図18は、図16のレーザ光L1、図17のレーザ光L2及びインク滴I1、I2の位置関係を、インク滴I1、I2を基準として書き直した模式図である。図18においては、図16、図17におけるインク滴I1、I2の中心がそれぞれ点C1、点C2に対応し、図16(a)、(b)におけるレーザ光L1がそれぞれ直線L11、L12に対応し、図17(a)、(b)におけるレーザ光L2がそれぞれ直線L21、L22に対応している。
図18においては、移動量x、yは、それぞれ、直線L11と直線L12との距離、及び、直線L21と直線L22との距離に対応する。このことから、点C1と、点C1を通り走査方向に平行な直線と直線L22との交点Rとの間の、走査方向に関する距離がyとなり、点C1と、点C1を通り走査方向に平行な直線と直線L12との交点Qとの間の、走査方向に関する距離がxとなる。さらに、このことから、点Rと点Qとの間の走査方向に関する距離が(y−x)となり、L12、L22と紙送り方向とのなす角がともにθであることから、実際に噴射されたインク滴の着弾点C2と点Qとの間の走査方向に関する距離は、(y−x)/2となる。これらのことから、点C1と点C2との間の走査方向に関する距離、すなわち、インク滴の噴射方向の走査方向に関するずれ量は、(x+y)/2と算出することができる。
また、移動量x、yは、それぞれ、直線L11と直線L12との距離、及び、直線L21と直線L22との距離に対応することから、点C2と、点C2を通り走査方向に平行な直線と直線L12との交点Sとの間の、走査方向に関する距離がyとなり、点C2と、点C2を通り走査方向に平行な直線と直線L11との交点Tとの間の、走査方向に関する距離がxとなる。このことから、点Tと点Sとの間の走査方向に関する距離がy−xとなり、直線L11及び直線L21と紙送り方向とのなす角がそれぞれともにθであることから、点C1と点Tとの走査方向に関する距離は(y−x)/2となる。そして、直線L11と紙送り方向とのなす角がθであるので、点C1と点C2との間の紙送り方向に関する距離、つまり、インク滴の紙送り方向に関するずれ量は、(y−x)/2tanθと算出することができる。
ここで、上記S103においては、上記S101においてインク滴の噴射方向にずれが生じていると判定されたノズル15に関してのみインク滴の噴射方向のずれ量を算出しているので、インク滴の噴射方向のずれ量を短時間で算出することができる。
次に、図13におけるS105のメンテナンス動作の過程について説明する。図19はメンテナンス動作の過程を示すフローチャートである。図20はメンテナンス動作時のインクジェットヘッド4、ワイピングユニット7及びパージキャップ8aの動作を示す図3相当の断面図である。
異常判定部67により異常が発生していると判定された場合には(S104:YES)、キャリッジ2(インクジェットヘッド4)を図示しないインク吸収体に対向する位置まで移動させ、異常が発生していると判定されたノズル15からインク滴を噴射させるフラッシングを行う(S401)。このとき、個別電極42には記録用紙Pにインク滴を噴射するときと同じ駆動電位を付与してもよく、駆動電位とは異なる電位を付与してもよい。また、個別電極42に記録用紙Pにインク滴を噴射するときと同じ時間だけ電位を付与してもよく、これとは異なる時間だけ電位を付与してもよい。
そして、フラッシングにより、インクの噴射方向のずれが解消されていれば(S402:YES)、メンテナンス動作を終了し、インクの噴射方向のずれが解消されていなければ(S402:NO)、図20(a)に示すように、ワイピングユニット7を上方に移動させてから、キャリッジ2を走査方向に移動させる。これにより、ワイパ7aの先端がインク噴射面4aに当接した状態でインクジェットヘッド4が走査方向に移動することになるので、インク噴射面4aに付着したインクが除去される(ワイピングが行われる、S403)。
そして、ワイピングにより、インク滴の噴射方向のずれが解消されれば(S404:YES)、メンテナンス動作を終了し、インク滴の噴射方向のずれが解消されなければ(S404:NO)、図20(b)に示すように、キャリッジ2をパージキャップ8aに対向する位置まで移動させてから、パージキャップ8aを上方に移動させることによってインク噴射面4aに当接させ、図示しないポンプなどによりインク噴射面4aとパージキャップ8aとに囲まれる空間内の圧力を低下させることにより、全てのノズル15からインクを吸い出すパージを行い(S405)、メンテナンス動作を終了する。
ここで、上記フラッシングは、インク滴の噴射方向にずれが生じているノズル15のみからインクを噴射させるので消費されるインクの量も比較的少なく、ワイピングを行う場合のように、ワイパ7がインク噴射面4aに接触することもない。また、上記ワイピングはワイパ7によりインク噴射面4aに付着したインクを除去する動作であるので、インクが消費されることはない。そして、上記パージは、全てのノズル15からインクを吸い出すため、消費されるインクの量が多い。したがって、メンテナンス動作においてフラッシングを行い、それでもインク滴の噴射方向のずれが解消されなかった場合にのみ、ワイピングを行い、それでもインク滴の噴射方向のずれが解消されなかった場合にのみ、パージを行うことにより、メンテナンス動作において消費されるインクの量を低減することができるとともに、インクジェットヘッド4の寿命を長くすることができる。
なお、上記S402及びS404では、前述したS103の場合と同様にしてノズル15におけるインク滴の噴射方向の走査方向及び紙送り方向に関するずれ量を算出し、算出したずれ量の両方が基準量記憶部66に記憶された各方向に関する基準量以下である場合に、噴射方向のずれが解消されたと判断している。
次に、インク滴が噴射されないノズル15において、インク滴が正常に噴射されるようにする過程について説明する。図21はこの過程を示すフローチャートである。
