以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について説明する。なお、以下に述べる実施形態を説明するための図面では、便宜上、ハッチングを省略するものとする。図1は、本発明の第1実施形態による電動機1を示している。同図に示すように、この電動機1は、ケース2と、軸3と、ケース2内に設けられた第1〜第3のステータ4〜6、第1および第2のロータ7,8とを備えている。第2ステータ5はケース2内の中央に配置され、第1および第2のロータ7,8は、第2ステータ5の両側に所定の間隔を存して対向するように配置され、第1および第3のステータ4,6は、第1および第2のロータ7,8の外側に所定の間隔を存して対向するように配置されている。
ケース2は、円筒状の周壁2aと、周壁2aの両端に設けられた互いに対向する側壁2bおよび2cとを一体に有している。側壁2bおよび2cは、中央に孔2dおよび2eをそれぞれ有するドーナツ板状のものであり、側壁2b,2cの外径は周壁2aの外径と等しい。また、周壁2a、側壁2bおよび2cは、互いに同心状に配置されている。さらに、上記の孔2dおよび2eには、軸受け9および10がそれぞれ取り付けられており、これらの軸受け9,10に、軸3が回転自在に支持されている。なお、軸3は、スラスト軸受け(図示せず)によって軸線方向にほぼ移動不能になっている。
第1ステータ4は、2n個の第1電磁石4aを有している。各第1電磁石4aは、軸3の軸線方向(以下、単に「軸線方向」という)に若干延びる円柱状の鉄芯4bと、鉄芯4bに巻回されたコイル4cなどで構成されている。また、第1電磁石4aは、ケース2の周壁2aの内周面の側壁2b側の端部に、リング状の固定部4dを介して取り付けられるとともに、鉄芯4bの一端部がケース2の側壁2bに取り付けられている。さらに、図2に示すように、第1電磁石4aは、軸3の周方向(以下、単に「周方向」という)に、所定のピッチPで等間隔に並ぶように配置されている。
また、各第1電磁石4aは、可変電源15に接続されている。可変電源15は、コンバータなどからなる電気回路とバッテリを組み合わせたものであり、後述するECU17に接続されている。さらに、第1電磁石4aは、可変電源15から電力が供給されたときに、隣り合う各2つの鉄芯4bに、互いに異なる極性の磁極が発生するように構成されている(図2参照)。以下、第1電磁石4aの磁極を「第1磁極」という。
なお、本実施形態では、ケース2が第1、第2、第4、および第5の部材に、軸3が第3および第6の部材に、第1ステータ4が第1磁極列に、第1電磁石4aが第1磁極に、ECU17が磁力調整手段、第1相対位置関係検出装置、第2相対位置関係検出装置および制御装置に、それぞれ相当する。
第2ステータ5は、電力の供給に伴って、回転磁界を発生させるものであり、3n個の電機子5aを有している。各電機子5aは、軸線方向に若干延びる円柱状の鉄芯5bと、鉄芯5bに集中巻で巻回されたコイル5cなどで構成されており、3n個のコイル5cは、n組のU相、V相およびW相の3相コイルを構成している。また、電機子5aは、周壁2aの内周面の中央部に、リング状の固定部5dを介して取り付けられており、周方向に等間隔に並んでいる。さらに、電機子5aおよび第1電磁石4aは、2つおきの電機子5aの中心と、互いに同じ極性を有する1つおきの第1電磁石4aの中心が周方向の同じ位置に位置するように配置されている。本実施形態では、U相コイル5cを有する各電機子5aの中心が、N極を有する各第1電磁石4aの中心と同じ位置に位置している(図2参照)。
また、各電機子5aは、可変電源16に接続されている。この可変電源16は、インバータなどからなる電気回路とバッテリを組み合わせたものであり、ECU17に接続されている。さらに、電機子5aは、可変電源16から電力が供給されたときに、鉄芯5bの第1ステータ4側および第3ステータ6側の端部に、互いに異なる極性の磁極が発生するように構成されており、これらの磁極の発生に伴って、第1ステータ4との間および第3ステータ6との間に、第1および第2の回転磁界が、周方向に回転するようにそれぞれ発生する。以下、鉄芯5bの第1および第3のステータ4,6側の端部に発生する磁極をそれぞれ、「第1電機子磁極」および「第2電機子磁極」という。また、これらの第1および第2の電機子磁極の数はそれぞれ、第1電磁石4aの磁極の数と同じ、すなわち2nである。
