JP2008077756A - 磁気記録媒体及びその製造方法、並びに磁気記録再生装置 - Google Patents

磁気記録媒体及びその製造方法、並びに磁気記録再生装置 Download PDF

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Abstract

【課題】磁気トラック間領域の保磁力、残留磁化を極限まで低減させることにより磁気記録の際の書きにじみをなくし、高い面記録密度の磁気記録媒体の製造方法を提供する。
【解決手段】非磁性基板1の少なくとも一方の面に磁性層3が設けられ、この磁性層3に磁気的に分離された磁気的パターン3aが形成されてなる磁気記録媒体10の製造方法であって、磁性層3に原子を該磁性層3の厚さ方向に均一に分布させて注入し、磁性層3を部分的に非磁性化させることによって、磁気的パターン3aを磁気的に分離する非磁性部5を形成する。
【選択図】図1

Description

本発明は、ハードディスク装置等に用いられる磁気記録媒体及びその製造方法、並びに磁気記録再生装置に関する。
近年、磁気ディスク装置やフレキシブルディスク装置、磁気テープ装置などの磁気記録装置の適用範囲は著しく増大され、その重要性が増すと共に、これら磁気記録装置に用いられる磁気記録媒体について、その記録密度の著しい向上が図られつつある。特に、MRヘッドやPRML技術の導入以来、面記録密度の上昇は激しさを増し、近年では更にGMRヘッドやTMRヘッドなども導入され、1年に約100%ものペースで面記録密度の上昇が続いている。
したがって、磁気記録媒体については、今後更に高記録密度を達成することが要求されており、そのために磁気記録層の高保磁力化、高信号対雑音比(SNR)、及び高分解能を達成することが要求されている。また、近年では線記録密度の向上と同時にトラック密度の増加によって、面記録密度を上昇させようとする努力も続けられている。
最新の磁気記録装置では、トラック密度が110kTPIにも達している。しかしながら、トラック密度を上げていくと、隣接するトラック間の磁気記録情報が互いに干渉し合い、その境界領域の磁化遷移領域がノイズ源となり、SNRを損なうという問題が生じやすくなる。このことは、そのままビット・エラー・レート(Bit Error Rate)の低下につながるため、記録密度の向上に対して障害となっている。
面記録密度を上昇させるためには、磁気記録媒体上の各記録ビットのサイズをより微細なものとし、各記録ビットに可能な限り大きな飽和磁化と磁性膜厚を確保する必要がある。しかしながら、記録ビットを微細化していくと、1ビット当たりの磁化最小体積が小さくなり、熱揺らぎによる磁化反転で記録データが消失するという問題が生じる。
また、トラック間距離が近づくために、磁気記録装置は極めて高精度のトラックサーボ技術を要求されると同時に、記録を幅広く実行し、再生は隣接トラックからの影響をできるだけ排除するために、記録時よりも狭く実行する方法が一般的に用いられている。この方法では、トラック間の影響を最小限に抑えることができる反面、再生出力を十分得ることが困難であり、そのために十分なSNRを確保することが難しいという問題がある。
このような熱揺らぎの問題や、SNRの確保、十分な出力の確保を達成する方法の一つとして、記録媒体表面にトラックに沿った凹凸を形成し、記録トラック同士を物理的に分離することによって、トラック密度を上げようとする試みがなされている。(以下、このような技術をディスクリートトラック法と呼び、それによって製造された磁気記録媒体をディスクリートトラック媒体と呼ぶ。)
ディスクリートトラック媒体の一例として、表面に凹凸パターンを形成した非磁性基板上に磁気記録媒体を形成して、物理的に分離した磁気記録トラック及びサーボ信号パターンを形成してなる磁気記録媒体が知られている(特許文献1を参照。)。
この磁気記録媒体は、表面に複数の凹凸のある非磁性基板上に軟磁性層を介して強磁性層が形成され、その上に保護膜が形成されたものである。この磁気記録媒体では、凸部領域に周囲と物理的に分断された磁気記録領域が形成されている。
この磁気記録媒体によれば、軟磁性層での磁壁発生を抑制できるため熱揺らぎの影響が出にくく、隣接する信号間の干渉もないので、ノイズの少ない高密度磁気記録媒体を形成できるとされている。
ディスクリートトラック法には、何層かの薄膜からなる磁気記録媒体を形成した後にトラックを形成する方法と、予め基板表面に直接、或いはトラック形成のための薄膜層に凹凸パターンを形成した後に、磁気記録媒体の薄膜形成を行う方法とがある(例えば、特許文献2及び特許文献3を参照。)。
