JP2008067625A - 新規な食感を有する乳性飲料およびその製造方法 - Google Patents

新規な食感を有する乳性飲料およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】乳のような素材本来が持つ性質を引き出すことによって、増粘多糖類や他の添加物を使用することなく、「ネットリ」とした食感を有する乳性飲料およびその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、3.0〜12重量%の食品タンパク質を少なくとも含んでなり、かつ、水性媒体のpH値を0.1〜1.2増加させるpH調整処理を予め行っておいた、pH調整済み食品タンパク質含有水溶液を、加熱殺菌条件下にて加熱処理することにより得られる、粘度上昇に伴う新規な食感を有する乳性飲料に関する。
【選択図】なし

Description

発明の背景
発明の分野
本発明は新規な食感(テクスチャー)を有する乳性飲料およびその製造方法に関する。
背景技術
乳飲料に代表される、乳を原材料とした飲料(以下、本項では「乳飲料」と略すことがある)は、タンパク質や脂質の懸濁、乳化により若干の粘性を感じさせる食感を有する。乳飲料のこうした食感は、商品に明らかな付加価値を付与するものである。このため、かかる食感の期待できる、乳原料を豊富に使用した乳飲料は、一般的に比較的高価格で販売されている。しかしながら、乳原料自体は決して安価なものではないため、このような乳原料を豊富に使用した乳飲料を低価格で消費者に提供することは困難になりつつある。
そこで、乳原料の使用量を増やすことなく、乳原料を豊富に使用した乳飲料と同様の食感、すなわち、若干の粘性を感じさせる食感(換言すると「ネットリとした食感」と官能的には表現できるもの)を有する乳性飲料の開発が検討されてきた。
例えば、乳性飲料の調製の際に、加糖練乳を使用する等、乳原料の選定を工夫するにより、乳性飲料に若干の粘性を付与し、その食感の改良を図ることが考えられる。しかしながら、このような原料の選定により達成できる粘性のレベルは、必ずしも満足のいくものではない。
また、カラギーナン、グアガム、ローカストビーンガム等の増粘多糖類を用いて、乳性飲料に粘性を付与し、その食感の改良を図ることが考えられる。しかしながら、このような添加物の使用は、消費者に少なからず違和感を与えることから、高付加価値の乳性飲料を提供しようとする観点からは、必ずしも充分な解決策とはいえない。
そこで、飲料中のタンパク質成分に、熱的または力学的エネルギーを負荷することにより、飲料全体の物性を変化させることが検討されている。
例えば、特表2003−535609号公報(特許文献1)には、乳製品タンパク質等の未変性タンパク質粒子を、pH5.5〜7.5の水性媒体中で、加熱条件下ホモジナイザーを使用して均質化し、タンパク質粒子の平均粒子径を0.1〜5.0ミクロン程度に増大させることによって、高カロリー油脂の代替えとなりうる口当たり性を有する可溶性タンパク質の得られることが開示されている。しかしながら、ここに開示されている方法では、加熱殺菌処理を別途さらに行う必要があり、また、得られるタンパク質含有水溶液の物性および食感は本発明者らが目指すものとは異なるものである。また、この文献では、タンパク質含有水溶液の粘度については特に検討されていない。
特表2004−518440号公報(特許文献2)には、大豆タンパク質を含む水性媒体を、そのpHを7〜7.5に調整した後、加熱処理をすることによって、高分子量の未変性タンパク質凝集物を形成させる方法が開示されている。しかしながら、ここでいうタンパク質凝集物は、ベジタリアン用肉類似物(例えばフランクフルト類似物)等において目的とする肉製品に近似する食感を得るための成分として使用されるものである。このため、その用途、さらには目的とする物性および食感は、本発明者らの目指すものとは全く異質なものである。
また、特開2005−185132号公報(特許文献3)には、安定剤としてペクチンとアラビアガムとクエン酸塩とを併用することにより、pHを4.6〜5.4(弱酸性)として加熱してもタンパク質が凝集しない、低粘度の乳性飲料が記載されている。しかしながら、この飲料は、前述のように安定剤のような添加剤を使用するものであり、また、タンパク質の凝集が起きないため、粘度も低いとされており、本発明者らが目指すものとは異なるものである。
したがって、乳のような原料の使用量を抑えつつ、かつ、増粘剤等の添加物を使用することなく、「ネットリ」とした食感を有する乳性飲料を得ることが依然として求められていると言える。
特表2003−535609号公報 特表2004−518440号公報 特開2005−185132号公報
発明の概要
