本発明の第1の保護部材は、長期間にわたり連続又は断続的に水性液体が接触する用途に用いられる保護部材である。第1の保護部材は、少なくとも、樹脂層と、バリア層と、熱可塑性樹脂層とをこの順に備える積層シートから構成されており、バリア層よりも樹脂層側に位置する層の全体としての水蒸気透過率が40g/m2/24h以下であることを特徴とする。
また、本発明の第2の保護部材についても、長期間にわたり連続又は断続的に水性液体が接触する用途に用いられる保護部材である。第2の保護部材は、少なくとも、樹脂層と、バリア層と、熱可塑性樹脂層とをこの順に備える積層シートから構成されており、樹脂層の水蒸気透過率が40g/m2/24h以下であることを特徴とする。
さらに、本発明の第3の保護部材についても、長期間連続又は断続的に水性液体が接触する用途に用いられる保護部材である。第3の保護部材は、少なくとも、樹脂層と、バリア層と、熱可塑性樹脂層とをこの順に備える積層シートから構成されており、温度120℃、圧力2atm、相対湿度100%の環境で72時間放置される前後における、前記積層シートの積層方向とは垂直方向の引張破壊応力保持率が、85%以上であることを特徴とする。
本発明の保護部材は、それぞれ、上記の構成を備えていることから、耐水性に優れており、長期間にわたって水性液体と接触した場合にも、保護部材を構成している層間の剥離強度の低下が抑制されており、長期間にわたって水性液体と接触する用途に好適に使用される。なお、第1の保護部材、第2の保護部材、及び第3の保護部材を合わせて本発明の保護部材という。以下、本発明の保護部材について詳述する。
なお、本明細書において、「~」で示される数値範囲は「以上」、「以下」を意味する。例えば、2~15mmとの表記は、2mm以上15mm以下を意味する。
1.保護部材の積層構造、物性、用途
本発明の保護部材は、例えば図1に示すように、少なくとも、樹脂層1、バリア層3、及び熱可塑性樹脂層4をこの順に有する積層シートから構成されている。本発明の保護部材において、樹脂層1が最外層側になり、熱可塑性樹脂層4は最内層になる。本発明の保護部材10によって内容物を保護する際には、熱可塑性樹脂層4が内側になるようにして内容物を収容することにより、内容物を水性液体の接触から長期間にわたって保護することができる。
なお、本発明において、水性液体とは、水を含む液体を意味しており、水性液体中の水の含有量としては、例えば、50質量%以上、70質量%以上、90質量%以上、99質量%以上、100質量%などが挙げられる。水の他には、例えば凝固点や沸点を調整するために有機溶媒を混合してもよい。有機溶媒としては、例えばエチレングリコール等が挙げられる。
熱可塑性樹脂層4が内側になるようにして内容物を収容する際には、例えば、本発明の保護部材を成形した成形体とし、内容物の周縁に位置する熱可塑性樹脂層4同士を熱融着して、内容物を密封することができる。
本発明の保護部材は、例えば図2から図4に示すように、樹脂層1とバリア層3との間に、接着剤層2を備えていてもよい。また、図3及び図4に示すように、バリア層3と熱可塑性樹脂層4との間に、接着層5を備えていてもよい。さらに、図4に示すように、樹脂層1の外側(熱可塑性樹脂層4とは反対側)には、必要に応じて表面被覆層6を備えていてもよい。
本発明の第1の保護部材においては、バリア層3よりも樹脂層1側に位置する層の全体としての水蒸気透過率が40g/m2/24h以下である。すなわち、例えばバリア層3よりも樹脂層1側に位置する樹脂層1、必要に応じて設けられる接着剤層2などの合計の水蒸気透過率が、40g/m2/24h以下である。長期間にわたる耐水性をより一層向上させる観点からは、バリア層3よりも樹脂層1側に位置する層の全体としての水蒸気透過率としては、好ましくは36g/m2/24h以下、より好ましくは20g/m2/24h以下が挙げられ、さらに好ましくは15g/m2/24h以下が挙げられる。なお、当該水蒸気透過率の下限は、例えば、0g/m2/24h以上、0.1g/m2/24h以上、1g/m2/24h以上、3g/m2/24h以上である。また、第2の保護部材及び第3の保護部材においても、当該水蒸気透過率が40g/m2/24h以下であることが好ましく、36g/m2/24h以下であることがより好ましく、20g/m2/24h以下であることがさらに好ましく、15g/m2/24h以下であることがさらに好ましい。バリア層3よりも樹脂層1側に位置する層の全体としての水蒸気透過率の範囲としては、例えば、0~40g/m2/24h程度、0~36g/m2/24h程度、0~20g/m2/24h程度、0.1~40g/m2/24h程度、0.1~36g/m2/24h程度、0.1~20g/m2/24h程度、1~40g/m2/24h程度、1~36g/m2/24h程度、1~20g/m2/24h程度、3~40g/m2/24h程度、3~36g/m2/24h程度、3~20g/m2/24h程度、が挙げられる。
本発明の第1の保護部材において、バリア層3よりも樹脂層1側に位置する層の全体としての水蒸気透過率が40g/m2/24h以下にするためには、例えば、樹脂層1として、水蒸気透過率(1m2(片面の面積)当たり)が約40g/m2/24h以下のものを用いる方法が挙げられる。また、樹脂層1の水蒸気透過率(1m2(片面の面積)当たり)が約40g/m2/24hを超えている場合にも、樹脂層1とバリア層3との間に、接着剤層2等を設けることによって、全体としての水蒸気透過率を40g/m2/24h以下に設定することもできる。
後述の通り、第1の保護部材及び第3の保護部材においては、樹脂層1のみの水蒸気透過率(1m2(片面の面積)当たり)が約40g/m2/24h以下であることが好ましく、約36g/m2/24h以下であることがより好ましく、約20g/m2/24h以下であることさらに好ましく、15g/m2/24h以下であることがさらに好ましい。なお、当該水蒸気透過率の下限は、0g/m2/24hである。樹脂層1のみの水蒸気透過率の範囲としては、好ましくは0~40g/m2/24h程度、より好ましくは0~36g/m2/24h程度、さらに好ましくは0~20g/m2/24h程度が挙げられる。
なお、第2の保護部材のように、第1の保護部材及び第3の保護部材において、樹脂層1のみの水蒸気透過率が40g/m2/24h以下であることにより、バリア層3よりも樹脂層1側に位置する層の全体としての水蒸気透過率を、好適に40g/m2/24h以下に設定することができる。
樹脂層1のみの水蒸気透過率を40g/m2/24h以下にするためには、例えば、樹脂層1を後述の樹脂により形成し、樹脂層1の厚みについても後述のものとすることが好ましい。
本発明において、樹脂層1のみの1m2(片面の面積)当たりの水蒸気透過率(g/m2/24h)は、以下の方法で測定した値である。ISO15106-5 2008年の規定に準拠した方法を採用し、温度40℃、相対湿度90%、測定期間24時間、測定面積8cmφの測定条件において、差圧法による水蒸気透過率測定装置を用いて水蒸気透過率を測定する。1m2当たりの水蒸気透過率は、当該水蒸気透過率を、1m2換算することにより算出される。1m2当たりの水蒸気透過率は、具体的には、実施例に記載の方法により測定することができる。なお、本発明について、バリア層よりも樹脂層側に位置する層の全体としての水蒸気透過率の測定についても、同様にして測定する。例えば、樹脂層1と接着剤層2との積層体を用意し、当該積層体について、樹脂層1のみの水蒸気透過率と同様にして測定を行う。
また、本発明の第3の保護部材においては、温度120℃、圧力2atm、相対湿度100%の環境で72時間放置される前後における、保護部材を構成している積層シートの積層方向とは垂直方向の引張破壊応力保持率が85%以上である。長期間にわたる耐水性をより一層向上させる観点からは、当該引張破壊応力保持率としては、好ましくは約88%以上、より好ましくは約90%以上が挙げられる。第1の保護部材及び第2の保護部材においても、当該引張破壊応力保持率を充足することが好ましい。
なお、引張破壊応力保持率は、保護部材を構成している積層シートの積層方向とは垂直方向のうち、少なくとも一方向について、85%以上であればよく、好ましくはMD(Machine Direction)の方向について85%以上(より好ましくは約88%以上、さらに好ましくは約90%以上)であり、より好ましくはMDの方向及びTD(Transverse Direction)の方向について共に85%以上(より好ましくは約88%以上、さらに好ましくは約90%以上)である。
なお、保護部材を構成している積層シートにおいて、後述のバリア層については、通常、その製造過程におけるMDとTDを判別することができる。例えば、バリア層がアルミニウム箔により構成されている場合、アルミニウム箔の圧延方向(RD:Rolling Direction)には、アルミニウム箔の表面に、いわゆる圧延痕と呼ばれる線状の筋が形成されている。圧延痕は、圧延方向に沿って伸びているため、アルミニウム箔の表面を観察することによって、アルミニウム箔の圧延方向を把握することができる。また、積層シートの製造過程においては、通常、積層シートのMDと、アルミニウム箔のRDとが一致するため、積層シートのアルミニウム箔の表面を観察し、アルミニウム箔の圧延方向(RD)を特定することにより、積層シートのMDを特定することができる。また、積層シートのTDは、積層シートのMDとは垂直方向であるため、積層シートのTDについても特定することができる。