第3ステータ6は、第1電磁石4aと同数すなわち2n個の第2電磁石6aを有しており、各第2電磁石6aは、軸線方向に若干延びる円筒状の鉄芯6bと、鉄芯6bに巻回されたコイル6cなどで構成されている。また、第2電磁石6aは、周壁2aの内周面の側壁2c側の端部に、リング状の固定部6dを介して取り付けられるとともに、鉄芯6bの一端部が側壁2cに取り付けられている。さらに、第2電磁石6aは、周方向に等間隔で並び、かつ、その中心が、第1電磁石4aの中心およびU相コイル5cを有する電機子5aの中心と周方向の同じ位置に位置するように配置されている(図2参照)。
また、第2電磁石6aは、可変電源15に接続されている。さらに、第2電磁石6aは、可変電源15から電力が供給されたときに、隣り合う各2つの第2電磁石6aの磁極の極性が互いに異なり、かつ各第2電磁石6aの磁極の極性が、周方向の同じ位置に配置された各第1電磁石4aの第1磁極の極性と同じになるように構成されている(図2参照)。以下、第2電磁石6aの磁極を「第2磁極」という。
なお、本実施形態では、第2ステータ5が第1および第2の電機子列に、電機子5aが第1および第2の電機子に、コイル5cが3相の界磁巻線に、第3ステータ6が第2磁極列に、第2電磁石6aが第2磁極に、それぞれ相当する。
第1ロータ7は、第1電磁石4aと同数すなわち2n個の第1コア7aを有しており、各第1コア7aは、軟磁性体、例えば複数の鋼板を積層した円柱状のものであり、軸線方向に若干延びている。第1コア7aは、軸3に一体に同心状に設けられた円板状のフランジ7bの外端部に取り付けられており、軸3と一体に回転自在になっている。また、第1コア7aは、周方向に等間隔で並んでいる。
第2ロータ8は、第1電磁石4aと同数すなわち2n個の第2コア8aを有しており、各第2コア8aは、第1コア7aと同様、軟磁性体、例えば複数の鋼板を積層した円柱状のものであり、軸線方向に若干延びている。第2コア8aは、軸3に一体に同心状に設けられた円板状のフランジ8bの外端部に取り付けられており、軸3と一体に回転自在になっている。また、第2コア8aは、周方向に等間隔で、第1コア7aに対して互い違いに並んでおり、その中心が、第1コア7aの中心に対し、所定のピッチPの半ピッチP/2分、ずれている。
なお、本実施形態では、第1および第2のロータ7,8が第1および第2の軟磁性体列に、第1および第2のコア7a,8aが第1および第2の軟磁性体に、それぞれ相当する。
また、電動機1には、回転位置センサ50(第1相対位置関係検出装置、第2相対位置関係検出装置)が設けられており、この回転位置センサ50は、軸3の回転位置(以下「軸回転位置」という)を表す検出信号をECU17に出力する。
ECU17は、電動機1を制御するためのものであり、I/Oインターフェース、CPU、RAMおよびROMなどからなるマイクロコンピュータで構成されている。また、ECU17は、入力された軸回転位置に応じ、電機子5a、第1および第2の電磁石4a,6aと第1および第2のコア7a,8aとの相対的な位置関係を求めるとともに、この位置関係に基づいて、電機子5aの3相コイル5cへの通電を制御し、それにより、第1および第2の回転磁界を制御する。さらに、ECU17は、軸回転位置に基づいて、軸3の回転速度(以下「軸回転速度」という)を算出する。
さらに、ECU17は、軸回転速度と、電機子5a、第1および第2の電磁石4a,6aに供給されている電力に応じて、電動機1の負荷を算出するとともに、算出した負荷に応じて、電機子5a、第1および第2の電磁石4a,6aに供給される電流を制御する。これにより、第1および第2の電機子磁極ならびに第1および第2の磁極の磁力と、第1および第2の回転磁界の回転速度が制御される。この場合、第1および第2の電機子磁極ならびに第1および第2の磁極の磁力は、算出した負荷が高いほど、より強められる。また、低負荷運転中には、軸回転速度が高いほど、第1および第2の電機子磁極ならびに第1および第2の磁極の磁力は、より弱められる。