本発明者らは今般、乳タンパク質を3.0%以上含むミックス(調合乳)を、重曹などのpH調整剤を用いてpH値が上昇するようにpH調整し、これを加熱処理することで、これまでにない特徴的な食感(テクスチャー)と濃厚感(コク)を呈する乳飲料製品が得られることを見出した。このとき、乳性飲料の粘度の大幅な上昇が実際に見られ、乳性飲料中のタンパク質成分は、10μm程度の巨大粒子を多く形成していることが分かった。さらに、この加熱処理された乳タンパク質は、凝集した固形物となっているにも拘わらず、加熱殺菌機の伝熱面等へ付着しにくいものであり、耐熱性に優れる(熱安定性の良い)ものであった。本発明は、かかる知見に基づくものである。
よって、本発明は、乳のような(乳状の)素材本来が持つ性質を引き出すことによって、増粘多糖類や他の添加物を使用することなく、若干の粘性を感じさせる「ネットリ」とした食感を有する乳性飲料およびその製造方法を提供することをその目的とする。
本発明による乳性飲料は、3.0〜12重量%の食品タンパク質を少なくとも含んでなり、かつ、水性媒体のpH値を0.1〜1.2増加させるpH調整処理を予め行っておいた、pH調整済み食品タンパク質含有水溶液を、加熱殺菌条件下にて加熱処理することにより得られるものである。
また、本発明による粘度上昇に伴う新規な食感を有する乳性飲料の製造方法は、3.0〜12重量%の食品タンパク質を少なくとも含んでなり、かつ、水性媒体のpH値を0.1〜1.2増加させるpH調整処理を予め行っておいた、pH調整済み食品タンパク質含有水溶液を、加熱殺菌条件下にて加熱処理することによって、粘度が上昇した乳性飲料を得ることを含んでなる。
本発明によれば、増粘多糖類や他の添加物を使用することなく、乳のような素材本来が持つ性質を引き出すことによって、乳性飲料に、従来にない新規な食感、具体的には濃厚感があり、若干の粘性を感じさせる「ネットリ」とした食感を保持させることができる。このため、本発明による乳性飲料およびその製造方法では、ソース類などの様々な食品の物性改良などの応用が期待できる。また、本発明の乳性飲料を製造する際に加熱処理された乳タンパク質は、凝集した固形物となっているにも拘わらず、加熱殺菌機の伝熱面等へ付着しにくい。すなわち、本発明による乳性飲料は、耐熱性が高い(熱安定性が良い)と言える。このため、本発明の方法によれば、伝熱面のプレート表面に焦げ付きなどの異常が起こる可能性を低くできることから、製品を安定的かつ効率的に製造することができる。よって、本発明による方法は、実用性に優れた方法であるとも言える。
発明の具体的説明
乳性飲料
本発明においては、乳性飲料とは、乳または豆乳(好ましくは乳)を原料とする成分を少なくとも含む飲料を意味し、生乳、脱脂粉乳等の乳または乳製品由来の成分、または豆乳または豆乳製品由来の成分を主原料として含有するものであれば特に限定されない。例えば、本発明による乳性飲料には、栄養素添加乳飲料、フレーバー乳飲料などのような、ビタミン類、カルシウムや鉄などのミネラル類を添加・強化した乳飲料、コーヒー乳飲料、フルーツ乳飲料、チョコレート乳飲料など、さらには同様のタイプの豆乳飲料、調整豆乳、大豆タンパク飲料が包含される。また、乳性飲料は、前記主原料に加えて、甘味料、酸味料、香味料、着色料および乳酸菌等の他の追加成分をさらに含んでいても良い。したがって、乳性飲料は、所謂、乳等省令で規定された「乳飲料」に限られず、発酵乳や、乳酸菌飲料等も含まれうる。
主原料となりうる乳または乳製品としては、例えば、脱脂粉乳、全脂粉乳、部分脱脂粉乳、脱脂乳、濃縮乳、バター、クリーム、調合乳(ミックス)などが挙げられ、乳原料として使用可能な原料であれば特に限定されることはない。また、主原料となりうる豆乳または豆乳製品は、大豆を水に浸漬した後に、すりつぶし、加熱、ろ過して得られる乳状の飲料およびそのような工程を経て作られる製品であれば特に限定されることはなく、例えば、豆腐なども包含される。
食品タンパク質含有水溶液
本発明による乳性飲料は、前記したように、特定量の食品タンパク質を少なくとも含んでなり、かつ、その水性媒体のpH値を予め調整しておいた、pH調整済み食品タンパク質含有水溶液を、加熱殺菌条件下にて加熱処理することにより得られるものである。
なお、本発明においては、乳タンパク質を含有する水溶液を「食品タンパク質含有水溶液」と呼ぶこととし、さらに、pHが調整された状態のものを「pH調整済み食品タンパク質含有水溶液」と呼ぶこととする。
本発明においては、食品タンパク質とは、乳タンパク質、大豆タンパク質、およびそれらの混合物からなる群より選択されるものをいう。ここで、乳タンパク質は、乳または乳製品中に存在するタンパク質のことをいい、タンパク質の量(濃度)は、例えば、ケルダール法、ローリー法などのような慣用の方法・装置により容易に測定することができる。また、大豆タンパク質は、豆乳または豆乳製品中に存在するタンパク質のことをいい、乳タンパク質と同様に、その量(濃度)は容易に測定することができる。
