JP2008070686A - 定着装置及び画像形成装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】目標制御温度に対して定着温度の温度リップルが小さく、フリッカー現象が抑止されるとともに、定着温度の落ち込みが生じない、定着装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】トナー像Tを溶融して記録媒体Pに定着する定着部材21と、定着部材21の温度を検知する温度検知手段40と、温度検知手段40の検知結果に基づいて定められる通電時間だけ交流電圧が印加されて定着部材21を加熱するヒータ25と、を備える。ヒータ25は、交流電圧の印加が開始されるときには通電のデューティが漸増されて交流電圧の印加が停止されるときには通電のデューティが漸減されるように位相制御されるとともに、その位相制御によって減ぜられる通電量に相当する時間が全体の通電時間に加算されるように補正制御される。
【選択図】図2

Description

この発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、又は、それらの複合機等の電子写真方式を用いた画像形成装置とそこに設置される定着装置とに関し、特に、ヒータへの通電のデューティを変化させる位相制御方式を用いた定着装置及び画像形成装置に関するものである。
従来から、複写機、プリンタ等の画像形成装置では、定着装置における定着部材(加熱手段)の温度を狙いの温度に維持して安定した定着性を確保するために、温度検知手段(温度検出手段)によって検知した定着部材の温度に基づいて、定着部材を加熱するヒータをオン・オフ制御する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。具体的に、温度検知手段による検知温度が目標制御温度よりも低い場合にはヒータへの通電をオンして、温度検知手段による検知温度が目標制御温度よりも高い場合にはヒータへの通電をオフしている。このような温度制御方式を、オン・オフ制御方式という。
このようなオン・オフ制御方式を用いた定着装置は、そのままでは目標制御温度に対する温度リップルが大きくなってしまうために、制御アルゴリズムに比例(Proportional)、積分(Integral)、微分(Differential)を組み合わせて検知温度と目標制御温度との偏差に応じて複数のパラメータを最適化するPID制御がおこなわれる(例えば、特許文献1参照。)。PID制御では、制御周期(通電時間)を演算している。
しかし、PID制御をおこなうと、ヒータ(画像形成装置)が接続された商用電源において電圧降下が発生して、同じ電源ラインに接続された他の機器にフリッカー現象が生じる不具合が知られている(例えば、特許文献1参照。)。これは、定着装置に設置されるヒータがハロゲンヒータ等のように消費電力が大きなものであって、ヒータの点灯時に大きな突入電流が流れることによる。特に、PID制御において、高精度化のために制御周期を短くしてしまうと、その制御周期ごとに突入電流が発生して、フリッカー現象が無視できないものになってしまう。
このような問題を解決するために、特許文献2、特許文献3等には、ヒータへの通電のデューティを変化させる位相制御方式を用いた定着装置が開示されている。位相制御方式は、交流電源からヒータに印加される交流電圧におけるゼロクロスポイントにおいてヒータを点灯(又は消灯)させて通電のデューティ(位相角)を変化させるものである。詳しくは、ヒータへの交流電圧の印加が開始されるときに通電のデューティが漸増されて(ソフトスタートされて)、その後に通電のデューティが100%に制御されて(フル点灯されて)、交流電圧の印加が停止されるときに通電のデューティが100%から漸減される(ソフトストップされる。)。これにより、ヒータをPID制御しても、制御周期ごとに突入電流が発生する不具合が軽減されることになる。
一方、特許文献4等には、定着温度制御をおこなう際の電源周波数の取得時間を短縮することを目的として、省エネルギーモードからの復帰時に電源周波数の判定結果を位相制御による温度制御に利用する見込み温度制御処理をおこなう技術が開示されている。
特許第3746913号公報 特開平11−161098号公報 特開2000−29348号公報 特開2005−31242号公報