以上の構成の電動機1では、図2に示すように、第1および第2の回転磁界の発生中、各第1電機子磁極の極性が、それに対向する(最も近い)各第1磁極の極性と異なるときには、各第2電機子磁極の極性は、それに対向する(最も近い)各第2磁極の極性と同じになる。また、各第1磁極と各第1電機子磁極の間に、各第1コア7aが位置しているときには、各第2コア8aが、周方向に隣り合う各2組の第2電機子磁極および第2磁極の間に位置する。さらに、図3に示すように、第1および第2の回転磁界の発生中、各第2電機子磁極の極性が、それに対向する(最も近い)各第2磁極の極性と異なるときには、各第1電機子磁極の極性は、それに対向する(最も近い)各第1磁極の極性と同じになる。また、各第2磁極と各第2電機子磁極の間に、各第2コア8aが位置しているときには、各第1コア7aが、周方向に隣り合う各2組の第1電機子磁極および第1磁極の間に位置する。なお、図2および図3では、便宜上、軸3およびフランジ7a,8aなどを、省略して図示するものとする。
次に、図4および図5を参照しながら、上述した電動機1の動作について説明する。なお、説明の便宜上、第1および第2の回転磁界の動きを、それと等価の、第1および第2の電磁石4a,6aと同数の2n個の仮想の永久磁石(以下「仮想磁石」という)18の物理的な動きに置き換えて説明するものとする。また、仮想磁石18の第1および第3のステータ4,6側の磁極をそれぞれ、第1および第2の電機子磁極として、第1ステータ4との間および第3ステータ6との間にそれぞれ発生する回転磁界を、第1および第2の回転磁界として、説明するものとする。
まず、図4(a)に示すように、各第1コア7aが各第1電磁石4aに対向するとともに、各第2コア8aが隣り合う各2つの第2電磁石6aの間に位置した状態から、第1および第2の回転磁界を、同図の下方に回転させるように発生させる。その発生の開始時においては、各第1電機子磁極の極性を、それに対向する各第1磁極の極性と異ならせるとともに、各第2電機子磁極の極性をそれに対向する各第2磁極の極性と同じにする。
第1コア7aが、第1および第2のステータ4,5の間に配置されているので、第1磁極および第1電機子磁極によって磁化されるとともに、第1磁極、第1コア7aおよび第1電機子磁極の間に、磁力線(以下「第1磁力線」という)G1が発生する。同様に、第2コア8aが、第2および第3のステータ5,6の間に配置されているので、第2電機子磁極および第2磁極によって磁化されるとともに、第1電機子磁極、第2コア8aおよび第2磁極の間に、磁力線(以下「第2磁力線」という)G2が発生する。
図4(a)に示す状態では、第1磁力線G1は、第1磁極、第1コア7aおよび第1電機子磁極を結ぶように発生し、第2磁力線G2は、周方向に隣り合う各2つの第2電機子磁極と両者の間に位置する第2コア8aを結ぶように、また、周方向に隣り合う各2つの第2磁極と両者の間に位置する第2コア8aを結ぶように発生する。その結果、この状態では、図6(a)に示すような磁気回路が構成される。この状態では、第1磁力線G1が直線状であることにより、第1コア7aには、周方向に回転させるような磁力は作用しない。また、周方向に隣り合う各2つの第2電機子磁極と第2コア8aの間の2つの第2磁力線G2の曲がり度合いおよび総磁束量が互いに等しく、同様に、周方向に隣り合う各2つの第2磁極と第2コア8aの間の2つの第2磁力線G2の曲がり度合いおよび総磁束量も、互いに等しく、バランスしている。このため、第2コア8aにも、周方向に回転させるような磁力は作用しない。
そして、仮想磁石18が図4(a)に示す位置から図4(b)に示す位置に回転すると、第2電機子磁極、第2コア8aおよび第2磁極を結ぶような第2磁力線G2が発生するとともに、第1コア7aと第1電機子磁極の間の第1磁力線G1が、曲がった状態になる。また、これに伴い、第1および第2の磁力線によって、図6(b)に示すような磁気回路が構成される。