食品タンパク質含有水溶液中の食品タンパク質の濃度は、前記したとおり、3.0〜12重量%(水溶液の重量基準)である。食品タンパク質の濃度が、かかる範囲にあることは、所望する物性および食感を有する飲料を得る上で有利である。例えば、濃度が低すぎると、加熱処理に付しても、喫食者が所望の食感を感じられる程度の粘度上昇は、ほとんど起こらなくなる。食品タンパク質の濃度は、好ましくは、3.3〜10重量%、より好ましくは3.3〜8重量%である。3.3重量%を超える水準では、生成される乳性飲料において極めて濃厚感のある食感を得ることができる。
本発明においては、食品タンパク質が、乳タンパク質からなるものであることが好ましいが、本発明の特徴である「ネットリとした食感」が加熱処理により発現する範囲内において、乳タンパク質の一部または全部を、大豆タンパク質に置き換えることができる。なお、乳タンパク質の一部または全部を大豆タンパク質で置き換えた場合であっても、本発明の効果が奏されることは当業者であれば容易に理解できるであろう。乳タンパク質の一部を大豆タンパク質で置き換える場合、すなわち、食品タンパク質として乳タンパク質と大豆タンパク質との混合物を使用する場合、両者の混合比は特に限定されないが、乳タンパク質を主成分とする場合を好ましい態様として例示することができる。さらに、本発明においては、前記食品タンパク質に加えて、本発明の特徴である「ネットリとした食感」が発現される限りにおいて、他のタンパク質(例えば、卵タンパク質等)をさらに使用しても良い。
本発明においては、食品タンパク質含有水溶液を加熱殺菌条件下にて加熱処理に付す前に、予め、水溶液の水性媒体のpH値を0.1〜1.2増加させるようpH調整処理が施されていることが重要である。すなわち、該加熱処理には、pH調整済みの食品タンパク質含有水溶液を使用することが重要である。ここで、pH調整処理は、食品タンパク質含有水溶液が調整された後、その得られた水溶液に対して行われても良いが、食品タンパク質含有水溶液を調製するために用意した乳タンパク質と、水性媒体(通常、水である)とを混合する前、またはそれと同時に水性媒体に対して行っても良い。例えば、後述するように、pH調整処理を、pH調整剤を添加することによって行う場合、乳タンパク質と、対象とする水溶液(もしくは水性媒体)のpH値を0.1〜1.2増加させるのに有効な量のpH調整剤とを同時に水性媒体に加えて、pH調整済みの食品タンパク質含有水溶液を得ても良い。
本発明においては、pH調整によるpH値の上昇の程度は、若干でも十分な効果が実際に認められている。例えば、pH調整前のpHが6.82のミックスに0.065%の炭酸水素ナトリウム(重曹)を添加し、pH6.94に調整した試料は、加熱処理により充分な粘度上昇が実際に認められている。
このように本発明においては、水溶液自体のpHの絶対値を特定の領域に設定することが重要なのではなく、pH調整により水溶液において所定の条件でpHのシフト(具体的にはpH値の0.1〜1.2程度の増加)のなされることが重要であると本発明者らは考えている。ここで、pHのシフトは、乳タンパク質が存在する水溶液において行われるのが効果的であると考えられる。しかしながら、乳性飲料の原料として通常使用される(当業者にとって慣用の)乳タンパク質および水性媒体としての水とをそのまま使用し、ここに、上述のpH調整処理を施すことにより、加熱処理に付す前の状態の食品タンパク質含有水溶液の典型的なpH値を予想し規定することは可能である。この場合、本発明においては、加熱処理するpH調整済み食品タンパク質含有水溶液のpH値が、典型的には6.5〜8である。pH値がこのような範囲であると、加熱処理により粘度を変化させる上で有利である。また、pH値が8を超えると、乳性飲料としての風味が悪くなり、需要者に許容されない場合がありうる。そのため、pH調整済み食品タンパク質含有水溶液のpH値は、好ましくは6.6〜7.8であり、より好ましくは6.8〜7.6である。
本発明の好ましい態様によれば、所定量の食品タンパク質を少なくとも含んでなる食品タンパク質含有水溶液を調整した後、この水溶液のpH値を0.1〜1.2増加させるようpH調整処理を行い、pH調整済みの食品タンパク質含有水溶液を得る。この場合、より好ましくは、pH調整処理は、pH調整剤を加えることにより行われる。
よって、本発明の一つの好ましい態様によれば、本発明による乳性飲料の製造方法は、3.0〜12重量%の乳タンパク質を少なくとも含んでなる食品タンパク質含有水溶液を得て、ここにpH調整剤を加えて、水溶液のpH値を0.1〜1.2増加させることによって、pH調整済み食品タンパク質含有水溶液を得る工程をさらに含んでなる。