上述した従来の定着装置は、フリッカー現象を抑止するために位相制御方式(ソフトスタート及びソフトストップ)を用いたときに、ヒータを通電するデューティとヒータ発熱量との線形が維持できなくなって、ヒータの通電時間が短くなり定着温度の落ち込みが生じてしまっていた。
すなわち、位相制御方式を用いた定着装置では、通電のデューティが100%に達しない状態でのソフトスタート及びソフトストップがおこなわれるために、その分だけデューティが100%の状態で通電される時間が少なくなってしまう。
このような現象は、ソフトスタート及びソフトストップがおこなわれる時間に対して長い制御周期(通電時間)が設定される場合には、目標制御温度に対して定着温度が大きく落ち込むまでの問題にはなりにくい。
しかし、ウォームアップタイムの短縮化と省エネルギー化を達成するために低熱容量化された近年の定着装置では、制御周期を短く設定する必要があるために、制御周期に対してソフトスタート及びソフトストップがおこなわれる時間が長くなっていた。そのため、ヒータを通電するデューティとヒータ発熱量との線形が維持できなくなって、定着温度の落ち込みによる定着不良が生じてしまっていた。
一方、上述した特許文献4等の技術は、省エネルギーモードからの復帰時に電源周波数の判定結果を位相制御による温度制御に利用して、定着温度制御をおこなう際の電源周波数の取得時間を短縮するものであって、上述した問題を解決する効果は期待できない。
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、目標制御温度に対して定着温度の温度リップルが小さく、フリッカー現象が抑止されるとともに、定着温度の落ち込みが生じない、定着装置及び画像形成装置を提供することにある。
この発明の請求項1記載の発明にかかる定着装置は、トナー像を溶融して記録媒体に定着する定着部材と、前記定着部材の温度を検知する温度検知手段と、前記温度検知手段の検知結果に基づいて定められる通電時間だけ交流電圧が印加されて前記定着部材を加熱するヒータと、を備え、前記ヒータは、前記交流電圧の印加が開始されるときには通電のデューティが漸増されて前記交流電圧の印加が停止されるときには通電のデューティが漸減されるように位相制御されるとともに、その位相制御によって減ぜられる通電量に相当する時間が前記通電時間に加算されるように補正制御されるものである。
また、請求項2記載の発明にかかる定着装置は、前記請求項1記載の発明において、前記位相制御によって減ぜられる通電量に相当する時間は、通電のデューティが100%のときの通電時間に換算されて前記通電時間に加算されるものである。
また、請求項3記載の発明にかかる定着装置は、前記請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記位相制御は、前記交流電圧のゼロクロスポイントにおける通電のオン・オフによっておこなわれるものである。
また、請求項4記載の発明にかかる定着装置は、前記請求項1〜請求項3のいずれかに記載の発明において、前記ヒータは、PIDコントローラ、PIコントローラ、I−PDコントローラ、I−Pコントローラ、PI−Dコントローラのいずれかによって制御されるものである。
また、請求項5記載の発明にかかる定着装置は、前記請求項1〜請求項4のいずれかに記載の発明において、前記定着部材は、加圧部材に当接して記録媒体が搬送されるニップ部を形成する定着ローラであって、前記ヒータは、前記定着ローラに内設されたものである。
また、請求項6記載の発明にかかる定着装置は、前記請求項1〜請求項4のいずれかに記載の発明において、前記定着部材は、複数のローラ部材に張架されるとともに加圧部材に当接して記録媒体が搬送されるニップ部を形成する定着ベルトであって、前記ヒータは、前記複数のローラ部材のうち少なくとも1つのローラ部材に内設されたものである。
また、この発明の請求項7記載の発明にかかる画像形成装置は、請求項1〜請求項6のいずれかに記載の定着装置を備えたものである。
本発明は、位相制御によって減ぜられる通電量に相当する時間が全体の通電時間に加算されるようにヒータを補正制御しているために、目標制御温度に対して定着温度の温度リップルが小さく、フリッカー現象が抑止されるとともに、定着温度の落ち込みが生じない、定着装置及び画像形成装置を提供することができる。
実施の形態.