このうち、前者の方法は、しばしば磁気層加工型と呼ばれ、表面に対する物理的加工が媒体形成後に実施されるため、媒体が製造工程において汚染されやすいという欠点があり、且つ製造工程が非常に複雑であった。一方、後者の方法は、しばしばエンボス加工型と呼ばれ、製造工程中の汚染はしにくいが基板に形成された凹凸形状が成膜された膜にも引き継がれることになるため、媒体上を浮上しながら記録再生を行う記録再生ヘッドの浮上姿勢、浮上高さが安定しないという問題点があった。
また、ディスクリートトラック媒体の磁気トラック間領域を予め形成した磁性層に窒素イオンや酸素イオンを注入し、又は、レーザを照射することにより形成する方法が開示されている(特許文献4を参照。)。しかしながら、この方法で形成した磁気トラック間領域は、飽和磁化が低いものの保磁力が高いため、不十分な磁化状態がのこり、磁気トラック部に情報を書き込む際に、書きにじみが生じていた。
さらに、磁気記録パターンが1ビットごとに一定の規則性をもって配置された、いわゆるパターンドメディアの製造において、磁気記録パターンをイオン照射によるエッチングや、磁性層を非晶質化することで形成することが開示されている(非特許文献1及び特許文献5を参照。)。しかしながら、この方法においても、製造工程における磁気記録媒体の汚染が発生し、また、表面の平滑性が低下するといった問題点や、イオン照射による磁性層の非磁性化が不十分であるといった問題点があった。
特開2004−164692号公報 特開2004−178793号公報 特開2004−178794号公報 特開平5−205257号公報 米国特許第6,331,364号公報 信学技報、IEICE Technical Report MR2005-55(2006-02)、21頁〜26頁(社団法人 電子情報通信学会)
エンボス加工型の製造方法では、基板に凹凸形状を形成し、その上に磁性層、保護層を形成するため、その表面にそのまま凹凸形状が引き継がれ、平坦な表面を実現するのは容易ではない。
一方、磁気層加工型によるディスクリートトラック型磁気記録媒体は、基板表面に記録用の磁性層を形成し、その後磁気的パターンを形成する。このため、半導体などで利用されているインプリント法により磁気的パターンを形成した後に、非磁性部となるべき部分を例えばドライエッチングし、その後SiOやカーボン非磁性材料を埋め込み、表面を平坦化処理して、更にその表面を保護膜層で覆ったうえ、潤滑層を形成した構造を有している。このような磁気エッチング型ディスクリートトラック媒体は、製造工程が複雑で、汚染の原因になるばかりでなく、平坦な表面を実現できない。
一般に このような構造の磁気記録媒体では、保護膜層が薄くなるほどヘッドと磁性層との距離が短くなるため、ヘッドでの信号の出入力が大きくなり、記録密度も高めることができる。また、トラック内のピット密度は、凹凸状の保護膜層表面を走るヘッドの浮上高さにより定まる。したがって、如何にして安定したヘッド浮上を保つかは、高記録密度を達成するために重要な課題である。このため、安定したヘッド浮上を保ちつつ、ヘッドをなるべく磁性層に近接させて、しかも隣接するトラックとの信号の相互干渉を防ぐような凹凸パターンが求められる。
しかしながら、製造工程で汚染のリスクが少なく、且つ表面が平坦になるディスクリートトラック媒体の製造技術、また、磁気トラック部に情報を書き込む際に書きにじみが生じない磁気記録媒体の製造技術は未だ提案されていない。
また、いわゆるパターンドメディアの製造において、磁気記録パターンをイオン照射により、磁性層を非晶質化することで形成することが提案されているが、磁性層の非磁性化が不十分であり、書きにじみが生ずるといった問題点があった。これは、磁性層に打ち込まれたイオンにより、磁性層の結晶が一時的に非晶質化するものの、その後のプロセスや、イオン照射時の熱により、その非晶質構造の一部が再結晶化し、それによりイオン照射を行った磁性層の磁気的特性が回復するためと考えられる。
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、記録密度の増加に伴い、技術的困難に直面している磁気記録装置において、従来と同等以上の記録再生特性を確保しつつ、記録密度を大幅に増加させ、また、磁気的パターンを磁気的に分離する非磁性部の保磁力及び残留磁化を極限まで低減させることにより磁気記録の際の書きにじみを無くし、強いては面記録密度を増加させることを可能とした磁気記録媒体及びその製造方法、並びに磁気記録再生装置を提供することを目的とする。