本発明においては、前記pH調整処理は、対象とする水溶液(または水性媒体)のpH値を0.1〜1.2、好ましくは0.1〜1.0、より好ましくは0.1〜0.8の範囲で増加させることができるものであれば、どのような手段によってpH調整を行っても良い。例えば、食品タンパク質含有水溶液に、それよりもpH値が高くなるように調整した水性媒体を別途用意し、これを加えることによって、結果として得られる水溶液のpH値を上記のように上昇させるようにしても良い。
本発明においては、好ましくはpH調整処理を、pH調整剤を使用して行う。ここで使用可能なpH調整剤は、上記のpH調整を達成でき、かつ、食品として使用可能な安全性を有するものであれば特に限定されないが、典型的には、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび炭酸ナトリウムからなる群より選択される。これらは組み合わせて使用しても良い。本発明の好ましい態様によれば、pH調整剤は、炭酸水素ナトリウムである。
pH調整剤を使用する場合、その使用量は、使用するpH調整剤の種類、上昇させようとする目標pH値、添加する水溶液の状態(例えば、その温度、pH等)等に応じて適宜変更することができるが、例えば、pH調整剤として炭酸水素ナトリウムを使用する場合、その使用量は濃度として定義すると、典型的には0.05〜0.5重量%、好ましくは0.05〜0.3重量%である。
本発明においては、乳性飲料を調製するために、用意した食品タンパク質含有水溶液を加熱処理するが、その際に、通常、食品タンパク質含有水溶液に対して均質化処理を行う。本発明においては、後述する実施例の項で示すように、加熱処理前および/または加熱処理後の均質化処理は、所望の乳性飲料を得るための必須要件ではなく、また、均質化処理の条件では、本発明において期待される程度の粘度上昇は見られない。このため、均質化処理を行わない場合であっても所望の乳性飲料を得ることができるため、本発明においては、加熱処理前および/または加熱処理後の均質化処理は必要に応じて行えば良い。均質化処理を行う場合には、ホモジナイザーを使用して、例えば50〜90℃程度に加温して100〜800kg/cm程度の条件にて行うことができる。
本発明においては、乳性飲料を調製するために、pH調整済みの食品タンパク質含有水溶液を加熱処理する。ここで、加熱処理は、加熱殺菌条件に相当するものである。通常、乳等を原料とする飲料は、製品として出荷する前に、各種方法により殺菌処理が行われるが、ここでいう加熱処理の加熱殺菌条件とは、このような通常の殺菌処理の一態様とされているものを意味する。したがって、本発明における加熱処理は、飲料や食品の分野において慣用の加熱殺菌処理条件であれば特に制限なく使用することができる。
ただし、本発明においては、後述する実施例にあるとおり、pH調整した水溶液中の乳タンパク質の耐熱性(熱安定性)を考慮する必要があるため、加熱処理条件は、かかる耐熱性の限界を超えない範囲であることが望ましい。したがって、例えば、加熱処理処理の条件は、乳タンパク質の過度の凝集が起こらないような条件とすることができる。
本発明の好ましい態様によれば、加熱処理は、当業者に周知の慣用の加熱殺菌条件であり、例えば、110〜150℃で0.1秒〜15秒間の加熱により行われる。このとき、好ましくは120〜150℃で0.5〜12秒であり、より好ましくは125〜145℃で1〜10秒あり、さらに好ましくは125〜145℃で2〜8秒あり、特に好ましくは130〜140℃で2〜5秒である。
また、この加熱処理の際に、水溶液に圧力を負荷しても良い。通常、加熱殺菌処理を行う場合、水溶液の沸騰を防止すること等を目的として、例えば、殺菌圧力を1〜10kg/cm程度とする。本発明における加熱処理では、加熱に加えて、このような圧力を加えても良い。
本発明は、このように乳性飲料の製造に通常必須である加熱殺菌処理を利用して、食品タンパク質含有水溶液に増粘現象を引き起こさせ、所望の乳性飲料を得るものであるため、製造の工程を簡略化することができ、製造の効率化およびコストの削減の観点からも有利な方法であると言える。
本発明による乳性飲料は、加熱処理の結果、新規な食感および濃厚感を有するものである。ここでいう食感は、前述のように官能的には「ネットリ」と表現することができ、脂肪やタンパク質の量(濃度)またはタンパク質の凝集の程度や状態等によって影響されるものであるが、物理化学的側面からは、例えば、粘度を指標に、その増加によって、本発明において所望する食感を飲料が獲得するに至ったか否かを把握することができる。
本発明による乳性飲料の粘度は、食品タンパク質以外の配合成分の有無、その種類により変化することは当然であるが、例えば、食品タンパク質以外の成分として脂肪が0〜15重量%および乳糖が4〜20重量%で含まれる場合、乳性飲料(3.0〜12重量%の食品タンパク質を少なくとも含んでなる食品タンパク質含有水溶液)の粘度は、典型的には、7〜50mPa・sであり、好ましくは8〜40mPa・sであり、より好ましくは9〜30mPa・sである。そして、本発明による乳性飲料の加熱処理前後の粘度の差異は、典型的には、2〜30mPa・sであり、好ましくは3〜20mPa・sであり、より好ましくは5〜15mPa・sである。ここで、粘度は、例えば、音叉式振動型粘度計SV−10(株式会社エー・アンド・デイ製)(測定温度:10℃)で測定することができる。
