JP2008080383A - 超微細粒鋼板の超音波接合法 - Google Patents

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Abstract

【課題】超微細粒組織の特性が大きく劣化することがなく、機械的強度ならびに靭性の高い接合継手が得られる、フエライトのような超微細粒組織を有する鋼板の拡散接合方法を提供する。
【解決手段】超微細粒組織を有する2枚以上の鋼板1A,1Bを、鋼板の接合される面の片側に少なくとも1〜5μm亜鉛メッキがほどこしたうえで、超音波周波数:10〜100kHz、超音波出力:1000〜10000Wおよび超音波付与時間:0.2〜1sの超音波を使用し、かつ加圧力:2〜3Kg/cm2で接合する。
【選択図】図1

Description

本発明は、フエライトのような超微細粒組織を有する2枚以上の鋼板を、この超微細粒組織の特性をできるだけ劣化させることなく超音波エネルギーにより拡散接合し、すぐれた接合強度を有する超音波接合継手を得る方法に関する。
フエライトのような超微細粒組織を有する鋼板を接合して構造物が製作される場合、機械的手段による接合は別として、溶接により冶金的に接合されると、接合部が1000℃以上の高熱にさらされて超微細結晶粒が成長し、超微細粒鋼板本来のすぐれた強度および靭性を喪失する。
溶接に対して、固体接合に属するいわゆる拡散接合は、被接合材より低融点のインサート材を接合部に介在させてその溶融により拡散接合する方法であって、比較的低温下で実施できる。下記特許文献1は、接合強度向上の目的で、インサート材に金やニッケル基合金の使用を提案するが、この方法は、金やニッケル基合金を溶融して拡散接合されるために、接合温度が1000℃以上と高くなって、超微細結晶粒の成長が抑制できず、超微細粒鋼の機械的特性が著しく劣化する。
特開2001−287085号公報
本発明は、フエライトのような超微細粒組織を有する鋼板を拡散接合しても、この超微細粒組織の特性が大きく劣化することがなく、機械的強度ならびに靭性の高い接合継手を得ることを課題とする。
本発明は、それ自体すでに広く実用化されている超音波接合を採用して超微細粒組織を有する鋼板を拡散接合することにより、上記課題を解決する方法であって、以下の要旨をその特徴を有する。
(1) 超微細粒組織を有する2枚以上の鋼板を超音波接合する方法であって、鋼板の接合される面の少なくとも片側に厚さが1〜5μmの亜鉛メッキが施されており、超音波周波数:10〜100kHz、超音波出力:1000〜10000Wおよび超音波付与時間:0.2〜1sの超音波を使用し、かつ加圧力:2〜3kg/cm2のもとで超音波接合することを特徴とする超微細粒鋼板の超音波接合法。
(2) 粒径が粒度番号11番以上のフエライト結晶である超微細粒組織を有する2枚以上の鋼板を超音波接合する方法であって、鋼板の接合される面の少なくとも片側に厚さが1〜5μmの亜鉛メッキが施されており、超音波周波数:10〜100kHz、超音波出力:1000〜10000Wおよび超音波付与時間:0.2〜1sの超音波を使用し、かつ加圧力:2〜3kg/cm2のもとで超音波接合することを特徴とする超微細粒鋼板の超音波接合法。
(3) 超微細粒組織を有する2枚以上の鋼板を超音波接合装置のアンビル上に定置し、同装置のホーンに直結したチップにより接合箇所を加圧して超音波接合することを特徴とする上記1又は2に記載された超微細粒鋼板の超音波接合法。
(4) 鋼板の接合箇所に対応して滑り止めの凹凸加工がそれぞれ施されたアンビルおよびチップを用いて超音波接合することを特徴とする上記1〜3の何れかに記載された超微細粒鋼板の超音波接合法。
(5) 鋼板の接合箇所に対応するチップの接触面の面積が1000mm2以下であることを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載された超微細粒鋼板の超音波接合法。
(6)2個または3個のチップを用いて超音波接合することを特徴とする上記1〜5のいずれかに記載された超微細粒鋼板の超音波接合法。
本発明は、接合しようとする超微細粒鋼板の接合面にあらかじめ亜鉛メッキを施しておいて、超音波エネルギーにより超微細粒鋼板を拡散接合することにより、超微細粒鋼の機械的特性が大きく劣化しないで、高い接合強度の超音波接合継手が得られる方法であって、超微細粒鋼を使用した構造物の製造が可能となる。
本発明は、主にフエライトからなる超微細結晶組織を有し、すぐれた強度ならびに靭性を有する高特性の鋼板同士を、その機械的特性が極力劣化することがないように、拡散接合して機械的構造物等を製作する方法である。
図1は本発明にかかる超微細粒鋼板の超音波接合法に用いる超音波接合装置の一例を示す模式図であり、上の図はその側面図を、下の図はその平面図である。
この図において、1Aおよび1Bは、超微細粒組織からなる2枚の重ね合わされた鋼板で、アンビル3の上面に位置調整治具2により適切な位置に揃えて載置され、その上方から、超音波発振用ホーン4の先に直結されたチップ5で加圧配置されている。そして、この鋼板1A、1Bの接合面の片側(1Aの下面または1Bの上面)または両側(1Aの下面および1Bの上面)には亜鉛めっきが施されている。
本発明が対象とする超微細粒鋼板は、粒度番号で11番以上の主にフエライトからなる超微細結晶組織を有し、機械的強度がきわめてすぐれていることから、鋼板同士の接合にあたっては、接合部の機械的強度を高度に維持することが要求される。
