JP3914856B2 - 溶接時めっき割れを防止する亜鉛めっき鋼板の溶接方法 - Google Patents

溶接時めっき割れを防止する亜鉛めっき鋼板の溶接方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐食性を持たせるために鋼板表面に亜鉛または亜鉛を主体としためっき層を形成させた、いわゆる亜鉛めっき鋼板の溶接に関するものであり、より詳しくは、溶接時に生じる亜鉛めっき割れを防ぐための方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
亜鉛は、鋼材中に粒界をつたわって浸入していき、それが原因で割れを発生させる。このような亜鉛が起因となる割れは、通常亜鉛めっき割れ、亜鉛めっき脆性あるいは亜鉛脆化割れなどとよばれており、溶接終了後に亜鉛めっきを行なうために溶融亜鉛に溶接継手を浸漬する際に生じる場合が多い。
【0003】
亜鉛めっき割れの発生メカニズムとしては、表面のごく近傍に溶融亜鉛が粒界を通して浸入し、そこに小さな割れを発生させ、割れによってできたすきまに毛管現象により溶融亜鉛がさらに浸入するため、その割れ先端で更なる割れが発生する、という過程が考えられる。そのため、亜鉛めっき割れは、鋼材中の亜鉛が拡散する以上の速度で進展する。
【0004】
このような亜鉛割れを防ぐためには、鋼材の成分を耐割れ性に優れたものに調整する方法が以前より用いられてきた。実際、1988年にJIS G3474では、亜鉛めっき割れ感受性指標として、CEZを制定しているが、これは、鋼材の成分で計算される指標である。その後、CEZは改良され、改良された指標は1995年にはJIS G3474およびG3129に制定されているが、いずれも鋼材成分で計算される指標である。
【0005】
亜鉛めっき割れは、溶融亜鉛に溶接継手を浸漬する場合以外にも、亜鉛めっき鋼板を溶接する場合に発生する。この理由は、溶接熱によりめっき層が溶融することによる。この場合でも、CEZなどの亜鉛めっき割れ感受性指標は有効であるが、溶接することにより生じる亜鉛めっき割れの場合、溶接後に亜鉛めっきを行なう場合と以下の点で相違がある。
【0006】
初めの相違点は、溶融亜鉛が存在する時間間隔である。溶接時に生じる亜鉛めっき割れは、割れ発生温度領域が限られており、それは、表面のめっき層が溶融している間だけである。それより高い温度領域では亜鉛が蒸発するため割れが発生せず、それよりも低い温度領域では溶融亜鉛が存在しなくなるためやはり割れは発生しない。すなわち、割れを発生させる溶融亜鉛が表面に存在しているのはごく一定時間内のみである。それに対し、溶接後に亜鉛めっきを行なう場合は、めっき作業中は溶接継手全体が溶融亜鉛にさらされている。
【0007】
次の相違点は、割れが発生する時の応力状態である。一般に、溶接熱影響部には引っ張りの応力が残留している部分が存在し、それは、特に融合線近傍でその値が大きい。このような状態で溶融亜鉛に浸されると、引っ張り残留応力が存在するところで割れが発生する危険が高まる。一方、溶接時の生じる亜鉛めっき割れは、問題となる応力状態は、溶融亜鉛が存在している温度領域の場合だけであり、継手が室温まで冷却したときに存在する高い引っ張り残留応力ではない。
【0008】
本発明が対象としている溶接中に亜鉛めっき割れが発生するという問題は、これまであまり認識されてこなかった。それは、溶接熱により溶融亜鉛は蒸発してなくなってしまう、という認識があったことに加え、めっき後に溶接される鋼板の多くが自動車用であったため、めっき後の機械加工を考慮し、これまでは鋼板の引っ張り強度が低い場合、すなわち合金元素添加が少なく、結果的にCEZが低く抑えられていた鋼板に限られていた。しかしながら、現在では、高強度鋼板に対してもめっきが施されるようになり、また、鋼板の高強度化は自動車の燃費向上、ひいては地球環境への考慮から、高強度亜鉛めっき鋼板の産業上の意義が大きくなってきた。このような場合で溶接が実施されると、亜鉛めっき割れという問題が生じてくるようになった。
【0009】