ここで具体例を挙げると、脱脂粉乳、クリームにて無脂乳固形分10.5重量%(乳タンパク質約3.6%)と、乳脂肪分4.5重量%とを含むように調製した食品タンパク質含有水溶液に炭酸水素ナトリウムを0.13重量%添加し、60℃にて均質化(15MPa)後、140℃で3秒間のプレート式間接加熱殺菌機(プレート式殺菌機(岩井機械工業株式会社製))で処理することにより、加熱処理前の粘度が5.5mPa・sであったものが11.5mPa・sに上昇し、同時に脂肪を思わせる濃厚感のある食感を発現する。
また、本発明による乳性飲料は、典型的には、10μm程度の巨大粒子を形成している。ここで、「10μm程度」とは、乳性飲料中のタンパク質が凝集した結果、飲料中に分散しているタンパク質成分の平均粒径が、おおよそ10μm程度であり、約5〜50μmの範囲に主要な粒度分布が見られる場合を意味している。本発明においては、このタンパク質凝集の程度も、乳性飲料の独特の食感に寄与していると考えられる。なお、ここで、粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置SALD−2100(株式会社島津製作所製)を使用して測定し、求めることができる。
一般的には、乳タンパク質、特にカゼインを含む水溶液をpH6以下に調整し、加熱処理を行うと、タンパク質の凝集が促され、巨大粒子が形成される。これは、カゼインの等電点であるpH4.6に近づき、カゼインの電気的反発が失われることに起因すると考えられている。タンパク質の凝集は、明らかに食感上の変化をもたらすが、その付着性の高い凝集物は、殺菌機プレート等の伝熱面に付着することにより、連続的な加熱殺菌処理を妨げてしまう。つまり、所謂、「焦げ付き」と呼ばれる現象が起こってしまい、製造工程上、問題となる。一方、本発明の方法によれば、やはり加熱によって巨大粒子が形成されるものの、その付着性は極めて弱いことから、連続的な加熱殺菌処理が可能である。実際、後述する実施例にあるように、pHの水準を6.75〜7.00に調整した食品タンパク質含有水溶液を耐熱・耐圧のガラスビンに充填し、140℃のシリコンオイル恒温槽中で保持して、経時的にガラス面への付着および水溶液中の粒度を観察すると、pHの上昇とともに粒度は大きくなるものの、ガラス面への付着が生じるまでの時間は次第に長くなっていくという、これまでの常識を覆す結果が得られている。これらの点も本発明の優れた効果であると言える。
本発明においては、乳性飲料の粘度上昇については、食品タンパク質が重要な要素である。このため、脂質自体は不可欠な要素ではない。しかしながら、飲料としての好ましさを考慮すると、おいしさの点で、脂質をさらに含むことが好ましい。また、乳性飲料が、ある程度の脂質を含むと、巨大粒子の沈降防止も期待できる。巨大粒子中に脂質を含むことにより、比重が小さくなり沈降が抑制されるためである。
本発明においては、含まれうる脂肪の量(濃度)は、特に制限はないが、通常の乳等を原料に使用することから、それらに含まれる程度の脂肪を含んでも良い。具体的には、脂肪の濃度は、加熱前の食品タンパク質含有水溶液を基準として、例えば、0〜14重量%であり、好ましくは0〜7重量%であり、より好ましくは0〜5重量%である。ここで、脂肪を高濃度で含むものには、濃縮乳などが例示でき、本発明は、乳飲料等の希薄な水溶液のみでなく、濃厚な水溶液への適用も期待できる。
本発明による乳性飲料は、食品タンパク質および脂肪以外の成分として、任意の食品または食品添加剤のような他の任意成分をさらに使用することができる。例えば、香料、糖類等の甘味料、色素、安定剤、保存剤、各種タンパク質、微量元素、ビタミン類等を添加剤として使用しても良い。
また、本発明による乳性飲料は、最終製品として、それ自体を提供しても良いが、さらに、それをもとに、他の食品(各種のソース類等)へ加工し、それらの原材料用として提供することもできる。
本発明を以下の例によって詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
実施例1: [加熱温度、加熱圧力、pH調整剤濃度および乳タンパク質濃度の乳性飲料粘度への影響]
下記表1に示した配合1a〜1dをそれぞれ用意し、これら各配合を、ホモジナイザー(三和機械社製)を用いて、圧力を150kg/cm(1st:100kg/cm、2nd:50kg/cm)、流量を100L/h、温度を60℃の条件にて均質化し、乳タンパク質含有水溶液(調合乳(ミックス))を調製した。次いで、各配合の乳タンパク質含有水溶液を、プレート式殺菌機(岩井機械工業株式会社製)を用いて、流量を150L/hで加熱殺菌処理(加熱処置)を施した。
