JP2008076815A - 多層膜エッジフィルタおよびそれを用いた光波長選択回路 - Google Patents
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Abstract
【課題】 導波路を用いて、対向する2つの導光体開口の間に波長選択多層膜フィルタを挿入した光波長選択回路の実用化が検討されている。しかし、光波長選択回路の損失が大きいのみならず、その製品毎のバラツキが極めて大きく、製造コストも高く、量産にはほど遠い状態にあった。そして、この原因は正確には把握されておらず、多層膜フィルタと光波長選択回路の試行錯誤的な方法による改善が試みられていた。
【解決手段】 透過光の軸シフトを従来のスネルの法則による軸シフトに、1300nmと1400nmの波長の時は1.8〜2.7μm加えた軸シフトにし、波長が1500nmの時は3.2〜4.1μm加えた軸シフトにして解決した。
【選択図】 図6
【解決手段】 透過光の軸シフトを従来のスネルの法則による軸シフトに、1300nmと1400nmの波長の時は1.8〜2.7μm加えた軸シフトにし、波長が1500nmの時は3.2〜4.1μm加えた軸シフトにして解決した。
【選択図】 図6
Description
本発明は、第1の特定波長の光を反射し第2の特定波長の光を透過するというような光フィルタ機能を有する多層膜を用いた波長選択多層膜エッジフィルタ(以下、単に、多層膜フィルタあるいはフィルタともいう)ならびにそれを用いた損失が改善された光波長選択回路に関する。
なお、本発明の多層膜フィルタの効果を明確にするため、以下の説明は、光波長選択回路に多層膜フィルタを使用した状態について説明し、合わせて本発明の多層膜フィルタの説明とすることもある。
光通信は近年のブロ−ドバンドの要求により幹線系−メトロ系−アクセス系へと利用技術範囲を広げている。メトロ系から加入者に繋がるアクセス系では、加入者系の波長多重システムが導入され、そこではコスト低減と小型化のため、レンズなしで導波路や光ファイバからの光をフッ素化ポリイミド(以下、単に、ポリイミドともいう)薄膜を基板として、その上にフィルタ用の多層膜を形成したフッ素化ポリイミドフィルタ(単に、ポリイミドフィルタともいう)と呼ばれているフィルタによって透過あるいは反射させる光波長選択回路(波長合分波器ともいう)が提案されている。 ポリイミドフィルタについては、たとえば、特開平4−211203(特許第2608633号)(以下、特許文献1ともいう)にその特徴と製造方法が詳しく述べられている。
幹線系−メトロ系に用いる光波長選択回路は、扱う波長間隔が狭いことなどにより高性能なものが必要とされている。
図14は従来の光ファイバコリメータ(以下、光ファイバのことを単にファイバともいう)を用いた光波長選択回路を説明するための図である。図14において、符号208は光波長選択回路、201および202は2芯光ファイバコリメータ203のファイバ芯線、204および206はレンズ、205はフィルタ、207は光ファイバ芯線である。
図14において、レンズ204の焦点の付近にフィルタ205が配置されている。2芯光ファイバコリメータ203の一方のファイバ芯線202を伝送されてその端面から発散された光はレンズ204によって平行光にされた後に、その波長に応じてレンズ204の焦点付近に設置されたフィルタ205によって反射または透過される。透過光はレンズ206で光ファイバ芯線207に結合し、反射光は再びレンズ204を通過した後、光軸と平行に戻り、2芯光ファイバコリメータ203の他方の光ファイバ芯線201に光結合するように各光学系が配置されている。この際のフィルタ205を置く位置精度を見積もると、例えば光ファイバの開口数(以下、NAともいう)が0.1、2芯光ファイバコリメータの光ファイバ芯線202と光ファイバ芯線201の中心間距離を125μm、レンズ204の焦点距離fを1.8mmとしたとき、フィルタ205を置く位置の誤差を±1mmとしても、光ファイバ芯線202と光ファイバ芯線201の間の損失は0.2dB程度で、フィルタ205の基板を除いた部分の厚さ10〜20μmは、この範囲に十分に収まり、したがって、フィルタ205を置く位置の精度は全く問題にされていなかった。もちろん、衆知のように、実際の組み立て作業では、フィルタ205を置く位置の精度よりもフィルタの配置角度が反射損失に大きく作用する。
図15は従来の光導波路(以下、単に、導波路ともいう)を用いた光波長選択回路を説明するための図で、ポリイミドフィルタを用いており、レンズを用いていない例である。
図15において、符号210は光波長選択回路、211,212,216は光導波路のコア部、211a,212a,216aはそれぞれコア部211,212,216の中心線、213はポリイミド薄膜を用いた多層膜フィルタ、213aはポリイミドフィルタ213のフィルタ機能を有する多層膜、213bはフッ素化ポリイミド膜で形成されている基板、214は光波長選択回路210に用いているポリイミドフィルタ213の入射側のフィルタ面としての多層膜のフィルタ面、215a〜215cは信号光の向きを説明するための矢印、217は接着剤である。
図15で、光導波路のコア部211内を、前記のように進行してきた信号光は、フィルタ213によって透過または反射されて光導波路のコア部216または212に入射される。
しかし、レンズ無しでフッ素化ポリイミドフィルタ213を用いる光導波路を用いた光波長選択回路では、入射光ビームに対して所定角度だけ傾斜させて配置したフィルタ213に、コア部211からの光ビ−ムを直接当てるので、ビ−ム径はモ−ド径であるおおよそ10μm程度の細さであり、フィルタ213で反射域の波長を有する入射光のフィルタ213での反射面が、たとえば、多層膜213aの前面であるとするか後面であるとするかによって、反射光とそれを受けるコア部212との間に軸ずれを生じ、損失の増大を招く。
すなわち、反射面を図15の多層膜213aのフィルタ面214の位置である多層膜の前面と仮定して接着固定した場合には、実際の反射面が、仮に前面と後面の中間の位置であったときとの大きな損失差が生じてしまう。例えば、分岐角を16度として、フィルタの周囲媒質(接着剤)換算厚さを10μmとすると、実際の反射面が、仮に前面と後面の中間の位置であったときとの前記損失差は理想的な計算値でも約0.4dBとなる。
ポリイミドフィルタに関しては、前記のように、たとえば特許文献1に詳述されているので、ここでの詳しい記述は省略するが、ポリイミドフィルタは、たとえばBK−7ガラス(ドイツ国、ショット社の商品名)のような材料を用いた仮基板の上に、熱膨張の比較的小さい特性を有するフッ素化ポリイミドの薄膜(たとえば、厚さ5μm)を形成し、このフッ素化ポリイミドの薄膜の上に誘電体多層膜を形成し、その後前記仮基板から、上に誘電体多層膜を形成してあるフッ素化ポリイミドの薄膜を誘電体多層膜を付けた状態で剥離し、フッ素化ポリイミドの薄膜を基板とする誘電体多層膜フィルタを構成するようにしたものである。
このポリイミドフィルタは、基板を含めたフィルタ全体の厚みを薄くすることができ、光導波路の切断面に接着するなどして前記のような光波長選択回路を形成するなど、これからの有望な光部品として期待されている。
しかし、その活用は著についたばかりで、たとえば図15のフィルタでは、透過波長域と反射波長域のリップルを小さくするとともに前記両波長域の境界部分のカットオフ特性をシャープにするなど、良好なフィルタ特性の実現が一つの重要な課題になっている。