特に、本発明は、非磁性基板上に磁性層を成膜した後に凹凸を形成するディスクリートトラック型磁気記録媒体に対して、従来の磁気層加工型と比較して、その磁性層の除去工程を排除することによって、製造工程を簡略化し、且つ汚染リスクが少ない、更にヘッド浮上特性に優れた磁気記録媒体及びその製造方法、並びに磁気記録再生装置を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下の手段を提供する。
(1) 非磁性基板の少なくとも一方の面に磁性層が設けられ、この磁性層に磁気的に分離された磁気的パターンが形成されてなる磁気記録媒体の製造方法であって、前記磁性層に原子を該磁性層の厚さ方向に均一に分布させて注入し、前記磁性層を部分的に非磁性化させることによって、前記磁気的パターンを磁気的に分離する非磁性部を形成することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
(2) 前記磁性層がCoを含み、且つ、前記非磁性部のX線回折によるCo(002)又はCo(110)ピーク強度を1/2以下とすることを特徴とする前項(1)に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(3) 前記非磁性部を非晶質化することを特徴とする前項(1)に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(4) 前記磁性層に注入する原子が有するエネルギーに分布を持たせることを特徴とする前項(1)〜(3)の何れか一項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(5) 前記磁性層に少なくとも2種類以上の原子を注入することを特徴とする前項(1)〜(3)の何れか一項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(6) 前記原子が、B、P、Si、F、N、H、C、In、Bi、Kr、Ar、Xe、W、As、Ge、Mo、Snの群から選ばれる何れか1種以上であることを特徴とする前項(1)〜(5)の何れか一項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(7) 前記原子が、Kr又はSiであることを特徴とする前項(1)〜(5)の何れか一項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(8) 前記非磁性基板の表面粗さが、中心線平均粗さRaで0.1nm≦Ra≦2.0nmの範囲にあることを特徴とする前項(1)〜(7)の何れか一項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(9) 前記磁性層の上に保護膜層を形成した後に、前記原子の注入を行うことを特徴とする前項(1)〜(8)の何れか一項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(10) 非磁性基板の少なくとも一方の面に磁性層が設けられ、この磁性層に磁気的に分離された磁気的パターンが形成されてなる磁気記録媒体であって、前記磁気的パターンを磁気的に分離する非磁性部を有し、この非磁性部が前記磁性層に原子を該磁性層の厚さ方向に均一に分布させて注入し、前記磁性層を部分的に非磁性化したものであることを特徴とする磁気記録媒体。
(11) 前記磁性層がCoを含み、且つ、前記非磁性部のX線回折によるCo(002)又はCo(110)ピーク強度が1/2以下であることを特徴とする前項(10)に記載の磁気記録媒体。
(12) 前記非磁性部が非晶質化していることを特徴とする前項(10)に記載の磁気記録媒体。
(13) 前記磁気的パターンが、記録トラックパターン又はサーボ信号パターンであることを特徴とする前項(10)〜(12)の何れか一項に記載の磁気記録媒体。
(14) 前記磁性層が、垂直磁性層であることを特徴とする前項(10)〜(13)の何か一項に記載の磁気記録媒体。
(15) 前項(10)〜(14)の何れか一項に記載の磁気記録媒体と、前記磁気記録媒体に対する情報の記録再生を行う磁気ヘッドとを備えることを特徴とする磁気記録再生装置。
以上のように、本発明によれば、ヘッド浮上の安定性を確保でき、磁気的パターンの優れた分離性能を有し、隣接する磁気的パターン間の信号干渉の影響を受けず、高記録密度特性に優れた磁気記録媒体を提供することができる。
