JP2008075094A - 金属材料の塑性加工用水系潤滑剤組成物 - Google Patents

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慎吾 菊池
Masahiko Fukuhara
正彦 福原
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Abstract

【課題】安全性が高く、リン酸塩等の化成処理による下地皮膜を必要とせず、浸漬又はスプレーにより付着させた後、乾燥する簡便な工程で化成処理法に匹敵する潤滑性を有する金属材料の塑性加工用水系潤滑剤組成物を提供する。
【解決手段】1分子中にイオウ原子との結合と窒素原子との結合を有する炭素原子を含む化合物(A1)、のうちの一種以上(A1成分)と、アルカリ金属の塩及び/又はアルカリ土類金属の塩(B成分)と、を含有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、鉄鋼、チタン、アルミニウム等の金属材料の塑性加工用潤滑剤組成物に関する。より詳しくは、被加工物にスプレー又は浸漬等により塗布して直ちに乾燥する工程により、潤滑性を有する被膜を形成する、金属材料の塑性加工用水系潤滑剤組成物に関する。
一般に金属材料の塑性加工では、被加工材と工具との金属接触により生ずる摩擦を低減し、焼き付きやかじりを防止する目的で、液状又は固体状の潤滑剤が使用されている。使用される潤滑剤は使用方法で大きく二つに分けることができる。一つは、金属表面に物理的に付着させる潤滑剤で、他の一つは化学反応により金属表面にキャリア皮膜を生成させた後、滑剤を付着させる潤滑剤である。前者の潤滑剤としては、鉱油、植物油又は合成油を基油にして極圧剤を添加したもので金属表面に付着後そのまま塑性加工を行うタイプのものや、金属石けん、黒鉛又は二硫化モリブデン等の固体潤滑剤をバインダー成分と共に水に分散させたもので、金属表面に付着後乾燥させた後に塑性加工を行うタイプのもの等がある。これらの潤滑剤は使用方法が塗布や浸漬によるため簡便であり、液管理もほとんど必要がないなどの利点があるため、比較的加工条件の緩やかな塑性加工の場合に使用されることが多い。
他方、後者の潤滑剤による処理はいわゆる化成皮膜処理と呼ばれるものであり、例えば化学反応により金属表面にキャリアとしての役割を持つリン酸塩皮膜を生成させた後、滑剤としてステアリン酸ナトリウムやステアリン酸カルシウム等の反応石けん又は非反応石けんによる処理が行われる。このタイプは、キャリアとしての化成皮膜と滑剤としての金属石けんとの二層構造を持っており、加工条件の厳しい塑性加工の場合にも非常に良好な耐焼き付き性を示す。そのため潤滑剤として伸線、伸管、鍛造などの塑性加工分野において非常に広い範囲で使用されてきた。
しかし、化成皮膜処理は化学反応を伴うため、厳密な工程管理が必要とされる。さらに形成される化成皮膜上に滑剤を塗布するため、水洗や酸洗いまでを含めると多数の処理工程が必要である。また、処理の際に使用される水洗水や化成皮膜から多量の廃液が出ること及び化学反応を制御するため諸設備が必要であることから、設備投資や操業に多額の費用がかかる、等の問題点をかかえていた。
かかる問題点を解決するため、コストのかかるリン酸塩処理を代替すべく、前述の物理的な方法による潤滑膜の性能を化成処理と同等な程度に向上させる努力がなされている。その努力の結果として、油系の潤滑剤又は水系の潤滑剤を使用する方法が提案されている。例えば、油系潤滑剤としては、特許文献1「金属の冷間加工用潤滑剤」に、塩素化パラフィン、燐酸エステル等の極圧剤とイソブチレン・n−ブテン共重合物と動植物等を配合した潤滑油に金属石けんや固体潤滑剤を配合した冷間加工用潤滑剤が開示されている。
また水系潤滑剤の場合には、湿式のままで使用するものと乾式皮膜として使用するものがある。湿式のまま使用する水系潤滑剤は上記の油系潤滑剤のように工具あるいは被加工材料に直接流しかけて使用されるものであり、例えば、特許文献2「金属管の冷間乃至温間加工用潤滑剤」に、炭酸水素塩(固形物)を主成分とし、これに少量の分散剤と界面活性剤と固体潤滑剤とを加えた潤滑剤が開示されている。
一方、乾式皮膜として使用する水系潤滑剤とは上記化成皮膜のように処理槽に浸漬処理した後、乾燥工程で水分を蒸発させ固体皮膜を得るもので、例えば、特許文献3「鋼又は合金鋼の潤滑被覆用組成物」に、水溶性高分子又はその水性エマルジョンを基材とし、固体潤滑剤と化成皮膜形成剤とを配合した潤滑剤組成物が開示されている。
さらに、例えば、特許文献4や特許文献5では、亜鉛、マンガン、モリブデン、スズなどの遷移金属・典型金属の塩又は錯体を使用して良好な結果を示している事例も報告されている。
特公平4−1798号公報 特公昭58−30358号公報 特開昭52−20967号公報 特開平7−118682号公報 特許第3217072号公報
しかし、特許文献1に記載の高性能潤滑剤でも、化成皮膜処理後反応石けん潤滑処理を行う潤滑法と比較して加工性が劣り、また加工時に臭気が発生するという欠点を有していた。また、特許文献3等の水系潤滑剤では、加工性の面で化成皮膜処理に匹敵するようなものは得られていなかった。また、作業環境を良好に保ち、環境問題にも配慮するという観点から、特許文献4や特許文献5において、金属の使用は避けることが好ましい。