本発明において、温度120℃、圧力2atm、相対湿度100%の環境で72時間放置される前後における引張破壊応力保持率は、JIS K7127:1999の規定に準拠し、試験片の形状を四角形状、試験片のサイズを幅15mm×長さ150mm、試験速度を200mm/minとして測定された引張破壊応力から算出した値である。引張破壊応力は、具体的には、実施例に記載の方法により測定することができる。
また、本発明の第3の保護部材は、温度120℃、圧力2atm、相対湿度100%の環境で72時間放置される前の引張破壊応力(初期引張破壊応力)が、10~200MPa程度であることが好ましく、20~180MPa程度であることがより好ましく、50~150MPa程度であることがさら好ましい。第1の保護部材及び第2の保護部材においても、当該引張破壊応力を充足することが好ましい。なお、これらの引張破壊応力は、引張破壊応力保持率の算出にあたり測定される値である。
なお、本発明の第3の保護部材は、温度98℃の水中で30日間放置される前後における、保護部材を構成している積層シートの積層方向とは垂直方向の引張破壊応力保持率についても、85%以上であることが好ましく、88%であることがより好ましく、90%であることがさらに好ましい。当該引張破壊応力保持率についても、保護部材を構成している積層シートの積層方向とは垂直方向のうち、少なくとも一方向について、85%以上であればよく、好ましくはMDの方向について85%以上(より好ましくは約88%以上、さらに好ましくは約90%以上)であり、より好ましくはMDの方向及びTDの方向について共に85%以上(より好ましくは約88%以上、さらに好ましくは約90%以上)である。
本発明において、温度98℃の水中で30日間放置される前後における前記引張破壊応力保持率は、温度120℃、圧力2atm、相対湿度100%の環境で72時間放置する代わりに、圧力1atmの環境下で、温度98℃の水中で30日間放置すること以外は、前述の温度120℃、相対湿度100%の環境で72時間放置される前後における引張破壊応力保持率に準拠して求めた値であり、具体的には、実施例に記載の方法により求めることができる。
また、本発明の第3の保護部材は、温度98℃の水中で30日間放置される前の引張破壊応力(初期引張破壊応力)についても、10~200MPa程度であることが好ましく、20~180MPa程度であることがより好ましく、50~150MPa程度であることがさら好ましい。第1の保護部材及び第2の保護部材においても、当該引張破壊応力を充足することが好ましい。なお、これらの引張破壊応力は、引張破壊応力保持率の算出にあたり測定される値である。
本発明の保護部材においては、バリア層3よりも樹脂層1側に位置する層の全体としての水蒸気透過率が40g/m2/24h以下であり、かつ、温度120℃、圧力2atm、相対湿度100%の環境で72時間放置される前後における、保護部材を構成している積層シートの積層方向とは垂直方向の引張破壊応力保持率が85%以上であることが特に好ましい。すなわち、本発明の保護部材において、水蒸気透過率と引張破壊応力保持率とがいずれも上記の第1の保護部材と第3の保護部材の両構成を兼ね備えることにより、特に長期間にわたる優れた耐水性が発揮される。水蒸気透過率と引張破壊応力保持率の好ましい値についても、前述の通りである。
また、本発明の保護部材においては、樹脂層1の水蒸気透過率が40g/m2/24h以下であり、かつ、温度120℃、圧力2atm、相対湿度100%の環境で72時間放置される前後における、保護部材を構成している積層シートの積層方向とは垂直方向の引張破壊応力保持率が85%以上であることが特に好ましい。すなわち、本発明の保護部材において、水蒸気透過率と引張破壊応力保持率とがいずれも上記の第2の保護部材と第3の保護部材の両構成を兼ね備えることにより、特に長期間にわたる優れた耐水性が発揮される。水蒸気透過率と引張破壊応力保持率の好ましい値についても、前述の通りである。
従来のレトルト食品用包装材料は、通常、数分間程度、長くても30分程度の間、水性液体に連続または断続的に接触される程度であるが、本発明の保護部材は、長期間にわたり連続又は断続的に水性液体が接触する用途に用いられる保護部材である。本発明の保護部材は、例えば2時間以上という長期間、さらには、12時間以上、24時間以上、72時間以上、7日以上、30日以上、または1年以上という長期間にわたって、連続又は断続的に水性液体が接触する用途に用いてもよい。
本発明の保護部材は、内容物を水性液体の接触から長期間にわたって保護するために用いられ、具体的な用途は特に制限されないが、例えば、水性液体に接触する機会の多い場所(例えば、浴室、キッチン、貯水槽内部、屋外)において、内容物(例えば、センサ(温度、圧、水流、水圧など)、無線機器、電源、電子部材、熱交換器など)が水性液体に接触することを長期間にわたって防ぐ目的で使用される。本発明の保護部材は、例えば、温度センサなど熱を感知する材料、熱交換する材料が、水性液体と直接接触することによって分解・反応などすることを、長期間にわたって抑制する目的で使用される。特に、内容物が電子機器である場合、水性液体が電子機器に接触すると故障の原因となるため、本発明の保護部材によって電子機器を密封することにより、電子機器を長期間にわたって連続又は断続的に水性液体が接触する用途に好適に使用することが可能となる。
また、本発明の保護部材においては、温度120℃、圧力2atm、相対湿度100%の環境で72時間放置される前後における、保護部材を構成している積層シートの樹脂層とバリア層との剥離強度保持率が、20%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらに好ましい。本発明において、当該剥離強度保持率は、以下の方法で求めた値であり、具体的には、実施例に記載の方法により求めることができる。
<剥離強度保持率>
保護部材を、幅15mm×長さ100mmの短冊状に裁断して、試験片とする。まず、初期剥離強度T1を次のようにして測定する。試験片の樹脂層とバリア層との間を、長さ方向に10mm程度剥離する。次に、試験片の樹脂層とバリア層側とを、それぞれ上下のチャックに挟み、引張試験機を用いて、50mm/分の速度で180°方向に引張り、試験片の初期剥離強度T1(N/15mm)を測定する。また、剥離強度T2を次のようにして測定する。試験片を、温度120℃、圧力2atm、相対湿度100%の環境で72時間放置する。次に、この試験片の樹脂層とバリア層との間を、長さ方向に10mm程度剥離する。次に、試験片の樹脂層とバリア層側とを、それぞれ上下のチャックに挟み、引張試験機を用いて、50mm/分の速度で180°方向に引張り、試験片の剥離強度T2(N/15mm)を測定する。剥離強度T1に対する剥離強度T2の比率(%)(T2/T1×100)を算出して、剥離強度保持率とする。
本発明の保護部材10を構成する積層シートの厚さとしては、特に制限されないが、保護部材の厚さを薄くして、内容物を収容した製品を小型化しつつ、長期間にわたる耐水性に優れたものとする観点からは、上限については、例えば約200μm以下、好ましくは約180μm以下、より好ましくは約150μm以下が挙げられ、下限については、好ましくは約50μm以上、より好ましくは60μm以上が挙げられ、好ましい範囲としては、50~200μm程度、50~180μm程度、50~150μm程度、60~200μm程度、60~180μm程度、60~150μm程度が挙げられる。
本発明の保護部材は、内容物を収容できるように成形することにより、成形体とし、内容物を保護する目的で使用される。すなわち、前述したような内容物の形状に応じて、本発明の保護部材を所望の形状に成形して成形体とすることができる。例えば、本発明の保護部材の熱可塑性樹脂層側から樹脂層側に突出するようにして、金型などを用いて成形することにより、内容物を収容する空間を有する成形体とすることができる。また、本発明の保護部材は、熱可塑性樹脂層同士を対向させた状態で周縁部を熱融着させることにより、内容物を収容する空間を有する袋状の成形体とすることもできる。
2.保護部材を形成する各層
[樹脂層1]
本発明の保護部材において、樹脂層1は最外層側に位置する層である。
第1の保護部材において、樹脂層1を形成する素材については、バリア層3よりも樹脂層1側に位置する層の全体としての水蒸気透過率が40g/m2/24h以下となるものであれば、特に制限されない。また、第2の保護部材においては、樹脂層1の水蒸気透過率が40g/m2/24h以下となるものであれば、特に制限されない。また、第3の保護部材においては、温度120℃、圧力2atm、相対湿度100%の環境で72時間放置される前後における、保護部材を構成している積層シートの積層方向とは垂直方向の引張破壊応力保持率が85%以上となるものであれば、特に制限されない。
第1の保護部材において、樹脂層1のみの水蒸気透過率が、約40g/m2/24h以下であることが好ましく、約36g/m2/24h以下であることがより好ましく、約20g/m2/24h以下であることがさらに好ましく、約15g/m2/24h以下であることがさらに好ましい。
また、第2の保護部材において、樹脂層1のみの水蒸気透過率は、40g/m2/24h以下であればよいが、約36g/m2/24h以下であることが好ましく、約20g/m2/24h以下であることがさらに好ましく、15g/m2/24h以下であることがさらに好ましい。
