JP2008067625A - 新規な食感を有する乳性飲料およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明は、3.0〜12重量%の食品タンパク質を少なくとも含んでなり、かつ、水性媒体のpH値を0.1〜1.2増加させるpH調整処理を予め行っておいた、pH調整済み食品タンパク質含有水溶液を、加熱殺菌条件下にて加熱処理することにより得られる、粘度上昇に伴う新規な食感を有する乳性飲料に関する。
【選択図】なし
Description
本発明は新規な食感(テクスチャー)を有する乳性飲料およびその製造方法に関する。
乳飲料に代表される、乳を原材料とした飲料(以下、本項では「乳飲料」と略すことがある)は、タンパク質や脂質の懸濁、乳化により若干の粘性を感じさせる食感を有する。乳飲料のこうした食感は、商品に明らかな付加価値を付与するものである。このため、かかる食感の期待できる、乳原料を豊富に使用した乳飲料は、一般的に比較的高価格で販売されている。しかしながら、乳原料自体は決して安価なものではないため、このような乳原料を豊富に使用した乳飲料を低価格で消費者に提供することは困難になりつつある。
本発明においては、乳性飲料とは、乳または豆乳(好ましくは乳)を原料とする成分を少なくとも含む飲料を意味し、生乳、脱脂粉乳等の乳または乳製品由来の成分、または豆乳または豆乳製品由来の成分を主原料として含有するものであれば特に限定されない。例えば、本発明による乳性飲料には、栄養素添加乳飲料、フレーバー乳飲料などのような、ビタミン類、カルシウムや鉄などのミネラル類を添加・強化した乳飲料、コーヒー乳飲料、フルーツ乳飲料、チョコレート乳飲料など、さらには同様のタイプの豆乳飲料、調整豆乳、大豆タンパク飲料が包含される。また、乳性飲料は、前記主原料に加えて、甘味料、酸味料、香味料、着色料および乳酸菌等の他の追加成分をさらに含んでいても良い。したがって、乳性飲料は、所謂、乳等省令で規定された「乳飲料」に限られず、発酵乳や、乳酸菌飲料等も含まれうる。
本発明による乳性飲料は、前記したように、特定量の食品タンパク質を少なくとも含んでなり、かつ、その水性媒体のpH値を予め調整しておいた、pH調整済み食品タンパク質含有水溶液を、加熱殺菌条件下にて加熱処理することにより得られるものである。
なお、本発明においては、乳タンパク質を含有する水溶液を「食品タンパク質含有水溶液」と呼ぶこととし、さらに、pHが調整された状態のものを「pH調整済み食品タンパク質含有水溶液」と呼ぶこととする。
下記表1に示した配合1a〜1dをそれぞれ用意し、これら各配合を、ホモジナイザー(三和機械社製)を用いて、圧力を150kg/cm2(1st:100kg/cm2、2nd:50kg/cm2)、流量を100L/h、温度を60℃の条件にて均質化し、乳タンパク質含有水溶液(調合乳(ミックス))を調製した。次いで、各配合の乳タンパク質含有水溶液を、プレート式殺菌機(岩井機械工業株式会社製)を用いて、流量を150L/hで加熱殺菌処理(加熱処置)を施した。
なお、本実施例および以下の実施例においては、本発明における食品タンパク質の例として、乳タンパク質を使用し検討を行った。
各配合を調製するために、脱脂粉乳[乳脂肪分 1.0重量%、無脂乳固形分 95.5重量%、および水分 3.5重量%](明治乳業株式会社製)、クリーム[乳脂肪分 47.5重量%、無脂乳固形分 4.5重量%、および水分 48.0重量%](明治乳業株式会社製)、および重曹(炭酸水素ナトリウム(食品添加物グレード))(和光純薬株式会社製)を用いた。
粘度の上昇率[%]=
(加熱処理後の試料の粘度)/(加熱処理前の試料の粘度)×100
得られた乳性飲料の粘度の上昇率は、pH調製剤の濃度および乳タンパク質の濃度の影響を受けており、3元配置分散分析により、危険率が1%で有意差があると判定された。また、結果から、pH調製剤の濃度および乳タンパク質の濃度には、乳性飲料の粘度の上昇に対して相乗効果(交互作用)のある可能性が示唆された。