以下、この発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
まず、図1にて、画像形成装置全体の構成・動作について説明する。
図1において、1は画像形成装置としての複写機の装置本体、2は原稿Dの画像情報を光学的に読み込む原稿読込部、3は原稿読込部2で読み込んだ画像情報に基いた露光光Lを感光体ドラム5上に照射する露光部、4は感光体ドラム5上にトナー像(画像)を形成する作像部、7は感光体ドラム5上に形成されたトナー像を記録媒体Pに転写する転写部、10はセットされた原稿Dを原稿読込部2に搬送する原稿搬送部、12〜14は転写紙等の記録媒体Pが収納された給紙部、20は記録媒体P上の未定着画像を定着する定着装置、21は定着装置20に設置された定着部材としての定着ローラ、31は定着装置20に設置された加圧部材としての加圧ローラ、を示す。
図1を参照して、画像形成装置における、通常の画像形成時の動作について説明する。
まず、原稿Dは、原稿搬送部10の搬送ローラによって、原稿台から図中の矢印方向に搬送されて、原稿読込部2上を通過する。このとき、原稿読込部2では、上方を通過する原稿Dの画像情報が光学的に読み取られる。
そして、原稿読込部2で読み取られた光学的な画像情報は、電気信号に変換された後に、露光部3(書込部)に送信される。そして、露光部3からは、その電気信号の画像情報に基づいたレーザ光等の露光光Lが、作像部4の感光体ドラム5上に向けて発せられる。
一方、作像部4において、感光体ドラム5は図中の時計方向に回転しており、所定の作像プロセス(帯電工程、露光工程、現像工程)を経て、感光体ドラム5上に画像情報に対応した画像(トナー像)が形成される。
その後、感光体ドラム5上に形成された画像は、転写部7で、レジストローラにより搬送された記録媒体P上に転写される。
一方、転写部7に搬送される記録媒体Pは、次のように動作する。
まず、画像形成装置本体1の複数の給紙部12、13、14のうち、1つの給紙部が自動又は手動で選択される(例えば、最上段の給紙部12が選択されたものとする。)。
そして、給紙部12に収納された記録媒体Pの最上方の1枚が、搬送経路Kの位置に向けて搬送される。
その後、記録媒体Pは、搬送経路Kを通過してレジストローラの位置に達する。そして、レジストローラの位置に達した記録媒体Pは、感光体ドラム5上に形成された画像と位置合わせをするためにタイミングを合わせて、転写部7に向けて搬送される。
そして、転写工程後の記録媒体Pは、転写部7の位置を通過した後に、搬送経路を経て定着装置20に達する。定着装置20に達した記録媒体Pは、定着ローラ21と加圧ローラ31との間に送入されて、定着ローラ21から受ける熱と双方のローラ21、24から受ける圧力とによって画像が定着される。画像が定着された記録媒体Pは、定着ローラ21と加圧ローラ31との間(ニップ部である。)から送出された後に、画像形成装置本体1から排出される。
こうして、一連の画像形成プロセスが完了する。
次に、図2にて、画像形成装置本体1に設置される定着装置20の構成・動作について詳述する。
図2に示すように、定着装置20は、定着ローラ21、加圧ローラ31、温度センサ40、ガイド板35、分離板38、等で構成される。
ここで、定着部材としての定着ローラ21は、図2中の矢印方向に回転する薄肉の円筒体であって、その円筒体の内部にはヒータ25(熱源)が固設されている。定着ローラ21は、芯金22上に、弾性層23、離型層24が順次積層された多層構造体であって、加圧部材としての加圧ローラ31に当接してニップ部を形成する。
定着ローラ21の芯金22は、SUS304等の鉄系材料で形成されている。
また、定着ローラ21の弾性層23としては、フッ素ゴム、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム等の弾性材料が用いられる。
また、定着ローラ21の離型層24としては、PFA(4フッ化エチレンバーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、PES(ポリエーテルサルファイド)、等を用いることができる。定着ローラ21の表層に離型層24を設けることにより、トナーT(トナー像)に対する離型性(剥離性)が担保されることになる。