一方、第3の保護部材においては、水蒸気透過率は、上記の値でなくてもよいが、第1の保護部材または第2の保護部材の値を充足することが好ましい。
本発明の保護部材において、樹脂層1を形成する素材としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン、珪素樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート、及びこれらの混合物や共重合物などの樹脂フィルムが挙げられる。これらの中でも、好ましくはポリエステル樹脂及びポリオレフィン樹脂が挙げられ、より好ましくはポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、共重合ポリエステル、ポリプロピレンなどが挙げられる。
前記の水蒸気透過率を効果的に低減する観点から、樹脂層1は、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及びポリプロピレンのうち少なくとも1種を含むことが好ましく、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及びポリプロピレンのうち少なくとも1種により構成されていることがより好ましい。
樹脂層1は、1層の樹脂フィルムから形成されていてもよいが、長期間にわたる耐水性を向上させるために、2層以上の樹脂フィルムで形成されていてもよい。具体的には、ポリエステルフィルムを複数層積層させた多層構造、ポリエステルフィルムとポリプロピレンフィルムを積層させた多層構造などが挙げられる。多層構造の好ましい具体例としては、ポリブチレンテレフタレートフィルムを2層積層させた多層構造、ポリエチレンナフタレートフィルムを2層積層させた多層構造、ポリブチレンテレフタレートフィルムとポリエチレンナフタレートフィルムを積層させた多層構造、ポリブチレンテレフタレートフィルムとポリプロピレンフィルムを積層させた多層構造、ポリエチレンナフタレートフィルムとポリプロピレンフィルムを積層させた多層構造などが挙げられる。樹脂層1を多層構造とする場合、各層の厚さとして、好ましくは2~25μm程度が挙げられる。
樹脂層1を多層の樹脂フィルムで形成する場合、2以上の樹脂フィルムは、接着剤又は接着性樹脂などの接着成分を介して積層させればよく、使用される接着成分の種類や量などについては、後述する接着剤層2の場合と同様である。なお、2層以上の樹脂フィルムを積層させる方法としては、特に制限されず、公知方法が採用でき、例えばドライラミネート法、サンドイッチラミネート法などが挙げられ、好ましくはドライラミネート法が挙げられる。ドライラミネート法により積層させる場合には、接着層としてウレタン系接着剤を用いることが好ましい。このとき、接着層の厚さとしては、例えば2~5μm程度が挙げられる。
樹脂層1の厚さについては、第1の保護部材においては、前述の水蒸気透過率(バリア層3よりも樹脂層1側に位置する層の全体としての水蒸気透過率)を充足できればよい。また、第2の保護部材においては、樹脂層1の前述の水蒸気透過率を充足できればよい。さらに、第3の保護部材においては、前記の引張破壊応力保持率(温度120℃、圧力2atm、相対湿度100%の環境で72時間放置される前後における、前記積層シートの積層方向とは垂直方向の引張破壊応力保持率)を充足できればよい。樹脂層1の厚さとしては、好ましくは3~50μm程度、より好ましくは10~35μm程度が挙げられる。
[接着剤層2]
本発明の保護部材10において、接着剤層2は、樹脂層1とバリア層3を強固に接着させるために、必要に応じて、これらの間に設けられる層である。
接着剤層2は、樹脂層1とバリア層3とを接着可能である接着剤(樹脂)によって形成される。接着剤層2の形成に使用される接着剤は、2液硬化型接着剤であってもよく、また1液硬化型接着剤であってもよい。更に、接着剤層2の形成に使用される接着剤についても、特に制限されず、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型などのいずれであってもよい。
接着剤層2の形成に使用できる接着成分としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、共重合ポリエステルなどのポリエステル系樹脂;ポリエーテル系接着剤;ポリウレタン系接着剤;エポキシ系樹脂;フェノール樹脂系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、共重合ポリアミドなどのポリアミド系樹脂;ポリオレフィン、カルボン酸変性ポリオレフィン、金属変性ポリオレフィンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂;セルロース系接着剤;(メタ)アクリル系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリカーボネート;尿素樹脂、メラミン樹脂などのアミノ樹脂;クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン-ブタジエンゴムなどのゴム;シリコーン系樹脂などが挙げられる。これらの接着成分は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの接着成分の中でも、好ましくはポリウレタン系接着剤またはエポキシ系接着剤が挙げられる。
また、長期間にわたる耐水性をより一層向上させる観点からは、接着剤層2の形成に使用できる接着成分としては、耐水性に優れたものを使用することが好ましい。耐水性に優れた接着成分としては、ポリウレタン、エポキシ系樹脂などが挙げられる。これらの中でも、接着剤層2を構成する樹脂としては、ポリウレタンが好ましい。ポリウレタンは、例えば、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との組み合わせ、水酸基を有するポリウレタン化合物とポリイソシアネート化合物との組み合わせ、イソシアネート基を有するポリウレタン化合物とポリオール化合物との組み合わせなどによって形成することができる。これらの組み合わせは、それぞれ、2液型のポリウレタン接着剤として使用することができる。また、イソシアネート基を有するポリウレタン化合物を、空気中などの水分と反応させることによって硬化させてポリウレタンを形成してもよい。
また、接着剤層2の形成に使用される樹脂としては、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィン、酸変性環状ポリオレフィンなどのポリオレフィン系樹脂も好適に使用できる。すなわち、接着剤層2を構成している樹脂は、ポリオレフィン骨格を含んでいても含んでいなくてもよく、ポリオレフィン骨格を含んでいることが好ましい。接着剤層2を構成している樹脂がポリオレフィン骨格を含むことは、例えば、赤外分光法、ガスクロマトグラフィー質量分析法などにより分析可能であり、分析方法は特に問わない。例えば、赤外分光法にて無水マレイン酸変性ポリオレフィンを測定すると、波数1760cm-1付近と波数1780cm-1付近に無水マレイン酸由来のピークが検出される。ただし、酸変性度が低いとピークが小さくなり検出されない場合がある。その場合は核磁気共鳴分光法にて分析可能である。
保護部材の厚さを薄くしつつ、長期間にわたる耐水性をより一層向上させる観点からは、接着剤層2は、酸変性ポリオレフィンを含むことが好ましい。酸変性ポリオレフィンは、ポリオレフィンをカルボン酸などの酸成分でブロック重合又はグラフト重合することにより変性したポリマーである。変性に使用される酸成分としては、例えば、マレイン酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸などのカルボン酸又はその無水物が挙げられる。また、変性されるポリオレフィンとしては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレンなどのポリエチレン;ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)などのポリプロピレン;エチレン-ブテン-プロピレンのターポリマーなどが挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくはポリエチレン及びポリプロピレンが挙げられる。
接着剤層2において、酸変性ポリオレフィンの中でも、特に無水マレイン酸変性ポリオレフィン、さらには無水マレイン酸変性ポリプロピレンが好ましい。
さらに、保護部材の厚さを薄くしつつ、長期間にわたる耐水性をより一層向上させる観点からは、接着剤層2は、酸変性ポリオレフィンと硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物であることがより好ましい。酸変性ポリオレフィンとしては、好ましくは、前記のものが例示できる。
以下、接着剤層2が、硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物である種々の態様について、詳述する。