前記透過波長域と反射波長域のリップルを小さくするなど、フィルタ特性を良くすることに関しては、たとえば、李正中著、(株)アルバック訳、アグネ技術センター発行、光学薄膜と成膜技術(2002年9月25日発行)、の178〜183ページ(以下、非特許文献1ともいう)に記載されている。
多層膜フィルタは、衆知のように、層Hと定義する屈折率が比較的高い方の層である層Hと、層Lと定義する屈折率が比較的低い方の層である層Lをそれぞれ単層積層膜と定義すると、基本的には膜厚が、物理的厚さ×屈折率である光路長で表現した、設計基準波長の1/4(4分の1)の屈折率の高い方の単層積層膜と屈折率の低い方の単層積層膜とを交互に積層した組合せ層で構成するが、前記リップルを少なくするなどフィルタ特性を良くするために多くの改善が施されている。リップルを少なくする一つの方法として、前記非特許文献1に記されているように、多層膜の表面と裏面の近傍の単層積層膜の膜厚を1/4波長からずらす方法が知られている。しかし、この方法は実験的には適用できるが、実際に製造してみた結果から、フィルタ特性への要求が高まるにつれて、この方法を単に当てはめただけでは、フィルタ特性が製品としての仕様を満たすことができず、そこに多くの改善、工夫が要求されているのが現状である。
そして、フィルタにおける微妙な反射の条件は、本発明の発明者等が提案しているが、まだ大きな問題にされない状態でポリイミドフィルタが導波路に応用されはじめている。
また、透過に関しても、フィルタにおける微妙な透過の条件は、本発明の発明者等が提案しているが、まだ大きな問題にされない状態でポリイミドフィルタが導波路に応用されはじめている。
そして、利用する側のシステムの都合から、光波長選択回路全体の損失を低減させることが要求されている。
フィルタを使用する光導波路については、たとえば、”ポリマ光導波路設計技術”(増田 宏、柴田智章、井戸立身、高橋 誠著、2002年7月発行の日立化成テクニカルレポートNo.39の37〜40ページ)(以下、非特許文献2ともいう)に波長選択フィルタを使用した例について記載されている。
図16と図17は非特許文献2に記載された従来の光導波路を説明する図で、図16は波長が1.3μmの光を反射し、1.55μmの光を透過するLPF(Long Pass Filter)を使用した例であり、図17は波長が1.3μmの光を透過し、1.55μmの光を反射するSPF(Short Pass Filter)を使用した例である。
図16と図17で、符号230は波長選択フィルタとしてのLPFを挿入した光導波路、250は波長選択フィルタとしてのSPFを挿入した光導波路、231はLPF、251はSPF、232〜234と252〜254は光導波路のコア部、235〜238と255〜258は光の進行を説明するための矢印である。
図16で、導波路232を矢印235の方向に進行する波長が1.3μmの光はLPF231で反射されて導波路233を矢印236の方向に進行し、導波路233を矢印237の方向に進行する波長が1.55μmの光はLPF231を透過して導波路234を矢印238の方向に進行する。
図17で、導波路252を矢印255の方向に進行する波長が1.55μmの光はSPF251で反射されて導波路253を矢印256の方向に進行し、導波路253を矢印257の方向に進行する波長が1.3μmの光はSPF251を透過して導波路254を矢印258の方向に進行する。
図16と図17で、フィルタはフッ素化ポリイミドフィルムを基板に用いた誘電体多層膜フィルタで、フィルタ全体の厚みは14〜16μmである。また、導波路の設計上の注意点としては、分岐位置にはフィルタの屈折率を考慮し、光路にオフセットを設けてある。コアサイズは6.5μm×6.5μm、コアとクラッドの比屈折率差は0.4%、曲がり導波路はraised sine曲線とし、曲がりによる光の放射損失が0.1dB以下になるように設計が行われている。
そして、非特許文献2では、光波長選択回路の特性を大きく左右する要因の一つがフィルタ挿入溝の加工位置精度であると指摘している。そのシミュレーションの結果によると、反射損失の増加を0.2dB以内に押さえるにはフィルタ挿入溝のダイシング加工の位置ズレを±4μm以内にする必要があるとしている。
非特許文献2における実験の結果として、フィルタとしてLPFを使用した図16の場合、導波路232を進行してきた波長1.3μmの入射光をフィルタ231で反射させ導波路233へ進行させたときの損失が1.5dB、偏波依存損失PDLが0.40dB、導波路233を進行してきた波長1.55μmの入射光をフィルタ231を透過させ導波路234へ進行させたときの損失が1.4dB、PDLが0.12dBであり、フィルタとしてSPFを使用した図17の場合、導波路252を進行してきた波長1.55μmの入射光をフィルタ251で反射させ導波路253へ進行させたときの損失が1.6dB、偏波依存損失PDLが0.16dB、導波路253を進行してきた波長1.3μmの入射光をフィルタ251を透過させ導波路254へ進行させたときの損失が1.2dB、PDLが0.25dBであったと報告されている。
しかし、図16,図17のような構成の導波路を多数製造すると、損失が大きいだけでなくそのバラツキが大きく、光波長選択回路に実用できるレベルではなく、その一層の改善が要求されている。そして、損失が大きい原因とそのバラツキの原因は正確に知られていない。
図16と図17では、導波路の設計上の注意点としては、分岐位置にはフィルタの屈折率を考慮し、光路にオフセットを設けてあることが記載されており、曲がり導波路はraised sine曲線としたことが記載されている。しかし、オフセットの内容については詳細が不明である。そこで、衆知のスネルの法則に基づくオフセットについて以下に記す。
図18は、図16と図17のようなフィルタを挿入した光導波路におけるフィルタ挿入部分での光路における屈折率の変化による光路の変化を考慮したスネルの法則に基づく光路のシフト、すなわちオフセットについて説明する図で、物理寸法表示で示した図である。
図18で、符号530は基板533の上に、厚みが4分の1波長で屈折率が比較的高い層(層H)と屈折率が比較的低い層(層L)を交互に積層して作成した誘電体多層膜フィルタで透過光の入射側のフィルタ面545と出射側のフィルタ面546をそのまま表示し、入射側のフィルタ面545と基板533の間の積層膜の層Hだけを集めて書いた層Hの集合531と層Lだけを集めて書いた層Lの集合532に分けて示した図であり、536は入射ビーム、535は入射ビーム536が入射した位置における入射側のフィルタ面545の法線、537〜540は入射ビーム536に沿って進行してきた入射ビームがフィルタ530に入射してからの光路、536aは入射ビーム536の幾何学的延長線、θ1〜θ5は入射光ビーム536およびそのフィルタ530に入射してからの光路537〜540と法線535とのなす角、547と548は矢印、d1は入射ビームが入射側のフィルタ面545からフィルタに入射して屈折してフィルタ内を進行し、フィルタの出射側のフィルタ面546から出射するとしたときの出射点(出射位置ともいう)と出射側のフィルタ面546と点線536aの交点との距離、550は入射光の入射点、551は出射光の出射点、552は点線536aと出射側のフィルタ面546の交点である。
