JP2008080540A - 積層フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】高温多湿の環境下でも透明ガスバリア材として利用できる積層フィルムを提供すること。
【解決手段】ポリエチレンナフタレート(PEN)からなる基材1の少なくとも一方の面に、リアクティブイオンエッチング(RIE)による前処理を施し、前記前処理を施した基材面上に透明プライマー層2を積層し、前記透明プライマー層上に無機化合物層3を積層することを特徴とする積層フィルム。前記前処理を施した基材面上に透明プライマー層を積層するので、前記基材と前記透明プライマー層との密着性が改善して、高温多湿の環境下でもガスバリア性が維持できる。
【選択図】図1

Description

本発明は積層フィルムに関し、特に、透明性を有するガスバリア材として、食品、医薬品、精密電子部品等の包装分野、また産業資材分野に好適に用いられるものである。
近年、食品や非食品及び医薬品等の包装に用いられる包装材料は、内容物の変質を抑制しそれらの機能や性質を保持するために、包装材料を透過する酸素、水蒸気、その他内容物を変質させる気体による影響を防止する必要があり、これらを遮断するガスバリア性等を備えることが求められている。そのため従来から、温度・湿度などの影響が少ないアルミ等の金属箔をガスバリア層として用いた包装材料が一般的に用いられてきた。
ところが、アルミ等の金属箔を用いた包装材料は、温度・湿度の影響がなく高度なガスバリア性に優れるが、包装材料を透視して内容物を確認することができない、使用後の廃棄の際は不燃物として処理しなければならない、検査の際金属探知器が使用できないなどの欠点を有し問題があった。
そこで、これらの欠点を克服した包装材料として、高分子フィルム上に、真空蒸着法やスパッタリング法等の形成手段により酸化珪素、酸化アルミニウム等の無機化合物の蒸着膜を形成したフィルムが開発されている(例えば特許文献1又は2参照)。これらの蒸着フィルムは、透明性及び酸素、水蒸気等のガス遮断性を有していることが知られ、金属箔等では得ることのできない透明性、ガスバリア性を有する包装材料として好適とされている。基材としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)がその機械強度や耐熱性の優位性から、広く用いられてきた。
しかしながら、従来のようにPETを基材として用いた蒸着フィルムでは、長時間水分と接触するようなアプリケーション(例えば太陽電池用バックシートなどの長期間屋外で用いる用途)では、PETが加水分解を起こし脆弱化することから、所望のバリア性を維持できない。
この問題を解決するために、PETよりも耐加水分解性の高いポリエチレンナフタレート(PEN)を基材として用いることが考えられたが、PEN表面の活性が低く、蒸着層と十分な密着性を発現することが出来ない。またPEN上に種々のプライマーが為されてきたが、これもプライマーと基材間の密着性が乏しく、結果として十分な密着性を持つ蒸着PENフィルムは作製することが出来なかった。
米国特許第3442686号明細書 特公昭63−28017号公報
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、高温多湿の環境下でも透明ガスバリア材として利用できる積層フィルムを提供することを課題とする。
本発明において上記課題を達成するために、まず請求項1の発明では、ポリエチレンナフタレート(PEN)からなる基材の少なくとも一方の面に、
リアクティブイオンエッチング(RIE)による前処理を施し、
前記前処理を施した基材面上に透明プライマー層を積層し、
前記透明プライマー層上に無機化合物層を積層する
ことを特徴とする積層フィルムとしたものである。
また請求項2の発明では、前記RIEによる前処理が、アルゴン、窒素、酸素、水素、炭酸ガスのうちの1種類のガスまたはこれらの混合ガスを用いて1回以上行うことを特徴とする請求項1に記載の積層フィルムとしたものである。
また請求項3の発明では、前記RIEによる前処理が、
プラズマの自己バイアス値を200V以上2000V以下とし、
Ed値(プラズマ密度×処理時間)を100W・s・m-2以上10000W・s・m-2以下とする
低温プラズマ処理であることを特徴とする請求項1または2に記載の積層フィルムとしたものである。
また請求項4の発明では、前記透明プライマー層が、シランカップリング剤あるいはその加水分解物と、ポリオールとイソシアネート化合物との複合物からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の積層フィルムとしたものである。