インク滴が噴射されないノズル15において、インク滴が正常に噴射されるようにするためには、図21に示すように、まず、インク滴が噴射されていないノズル15を特定する(S501)。そして、インク滴が噴射されていないノズル15が存在しない場合には(S502:NO)動作を終了し、インク滴が噴射されていないノズル15が存在する場合には(S502:YES)、後述するメンテナンス動作を行って(S503)から動作を終了する。
インク滴が噴射されていないノズル15を特定する上記S501の過程について説明する。図22はこの過程を示すフローチャートである。インク滴が噴射されていないノズル15を特定するためには、図22に示すように、まず、キャリッジ2(インクジェットヘッド4)を、走査方向に関して光検知装置6の一方の端の外側に隣接する位置まで移動させる(S601)。
次に、キャリッジ2を光検知装置6の他方の端に向かって走査方向に所定量だけ移動させ(S602)、あるノズル15からインク滴を噴射させる(S603)。そして、受光素子53a、53bのいずれか一方が光を受光していなければ(S604:NO)、以下に示すS607に進み、受光素子53a、53bの両方が光を受光していれば(S604:YES)、S605に進む。S605においては、キャリッジ2が、走査方向に関して光検出部6の他方の端の外側に隣接する位置まで移動していれば(S605:YES)、そのノズル15からインク滴が噴射されていないと判定し(S606)S607に進む。一方、キャリッジ2が、走査方向に関して光検出部6の他方の端の外側に隣接する位置まで移動していなければ(S605:NO)、S602に戻る。
S607においては、全てのノズル15についてインク滴が噴射されているか否かの判定が終了していれば(S607:YES)、S502に進み、全てのノズル15についてインク滴が噴射されているか否かの判定が終了していなければ(S607:NO)、S601に戻る。
次に、上記S503のメンテナンス動作の過程について説明する。図23はこの過程を示すフローチャートである。
上記メンテナンス動作においては、まず、キャリッジ2を図示ししないインク吸収体に対向する位置まで移動させてから、インク滴が噴射されていないノズル15からインク滴を噴射させるフラッシングを行う(S701)。例えば、ノズル15内のインクの乾燥によりインクの粘性が増加していることによってノズル15からインク滴が噴射されていない場合には、フラッシングにより、ノズル15からインク滴が噴射されるようになる。
そして、フラッシングによりそのノズル15からインク滴が噴射されるようになった場合には(S702:YES)メンテナンス動作を終了し、フラッシングを行ってもノズル15からインク滴が噴射されない場合は(S702:NO)、図20(b)に示すように、キャリッジ2をパージキャップ8aに対向する位置まで移動させてからパージキャップ8aを上方に移動させてインク噴射面4aに当接させ、パージキャップ8aに接続された図示しないポンプ等によりインク噴射面4aとパージキャップ8aとに囲まれる空間内の圧力を低下させることによって全てのノズル15内のインクを吸い出すパージを行って(S703)からメンテナンス動作を終了する。このようなパージを行えば、ノズル15の目詰まりなどが確実に解消され、ノズル15からインク滴が噴射されるようになる。
ここで、上記フラッシングは、インク滴が噴射されていないノズル15のみからインク滴を噴射させるので消費されるインクの量も比較的少なく、一方、上記パージは、全てのノズル15からインクを吸い出すため消費されるインクの量が多い。したがって、メンテナンス動作において先にフラッシングを行い、それでもノズル15からインク滴が噴射されなかった場合にのみパージを行うことにより、メンテナンス動作において消費されるインクの量を低減することができる。
なお、上記S702でノズル15からインク滴が噴射されるようになったか否かは、上記S601のインク滴が噴射されていないノズル15を特定するときと同様の方法で判定する。
また、上述したようにノズル15におけるインク滴の噴射方向にずれが生じていること、及び、ノズル15からインク滴が噴射されていないことを別々に検出することができるので、このように、ノズル15においてインク滴の噴射方向にずれが生じている場合と、ノズル15からインク滴が噴射されていない場合とで、異なるメンテナンス動作を行うことができる。つまり、ノズル15からインク滴が噴射されないときには、フラッシングを行ってもインク滴が噴射されない場合に、効果のないワイピングを行うことなくパージを行うことができる。これにより、不要なワイピングによりワイパ7aがインク噴射面4aに接触し、インクジェットヘッド4の寿命が短くなってしまうのが防止される。
以上に説明した第1実施形態によると、2つのレーザ光源52a、52bが一平面に沿って互いに交差するレーザ光L1、L2を出射しているので、あるノズル15から噴射されたインク滴の噴射方向が一平面におけるいずれかの方向にずれていれば、そのノズル15から液滴を噴射させながら、インクジェットヘッド4を走査方向に移動させた場合に、2つのレーザ光源52a、52bから出射されるレーザ光L1、L2の少なくとも一方がそのノズル15から噴射された液滴によって遮断されて対応する受光素子53a、53bがレーザ光を受光しなくなるときのインクジェットヘッド4の位置が、インク滴の噴射方向が正常である場合のインクジェットヘッド4の位置とは異なる。したがって、ノズル15からインク滴を噴射させながらインクジェットヘッド4を走査方向に移動させることにより、ノズル15から噴射されたインク滴の噴射方向が一平面におけるいずれの方向にずれた場合であっても、インク滴の噴射方向のずれを検出することができる。