この状態では、第1磁力線G1の曲がり度合いは小さいものの、その総磁束量が多いため、比較的強い磁力が第1コア7aに作用する。これにより、第1コア7aは、仮想磁石18の回転方向、すなわち第1および第2の回転磁界の回転方向(以下、「磁界回転方向」という)に、比較的大きな駆動力で駆動され、その結果、軸3が磁界回転方向に回転する。また、第2磁力線G2の曲がり度合いは大きいものの、その総磁束量が少ないため、比較的弱い磁力が第2コア8aに作用し、それにより、第2コア8aは、磁界回転方向に比較的小さな駆動力で駆動され、その結果、軸3が磁界回転方向に回転する。
次いで、仮想磁石18が、図4(b)に示す位置から、図4(c),(d)および図5(a),(b)に示す位置に順に回転すると、第1および第2のコア7a,8aはそれぞれ、第1および第2の磁力線G1,G2に起因する磁力によって磁界回転方向に駆動され、その結果、軸3が磁界回転方向に回転する。その間、第1コア7aに作用する磁力は、第1磁力線G1の曲がり度合いが大きくなるものの、その総磁束量が少なくなることによって、徐々に弱くなり、第1コア7aを磁界回転方向に駆動する駆動力が、徐々に小さくなる。また、第2コア8aに作用する磁力は、第2磁力線G2の曲がり度合いが小さくなるものの、その総磁束量が多くなることによって、徐々に強くなり、第2コア8aを磁界回転方向に駆動する駆動力が、徐々に大きくなる。
そして、仮想磁石18が図5(b)に示す位置から図5(c)に示す位置に回転する間、第2磁力線G2が曲がった状態になるとともに、その総磁束量が最多に近い状態になり、その結果、最強の磁力が第2コア8aに作用し、第2コア8aに作用する駆動力が最大になる。その後、図5(c)に示すように、仮想磁石18が所定のピッチP分、回転することにより、仮想磁石18が第1および第2の電磁石4a,6aに対向する位置に移動すると、互いに対向する第1電機子磁極および第1磁極が互いに同一極性になり、第1コア7aが、周方向に隣り合う2組の同一極性の第1電機子磁極および第1磁極の間に位置するようになる。この状態では、第1磁力線の曲がり度合いが大きいものの、その総磁束量が少ないことによって、第1コア7aには、磁界回転方向に回転させるような磁力が作用しない。また、互いに対向する第2電機子磁極および第2磁極が互いに異なる極性になる。
この状態から、仮想磁石18がさらに回転すると、第1および第2の磁力線G1,G2に起因する磁力によって、第1および第2のコア7a,8aが磁界回転方向に駆動され、軸3が磁界回転方向に回転する。その際、仮想磁石18が図4(a)に示す位置まで回転する間、以上とは逆に、第1コア7aに作用する磁力は、第1磁力線G1の曲がり度合が小さくなるものの、その総磁束量が多くなることによって強くなり、第1コア7aに作用する駆動力が大きくなる。逆に、第2コア8aに作用する磁力は、第2磁力線G2の曲がり度合が大きくなるものの、その総磁束量が少なくなることによって弱くなり、第2コア8aに作用する駆動力が小さくなる。
以上のように、仮想磁石18の回転、すなわち第1および第2の回転磁界の回転に伴い、第1および第2のコア7a,8aにそれぞれ作用する駆動力が、交互に大きくなったり、小さくなったりする状態を繰り返しながら、軸3が磁界回転方向に回転する。この場合、第1および第2のコア7a,8aに作用する駆動力(以下、それぞれ「第1駆動力」「第2駆動力」という)TRQ7a,TRQ8a、軸3のトルク(以下「軸トルク」という)TRQ3の関係は、図7に示すものになる。同図に示すように、第1および第2の駆動力TRQ7a,TRQ8aは、同じ周期でほぼ正弦波状に変化するとともに、位相が半周期分、互いにずれている。また、軸3には第1および第2のコア7a,8aが連結されているため、軸トルクTRQ3は、上記のように変化する第1および第2の駆動力TRQ7a,TRQ8aを足し合わせたものとなり、ほぼ一定になる。