また、本発明によれば、従来非常に製造工程が複雑とされてきた磁性層加工型における磁性層除去のためのドライエッチング工程を省くことができるため、生産性の大幅な向上に寄与する磁気記録媒体の製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、ヘッドの浮上特性に優れ、磁気的パターンの分離性能に優れた磁気記録媒体を用いることによって、隣接する磁気的パターン間の信号干渉の影響や書きにじみがなく、高記録密度特性に優れた磁気記録再生装置を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明は、非磁性基板の少なくとも一方の面に磁性層が設けられ、この磁性層に磁気的に分離された磁気的パターンが形成されてなる磁気記録媒体を製造する際に、磁性層に原子を該磁性層の厚さ方向に均一に分布させて注入し、この磁性層を部分的に非磁性化させることによって、磁気的パターンを磁気的に分離する非磁性部を形成することを特徴とする。
本発明を適用した磁気記録媒体の製造方法は、磁性層に磁気的に分離された磁気的パターンを形成する際に、従来の製造方法とは異なり、ドライエッチングやスタンプ加工などの磁気的パターンを物理的に分離する工程を有さない。
本発明を適用した磁気記録媒体は、磁気的パターンとして、磁気記録パターンが1ビット毎に一定の規則性をもって配置された、いわゆるパターンドメディアや、記録トラックパターンがトラック状に配置されたメディア、その他、サーボ信号パターンを含むメディアなどを挙げることができる。この中でも、本発明は、磁気的パターンとして、記録トラックパターン及びサーボ信号パターンを含む、いわゆるディスクリート型磁気記録媒体に適用することが、その製造における簡便性から好ましい。
以下、本発明をディスクリート型磁気記録媒体に適用した場合を例に挙げて説明する。
図1は、本発明を適用したディスクリート型磁気記録媒体30の構造を示す断面である。
この磁気記録媒体30は、非磁性基板1の表面上に、軟磁性層及び中間層2、磁性層3及び保護層4が順次積層された構造を有している。また、磁性層3には、上述した記録トラックパターン及びサーボ信号パターンとなる複数の磁気的パターン3aが設けられており、これら磁気的パターン3aの間が非磁性部5により磁気的に分離されている。
磁性層3は、記録密度を高めるため、磁気的パターン3aの幅Wを200nm以下とし、非磁性部4の幅Lを100nm以下とすることが好ましい。したがって、トラックピッチP(=W+L)は300nm以下の範囲であり、記録密度を高めるためには、このトラックピッチPをできるだけ狭くする必要がある。
非磁性基板1には、例えば、Al−Mg合金等のAlを主成分としたAl合金基板や、通常のソーダガラス、アルミノシリケート系ガラス、結晶化ガラス類、シリコン、チタン、セラミックス、各種樹脂からなる基板などを任意に用いることができるが、この中でも、Al合金基板や、結晶化ガラス等のガラス製基板、シリコン基板を用いることが好ましい。
非磁性基板1の表面粗さは、中心線平均粗さ(Ra)で0.1nm≦Ra≦2.0nmの範囲にあることが好ましい。より好ましくは1nm以下であり、更に好ましくは0.5nm以下である。
磁気層3は、主としてCoを主成分とする合金から形成することが好ましい。また、磁性層3は、より高い記録密度を実現するため、垂直磁気記録層とすることが好ましい。
垂直磁気記録媒層としては、例えば、FeCoB、FeCoSiB、FeCoZr、FeCoZrB、FeCoZrBCuなどの軟磁性のFeCo合金や、FeTaN、FeTaCなどのFeTa合金、CoTaZr、CoZrNB、CoBなどのCo合金等からなる裏打ち層と、Pt、Pd、NiCr、NiFeCrなどからなる配向制御膜と、必要によりRu等から成る中間膜、及び60Co−15Cr−15Pt合金や70Co−5Cr−15Pt−10SiO合金等からなる磁性層とを積層したものを用いることがきる。
一方、磁性層3は、面内磁気記録層であってもよい。面内磁気記録層としては、例えば、非磁性のCrMo下地層と強磁性のCoCrPtTa磁性層とを積層したものを用いることができる。
磁性層3は、使用する磁性合金の種類と積層構造に合わせて、十分なヘッド出入力が得られるように形成すればよい。通常、磁性層3はスパッタ法により薄膜として形成する。また、磁性層3は、再生の際に一定以上の出力を得るため、ある程度以上の厚みが必要であり、一方で記録再生特性を表す諸パラメーターは出力の上昇とともに劣化するのが通例であるため、最適な膜厚に設定する必要がある。具体的に、磁気層3の厚みは、3nm以上20nm以下の範囲が好ましく、より好ましくは5nm以上15nm以下の範囲である。
保護層4には、例えば、炭素(C)、水素化炭素(HC)、窒素化炭素(CN)、アルモファスカーボン、炭化珪素(SiC)等の炭素質層や、SiO、Zr、TiNなどの通常使用される材料を用いることができる。保護層4は、通常はスパッタ法又はCVD法により形成することができる。また、保護層4は、2層以上積層したものであってもよい。