また、インクジェットヘッド4を走査方向に移動させると、2つのレーザ光源52a、52bが出射したレーザ光L1、L2が複数のノズル15の噴射口15aと対向する領域を通過するので、あるノズル15からインク滴が噴射されていれば、インクジェットヘッド4がいずれかの位置にきたときに、2つの受光素子53a、53bが光を受光しなくなるが、そのノズル15からインク滴が噴射されていない場合には、この間に常にレーザ光を受光する。したがって、ノズル15からインク滴を噴射させながらインクジェットヘッド4を走査方向に移動させることにより、ノズル15からインク滴が噴射されなかったことも検出することができる。
また、ずれ量算出部65において、2つのレーザ光源52a、52bからそれぞれ出射された光L1、L2が、あるノズル15から噴射されたインク滴によりそれぞれ遮られて受光素子53a、53bにより受光されなくなるときの、インクジェットヘッド4の位置と、そのノズル15から正常に液滴が噴射された場合に受光素子53a、53bがレーザ光を受光しなくなるときのインクジェットヘッド4の位置と間の走査方向に関するずれ量から、そのノズル15におけるインク滴の噴射方向のずれ量を正確に算出することができる。
また、ずれ判定部64により、ノズル15から噴射されるインク滴の噴射方向にずれが生じているかを容易に判定することができるので、ノズル15から噴射されるインク滴の噴射方向にずれが生じているか否かを判定した後、インク滴の噴射方向にずれが生じていると判定されたノズル15についてのみ、インク滴の噴射方向のずれ量を算出することにより、ノズル15から噴射されるインク滴の噴射方向のずれ量を短時間で算出することができる。
また、インクジェットヘッド4が光検知装置6に対向する位置において走査方向に移動する間、レーザ光源52a、52bから出射されたレーザ光L1、L2が同時に2以上のノズル15の噴射口15aに重ならないので、全てのノズル15からインク滴を噴射させながらインクジェットヘッド4を走査方向に関して光検知装置6の一方の端の外側に隣接する位置から他方の端の外側に隣接する位置まで一度だけ移動させることによって、全てのノズル15に関してインク滴の噴射方向にずれが生じているか否かを判定することができる。これにより、短時間で全てのノズル15に関してインク滴の噴射方向にずれが生じているか否かを判定することができる。
また、基準量記憶部66が、走査方向及び紙送り方向に関して、個別に基準量を記憶しており、異常判定部67は、ずれ量算出部65において算出したあるノズル15から噴射されるインク滴の噴射方向の、走査方向及び紙送り方向の少なくとも一方に関するずれ量が、その方向に関する基準量を超えたときに、そのノズル15においてインク滴の噴射異常が生じていると判定しているので、ノズルにおけるインク滴の噴射方向のずれ量が問題になる程度大きくなったときに異常が発生していることを精度よく判定することができる。
また、インクジェットヘッド4は、紙送り方向に搬送される記録用紙Pに走査方向に往復移動しながらインク滴を噴射するシリアル式のヘッドであり、基準量記憶部66には、紙送り方向に関する基準量と走査方向に関する基準量が記憶されているので、シリアル式ヘッドを備えたインクジェットプリンタ1において、インク滴の噴射方向のずれを検出することができる。
また、インクジェットヘッド4がシリアル式のヘッドであるので、インク滴の噴射方向が紙送り方向にずれると、印刷が完了した記録用紙Pに走査方向に連続して延びたインク滴が噴射されない筋状の領域W1ができて印刷品質が大きく低下しまう。一方、インク滴の噴射方向が走査方向にずれても、筋状の領域は形成されないため、画質への悪影響は少ない。そこで、紙送り方向に関する基準量を走査方向に関する基準量よりも小さくすることにより、紙送り方向においては、僅かなずれであっても検出し、その検出に応じてメンテナンス動作を行なわせることで画質の劣化を回避し、走査方向においては、画質に影響のある大きなずれが検出されたときだけメンテナンス動作を行なわせることで、メンテナンス動作を効率良く行わせることができる。
また、インクジェットヘッド4と光検知装置6との相対移動の方向、及び、印刷を行う際にインクジェットヘッド4の移動方向が、ともに走査方向であるので、つまり、本発明の第1方向と第3方向とが平行になるので、インクジェットヘッド4と光検知装置6とを相対移動させるためのスペースが小さくてすみ、インクジェットプリンタ1を小型化することができる。なお、この場合、第1方向と直交する本発明に係る第2方向と、第3方向と直交する本発明に係る第4方向も平行になる。
次に、第1実施形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。
第1実施形態においては、キャリッジ2によりインクジェットヘッド4を走査方向に移動させることによりインクジェットヘッド4と光検知装置6とを走査方向に相対移動させたが、光検知装置6が走査方向に移動可能に構成されており、光検知装置6を走査方向に移動させることによってインクジェットヘッド4と光検知装置6とを走査方向に相対移動させてもよい。この場合には、第1実施形態で位置検出部63においてインクジェットヘッド4の位置を検出する代わりに光検知装置6の位置(光検知装置6のインクジェットヘッド4に対する位置)を検出する。
また、この場合には、光検知装置6が、平面視で紙送り方向(第3方向)に交差する方向(第1方向)に関して、2つのレーザ光源52a、52bと2つの受光素子53a、53bとの間に全てのノズル15の噴射口15aが位置するように配置されているとともに、第1方向と直交する方向(第2方向)に移動可能に構成されていてもよい。つまり、本発明の第3方向が本発明の第1方向と平行でなく、本発明の第4方向が本発明の第2方向と平行でなくてもよい。