このように、亜鉛めっき鋼板の溶接した時のめっき割れは、問題の存在そのものが比較的最近になって認識されてきたものである。この問題の最大の特徴は、溶接熱によって亜鉛が溶融する範囲内かつその温度領域内でのみ割れが発生するという点である。これは、溶接継手表面全体が溶融亜鉛に接する場合と大きく異なる。これらの点から、亜鉛めっき鋼板を溶接する際に生じる亜鉛めっき割れを防ぐ場合、溶接熱で溶融した亜鉛が継手表面に存在している間だけ何らかの方法で割れが発生しないような方法が見出せれば、亜鉛めっき鋼板を溶接する有効な手段となることは疑う余地がない。すなわち、溶接継手のごく一部分のかつごく限られた時間内の溶融亜鉛が存在するときだけ割れ防止対策をほどこしさえすればいいのである。このような方法は、鋼板表面全体が溶融亜鉛に接している場合の亜鉛めっき割れ防止対策より簡便で経済的な方法であると期待できる。
【0010】
亜鉛めっき割れの要因として、鋼板表面に存在する引っ張りの応力が挙げられ、これを低減することができれば耐割れ性を改善させることができることは明白である。一方、鋼板表面に圧縮応力を形成させる従来技術としてピーニング方法があり、その中でも最近米国で開示された超音波を用いたピーニング方法(特許文献1、2、3)は効率よいピーニング方法である。しかしながら、この方法は、現在までには疲労強度向上として利用されるのみであり、亜鉛めっき割れの防止に利用されるまでにはいたっていない。その理由は、ピーニングは、溶接終了後の応力を圧縮にするためにのみ用いられているためであり、亜鉛めっき割れが生じる温度領域では引っ張り応力が鋼板表面に存在しているからである。一旦、亜鉛めっき割れが発生してしまうと、その後、超音波ピーニングをしても割れはなくならない。したがって、超音波ピーニングを利用して亜鉛めっき割れを防ぐ方法はいまだ実現されていない。
【0011】
【特許文献1】
US 6171415 B1
【特許文献2】
US 6338765 B1
【特許文献3】
US 2002/0014100 A1
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、以上のような考察に鑑み、鋼材表面に存在する亜鉛または亜鉛を主体としためっき層が溶融している間だけ、そこの部分の局部応力を圧縮状態にすることができないか、鋭意研究を重ねてきた。本発明の目的は、このような、溶融亜鉛が鋼板表面に存在する間だけそこの部分の局部応力を超音波ピーニングを用いて圧縮状態にする溶接方法を提供し、亜鉛めっき鋼板を溶接する際に生じる亜鉛めっき割れを防ぐ手段を提供するものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、上記技術課題を解決するものであり、その要旨とするところは以下のとおりである。
【0014】
(1) 亜鉛または亜鉛を主体としためっき層が表面に存在する亜鉛めっき鋼板を溶接する方法において、溶融アークの後方で溶融アークとの距離が50mm〜200mmの範囲内に超音波ピーニング装置のピーニング先端部分を配置し、溶接速度と同じ速度で溶接止端部近傍から溶接熱影響部にかけてピーニング幅が2mm以上になるようにピーニングすることを特徴とする溶接時めっき割れを防止する亜鉛めっき鋼板の溶接方法。
【0015】
(2) ピーニング方法として、特に周波数が20kHz〜60kHzの範囲内にある超音波を用いた方法を用いることを特徴とする、前記(1)記載の溶接時めっき割れを防止する亜鉛めっき鋼板の溶接方法。
【0016】
(3) ピーニングを行なう際の、溶接部に衝撃を加える先端部分に、直径が1.5mm〜7.0mmの範囲内にあるピンを1本または複数本用いることを特徴とする前記(2)記載の溶接時めっき割れを防止する亜鉛めっき鋼板の溶接方法。
【0017】
(4) 亜鉛めっき鋼板を溶接する前に、同じ板厚および同じ入熱量で試験溶接を行ない、めっき割れ発生が想定される溶接熱影響部の熱履歴カーブを測定し、冷却過程での温度がめっき層の溶融温度〜(めっき層の溶融温度+150℃)の範囲になるようにピーニング先端部分と溶融アークの距離を設定することを特徴とする前記(1)、(2)または(3)記載の溶接時めっき割れを防止する亜鉛めっき鋼板の溶接方法。