保護膜層4の厚みは、10nm未満とすることが好ましい。この保護層4の厚みが10nmを越えると、浮上ヘッドと磁性層3との距離が大きくなり、十分な出入力信号の強さが得られなくなる。
また、保護層4の上には、潤滑剤層を形成することが好ましい。潤滑剤層は、例えばフッ素系潤滑剤や、炭化水素系潤滑剤、又はこれらの混合物等を用いて、通常は1〜4nmの厚みで形成される。
本発明では、磁性層3に原子を該磁性層3の厚さ方向に均一に分布させて注入し、この磁性層3を部分的に非磁性化させることによって、磁気的パターン3aを磁気的に分離する非磁性部5を形成する。
磁性層3に注入する原子としては、例えば、B、P、Si、F、N、H、C、In、Bi、Kr、Ar、Xe、W、As、Ge、Mo、Snの群から選ばれる何れか1種以上であることが好ましく、より好ましくは、B、P、Si、F、N、H、Cの群から選ばれる何れか一種以上であり、若しくは、Si、In、Ge、Bi、Kr、Xe、Wの群から選ばれる何れか一種以上であり、更に好ましくは、Si又はKrである。また、これらの原子は、2種類以上注入してもよい。
これらの原子は、例えばイオンビーム法等を用いて磁性層3の非磁性部5となる部分に注入することができる。なお、イオンビーム法では、原子を加速するために原子をイオン化するが、磁性層3に打ち込まれたイオンは、磁性層3内で中性化していると考えられる。
ところで、磁性層3に打ち込まれたイオンは、磁性層3の結晶構造を一時的に非晶質化するものの、その後のプロセスや、イオン照射時の熱により、その非晶質構造の一部が再結晶化し、その結果、イオン照射を行った磁性層3の磁気的特性が回復してしまうことがある。このような問題を解決するために、本発明では、磁性層3に注入される原子を磁性層3の厚さ方向に均一に分布させるようにした。これにより、磁性層3にひずみを導入し、非晶質化した磁性層3が再結晶化することを防止している。
ここで、原子を磁性層3の厚さ方向に均一に分布させるとは、磁性層3の厚さ方向における注入原子の濃度のばらつきが小さいことを意味する。具体的には、磁性層3に注入される原子の濃度の平均値に対する最も高い濃度の比率が、150%以内であることが好ましく、より好ましくは130%以内、更に好ましくは110%以内である。なお、磁性層3に注入される原子のばらつきは、スパッタリングオージェやSIMS等により測定することができる。
磁性層3に注入される原子を磁性層3の厚さ方向に均一に分布させる方法としては、以下の(1)〜(3)がある。
(1)磁性層3に原子を注入する際に、原子の注入深さに分布を持たせる。
(2)磁性層3に原子を注入する際に、原子が有するエネルギーに分布を持たせる。
(3)磁性層3に原子を注入する際に、種類の異なる複数の原子を用いる。
(1)(2)の具体的方法については、例えば、注入イオンがArの場合、このAr原子をAr、Ar2+、Ar3+のように異なる価数にイオン化する。これにより、原子の注入深さに分布を持たせたり、原子が有するエネルギーに分布を持たせたりすることができる。また、複数のイオン銃を用いることにより、注入するイオンのエネルギーに分布を持たせることも可能である。また、(3)の具体的な方法については、例えば、注入イオンとして、Ar、Kr、Xeなどの種類(原子質量)の異なる複数のイオンを用いる。これにより、原子の注入深さに分布を持たせたり、原子が有するエネルギーに分布を持たせたりすることができる。また、原子の注入深さは、イオン注入器での加速電圧により適時設定することができる。
本発明では、このような方法を用いてディスクリートトラック型磁気記録媒体10を製造することにより、磁気トラック間領域の保磁力、残留磁化を極限まで低減させることにより磁気記録の際の書きにじみをなくし、高い面記録密度の磁気記録媒体を提供することが可能である。
また、本発明では、磁性層3がCoを含み、且つ、非磁性部5のX線回折によるCo(002)又はCo(110)ピーク強度を1/2以下とすることが好ましい。
ここで、Co(002)ピークは、垂直磁気記録層においてメインとなるピークであり、Co(110)ピークは、面内磁気記録層においてメインとなるピークである。例えば、垂直磁気記録層におけるCo(002)ピークとは、X線回折において2θ=42.6度付近に現れるCo(002)に起因するピークを指す。
これにより、本発明では、磁気トラック間領域の保磁力、残留磁化を極限まで低減させることにより磁気記録の際の書きにじみをなくし、高い面記録密度の磁気記録媒体を提供することが可能となる。
さらに、本発明では、非磁性部5を非晶質化することが好ましい。