また、図4(a)と図5(b)を比較すると明らかなように、仮想磁石18が所定のピッチP分、回転するのに伴って、第1および第2のコア7a,8aが所定のピッチPの1/2しか回転しないので、軸3は、第1および第2の回転磁界の回転速度の1/2の速度で回転する。これは、第1および第2の磁力線G1,G2に起因する磁力の作用によって、第1および第2のコア7a,8aが、第1磁力線G1で結ばれた第1磁極と第1電機子磁極の中間、および第2磁力線G2で結ばれた第2磁極と第2電機子磁極の中間に、それぞれ位置した状態を保ちながら、回転するためである。
なお、第1および第2の回転磁界の回転中、第1および第2のコア7a,8aは、第1および第2の磁力線G1,G2に起因する磁力によって回転するので、第1および第2の回転磁界に対して、若干遅れた状態で回転する。このため、第1および第2の回転磁界の回転中、仮想磁石18が図5(c)に示す位置にあるときには、第1および第2のコア7a,8aは、実際には図5(c)に示す位置よりも若干、磁界回転方向と逆方向(同図の上方)に位置する状態になるが、上述した回転速度の理解の容易化のために、図5(c)では、第1および第2のコア7a,8aが図中の位置に示されている。
以上のように、本実施形態によれば、軸回転位置に応じて、第1および第2のコア7a、8aの磁化の状態が変わり、すべりを生じることなく軸3を回転させることが可能であり、前述した従来の電動機と異なり、同期機として機能するので、効率を高めることができる。また、第1電機子磁極、第1磁極および第1コア7aの数が、互いに同じに設定されているので、すべての第1電機子磁極、第1磁極および第1コア7aにおいて、第1磁力線G1を適切に発生させることができる。さらに、第2電機子磁極、第2磁極および第2コア8aの数が、互いに同じに設定されているので、すべての第2電機子磁極、第2磁極および第2コア8aにおいて、第2磁力線G2を適切に発生させることができる。以上により、電動機1のトルクを十分に得ることができる。
また、電機子5a、第1および第2の電磁石4a,6aがケース2に固定されているので、例えばこれらを回転可能に構成した場合と異なり、電機子5a、第1および第2の電磁石4a,6aへの電力供給用のスリップリングが不要になる。したがって、その分、電動機1を小型化できるとともに、スリップリングおよびブラシの接触抵抗による発熱が発生することがなく、効率をさらに高めることができる。
さらに、鋼板を積層した第1および第2のコア7a,8aを回転させるので、比較的強度の低い永久磁石を回転させる場合と比較して、耐久性を向上させることができる。
さらに、第1および第2の電磁石4a,6aを用いるので、大きな磁力の永久磁石を用いた場合と異なり、前述した部品間の接触防止作業を行うことなく、電動機1の組立作業を容易に行うことができる。また、電機子5aに電力を供給せずに、動力を入力することにより軸3を駆動する際、第1および第2の電磁石4a,6aとして永久磁石を用いた場合と異なり、第1および第2の電磁石4a,6aへの通電を停止することによって、両者4a,6aの磁力に起因する損失の発生を防止することができる。さらに、電機子5aに電力が供給されていない状態で、軸3に大きな動力が入力された場合に、第1および第2の電磁石4a,6aへの通電を停止し、両者4a,6aの磁力をほぼ値0に制御することによって、電機子5aに大きな誘導起電力が発生するのを防止でき、それにより、電機子5aや可変電源16などの損傷を防止することができる。
また、ECU17により、電動機1の負荷が高いほど、第1および第2の電磁石4a,6aの磁力をより強める。したがって、高負荷時で大きな出力が必要な場合に、第1および第2の電磁石4a,6aの磁力が強められるので、前述した第1および第2の磁力線G1,G2に起因する磁力が強められることによって、出力を十分に得ることができる。また、低負荷時で大きな出力を必要としない場合に、第1および第2の電磁石4a,6aの磁力が弱められるので、電機子5aにおける誘導起電力を低減でき、したがって、効率を向上させることができる。さらに、軸回転速度が高いほど、第1および第2の電機子磁極ならびに第1および第2の磁極の磁力が、より弱められるので、高速回転時に、電機子5aに供給される界磁弱め電流を低減することが可能になり、効率を高めることができる。