本発明は、そのために超音波接合を利用することとし、接合しようと2枚の超微細粒鋼板の接合面の少なくとも片側の面に、あらかじめ亜鉛メッキを施しておくことが特徴である。3枚以上の同超微細粒鋼板を接合する場合も同様とする。
亜鉛メッキされた超微細粒鋼板を、亜鉛メッキ層が接するように重ね合わされた状態で、超音波接合装置のアンビル上に載置され、その上に同装置のチップを位置し、チップの加圧下で所定の条件で超音波接合がおこなわれる。このようにすると、亜鉛メッキ層が溶融して鋼板に拡散し、アンビルとチップとの間で両鋼板が確実に拡散接合される。
このようにして得られた接合鋼板は十分な接合強度を有し、また、接合時に1000℃もの高熱に曝されることがないので、母材の超微細粒鋼板それ自体の機械的特性が著しく劣化しないことが確認される。これに対して、もし、亜鉛メッキされていない鋼板をそのまま超音波接合しても、それが過酷な超音波接合条件でない限り拡散層ができないため、鋼板は実質的に接合されない。
超微細粒鋼板に亜鉛メッキする手段は特に限定されないが、その厚さは2〜10μmの範囲に制御するのがよく、2μm未満では、拡散層の厚さが不十分となり、また、10μmを超えると未拡散の亜鉛層が残留する。いずれの場合も接合強度が不十分となる。このためには、薄目付けでその厚さの制御が有利な電気亜鉛メッキがより好ましいといえる。
この発明の実施にあたっては、市販の超音波接合装置が使用できるが、駆動条件を選択することにより、よりよい超音波接合が実施できる。すなわち、アンビルに対するチップの加圧力は、2〜3kg/cm2の範囲が実用的で、この範囲を逸脱すると、いずれも拡散層の厚さが不十分となり、期待どうりの接合強度が容易に得られない。
また、超音波接合の超音波周波数は、10〜100kHzの範囲で選択するのがよい。10kHz未満では、拡散層の厚さが不十分で接合強度が不足し、100kHzを超えると、チップの破損をもたらす危険がある。
また、超音波接合の超音波出力は、すぐれた接合強度を得るために1000〜10000Wの範囲で選択するのがよい。1000W未満では、拡散層の厚さが不十分で接合強度が不足し、10000Wを超えると、チップの破損をもたらす危険がある。
さらに、超音波接合の付与時間は、0.2〜1sの範囲がよい。すなわち、拡散層の厚さを確保して十分な接合強度を得るためには、0.2s以上の付与時間を必要とするが、1sを超えるとチップの破損をもたらす危険がある。
また、上記アンビルおよびチップの、鋼板に接する面には、微細な凹凸が設けられていると、加工時に鋼板との間で相互に滑りが生じて拡散接合の効率が阻害されるようなことがない。
なお、このような微細な凹凸は、たとえば、金属ブラシによるブラッシングなどの方法により簡単に加工でき、その微細度はとくに限定されない。
このようにして、本発明の方法により超音波接合される超微細粒鋼板の接合部は、1000℃もの高温に曝されることがないために、母材鋼板の機械的特性である強度ならびに靭性が大きく劣化されないで十分に拡散接合されている。実際、本発明の方法による超音波接合では、接合箇所ならびにその近傍における接合時の温度は1200℃を超えることはない。したがって、この拡散接合部を有する構造体は、溶接により製作されたものに比し、接合部分に高度の信頼性があり、また、他の拡散接合によるものでは期待できないすぐれた接合品質を持つ。
(実施例)
本発明の実施例には、下記化学成分の組成を有する鋼が供試材として使用され、また、比較例にも同一の鋼が共通して使用された。
C:0.15wt%(以下、wtを略す。)、Si:0.01%、Mn:0.74%、P:0.02%、S:0.02%,Al:0.022%、N:0.002%。
この鋼片は、常法により、フエライト結晶粒径が約1μmで厚さが1.4mmの超微細粒鋼板に熱間圧延された。そして、この鋼板は、その両面を研削してから、比較例を除き、1mm〜15mm厚さの範囲で、片面に電気亜鉛メッキが施された(以下、メッキ鋼板という。)。
メッキ鋼板とは別に、同様に熱間圧延されたままで亜鉛メッキが施されていない鋼板(以下、メッキなし鋼板という。)も準備された。
両鋼板をの必要数が超音波接合のために、幅500mm、長さ500mmのサイズの供試材として加工された。また、メッキ鋼板およびメッキなし鋼板の材質強度は、それぞれ535MPaおよび544MPaである。
これらの各鋼板は、前記の図1のように超音波接合装置にセットされた。この超音波接合装置(日本エマソン株式会社製)の基本仕様は下記のとおりである。
・定格出力:3300W
・周波数:20kHz
・加圧力:0.5〜6.0kgf/cm2
・溶接時間:0.01〜10.0s
そして、この超音波接合装置が、下記範囲内でそれぞれ選択された条件のもとで駆動され、数種類の組み合わせの鋼板が超音波接合された。
・加圧力:1〜3.5kg/cm2
・超音波周波数:10〜100kHz
・超音波の出力:1000〜10000W
・超音波の付与時間:0.1〜1.25s
各接合鋼板の接合強度は、超音波接合部を含んで採取された試験片をせん断試験法により測定された。表示強度は引張せん断強度(kN)である。
表1、2に接合強度の調査結果を示す。通常の軟鋼板をスポット溶接した場合に得られる引張せん断強度が4〜7kN程度であるため、4kN以上の引張せん断強度が得られた場合を合格とした。実施例から明らかなように本発明法は、優れた接合強度を有しているが、比較法では、接合強度が低いかチップが破損し接合できなかった。
Figure 2008080383
Figure 2008080383
本発明に用いられる超音波接合装置の模式図。
符号の説明
1A、1B:鋼板 2:位置調整治具 3:アンビル
4:ホーン 5:チップ 6:位置調整治具