なお、本実施例および以下の実施例においては、本発明における食品タンパク質の例として、乳タンパク質を使用し検討を行った。
各配合を調製するために、脱脂粉乳[乳脂肪分 1.0重量%、無脂乳固形分 95.5重量%、および水分 3.5重量%](明治乳業株式会社製)、クリーム[乳脂肪分 47.5重量%、無脂乳固形分 4.5重量%、および水分 48.0重量%](明治乳業株式会社製)、および重曹(炭酸水素ナトリウム(食品添加物グレード))(和光純薬株式会社製)を用いた。
加熱処理条件に関して、加熱殺菌温度を130℃または140℃とした場合(共に加熱時間3秒)、および、殺菌圧力を3kg/cmまたは5kg/cmとした場合のそれぞれの場合について、検討した。
加熱処理の前後で各配合の乳タンパク質含有水溶液を採取して、その粘度をそれぞれ測定した。粘度は、音叉式振動型粘度計SV−10(株式会社エー・アンド・デイ製)(測定温度:10℃)を用いて測定した。得られた粘度について、下記式に従って粘度の上昇率を求めた:
粘度の上昇率[%]=
(加熱処理後の試料の粘度)/(加熱処理前の試料の粘度)×100
なお、表1において、配合1a〜1cは本発明に対する比較例に相当する。すなわち、配合1aおよび1bは、pH調製剤(炭酸水素ナトリウム(重曹、NaHCO))を使用しない場合(無添加の場合)であり、配合1aおよび1cは、配合中の乳タンパク質量が3.0重量%に満たない場合である。
結果は表2に示されるとおりであった。
得られた乳性飲料の粘度の上昇率は、pH調製剤の濃度および乳タンパク質の濃度の影響を受けており、3元配置分散分析により、危険率が1%で有意差があると判定された。また、結果から、pH調製剤の濃度および乳タンパク質の濃度には、乳性飲料の粘度の上昇に対して相乗効果(交互作用)のある可能性が示唆された。
Figure 2008067625
Figure 2008067625
実施例2: [乳タンパク質の含有量(濃度)による乳性飲料の粘度への影響]
各乳タンパク質含有水溶液の組成を下記表3に従って配合2a〜2eを用意し、さらに、実験の加熱処理条件として、加熱殺菌温度を140℃とし(加熱時間3秒)、かつ、殺菌圧力を5kg/cmとした以外は、実施例1と同様にして、水溶液の均質化および加熱殺菌処理を行った。
なお、配合においては、炭酸水素ナトリウム(重曹)の濃度は0.09〜0.13重量%の範囲となるように設定したものであり、乳タンパク質の濃度は該表の配合量となるように、加える全固形分量を調整して得たものである。
加熱処理の前後で各配合の乳タンパク質含有水溶液を採取して、その粘度を実施例1と同様にして測定し、さらに粘度の上昇率を算出した。さらに、加熱処理後の乳タンパク質含有水溶液(すなわち、乳性飲料)の食感(特に飲料のネットリ感)について、専門パネラーの10人による官能評価試験を行った。
結果は表4に示されるとおりであった。
乳飲料の粘度の上昇率は、乳タンパク質の濃度に影響を受け、乳タンパク質の濃度の増加に伴い、粘度の上昇率は増加した。また、乳タンパク質の濃度を所定値以上にすることで加熱殺菌処理に伴い粘度が増加することが認められた。
Figure 2008067625
Figure 2008067625
実施例3: [pH調整剤の添加による乳性飲料の粘度への影響]
各乳タンパク質含有水溶液の組成を下記表5に従って配合3a〜3dを用意し、さらに、実験の加熱処理条件として、加熱殺菌温度を140℃とし(加熱時間3秒)、かつ、殺菌圧力を5kg/cmとした以外は、実施例1と同様にして、水溶液の均質化および加熱殺菌処理を行った。
加熱処理の前後で各配合の乳タンパク質含有水溶液を採取して、そのpHおよび粘度を実施例1と同様にして測定し、粘度についてはさらに粘度の上昇率を算出した。さらに、加熱処理後の乳タンパク質含有水溶液(すなわち、乳性飲料)の食感(特に飲料のネットリ感)について、専門パネラーの10人による官能評価試験を行った。
なお、表5において、配合3aは本発明に対する比較例に相当する。すなわち、配合3aは、pH調整剤(炭酸水素ナトリウム(重曹))を使用しない場合(無添加の場合)である。
結果は表6および図1に示されるとおりであった。
結果から、乳性飲料の粘度の上昇率は、pH調整剤によるpH調整の影響を受け、pH調整剤(重曹)の濃度を所定値以上にすることによって、加熱殺菌処理に伴って粘度を増加させることができることが分かった。
Figure 2008067625
Figure 2008067625
実施例4: [pH調整剤の種類による乳性飲料の粘度への影響]
各乳タンパク質含有水溶液の組成を下記表7に従って配合4a〜4eを用いた以外は、実施例3と同様にして、水溶液の均質化および加熱殺菌処理を行った。