そこで、本発明は、安全性が高く、リン酸塩等の化成処理による下地皮膜を必要とせず、浸漬又はスプレーにより付着させた後、乾燥する簡便な工程で化成処理法に匹敵する潤滑性を有する金属材料の塑性加工用水系潤滑剤組成物を提供することを課題とする。
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、イオウ原子との結合と窒素原子との結合を有する炭素原子を含む化合物とアルカリ金属及び/又は、アルカリ土類金属の塩を含有する水分散液を金属材料に付着させ、乾燥させることで優れた潤滑性能が発揮されることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の第1の態様にかかる塑性加工用水系潤滑剤組成物は、1分子中にイオウ原子との結合と窒素原子との結合を有する炭素原子を含む化合物(A1)、のうちの一種以上(A1成分)と、アルカリ金属の塩及び/又はアルカリ土類金属の塩(B成分)と、を含有することを特徴とするものである。
このような構成を具備する塑性加工用水系潤滑剤組成物によれば、リン酸塩等の化成処理による下地皮膜を必要とせず、浸漬又はスプレーにより付着させた後、乾燥する簡便な工程で化成処理法に匹敵する潤滑性を有する金属材料の塑性加工用水系潤滑剤組成物を提供することができる。
上記塑性加工用水系潤滑剤組成物において、化合物(A1)は、下記化学式(1〜11)で表される化合物のうちのいずれかであることとしてもよい。
Figure 2008075094
Figure 2008075094
化学式2においてxは1〜6の整数を示す。
Figure 2008075094
化学式3においてRは炭素数1〜5のアルキル基、Rは炭素数1〜5のアルキル基を示す。
Figure 2008075094
化学式4においてxは1〜6の整数を示す。
Figure 2008075094
化学式5においてRは炭素数1〜5のアルキル基又はシクロヘキシル基を示す。
Figure 2008075094
Figure 2008075094
化学式7においてR及びRは炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基、又はベンジル基を示し、MはNa、K、又は1/2Caを示す。
Figure 2008075094
化学式8においてRは水素又はメチル基、Rはピペリジン又はメチルピペラジンを示す。
Figure 2008075094
化学式9においてR〜Rは炭素数1〜6のアルキル基又はCH(CHCH(C)CHを示し、xは1〜6の整数を示す。
Figure 2008075094
化学式10においてxは1〜6の整数を示す。
Figure 2008075094
化学式11においてR及びRは、水素又は炭素数1〜3のアルキル基、R及びRは炭素数1〜3のアルキル基又はフェニル基を示す。
化合物(A1)をこれらの化合物の中から選択することにより、より高い潤滑性を有する金属材料の塑性加工用水系潤滑剤組成物を得ることが容易となる。
また上記塑性加工用水系潤滑剤組成物において、アルカリ金属の塩、又はアルカリ土類金属の塩が炭素数8〜50のアルキルカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも1つのアルキルカルボン酸の塩であり、A成分に対し、10〜200重量%の割合で含まれるように構成することもできる。
このようにアルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩を構成するアルキルカルボン酸の炭素数を吟味し、またそれらの含有量をA1成分に対して特定範囲に設定することによって、さらに塑性加工用水系潤滑剤組成物の潤滑剤としての性能を高めることができる。
本発明の第2の態様の塑性加工用水系潤滑剤組成物は、下記化学式(12〜14)で表される化合物のうちのいずれかで表される化合物(A2)のうち一種以上(A2成分)と、アルカリ金属の塩及び/又はアルカリ土類金属の塩(B成分)とを含有することを特徴とする。
Figure 2008075094
Figure 2008075094
化学式13においてRは炭素数1〜18のアルキル基、Rは炭素数1〜6のアルキル基を示し、xは1〜6の整数を示す。
Figure 2008075094
このような化合物を使用しても、第1の態様の塑性加工用水系潤滑剤組成物と同等の性能を有する潤滑剤組成物を構成することができる。
上記本発明の第2の態様にかかる塑性加工用水系潤滑剤組成物においても、アルカリ金属の塩、又はアルカリ土類金属の塩が炭素数8〜50のアルキルカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも1つのアルキルカルボン酸の塩であり、成分A2に対し、10〜200重量%の割合で含まれることとしてもよい。
この態様においても、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩を構成するアルキルカルボン酸の炭素数を吟味し、またそれらの含有量をA2成分に対して特定範囲に設定することによって、さらに塑性加工用水系潤滑剤組成物の潤滑剤としての性能を高めることができる。
上記第1及び第2の態様にかかる塑性加工用水系潤滑剤組成物において、軟化点が60℃以上のワックスを含有するように構成してもよい。
このように構成した場合には、ワックス成分の含有によりさらに塑性加工用水系潤滑剤組成物の潤滑性を向上させることが可能となる。