Claims (6)

  1. 超微細粒組織を有する2枚以上の鋼板を超音波接合する方法であって、鋼板の接合される面の少なくとも片側に厚さが1〜5μmの亜鉛メッキが施されており、超音波周波数:10〜100kHz、超音波出力:1000〜10000Wおよび超音波付与時間:0.2〜1sの超音波を使用し、かつ加圧力:2〜3kg/cm2のもとで超音波接合することを特徴とする超微細粒鋼板の超音波接合法。
  2. 粒径が粒度番号11番以上のフエライト結晶である超微細粒組織を有する2枚以上の鋼板を超音波接合する方法であって、鋼板の接合される面の少なくとも片側に厚さが1〜5μmの亜鉛メッキが施されており、超音波周波数:10〜100kHz、超音波出力:1000〜10000Wおよび超音波付与時間:0.2〜1sの超音波を使用し、かつ加圧力:2〜3kg/cm2のもとで超音波接合することを特徴とする超微細粒鋼板の超音波接合法。
  3. 超微細粒組織を有する2枚以上の鋼板を超音波接合装置のアンビル上に定置し、同装置のホーンに直結したチップにより接合箇所を加圧して超音波接合することを特徴とする請求項1又は2に記載された超微細粒鋼板の超音波接合法。
  4. 鋼板の接合箇所に対応して滑り止めの凹凸加工がそれぞれ施されたアンビルおよびチップを用いて超音波接合することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載された超微細粒鋼板の超音波接合法。
  5. 鋼板の接合箇所に対応するチップの接触面の面積が1000mm2以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載された超微細粒鋼板の超音波接合法。
  6. 2個または3個のチップを用いて超音波接合することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載された超微細粒鋼板の超音波接合法。
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