なおここで、pH調整剤としては、炭酸水素ナトリウムの代わりに、炭酸ナトリウム(NaCO)、水酸化ナトリウム(NaOH)、または水酸化カリウム(KOH)を使用した。また、pH調整剤の濃度は、加熱処理前の試料のpHを6.9程度とするように、それぞれのpH調整剤で設定した。また、これにより、それぞれのpH調整剤で調製した乳性飲料のイオン強度は異なっていた。
加熱処理の前後で各配合の乳タンパク質含有水溶液を採取して、実施例3と同様にして、そのpHおよび粘度、粘度の上昇率を求め、さらに加熱処理後の乳タンパク質含有水溶液(すなわち、乳性飲料)の食感(特に飲料のネットリ感)についても、実施例3と同様にして官能評価試験を行った。
結果は表8に示されるとおりであった。
結果から、乳性飲料の粘度の上昇率は、pH調整剤の種類に影響を受けず、また、各pH調整剤の濃度を所定値以上にすることによって、加熱殺菌処理に伴って粘度を増加させることができることが分かった。
Figure 2008067625
Figure 2008067625
実施例5: [イオン強度による乳性飲料の粘度への影響]
各乳タンパク質含有水溶液の組成を下記表9に従って配合5a〜5dを用いた以外は、実施例3と同様にして、水溶液の均質化および加熱殺菌処理を行った。
使用したpH調整剤のうち、NaHCOはアルカリ性(塩基性)であり、NaClは中性である。各配合において、pH調整剤の濃度は、各試料水溶液のイオン強度が同程度となるように、それぞれのpH調整剤で設定した。
実施例3と同様にして、加熱処理の前後で各配合の乳タンパク質含有水溶液のpHおよび粘度を測定し、さらに粘度の上昇率を算出した。同様に、加熱処理後の乳タンパク質含有水溶液(すなわち、乳性飲料)の食感について、官能評価試験を行った。また、イオン強度は、pH調整剤のイオンの濃度から計算して求めた。
結果は表10に示されるとおりであった。
結果から、乳性飲料の粘度を増加させる作用は、イオン強度とは関連性が低く、pHの影響が高いであろうと考えられた。
Figure 2008067625
Figure 2008067625
実施例6: [乳脂肪の含有量による乳性飲料の粘度への影響]
各乳タンパク質含有水溶液の組成を下記表11に従って配合6a〜6dを用いた以外は、実施例3と同様にして、水溶液の均質化および加熱殺菌処理を行った。
各配合中の乳タンパク質の濃度を同じにする一方で、乳脂肪の濃度を4.5重量%、2.3重量%、および0.1重量%とした。
実施例3と同様にして、加熱処理の前後で各配合の乳タンパク質含有水溶液のpHおよび粘度を測定し、さらに粘度の上昇率を算出した。同様に、加熱処理後の乳タンパク質含有水溶液(すなわち、乳性飲料)の食感について、官能評価試験を行った。
結果は表12に示されるとおりであった。
乳性飲料の粘度の上昇率は、乳脂肪の濃度の影響をほとんど受けないことが認められた。粘度の上昇率の大きい試料では、食感も明らかに変化していた。このとき、脂肪を多く含む試料では、濃厚感が舌に残りやすく、より好ましい食感であった。
Figure 2008067625
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実施例7: [均質化処理による乳飲料の粘度への影響]
各乳タンパク質含有水溶液の組成を下記表13に従って同じ配合の配合7aおよび配合7bを用意し、各配合を、圧力0kg/cm(均質化処理なし)、および、150kg/cm(1st:100kg/cm、2nd:50kg/cm)、流量を100L/h、温度を60℃にて均質化処理をした以外は、実施例3と同様にして、実験を行った。
実施例3と同様にして、加熱処理の前後で各配合の乳タンパク質含有水溶液のpH、および粘度を測定し、さらに粘度の上昇率を算出した。同様に、加熱処理後の乳タンパク質含有水溶液(すなわち、乳性飲料)の食感について、官能評価試験を行った。
結果は表14に示されるとおりであった。
乳性飲料の粘度の上昇率は、均質化処理の有無(乳脂肪球径の違い)の影響をほとんど受けないことが認められた。乳性飲料の粘度の上昇率に対して、均質化処理(乳脂肪球径)は実質的に無関係である可能性が示唆された。
Figure 2008067625
Figure 2008067625
実施例8: [pH調整による乳性飲料の粒径や遠心沈降率への影響]
一般的に、乳飲料の粒径や遠心沈降率は、乳飲料の熱安定性(殺菌条件)に影響することが知られている。そこで、乳性飲料の粘度以外の物性を確認することを目的として、乳性飲料の粒径、遠心沈降率を検討した。
実施例4に従って、配合4a〜4eの各乳タンパク質含有水溶液について均質化および加熱殺菌処理を行った。