また、第1実施形態においては、インク滴の噴射方向にずれが生じているノズル15を特定する際に、全てのノズル15からインク滴を噴射させた状態でキャリッジ2を走査方向に移動させていたが、キャリッジ2を走査方向に移動させ、少なくともインクジェットヘッド4がノズル15の噴射口15aとレーザ光L1、L2に重なる位置にきたときに、このノズル15からインク滴を噴射してもよい。
また、第1実施形態においては、インクジェットヘッド4が移動する間、平面視でレーザ光L1、L2が同時に2以上の噴射口15aに重ならないように構成されていたが、この間に、レーザ光L1、L2が同時に2以上の噴射口15aに重なるように構成されていてもよい。この場合には、インク滴の噴射方向にずれが生じているノズル15を特定するために、レーザ光L1、L2の同時に重なる噴射口15aのうちの1つのみからインク滴を噴射させた状態で、レーザ光L1、L2と各噴射口15aとが重なる位置にインクジェットヘッド4を移動させる動作を、インク滴を噴射するノズル15を切り替えつつ複数回繰り返すことによって、インク滴の噴射方向にずれが生じているノズル15を特定する。
また、第1実施形態においては、インク滴の噴射方向にずれが生じているノズル15を特定してから、特定されたノズル15についてのみインク滴の噴射方向のずれ量を算出したが、インク滴の噴射方向にずれが生じているノズル15の特定を行わず、全てのノズル15についてインク滴の噴射方向のずれ量を算出してもよい。
また、第1実施形態においては、基準量記憶部66に走査方向及び紙送り方向に関する基準量を個別に記憶させていたが、基準量記憶部66に1つの基準量を記憶させておき、異常判定部67が、ずれ量算出部65によって算出された走査方向及び紙送り方向に関するインク滴の噴射方向のずれ量の少なくともいずれか一方がその基準量よりも大きくなったときに異常が発生していると判定してもよい。
[第2実施形態]
次に、本発明に係る第2実施形態について説明する。第2実施形態は、ノズルからインク滴を噴射するインクジェットプリンタに本発明を適用した第1実施例とは異なる一例である。なお、以下の説明においては、第1実施形態と同様の部分については適宜その説明を省略する。
図24(a)は第2実施形態に係るインクジェットプリンタ101の概略斜視図であり、図24(b)は図24(a)から記録用紙P、用紙搬送ローラ105及び制御装置109を除いた図である。図25は、図24の平面図である。図26(a)は、図25のE−E線断面図であり、図26(b)は、図26(a)においてインク滴によってレーザ光が遮断されているときの図である。図24〜図26に示すように、インクジェットプリンタ101は、インクジェットヘッド104(液滴噴射ヘッド)、搬送ローラ105(被噴射媒体搬送手段)、光検知装置106、及び、制御装置109を有する。また、図24〜図26には図示しないが、インクジェットプリンタ101はワイピングユニット107及びパージユニット108(図28参照)を有する。
インクジェットヘッド104は、走査方向(図24の左右方向、第1方向、第4方向)に延びており、インクジェットプリンタ101に固定されている。インクジェットヘッド104は、静止した状態で、その下面であるインク噴射面104a(液滴噴射面、図26参照)に形成された複数のノズル15(図27参照)の噴射口15a(図26参照)から真下にインク滴を噴射するライン式のヘッドである。
図27はインクジェットヘッド104の平面図である。図27に示すように、インクジェットヘッド104は、第1実施形態と同様、圧力室10、マニホールド流路11などが形成された流路ユニット131と流路ユニット131の上面に配置された圧電アクチュエータ132とを有する。ただし、流路ユニット131においては、複数の圧力室10及びノズル15が走査方向に配列されているとともに、このような圧力室10及びノズル15の列が紙送り方向に4列に配列されている。流路ユニット131の他の部分及び圧電アクチュエータ132の各部分も、圧力室10に対して、第1実施形態と同様の位置関係となるように配置されている。
図24〜図26に戻って、搬送ローラ105は記録用紙Pを紙送り方向(図24の手前方向、第2方向、第3方向)に搬送する。そして、インクジェットプリンタ101においては、搬送ローラ105に搬送された記録用紙Pにインクジェットヘッド104によりノズル15からインク滴を噴射して印刷を行う。
光検知装置106は、基材151、2つのレーザ光源152a、152b、これら2つのレーザ光源152a、152bからそれぞれ出射されたレーザ光を受光する受光素子153a、153b、及び、移動装置155を有している。基材151は、走査方向(図26の左右方向、第1方向)に長い略長方形の平面形状を有しており、走査方向における右端部及び左端部には、図26の上方に突出した突出部151a、151bを有している。
2つのレーザ光源152a、152bは、それぞれ突出部151a内側の側面の図25における下端部付近及び上端部付近に固定されており、2つの受光素子153a、153bは、それぞれ突出部151b内側の側面の図25における上端部付近及び下端部付近に固定されている。
さらに、走査方向に関して、2つのレーザ光源152a、152bと、2つの受光素子153a、153bとの間に(図26に示す2つの点線の間に)全てのノズル15の噴射口15aが位置している。つまり、レーザ光源152a、152bは、インク噴射面4aに平行な一平面上の、走査方向に関して複数のノズル15の噴射口15aと対向する領域よりも外側に配置されており、受光素子153a、153bは、この一表面上の走査方向に関して複数のノズル15の噴射口15aと対向する領域を挟んでレーザ光源152a、152bと反対側の領域に配置されている。