また、一般的なU相、V相およびW相の3相コイル5cを用いるので、特別な界磁巻線を用意することなく、電動機1を容易かつ安価に構成することができる。さらに、第1および第2の回転磁界を発生させるステータを、単一の第2ステータ5で構成し、第1〜第3のステータ4〜6を、単一の周壁2aに取り付けるとともに、第1および第2のロータ7,8を単一の軸3に取り付ける。したがって、第1および第2の回転磁界発生用のステータを2つのステータで構成するとともに、第1〜第3のステータ4〜6、第1および第2のロータ7,8をそれぞれ、別の部材に取り付ける場合と比較して、部品点数を削減でき、それにより、製造コストを削減できるとともに、小型化することができる。
また、電機子5a、第1および第2の電磁石4a,6aと第1および第2のコア7a,8aとの相対的な位置関係を求めるとともに、この位置関係に基づいて、第1および第2の回転磁界が制御される。さらに、第1および第2の電磁石4a,6aがケース2に固定されている(速度=0)ことと、軸3が第1および第2の回転磁界の回転速度の1/2の速度で回転することから明らかなように、第1および第2の回転磁界の回転速度は、ケース2および軸3との間に共線関係を満たすように制御される。以上により、電動機1の適切な動作を確保することができる。
さらに、第1〜第3のステータ4〜6、第1および第2のロータ7,8を、軸線方向に並ぶように配置するので、電動機1の径方向の寸法を小さくすることができる。
また、例えば、複数の電動機1を連結して用いることにより出力を高める場合、図8に示すように、第3ステータ6を第1ステータ4として共用できるので、複数の電動機1を、そのまま連結する場合と比較して、コンパクトに構成することができる。
なお、本実施形態では、第1および第2の回転磁界の制御を、電機子5a、第1および第2の電磁石4a,6aと第1および第2のコア7a,8aとの相対的な位置関係に基づいて行っているが、ケース2または第1〜第3のステータ4〜6の任意の部位と、軸3または第1および第2のロータ7,8の任意の部位との相対的な位置関係に基づいて行ってもよい。
図9は、第1実施形態の第1変形例を示している。この第1変形例では、第1および第2の電磁石4e,6eは、その鉄芯4b,6bを磁化可能な永久磁石4fおよび6fを有している。これらの永久磁石4fおよび6fはそれぞれ、それらの一方の面が鉄芯4b,6bに取り付けられるとともに、他方の面が第1および第2のロータ7,8に対向している。また、永久磁石4fおよび6fの極性は、周方向に同じ位置のもの同士は同じ極性で、周方向に隣り合う各2つについては互いに異なっている。したがって、上述した第1実施形態の効果を同様に得ることができる。
また、第1および第2の電磁石4e,6eのコイル4c,6cの断線や可変電源15の故障が発生した場合でも、永久磁石4f,6fの磁力によって、電動機1の出力を確保することができる。さらに、比較的小さな磁力の永久磁石4f,6fを用いても、コイル4c,6cの磁力により補い、界磁を適切に行えるので、そのような永久磁石4f,6fを用いることによって、前述した部品間の接触防止作業を行うことなく、電動機1の組立作業を容易に行うことができる。なお、この第1変形例では、第1および第2の電磁石4e,6eが、第1および第2の磁極にそれぞれ相当する。
図10は、第1実施形態の第2変形例を示している。この第2変形例では、第1および第2の電磁石4a,6aに代えて、第1および第2の永久磁石4g,6gが設けられている。第1および第2の永久磁石4g,6gは、第1および第2の電磁石4a,6aと同様に配置されているので、第1実施形態の効果を同様に得ることができる。また、第1実施形態および第1変形例と異なり、可変電源15やコイル4cが不要になる。これにより、電動機1を小型化できるとともに、構成を単純化することができる。なお、この第2変形例では、第1および第2の永久磁石4g,6gが、第1および第2の磁極にそれぞれ相当する。