接着剤層2は、酸変性ポリオレフィンと、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、及びエポキシ基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種とを含む樹脂組成物の硬化物であることが好ましく、酸変性ポリオレフィンと、イソシアネート基を有する化合物及びエポキシ基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種とを含む樹脂組成物の硬化物であることが特に好ましい。なお、接着剤層2に、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、エポキシ樹脂などの硬化剤の未反応物が残存している場合、未反応物の存在は、例えば、赤外分光法、ラマン分光法、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)などから選択される方法で確認することが可能である。
また、接着剤層2は、ポリウレタン、アミドエステル樹脂、及びエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むことも好ましく、ポリウレタン及びエポキシ樹脂を含むことがより好ましい。接着剤層2は、これらの樹脂のうち少なくとも1種と、前記酸変性ポリオレフィンとを含む樹脂組成物の硬化物であることがより好ましい。
また、接着剤層2は、酸素原子、複素環、C=N結合、及びC-O-C結合からなる群より選択される少なくとも1種を有する硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物であることも好ましい。複素環を有する硬化剤としては、例えば、オキサゾリン基を有する硬化剤、エポキシ基を有する硬化剤などが挙げられる。また、C=N結合を有する硬化剤としては、オキサゾリン基を有する硬化剤、イソシアネート基を有する硬化剤などが挙げられる。また、C-O-C結合を有する硬化剤としては、オキサゾリン基を有する硬化剤、エポキシ基を有する硬化剤、前述のポリウレタンを形成する組み合わせなどが挙げられる。接着剤層2がこれらの硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物であることは、例えば、ガスクロマトグラフ質量分析(GCMS)、赤外分光法(IR)、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)、X線光電子分光法(XPS)などの方法で確認することができる。
イソシアネート基を有する化合物としては、特に制限されないが、好ましくは多官能イソシアネート化合物が挙げられる。多官能イソシアネート化合物は、2つ以上のイソシアネート基を有する化合物であれば、特に限定されない。多官能イソシアネート系硬化剤の具体例としては、ペンタンジイソシアネート(PDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、これらをポリマー化やヌレート化したもの、これらの混合物や他ポリマーとの共重合物などが挙げられる。
イソシアネート基を有する化合物の含有量としては、接着剤層2を構成する樹脂組成物中、例えば、0.1~50質量%、0.5~40質量%が挙げられる。このとき、残部としては、前記酸変性ポリオレフィンが挙げられる。
オキサゾリン基を有する化合物は、オキサゾリン骨格を備える化合物であれば、特に限定されない。オキサゾリン基を有する化合物の具体例としては、ポリスチレン主鎖を有するもの、アクリル主鎖を有するものなどが挙げられる。また、市販品としては、例えば、日本触媒社製のエポクロスシリーズなどが挙げられる。
オキサゾリン基を有する化合物の割合としては、接着剤層2を構成する樹脂組成物中、例えば、0.1~50質量%、0.5~40質量%が挙げられる。このとき、残部としては、前記酸変性ポリオレフィンが挙げられる。
エポキシ基を有する化合物としては、例えばエポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂としては、分子内に存在するエポキシ基によって架橋構造を形成することが可能な樹脂であれば、特に制限されず、公知のエポキシ樹脂を用いることができる。エポキシ樹脂の重量平均分子量としては、好ましくは50~2000程度、より好ましくは100~1000程度、さらに好ましくは200~800程度が挙げられる。なお、本発明において、エポキシ樹脂の重量平均分子量は、標準サンプルとしてポリスチレンを用いた条件で測定された、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により測定された値である。
エポキシ樹脂の具体例としては、トリメチロールプロパンのグリシジルエーテル誘導体、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、変性ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ノボラックグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。エポキシ樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
接着剤層2における、エポキシ樹脂の割合としては、接着剤層2を構成する樹脂組成物中、例えば、0.1~50質量%、0.5~40質量%が挙げられる。このとき、残部としては、前記酸変性ポリオレフィンが挙げられる。
接着剤層2における、ポリウレタンの割合としては、接着剤層2を構成する樹脂組成物中、例えば、0.1~50質量%、0.5~40質量%が挙げられる。このとき、残部としては、前記酸変性ポリオレフィンが挙げられる。
なお、本発明において、接着剤層2が、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、及びエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種と、前記酸変性ポリオレフィンとを含む樹脂組成物の硬化物である場合、酸変性ポリオレフィンが主剤として機能し、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、及びエポキシ樹脂は、それぞれ、硬化剤として機能する。
接着剤層2の厚さについては、接着する層としての機能を発揮すれば特に制限されないが、例えば接着剤層2の形成に使用できる接着成分として例示したものを用いる場合であれば、好ましくは1~10μm程度、より好ましくは1~5μm程度が挙げられる。また、ポリオレフィンや酸変性ポリオレフィン樹脂などのポリオレフィン系樹脂により構成する場合であれば、好ましくは2~50μm程度、より好ましくは10~40μm程度が挙げられる。また、硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物である場合であれば、好ましくは約30μm以下、より好ましくは0.1~20μm程度、さらに好ましくは0.5~5μm程度が挙げられる。なお、接着剤層2が酸変性ポリオレフィンと硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物である場合、当該樹脂組成物を塗布し、加熱などにより硬化させることにより、接着剤層2を形成することができる。
[バリア層3]
本発明の保護部材において、バリア層3は、保護部材の強度向上の他、保護部材の内部に水蒸気、酸素、光などが侵入することを防止する機能を有する層である。バリア層3は、金属層、すなわち、金属で形成されている層であることが好ましい。バリア層3を構成する金属としては、具体的には、アルミニウム、ステンレス、チタンなどが挙げられ、好ましくはアルミニウムが挙げられる。バリア層3は、例えば、金属箔や金属蒸着膜、無機酸化物蒸着膜、炭素含有無機酸化物蒸着膜、これらの蒸着膜を設けたフィルムなどにより形成することができ、金属箔により形成することが好ましく、アルミニウム合金箔により形成することがさらに好ましい。保護部材の製造時に、バリア層3にしわやピンホールが発生することを防止する観点からは、バリア層は、例えば、焼きなまし処理済みのアルミニウム(JIS H4160:1994 A8021H-O、JIS H4160:1994 A8079H-O、JIS H4000:2014 A8021P-O、JIS H4000:2014 A8079P-O)など軟質アルミニウム合金箔により形成することがより好ましい。
バリア層3の厚さとしては、長期間にわたる優れた耐水性を発揮できれば、特に制限されないが、好ましくは0.1~300μm程度、より好ましくは10~100μm程度、さらに好ましくは10~80μm程度が挙げられる。
また、バリア層3は、接着の安定化、溶解や腐食の防止などのために、少なくとも一方の面、好ましくは両面が化成処理されていることが好ましい。ここで、化成処理とは、バリア層の表面に耐酸性皮膜を形成する処理をいう。化成処理としては、例えば、硝酸クロム、フッ化クロム、硫酸クロム、酢酸クロム、蓚酸クロム、重リン酸クロム、クロム酸アセチルアセテート、塩化クロム、硫酸カリウムクロムなどのクロム化合物を用いたクロメート処理;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸アンモニウム、ポリリン酸などのリン酸化合物を用いたリン酸処理;下記一般式(1)~(4)で表される繰り返し単位を有するアミノ化フェノール重合体を用いたクロメート処理などが挙げられる。なお、当該アミノ化フェノール重合体において、下記一般式(1)~(4)で表される繰り返し単位は、1種類単独で含まれていてもよいし、2種類以上の任意の組み合わせであってもよい。