定着ローラ21のヒータ25は、ハロゲンヒータであって、その両端部が定着装置20の側板に固定されている。そして、装置本体1の電源部(交流電源)により出力制御されたヒータ25によって定着ローラ21が加熱されて、その表面から記録媒体P上のトナー像Tに熱が加えられる。ヒータ25の出力制御は、定着ローラ21表面に当接する温度検知手段としての温度センサ40(サーミスタ)によるローラ表面温度の検知結果に基いておこなわれる。詳しくは、温度センサ40の検知結果に基づいて定められる通電時間だけ、ヒータ25に交流電圧が印加される。このようなヒータ25の出力制御によって、定着ローラ21の温度(定着温度)を所望の温度(目標制御温度)に調整制御することができる。なお、温度検知手段としての温度センサ40は、接触型のサーミスタの他に、非接触型のサーモパイル等を用いることもできる。
なお、本実施の形態では、ヒータ25の出力制御として、フリッカー現象を抑止するために位相制御方式(ソフトスタート及びソフトストップ)が用いられ、さらにその位相制御によって減ぜられる通電量(電力)に相当する時間が全体の通電時間に加算されるように補正制御がおこなわれている。このヒータ25の制御については、後で詳しく説明する。
また、加圧ローラ31は、主として、芯金32と、芯金32の外周面に接着層を介して形成された弾性層33と、からなる。加圧ローラ31の弾性層33は、フッ素ゴム、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム等の材料で形成されている。なお、弾性層33の表層にPFA等からなる薄肉の離型層を設けることもできる。
そして、加圧ローラ31は、不図示の加圧機構によって定着ローラ21に圧接する。こうして、加圧ローラ31と定着ローラ21との間に、所望のニップ部が形成される。
定着ローラ21と加圧ローラ31との当接部(ニップ部である。)の入口側と出口側には、それぞれ、記録媒体Pの搬送を案内するガイド板35が配設されている。ガイド板35は、定着装置20の側板に固設されている。
また、定着ローラ21の外周面に対向する位置であって、ニップ部の出口側近傍には、分離板38が配設されている。分離板38は、定着工程後の記録媒体Pが定着ローラ21の回転に沿って定着ローラ21に巻き付いてしまう不具合を抑止する。
上述のように構成された定着装置20は、次のように動作する。
装置本体1の電源スイッチが投入されると、交流電源からヒータ25に交流電圧が印加(給電)されるとともに、定着ローラ21及び加圧ローラ31の図2中の矢印方向の回転駆動が開始される。
その後、給紙部12〜14から記録媒体Pが給送されて、作像部4にて記録媒体P上に未定着画像が担持される。未定着画像T(トナー像)が担持された記録媒体Pは、図2の矢印Y10方向に搬送されて、圧接状態にある定着ローラ21及び加圧ローラ31のニップ部に送入される。そして、定着ローラ21による加熱と、定着ローラ21及び加圧ローラ31の押圧力とによって、記録媒体Pの表面にトナー像Tが定着される。その後、回転する定着ローラ21及び加圧ローラ31によってそのニップ部から送出された記録媒体Pは、矢印Y11方向に搬送される。
以下、本実施の形態において特徴的な、定着温度制御(ヒータ制御)の方法について説明する。
本実施の形態における画像形成装置は、ウォームアップ時、待機時、プリント時(通紙時)に、制御回路50によって、温度検知手段としての温度センサ40で測定した定着ローラ21の温度に基づいてヒータ25をPID制御して定着ローラ21が最適の温度になるよう制御している。
図3は、その制御回路50を示すブロック図である。
図3に示すように、制御回路50にはPIDコントローラ51とPWM駆動回路52とが設置されていて、この制御回路50によってヒータ25への印加電力が制御される。
なお、本実施の形態では、制御回路50のコントローラとしてPIDコントローラ51を用いたが、その他のコントローラ(例えば、PIコントローラ、I−PDコントローラ、I−Pコントローラ、PI−Dコントローラ等である。)を用いることもできる。その場合、使用するコントローラに応じた制御設計がされて最適な印加電力の演算式が用いられることになる。対象システムに対して温度落ち込みや温度リップル等が少なく、目標制御温度に対して良好な追従性を示すコントローラを選択することが好ましい。
図3を参照して、制御回路50では、予め定められた目標制御温度と、温度センサ40によって検知された定着ローラ21の温度偏差と、の情報に基いてPIDコントローラ51が演算をおこなう。
PIDコントローラ51の演算結果は、所定の通電時間(制御周期)あたりに点灯するヒータの点灯率(デューティ)となる。そして、演算されたデューティに基いて、PWM駆動回路52を通じてヒータ25が点灯される。詳しくは、ヒータ25(ハロゲンヒータ)の両端に、制御周期あたりの定格交流電圧を印加する割合が、制御されることになる。