次に、図11を参照しながら、本発明の第2実施形態による電動機20について説明する。前述した第1実施形態の電動機1が、第1ステータ4などを軸方向に配置したタイプのものであるのに対し、本実施形態の電動機20は、ステータなどを径方向に配置したタイプのものである。同図において、電動機20の構成要素のうち、前述した第1実施形態の電動機1と同じものについては、同じ符号を用いて示している。以下、第1実施形態と異なる点を中心として説明する。
図11に示すように、電動機20は、軸受け9および10に回転自在にそれぞれ支持された第1軸21および第2軸22と、ケース2内に設けられた第1ロータ23と、ケース2内に第1ロータ23に対向するように設けられたステータ24と、両者23,24の間に所定の間隔を存した状態で設けられた第2ロータ25とを備えている。第1ロータ23、第2ロータ25およびステータ24は、第1軸21の径方向に、内側からこの順で並んでいる。なお、第1および第2の軸21,22は、同心状に配置されるとともに、スラスト軸受け(図示せず)によって、その軸線方向にほぼ移動不能になっている。
第1ロータ23は、2n個の第1永久磁石23aおよび第2永久磁石23bを有しており、第1および第2の永久磁石23a,23bはそれぞれ、第1軸21の周方向(以下、単に「周方向」という)に等間隔で並んでいる。各第1永久磁石23aは、第1軸21の軸線方向(以下、単に「軸線方向」という)に直交する断面が扇形状になっており、軸線方向に若干延びている。各第2永久磁石23bは、第1永久磁石23aと同じ形状および寸法を有している。また、第1および第2の永久磁石23a,23bは、リング状の固定部23cの外周面に、軸線方向に並び、互いに接した状態で取り付けられている。固定部23cは、軟磁性体、例えば鉄で構成されており、その内周面が、第1軸21に一体に同心状に設けられた円板状のフランジ23dの外周面に取り付けられている。以上の構成により、第1および第2の永久磁石23a,23bは、第1軸21と一体に回転自在になっている。
また、図12に示すように、第1軸21を中心として、周方向に隣り合う各2つの第1および第2の永久磁石23a,23bがなす中心角は、所定角度θである。また、第1および第2の永久磁石23a,23bの極性は、軸線方向に並んだもの同士は同じ極性で、周方向に隣り合う各2つについては互いに異なっている。以下、第1および第2の永久磁石23a,23bの磁極をそれぞれ、「第1磁極」および「第2磁極」という。
なお、本実施形態では、ケース2が第1および第4の部材に、第1軸21が第2および第5の部材に、第2軸22が第3および第6の部材に、第1ロータ23が第1および第2の磁極列に、第1および第2の永久磁石23a,23bが第1および第2の磁極に、それぞれ相当する。
ステータ24は、前述した第2ステータ5と同様、第1および第2の回転磁界を発生させるものであり、周方向に等間隔で並んだ3n個の電機子24aを有している。各電機子24aは、前述した電機子5aと同様、鉄芯24bと、鉄芯24bに集中巻で巻回されたコイル24cなどで構成されている。鉄芯24bは、軸線方向に直交する断面が扇形状になっており、軸線方向に第1永久磁石23aの約2倍の長さを有している。鉄芯24bの内周面の軸線方向の中央部には、周方向に延びる溝24dが形成されている。3n個のコイル24cは、n組のU相、V相およびW相の3相コイルを構成している(図12参照)。また、電機子24aは、周壁2aの内周面に、リング状の固定部24eを介して取り付けられている。以上のような電機子24a、第1および第2の永久磁石23a,23bの数と配置から、ある1つの電機子24aの中心が、第1および第2の永久磁石23a,23bの中心と周方向に一致したときには、その電機子24aに対して2つおきの電機子24aの中心と、その第1および第2の永久磁石23a,23bに対して1つおきの第1および第2の永久磁石23a,23bの中心とが、周方向に一致する。