また請求項5の発明では、前記シランカップリング剤あるいはその加水分解物に、ポリオールの水酸基またはイソシアネート化合物のイソシアネート基の少なくともどちらか一方と反応する官能基を含むことを特徴とする請求項4に記載の積層フィルムとしたものである。
また請求項6の発明では、前記複合物中に、一般式M(OR)n(M:金属元素、R:CH3、C25などのアルキル基、n:金属元素の酸化数)で表される金属アルコキシドあるいは前記金属アルコキシドの加水分解物を添加することを特徴とする請求項4または5に記載の積層フィルムとしたものである。
また請求項7の発明では、前記透明プライマー層の厚さが0.01〜2μmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の積層フィルムとしたものである。
また請求項8の発明では、前記無機化合物が、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化錫、酸化亜鉛あるいはそれらの混合物であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の積層フィルムとしたものである。
また請求項9の発明では、前記無機化合物層の上に
水酸基含有高分子化合物と
金属アルコキシドおよびまたはその加水分解物およびまたはその重合物の少なくとも1種類以上とを
含有する複合被膜を設けたことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の積層フィルムとしたものである。
また請求項10の発明では、前記水酸基含有高分子化合物が、ポリビニルアルコールまたはポリ(ビニルアルコール−co−エチレン)、セルロース、デンプンのうち少なくとも1種類以上を含有することを特徴とする請求項9に記載の積層フィルムとしたものである。
また請求項11の発明では、前記金属アルコキシドが、シランアルコキシド、シランカ
ップリング剤であることを特徴とする請求項9に記載の積層フィルムとしたものである。
また請求項12の発明では、前記金属アルコキシド中の金属がSi、Al、Ti、Zrあるいはそれらの混合物であることを特徴とする請求項6または9に記載の積層フィルムとしたものである。
本発明では、ポリエチレンナフタレート(PEN)からなる基材の少なくとも一方の面に、リアクティブイオンエッチング(RIE)による前処理を施し、この前処理を施した基材面上に透明プライマー層を積層するので、この基材と、この透明プライマー層との密着性が改善して、高温多湿の環境下でも、ガスバリア性を維持できる。
従って、本発明は、高温多湿の環境下でも透明ガスバリア材として利用できる積層フィルムを提供できるという効果がある。
以下に、本発明の最良の実施形態について、説明する。
図1は本発明の強密着蒸着フィルムを説明する断面図である。プラズマを利用したリアクティブイオンエッチング(RIE)による前処理を施したプラスチック基材1表面上に、透明プライマー層2、無機化合物層3、複合被膜層4が形成されている構造である。透明プライマー層2、無機化合物層3、複合被膜層4は基材の両面に形成してもよく、また多層にしてもよい。
上述したプラスチック基材1はポリエチレンナフタレート(PEN)であり、透明プライマー層2、無機化合物層3、複合被膜層4が設けられる面と反対側のプラスチック基材1の表面に、周知の種々の添加剤や安定剤、例えば帯電防止剤、紫外線防止剤、可塑剤、滑剤などが使用されていても良い。
プラスチック基材1の厚さはとくに制限を受けるものではないが、透明プライマー層2、無機化合物層3、複合被膜層4を形成する場合の加工性を考慮すると、実用的には3〜200μmの範囲が好ましく、特に6〜30μmとすることが好ましい。
このプラスチック基材1と透明プライマー層2との密着を強化するために、表面にプラズマを利用したリアクティブイオンエッチング(RIE)による前処理を施すことが有効である。このRIEによる処理を行うことで、発生したラジカルやイオンを利用してプラスチック基材1の表面に官能基を持たせるなどの化学的効果と、表面をイオンエッチングして不純物等を除去し、且つ平滑化するといった物理的効果の2つの効果を同時に得ることが可能である。
RIEとは、被処理基材上に発生させたプラズマから取り出したイオンによって、被処理基材を強力に処理する方法である。この時、自己バイアスと呼ばれる高周波プラズマ特有の電位を、プラズマ電位と基材との間でいかに高く保つかがポイントとなる。通常モードのプラズマでは、自己バイアスは掛かるものの、プラズマと電極間での電位差となって現れてしまい、プラズマと基材間には大きな電位差は生まれない。これを基材側に電極を設置するなどしてRIEモードに維持し、強い処理を行う。