フィルタ530は、実際には前記のように基板の上に層Lと層Hを交互に積層して形成されているが、オフセットを説明する都合上、理論的に結果は同じなので、層Hは層Hだけで集合させて図示し、層Lは層Lだけで集合させて図示して入射光のフィルタ内での屈折による進行を説明するのに便利なように図示してある。
図18で、矢印547の方向へ進行してきた入射ビーム536に沿って進行してきた入射ビームはフィルタ530に入射し、フィルタ530を構成する層H全体によって屈折させられて光路537へ進行し、フィルタ530を構成する層L全体によって屈折させられて光路538へ進行し、基板533によって屈折させられて光路539に進行し、出射側の出射側のフィルタ面546から出射して光路540を矢印548の方向へ進行するとして取り扱うことができる。すなわち、フィルタ530がない場合には点線536aのように進行するが、フィルタ530がある場合は、フィルタ53の入射点550に入射した光は、フィルタ530の屈折率の作用で屈折した光路537〜540を進行したとして取り扱うことができ、点線536aと出射側のフィルタ面546の交点552から距離d1だけ離れた位置にある出射点551から出射する。この各層での屈折はスネルの法則に従う。
しかし、実際にフィルタを用いて図16や図17のような導波路を作成すると、各伝送光の損失が大きくなることが多く、損失のバラツキが大きくなることが多い。この問題は、フィルタを挿入する部分にコリメートレンズを用いる場合には、特に取り上げられる大きな問題になっていないが、レンズ無しでフッ素化ポリイミドフィルタを用いる従来の導波路の場合は重大な問題になっている。
そこで、実際には、レンズ無しでフッ素化ポリイミドフィルタを用いる従来の光波長選択回路では、たとえば、導波路のポリイミドフィルタを挿入する部分のダイシングカット位置を多少変えたものを何通りも作成しておき、最小損失の位置を探すために、組立工程において、様々な技法により試行錯誤を繰り返して損失を測定しながら試作テストを行い、最小損失の位置を決定して、その状態でポリイミドフィルタと導波路を接着する接着剤を硬化させて光波長選択回路を構成していた。このような製造工程では、製造に非常に手間がかかり、同時に多数の試作品を作らなければならないので、製造コストが極めて高くなってしまっていた。さらに、接着剤の厚さなどにも影響されやすいため、均質な性能を示す光波長選択回路の作成は困難であった。
以上説明したように、フッ素化ポリイミドフィルタに代表される基板に形成した薄膜を使用する多層膜フィルタや多層膜だけで用いる多層膜フィルタの場合、フィルタ全体の厚みが薄く、導波路などの光波長選択回路への利用が期待されている。
以上の説明からも推察できるように、フィルタ特性として、たとえばエッジフィルタでは透過波長域におけるリップルや透過波長域と反射波長域の境界のシャープさなどが大きな課題とされている。しかし、それを用いる光回路、たとえば光波長選択回路の対向して配置された導光体の開口部間に多層膜フィルタを挟んで使用しようとすると、光波長選択回路としての損失とそのバラツキが大きく、まだ実用域に達していないというのが現状である。そして、それらを小さくするための課題はまだ解決されとはいえない。
多層膜フィルタの透過光と出射光の間の軸シフトに関しては本発明の発明者等による提案などわずかになされているが、これからさらなる改善が望まれている。
前記のように、従来のフッ素化ポリイミドフィルタを用いた光波長選択回路は、その製造コストが高く、損失が最小損失よりもかなり大きくなるのみならず、損失特性のバラツキが大きく、本格的実用化に対しては、解決すべき大きな障害があった。
このため、光波長選択回路に使用する、損失が少なく、PDLが小さく、損失特性とPDL特性のバラツキの少ない多層膜フィルタの実現が強く望まれている。
本発明は、このような点に鑑みて成されたものであり、本発明の目的は、上記の問題を解決して、多層膜フィルタを使用して損失が最小損失となるような光波長選択回路を量産に適した状態で提供することができるような多層膜フィルタを提供することにある。
本発明の多層膜フィルタとそれを用いた光回路の特徴の一つは、出射ビームの位置をより一層正確に管理した多層膜フィルタを作成し、入射光と出射光の間の軸シフト設定の一層高め、光回路に挿入した多層膜フィルタによる損失を低減したことである。
前記課題を解決するためになされた本発明の例としての第1の発明(以下、発明1ともいう)は、入射光線(以下、入射ビームともいう)が入射するフィルタの面ならびに前記入射ビームが当該フィルタから出射するフィルタの面をフィルタ面と定義し、層Hと定義する屈折率が相対的に高い方の層である層Hと、層Lと定義する屈折率が相対的に低い方の層である層Lをそれぞれ単層膜と定義して、フィルタのフィルタ面に入射する波長が所定の波長より短い波長の光を透過し、前記所定の波長より長い波長の光を反射させるエッジフィルタであって、前記エッジフィルタの反射波長域の波長が1550nm〜1560nmの第1の波長帯にある波長がλaの入射光を、波長が1550nmのP偏波の入射光を透過率が−30dBであるように反射し、前記エッジフィルタの透過波長域の波長が1260nm〜1360nmの第2の波長帯にある波長がλt1の入射光と前記エッジフィルタの透過波長域にある波長が1380nm〜1500nmの第3の波長帯の波長がλt2の入射光(以下、特に区別していう場合を除いて、前記波長がλt1の入射光と波長がλt2の入射光を透過波長域にある波長として総称して波長がλbの入射光ともいう)を損失が−1dB以内で透過する特性のエッジフィルタとしての機能を有する多層膜を有する多層膜エッジフィルタ(以下、多層膜フィルタともいう)において、前記多層膜フィルタは、その主要部分が、主として、単層膜層Hと単層膜層Lを交互に多数回重ねてフィルタ機能を有するように形成されており、
前記多層膜フィルタをその周囲媒質としての屈折率がn(0)の接着剤などの周囲媒質中において、層Lの屈折率をn(L)、層Hの屈折率をn(H)、フィルタ基板の屈折率をn(S)、前記多層膜を形成する層L全層の物理厚さをt(L)、層H全層の物理厚さをt(H)、基板の物理厚さをt(S)、フィルタ面の入射点における入射ビームの入射角をθとし、
前記多層膜フィルタの媒質換算厚みTを
T=t(H)・n(0)/n(H)+t(L)・n(0)/n(L)
とし、
前記入射ビームの光軸とそれが前記多層膜フィルタを透過して出射するビームの光軸との間の軸シフトをδ(2)とし、
軸シフトδ(2)を前記多層膜フィルタに入射したビームが出射する前記多層膜フィルタの出射側のフィルタ面において、入射光の入射面との交線上における前記入射ビームの光軸の幾何学的延長線と前記出射側のフィルタ面との交点と前記多層膜フィルタを透過して出射するビームと前記出射側のフィルタ面との交点との距離によって表わすことにし、
出射側のフィルタ面において、前記入射ビームの光軸の幾何学的延長線と出射側フィルタ面との交点から前記入射点における前記フィルタ面の面法線と出射側フィルタ面の交点に向かう方向を前記軸シフトの負の値となる方向として、
軸シフトδ(1)を、前記多層膜フィルタが基板を有しないときはt(S)=0として、
δ(1)=n(0)tanθ{t(L)〔1/n(L)−1/n(0)〕+t(H)〔1/n(H)−1/n(0)〕+t(S)〔1/n(S)−1/n(0)〕}
とするとき、