【0018】
(5) 前記(1)、(2)、(3)または4記載の亜鉛めっき鋼板溶接部のめっき割れを防止する方法において、亜鉛めっきされている鋼板の引っ張り強度が570MPa級以上の強度レベルを有する場合に対して適用することを特徴とする溶接時めっき割れを防止する亜鉛めっき鋼板の溶接方法。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0020】
初めに本発明の技術思想について述べる。
本発明における第一の技術思想は、溶融亜鉛が溶接継手に存在する間継手表面の応力状態を圧縮状態にする、という点に存在する。一般に、溶接部は、溶融状態で鋼板におかれた溶接金属の熱収縮のため外力が加わっていない状態でも応力が分布し、特に室温付近まで温度が下がってくると溶接金属近傍では引っ張り応力状態になっている。この引っ張り応力が、亜鉛めっき層が溶融している温度範囲で既に発生している場合、この応力が引き金となり亜鉛めっき割れが発生する。本発明では、このような考察から、亜鉛めっき層の融点以上の状態でピーニング処理をし、亜鉛めっき層が溶融している温度領域だけを一時的に圧縮応力状態することにより、めっき割れを防ぐという考えである。
【0021】
次に、本発明のおける第二の技術思想について述べる。
【0022】
本発明では、ピーニング処理を行なう際に、超音波ピーニングを用いることとしている。めっき割れを防ぐ目的の場合、ピーニング処理を行なえば部分的に圧縮応力を導入することができるので、特に超音波ピーニングに限定する必要はない。しかし、本発明では、ピーニング速度と溶接速度を同じにする必要があり、そのためには、短時間で何回も割れ発生領域に衝撃を与える必要がある。そのため、超音波を用いたピーニング処理は必須である。
【0023】
超音波を用いる最大のメリットは、ピーニング先端のピンの重さが小さくても十分大きな衝撃力を与えることができ、その結果少ない作業時間で十分なピーニング効果をあげることができる点である。そのため、ピーニング速度も溶接速度と同程度にすることができ、溶接部が亜鉛めっき割れを起こす温度領域で確実にピーニング処理をすることができる。ピーニング処理をする理由は、局部応力を一時的に圧縮にするためであるが、そのためには、ピーニング部分に塑性歪を導入させなければならない。弾性歪の範囲内では、応力状態が変化しないからである。塑性歪を導入するためには、材料が持つ降伏強度以上の衝撃応力を加える必要があるが、これをもし、静的応力で実現しようとする場合は、溶接部に降伏応力以上の応力を加える必要があり、その分装置が大きくなってしまい、作業負荷の増大をまねく。一方、超音波を用いると、ピーニング部分に加わる応力はピンの重量が例えば10g程度でも十分大きな応力になることがわかる。
この原理を簡単に説明する。
【0024】
周波数を33kHzとし、ピンの重量を10g、ピンが振動する範囲を0.03mmとし、ピン先端の直径を3mmと仮定する。このとき、ピンのスピード、Vは
V=0.03×33000=1000mm/s=1m/s
である。ピンは1/33000秒に1回スピードを+1m/sから−1m/sに変化させることになるが、その変化は、ピーニング処理部分にピンがぶつかる瞬間である。このとき、1回の周波数内の1/10の時間すなわち、1/330000秒の間で生じるとすると、速度の時間変化、すなわち加速度、Aは
A=dV/dt=2×330000=660000m/s2
となる。衝撃力Fは、上記加速度にピンの重さ10g=1/100kgをかければ求まり、
F=660000×1/100=6600N
となる。応力Sは、これをピンの断面積、1.5×1.5×3.14=7.1mm2で割れば計算でき、
S=6600/7.1=930N/mm2=930MPa
となる。注意すべきは、この応力は、ピンの重さがわずかに10gとした場合の値である点である。しかも、この衝撃応力は1/33000秒に1回鋼板表面に与えられる。1秒間に33000回衝撃応力が加わるわけで、超音波ピーニングがいかに効率が高いかがわかる。実際の超音波ピーニングの場合は、速度反転が生じる時間間隔が上記計算の設定よりさらに短いと考えられるため、より大きな衝撃応力が出ているものと考えられる。