ここで、磁性層3を非晶質化するとは、磁性層3の原子配列を、長距離秩序を持たない不規則な原子配列の形態とすることを指す。より具体的には、2nm未満の微結晶粒がランダムに配列した状態とすることを指す。そして、この原子配列状態を分析手法により確認する場合は、X線回折または電子線回折により、結晶面を表すピークが認められず、また、ハローが認められるのみの状態とする。
これにより、本発明では、磁気トラック間領域の保磁力、残留磁化を極限まで低減させることにより磁気記録の際の書きにじみをなくし、高い面記録密度の磁気記録媒体を提供することが可能となる。
なお、注入する原子として、上述した特許文献4に記載されるOやNを用いた場合には、OやNの原子半径が小さいため、その注入効果が小さく、非磁性部5に磁化状態が残留してしまう。また、注入する原子として、OやNを用いた場合は、磁性層3を窒化又は酸化させるため、非磁性部5の保磁力が高まり、磁気記録の際に書きにじみが生ずる。すなわち、これらの原子を用いた場合には、本発明で用いる注入原子のように、磁性層3を非磁性化したり、磁性層3のCo(002)又はCo(110)ピークを低減したり、磁性層3の非晶質化を図ったりすることはできない。
本発明では、磁性層3への原子の注入を、磁性層3の上に保護層4を形成した後に行うことが好ましい。
このような工程を採用することにより、原子注入を行った後に、保護層4を形成する必要がなくなり、製造工程が簡便になり、生産性の向上及び磁気記録媒体の製造工程における汚染の低減の効果を得ることができる。
なお、本発明では、磁性層3に原子を注入する工程を磁性層3の形成後、又は保護層4の形成前に行ってもよい。この場合も、磁気記録トラックやサーボ信号パターンなどの磁気的パターン3を磁気的に分離する非磁性部を形成することが可能である。
以下、磁性層3の表面に保護層4を設けた後に、磁性層3に磁気的に分離した磁気的パターン3である記録トラックパターン及びサーボ信号パターンを形成する場合を例に挙げて説明する。
本例では、例えば磁性層3として、70Co−5Cr−15Pt−10SiO合金を成膜した後に、保護層4として、カーボン膜を成膜する。その後、保護層4の表面にレジストを塗布し、フォトリソグラフィー技術を用いて記録トラックパターン及びサーボ信号パターンに対応した形状にパターニングされたマスクを形成する。次に、その表面にイオンビーム法等を用いて原子を注入すると、マスクから露出した非磁性部5となる部分にのみ原子が注入される。これにより、磁性層3を部分的に非磁性化させた非磁性部5が形成されると共に、磁性層3に磁気的に分離された磁気記録トラック及びサーボ信号パターンが形成される。その後、マスクを除去して保護層5を再形成した後に、潤滑剤剤を塗布して磁気記録媒体を製造する。
なお、本発明では、保護層5に直接スタンパーを密着させ、高圧でプレスすることにより、保護層5の表面にトラック形状の凹凸を形成してもよい。あるいは熱硬化型樹脂、UV硬化型樹脂などを利用して凹凸パターンを形成してもよい。
この場合、スタンパーとして、例えば、金属プレートに電子線描画などの方法を用いて微細なトラックパターンを形成したものを使用することができる。スタンパの材料としては、上述したプロセスに耐え得る硬度及び耐久性があればよく、例えばNiなどを用いることができる。また、スタンパーには、通常のデータを記録するトラックの他にバーストパターン、グレイコードパターン、プリアンブルパターンといったサーボ信号のパターンも形成することができる。
レジストの除去に際しては、ドライエッチングや、反応性イオンエッチング、イオンミリングなどの手法を用いて、表面のレジスト、保護層の一部を除去する。これらの処理の結果、磁気的パターン3aが形成された磁性層3及び保護層5の一部が残ることになる。また、条件を選ぶことにより保護層4まで完全に除去し、磁気的パターン3が形成された磁性層3のみを残すことも可能である。
磁気記録媒体の各層のうち、保護膜層4以外の形成には一般的に成膜方法として使用されるRFスパッタリング法やDCスパッタリング法などを使用することが可能である。一方、保護層4の形成には、一般的にはDLC(Diamond Like Carbon)の薄膜をP−CVDなどを用いて成膜する方法が用いられるが、この方法に特に限定されるものではない。
次に、本発明を適用した磁気記録再生装置について説明する。
図2は、本発明を適用した磁気記録再生装置20の構造を示す側面図である。
この磁気記録再生装置20は、本発明を適用した磁気記録媒体(磁気ディスク)10と、これを記録方向に(回転)駆動する媒体駆動部11と、記録部と再生部からなる磁気ヘッド12と、磁気ヘッド12を磁気記録媒体10(の径方向)に対して相対運動させるヘッド駆動部13と、磁気ヘッド12への信号入力と磁気ヘッド12からの出力信号再生を行うための記録再生信号処理手段を組み合わせた記録再生信号系14とを備えている。