図4は、PID制御の一例を示すグラフである。同図は、PIDコントローラ51により制御されているときの、目標制御温度(図中、破線で示す。)、デューティ、定着ローラ温度の関係を示す。図4に示すように、通紙中は、記録媒体Pが定着ローラ21からトナー像の定着に必要な熱量を奪うために、温度リップルが大きくなる。
図5は、PIDコントローラ51にて演算されたデューティに基いてPWM駆動回路52を通じてヒータ25に印加される電圧を示すグラフである。図5において、交流電源として電圧が約100V、周波数が50Hzのものが用いられ、制御周期は500ms、デューティは10%に制御されている。図5において、制御周期内の通電時間(通電電圧)を斜線で示している。
次に、ソフトスタート及びソフトストップについて説明する。
本実施の形態ではヒータ25としてハロゲンヒータを用いているために、電圧印加時に大きな突入電流が流れる。この突入電流を低減するために、電源投入後の数10msの間は、トライアックを導通させる位相角(オン時間)を徐々に増やしていく。換言すると、ヒータ25に交流電圧の印加が開始されるときに、通電のデューティを漸増させている。このような制御をソフトスタート(位相制御)という。
ソフトスタートをおこなうことで、ヒータのオン時の電流変化を緩やかにすることができる。これにより、突入電流による急激な電源電流の変化により屋内配線での電圧変動が起こり蛍光灯や白熱電球等の屋内照明にチラツキ(フリッカー現象)が発生する不具合を軽減することができる。なお、フリッカー現象は、白熱電球のフィラメントが細い欧州(200V系)でより顕著になり、国内でも屋内配線のインピーダンスが高い場合に目立ち易くなる。
ヒータによる屋内配線での電圧変動は、ヒータのオフ時にも発生する。このため、ヒータオフ時の数msの間は位相制御により、トライアックの導通させる位相角(オン時間)を徐々に減らしていく。換言すると、ヒータ25に交流電圧の印加が停止されるときに、通電のデューティを漸減させている。このような制御をソフトストップ(位相制御)という。
このようなソフトスタート及びソフトストップは、トライアックをスイッチング素子として使うヒータ25の通電方式であって、半波内の通電位相を制御する「位相制御」である。
ソフトスタートおよびソフトストップでは、トライアックを通電する時間(位相角)をステップ状に変化させる。図6は、そのときのヒータ25への通電波形(ソフトスタート時のものである。)を示すグラフである。また、図7及び図8は、制御周期の全体のプロフィールである。
図6〜図8において、ソフトスタート及びソフトストップは、以下のような仕様にておこなわれている。
(1)「間隔(n3)」:各ステップでの半波毎の通電回数(本実施の形態では、n3が3回に設定されている。)
(2)「ステップ(n4)」:S1での位相角(デューティ)からS2での位相角の増加分(本実施の形態では、n4が30%に設定されている。)
(3)「ファースト・デューティ(d1s)」:制御周期(通電時間)内における1回目の位相角(デューティ)(本実施の形態では、d1sが20%に設定されている。)
図6は、位相制御のソフトスタート時の通電波形である。図6に示すように、位相制御は、交流電圧のゼロクロスポイントにおける通電のオン・オフによっておこなわれる。
図6に示すように、ソフトスタートをおこなっているときは、交流半波内で消灯と点灯とをおこなっているため、フル点灯しているときと比較して単位時間あたりの消費電力が異なって、単位時間あたりの発熱量も異なってしまう。図6中の斜線部が通電時の電圧である。フル点灯時の電圧積算量と、ソフトスタート時(又はソフトストップ時)の電圧積算量と、の比は次式で近似できる。
Figure 2008070686
上式から、ソフトスタート時は、同じ時間だけフル点灯したときと比べて、積算電圧が1/4になることがわかる。
図7では、制御周期が500ms、交流周波数が50Hz、制御周期内のデューティが80%に設定されている。図8では、制御周期が500ms、交流周波数が50Hz、制御周期内のデューティが40%に設定されている。
ここで、「制御周期内のデューティ」とは、制御周期内でのオン時間であって、交流の半波内でのオン時間を示す「ソフトスタート及びソフトストップにおけるデューティ(位相角)」と区別される。
図7を参照して、制御周期内のデューティが80%のとき、全体の通電時間は400ms(500ms×80%)になり、フル点灯の通電時間(フル点灯時間)は220msになり、ソフトスタートの通電時間(ソフトスタート時間)とソフトストップの通電時間(ソフトストップ時間)とはそれぞれ90msになる。
これに対して、図8を参照して、制御周期内のデューティが40%のとき、全体の通電時間は200ms(500ms×40%)になり、フル点灯時間は20msになり、ソフトスタート時間とソフトストップ時間とはそれぞれ90msになる。