また、上記第1及び第2の態様にかかる塑性加工用水系潤滑剤組成物において、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、及びポリフッ化エチレン樹脂のうち、少なくとも1の樹脂を添加してもよい。
このようにした場合、添加された樹脂成分の働きによりさらに塑性加工用水系潤滑剤組成物の性能を向上させることが可能となる。
上記諸態様の塑性加工用水系潤滑剤組成物において、遷移金属、並びにスズ(Sn)及び鉛(Pb)を含まないことを特徴としてもよい。また、ホウ素(B)、及びリン(P)を含まないことを特徴としてもよい。なお、本願において、周期律表12(IIB)属の亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、及び水銀(Hg)は、遷移金属に含まれるものとする。
このように構成することにより、安全性の高い塑性加工用水系潤滑剤組成物を提供することができる。
なお、第1の態様におけるA1成分及び第2の態様におけるA2成分を同時に含有する塑性加工用水系潤滑剤組成物は、当然に本願発明の技術的範囲に含まれるものと解釈されなければならない。
以上に説明したように、本発明によれば安全性が高く、リン酸塩等の化成処理による下地皮膜を必要とせず、浸漬又はスプレーにより付着させた後、乾燥する簡便な工程で化成処理法に匹敵する潤滑性を有する金属材料の塑性加工用水系潤滑剤組成物を得ることができる。
以下、本発明の内容をより詳細に説明する。本発明の塑性加工用水系潤滑剤組成物は必須成分として、化学式1〜11で表される化合物を含む硫黄原子が結合している炭素に窒素原子が結合している化合物(A1)、又は、化学式12〜14で表される化合物(A2)のうち少なくとも1つと、アルカリ金属及び/又は、アルカリ土類金属の塩(B)とを含有することを特徴とする。本発明の潤滑剤においては、化学式1〜14で表される化合物のうち少なくともひとつが含まれていればよく、また、これらの化合物以外で、1分子中にイオウ原子との結合と窒素原子との結合を有する炭素原子を含む化合物を含むものであってもよい。またこれらの化合物を複数含むものであってもよい。
アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩を構成する物質としては、例えば、炭素数8〜50のアルキルカルボン酸のリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩、炭素数8〜50のアルキルスルホン酸のリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩、炭素数8〜50のアルキル硫酸のリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩、アルキルアルコラートのリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩等が挙げられる。
なお、ここでいう「アルキル」は、直鎖、分岐、不飽和結合、シクロ環、芳香環、複素環、アミノ基、エーテル基、ヒドロキシル基、アゾ基、シアノ基などの構造単位あるいは置換基を持つものも含む。また、上記の各化合物以外でも、分子内にアルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩を有していれば、本発明の潤滑剤における必須成分とするところのアルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩を構成する物質となり得る。また、これらの物質は、中性のものでもよく、過塩基性のものでもよい。
これらのアルカリ金属又は、アルカリ土類金属の塩の中で、好ましいものとしては炭素数8〜50のアルキルカルボン酸の塩であり、より好ましくは炭素数8〜50の脂肪酸の塩であり、さらに好ましくは炭素数8〜32の脂肪酸の塩である。これらの脂肪酸塩は他の塩類に比較して、加工物表面への吸着力に優れ、本発明の潤滑剤組成物の効果を最も良好に引き出すことができる。
本発明の組成物中にワックス成分を含むことにより、本発明における塑性加工用水系潤滑剤組成物の性能を向上させることができる。ワックス成分は上記脂肪酸塩と同様に、加工物表面に潤滑性皮膜を形成する潤滑剤、潤滑助剤として機能する。
ワックスとしては、構造や種類を特定するものではないが天然ワックス又は合成ワックスを使用するのが好ましい。ワックス成分は塑性加工時に発生する熱により融解し皮膜の滑り性を良くするために添加する。そのため加工初期に効果を発揮するように、軟化点が60℃以上で、さらに系中で安定なものが望ましい。
具体的には、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレン、酸化ポリエチレン、ポリエチレンワックス、ポリプロピレン、酸化ポリプロピレン、ポリプロピレンワックス、カルナウバワックス、モンタンワックス等を挙げることができる。本発明でワックスとは、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂も含むものとする。これらは水ディスパージョンや水エマルジョンの形態で他成分と混合して本発明の塑性加工用水系潤滑剤組成物に含有させるのが良い。
本発明の組成物中に樹脂成分を含むことにより、本発明における塑性加工用水系潤滑剤組成物の性能を向上させることができる。樹脂成分は、潤滑剤を基材表面により強固に付着させるバインダー、又は焼付き防止剤として機能する。