本発明では、これらを組み合わせることにより記録密度の高い磁気記録装置20を構成することが可能となる。
また、磁気記録媒体10の記録トラックを磁気的に不連続に加工したことによって、従来はトラックエッジ部の磁化遷移領域の影響を排除するために再生ヘッド幅を記録ヘッド幅よりも狭くして対応していたものを、両者をほぼ同じ幅にして動作させることができる。これにより、十分な再生出力と高いSNRを得ることができる。
また、磁気ヘッド12の再生部をGMRヘッド又はTMRヘッドで構成することにより、高記録密度においても十分な信号強度を得ることができ、高記録密度を持った磁気記録再生装置20を実現することができる。
また、この磁気ヘッドの浮上量を0.005μm〜0.020μmと従来より低い高さで浮上させると、出力が向上して高い装置SNRが得られ、大容量で高信頼性の磁気記録再生装置20を提供することができる。
また、最尤復号法による信号処理回路を組み合わせると、さらに記録密度を向上でき、例えば、トラック密度100kトラック/インチ以上、線記録密度1000kビット/インチ以上、1平方インチ当たり100Gビット以上の記録密度で記録・再生する場合にも十分なSNRが得られる。
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
(比較例)
比較例では、HD用ガラス基板をセットした真空チャンバを予め1.0×10−5Pa以下に真空排気した。ガラス基板には、LiSi、Al−KO、Al−KO、MgO−P、Sb−ZnOを構成成分とする結晶化ガラスを用い、外径65mm、内径20mmのドーナツ円盤状に加工したものを用いた。また、ガラス基板の表面粗さ(Ra)は、2オングストロームであった。
次に、このガラス基板に、DCスパッタリング法を用いて、FeCoBからなる軟磁性層を600Å、Ruからなる中間層を100Å、70Co−5Cr−15Pt−10SiO合金からなる磁性層を150Åの厚みで順次成膜した後に、P−CVD法を用いて、C(カーボン)からなる保護層を平均4nmの厚みで成膜し、最後にフッ素系の潤滑剤を塗布した。
次に、磁性層加工型処理により磁気的パターンを形成した。すなわち、熱硬化性樹脂のレジストを塗布し、パターンに対応する凹凸を形成した後、イオンビーム法により、Ar原子を打ち込んだ。イオンビームの加速電圧、照射時間などの条件を表1に示す。また、加速電圧は50keVで一定とした。
(実施例1)
実施例1では、比較例と同様の条件で磁気記録媒体を製造した。但し、磁性層に原子を注入するに際して、原子を磁性層の厚さ方向に均一に分布させて注入した。すなわち、注入イオンとしてArを用いて、Arを、Ar、Ar2+、Ar3+と異なる価数にイオン化することにより、磁性層への原子の注入深さに分布を持たせた。イオンビームの加速電圧、照射時間などの条件を表1に示す。また、加速電圧は30keVとした。
なお、イオンビームの注入量、加速電圧の条件は、予備実験で予め設定する必要がある。例えば、X線回折による磁性層のCo(002)またはCo(110)ピーク強度を1/2以下とする場合は、図3に示すように、原子の注入により磁性層の回折ピークが破線に示すような状態とする。また、磁性層が非磁性化する条件、磁性層が非晶質化する条件も、予めX線回折測定、電子線回折測定等により設定しておく必要がある。なお、図3中、実線はIn原子注入前の磁性層の状態を示し、破線はIn原子注入後の磁性層の状態を示す。
(実施例2)
実施例2では、比較例と同様の条件で磁気記録媒体を製造した。但し、磁性層に原子を注入するに際して、原子を磁性層の厚さ方向に均一に分布させて注入した。すなわち、イオンビーム法により、Ar原子を3種類の加速電圧で磁性層に打ち込んだ。イオンビームの加速電圧、照射時間などの条件を表1に示す。また、加速電圧は、20keV、30keV、60keVの3種類をこの順で用いた。
(実施例3)
実施例3では、比較例と同様の条件で磁気記録媒体を製造した。但し、磁性層に原子を注入するに際して、原子を磁性層の厚さ方向に均一に分布させて注入した。すなわち、注入イオンとして、Ar、Kr、Xeの3種類のイオンを用いて、加速電圧は50keVで一定にした。イオンビームの加速電圧、照射時間などの条件を表1に示す。
そして、比較例及び実施例1〜3について、スピンスタンドを用いて電磁変換特性の評価を行った。具体的には、評価用の磁気ヘッドには、記録用に垂直記録ヘッド、再生用にTuMRヘッドを用い、750kFCIの信号を記録したときのSNR値及び3T−squashを測定した。その測定結果を表1に示す。
Figure 2008077756