一般式(1)~(4)中、Xは、水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アリル基又はベンジル基を示す。また、R1及びR2は、それぞれ同一又は異なって、ヒドロキシル基、アルキル基、又はヒドロキシアルキル基を示す。一般式(1)~(4)において、X、R1及びR2で示されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基などの炭素数1~4の直鎖又は分枝鎖状アルキル基が挙げられる。また、X、R1及びR2で示されるヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、1-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシエチル基、1-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシプロピル基、3-ヒドロキシプロピル基、1-ヒドロキシブチル基、2-ヒドロキシブチル基、3-ヒドロキシブチル基、4-ヒドロキシブチル基などのヒドロキシル基が1個置換された炭素数1~4の直鎖又は分枝鎖状アルキル基が挙げられる。一般式(1)~(4)において、X、R1及びR2で示されるアルキル基及びヒドロキシアルキル基は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。一般式(1)~(4)において、Xは、水素原子、ヒドロキシル基又はヒドロキシアルキル基であることが好ましい。一般式(1)~(4)で表される繰り返し単位を有するアミノ化フェノール重合体の数平均分子量は、例えば、500~100万程度であることが好ましく、1000~2万程度であることがより好ましい。
また、バリア層3に耐食性を付与する化成処理方法として、リン酸中に、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化セリウム、酸化スズなどの金属酸化物や硫酸バリウムの微粒子を分散させたものをコーティングし、150℃以上で焼付け処理を行うことにより、バリア層3の表面に耐酸性皮膜を形成する方法が挙げられる。また、耐酸性皮膜の上には、カチオン性ポリマーを架橋剤で架橋させた樹脂層をさらに形成してもよい。ここで、カチオン性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミンとカルボン酸を有するポリマーからなるイオン高分子錯体、アクリル主骨格に1級アミンをグラフト重合させた1級アミングラフトアクリル樹脂、ポリアリルアミン又はその誘導体、アミノフェノールなどが挙げられる。これらのカチオン性ポリマーとしては、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、架橋剤としては、例えば、イソシアネート基、グリシジル基、カルボキシル基、及びオキサゾリン基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の官能基を有する化合物、シランカップリング剤などが挙げられる。これらの架橋剤としては、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
また、耐酸性皮膜を具体的に設ける方法としては、たとえば、一つの例として、少なくともアルミニウム合金箔の内層側の面を、まず、アルカリ浸漬法、電解洗浄法、酸洗浄法、電解酸洗浄法、酸活性化法などの周知の処理方法で脱脂処理を行い、その後脱脂処理面にリン酸クロム塩、リン酸チタン塩、リン酸ジルコニウム塩、リン酸亜鉛塩などのリン酸金属塩及びこれらの金属塩の混合体を主成分とする処理液(水溶液)、あるいは、リン酸非金属塩及びこれらの非金属塩の混合体を主成分とする処理液(水溶液)、あるいは、これらとアクリル系樹脂ないしフェノール系樹脂ないしウレタン系樹脂などの水系合成樹脂との混合物からなる処理液(水溶液)をロールコート法、グラビア印刷法、浸漬法などの周知の塗工法で塗工することにより、耐酸性皮膜を形成することができる。たとえば、リン酸クロム塩系処理液で処理した場合は、リン酸クロム、リン酸アルミニウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、フッ化アルミニウムなどからなる耐酸性皮膜となり、リン酸亜鉛塩系処理液で処理した場合は、リン酸亜鉛水和物、リン酸アルミニウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、フッ化アルミニウムなどからなる耐酸性皮膜となる。
また、耐酸性皮膜を設ける具体的方法の他の例としては、たとえば、少なくともアルミニウム合金箔の内層側の面を、まず、アルカリ浸漬法、電解洗浄法、酸洗浄法、電解酸洗浄法、酸活性化法などの周知の処理方法で脱脂処理を行い、その後脱脂処理面に周知の陽極酸化処理を施すことにより、耐酸性皮膜を形成することができる。
また、耐酸性皮膜の他の一例としては、リン酸塩系、クロム酸系の皮膜が挙げられる。リン酸塩系としては、リン酸亜鉛、リン酸鉄、リン酸マンガン、リン酸カルシウム、リン酸クロムなどが挙げられ、クロム酸系としては、クロム酸クロムなどが挙げられる。
また、耐酸性皮膜の他の一例としては、リン酸塩、クロム酸塩、フッ化物、トリアジンチオール化合物などの耐酸性皮膜を形成することによって、エンボス成形時のアルミニウムと樹脂層との間のデラミネーション防止、アルミニウム表面の溶解、腐食、特にアルミニウムの表面に存在する酸化アルミニウムが溶解、腐食することを防止し、かつ、アルミニウム表面の接着性(濡れ性)を向上させ、ヒートシール時の樹脂層とアルミニウムとのデラミネーション防止、エンボスタイプにおいてはプレス成形時の樹脂層とアルミニウムとのデラミネーション防止の効果を示す。耐酸性皮膜を形成する物質のなかでも、フェノール樹脂、フッ化クロム(III)化合物、リン酸の3成分から構成された水溶液をアルミニウム表面に塗布し、乾燥焼付けの処理が良好である。
また、耐酸性皮膜は、酸化セリウムと、リン酸又はリン酸塩と、アニオン性ポリマーと、該アニオン性ポリマーを架橋させる架橋剤とを有する層を含み、前記リン酸又はリン酸塩が、前記酸化セリウム100質量部に対して、1~100質量部程度配合されていてもよい。耐酸性皮膜が、カチオン性ポリマー及び該カチオン性ポリマーを架橋させる架橋剤を有する層をさらに含む多層構造であることが好ましい。
さらに、前記アニオン性ポリマーが、ポリ(メタ)アクリル酸又はその塩、あるいは(メタ)アクリル酸又はその塩を主成分とする共重合体であることが好ましい。また、前記架橋剤が、イソシアネート基、グリシジル基、カルボキシル基、オキサゾリン基のいずれかの官能基を有する化合物とシランカップリング剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
また、前記リン酸又はリン酸塩が、縮合リン酸又は縮合リン酸塩であることが好ましい。
化成処理は、1種類の化成処理のみを行ってもよいし、2種類以上の化成処理を組み合わせて行ってもよい。さらに、これらの化成処理は、1種の化合物を単独で使用して行ってもよく、また2種以上の化合物を組み合わせて使用して行ってもよい。化成処理の中でも、クロメート処理や、クロム化合物、リン酸化合物、及びアミノ化フェノール重合体を組み合わせた化成処理などが好ましい。クロム化合物の中でも、クロム酸化合物が好ましい。
耐酸性皮膜の具体例としては、リン酸塩、クロム酸塩、フッ化物、及びトリアジンチオールのうち少なくとも1種を含むものが挙げられる。また、セリウム化合物を含む耐酸性皮膜も好ましい。セリウム化合物としては、酸化セリウムが好ましい。
また、耐酸性皮膜の具体例としては、リン酸塩系皮膜、クロム酸塩系皮膜、フッ化物系皮膜、トリアジンチオール化合物皮膜なども挙げられる。耐酸性皮膜としては、これらのうち1種類であってもよいし、複数種類の組み合わせであってもよい。さらに、耐酸性皮膜としては、アルミニウム合金箔の化成処理面を脱脂処理した後に、リン酸金属塩と水系合成樹脂との混合物からなる処理液、又はリン酸非金属塩と水系合成樹脂との混合物からなる処理液で形成されたものであってもよい。
なお、耐酸性皮膜の組成の分析は、例えば、飛行時間型2次イオン質量分析法を用いて行うことができる。飛行時間型2次イオン質量分析法を用いた耐酸性皮膜の組成の分析により、例えば、Ce+及びCr+の少なくとも一方に由来するピークが検出される。
アルミニウム合金箔の表面に、リン、クロム及びセリウムからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含む耐酸性皮膜を備えていることが好ましい。なお、保護部材のアルミニウム合金箔の表面の耐酸性皮膜中に、リン、クロム及びセリウムからなる群より選択される少なくとも1種の元素が含まれることは、X線光電子分光を用いて確認することができる。具体的には、まず、保護部材において、アルミニウム合金箔に積層されている熱可塑性樹脂層、接着剤層などを物理的に剥離する。次に、アルミニウム合金箔を電気炉に入れ、約300℃、約30分間で、アルミニウム合金箔の表面に存在している有機成分を除去する。その後、アルミニウム合金箔の表面のX線光電子分光を用いて、これら元素が含まれることを確認する。