樹脂成分としては、本発明の塑性加工用水系潤滑剤組成物の性能を大きく低下させるものでなければ特に支障なく使用することができる。例えば、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリフッ化エチレン樹脂等が挙げられる。これらは、水溶性又は水分散性のどちらでも使用できるが、使用目的により選択するのが好ましい。例えば、塑性加工後に脱膜が必要な場合は水溶性合成樹脂を、耐水性が必要であれば水分散性合成樹脂を選択することができる。本発明で使用する合成樹脂は本発明組成物中に溶解しているか乳化・分散した状態で存在している。乳化・分散のため必要に応じ公知の界面活性剤を用いることができる。
アクリル系樹脂はアクリル系モノマーの少なくとも一種を重合して得られるものが挙げられる。アクリル系モノマーとしては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルアクリレート等のアルキル(C=1〜8)(メタ)アクリレート;メトキシメチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、エトキシメチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、メトキシメチルメタクリレート、メトキシエチルメタクリレート、エトキシメチルメタクリレート、エトキシエチルメタクリレート、メトキシブチルアクリレート等の低級アルコキシ低級アルキル(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシ低級アルキル(メタ)アクリレート;アクリルアミド、メタクリルアミド;N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルメタクリルアミド等のN−非置換もしくは置換(特に低級アルコキシ置換)メチロール基を有する(メタ)アクリルアミド;ホスホニルオキシメチルアクリレート、ホスホニルオキシエチルアクリレート、ホスホニルオキシプロピルアクリレート、ホスホニルオキシメチルメタクリレート、ホスホニルオキシエチルメタクリレート、ホスホニルオキシプロピルメタクリレート等のホスホニルオキシ低級アルキル(メタ)アクリレート;アクリロニトリル;アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。本発明においては、アクリル系樹脂は、上記のごときアクリル系モノマーの少なくとも一種とスチレン、メチルスチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、ビニルトルエン、エチレン等の他のエチレン性モノマーの少なくとも一種との共重合体であってアクリル系モノマー単位を30モル%以上含有するものをも包含するものとする。
ウレタン樹脂は、ウレタン結合(NHCOO)を有する合成樹脂であり、ウレタン樹脂としては、一般にイソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート化合物と活性水素基を2個以上有するポリオールとの重付加反応によって得られるものを用いることができる。かかるポリオールとしてはポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオールが挙げられる。ポリエステルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、3−メチルペンタンジオール、ヘキサメチレングリコール、水添ビスフェノールA、トリメチロールプロパン、グリセリン等の低分子量のポリオールと、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバチン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、テトラヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸等の多塩基酸との反応によって得られる末端に水酸基を有するポリエステル化合物が挙げられる。
また、ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、3−メチルペンタンジオール、ヘキサメチレングリコール、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、トリメチロールプロパン、グリセリン等の低分子量のポリオール又はこれらのエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド高付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン/プロピレングリコール等のポリエーテルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリブタジエンポリオール等が挙げられる。