このようにソフトスタート及びソフトストップのパラメータが固定される場合、制御周期内のデューティが小さければ小さいほど、ソフトスタート及びソフトストップが制御周期内の消費電力に与える影響が大きくなる。例えば、制御周期1周期内の積算電圧は、次式で表される。
Figure 2008070686
上式において、Aは交流電圧の振幅(V)である。上式より、制御周期内のデューティが80%のときの制御周期1周期内の積算電圧と、制御周期内のデューティが40%のときの制御周期1周期内の積算電圧と、の比は、48.5:8.5(5.7:1)になる。すなわち、制御周期1周期内の積算電圧と、の比は、制御周期内のデューティの比(2:1)にはならない。
したがって、入力をデューティとして出力を発熱量とした場合に、ソフトスタートやソフトストップを採用することにより、入力と出力との関係に線形性がほとんどないことになる。
本実施の形態では、位相制御をおこなう制御回路50にPIDコントローラ51等が使用されていて、実際の入出力データは入力がデューティであって、出力が温度となる。しかし、デューティとヒータの発熱量との線形性が保たないときには、デューティと温度との線形性も維持できないために、定着温度の落ち込みによる定着不良が生じてしまう可能性が大きくなる。
このような問題を解決するために、本実施の形態では、ソフトスタート及びソフトストップ(位相制御)によって減ぜられる通電量(電力)に相当する時間が、全体の通電時間に加算されるように補正制御をおこなっている。すなわち、上述した入出力の関係が可能な限り線形になるように、ソフトスタート及びソフトストップをおこなうときに減少した積算電圧の加算補正をおこなっている。
加算補正の方法としては、ソフトスタートとソフトストップとをおこなうことによりフル点灯したときと比べて減少した積算電力を、1制御周期内に加算して入力する方法を用いている。
具体的に、ソフトスタートとソフトストップとにより減少した積算電圧のフル点灯時のデューティに相当する分を、演算結果にプラスしてヒータ出力をおこなっている。すなわち、位相制御によって減ぜられる通電量は、通電のデューティが100%のときの通電時間に換算されて全体の通電時間に加算されることになる。
例えば、フル点灯時に比べて、ソフトスタート時及びソフトストップ時に減少する積算電圧量が18A(V)であったとする。これは、フル点灯時の積算電圧の90msに相当し、制御周期内のデューティの18%分に相当する。したがって、加算補正は、演算結果に補正量を加えた58%(40%+18%)を入力することになる。これにより、フル点灯時との積算電圧の比も40%となり、消費電力に対するヒータの発熱量も線形に近くなる。
式で表すと、以下のようになる。
式は、「ソフトスタートとソフトストップとをおこなっている時間」≦「制御周期×デューティ」の場合のものである。また、ソフトスタートとソフトストップとにおけるパラメータは共通とする。パラメータは、間隔n3(回)、ステップn4(%)、ステップする回数n1(回)、ファースト・デューティd1s(%)、制御周期m(ms)、周波数f(Hz)、振幅A(V)、デューティd(%)、である。
まず、ゼロクロスポイント(t=0を除く)の回数は、
2×f×m/1000
となる。
したがって、フル点灯(デューティ100%)時の積算電圧VIFは、次式で表すことができる。
Figure 2008070686
また、ソフトスタート時、ソフトストップ時の積算電圧VISは、次式で表すことができる。なお、100−(d1s+n1・n4)≦0の場合、100−(d1s+n1・n4)=0とする。
Figure 2008070686
したがって、PIDコントローラ51の演算結果に対して補正する値は、次式に上式の値VIF、VISを代入したものになる。
Figure 2008070686
なお、上式の結果は、「ソフトスタートとソフトストップとをおこなっている時間」≦「制御周期×デューティ」の場合のものであるが、「ソフトスタートとソフトストップとをおこなっている時間」>「制御周期×デューティ」の場合であっても、ソフトスタート及びソフトストップによってフル点灯時より減少した積算電力を、1制御周期内に加算して入力すればよい。
また、定着装置の実際の使用状態では、ヒータが冷えていたり温まっていたりすることによりヒータ発熱特性や、発熱量とローラ表面の温度との伝達関数に非線形成分が含まれている場合がある。すなわち、実際に制御に用いるヒーターデューティと定着ローラ表面温度との線形性が低いことがある。このような場合には、上述の演算補正を多少増減して、目標制御温度に対して温度リップルが小さくなるように適宜調整すればよい。