各乳タンパク質含有水溶液の組成を下記表3に従って配合2a〜2eを用意し、さらに、実験の加熱処理条件として、加熱殺菌温度を140℃とし(加熱時間3秒)、かつ、殺菌圧力を5kg/cm2とした以外は、実施例1と同様にして、水溶液の均質化および加熱殺菌処理を行った。
なお、配合においては、炭酸水素ナトリウム(重曹)の濃度は0.09〜0.13重量%の範囲となるように設定したものであり、乳タンパク質の濃度は該表の配合量となるように、加える全固形分量を調整して得たものである。
乳飲料の粘度の上昇率は、乳タンパク質の濃度に影響を受け、乳タンパク質の濃度の増加に伴い、粘度の上昇率は増加した。また、乳タンパク質の濃度を所定値以上にすることで加熱殺菌処理に伴い粘度が増加することが認められた。
各乳タンパク質含有水溶液の組成を下記表5に従って配合3a〜3dを用意し、さらに、実験の加熱処理条件として、加熱殺菌温度を140℃とし(加熱時間3秒)、かつ、殺菌圧力を5kg/cm2とした以外は、実施例1と同様にして、水溶液の均質化および加熱殺菌処理を行った。
結果から、乳性飲料の粘度の上昇率は、pH調整剤によるpH調整の影響を受け、pH調整剤(重曹)の濃度を所定値以上にすることによって、加熱殺菌処理に伴って粘度を増加させることができることが分かった。
各乳タンパク質含有水溶液の組成を下記表7に従って配合4a〜4eを用いた以外は、実施例3と同様にして、水溶液の均質化および加熱殺菌処理を行った。
なおここで、pH調整剤としては、炭酸水素ナトリウムの代わりに、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、水酸化ナトリウム(NaOH)、または水酸化カリウム(KOH)を使用した。また、pH調整剤の濃度は、加熱処理前の試料のpHを6.9程度とするように、それぞれのpH調整剤で設定した。また、これにより、それぞれのpH調整剤で調製した乳性飲料のイオン強度は異なっていた。
結果から、乳性飲料の粘度の上昇率は、pH調整剤の種類に影響を受けず、また、各pH調整剤の濃度を所定値以上にすることによって、加熱殺菌処理に伴って粘度を増加させることができることが分かった。
各乳タンパク質含有水溶液の組成を下記表9に従って配合5a〜5dを用いた以外は、実施例3と同様にして、水溶液の均質化および加熱殺菌処理を行った。
使用したpH調整剤のうち、NaHCO3はアルカリ性(塩基性)であり、NaClは中性である。各配合において、pH調整剤の濃度は、各試料水溶液のイオン強度が同程度となるように、それぞれのpH調整剤で設定した。
結果から、乳性飲料の粘度を増加させる作用は、イオン強度とは関連性が低く、pHの影響が高いであろうと考えられた。
各乳タンパク質含有水溶液の組成を下記表11に従って配合6a〜6dを用いた以外は、実施例3と同様にして、水溶液の均質化および加熱殺菌処理を行った。
各配合中の乳タンパク質の濃度を同じにする一方で、乳脂肪の濃度を4.5重量%、2.3重量%、および0.1重量%とした。
乳性飲料の粘度の上昇率は、乳脂肪の濃度の影響をほとんど受けないことが認められた。粘度の上昇率の大きい試料では、食感も明らかに変化していた。このとき、脂肪を多く含む試料では、濃厚感が舌に残りやすく、より好ましい食感であった。
各乳タンパク質含有水溶液の組成を下記表13に従って同じ配合の配合7aおよび配合7bを用意し、各配合を、圧力0kg/cm2(均質化処理なし)、および、150kg/cm2(1st:100kg/cm2、2nd:50kg/cm2)、流量を100L/h、温度を60℃にて均質化処理をした以外は、実施例3と同様にして、実験を行った。
乳性飲料の粘度の上昇率は、均質化処理の有無(乳脂肪球径の違い)の影響をほとんど受けないことが認められた。乳性飲料の粘度の上昇率に対して、均質化処理(乳脂肪球径)は実質的に無関係である可能性が示唆された。
一般的に、乳飲料の粒径や遠心沈降率は、乳飲料の熱安定性(殺菌条件)に影響することが知られている。そこで、乳性飲料の粘度以外の物性を確認することを目的として、乳性飲料の粒径、遠心沈降率を検討した。