【0025】
以上のように、ピーニング処理のうち、特に超音波を用いる方法は、ピンの重量が小さくて済み、かつ短時間で何回も衝撃を与えることができるため、ピーニング速度を高くしても十分その効果を確保することができる。図1は、このピーニング処理を説明する概念図である。亜鉛めっき鋼板1を溶接する際に溶接アーク2の後方でピーニング処理を超音波ピーニング3にすることにより、溶接速度と同じ速度で処理することが可能となり、一定温度の場所のピーニングが可能となる。また、装置の軽量化ができるなどの利点も有することがわかる。本発明では、溶接アークの後方で、めっき割れが発生する温度領域を常にピーニング処理しつづける必要があるため、超音波ピーニングに限定した。
【0026】
次に、超音波ピーニング先端部分と溶融アークの間の距離を限定した理由について述べる。
【0027】
本発明では、めっき割れが発生する温度領域でピーニングをしなければならない。これは、溶接後の冷却過程でその温度範囲になったときにピーニングをしなければならないことを意味するものである。この温度範囲になる領域とは、溶接アークより50mm〜200mmの範囲の部分である。50mmより近い場合は、熱影響部は十分温度が高く、そこに亜鉛が拡散してきても蒸発してしまうので下限を50mmとした。また200mmを上回るほどに離れた場所では、既に割れ領域に入ってしまい、めっき割れが発生してしまう危険がある。一度割れが発生すると、その後ピーニング処理しても割れは回復しない。そのため上限を200mmとした。
【0028】
次に、ピーニングをする幅を限定した理由について述べる。
【0029】
一般に亜鉛めっき割れが発生する場所は、引っ張り応力が高く、かつ応力集中部である溶接止端部である。溶接止端部は一度1000℃以上に加熱されるため、亜鉛めっき層はいったん蒸発してなくなる。しかし、溶接止端部より少し離れたところでは、溶融亜鉛が存在しており、溶接止端部が冷却してくると、この溶融亜鉛は溶接止端部の方に流れてくる。このとき、溶接止端部の引っ張り応力に加え、応力集中部であるという条件が加わり、最も亜鉛めっき割れ感受性が高くなるのである。そのため、ここでの割れ感受性を抑えるためには、圧縮応力の導入に加え、応力集中を緩和させることができれば、より効果が大きい。本発明では、ピーニング方法として、超音波ピーニングを採用しており、溶接始端部の形状を改善するに十分な効果を持っている。応力集中を緩和するには、溶接止端部近傍を幅2mm以上でピーニングをする必要がある。これを下回る幅では、応力集中を緩和する効果が小さいばかりでなく、ピーニングをした場所のすぐ隣に引っ張り応力が存在する領域が残ってしまい、ここで亜鉛めっき割れが発生してしまう危険があるため下限を2mmとした。なお、本発明ではピーニング幅の上限を設けていない。しかし、ピーニング幅を不必要なまでに大きくすることは、ピーニング処理の効率を悪くするので、好ましくはピーニング幅の上限を10mmと設けることが望ましい。
【0030】
次に超音波ピーニングの周波数を限定した理由について述べる。
【0031】
下限の20kHzは、これを下回る周波数の場合、人間が聞こえる周波数すなわち可聴周波数の範囲の入ってしまい、ピーニング作業の観点からは好ましいことではない。本発明の本意は、簡便な亜鉛めっき割れ防止方法を提供することにあるため、作業環境が劣化するような方法は本発明の本意からはずれる。また、上記衝撃応力の試算からわかるように、超音波の周波数は高いほど衝撃応力が高くなりそれだけ有利となる。下限の20kHzは、簡便な装置で十分なピーニング効果を得られる周波数として、また作業環境を劣悪なものとしない値として設定した。なお、下限の20kHzは、より高い衝撃応力を得る観点から、好ましくは23kHz以上とすることが望ましい。上限の60kHzは、これ以上の周波数になると、現在の技術では簡便な装置で超音波を得ることが難しくなり、かつ人間の耳には聞こえないものの健康管理上の問題が生じてくるためこの値を設定した。