前記多層膜フィルタがTa2O5を主とする層HとSiO2を主とする層Lの総数が65〜71層から成る多層膜を有しており、基板がフッ素化ポリイミドから成る多層膜フィルタであるとき、
θ=8°で入射した入射ビームに対する軸シフトδ(2)が、λbが1300nmの入射ビームとλbが1400nmの入射ビームのときにδ(1)+(1.8〜2.7)μmであり、λbが1500nmの入射ビームのときにδ(1)+(3.2〜4.1)μmであることを特徴とする多層膜エッジフィルタである。
前記多層膜フィルタをその周囲媒質としての屈折率がn(0)の接着剤などの周囲媒質中において、層Lの屈折率をn(L)、層Hの屈折率をn(H)、フィルタ基板の屈折率をn(S)、前記多層膜を形成する層L全層の物理厚さをt(L)、層H全層の物理厚さをt(H)、基板の物理厚さをt(S)、フィルタ面の入射点における入射ビームの入射角をθとし、
前記多層膜フィルタの媒質換算厚みTを
T=t(H)・n(0)/n(H)+t(L)・n(0)/n(L)
とし、
前記入射ビームの光軸とそれが前記多層膜フィルタを透過して出射するビームの光軸との間の軸シフトをδ(2)とし、
軸シフトδ(2)を前記多層膜フィルタに入射したビームが出射する前記多層膜フィルタの出射側のフィルタ面において、入射光の入射面との交線上における前記入射ビームの光軸の幾何学的延長線と前記出射側のフィルタ面との交点と前記多層膜フィルタを透過して出射するビームと前記出射側のフィルタ面との交点との距離によって表わすことにし、
出射側のフィルタ面において、前記入射ビームの光軸の幾何学的延長線と出射側フィルタ面との交点から前記入射点における前記フィルタ面の面法線と出射側フィルタ面の交点に向かう方向を前記軸シフトの負の値となる方向として、
軸シフトδ(1)を、前記多層膜フィルタが基板を有しないときはt(S)=0として、
δ(1)=n(0)tanθ{t(L)〔1/n(L)−1/n(0)〕+t(H)〔1/n(H)−1/n(0)〕+t(S)〔1/n(S)−1/n(0)〕}
とするとき、
前記多層膜フィルタがTa2O5を主とする層HとSiO2を主とする層Lの総数が65〜71層から成る多層膜を有しており、基板がフッ素化ポリイミドから成る多層膜フィルタであるとき、
θ=8°で入射した入射ビームに対する軸シフトδ(2)が、λbが1300nmの入射ビームとλbが1400nmの入射ビームのときにδ(1)+(1.8〜2.7)μmであり、λbが1500nmの入射ビームのときにδ(1)+(3.2〜4.1)μmであることを特徴とする多層膜エッジフィルタである。
前記課題を解決するためになされた本発明の例としての第2の発明(以下、発明2ともいう)は、光ファイバや光導波路などの導光路に多層膜エッジフィルタを光路に対してフィルタ面を傾斜させて挿入して成る光波長選択回路において、前記多層膜エッジフィルタは、その反射波長域の波長が1550nm〜1560nmの第1の波長帯にある波長がλaの入射光を、波長が1550nmのP偏波の入射光を透過率が−30dBであるように反射し、前記エッジフィルタの透過波長域の波長が1260nm〜1360nmの第2の波長帯にある波長がλt1の入射光と前記エッジフィルタの透過波長域にある波長が1390nm〜1500nmの第3の波長帯の波長がλt2の入射光(以下、特に区別していう場合を除いて、前記波長がλt1の入射光と波長がλt2の入射光を透過波長域にある波長として総称して波長がλbの入射光ともいう)を損失が−1dB以内で透過する特性のエッジフィルタとしての機能を有する多層膜を有する多層膜エッジフィルタ(以下、多層膜フィルタともいう)であり、前記多層膜フィルタは、その主要部分が、主として、単層膜層Hと単層膜層Lを交互に多数回重ねてフィルタ機能を有するように形成されており、前記多層膜フィルタをその周囲媒質としての屈折率がn(0)の接着剤などの周囲媒質中において、層Lの屈折率をn(L)、層Hの屈折率をn(H)、フィルタ基板の屈折率をn(S)、前記多層膜を形成する層L全層の物理厚さをt(L)、層H全層の物理厚さをt(H)、基板の物理厚さをt(S)、フィルタ面の入射点における入射ビームの入射角をθとし、
前記多層膜フィルタの媒質換算厚みTを
T=t(H)・n(0)/n(H)+t(L)・n(0)/n(L)
とし、
前記入射ビームの光軸とそれが前記多層膜フィルタを透過して出射するビームの光軸との間の軸シフトを前記多層膜フィルタに入射したビームが出射する前記多層膜フィルタの出射側のフィルタ面において、入射光の入射面との交線上における前記入射ビームの光軸の幾何学的延長線と前記出射側のフィルタ面との交点と前記多層膜フィルタを透過して出射するビームと前記出射側のフィルタ面との交点との距離によって表わすことにし、
出射側のフィルタ面において、前記入射ビームの光軸の幾何学的延長線と出射側フィルタ面との交点から前記入射点における前記フィルタ面の面法線と出射側フィルタ面の交点に向かう方向を前記軸シフトの負の値となる方向として、
軸シフトδ(1)を、前記多層膜フィルタが基板を有しないときはt(S)=0として、
δ(1)=n(0)tanθ{t(L)〔1/n(L)−1/n(0)〕+t(H)〔1/n(H)−1/n(0)〕+t(S)〔1/n(S)−1/n(0)〕}
とするとき、
前記多層膜フィルタがTa2O5を主とする層HとSiO2を主とする層Lの総数が65〜71層から成る多層膜を有しており、基板がフッ素化ポリイミドから成る多層膜フィルタであるとき、
前記光波長選択回路が、前記光波長選択回路における前記多層膜フィルタに入射する入射ビームの入射角θが8〜9°のときの軸シフトがδ(1)+(2〜4)μmであるように前記多層膜フィルタの入射側と出射側の光路に軸シフトを与えている回路であることを特徴とする光波長選択回路である。
前記多層膜フィルタの媒質換算厚みTを
T=t(H)・n(0)/n(H)+t(L)・n(0)/n(L)
とし、
前記入射ビームの光軸とそれが前記多層膜フィルタを透過して出射するビームの光軸との間の軸シフトを前記多層膜フィルタに入射したビームが出射する前記多層膜フィルタの出射側のフィルタ面において、入射光の入射面との交線上における前記入射ビームの光軸の幾何学的延長線と前記出射側のフィルタ面との交点と前記多層膜フィルタを透過して出射するビームと前記出射側のフィルタ面との交点との距離によって表わすことにし、
出射側のフィルタ面において、前記入射ビームの光軸の幾何学的延長線と出射側フィルタ面との交点から前記入射点における前記フィルタ面の面法線と出射側フィルタ面の交点に向かう方向を前記軸シフトの負の値となる方向として、
軸シフトδ(1)を、前記多層膜フィルタが基板を有しないときはt(S)=0として、
δ(1)=n(0)tanθ{t(L)〔1/n(L)−1/n(0)〕+t(H)〔1/n(H)−1/n(0)〕+t(S)〔1/n(S)−1/n(0)〕}
とするとき、
前記多層膜フィルタがTa2O5を主とする層HとSiO2を主とする層Lの総数が65〜71層から成る多層膜を有しており、基板がフッ素化ポリイミドから成る多層膜フィルタであるとき、
前記光波長選択回路が、前記光波長選択回路における前記多層膜フィルタに入射する入射ビームの入射角θが8〜9°のときの軸シフトがδ(1)+(2〜4)μmであるように前記多層膜フィルタの入射側と出射側の光路に軸シフトを与えている回路であることを特徴とする光波長選択回路である。