表1に示すように、実施例1〜3は比較例に比べて、SNRや3T−squashといったRW特性が大幅に改善していることがわかった。これは磁気トラック間領域の磁化状態が完全に消失したためと考えられる。
また、比較例及び実施例1〜3で製造した磁気記録媒体の磁性層について、注入した原子の濃度分布をSIMSによって調べ、その結果から磁性層に注入される原子の濃度の平均値に対する最も高い濃度の比率を求めた結果を表1に示す。
図1は、本発明を適用した磁気記録媒体の一例を示す断面図である。 図2は、本発明を適用した磁気記録再生装置の一例を示す側面図である。 図3は、磁性層へのIn原子注入によるX線回折におけるCo(002)又はCo(110)ピークが低減することを示す特性図である。
符号の説明
1…非磁性基板 2…軟磁性層および中間層 3…磁性層 3a…磁気的パターン 4…保護層 5…非磁性部 10…磁気記録媒体 11…媒体駆動部 12…磁気ヘッド 13…ヘッド駆動部 14…記録再生信号系 20…磁気記録再生装置

Claims (15)

  1. 非磁性基板の少なくとも一方の面に磁性層が設けられ、この磁性層に磁気的に分離された磁気的パターンが形成されてなる磁気記録媒体の製造方法であって、
    前記磁性層に原子を該磁性層の厚さ方向に均一に分布させて注入し、前記磁性層を部分的に非磁性化させることによって、前記磁気的パターンを磁気的に分離する非磁性部を形成することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
  2. 前記磁性層がCoを含み、且つ、前記非磁性部のX線回折によるCo(002)又はCo(110)ピーク強度を1/2以下とすることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体の製造方法。
  3. 前記非磁性部を非晶質化することを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体の製造方法。
  4. 前記磁性層に注入する原子が有するエネルギーに分布を持たせることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
  5. 前記磁性層に少なくとも2種類以上の原子を注入することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
  6. 前記原子が、B、P、Si、F、N、H、C、In、Bi、Kr、Ar、Xe、W、As、Ge、Mo、Snの群から選ばれる何れか1種以上であることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
  7. 前記原子が、Kr又はSiであることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
  8. 前記非磁性基板の表面粗さが、中心線平均粗さRaで0.1nm≦Ra≦2.0nmの範囲にあることを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
  9. 前記磁性層の上に保護膜層を形成した後に、前記原子の注入を行うことを特徴とする請求項1〜8の何れか一項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
  10. 非磁性基板の少なくとも一方の面に磁性層が設けられ、この磁性層に磁気的に分離された磁気的パターンが形成されてなる磁気記録媒体であって、
    前記磁気的パターンを磁気的に分離する非磁性部を有し、この非磁性部が前記磁性層に原子を該磁性層の厚さ方向に均一に分布させて注入し、前記磁性層を部分的に非磁性化したものであることを特徴とする磁気記録媒体。
  11. 前記磁性層がCoを含み、且つ、前記非磁性部のX線回折によるCo(002)又はCo(110)ピーク強度が1/2以下であることを特徴とする請求項10に記載の磁気記録媒体。
  12. 前記非磁性部が非晶質化していることを特徴とする請求項10に記載の磁気記録媒体。
  13. 前記磁気的パターンが、記録トラックパターン又はサーボ信号パターンであることを特徴とする請求項10〜12の何れか一項に記載の磁気記録媒体。
  14. 前記磁性層が、垂直磁性層であることを特徴とする請求項10〜13の何れか一項に記載の磁気記録媒体。
  15. 請求項10〜14の何れか一項に記載の磁気記録媒体と、前記磁気記録媒体に対する情報の記録再生を行う磁気ヘッドとを備えることを特徴とする磁気記録再生装置。
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