以上説明したように、本実施の形態のおいては、位相制御によって減ぜられる通電量(電力)に相当する時間が全体の通電時間に加算されるようにヒータ25を補正制御しているために、目標制御温度に対して定着温度の温度リップルが小さく、フリッカー現象が抑止されるとともに、定着温度の落ち込みが生じない、定着装置及び画像形成装置を提供することができる。
なお、本実施の形態では定着部材として定着ローラを用いた定着装置に対して本発明を適用したが、定着部材として定着ベルトを用いた定着装置に対しても当然に本発明を適用することができる。その場合、定着ベルトを張架・支持するローラ部材に内設されたヒータにおいて、本実施の形態で述べた位相制御及び補正制御がおこなわれることになる。これにより、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
なお、本発明が本実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、本実施の形態の中で示唆した以外にも、本実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、前記構成部材の数、位置、形状等は本実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。
この発明の実施の形態における画像形成装置を示す全体構成図である。 定着装置を示す構成図である。 定着装置を制御する制御回路を示すブロック図である。 定着ローラ温度とデューティとの経時変化を示すグラフである。 ヒータに印加される電圧を示すグラフである。 ソフトスタート時の交流電圧の波形を示す波形図である。 通電時間を400msとしたときの位相制御を示すグラフである。 通電時間を200msとしたときの位相制御を示すグラフである。
符号の説明
1 画像形成装置本体(装置本体)、
20 定着装置、
21 定着ローラ(定着部材)、
22、32 芯金、 23、33 弾性層、 24 離型層、
25 ヒータ、
31 加圧ローラ(加圧部材)、
40 温度センサ(温度検知手段)、
50 制御回路、
51 PIDコントローラ、 52 PWM駆動回路。

Claims (7)

  1. トナー像を溶融して記録媒体に定着する定着部材と、
    前記定着部材の温度を検知する温度検知手段と、
    前記温度検知手段の検知結果に基づいて定められる通電時間だけ交流電圧が印加されて前記定着部材を加熱するヒータと、を備え、
    前記ヒータは、前記交流電圧の印加が開始されるときには通電のデューティが漸増されて前記交流電圧の印加が停止されるときには通電のデューティが漸減されるように位相制御されるとともに、その位相制御によって減ぜられる通電量に相当する時間が前記通電時間に加算されるように補正制御されることを特徴とする定着装置。
  2. 前記位相制御によって減ぜられる通電量に相当する時間は、通電のデューティが100%のときの通電時間に換算されて前記通電時間に加算されることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
  3. 前記位相制御は、前記交流電圧のゼロクロスポイントにおける通電のオン・オフによっておこなわれることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の定着装置。
  4. 前記ヒータは、PIDコントローラ、PIコントローラ、I−PDコントローラ、I−Pコントローラ、PI−Dコントローラのいずれかによって制御されることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の定着装置。
  5. 前記定着部材は、加圧部材に当接して記録媒体が搬送されるニップ部を形成する定着ローラであって、
    前記ヒータは、前記定着ローラに内設されたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の定着装置。
  6. 前記定着部材は、複数のローラ部材に張架されるとともに加圧部材に当接して記録媒体が搬送されるニップ部を形成する定着ベルトであって、
    前記ヒータは、前記複数のローラ部材のうち少なくとも1つのローラ部材に内設されたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の定着装置。
  7. 請求項1〜請求項6のいずれかに記載の定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
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