以上説明したように、本発明の多層膜フィルタは、光波長選択回路の損失特性とPDL特性を大幅に改善することができ、損失が小さく、PDLが小さく、さらに、それらのバラツキを小さく押さえることができたうえに、波長合分波器等光波長選択回路の製造工程を簡素化することができ、量産に適した部品として、安価に提供できるという大きな効果を奏する。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の例について説明する。なお、説明に用いる各図は本発明の例を理解できる程度に各構成成分の寸法、形状、配置関係などを概略的に示してある。そして本発明の説明の都合上、部分的に拡大率を変えて図示する場合もあり、本発明の例の説明に用いる図は、必ずしも実施例などの実物や記述と相似形でない場合もある。また、各図において、同様な構成成分については同一の番号を付けて示し、重複する説明を省略することもある。
本発明の発明者らは、従来の導波路を用いた波長合分波器のような光波長選択回路における損失特性やPDL特性を改善し、それが使用される、たとえば、光通信の幹線から端末に至るまでの広い範囲において、光特性や価格など、使用される上での諸要求を満たすことを目標にして、多層膜フィルタの特性とその応用について詳しく検討した結果、いくつかの設計思想を取り入れて多層膜フィルタの入射光と出射光の関係について調べ、実験を行い、多層膜フィルタおよびその多層膜フィルタを用いた光波長選択回路の改善を行ってきた。以下に、その詳細を説明する。
多層膜フィルタを用いた導波路において、図18を用いて説明した従来のオフセットの考慮も、多層膜フィルタを透過する透過光の損失を小さくするための検討であったが、これでは透過光の損失を真に低減することができないばかりでなく、損失のバラツキが大きく、小型で製造コストの安い光波長選択回路の実用化に大きな問題を有していた。本発明の発明者らは、従来のフィルタの損失とリップルを低減しPDLを小さくすることにのみ重点を置いたといっても過言ではないほどの多層膜フィルタの透過特性と反射特性の改善とこのオフセットの検討だけでは損失を低減できないことを見出し、多層膜フィルタの透過光の出射位置を透過光の波長に応じて狭い範囲に限定するように管理し、反射光の出射位置を反射光の波長に応じて狭い範囲に限定するように管理することにより、透過光と反射光の損失をも極めて効果的に低減する方法を提案するものである。
図1は、本発明の透過光の損失を大幅に低減した多層膜フィルタを用いた光導波路の技術思想を大まかに説明する図で、物理寸法表示で説明した図である。但し、縮尺は説明に都合がよいように部分的に適宜変えてあり、従って、物理寸法表示で説明した図とはいっても、実物と相似形ではない。
図1で、符号20は、光波長選択回路に配置した多層膜フィルタで、基板23の上に、厚みが4分の1波長で屈折率が比較的高い層(層H)と屈折率が比較的低い層(層L)を交互に積層して作成した誘電体多層膜フィルタを、透過光の入射側のフィルタ面37と出射側のフィルタ面38をそのまま表示し、フィルタ面37と基板23の間の積層膜の層Hだけを集めて書いた層Hの集合21と層Lだけを集めて書いた層Lの集合22に分けて示した多層膜フィルタ、24は入射ビーム、28は入射ビーム24が入射した位置すなわち入射点におけるフィルタ面37のフィルタ面法線(以下、単に法線ともいう)、31は入射ビーム24のフィルタ面37への入射点、32〜34は入射ビーム24が多層膜フィルタ20のに入射してからの光路(符号24bで示してある)を説明するための位置で、34は出射点、24aは入射ビーム24を延長した点線で多層膜フィルタがない場合の入射ビーム24の進路に相当する線で入射ビームの幾何学的延長線、θ11〜θ15は入射ビーム24およびその多層膜フィルタ20への入射点31と多層膜フィルタに入射してからの光路を説明するための位置32〜34を順次結んだ線分とフィルタ面法線28とのなす角、26と27は矢印、31bはフィルタ面法線28とフィルタ面38の交点、d1は入射ビーム24が多層膜フィルタ20に入射して図18の場合と同様な従来のスネルの法則に従ったオフセットの考え方で多層膜フィルタ内で屈折して多層膜フィルタ内を進行して多層膜フィルタ20の出射側のフィルタ面38から出射すると仮定したときの仮定出射位置39と出射側のフィルタ面38と入射ビームの幾何学的延長線24aの交点との距離(軸シフト)、d2は本発明の多層膜フィルタにおける入射ビーム24がフィルタ面37の入射点31から多層膜フィルタ20の入射し、出射側のフィルタ面38の出射点34から出射したときの出射点34と仮定出射点39の距離(この距離は、後述するように、波長に依存する)、40は入射ビームの幾何学的延長線24aと出射側のフィルタ面38の交点である。
多層膜フィルタ20は、実際には前記のように基板の上に層Lと層Hを交互に積層して形成されているが、従来の考え方によるオフセットを説明する都合上と本発明の透過光の出射位置を大まかに説明する都合上、層Hは層Hだけで集合させて図示し、層Lは層Lだけで集合させて図示して入射光の多層膜フィルタ内での屈折による進行を説明するのに便利なように図示してある。
図1で、矢印26の方向へ進行してきた入射ビーム24は、フィルタ面37の入射点31から多層膜フィルタ20に入射し、従来のスネルの法則によるオフセットの考え方では多層膜フィルタ20を構成する層H全体21によって屈折させられた分と多層膜フィルタ20を構成する層L全体22によって屈折させられた分と、さらに基板23によって屈折させられた分の屈折現象によって、出射側のフィルタ面38の仮定出射点39から出射することになる。しかし、本発明の多層膜フィルタにおいては、実際には、前記従来のオフセットを考慮した上に、さらに多層膜フィルタ内での多重反射の結果も加わり、図1で、矢印26の方向へ進行してきた入射ビーム24は、フィルタ面37の入射点31から多層膜フィルタ20に入射した後、出射側のフィルタ面38の前記仮定出射位置39から入射ビームの幾何学的延長線24aと出射側のフィルタ面38の交点40の方向へd2だけ離れた出射点34から出射する。
使用する波長によって、各波長の前記軸シフトδ(2)を考慮して最適の条件に入射側コア部と出射側コア部を配置することが好ましいが、本発明の前記多層膜フィルタの説明のように、入射側コア部と出射側コア部を同じ光軸に形成して、そのフィルタ挿入部に溝を形成するなどして、本発明の多層膜フィルタを挿入し、損失特性、PDL特性の優れた波長選択回路を歩留まり良く製造することができる。
ここで、入射光の多層膜フィルタによる反射や透過において、入射光が多層膜フィルタに入射してから出射するまでの光路の詳細については、多重反射などによる極めて複雑な現象があって、その結果として出射光が得られるものであるが、完全には解明されていない。しかしながら、その現象に関する管理可能の因子があれば、工業的改善につなげて管理すべきものであり、本発明はこの観点に立つものである。
本発明の発明者が、軸シフトδ(2)を光回路としての損失ができるだけ少なくなるように計算で求める方法を種々検討してきた。その結果、非特許文献3(菊地啓介,”光ファイバ間多層膜エッジフィルタの結合損失波長特性の計算”,第53回応用物理学関係連合講演会講演予稿集No.3,p.1053,22p−D−4,2006年3月22〜26日)に本発明の発明者がその一部を発表したように、図1の本発明の多層膜フィルタの入射側のフィルタ面37にガウス分布で入射した入射ビームが多層膜フィルタ内を多重反射を繰り返しながら進行する様子を平面波展開法(フーリエ変換)の近似式で計算して出射側のフィルタ面38から出射するときの軸シフトを求めたところ、実際の多層膜フィルタにおける軸シフトに近い値を得ることができた。