RIEによる前処理を行うためのガス種としては、アルゴン、酸素、窒素、水素、炭酸ガスを使用することが出来る。これらのガスは単独で用いても、2種類以上のガスを混合して用いてもよい。また、2基の処理器を用いて、連続して処理を行ってもよい。
加工速度、エネルギーレベルなどで示される処理条件は、基材種類、用途、放電装置特性などに応じ、適宜設定するべきである。ただし、プラズマの自己バイアス値は200V以上2000V以下、Ed=プラズマ密度×処理時間で定義されるEd値が100W・s・m-2以上10000W・s・m-2以下にすることが必要であり、これより若干低い値でも、ある程度の密着性を発現するが、未処理品に比べて優位性が低い。また、高い値であると、強い処理がかかりすぎて基材表面が劣化し、密着性が下がる原因になる。プラズマ用の気体及びその混合比などに関してはポンプ性能や取り付け位置などによって、導入分と実効分とでは流量が異なるので、用途、基材、装置特性に応じて適宜設定するべきである。
次に透明プライマー層2について、詳しく説明する。この層は、プラスチック基材1と無機化合物層3との間の密着性を高めることを目的とする。
上記目的達成の為に透明プライマー層2の樹脂として用いることができるのは、シランカップリング剤或いはその加水分解物と、ポリオール及びイソシアネート化合物等との複合物である必要がある。
前記シランカップリング剤の例としては、任意の有機官能基を含むシランカップリング剤を用いることができ、例えばエチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等のシランカップリング剤或いはその加水分解物の1種ないしは2種以上を用いることができる。
さらにこれらのシランカップリング剤のうち、ポリオールの水酸基またはイソシアネート化合物のイソシアネート基と反応する官能基を持つものが特に好ましい。例えばγ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシランのようなイソシアネート基を含むもの、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシランのようなメルカプト基を含むものや、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−フェニルアミノプロピルトリメトキシシランのようなアミノ基を含むものがある。さらにγ−グリシドオキシプロピルトリメトキシシランやβ−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のようにエポキシ基を含むものや、ビニルトリメトキシシラン、ビニル(β−メトキシエトキシ)シラン等のようなシランカップリング剤にアルコール等を付加し水酸基等を付加したものでも良く、これら1種ないしは2種以上を用いることができる。これらのシランカップリング剤は、一端に存在する有機官能基がポリオールとイソシア化合物からなる複合物中で相互作用を示し、もしくはポリオールの水酸基またはイソシアネート化合物のイソシアネート基と反応する官能基を含むシランカップリング剤を用いることで共有結合をもたせることによりさらに強固な透明プライマー層2を形成し、他端のアルコキシ基等の加水分解によって生成したシラノール基が無機化合物中の金属や、無機化合物の表面の活性の高い水酸基等と強い相互作用により無機化合物との高い密着性を発現し、目的の物性を得ることができるものである。よって上記シランカップリング剤を金属アルコキシドとともに加水分解反応させたものを用いても構わない。また上記シランカップリング剤のアルコキシ基がクロロ基、アセトキシ基等になっていても何ら問題はなく、これらのアルコキシ基、クロロ基、アセトキシ基等が加水分解し、シラノール基を形成するものであればこの複合物に用いることができる。
またポリオールとは、高分子中に二つ以上のヒドロキシル基をもつもので、後に加えるイソシアネート化合物中のイソシアネート基と反応させるものである。中でもアクリル酸
誘導体モノマーを重合させて得られるポリオールもしくは、アクリル酸誘導体モノマーおよびその他のモノマーとを共重合させて得られるポリオールであるアクリルポリオールが特に好ましい。中でもエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートやヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシルブチルメタクリレートなどのアクリル酸誘導体モノマーを単独で重合させたものや、スチレン等のその他のモノマーを加え共重合させたアクリルポリオール等が好ましく用いられる。またイソシアネート化合物との反応性を考慮するとヒドロキシル価が5〜200(KOHmg/g)の間であることが好ましい。