化成処理においてバリア層3の表面に形成させる耐酸性皮膜の量については、特に制限されないが、例えば、上記のクロメート処理を行う場合であれば、バリア層3の表面1m2当たり、クロム化合物がクロム換算で0.5~50mg程度、好ましくは1.0~40mg程度、リン化合物がリン換算で0.5~50mg程度、好ましくは1.0~40mg程度、及びアミノ化フェノール重合体が1~200mg程度、好ましくは5.0~150mg程度の割合で含有されていることが望ましい。
耐酸性皮膜の厚さとしては、特に制限されないが、皮膜の凝集力や、バリア層3や熱可塑性樹脂層との密着力の観点から、好ましくは1nm~10μm程度、より好ましくは1~100nm程度、さらに好ましくは1~50nm程度が挙げられる。なお、耐酸性皮膜の厚さは、透過電子顕微鏡による観察、又は、透過電子顕微鏡による観察と、エネルギー分散型X線分光法もしくは電子線エネルギー損失分光法との組み合わせによって測定することができる。
化成処理は、耐酸性皮膜の形成に使用する化合物を含む溶液を、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、浸漬法などによって、バリア層の表面に塗布した後に、バリア層の温度が70~200℃程度になるように加熱することにより行われる。また、バリア層に化成処理を施す前に、予めバリア層を、アルカリ浸漬法、電解洗浄法、酸洗浄法、電解酸洗浄法などによる脱脂処理に供してもよい。このように脱脂処理を行うことにより、バリア層の表面の化成処理をより効率的に行うことが可能となる。
[熱可塑性樹脂層4]
本発明の保護部材において、熱可塑性樹脂層4は、最内層に該当し、例えば、内容物を収容する際に熱可塑性樹脂層同士を熱融着させて、保護部材によって内容物を密封することができる。
熱可塑性樹脂層4に使用される樹脂成分については、熱融着可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィン、酸変性環状ポリオレフィンが挙げられる。すなわち、熱可塑性樹脂層4を構成している樹脂は、ポリオレフィン骨格を含んでいても含んでいなくてもよく、ポリオレフィン骨格を含んでいることが好ましい。熱可塑性樹脂層4を構成している樹脂がポリオレフィン骨格を含むことは、例えば、赤外分光法、ガスクロマトグラフィー質量分析法などにより分析可能であり、分析方法は特に問わない。例えば、赤外分光法にて無水マレイン酸変性ポリオレフィンを測定すると、波数1760cm-1付近と波数1780cm-1付近に無水マレイン酸由来のピークが検出される。ただし、酸変性度が低いとピークが小さくなり検出されない場合がある。その場合は核磁気共鳴分光法にて分析可能である。
前記ポリオレフィンとしては、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレンなどのポリエチレン;ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)などのポリプロピレン;エチレン-ブテン-プロピレンのターポリマーなどが挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくはポリエチレン及びポリプロピレンが挙げられる。
前記環状ポリオレフィンは、オレフィンと環状モノマーとの共重合体であり、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーであるオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、4-メチル-1-ペンテン、ブタジエン、イソプレンなどが挙げられる。また、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーである環状モノマーとしては、例えば、ノルボルネンなどの環状アルケン;具体的には、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ノルボルナジエンなどの環状ジエンなどが挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくは環状アルケン、さらに好ましくはノルボルネンが挙げられる。
前記酸変性ポリオレフィンとは、前記ポリオレフィンをカルボン酸などの酸成分でブロック重合又はグラフト重合することにより変性したポリマーである。変性に使用される酸成分としては、例えば、マレイン酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸などのカルボン酸又はその無水物が挙げられる。
前記酸変性環状ポリオレフィンとは、環状ポリオレフィンを構成するモノマーの一部を、α,β-不飽和カルボン酸又はその無水物に代えて共重合することにより、或いは環状ポリオレフィンに対してα,β-不飽和カルボン酸又はその無水物をブロック重合又はグラフト重合することにより得られるポリマーである。カルボン酸変性される環状ポリオレフィンについては、前記と同様である。また、変性に使用されるカルボン酸としては、前記ポリオレフィンの変性に使用される酸成分と同様である。
これらの樹脂成分の中でも、好ましくはポリプロピレンなどのポリオレフィン、カルボン酸変性ポリオレフィン;さらに好ましくはポリプロピレン、酸変性ポリプロピレンが挙げられる。
熱可塑性樹脂層4は、1種の樹脂成分単独で形成してもよく、また2種以上の樹脂成分を組み合わせたブレンドポリマーにより形成してもよい。さらに、熱可塑性樹脂層4は、1層のみで形成されていてもよいが、同一又は異なる樹脂成分によって2層以上で形成されていてもよい。
また、熱可塑性樹脂層4の厚さとしては、熱可塑性樹脂層としての機能を発揮すれば特に制限されないが、長期間にわたって優れた耐水性を発揮する観点からは、好ましくは100μm以下、より好ましくは15~60μm程度、さらに好ましくは15~40μm程度が挙げられる。
[接着層5]
本発明の保護部材において、接着層5は、バリア層3と熱可塑性樹脂層4を強固に接着させるために、これらの間に必要に応じて設けられる層である。
接着層5は、バリア層3と熱可塑性樹脂層4とを接着可能である樹脂によって形成される。接着層5は、接着剤層2で例示した接着成分、樹脂と同様のものが使用できる。
前述の接着剤層2と同様、長期間にわたる耐水性をより一層向上させる観点からは、接着層5の形成に使用できる接着成分としては、耐水性に優れたものを使用することが好ましい。耐水性に優れた接着成分としては、ポリウレタン、エポキシ系樹脂などが挙げられる。
また、接着層5の形成に使用される樹脂としては、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィン、酸変性環状ポリオレフィンなどのポリオレフィン系樹脂も使用できる。すなわち、接着層5を構成している樹脂は、ポリオレフィン骨格を含んでいても含んでいなくてもよく、ポリオレフィン骨格を含んでいることが好ましい。接着層5を構成している樹脂がポリオレフィン骨格を含むことは、例えば、赤外分光法、ガスクロマトグラフィー質量分析法などにより分析可能であり、分析方法は特に問わない。例えば、赤外分光法にて無水マレイン酸変性ポリオレフィンを測定すると、波数1760cm-1付近と波数1780cm-1付近に無水マレイン酸由来のピークが検出される。ただし、酸変性度が低いとピークが小さくなり検出されない場合がある。その場合は核磁気共鳴分光法にて分析可能である。
保護部材の厚さを薄くしつつ、成形後の形状安定性に優れた保護部材とする観点からは、接着層5は、接着剤層2と同様、酸変性ポリオレフィンを含むことが好ましい。酸変性ポリオレフィンは、前述の接着剤層2で説明したとおりである。
接着層5において、酸変性ポリオレフィンの中でも、特に無水マレイン酸変性ポリオレフィン、さらには無水マレイン酸変性ポリプロピレンが好ましい。
さらに、保護部材の厚さを薄くしつつ、成形後の形状安定性に優れた保護部材とする観点からは、接着層5は、酸変性ポリオレフィンと硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物であることがより好ましい。酸変性ポリオレフィンとしては、好ましくは、前記のものが例示できる。
接着層5が、硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物である種々の態様については、前述の接着剤層2と同じである。
接着層5の厚さについては、接着する層としての機能を発揮すれば特に制限されないが、例えば接着層5の形成に使用できる接着成分として例示したもの(すなわち、接着剤層2の形成に使用できる接着成分)を用いる場合であれば、好ましくは1~10μm程度、より好ましくは1~5μm程度が挙げられる。また、ポリオレフィンや酸変性ポリオレフィン樹脂などのポリオレフィン系樹脂により構成する場合であれば、好ましくは2~50μm程度、より好ましくは10~40μm程度が挙げられる。また、硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物である場合であれば、好ましくは約30μm以下、より好ましくは0.1~20μm程度、さらに好ましくは0.5~5μm程度が挙げられる。なお、接着層5が酸変性ポリオレフィンと硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物である場合、当該樹脂組成物を塗布し、加熱などにより硬化させることにより、接着層5を形成することができる。