つぎに、多層膜フィルタを挿入した光波長選択回路における軸シフトの重要性について説明する。
図2と図3は、本発明の技術思想を一層明確にするための説明図で、従来あまり重要視されなかった、ある開口数NAを有する2つの導光体開口部を対向させたときの、開口部間距離と各導光体の軸ズレに関する結合損失について説明する図である。ここで、対向する2つの導光体は開口部の近くにおいて、直線状であるとする。
図2と図3で、符号61と62は導光体、61aと62aは導光体61と62の光軸、δ(0)は光軸61aと光軸62aの軸ズレ量、xは導光体61と62の開口部間距離、L(x)は結合損失、71〜74は結合損失曲線である。
光波長選択回路における前記多層膜フィルタを挟んで対向配置する導光体として、たとえば、導波路を用いる場合、前記導光体の開口部の間に傾けては配置する多層膜フィルタを挿入するための溝を設ける場合は、導波路の開口部を斜めに切断して溝を形成する場合が多い。この場合、導波路の導光体すなわちコアの屈折率とフィルタを接着する接着剤の屈折率が一致していれば、開口部から出射されるビームの軸とコアの軸が一致する。しかし、両者の屈折率は、一般には異なる。たとえば、コアに石英を用いた場合の屈折率は約1.46で、プラスチックで形成した場合は約1.5などのように、コア自体も材質によって屈折率が異なる。コアの屈折率と接着剤等媒質の屈折率が異なる場合、出射側の導光体の光軸と出射ビームの軸は厳密には一致しない。このような場合、本発明における光軸とは出射ビームの軸を意味している。入射側の導光体の光軸についても同様である。
すなわち、本発明でいう軸シフトδ(2)は発射ビームと入射ビームの導光体開口部における差を意味している。
図3は、図2で結合させる光の波長が1550nm、開口部の開口数NAが0.1、両開口部間の媒質の屈折率が1.56の時の計算結果で、曲線71はδ(0)=0μmの時の曲線、曲線72はδ(0)=1μmの時の曲線、曲線73はδ(0)=2μmの時の曲線、曲線74はδ(0)=3μmの時の曲線である。
図3のグラフからわかるように、結合損失L(x)は開口部間距離xの関数であるが、軸ズレ量δ(0)の関数でもある。そして、変数xに対する変化よりも変数δ(0)に対する変化の方が極めて大きい。
したがって、従来は、導光体の開口部間に多層膜フィルタを波長選択素子として用いた光波長選択回路においては、結合損失を少なくするために、厚みを薄くできるフッ素化ポリイミドフィルタを用いるなどにより、開口部間距離xを小さくすることに重点をおいてきた。しかし、本発明で説明するように、軸ズレの方をより重要視して、この低減に努めなければならないことがわかる。
本発明の発明者等は、これらの基本的考え方に立って、実際に光波長選択回路に使用する多層膜フィルタとそれを用いる光結合系について種々の検討を行った。
その結果、前記のように、対向する少なくとも2個の導光体開口の間の光軸に対し傾斜した多層膜フィルタを配置する光波長選択回路における、前記多層膜フィルタが波長が少なくとも1310nmと1480nmと1500nmの3種類の光を透過するとともに波長が1550nmの光を反射するフィルタとして、前記の課題を解決するための手段に記載したような多層膜エッジフィルタを開発し、損失特性でPDL特性の優れた光波長選択回路を安価に提供することができることを見出した。
以下、多層膜フィルタの例について、多層膜を構成する層HがTa2O5で層LがSiO2の例をとってさらに具体的に説明する。
図4〜図7は71層から成る多層膜エッジフィルタに入射角8°で入射ビームを入射させた場合の特性を説明する図である。
図4は多層膜ィルタの平面波透過波長特性を示す図で、符号1はS偏光の透過波長特性曲線、2はP偏光の透過波長特性曲線、3bは特性曲線の計算の設定点(1550nmで−30dBとする)を示す符号である。以下の説明における光ファイバのNAは0.1である。図で、横軸は波長、縦軸は透過率である。
図5は図4の多層膜フィルタに光ファイバからの出射光を入射させ、多層膜フィルタから出射した出射光を光ファイバに結合させた場合の結合損失特性を示す図で、符号3は軸シフトδ(2)を本発明の好適な条件にして結合させたS偏光の結合損失曲線、4は軸シフトδ(2)を本発明の好適な条件にして結合させたP偏光の結合損失曲線、5は前記従来のスネルの法則に基づき結合させたS偏光の結合損失曲線、6は前記従来のスネルの法則に基づき結合させたP偏光の結合損失曲線である。図で、横軸は波長、縦軸は結合損失である。
図から、1300〜1500nmの全波長域において従来の結合効率に比べて本発明の軸シフトδ(2)思想で結合させた結合効率が低損失であることがわかる。
図6は平面波展開法で計算した多層膜フィルタ出射面における電界分布曲線を示す図で、S偏光とP偏光の平均で表しており、ピークの位置が各波長における軸シフトを与える。図で、横軸は波長、縦軸は相対強度で、横軸の座標原点0はビーム中心に従来の方法でスネルの法則を適用した場合の出射位置である。符号7は波長が1300nmの場合の電界分布曲線、8は波長が1400nmの場合の電界分布曲線、10は波長が1500nmの場合の電界分布曲線、9は波長が1525nmの場合の電界分布曲線である。
図7は平面波展開法で計算した多層膜フィルタ出射面における電界の位相分布曲線を示す図で、S偏光とP偏光の平均で表している。符号16は波長が1400nmの時の位相分布曲線、17は波長が1500nmの時の位相分布曲線、18は波長が1525nmの時の位相分布曲線である。
図8は、前記多層膜フィルタの損失特性の層数依存特性を示す図で、符号13は参考として示した層数が59層の時の透過波長特性、14は参考として示した層数が71層の時の透過波長特性、15は参考として示した層数が79層の時の透過波長特性を示す曲線で、13aは層数が59層の時の結合損失特性、14aは層数が71層の時の結合損失特性、15aは層数が79層の時の結合損失特性を示す曲線である。
図8からわかるように、1500nmにおける結合損失は59層と79層よりも71層の方が優れている。
図9〜図12は65層から成る多層膜エッジフィルタに入射角8°で入射ビームを入射させた場合の特性を説明する図である。
図9は多層膜ィルタの平面波透過波長特性を示す図で、符号1aはS偏光の透過波長特性曲線、2aはP偏光の透過波長特性曲線、3cは特性曲線の計算の設定点(1550nmで−30dBとする)を示す符号である。以下の説明における光ファイバのNAは0.1である。図で、横軸は波長、縦軸は透過率である。
図10は図9の多層膜フィルタに光ファイバからの出射光を入射させ、多層膜フィルタから出射した出射光を光ファイバに結合させた場合の結合損失特性を示す図で、符号3aは軸シフトδ(2)を本発明の好適な条件にして結合させたS偏光の結合損失曲線、4aは軸シフトδ(2)を本発明の好適な条件にして結合させたP偏光の結合損失曲線、5aは前記従来のスネルの法則に基づき結合させたS偏光の結合損失曲線、6aは前記従来のスネルの法則に基づき結合させたP偏光の結合損失曲線である。図で、横軸は波長、縦軸は結合損失である。