ポリオールとシランカップリング剤の配合比は、重量比換算で1/1〜1000/1の範囲であることが好ましく、より好ましくは2/1〜100/1の範囲にあることである。溶解および希釈溶剤としては、溶解および希釈可能であれば特に限定されるものではなく、例えば酢酸エチル・酢酸ブチル等のエステル類、メタノール・エタノール・イソプロピルアルコール等のアルコール類、メチルエチルケトン等のケトン類、トルエン・キシレン等の芳香族炭化水素類等が単独及び任意に配合したものが用いることができる。しかし、シランカップリング剤を加水分解するために塩酸等の水溶液を用いることがあるため、共溶媒としてイソプロピルアルコール等と極性溶媒である酢酸エチルを任意に混合した溶媒を用いることが好ましい。
またシランカップリング剤とポリオールの配合時に反応を促進させるために反応触媒を添加しても一向に構わない。添加される触媒としては、反応性及び重合安定性の点から塩化錫(SnCl2、SnCl4)、オキシ塩化錫(SnOHCl、Sn(OH)2Cl2)、錫アクコキシド等の錫化合物であることが好ましい。添加量は、少なすぎても多すぎても触媒効果が得られないため、3官能オルガノシランに対してモル比換算で1/10〜1/10000の範囲であることが好ましく、更に好ましくは1/100〜1/2000の範囲にあることである。
混入するイソシアネート化合物は、ポリオールと反応してできるウレタン結合によりプラスチック基材1や無機化合物層2との間の密着性を高めるために添加されるもので主に架橋剤もしくは硬化剤として作用する。これを達成するためにイソシアネート化合物としては、芳香族系のトリレンジイソシアネート(TDI)やジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、脂肪族系のキシレンジイソシアネート(XDI)やヘキサレンジイソシアネート(HMDI)などのモノマー類と、これらの重合体や誘導体等が用いられ、これらを1種または2種以上用いることができる。
ポリオールとイソシアネート化合物の配合比は特に制限されるのもではないが、イソシアネート化合物が少なすぎると硬化不良になる場合があり、またそれが多すぎるとブロッキング等が発生し加工上問題がある。そこでポリオールとインソシアネート化合物との配合比としては、イソシアネート化合物由来のNCO基がポリオール由来のOH基の50倍以下であることが好ましく、特に好ましいのはNCO基とOH基が当量で配合される場合である。混合方法は、周知の方法が使用可能で特に限定しない。
更に上記混合物の調液時に液安定性を向上させるために、金属アルコキシド或いはその加水分解物を添加しても一向に構わない。この金属アルコキシドとは、テトラエトキシシラン(Si(OC254)、トリプロポキシアルミニウム(Al(OC373)など一般式M(OR)n(M:金属元素、R:CH3、C25などの一般式Cn2n+1で表わされるアルキル基)で表せるもの或いはその加水分解物である。なかでもテトラエトキシシランやトリプロポキシアルミニウム或いは両者の混合物が、水系の溶媒中において比較的安定であるので好ましい。この金属アルコキシドの加水分解物を得る方法は、シランカップリング剤とともに加水分解を行っても構わないし、単独に酸等を添加して行ったのち添加しても構わない。
透明プライマー層2は、このようなシランカップリング剤を直接或いはあらかじめ加水分解反応させたものまたは金属アルコキシドとともに加水分解したもの(このときに上述した反応触媒等を一緒に添加しても一向に構わない)を、ポリオールやイソシアネート化合物と混合して複合溶液を作製するか、またシランカップリング剤、ポリオールを溶媒中にあらかじめ混合しておき(この時上述した反応触媒、金属アルコキシドを一緒に添加しても一向に構わない)加水分解反応を行ったもの、更にはシランカップリング剤とポリオールを混合しただけのもの(この時上述した反応触媒、金属アルコキシドを一緒に添加しても一向に構わない)の中に、イソシアネート化合物を加え複合液を作製しプラスチック基材1にコーティングして形成する。
この複合溶液中に各種添加剤、例えば、3級アミン、イミダゾール誘導体、カルボン酸の金属塩化合物、4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩等の硬化促進剤や、フェノール系、硫黄系、ホスファイト系等の酸化防止剤、レベリング剤、流動調整剤、触媒、架橋反応促進剤、充填剤等を添加する事も一向に構わない。