乳性飲料の粘度の上昇率と、粒径や遠心沈降率との間に相関関係は認められず、pH調整剤を所定値以上にすることで、加熱殺菌処理に伴い粒径や遠心沈降率が増加することが認められた。
乳性飲料の熱安定性をバイアルビン振盪式の熱安定性試験機(油浴槽、温度140℃)を用いて確認した。試験を以下の手順で行った。
(1) 乳性飲料のpH調整剤の濃度(pH)を変えて、各乳飲料の熱安定性を検討した。具体的には、まず、下記表16に従って配合9a〜9fの各乳タンパク質含有水溶液を用意し、各水溶液の試料をそれぞれ、透明なガラス製の小型容器(バイアルビン)に約3ml充填した。
(2) 各バイアルビンを温度140℃の油浴槽(振とう試験機)に浸漬した。この試験機は、バイアルビンを左右方向へ往復させて、油浴槽内で振とうする装置(石山科学社製、バイアルビン振盪式の熱安定性試験機)を使用した。
(3) この振盪の動作を所定時間毎に停止させながら、バイアルビンの内部を観察した。このとき、目視により凝集物を確認した時間を比較し、熱安定性を試料毎で相対的に評価した。
乳性飲料にpH調整剤を添加し、その濃度(pH)を変えても、熱安定性への悪影響はほとんど見られなかった。得られた安定性は、乳性飲料の製造工程での殺菌機の焦げ付きや流路の閉塞などを起こりにくくする上で望ましいレベルであった。
Claims (12)
- 3.0〜12重量%の食品タンパク質を少なくとも含んでなり、かつ、水性媒体のpH値を0.1〜1.2増加させるpH調整処理を予め行っておいた、pH調整済み食品タンパク質含有水溶液を、加熱殺菌条件下にて加熱処理することにより得られる、粘度上昇に伴う新規な食感を有する乳性飲料。
- 食品タンパク質が、乳タンパク質である、請求項1に記載の乳性飲料。
- 加熱処理するpH調整済み食品タンパク質含有水溶液のpH値が6.5〜8である、請求項1または2に記載の乳性飲料。
- 加熱処理が、110〜150℃で0.1秒〜15秒間の加熱により行われる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の乳性飲料。
- pH調整処理を、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、および炭酸ナトリウムからなる群より選択されるpH調整剤を添加することにより行う、請求項1〜4のいずれか一項に記載の乳性飲料。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載の乳性飲料を含んでなる、食品。
- 3.0〜12重量%の食品タンパク質を少なくとも含んでなり、かつ、水性媒体のpH値を0.1〜1.2増加させるpH調整処理を予め行っておいた、pH調整済み食品タンパク質含有水溶液を、加熱殺菌条件下にて加熱処理することによって、粘度が上昇した乳性飲料を得ることを含んでなる、粘度上昇に伴う新規な食感を有する乳性飲料の製造方法。
- 3.0〜12重量%の食品タンパク質を少なくとも含んでなる食品タンパク質含有水溶液を得て、ここにpH調整剤を加えて水溶液のpH値を0.1〜1.2増加させることによって、pH調整済み食品タンパク質含有水溶液を得る工程をさらに含んでなる、請求項7に記載の方法。
- 食品タンパク質が、乳タンパク質である、請求項7または8に記載の方法。
- 加熱処理するpH調整済み食品タンパク質含有水溶液のpH値が6.5〜8である、請求項7〜9のいずれか一項に記載の方法。
- 加熱処理が、110〜150℃で0.1秒〜15秒間の加熱により行われる、請求項7〜10のいずれか一項に記載の方法。
- pH調整処理を、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、および炭酸ナトリウムからなる群より選択されるpH調整剤を添加することにより行う、請求項7〜11のいずれか一項に記載の方法。
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