図から、1300〜1500nmの全波長域において従来の結合効率に比べて本発明の軸シフトδ(2)思想で結合させた結合効率が低損失であることがわかる。
図11は平面波展開法で計算した多層膜フィルタ出射面における電界分布曲線を示す図で、S偏光とP偏光の平均で表しており、ピークの位置が各波長における軸シフトを与える。図で、横軸は波長、縦軸は相対強度で、横軸の座標原点0はビーム中心に従来の方法でスネルの法則を適用した場合の出射位置である。符号7aは波長が1300nmの場合の電界分布曲線、8aは波長が1400nmの場合の電界分布曲線、10aは波長が1500nmの場合の電界分布曲線、9aは波長が1525nmの場合の電界分布曲線である。
図12は平面波展開法で計算した多層膜フィルタ出射面における電界の位相分布曲線を示す図で、S偏光とP偏光の平均で表している。符号16aは波長が1400nmの時の位相分布曲線、17aは波長が1500nmの時の位相分布曲線、18aは波長が1525nmの時の位相分布曲線である。
図13は、前記多層膜フィルタの損失特性の層数依存特性を示す図で、符号19は参考として示した層数が65層の時の透過波長特性、19aは層数が65層の時の結合損失特性を示す曲線である。
図13からわかるように、1500nmにおける結合損失は59層と79層よりも65層の方が優れている。
図4〜図13は本発明者による検討の一部を示したものであるが、これらの検討を踏まえ、65〜71層の前記多層膜フィルタおよびそのフィルタを用いた光波長選択回路を調べた結果、θ=8°で入射した入射ビームに対する軸シフトδ(2)が、λbが1300nmの入射ビームとλbが1400nmの入射ビームのときにδ(1)+(1.8〜2.7)μmであり、λbが1500nmの入射ビームのときにδ(1)+(3.2〜4.1)μmである多層膜エッジフィルタが特に良好な損失特性を与えることがわかった。そして、そのようなフィルタを光波長選択回路に挿入して用いる場合、前記光波長選択回路における前記多層膜フィルタに入射する入射ビームの入射角θが8〜9°のときの軸シフトがδ(1)+(2〜4)μmであるように前記多層膜フィルタの入射側と出射側の光路に軸シフトを与えるように構成した光波長選択回路が特に良好な損失特性を与えることがわかった。
以上説明したことからもわかるが、損失の少ない多層膜エッジフィルタを歩留まりよく得ることは難しいことであったが、本発明によって損失の少ない多層膜エッジフィルタとそれを用いた損失の少ない光波長選択回路を歩留まりよく安価に提供することを可能になった。また、本発明は前記の説明に狭く限定されるものではなく、多くのバリエーションを可能とするものである。
菊地啓介,"光ファイバ間多層膜エッジフィルタの結合損失波長特性の計算",第53回応用物理学関係連合講演会講演予稿集No.3,p.1053,22p−D−4,2006年3月22〜26日
以上説明したように、本発明は、優れた損失特性のフィルタ特性を有する多層膜フィルタを量産上の歩留まり良く提供することができ、特に、フィルタを透過させる光ビームに対する入射側と出射側の光軸に与える軸シフトを適格に管理して、そのフィルタを波長分派回路に用いて、極めて良好な損失特性を有する波長分派回路を量産可能な状態で安価に実現できるという大きな効果をもたらし、光通信分野等に広く利用して、光通信分野等を大きく発展させることができる。
1,1a,2,2a,13,14,15,19:透過波長特性曲線
3,3a,4,4a,5,5a,6,6a,13a,14a,15a,19a:結合損失特性曲線
3b,3c:特性曲線の計算の設定点
7,7a,8,8a,9,9a,10,10a:電界分布曲線
16,16a,17,17a,18,18a:位相分布曲線
211,212,216,232〜234,252〜254:光導波路のコア部
213a:多層膜
37,38,214,545,546:フィルタ面
31,550:入射点
34,551:出射点
23,213b,533:基板
20,213,530:多層膜フィルタ
217:接着剤
211a,212a,216a:コア部の中心線
26,27,215a〜215c,235〜238,255〜258,547,548:矢印
208,210:光波長選択回路
21,531:層Hの集合
22,532:層Lの集合
24,536:入射ビーム
24a,536a:入射ビームの幾何学的延長線
28:フィルタ面法線
31b:フィルタ面法線とフィルタ面の交点
32〜33:入射光の光路を説明するための位置
39:仮定出射位置
40:点線24aと出射側のフィルタ面38の交点
61,62:導光体
61a,62a:光軸
71〜74:結合損失曲線
201,202,207:ファイバ芯線
203:2芯光ファイバコリメータ
204,206:レンズ
205:フィルタ
230,250:光導波路
231:LPF
251:SPF
535:フィルタ面545の法線
537〜540:入射光の光路
552:点線536aと出射側のフィルタ面546の交点
d1:従来のスネルの法則に従ったオフセット
d2:出射点34と仮定出射点39の距離
L(x):結合損失
x:導光体の開口部間距離
δ(0):軸ズレ量
θ1〜θ5,θ11〜θ15:角度
3,3a,4,4a,5,5a,6,6a,13a,14a,15a,19a:結合損失特性曲線
3b,3c:特性曲線の計算の設定点
7,7a,8,8a,9,9a,10,10a:電界分布曲線
16,16a,17,17a,18,18a:位相分布曲線
211,212,216,232〜234,252〜254:光導波路のコア部
213a:多層膜
37,38,214,545,546:フィルタ面
31,550:入射点
34,551:出射点
23,213b,533:基板
20,213,530:多層膜フィルタ
217:接着剤
211a,212a,216a:コア部の中心線
26,27,215a〜215c,235〜238,255〜258,547,548:矢印
208,210:光波長選択回路
21,531:層Hの集合
22,532:層Lの集合
24,536:入射ビーム
24a,536a:入射ビームの幾何学的延長線
28:フィルタ面法線
31b:フィルタ面法線とフィルタ面の交点
32〜33:入射光の光路を説明するための位置
39:仮定出射位置
40:点線24aと出射側のフィルタ面38の交点
61,62:導光体
61a,62a:光軸
71〜74:結合損失曲線
201,202,207:ファイバ芯線
203:2芯光ファイバコリメータ
204,206:レンズ
205:フィルタ
230,250:光導波路
231:LPF
251:SPF
535:フィルタ面545の法線
537〜540:入射光の光路
552:点線536aと出射側のフィルタ面546の交点
d1:従来のスネルの法則に従ったオフセット
d2:出射点34と仮定出射点39の距離
L(x):結合損失
x:導光体の開口部間距離
δ(0):軸ズレ量
θ1〜θ5,θ11〜θ15:角度
Claims (2)
- 入射光線(以下、入射ビームともいう)が入射するフィルタの面ならびに前記入射ビームが当該フィルタから出射するフィルタの面をフィルタ面と定義し、
層Hと定義する屈折率が相対的に高い方の層である層Hと、層Lと定義する屈折率が相対的に低い方の層である層Lをそれぞれ単層膜と定義して、