透明プライマー層2の厚さは、均一に塗膜が形成することができれば特に限定しないが、一般的に0.001〜2μmの範囲であることが好ましい。厚さが0.01μmより薄いと均一な塗膜が得られにくく密着性が低下する場合がある。また厚さが2μmを越える場合は厚いために塗膜にフレキシビリティを保持させることができず、外的要因により塗膜に亀裂を生じる恐れがあるため好ましくない。特に好ましいのは0.03〜0.5μmの範囲内にあることである。
透明プライマー層2の形成方法としては、例えばオフセット印刷法、グラビア印刷法、シルクスクリーン印刷法等の周知の印刷方式や、ロールコート、ナイフエッジコート、グラビアコートなどの周知の塗布方式を用いることができる。乾燥条件については、一般的に使用される条件で構わない。また、反応を促進させるために、高温のエージング室等に数日放置することででも可能である。
次に無機化合物層3について、詳しく説明する。無機化合物層3は、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化錫、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、或いはそれらの混合物などの無機化合物の蒸着膜からなり、透明性を有しかつ酸素、水蒸気等のガスバリア性を有する層であればよい。各種殺菌耐性を配慮するとこれらの中では、特に酸化アルミニウム及び酸化珪素を用いることがより好ましい。ただし無機化合物層3の材料は、上述した無機化合物に限定されず、上記条件に適合するものであれば用いることが可能である。
無機化合物層3の厚さは、用いられる無機化合物の種類・構成により最適条件が異なるが、一般的には5〜300nmの範囲内が望ましく、その値は適宜選択される。ただし膜厚が5nm未満であると均一な膜が得られないことや膜厚が十分ではないことがあり、ガスバリア材としての機能を十分に果たすことができない場合がある。また膜厚が300nmを越える場合は薄膜にフレキシビリティを保持させることができず、成膜後に折り曲げ、引っ張りなどの外的要因により、薄膜に亀裂を生じるおそれがあるので問題がある。より好ましくは、10〜150nmの範囲内にあることである。
無機化合物層3をプラスチック基材1上に形成する方法としては種々在り、通常の真空蒸着法により形成することができる。また、その他の薄膜形成方法であるスパッタリング法やイオンプレーティング法、プラズマ気相成長法(CVD)などを用いることも可能である。但し生産性を考慮すれば、現時点では真空蒸着法が最も優れている。真空蒸着法の加熱手段としては電子線加熱方式や抵抗加熱方式、誘導加熱方式のいずれかの方式を用いることが好ましいが、蒸発材料の選択性の幅広さを考慮すると電子線加熱方式を用いるこ
とがより好ましい。また無機化合物層3とプラスチック基材1との密着性及び無機化合物層3の緻密性を向上させるために、プラズマアシスト法やイオンビームアシスト法を用いて蒸着することも可能である。また、無機化合物層3の透明性を上げるために蒸着の際、酸素等の各種ガスなど吹き込む反応蒸着を用いても一向に構わない。
次いで複合被膜層4を説明する。複合被膜層はガスバリア性を持った被膜層であり、水溶性高分子と1種以上の金属アルコキシドまたはその加水分解物を含む水溶液或いは水/アルコール混合溶液を主剤とするコーティング剤を用いて形成される。例えば、水溶性高分子を水系(水或いは水/アルコール混合)溶媒で溶解させたものに金属アルコキシドを直接、或いは予め加水分解させるなど処理を行ったものを混合したものを溶液とする。この溶液を無機化合物層3にコーティング後、加熱乾燥し形成される。コーティング剤に含まれる各成分について更に詳細に説明する。
複合被膜層4のコーティング剤に用いられる水溶性高分子は、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。特にポリビニルアルコール(以下、PVAと略す)を複合被膜層4のコーティング剤に用いた場合にガスバリア性が最も優れるので好ましい。ここでいうPVAは、一般にポリ酢酸ビニルをけん化して得られるものである。PVAとしては例えば、酢酸基が数十%残存している、いわゆる部分けん化PVAから酢酸基が数%しか残存していない完全PVA等用いることができ、これ以外のものを用いても一向に構わない。
また金属アルコキシドは、一般式、M(OR)n(M:Si,Ti,Al,Zr等の金属、R:CH3,C25等のアルキル基)で表せる化合物である。具体的にはテトラエトキシシラン〔Si(OC254〕、トリイソプロポキシアルミニウム〔Al(O−2’−C373〕などがあげられ、中でもテトラエトキシシラン、トリイソプロポキシアルミニウムが加水分解後、水系の溶媒中において比較的安定であるので好ましい。
この溶液中にガスバリア性を損なわない範囲で、イソシアネート化合物、シランカップリング剤、或いは分散剤、安定化剤、粘度調整剤、着色剤などの公知の添加剤を必要に応じて加えることも可能である。