また、ポリイソシアネートとしては、脂肪族、脂環式及び芳香族ポリイソシアネートが挙げられ、具体的には、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートエステル、水添キシリレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4´−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4´−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、3,3´−ジメトキシ−4,4´−ビフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
ポリエステル樹脂は、エステル結合(COO)を有する合成樹脂であり、ポリエステル樹脂としては、一般にカルボキシル基を2個以上有する多塩基酸とヒドロキシル基を2個以上有するポリオールとの縮合反応によって得られるものを用いることができる。かかる多塩基酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバチン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、テトラヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸等が挙げられる。一方、ポリオールとしてはポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオールが挙げられる。ポリエステルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、3−メチルペンタンジオール、ヘキサメチレングリコール、水添ビスフェノールA、トリメチロールプロパン、グリセリン等の低分子量のポリオール等が挙げられる。また、ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、3−メチルペンタンジオール、ヘキサメチレングリコール、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、トリメチロールプロパン、グリセリン等の低分子量のポリオール又はこれらのエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド高付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン/プロピレングリコール等のポリエーテルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリブタジエンポリオール等が挙げられる
酢酸ビニル樹脂は酢酸ビニルの重合によって得られる。本発明では酢酸ビニル樹脂はポリ酢酸ビニル樹脂中の酢酸ビニル単位が50%未満加水分解されたものも包含するものとする。また本発明で酢酸ビニル樹脂は酢酸ビニルとエチレンとの共重合体(酢酸ビニル単位50モル%以上)も包含するものとする。
ポリビニルアルコール樹脂はポリ酢酸ビニルを加水分解して製造されるが、完全加水分解物のみならず50%以上の加水分解度のものも使用可能である。本発明でポリビニルアルコール樹脂は50モル%以上のビニルアルコール単位とエチレン単位からなる共重合体も含むものとする。
ポリビニルピロリドン樹脂はN−ビニル−2−ピロリドンを重合して得られる。
ポリアミド樹脂は、アミド結合(CONH)を有する合成樹脂であり、ポリアミド樹脂としては、一般にカルボキシル基を2個以上有する多塩基酸とアミノ基を2個以上有するポリアミンの縮合反応によって得られるものを用いることができる。かかる多塩基酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバチン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、テトラヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸等が挙げられる。一方、ポリアミンとしては、ヒドラジン、メチレンジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサンジアミン、エチルアミノエチルアミン、メチルアミノプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、ジアミノベンゼン、トリアミノベンゼン、ジアミノエチルベンゼン、トリアミノエチルベンゼン、ジアミノエチルベンゼン、トリアミノエチルベンゼン、ポリアミノナフタレン、ポリアミノエチルナフタレン、及びそれらのNアルキル誘導体、Nアシル誘導体等が挙げられる。
フェノール樹脂としては、フェノール、クレゾール、キシレノール等のフェノール類の少なくとも一種とホルムアルデヒドとの反応によって得られるものが挙げられ、ノボラック型樹脂、レゾール型樹脂のいずれであっても良い。ノボラック型樹脂を使用する場合には硬化剤としてヘキサメチレンテトラミン等を共存させる必要がある。フェノール樹脂皮膜は後述の乾燥工程で硬化する。フェノール樹脂の分子量については特に制限はない。
エポキシ樹脂としては、ビスフェノール類、特にビスフェノールA(2,2−ビス(4´−ヒドロキシフェニル)プロパン)とエピクロルヒドリンとを反応させて得られる、ビスフェノール型エポキシ樹脂、特にビスフェノールA型エポキシ樹脂をまず挙げることができる。他の例として、フェノールノボラック樹脂のフェノール性水酸基をグリシジルエーテル化したノボラック型エポキシ樹脂、芳香族カルボン酸のグリシジルエステル、エチレン性不飽和化合物の二重結合を過酸でエポキシ化した過酸エポキシ型等を挙げることができる。さらに、上記のごときエポキシ樹脂の樹脂骨格にエチレンオキシド又はプロピレンオキシドを付加したもの、多価アルコールのグリシジルエーテル型等も挙げることができる。これらの中でビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いるのがもっとも好ましい。