【0032】
次にピンの直径を限定した理由について述べる。
【0033】
先ほどの衝撃応力試算例からわかるように、最終的な衝撃応力は、衝撃力をピン断面積で割ることにより求めることができ、また断面積が小さいほど衝撃応力は大きくなる傾向にある。より大きい衝撃応力を得るためにはピンを例えば針のように細くすればいいが、この場合、ピンが折れたり座屈したりする危険があり、不必要な細径はかえってマイナスである。下限1.5mmは、ピンが座屈や折れたりしないで十分ピーニング処理に耐えうる値として設定した。逆にピンの直径が大きすぎると、鋼板に塑性変形を与える程度の大きな衝撃応力が発生しなくなる可能性がある。上限の7mmは、これ以上の直径ではピンの断面積が大きすぎ、衝撃応力が十分大きい値にならない場合があるためこの値を設定した。
次に、ピーニング先端部分と溶融アークの距離を、熱履歴カーブを測定し、冷却過程での温度が、めっき層の溶融温度〜(めっき層の溶融温度+150℃)の範囲になる様に限定した理由について述べる。
【0034】
本発明におけるピーニングの目的は、亜鉛めっき割れが発生する前に圧縮応力を導入することである。しかし、導入された圧縮応力がずっと維持されるわけではなく導入後の冷却過程で生じる熱収縮のために徐々に引っ張り応力状態になっていく。そのため、ピーニングするタイミングは、亜鉛めっき割れが発生する直前の温度領域が最も効率がよい。しかし、ピーニング後は、しばらく圧縮応力状態であるため、必ずしも割れ発生直前である必要はない。本発明では、ピーニング先端部分の位置をめっき層の溶融温度〜(めっき層の溶融温度+150℃)としたが、この範囲を下回る温度になった場合にピーニングをしてもすでに割れが発生してしまっているために、また、この範囲を上回る温度でのピーニングでは、その後の熱収縮により割れが発生するタイミングまでに圧縮応力状態が維持されず、亜鉛めっき割れを防ぐことができないため、この様に範囲を設定したのである。
【0035】
次に、めっき鋼板の強度を限定した理由について述べる。
【0036】
従来よく使われていためっき鋼板は、既に述べたように、強度の低い鋼板であり、CEZが必然的に低くなり、鋼板そのものが持つ耐割れ性は十分良好であったため、本発明が取り扱っている割れは特に生じていなかった。このような鋼板にピーニング処理をする場合にも上記効果は得られるが、特にめっき割れが発生する危険がある引っ張り強度が570MPa級以上の鋼材において、顕著な効果が得られる。
【0037】
【実施例】
以下に本発明における実施例について説明する。
【0038】
初めに、440〜780MPa級の鋼材で板厚5mmの試験素材を準備し、表面に亜鉛めっきをした。このときの亜鉛めっき層の融点は、亜鉛の中にMgなどをある程度含有させることにより変化させることができる。
【0039】
図2は、亜鉛めっき割れを再現した時の試験片の形状を説明した図で(a)は平面図、(b)は側面図である。継手形状は重ね隅肉であり、図2における左側の鋼材表面に亜鉛めっきを施しためっき層4がある。試験片はボルト5で下の固定台6に取り付けられているが、一方の試験片はスペーサー7を介して取り付けてある。これは実構造物に近い拘束度を試験片に与えるためである。
【0040】
溶接は、ソリッドワイヤをを用いて、炭酸ガス溶接を行なって溶接ビード8を形成した。その時の溶接条件は表1に示した。
【0041】
表1に対し、超音波ピーニングを種々の条件で溶接止端部に対して実施して亜鉛めっき割れの有無を調べた。ピーニングを実施した位置の温度は、予め、同じ溶接条件(表1では継手No.1と2の2種類)で予備的に溶接を行ない、その時の熱履歴を測定してその冷却カーブから決定した。例えば、溶接速度が60cm/分の場合、アークが通り過ぎてから10秒後には6cm、すなわち60mmアークが移動しているため、10秒後の温度が60mm離れたところをピーニングしている時のピーニング位置の温度とわかる。この様にして、ピーニング位置の温度を決定した。
【0042】