そして、レーザ光源152aは受光素子153aに向かってレーザ光L1を出射し、レーザ光源152bは受光素子153bに向かってレーザ光L2を出射する(一平面に沿ってレーザ光L1、L2を出射する)。このとき、図26(a)に示すように、レーザ光源152aと受光素子153aとの間にインク滴が位置していないときには、レーザ光源152aから出射されたレーザ光は受光素子153aまで到達し、レーザ光源152bと受光素子153bとの間にインク滴が位置していないときには、レーザ光源152bから出射されたレーザ光は受光素子53bまで到達する。一方、図26(b)に示すように、レーザ光源152aと受光素子53aとの間にインク滴Iが位置しているときには、レーザ光源152aから出射された光はこのインク滴によって遮られ、受光素子153aには到達せず、レーザ光源52bと受光素子53bとの間にインク滴Iが位置しているときには、レーザ光源152bから出射された光はこのインク滴Iによって遮られ、受光素子153bには到達しない。
また、2つのレーザ光L1、L2とノズル15の噴射口15aとは、図10と同様の位置関係となる。ただし、第2実施形態においては、図10の走査方向が紙送り方向に対応し、図10の紙送り方向が走査方向に対応する。つまり、2つのレーザ光L1、L2はそれぞれ紙送り方向に対して時計回り方向、反時計回り方向にθだけずれた方向に出射され、2つのレーザ光L1、L2は互いに交差しており、この角度θは、第1実施形態と同様、光検知装置106が紙送り方向に移動したときに、レーザ光L1、L2が、平面視で2以上の噴射口15aに同時に重ならないような角度となっている。
移動装置155は、光検知装置106を紙送り方向に(図25の上下方向に、第2方向に)移動させる。これにより、インクジェットヘッド104と光検知装置106とが紙送り方向に相対移動する。ここで、光検知装置106の移動方向(第2方向)と紙送り方向(第3方向)とが平行であるので、インクジェットプリンタ101においてインクジェットヘッド104の下方の紙送り方向に延びた領域を、光検知装置106を移動させる領域とすることができ、インクジェットプリンタ101を小型化することができる。
次に、インクジェットプリンタ101を制御する制御装置109について説明する。図28は、制御装置109のブロック図である。
図28に示すように、制御装置109は、正常位置記憶部160、インクジェットヘッド制御部161、移動装置制御部162、位置検出部163、ずれ判定部164、ずれ量算出部165、基準量記憶部166、異常判定部167、噴射判定部168、メンテナンス制御部169を有している。
正常位置記憶部160は、平面視で各ノズル15の噴射口15aとレーザ光L1、L2とが重なるときの光検知装置106の位置(あるノズル15から噴射されたインク滴の噴射方向が正常である場合に、受光素子153a、153bがそれぞれレーザ光L1、L2を受光しなくなるときの光検知装置106のインクジェットヘッド104に対する位置)を記憶している。インクジェットヘッド制御部161は、ドライバIC50を制御することによりインクジェットヘッド104の動作を制御する。移動装置制御部162は移動装置155の動作を制御することによって光検知装置106の移動を制御する。
位置検出部163は紙送り方向に関する光検知装置106の位置(光検知装置106のインクジェットヘッド104に対する位置)を検出する。ずれ判定部164は、ノズル15におけるインク滴の噴射方向にずれが生じているか否かを判定する。ずれ量算出部165は、ノズル15におけるインク滴の噴射方向のずれ量を算出する。基準量記憶部166には、走査方向及び紙送り方向に関する、許容できるインク滴の噴射方向のずれ量の最大値である基準量が個別に記憶されている。
図29(a)は図27の4列に配列された複数のノズル15のうちの一列に属する複数のノズル15から正常にインク滴が噴射されたときの記録用紙Pにおけるインク滴Iの着弾位置を示す図であり、図29(b)は図27の左から2番目のノズル15におけるインクの噴射方向が紙送り方向にずれている場合の記録用紙Pにおけるインク滴Iの着弾位置を示す図であり、図29(c)は図27の左から2番目のノズル15におけるインク滴の噴射方向が走査方向にずれている場合の記録用紙Pにおけるインク滴Iの着弾位置を示す図である。図29(b)に示すように、インク滴の噴射方向が紙送り方向にずれている場合には、ずれ量が小さければ、印刷品質の低下は比較的小さくてすむが、図29(c)に示すように、インク滴の噴射方向が走査方向にずれている場合には、ずれ量が小さくても、紙送り方向に連続して延びたインク滴が噴射されない筋状の領域W2ができてしまい、印刷品質の低下は大きなものとなってしまう。したがって、印刷品質の低下を防止するために、基準量記憶部166に記憶されている走査方向に関する基準量は、紙送り方向に関する基準量よりも小さいものとなっている。
図28に戻って、異常判定部167は、ずれ量算出部165において算出された走査方向及び紙送り方向に関するノズル15におけるインク滴の噴射方向のずれ量の少なくとも一方が、基準量記憶部166に記憶された各方向に関する基準量よりも大きいときに、異常が発生したと判定する。
噴射判定部168は、インク滴が噴射されていないノズル15が存在しているか否かを判定する。メンテナンス制御部169は、ワイピングユニット107、パージユニット108の制御を行う。
なお、ワイピングユニット107は、ワイピングユニット4(図1参照)と同様、インク噴射面104aに付着したインクを除去するものであり、パージユニット108は、パージユニット8(図1参照)と同様、パージを行うものである。ただし、ワイピングユニット104は、パージユニット4とは異なり、図示しないワイパの先端をインク噴射面104aに当接させつつ、自ら紙送り方向に移動することによってインク噴射面104aに付着したインクを除去し、パージユニット108は、パージユニット8とは異なり、自ら紙送り方向に移動してインク噴射面104aに対向する位置まで移動する。
次に、ノズル15においてインク滴の噴射方向のずれを解消する過程について説明する。