コーティング剤の塗布方法としては、通常用いられるディッピング法、ロールコーティング法、スクリーン印刷法、スプレー法、グラビア印刷法などの従来公知の方法を用いることが可能である。
複合被膜層4の厚さは、コーティング剤の種類や加工機や加工条件によって最適条件異なり特に限定しない。但し乾燥後の厚さが、0.01μm以下の場合は、均一な塗膜が得られなく十分なガスバリア性を得られない場合があるので好ましくない。また厚さが50μmを超える場合は膜にクラックが生じ易くなるため問題となる場合がある。好ましくは0.01〜50μmの範囲にあり、より好ましくは0.1〜10μmの範囲にあることである。
複合被膜層4の上に印刷層、介在フィルム、シーラント層等を積層させて、包装材料とすることが出来る。
介在フィルムは、袋状包装材料を形成した時の破袋強度や突き刺し強度を高めるために設けられるもので、一般的に機械強度及び熱安定性の面から二軸延伸ナイロンフィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの内から選ばれる一種である必要がある。厚さは、材質や要求品質に応じて決められるが、一般
的には10〜30μmの範囲である。
更にシーラント層は袋状包装体などを形成する際に接着層として設けられるものである。例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体及びそれらの金属架橋物等の樹脂が用いられる。厚さは目的に応じて決められるが、一般的には15〜200μmの範囲である。
透明プライマー層2、無機化合物層3、複合被膜層4が設けられるプラスチック基材1の面の反対面にも、必要に応じて印刷層、介在フィルム、シーラント層等を積層させることも可能である。
以下に本発明の強密着蒸着フィルムの実施例を具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<複合溶液の調整>
(A)希釈溶媒中、2−(エポキシシクロヘキシル)エチルトリメチルシラン(以下EETMSと略す)とアクリルポリオールをEETMSに対し、5.0倍量(重量比)量りとり混合し、さらに触媒として塩化錫(SnCl2)/メタノール溶液(0.003mol/gに調液したもの)をEETMSに対し1/135molになるように添加し攪拌する。ついでイソシアネート化合物としてトリレンジイソシアネート(以下TDIと略す)をアクリルポリオールのOH基に対しNCO基が等量となるように加えた混合溶液を任意の濃度に希釈したものを複合溶液Aとする。
(B)希釈溶媒中、γ−イソシアネートプロピルトリメチルシラン1重量部に対し、アクリルポリオール9重量部及びポリエステルポリオール1重量部を量りとり混合攪拌する。ついでイソシアネート化合物としてTDIをアクリルポリオールとポリエステルポリオールのOH基に対しNCO基が等量となるように加えた混合溶液を任意の濃度に希釈したものを複合溶液Bとする。
<実施例1>
プラスチック基材1として厚さ12μmのポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムの片面に、プラズマを利用したリアクティブイオンエッチング(RIE)による前処理を施した。この時、電極には周波数13.56MHzの高周波電源を用い、処理ガスにはアルゴンを用いた。
この上に複合溶液Aをグラビアコート法により塗布して厚さ0.2μmの透明プライマー層2を形成した。次いで、透明プライマー層2上に抵抗加熱方式による真空蒸着装置により、シリカを蒸発させ厚さ20nmの無機化合物層3を形成した。更にその上に下記組成のコーティング剤をバーコーターで塗布し乾燥機で120℃、1分間乾燥させ厚さ0.3μmの複合被膜層4を形成し、実施例1の積層フイルムを得た。
ここで、複合被膜層4用のコーティング剤は、テトラエトキシシラン10gに塩酸(0.1N)89gを加え、30分間撹拌し加水分解させた固形分3wt%(SiO2換算)の加水分解溶液と、ポリビニルアルコールの3wt%水/イソプロピルアルコール溶液(水:イソプロピルアルコール=90:10 重量比)とを混合することにより得た。
<実施例2>
無機化合物層3にアルミナを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、実施例2の積層フィルムを作製した。
<比較例1>
プラスチック基材1の片面に対してRIEによる前処理を行わなかった以外は、実施例1と同様の方法で、比較例1の積層フィルムを作製した。
<比較例2>