ポリフッ化エチレン樹脂は分子中にフッ素を含有する樹脂を指し、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル等が挙げられる。
また、これらの各樹脂原料あるいは1分子内に複数の異なる置換基を有する原料を組み合わせて得られる複合樹脂についても使用することができる。
これらの各種樹脂は、市販のものを用いることはもちろん可能であり、その場合、一般に各種樹脂が水溶性の場合、水溶液として入手することができ、不水溶性の場合、後述する界面活性剤で水に分散させた分散液として入手することができる。
A1及び/又はA2成分、B成分、ワックス、並びに樹脂を分散又は乳化させるために界面活性剤が必要な場合、かかる界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤及び陽イオン性界面活性剤のいずれをも用いることができる。非イオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン(エチレン及び/又はプロピレン)アルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール(もしくはエチレンオキシド)と高級脂肪酸(例えば炭素数12〜18)とから構成されるポリオキシエチレンアルキルエステル、ソルビタンとポリエチレングリコールと高級脂肪酸(例えば炭素数12〜18)とから構成されるポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル等が挙げられる。陰イオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば脂肪酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、リン酸エステル塩、ジチオリン酸エステル塩等が挙げられる。両性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えばアミノ酸型及びベタイン型のカルボン酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、リン酸エステル塩等が挙げられる。陽イオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば脂肪族アミン塩、第四級アンモニウム塩等が挙げられる。これらの界面活性剤は各単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
本発明の塑性加工用水系潤滑剤組成物の製造方法については、製造された潤滑剤組成物が上述の条件を満足していれば特に制限されない。例えば、A1成分にB成分を加えて良く撹拌後、任意成分としてのワックス、樹脂を、必要に応じ界面活性剤及び水を用いて分散液又は乳化液とした後、添加して撹拌することにより製造することができる。
本発明の潤滑剤組成物には上記の各成分以外にも、一般的な塑性加工油剤に添加されている添加剤であれば特に支障なく各種の添加剤、例えば、pH調整剤、粘度調整剤、防腐剤、消泡剤、着色剤などを添加することができる。また、必要に応じて他の極圧添加剤、油性剤等の潤滑剤を併用しても差し支えない。
本発明の潤滑剤組成物を使用する場合、組成物を水に懸濁ないし分散させた液を金属素材表面と金属型の成形面の少なくとも一方に塗布することにより、塗布された表面に潤滑膜が形成される。懸濁ないし分散のため必要に応じ、公知の界面活性剤や後述する樹脂の中で水溶性の樹脂、あるいは、分散剤として市販されているものを用いることができる。形成された潤滑膜は表面に良くなじみ、金属素材の塑性加工中に容易なことでは表面から剥離しない。また良好な潤滑性を有し、素材と型が焼き付いてしまうことを効果的に予防する。本発明の潤滑剤組成物を塗布するに先立って、加工する金属材料を脱脂(通常アルカリ脱脂剤を使用することができる。)、水洗、酸洗(金属材料の酸化スケールを除去し、皮膜の密着性を高めるために塩酸等を用いて行う。)、水洗の順に前処理することによって、表面を清浄にしておくことが好結果を得るために好ましい。酸化スケールが付着していない場合に、酸洗及び水洗の工程は省略してもよい。これらの前処理は常法により行えば良い。さらにまた、この潤滑剤組成物は特別な管理を必要とせず、リサイクルが可能であり、通常管理は使用により減少した消耗分を補充するだけでよい。塗布の方法には種々の方法を用いることができ、たとえば、素材の表面に塗布する場合、素材を潤滑剤組成物中に浸漬したり、ブラシで塗ったり、スプレー、流しかけなどの任意の方法を採用することができる。また、型の成形面に塗布する場合には、ブラシによる塗布、スプレー、流しかけするなどの方法を採用することができる。塗布は金属表面が潤滑剤組成物で十分に覆われれば良く、塗布する時間に特に制限はない。塗布後、潤滑剤組成物を乾燥する必要がある。素材や型を放置して潤滑剤組成物を自然乾燥させてもよいが、必要に応じて強制乾燥させても良い。強制乾燥させる場合、熱風を当てる方法、素材や型を余熱しておく方法、高周波加熱して乾燥させる方法など任意の方法を採用することができる。通常60〜150℃で10〜60分行うのが好適である。本発明にかかる潤滑剤組成物の塗布乾燥後の皮膜重量は、焼付きを防ぐ観点から1g/m以上であるのが好ましい。またコスト面からは、30g/m以下であるのが好ましい。従って、皮膜重量として、1〜30g/mが好ましく、3〜20g/mであるのがより好ましく、5〜15g/mであるのがさらに一層好ましい。