[表面被覆層6]
本発明の保護部材においては、意匠性、耐擦過性、成形性の向上などを目的として、必要に応じて、樹脂層1の上(樹脂層1のバリア層3とは反対側)に、必要に応じて、表面被覆層6を設けてもよい。表面被覆層6は、本発明の保護部材の最外層に位置する層である。
表面被覆層6は、例えば、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル樹脂、ポリウレタン、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などにより形成することができる。表面被覆層6は、これらの中でも、2液硬化型樹脂により形成することが好ましい。表面被覆層6を形成する2液硬化型樹脂としては、例えば、2液硬化型ポリウレタン樹脂、2液硬化型ポリエステル樹脂、2液硬化型エポキシ樹脂などが挙げられる。また、表面被覆層6には、微粒子等の添加剤を配合してもよい。また、耐水性の観点から、フッ素樹脂、シリコーン樹脂が好ましい。
表面被覆層6を形成する方法としては、特に制限されないが、例えば、表面被覆層6を形成する2液硬化型樹脂を樹脂層1の一方の表面に塗布する方法が挙げられる。添加剤を配合する場合には、2液硬化型樹脂に添加剤を添加して混合した後、塗布すればよい。
表面被覆層6の厚さとしては、表面被覆層6としての上記の機能を発揮すれば特に制限されないが、例えば、0.5~10μm程度、好ましくは1~5μm程度が挙げられる。
3.保護部材の製造方法
本発明の保護部材の製造方法の一例としては、以下の通りである。まず、樹脂層1、接着剤層2、バリア層3が順に積層された積層体(以下、「積層体A」と表記することもある)を形成する。積層体Aの形成は、具体的には、樹脂層1又は必要に応じて表面が化成処理されたバリア層3に接着剤層2の形成に使用される接着剤を、グラビアコート法、ロールコート法などの塗布方法で塗布・乾燥した後に、当該バリア層3又は樹脂層1を積層させて接着剤層2を硬化させるドライラミネート法によって行うことができる。
次いで、積層体Aのバリア層3上に、接着層5及び熱可塑性樹脂層4をこの順になるように積層させる。例えば、(1)積層体Aのバリア層3上に、接着層5及び熱可塑性樹脂層4を共押出しすることにより積層する方法(共押出しラミネート法)、(2)別途、接着層5と熱可塑性樹脂層4が積層した積層体を形成し、これを積層体Aのバリア層3上にサーマルラミネート法により積層する方法、(3)積層体Aのバリア層3上に、接着層5を形成させるための接着剤を押出し法や溶液コーティングし、高温で乾燥さらには焼き付ける方法などにより積層させ、この接着層5上に予めシート状に製膜した熱可塑性樹脂層4をサーマルラミネート法により積層する方法、(4)積層体Aのバリア層3と、予めシート状に製膜した熱可塑性樹脂層4との間に、溶融させた接着層5を流し込みながら、接着層5を介して積層体Aと熱可塑性樹脂層4を貼り合せる方法(サンドイッチラミネート法)などが挙げられる。
このようにして、少なくとも、樹脂層と、バリア層と、熱可塑性樹脂層とがこの順になるように積層して、積層シートからなる前記保護部材を得る工程を行う。第1の保護部材であれば、保護部材のバリア層よりも樹脂層側に位置する層の全体としての水蒸気透過率を40g/m2/24h以下に設定する。また、第2の保護部材であれば、樹脂層の水蒸気透過率が40g/m2/24h以下に設定する。さらに、第3の保護部材であれば、温度120℃、圧力2atm、相対湿度100%の環境で72時間放置される前後における、積層シートの積層方向とは垂直方向の引張破壊応力保持率を85%以上に設定する。これらの設定方法の詳細については、前述の通りである。
表面被覆層6を設ける場合には、樹脂層1のバリア層3とは反対側の表面に、表面被覆層6を積層する。表面被覆層6は、例えば表面被覆層6を形成する上記の樹脂を樹脂層1の表面に塗布することにより形成することができる。なお、樹脂層1の表面にバリア層3を積層する工程と、樹脂層1の表面に表面被覆層6を積層する工程の順番は、特に制限されない。例えば、樹脂層1の表面に表面被覆層6を形成した後、樹脂層1の表面被覆層6とは反対側の表面にバリア層3を形成してもよい。
上記のようにして、必要に応じて設けられる表面被覆層6/樹脂層1/必要に応じて設けられる接着剤層2/必要に応じて表面が化成処理されたバリア層3/必要に応じて設けられる接着層5/熱可塑性樹脂層4からなる積層シートが形成されるが、接着剤層2又は接着層5の接着性を強固にするために、さらに、熱ロール接触式、熱風式、近赤外線式又は遠赤外線式などの加熱処理に供してもよい。このような加熱処理の条件としては、例えば150℃~250℃で1分間~5分間が挙げられる。
本発明の保護部材において、積層シートを構成する各層は、必要に応じて、製膜性、積層化加工、最終製品2次加工(パウチ化、エンボス成形)適性などを向上又は安定化するために、コロナ処理、ブラスト処理、酸化処理、オゾン処理などの表面活性化処理を施していてもよい。
4.包装物
本発明の包装物は、本発明の保護部材を用いて内容物が収容されたものである。前述の通り、本発明の保護部材を用いて内容物を収容できるように、保護部材を成形することにより、内容物を収容する空間を形成した成形体とし、当該空間に内容物を配置して熱可塑性樹脂層同士を熱融着させることにより、内容物を収容・密封することができる。内容物は、前述のとおりである。
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。
<保護部材の製造>
実施例1
樹脂層として、表1に記載の水蒸気透過率を有するポリブチレンテレフタレートフィルム(PBT、厚さ15μm)を用意した。また、バリア層としてアルミニウム箔(JIS H4160:1994 A8021H-O、厚さ35μm)を用意した。次に、アルミニウム箔の一方面に、酸変性ポリオレフィン樹脂とエポキシ系樹脂とを含む樹脂組成物(表2のDL1:エポキシ系接着剤)を塗布し、アルミニウム箔上に接着剤層(厚さ1.5μm)を形成した。次いで、アルミニウム箔上の接着剤層と樹脂層をドライラミネート法で積層した後、エージング処理を実施することにより、樹脂層/接着剤層/アルミニウム箔の積層体を作製した。アルミニウム箔の両面には、化成処理が施してある。アルミニウム箔の化成処理は、フェノール樹脂、フッ化クロム化合物、及びリン酸からなる処理液をクロムの塗布量が10mg/m2(乾燥質量)となるように、ロールコート法によりアルミニウム箔の両面に塗布し、焼付けすることにより行った。
次に、上記で得られた積層体のバリア層の化成処理表面に、接着層としての無水マレイン酸変性ポリプロピレン(PPa、厚さ15μm)と、熱可塑性樹脂層としてのランダムポリプロピレン(PP、厚さ20μm)を共押出しラミネート法により積層して、バリア層の上に接着層/熱可塑性樹脂層を積層させた。次に、得られた積層シートをエージングすることにより、樹脂層/接着剤層/バリア層/接着層/熱可塑性樹脂層がこの順に積層された保護部材を得た。積層構成を表2に示す。
実施例2
樹脂層として、ポリブチレンテレフタレートフィルムの代わりに、表1に記載の水蒸気透過率を有するポリエチレンナフタレートフィルム(PEN、厚さ12μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂層/接着剤層/バリア層/接着層/熱可塑性樹脂層がこの順に積層された保護部材を得た。積層構成を表2に示す。
実施例3
樹脂層として、ポリブチレンテレフタレートフィルムの代わりに、表1に記載の水蒸気透過率を有する未延伸ポリプロピレンフィルム(CPP、厚さ30μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂層/接着剤層/バリア層/接着層/熱可塑性樹脂層がこの順に積層された保護部材を得た。積層構成を表2に示す。
実施例4
樹脂層として、表1に記載の水蒸気透過率を有するポリブチレンテレフタレートフィルム(PBT、厚さ15μm)を用意した。また、バリア層としてアルミニウム箔(JIS H4160:1994 A8021H-O、厚さ35μm)を用意した。次に、アルミニウム箔の一方面に、2液型のポリウレタン接着剤(水酸基を有するポリウレタン化合物とポリイソシアネート化合物)(表2のDL2)を塗布し、アルミニウム箔上に接着剤層(厚さ3μm)を形成した。次いで、アルミニウム箔上の接着剤層と樹脂層をドライラミネート法で積層した後、エージング処理を実施することにより、樹脂層/接着剤層/アルミニウム箔の積層体を作製した。アルミニウム箔の両面には、化成処理が施してある。アルミニウム箔の化成処理は、フェノール樹脂、フッ化クロム化合物、及びリン酸からなる処理液をクロムの塗布量が10mg/m2(乾燥質量)となるように、ロールコート法によりアルミニウム箔の両面に塗布し、焼付けすることにより行った。