インクジェットプリンタ101においても、インクジェットプリンタ1(図1参照)と同様、図13に示すように、複数のノズル15の中からインク滴の噴射方向にずれが生じているノズル15を特定し(S101)、インク滴の噴射方向にずれが生じているノズル15が存在しているときには(S102:YES)、インク滴の噴射方向にずれが生じているノズル15に関してのみ、走査方向及び紙送り方向のインク滴の噴射方向に関するずれ量を算出する(S103)。そして、算出した走査方向及び紙送り方向のずれ量の少なくとも一方が基準量記憶部166に記憶された各方向に関する基準量よりも大きい場合に(S104:YES)メンテナンス動作を行う(S105)。
次に、第2実施形態における上記S101のインク滴の噴射方向にずれが生じているノズル15を特定する過程について説明する。図30はこの過程を示すフローチャートである。
第2実施形態においてインク滴の噴射方向にずれが生じているノズル15を特定する過程は、図30に示すように、第1実施形態の図14に示す過程で、S202の代わりに、あるノズル15の噴射口15aとレーザ光L1とが重なる位置まで光検知装置106を移動させ(S1202)、S205の代わりに、全ての噴射口15aに重なる位置に光検知装置106が移動したか否かを判断し(S1205)、S206の代わりに、あるノズル15の噴射口15aとレーザ光L2とが重なる位置まで光検知装置106を移動させ(S1206)、S209の代わりに、全ての噴射口15aに重なる位置に光検知装置106が移動したか否かを判断する(S1209)ものである。他の工程(S201、S203〜S205、S207、S208)については第1実施形態と同様であるのでここでは説明を省略する。
ここで、第2実施形態においても、第1実施形態と同様、レーザ光源152a、152bから出射されたレーザ光が同時に2以上のノズル15の噴射口15aに重ならないので、全てのノズル15からインク滴を噴射させながら光検知装置106を、紙送り方向に関してインクジェットヘッド104の一方の端の外側に隣接する位置から他方の端の外側に隣接する位置まで一度だけ移動させることによって、短時間で全てのノズル15に関してインク滴の噴射方向にずれが生じているか否かを判定することができる。
以上説明したS101のインク滴の噴射方向にずれが生じているノズルを特定する工程において、光検知装置106の移動は連続的であってもよいし、あるノズル15の噴射口15aとレーザ光L1またはL2とが重なる位置で間欠的に停止し、ノズル15からの噴射とキャリッジ2の移動が同時に行われない(ノズル15からの噴射と光検知装置106の移動が交互に行われる)ものであってもよい。
次に、上記S102のノズル15におけるインク滴の噴射方向のずれ量を算出する過程について説明する。図31は、この過程を示すフローチャートである。
第2実施形態においてノズル15におけるインク滴の噴射方向のずれ量を算出する過程は、図31に示すように、第1実施形態の図15に示す過程で、S301の代わりに、ある噴射口15aとレーザ光L1とが重なる位置まで光検知装置106を移動させ(S1301)、S305、S311の代わりに光検知装置106の位置を検出し(S1305、S1311)、S304、S310の代わりに光検知装置106を所定量だけ移動させ(S1304、S1310)、S306の代わりに光検知装置106の移動量xを算出し(S1306)、S307の代わりに、その噴射口15aとレーザ光L2とが重なる位置まで光検知装置106を移動させ、S312の代わりに光検知装置106の移動量yを算出し、(S1312)、S313の代わりに、S1306及びS1312において算出した移動量x、yからインク滴の噴射方向のずれ量を算出する(S1313)ものである。他のステップ(S303、S304、S308、S309、S314)に関しては第1実施形態と同様であるので、ここでは説明を省略する。
ここで、光検知装置106の移動量x、y及び噴射方向のずれ量の算出方向について説明する。図32、図33は、このときのインクジェットプリンタ101の動作を示した図である。図32、図33においては、正常にインク滴が噴射された場合のインク滴I1(噴射口15aの位置)を一点鎖線で示し、実際に噴射されるインク滴I2を実線で示している。
S1301においては、図32(a)に示すように、光検知装置106が、あるノズル15の噴射口15aとレーザ光L1とが重なる位置にくる。また、S1305においては、図32(b)に示すように、光検知装置106が、このノズル15から噴射されたインク滴I2がレーザ光L1に重なり、受光素子153aがレーザ光を受光しなくなる位置にきたときに、位置検出部163によって光検知装置106の位置を検出する。そして、S1307において、正常位置記憶部160に記憶されたS1305における光検知装置106の位置と、上記S1306において検出された光検知装置106の位置とから、光検知装置106の紙送り方向に関する移動量xを算出する。
さらに、S1307においては、図33(a)に示すように、光検知装置106が、そのノズル15の噴射口15aとレーザ光L2とが重なる位置にくる。また、S1311においては、図33(b)に示すように、光検知装置106が、このノズル15から噴射されたインク滴I2がレーザ光L2に重なり、受光素子153bがレーザ光を受光しなくなる位置にきたときに、位置検出部163によって光検知装置106の位置を検出する。そして、S1312において、正常位置記憶部160に記憶されたS1307における光検知装置106の位置と、上記S1311において検出した光検知装置106の位置とから、光検知装置106の紙送り方向に関する移動量yを算出する。