上記に説明した潤滑剤組成物は、主として鉄、鋼、及び鉄合金に対して使用するが、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、銅、真鍮などの非鉄金属に対して使用することもできる。金属材料の形状については特に限定されるものでなく、棒材やブロック材等の素材だけでなく、熱間鍛造後の形状物(ギヤやシャフト等)の加工にも適用可能である。
本発明の塑性加工用水系潤滑剤組成物による潤滑機構は以下のように考えられる。まず、加工初期は、B成分(化合物B)の油性剤的な働きにより潤滑性を発揮する。さらに加工が進み、極圧状態になるとA1成分又はA2成分(化合物A1又はA2)は、トライボ反応によって分解してイオウラジカルを生成する。このイオウラジカルは反応性に富んでおり、金属表面と迅速に反応して潤滑効果を有する硫化金属を生成する。このようにして本発明の塑性加工用水系潤滑剤組成物は良好な潤滑作用をもたらす。
本発明の実施例(実施例1〜57)を比較例(比較例1〜5)と共に挙げ、その効果をより具体的に説明する。
<1> 潤滑剤組成物試料の調整
表1〜6に示す各成分の配合で実施例1〜57、及び比較例1〜3の塑性加工用水系潤滑剤組成物を調製した。調製は化合物(A1又はA2成分)、脂肪酸の金属塩(B成分)、界面活性剤(ノニオン系を1重量%)を水(イオン交換水)に投入し良く撹拌して行った。必要に応じて水溶性無機塩、ワックス、樹脂等を加えた。
表1〜6に記載された各成分の詳細を以下に示す。
化1:化学式1
化2−1:化学式2、x=2
化2−2:化学式2、x=4
化3−1:化学式3、R、R=CH
化3−2:化学式3、R、R=C
化4−1:化学式4、x=1
化4−2:化学式4、x=2
化5−1:化学式5、R=(CH
化5−2:化学式5、R=C11
化6:化学式6
化7−1:化学式7、R、R=CH、M=Na
化7−2:化学式7、R、R=CH、M=1/2Ca
化7−3:化学式7、R、R=CCH、M=Na
化7−4:化学式7、R=C、R=C、M=1/2Ca
化8−1:化学式8、R=H、R=C10NH
化8−2:化学式8、R=CH、R=CHNH
化9−1:化学式9、R〜R=CH、x=1
化9−2:化学式9、R〜R=CH(CHCH(C)CH、x=2
化9−3:化学式9、R〜R=C、x=4
化10−1:化学式10、x=1
化10−2:化学式10、x=4
化11−1:化学式11、R=H、R〜R=CH
化11−2:化学式11、R、R=H、R、R=C
化11−3:化学式11、R=H、R〜R=C
化12:化学式12
化13−1:化学式13、R=C1837、R=C、x=1
化13−2:化学式13、R=CH、R=C、x=4
化13−3:化学式13、R=C、R=C、x=4
化14:化学式14
ワックス1:パラフィンワックス(軟化点60°C)を界面活性剤で乳化したもの(ワックス濃度20%)
ワックス2:酸化ポリエチレン(軟化点136℃)を界面活性剤で乳化したもの(ワックス濃度20重量%)
ワックス3:高密度ポリエチレン樹脂パウダー。
アクリル樹脂1:アクリル酸、メタクリル酸メチル、アクリル酸n−ブチルを乳化重合により共重合させた物に水酸化ナトリウムを加え、水に可溶化させたもの(樹脂分20重量%)。分子量2万、使用界面活性剤はアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム。
アクリル樹脂2:メタアクリル酸、メタクリル酸メチル、アクリル酸n−ブチル、スチレンを乳化重合により共重合させた物(樹脂分25重量%)。分子量40万、使用界面活性剤アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムとポリオキシエチレンアルキルエーテル。
ウレタン樹脂:ウレタン樹脂ディスパーション(樹脂分25重量%)。
ポリエステル樹脂:ポリエチレンテレフタレートのパウダー(粒度200mesh以下)
酢酸ビニル樹脂1:乳化重合でPVAを保護コロイドとし、酢酸ビニルを重合させたもの(不揮発分20%)。
酢酸ビニル樹脂2:エチレンと酢酸ビニルを共重合させたもの(不揮発分50%)。
ポリビニルアルコール:完全ケン化したもの。
ポリアミド樹脂:ナイロン6のパウダー(粒度200mesh以下)
フェノール樹脂:フェノールノボラックをアミノ化し水溶化したもの。
エポキシ樹脂:常温硬化型。
ポリフッ化エチレン樹脂:ポリフッ化エチレン樹脂サスペンション(樹脂分53重量%)。
塑性加工油:ユシロンフォーマーCF6000、ユシロ化学工業製。
化成処理被膜:リン酸亜鉛処理後、ステアリン酸ナトリウムで処理した被膜。
<2> 試験片の前処理
試験片ビレット(S45C球状化焼鈍材で、形状は、穴内径16.6mm、外径29.8mm、長さ50mmの円筒部材)に、以下の前処理工程(1)〜(3)を行った。
(1)アルカリ脱脂:(ユシロ化学工業製、アルカリ脱脂剤「ユシロクリーナーW−71」、濃度20g/L、温度60℃、浸漬10分)