次に、上記で得られた積層体のバリア層の化成処理表面に、接着層としての無水マレイン酸変性ポリプロピレン(PPa、厚さ15μm)と、熱可塑性樹脂層としてのランダムポリプロピレン(PP、厚さ20μm)を共押出しラミネート法により積層して、バリア層の上に接着層/熱可塑性樹脂層を積層させた。次に、得られた積層シートをエージングすることにより、樹脂層/接着剤層/バリア層/接着層/熱可塑性樹脂層がこの順に積層された保護部材を得た。積層構成を表2に示す。
実施例5
樹脂層として、ポリブチレンテレフタレートフィルムの代わりに、表1に記載の水蒸気透過率を有するポリエチレンナフタレートフィルム(PEN、厚さ12μm)を用いたこと以外は、実施例4と同様にして、樹脂層/接着剤層/バリア層/接着層/熱可塑性樹脂層がこの順に積層された保護部材を得た。積層構成を表2に示す。
実施例6
樹脂層として、ポリブチレンテレフタレートフィルムの代わりに、表1に記載の水蒸気透過率を有する未延伸ポリプロピレンフィルム(CPP、厚さ30μm)を用いたこと以外は、実施例4と同様にして、樹脂層/接着剤層/バリア層/接着層/熱可塑性樹脂層がこの順に積層された保護部材を得た。積層構成を表2に示す。
比較例1
樹脂層として、表1に記載の水蒸気透過率を有するポリエチレンテレフタレートフィルム(PET、厚さ12μm)を用意した。また、バリア層としてアルミニウム箔(JIS H4160:1994 A8021H-O、厚さ35μm)を用意した。次に、アルミニウム箔の一方面に、2液型のポリウレタン接着剤(ポリオール化合物と芳香族イソシアネート系化合物)(表2に記載のDL)を塗布し、アルミニウム箔上に接着剤層(厚さ3μm)を形成した。次いで、アルミニウム箔上の接着剤層と樹脂層をドライラミネート法で積層した後、エージング処理を実施することにより、樹脂層/接着剤層/アルミニウム箔の積層体を作製した。アルミニウム箔の両面には、化成処理が施してある。アルミニウム箔の化成処理は、フェノール樹脂、フッ化クロム化合物、及びリン酸からなる処理液をクロムの塗布量が10mg/m2(乾燥質量)となるように、ロールコート法によりアルミニウム箔の両面に塗布し、焼付けすることにより行った。
次に、上記で得られた積層体のバリア層の化成処理表面に、接着層としての無水マレイン酸変性ポリプロピレン(PPa、厚さ15μm)と、熱可塑性樹脂層としてのランダムポリプロピレン(PP、厚さ20μm)を共押出しラミネート法により積層して、バリア層の上に接着層/熱可塑性樹脂層を積層させた。次に、得られた積層シートをエージングすることにより、樹脂層/接着剤層/バリア層/接着層/熱可塑性樹脂層がこの順に積層された保護部材を得た。積層構成を表2に示す。
比較例2
アルミニウム箔と樹脂層とを接着する接着剤層の形成において、2液型のポリウレタン接着剤(ポリオール化合物と芳香族イソシアネート系化合物)(表2に記載のDL)の代わりに、変性ポリオレフィン系樹脂とエポキシ系樹脂とを含む樹脂組成物(表2のDL1)を用いたこと以外は、比較例1と同様にして、樹脂層/接着剤層/バリア層/接着層/熱可塑性樹脂層がこの順に積層された保護部材を得た。積層構成を表2に示す。
比較例3
アルミニウム箔と樹脂層とを接着する接着剤層の形成において、2液型のポリウレタン接着剤(ポリオール化合物と芳香族イソシアネート系化合物)(表2に記載のDL)の代わりに、2液型のポリウレタン接着剤(水酸基を有するポリウレタン化合物とポリイソシアネート化合物)(表2のDL2)を用いたこと以外は、比較例1と同様にして、樹脂層/接着剤層/バリア層/接着層/熱可塑性樹脂層がこの順に積層された保護部材を得た。積層構成を表2に示す。
各樹脂層1のみの1m2(片面の面積)当たりの水蒸気透過率(g/m2/24h)は、ISO15106-5 2008年の規定に準拠した方法を採用し、温度40℃、相対湿度90%、測定期間24時間、測定面積8cmφの測定条件において、差圧法による水蒸気透過率測定装置を用いて水蒸気透過率を測定した値である。1m2当たりの水蒸気透過率は、当該水蒸気透過率を、1m2換算することにより算出される。水蒸気透過率の測定は、MOCON社製の水蒸気透過率測定装置 PERMATRAN-W 3/33を用いて測定を行った。
なお、比較例1~3の保護部材において、樹脂層と接着剤層との積層体(表2のPET/DL1、PET/DL2、及びPET/DL2)としての水蒸気透過率について測定したところ、いずれも44g/m2/24hであった。
<引張破壊応力保持率(温度120℃、相対湿度100%の環境で72時間)>
次の方法により、上記で得られた各保護部材について、温度120℃、圧力2atm、相対湿度100%の環境で72時間放置される前後における、厚み方向とは垂直方向(MDの方向)の引張破壊応力は、プレッシャークッカー試験機(株式会社平山製作所の商品名PC-422R8)を用い、JIS K7127:1999の規定に準拠して、試験片の形状を四角形状、試験片のサイズを幅15mm×長さ150mm、試験速度を200mm/minとして測定し、引張破壊応力から引張破壊応力保持率を算出した。引張破壊応力測定装置としては、エーアンドディー社製のテンシロン万能材料試験機RTFを用いた。結果を表2に示す。
<引張破壊応力保持率(温度98℃の水中で30日間)>
比較例1で得られた保護部材について、温度98℃の水中で30日間放置される前後における前記引張破壊応力保持率を求めた。当該引張破壊応力保持率は、温度120℃、圧力2atm、相対湿度100%の環境で72時間放置する代わりに、圧力1atmの環境下で、温度98℃の水中で30日間放置すること以外は、前述の<引張破壊応力保持率(温度120℃、相対湿度100%の環境で72時間)>に記載の方法に準拠して求めた。その結果、温度120℃、圧力2atm、相対湿度100%の環境で72時間放置された場合の引張破壊応力保持率と、温度98℃の水中で30日間放置された場合の引張破壊応力保持率とは、共に80%となり、相関関係を有することが分かる。
<剥離強度保持率(温度120℃、圧力2atm、相対湿度100%の環境で72時間)>
上記で得られた各保護部材を、幅15mm×長さ100mmの短冊状に裁断して、試験片とした。まず、剥離強度T1を次のようにして測定した。試験片の樹脂層とバリア層との間を、長さ方向に10mm程度剥離した。次に、試験片の樹脂層とバリア層側とを、それぞれ上下のチャックに挟み、引張試験機(島津製作所製の商品名AGS-50D)を用いて、50mm/分の速度で180°方向に引張り、試験片の初期剥離強度T1(N/15mm)を測定した。また、剥離強度T2を次のようにして測定した。試験片を、温度120℃、圧力2atm、相対湿度100%の環境で72時間放置した。次に、この試験片の樹脂層とバリア層との間を、長さ方向に10mm程度剥離した。次に、試験片の樹脂層とバリア層側とを、それぞれ上下のチャックに挟み、引張試験機(島津製作所製の商品名AGS-50D)を用いて、50mm/分の速度で180°方向に引張り、試験片の剥離強度T2(N/15mm)を測定した。剥離強度T1に対する剥離強度T2の比率(%)(T2/T1×100)を算出して剥離強度保持率とした。結果を表2に示す。
表1において、PBTはポリブチレンテレフタレート、PENはポリエチレンナフタレート、CPPは未延伸ポリプロピレンフィルム、PETはポリエチレンテレフタレートを意味する。また、DL、DL1、及びDL2は、それぞれ、ドライラミネート法により形成された接着剤層を意味する。ALMはアルミニウム箔、PPaは無水マレイン酸変性ポリプロピレン、PPはランダムポリプロピレンを意味する。
表2に示される結果から明らかなとおり、実施例1~6の保護部材は、樹脂層の水蒸気透過率が40g/m2/24h以下であり、バリア層よりも前記樹脂層側に位置する層の全体としての水蒸気透過率が40g/m2/24h以下となるため、剥離強度保持率が高く、耐水性に優れており、長期間にわたって水性液体と接触する用途に適していることが分かる。一方、前述の通り、樹脂層と接着剤層との積層体(表2のPET/DL1、PET/DL2、及びPET/DL2)としての水蒸気透過率がいずれも44g/m2/24hであった比較例1~3の保護部材は、実施例1~6に比して剥離強度保持率が著しく低く、耐水性に劣っており、長期間にわたって水性液体と接触する用途に適してないことが分かる。比較例1~3の保護部材は、剥離強度T2の測定の際、既にボロボロになって剥がれており、測定不可であったため、剥離強度保持率0%と表記した。比較例1~3の保護部材では、試験後の基材が脆いため、このような結果になったと考えられる。
また、実施例1~6の保護部材は、温度120℃、圧力2atm、相対湿度100%の環境で72時間放置される前後における、積層シートの積層方向とは垂直方向の引張破壊応力保持率が、85%以上であるため、剥離強度保持率が高く、耐水性に優れており、長期間にわたって水性液体と接触する用途に適していることも分かる。一方、引張破壊応力保持率が80%以下である比較例1~3の保護部材は、実施例1~6に比して剥離保持率が著しく低く、耐水性に劣っており、長期間にわたって水性液体と接触する用途に適してないことが分かる。前述の通り、比較例1~3の保護部材は、剥離強度T2の測定の際、既にボロボロになって剥がれており、測定不可であったため、剥離強度保持率0%と表記した。比較例1~3の保護部材では、試験後の基材が脆いため、このような結果になったと考えられる。