得られた各乳性飲料について、そこに含まれる凝集タンパク質の粒径と、遠心沈降率を測定した。粒径は、レーザー回折式粒度分布計(株式会社島津製作所製、SALD−2100)を用いて、試料をクエン酸バッファーに懸濁して測定したときの体積平均粒子径とした。また、遠心沈降率は、遠心分離機(株式会社トミー精工製、TOMY LC−122)を用いて、液体の試料を回転数2000rpm、10分間(約7200G)で処理したときの試料の全量に対する沈殿物の割合とした。
結果は表15に示されるとおりであった。
乳性飲料の粘度の上昇率と、粒径や遠心沈降率との間に相関関係は認められず、pH調整剤を所定値以上にすることで、加熱殺菌処理に伴い粒径や遠心沈降率が増加することが認められた。
Figure 2008067625
実施例9: [乳性飲料の熱安定性]
乳性飲料の熱安定性をバイアルビン振盪式の熱安定性試験機(油浴槽、温度140℃)を用いて確認した。試験を以下の手順で行った。
(1) 乳性飲料のpH調整剤の濃度(pH)を変えて、各乳飲料の熱安定性を検討した。具体的には、まず、下記表16に従って配合9a〜9fの各乳タンパク質含有水溶液を用意し、各水溶液の試料をそれぞれ、透明なガラス製の小型容器(バイアルビン)に約3ml充填した。
(2) 各バイアルビンを温度140℃の油浴槽(振とう試験機)に浸漬した。この試験機は、バイアルビンを左右方向へ往復させて、油浴槽内で振とうする装置(石山科学社製、バイアルビン振盪式の熱安定性試験機)を使用した。
(3) この振盪の動作を所定時間毎に停止させながら、バイアルビンの内部を観察した。このとき、目視により凝集物を確認した時間を比較し、熱安定性を試料毎で相対的に評価した。
結果は表16に示されるとおりであった。ここで、熱安定性の値は、凝集物を確認した時間を意味し、凝集物を確認した時間が短いもの程、熱安定性が悪く、時間が長いもの程、熱安定性が良いことを意味する。
乳性飲料にpH調整剤を添加し、その濃度(pH)を変えても、熱安定性への悪影響はほとんど見られなかった。得られた安定性は、乳性飲料の製造工程での殺菌機の焦げ付きや流路の閉塞などを起こりにくくする上で望ましいレベルであった。
Figure 2008067625
pH調整剤の添加による乳性飲料の粘度への影響に関する、実施例3の結果を示す図である。

Claims (12)

  1. 3.0〜12重量%の食品タンパク質を少なくとも含んでなり、かつ、水性媒体のpH値を0.1〜1.2増加させるpH調整処理を予め行っておいた、pH調整済み食品タンパク質含有水溶液を、加熱殺菌条件下にて加熱処理することにより得られる、粘度上昇に伴う新規な食感を有する乳性飲料。
  2. 食品タンパク質が、乳タンパク質である、請求項1に記載の乳性飲料。
  3. 加熱処理するpH調整済み食品タンパク質含有水溶液のpH値が6.5〜8である、請求項1または2に記載の乳性飲料。
  4. 加熱処理が、110〜150℃で0.1秒〜15秒間の加熱により行われる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の乳性飲料。
  5. pH調整処理を、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、および炭酸ナトリウムからなる群より選択されるpH調整剤を添加することにより行う、請求項1〜4のいずれか一項に記載の乳性飲料。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の乳性飲料を含んでなる、食品。
  7. 3.0〜12重量%の食品タンパク質を少なくとも含んでなり、かつ、水性媒体のpH値を0.1〜1.2増加させるpH調整処理を予め行っておいた、pH調整済み食品タンパク質含有水溶液を、加熱殺菌条件下にて加熱処理することによって、粘度が上昇した乳性飲料を得ることを含んでなる、粘度上昇に伴う新規な食感を有する乳性飲料の製造方法。
  8. 3.0〜12重量%の食品タンパク質を少なくとも含んでなる食品タンパク質含有水溶液を得て、ここにpH調整剤を加えて水溶液のpH値を0.1〜1.2増加させることによって、pH調整済み食品タンパク質含有水溶液を得る工程をさらに含んでなる、請求項7に記載の方法。
  9. 食品タンパク質が、乳タンパク質である、請求項7または8に記載の方法。
  10. 加熱処理するpH調整済み食品タンパク質含有水溶液のpH値が6.5〜8である、請求項7〜9のいずれか一項に記載の方法。
  11. 加熱処理が、110〜150℃で0.1秒〜15秒間の加熱により行われる、請求項7〜10のいずれか一項に記載の方法。
  12. pH調整処理を、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、および炭酸ナトリウムからなる群より選択されるpH調整剤を添加することにより行う、請求項7〜11のいずれか一項に記載の方法。
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