(2)水洗 常温の水道水スプレー 30秒
(3)水洗 常温の水道水スプレー 30秒
<3> 塑性加工用水系潤滑剤組成物の塗布
上記前処理の後、試験片ビレットを各塑性加工用水系潤滑剤組成物試料に30秒浸漬した。その後、80℃に保持されたオーブン内に30分放置し、完全に乾燥させてから以下に示すボール通し試験に供した。
<4> ボール通し試験
ボール通し試験は、図1に示すように試験片ビレットの穴の径より大きい径を有する鉄球(SUJ2、径19.05mm)を強制的に試験片ビレットの穴に通して試験片ビレットを塑性変形させる試験である。試験片ビレット及びボール(鉄球)を図2に示す。本試験では、試験片ビレットを塑性変形させる際に必要とされた荷重を測定し、かつ試験片ビレットの内径の表面性状から潤滑性能を評価した。ボール通し試験時の荷重が低いほど、また、表面性状の焼付きが生じないか、あるいは生じてもその長さが短いほどよく潤滑されているものとして評価した。
<5> 試験結果
以上のボール通し試験の結果を表1〜6に示す。表1〜6から明らかなように、本発明の金属材料の塑性加工用水系潤滑剤組成物を用いた実施例1〜57は、比較例5の塑性加工油に比べ優れた潤滑性を発揮し、比較例4の化成処理皮膜(リン酸塩被膜)と同等もしくは、それ以上の潤滑性を示すことが分かる。他方、本発明の塑性加工用水系潤滑剤組成物としての構成要件を満たさない比較例1〜3では、比較例4の化成処理被膜より明らかに劣る潤滑性であり、潤滑性を満足するものではない。
Figure 2008075094
Figure 2008075094
Figure 2008075094
Figure 2008075094
Figure 2008075094
Figure 2008075094
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態・実施例に限定されるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う塑性加工用水系潤滑剤組成物もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
ボール通し試験機を示す図である。 試験片ビレットとボールとを示す図である。

Claims (5)

  1. 1分子中にイオウ原子との結合と窒素原子との結合を有する炭素原子を含む化合物(A1)、のうちの一種以上(A1成分)と、アルカリ金属の塩及び/又はアルカリ土類金属の塩(B成分)と、を含有し、元素成分として、遷移金属、スズ(Sn)、鉛(Pb)、ホウ素(B)、リン(P)を含まないことを特徴とする塑性加工用水系潤滑剤組成物。
  2. 前記化合物(A1)は、下記化学式(1〜11)で表される化合物のうちのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の塑性加工用水系潤滑剤組成物。
    Figure 2008075094
    Figure 2008075094
    化学式2においてxは1〜6の整数を示す。
    Figure 2008075094
    化学式3においてRは炭素数1〜5のアルキル基、Rは炭素数1〜5のアルキル基を示す。
    Figure 2008075094
    化学式4においてxは1〜6の整数を示す。
    Figure 2008075094
    化学式5においてRは炭素数1〜5のアルキル基又はシクロヘキシル基を示す。
    Figure 2008075094
    Figure 2008075094
    化学式7においてR及びRは、炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基、又はベンジル基を示し、MはNa、K、又は1/2Caを示す。
    Figure 2008075094
    化学式8においてRは水素又はメチル基、Rは、ピペリジン、又はメチルピペラジンを示す。
    Figure 2008075094
    化学式9においてR〜Rは炭素数1〜6のアルキル基又はCH(CHCH(C)CHを示し、xは1〜6の整数を示す。
    Figure 2008075094
    化学式10においてxは1〜6の整数を示す。
    Figure 2008075094
    化学式11においてR及びRは水素又は炭素数1〜3のアルキル基、R及びRは炭素数1〜3のアルキル基又はフェニル基を示す。
  3. アルカリ金属の塩、又はアルカリ土類金属の塩が炭素数8〜50のアルキルカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも1つのアルキルカルボン酸の塩であり、A1成分に対し、10〜200重量%の割合で含まれる請求項1又は2に記載の塑性加工用水系潤滑剤組成物。
  4. 軟化点が60℃以上のワックスを含有する請求項1〜3のいずれかに記載の塑性加工用水系潤滑剤組成物。
  5. (メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、及びポリフッ化エチレン樹脂のうち、少なくとも1の樹脂が添加されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の塑性加工用水系潤滑剤組成物。
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