フィルタのフィルタ面に入射する波長が所定の波長より短い波長の光を透過し、前記所定の波長より長い波長の光を反射させるエッジフィルタであって、前記エッジフィルタの反射波長域の波長が1550nm〜1560nmの第1の波長帯にある波長がλaの入射光を、波長が1550nmのP偏波の入射光を透過率が−30dBであるように反射し、前記エッジフィルタの透過波長域の波長が1260nm〜1360nmの第2の波長帯にある波長がλt1の入射光と前記エッジフィルタの透過波長域にある波長が1380nm〜1500nmの第3の波長帯の波長がλt2の入射光(以下、特に区別していう場合を除いて、前記波長がλt1の入射光と波長がλt2の入射光を透過波長域にある波長として総称して波長がλbの入射光ともいう)を損失が−1dB以内で透過する特性のエッジフィルタとしての機能を有する多層膜を有する多層膜エッジフィルタ(以下、多層膜フィルタともいう)において、
前記多層膜フィルタは、その主要部分が、主として、単層膜層Hと単層膜層Lを交互に多数回重ねてフィルタ機能を有するように形成されており、
前記多層膜フィルタをその周囲媒質としての屈折率がn(0)の接着剤などの周囲媒質中において、層Lの屈折率をn(L)、層Hの屈折率をn(H)、フィルタ基板の屈折率をn(S)、前記多層膜を形成する層L全層の物理厚さをt(L)、層H全層の物理厚さをt(H)、基板の物理厚さをt(S)、フィルタ面の入射点における入射ビームの入射角をθとし、
前記多層膜フィルタの媒質換算厚みTを
T=t(H)・n(0)/n(H)+t(L)・n(0)/n(L)
とし、
前記入射ビームの光軸とそれが前記多層膜フィルタを透過して出射するビームの光軸との間の軸シフトをδ(2)とし、
軸シフトδ(2)を前記多層膜フィルタに入射したビームが出射する前記多層膜フィルタの出射側のフィルタ面において、入射光の入射面との交線上における前記入射ビームの光軸の幾何学的延長線と前記出射側のフィルタ面との交点と前記多層膜フィルタを透過して出射するビームと前記出射側のフィルタ面との交点との距離によって表わすことにし、
出射側のフィルタ面において、前記入射ビームの光軸の幾何学的延長線と出射側フィルタ面との交点から前記入射点における前記フィルタ面の面法線と出射側フィルタ面の交点に向かう方向を前記軸シフトの負の値となる方向として、
軸シフトδ(1)を、前記多層膜フィルタが基板を有しないときはt(S)=0として、
δ(1)=n(0)tanθ{t(L)〔1/n(L)−1/n(0)〕+t(H)〔1/n(H)−1/n(0)〕+t(S)〔1/n(S)−1/n(0)〕}
とするとき、
前記多層膜フィルタがTa2O5を主とする層HとSiO2を主とする層Lの総数が65〜71層から成る多層膜を有しており、基板がフッ素化ポリイミドから成る多層膜フィルタであるとき、
θ=8°で入射した入射ビームに対する軸シフトδ(2)が、λbが1300nmの入射ビームとλbが1400nmの入射ビームのときにδ(1)+(1.8〜2.7)μmであり、λbが1500nmの入射ビームのときにδ(1)+(3.2〜4.1)μmであることを特徴とする多層膜エッジフィルタ。 - 光ファイバや光導波路などの導光路に多層膜エッジフィルタを光路に対してフィルタ面を傾斜させて挿入して成る光波長選択回路において、
前記多層膜エッジフィルタは、その反射波長域の波長が1550nm〜1560nmの第1の波長帯にある波長がλaの入射光を、波長が1550nmのP偏波の入射光を透過率が−30dBであるように反射し、前記エッジフィルタの透過波長域の波長が1260nm〜1360nmの第2の波長帯にある波長がλt1の入射光と前記エッジフィルタの透過波長域にある波長が1390nm〜1500nmの第3の波長帯の波長がλt2の入射光(以下、特に区別していう場合を除いて、前記波長がλt1の入射光と波長がλt2の入射光を透過波長域にある波長として総称して波長がλbの入射光ともいう)を損失が−1dB以内で透過する特性のエッジフィルタとしての機能を有する多層膜を有する多層膜エッジフィルタ(以下、多層膜フィルタともいう)であり、
前記多層膜フィルタは、その主要部分が、主として、単層膜層Hと単層膜層Lを交互に多数回重ねてフィルタ機能を有するように形成されており、
前記多層膜フィルタをその周囲媒質としての屈折率がn(0)の接着剤などの周囲媒質中において、層Lの屈折率をn(L)、層Hの屈折率をn(H)、フィルタ基板の屈折率をn(S)、前記多層膜を形成する層L全層の物理厚さをt(L)、層H全層の物理厚さをt(H)、基板の物理厚さをt(S)、フィルタ面の入射点における入射ビームの入射角をθとし、
前記多層膜フィルタの媒質換算厚みTを
T=t(H)・n(0)/n(H)+t(L)・n(0)/n(L)
とし、
前記入射ビームの光軸とそれが前記多層膜フィルタを透過して出射するビームの光軸との間の軸シフトを前記多層膜フィルタに入射したビームが出射する前記多層膜フィルタの出射側のフィルタ面において、入射光の入射面との交線上における前記入射ビームの光軸の幾何学的延長線と前記出射側のフィルタ面との交点と前記多層膜フィルタを透過して出射するビームと前記出射側のフィルタ面との交点との距離によって表わすことにし、
出射側のフィルタ面において、前記入射ビームの光軸の幾何学的延長線と出射側フィルタ面との交点から前記入射点における前記フィルタ面の面法線と出射側フィルタ面の交点に向かう方向を前記軸シフトの負の値となる方向として、
軸シフトδ(1)を、前記多層膜フィルタが基板を有しないときはt(S)=0として、
δ(1)=n(0)tanθ{t(L)〔1/n(L)−1/n(0)〕+t(H)〔1/n(H)−1/n(0)〕+t(S)〔1/n(S)−1/n(0)〕}
とするとき、
前記多層膜フィルタがTa2O5を主とする層HとSiO2を主とする層Lの総数が65〜71層から成る多層膜を有しており、基板がフッ素化ポリイミドから成る多層膜フィルタであるとき、
前記光波長選択回路が、前記光波長選択回路における前記多層膜フィルタに入射する入射ビームの入射角θが8〜9°のときの軸シフトがδ(1)+(2〜4)μmであるように前記多層膜フィルタの入射側と出射側の光路に軸シフトを与えている回路であることを特徴とする光波長選択回路。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006256915A JP2008076815A (ja) | 2006-09-22 | 2006-09-22 | 多層膜エッジフィルタおよびそれを用いた光波長選択回路 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2006256915A JP2008076815A (ja) | 2006-09-22 | 2006-09-22 | 多層膜エッジフィルタおよびそれを用いた光波長選択回路 |
Publications (1)
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JP2006256915A Pending JP2008076815A (ja) | 2006-09-22 | 2006-09-22 | 多層膜エッジフィルタおよびそれを用いた光波長選択回路 |
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- 2006-09-22 JP JP2006256915A patent/JP2008076815A/ja active Pending
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