表2には、亜鉛めっき割れとピーニング処理条件の関係を調べた結果を示した。試験No.1は、継手Noが表1のNo.1であり、ピーニング先端部分とアークとの距離が本発明の範囲外で、ピーニングを行なっていることころの温度が580℃と高すぎ、割れが防止できなかった例である。一方、試験No.2、3は、ピーニング位置とアークとの距離が適切であったため割れが防止できた例である。しかし、試験No.4になるとアークとピーニング位置の距離が大きくなりすぎて、ピーニング開始前に既に割れが発生してしまった例である。試験No.5は、溶接条件が他の継手と異なっている場合であるが、ピーニング条件が本発明の範囲内であり、割れ防止ができた例である。しかし、試験No.5の条件で、ピンの直径を1mmと本発明の範囲外にした試験No.6は、ピーニング処理中にピンが折れてしまいピーニングが継続的に実施することができず、割れを防ぐことができなかった例である。一方、試験No.7は、継手が表1の継手No.3であり、鋼材強度が440MPa級と低い鋼材を用いた場合である。このような場合は、従来どおり、ピーニングをしなくとも割れは発生していなかった。試験No.8、9は、亜鉛めっき層の融点が他の継手より低い場合であるが、ピーニングする位置の温度が、本発明の範囲内であるため割れを防ぐことができた。試験No.10は、ピンの直径が10mmと本発明例の範囲外であり、ピンが太すぎ十分なピーニング効果が得られず、微小ながら割れが確認された例である。
【0043】
【表1】
Figure 0003914856
【0044】
【表2】
Figure 0003914856
【0045】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、亜鉛めっき割れを効率よく防止することが可能であり、工業的価値の極めて高い発明であるといえる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、亜鉛めっき鋼板を溶接する時のめっき割れを超音波ピーニングを用いて防止する方法を説明する概念図である。
【図2】図2は、亜鉛めっき割れを再現する試験方法を説明した概念図である。
【符号の説明】
1 亜鉛めっき鋼板
2 溶接アーク
3 超音波ピーニング
4 めっき層
5 ボルト
6 固定台
7 スペーサー
8 溶接ビード

Claims (5)

  1. 亜鉛または亜鉛を主体としためっき層が表面に存在する亜鉛めっき鋼板を溶接する方法において、溶融アークの後方で溶融アークとの距離が50mm〜200mmの範囲内に超音波ピーニング装置のピーニング先端部分を配置し、溶接速度と同じ速度で溶接止端部近傍から溶接熱影響部にかけてピーニング幅が2mm以上になるようにピーニングすることを特徴とする溶接時めっき割れを防止する亜鉛めっき鋼板の溶接方法。
  2. ピーニング方法として、特に周波数が20kHz〜60kHzの範囲内にある超音波を用いた方法を用いることを特徴とする、請求項1記載の溶接時めっき割れを防止する亜鉛めっき鋼板の溶接方法。
  3. ピーニングを行なう際の、溶接部に衝撃を加える先端部分に、直径が1.5mm〜7.0mmの範囲内にあるピンを1本または複数本用いることを特徴とする請求項1または2記載の溶接時めっき割れを防止する亜鉛めっき鋼板の溶接方法。
  4. 亜鉛めっき鋼板を溶接する前に、同じ板厚および同じ入熱量で試験溶接を行ない、めっき割れ発生が想定される溶接熱影響部の熱履歴カーブを測定し、冷却過程での温度がめっき層の溶融温度〜(めっき層の溶融温度+150℃)の範囲になるようにピーニング先端部分と溶融アークの距離を設定することを特徴とする請求項1、2または3記載の溶接時めっき割れを防止する亜鉛めっき鋼板の溶接方法。
  5. 請求項1、2、3または4記載の亜鉛めっき鋼板溶接部のめっき割れを防止する方法において、亜鉛めっきされている鋼板の引っ張り強度が570MPa級以上の強度レベルを有する場合に対して適用することを特徴とする溶接時めっき割れを防止する亜鉛めっき鋼板の溶接方法。
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