ここで、図32のレーザ光L1、図33のレーザ光L2及び図32、図33のインク滴I1、I2の位置関係をインク滴I1、I2を基準として書き直すと、第1実施形態の図18と同様の位置関係になる。ただし、第2実施形態においては、図18の走査方向が紙送り方向に対応し、図18の紙送り方向が走査方向に対応する。したがって、第1実施形態と同様にして、S1306、S1312において算出した移動量x、yからインク滴の噴射方向の走査方向及び紙送り方向に関するずれ量をそれぞれ、(y−x)/2tanθ、(x+y)/2と正確に算出することができる。
また、第2実施形態のS103においても、第1実施形態と同様、S101においてインク滴の噴射方向にずれが生じていると判定されたノズル15についてのみインク滴の噴射方向のずれ量を算出しているので、インク滴の噴射方向のずれ量を短時間で算出することができる。
次に、第2実施形態における図13のS105のメンテナンス動作について説明する。異常判定部167により異常が発生していると判定された場合には、第1実施形態と同様、図19に示すように、インク滴の噴射方向にずれが生じているノズル15においてフラッシングを行い(S401)、それでもインク滴の噴射方向のずれが解消されなければ(S402:NO)ワイピングを行い(S403)、それでもインク滴の噴射方向のずれが解消されなければ(S404:NO)、パージを行う(S405)。ただし、第2実施形態の場合は、第1実施形態とは異なり、フラッシングを行う際には、インク噴射面104aに対向する位置まで移動してきた図示しないインク吸収体にノズル15からインク滴を噴射し、ワイピングを行う際には、ワイピングユニット107が紙送り方向に移動することによってインク噴射面104aに付着したインクを除去し、パージ行う際には、図示しないパージキャップがインク噴射面104aに対向する位置まで移動してくるとともに、インク噴射面104aに当接し、図示しないポンプなどにより、パージキャップとインク噴射面104aとに囲まれる空間の圧力を低下させることによって全てのノズル15からインクを吸い出す。
そして、第2実施形態においても、メンテナンス動作においてフラッシングを行い、それでもインク滴の噴射方向のずれが解消されなかった場合にのみ、ワイピングを行い、それでもインク滴の噴射方向のずれが解消されなかった場合にのみ、パージを行うことにより、第1実施形態と同様、メンテナンス動作において消費されるインクの量を低減することができるとともに、インクジェットヘッド4の寿命を長くすることができる。
次に、インク滴が噴射されていないノズル15において、インクが正常に噴射されるようにする過程について説明する。この過程においては、第1実施形態と同様、図21に示すように、まず、インク滴が噴射されていないノズル15を特定する(S501)。そして、インク滴が噴射されていないノズル15がない場合には(S502:NO)動作を終了し、インク滴が噴射されていないノズル15がある場合には(S502:YES)、メンテナンス動作を行って(S503)から動作を終了する。
次に、第2実施形態における図21のS501の過程について説明する。図34はこの過程を示すフローチャートである。インク滴が噴射されていないノズル15を特定する過程は、図34に示すように、第1実施形態の図22に示す過程で、S601の代わりに、光検知装置106を紙送り方向に関してインクジェットヘッド104の一方の端の外側に隣接する位置に移動させ(S1601)、S602の代わりに光検知装置106を紙送り方向に所定量だけ移動させ(S1602)、S605の代わりに光検知装置106が紙送り方向に関してインクジェットヘッド104の他方の端の外側に隣接する位置まで移動したか否かを判断する(S1605)ものである。他のステップ(S603、S604、S606、S607)については第1実施形態と同様であるのでここでは説明を省略する。
次に、第2実施形態における図22のS503の過程について説明する。第2実施形態においても、第1実施形態同様、図23に示すように、インク滴が噴射されていないノズル15からインク滴を噴射させるフラッシングを行い(S701)、フラッシングを行ってもノズル15からインク滴が噴射されない場合に(S702:NO)のみパージを行う(S703)。ただし、第2実施形態においては、第1実施形態とは異なり、フラッシングを行う際には、インク噴射面104aに対向する位置まで移動してきた図示しないインク吸収体にノズル15からインク滴を噴射し、パージ行う際には、図示しないパージキャップがインク噴射面104aに対向する位置まで移動してくるとともに、インク噴射面104aに当接し、図示しないポンプなどにより、パージキャップとインク噴射面104aとに囲まれる空間の圧力を低下させることによって全てのノズル15からインクを吸い出す。
第2実施形態においても、メンテナンス動作において先にフラッシングを行い、それでもノズル15からインク滴が噴射されなかった場合にのみパージを行うことにより、メンテナンス動作において消費されるインクの量を低減することができる。
以上に説明した第2実施形態によると、2つのレーザ光源152a、152bが一平面に沿って互いに交差するレーザ光を出射しているので、あるノズル15から噴射された液滴の噴射方向が一平面におけるいずれかの方向にずれていれば、そのノズル15から液滴を噴射させながら、光検知装置106を紙送り方向に移動させた場合に、2つのレーザ光源152a、152bの少なくとも1つから出射されるレーザ光がそのノズル15から噴射された液滴によって遮断されて対応する受光素子153a、153bがレーザ光を受光しなくなるときの、光検知装置106の位置が、インク滴の噴射方向が正常である場合の光検知装置106の位置とは異なる。したがって、ノズル15からインク滴を噴射させながら光検知装置106を紙送り方向に移動させることにより、ノズル15から噴射されたインク滴の噴射方向が一平面におけるいずれの方向にずれた場合であっても、液滴の噴射方向のずれを検出することができる。