プラスチック基材1の片面に対して、一般的なインラインプラズマ処理器(冷却ドラム、ガイドロールの対面側に処理器がある)を使用して、プラズマエッチングによる前処理を行い、処理ガスにアルゴンガスを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、比較例2の積層フィルムを作製した。
実施例1〜2、比較例1〜2の積層フィルム上に、ニ液硬化型ポリウレタン系接着剤を用いて、ドライラミネートにより、上記各積層フィルムについて、積層フィルム/未延伸ポリエチレン(70μm)の各積層サンプルを作製した。
<評価1>
上記各積層サンプルにおける積層フィルムと未延伸ポリエチレンとの間のラミネート強度を、オリエンテック社テンシロン万能試験機RTC−1250を用いて測定した(JIS Z1707準拠)。但し、測定の際に測定部位を水で湿潤させながら行った。結果を表1に示す。
<評価2>
上記各積層サンプルを用いて、105℃×100%RH×48時間のプレッシャークッカーテスト(PCT)を行い、水蒸気バリア性の変化を測定した。結果を表1に示す。
Figure 2008080540
この表1から、PENのプラスチック基材1の表面に対してRIEの前処理を行うと、このプラスチック基材1と、この表面に積層した透明プライマー層2との密着性が改善して、高温多湿の環境下でも、水蒸気バリア性を維持できることがわかる。
本発明の積層フィルムの断面図である。
符号の説明
1…プラスチック基材
2…透明プライマー層
3…無機化合物層
4…複合被膜層

Claims (12)

  1. ポリエチレンナフタレート(PEN)からなる基材の少なくとも一方の面に、
    リアクティブイオンエッチング(RIE)による前処理を施し、
    前記前処理を施した基材面上に透明プライマー層を積層し、
    前記透明プライマー層上に無機化合物層を積層する
    ことを特徴とする積層フィルム。
  2. 前記RIEによる前処理が、アルゴン、窒素、酸素、水素、炭酸ガスのうちの1種類のガスまたはこれらの混合ガスを用いて1回以上行うことを特徴とする請求項1に記載の積層フィルム。
  3. 前記RIEによる前処理が、
    プラズマの自己バイアス値を200V以上2000V以下とし、
    Ed値(プラズマ密度×処理時間)を100W・s・m-2以上10000W・s・m-2以下とする
    低温プラズマ処理であることを特徴とする請求項1または2に記載の積層フィルム。
  4. 前記透明プライマー層が、シランカップリング剤あるいはその加水分解物と、ポリオールとイソシアネート化合物との複合物からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の積層フィルム。
  5. 前記シランカップリング剤あるいはその加水分解物に、ポリオールの水酸基またはイソシアネート化合物のイソシアネート基の少なくともどちらか一方と反応する官能基を含むことを特徴とする請求項4に記載の積層フィルム。
  6. 前記複合物中に、一般式M(OR)n(M:金属元素、R:CH3、C25などのアルキル基、n:金属元素の酸化数)で表される金属アルコキシドあるいは前記金属アルコキシドの加水分解物を添加することを特徴とする請求項4または5に記載の積層フィルム。
  7. 前記透明プライマー層の厚さが0.01〜2μmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の積層フィルム。
  8. 前記無機化合物が、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化錫、酸化亜鉛あるいはそれらの混合物であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の積層フィルム。
  9. 前記無機化合物層の上に
    水酸基含有高分子化合物と
    金属アルコキシドおよびまたはその加水分解物およびまたはその重合物の少なくとも1種類以上とを
    含有する複合被膜を設けたことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の積層フィルム。
  10. 前記水酸基含有高分子化合物が、ポリビニルアルコールまたはポリ(ビニルアルコール−co−エチレン)、セルロース、デンプンのうち少なくとも1種類以上を含有することを特徴とする請求項9に記載の積層フィルム。
  11. 前記金属アルコキシドが、シランアルコキシド、シランカップリング剤であることを特徴とする請求項9に記載の積層フィルム。
  12. 前記金属アルコキシド中の金属がSi、Al、Ti、Zrあるいはそれらの混合物であることを特徴とする請求項6または9に記載の積層フィルム。
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