また、光検知装置106を紙送り方向に移動させると、2つのレーザ光源152a、152bが出射した光が複数のノズル15の噴射口15aと対向する領域を通過するので、あるノズル15からインク滴が噴射されていれば、光検知装置106がいずれかの位置にきたときに、2つの受光素子153a、153bが光を受光しなくなるが、そのノズル15からインク滴が噴射されていない場合には、この間に2つの受光素子153a、153bがレーザ光を受光しなくなることがなく、常にレーザ光を受光する。したがって、ノズル15からインク滴を噴射させながら光検知装置106を紙送り方向に移動させることにより、ノズル15からインク滴が噴射されなかったことも検出することができる。
また、ずれ量算出部165において、2つのレーザ光源152a、152bからそれぞれ出射された光が、あるノズル15から噴射されたインク滴によりそれぞれ遮られて受光素子153a、153bにより受光されなくなるときの、光検知装置106の位置と、そのノズル15から正常に液滴が噴射された場合に受光素子153a、153bがレーザ光を受光しなくなるときの光検知装置106の位置との間の紙送り方向に関するずれ量から、そのノズル15におけるインク滴の噴射方向のずれ量を正確に算出することができる。
また、ずれ判定部164により、ノズル15から噴射されるインク滴の噴射方向にずれが生じているかを容易に判定することができるので、ノズル15から噴射されるインク滴の噴射方向にずれが生じているか否かを判定した後、インク滴の噴射方向にずれが生じていると判定されたノズル15についてのみ、インク滴の噴射方向のずれ量を検出することにより、ノズル15から噴射されるインク滴の噴射方向のずれ量を短時間で算出することができる。
このとき、レーザ光源152a、152bから出射されたレーザ光が同時に2以上のノズル15の噴射口15aに重ならないので、全てのノズル15からインク滴を噴射させながら光検知装置106を、紙送り方向に関してインクジェットヘッド104の一方の端の外側に隣接する位置から他方の端の外側に隣接する位置まで一度だけ移動させることによって、短時間で全てのノズル15に関してインク滴の噴射方向にずれが生じているか否かを判定することができる。
また、基準量記憶部166が、走査方向及び紙送り方向に関して、個別に基準量を記憶しており、異常判定部167は、ずれ量算出部165において算出したあるノズル15から噴射されるインク滴の噴射方向の、走査方向及び紙送り方向の少なくとも一方に関するずれ量が、その方向に関する基準量を超えたときに、そのノズル15においてインク滴の噴射異常が生じていると判定しているので、ノズル15におけるインク滴の噴射方向のずれ量が問題になる程度大きくなったときに、異常が発生していることを精度よく判定することができる。
また、インクジェットヘッド104は、紙送り方向に搬送される記録用紙Pに静止した状態でインク滴を噴射するライン式のヘッドであり、基準量記憶部166には、紙送り方向に関する基準量と走査方向に関する基準量が記憶されているので、ライン式ヘッドを備えたインクジェットプリンタ101において、インク滴の噴射方向のずれを検出することができる。
また、インクジェットヘッド104がライン式のヘッドであるので、インク滴の噴射方向が走査方向にずれると、印刷が完了した記録用紙Pに紙送り方向に連続して延びたインク滴が噴射されない筋状の領域W2ができて印刷品質が大きく低下しまう。一方、インク滴の噴射方向が紙送り方向にずれても、筋状の領域は形成されないため、画質への悪影響は少ない。そこで、走査方向に関する基準量を紙送り方向に関する基準量よりも小さくすることにより、印刷品質の低下を防止することができる。
また、光検知装置106の移動方向を紙送り方向と平行にすることにより、つまり、本発明に係る第2方向と第3方向とを平行にすることにより、インクジェットプリンタ101を小型化することができる。なお、この場合には、第2方向と直交する本発明に係る第1方向と、第3方向と直交する本発明に係る第4方向も平行となる。
次に、第2実施形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。
第2実施形態においては、光検知装置106を紙送り方向に移動させていたが、光検知装置106が、平面視で走査方向(第4方向)に交差する方向(第1方向)に関して、2つのレーザ光源152a、152bと2つの受光素子153a、153bとの間に全てのノズル15の噴射口15aが位置するように配置されているとともに、第1方向と直交する方向(第2方向)に移動可能に構成されていてもよい。つまり、本発明の第3方向が本発明の第2方向と平行でなく、本発明の第4方向が本発明の第1方向と平行でなくてもよい。
また、第2実施形態においても、第1実施形態と同様、インク滴の噴射方向にずれが生じているノズル15を特定する際に、光検知装置106を紙送り方向に移動させ、少なくともレーザ光L1、L2がノズル15の噴射口15aに重なる位置にきたときに、このノズル15からインク滴を噴射してもよい。
また、第1実施形態と同様、光検知装置106が移動する間、平面視でレーザ光L1、L2が同時に2以上の噴射口15aに重なるように構成されていてもよい。
また、第1実施形態同様、噴射方向にずれが生じているノズル15を特定せず、全てのノズル15についてインク滴の噴射方向のずれ量を算出してもよい。
また、第1実施形態と同様、基準量記憶部166に1つの基準量を記憶させておき、異常判定部167が、ずれ量算出部165によって算出された走査方向及び紙送り方向に関するインク滴の噴射方向のずれ量の少なくともいずれか一方がその基準量よりも大きくなったときに異常が発生していると判定してもよい。
以上に説明した第1、2実施形態では、本発明を、インク滴を噴射するインクジェットプリンタに適用した例について説明したが、試薬、生体溶液、配線材料溶液、電子材料溶液、冷媒用、燃料用などインク以外の遮光性の液滴を噴射する液滴噴射装置に本発明を適用することも可能である。