さらに、電機子24aは、可変電源16に接続されており、電力が供給されたときに、鉄芯24bの第1および第2の永久磁石23a,23b側の端部に、互いに異なる極性の磁極がそれぞれ発生するように構成されている。また、これらの磁極の発生に伴って、第1ロータ23の第1永久磁石23a側の部分との間および第2永久磁石23b側の部分との間に、第1および第2の回転磁界が周方向に回転するようにそれぞれ発生する。以下、鉄芯24bの第1および第2の永久磁石23a,23b側の端部に発生する磁極をそれぞれ、「第1電機子磁極」および「第2電機子磁極」という。また、これらの第1および第2の電機子磁極の数はそれぞれ、第1永久磁石23aの磁極の数と同じ、すなわち2nである。
なお、本実施形態では、ステータ24が第1および第2の電機子列に、電機子24aが第1および第2の電機子に、コイル24cが3相の界磁巻線に、それぞれ相当する。
第2ロータ25は、複数の第1コア25aおよび第2コア25bを有している。第1および第2のコア25a,25bはそれぞれ、周方向に等間隔で並んでおり、両者25a,25bの数はいずれも、第1永久磁石23aと同じ、すなわち2nに設定されている。各第1コア25aは、軟磁性体、例えば複数の鋼板を積層したもので、軸線方向に直交する断面が扇形状になっており、軸線方向に所定の長さで延びている。各第2コア25bは、第1コア25aと同様、複数の鋼板を積層したもので、軸線方向に直交する断面が扇形状になっており、軸線方向に所定の長さで延びている。
第1および第2のコア25a,25bはそれぞれ、円板状のフランジ25eの外端部に、軸線方向に若干延びる棒状の連結部25c,25dを介して取り付けられている。フランジ25eは、第2軸22に一体に同心状に設けられている。この構成により、第1および第2のコア25a,25bは、第2軸22と一体に回転自在になっている。
また、軸線方向において、第1コア25aは、第1ロータ23の第1永久磁石23a側の部分とステータ24の間に配置され、第2コア25bは、第1ロータ23の第2永久磁石23b側の部分とステータ24の間に配置されている。さらに、第2コア25bは、第1コア25aに対して周方向に互い違いに並んでおり、その中心が、第1コア25aの中心に対して、所定角度θの1/2、ずれている。
なお、本実施形態では、第2ロータ25が第1および第2の軟磁性体列に、第1コア25aが第1軟磁性体に、第2コア25bが第2軟磁性体に、それぞれ相当する。
また、電動機20には、第1および第2の回転位置センサ50a,50b(第1相対位置関係検出装置、第2相対位置関係検出装置)が設けられており、両者50a,50bはそれぞれ、第1および第2の軸21,22の回転位置を表す検出信号を、ECU17に出力する。
ECU17は、検出された第1および第2の軸21,22の回転位置に基づき、電機子24aと、第1および第2の永久磁石23a,23bと、第1および第2のコア25a,25bとの相対的な位置関係を求めるとともに、この位置関係に基づいて、電機子5aの3相コイル5cへの通電を制御し、それにより、第1および第2の回転磁界を制御する。
以上の構成の電動機20では、第1および第2の軸21,22の一方を固定、またはこれらの一方に動力を入力した状態で、これらの他方を回転させるように構成されている。
また、図12に示すように、第1および第2の回転磁界の発生中、各第1電機子磁極の極性が、それに対向する(最も近い)各第1磁極の極性と異なるときには、各第2電機子磁極の極性は、それに対向する(最も近い)各第2磁極の極性と同じになる。また、各第1磁極と各第1電機子磁極の間に、各第1コア25aが位置しているときには、各第2コア25bが、周方向に隣り合う各2組の第2電機子磁極および第2磁極の間に位置する。また、図示しないが、第1および第2の回転磁界の発生中、各第2電機子磁極の極性が、それに対向する(最も近い)各第2磁極の極性と異なるときには、各第1電機子磁極の極性は、それに対向する(最も近い)各第1磁極の極性と同じになる。また、各第2磁極と各第2電機子磁極の間に、各第2コア25bが位置しているときには、各第1コア25aが、周方向に隣り合う各2組の第1電機子磁極および第1磁極の間に位置する。
なお、図12では、展開図として示したために、電機子24aおよび固定部24eが2つに分かれているように示されているものの、これらは実際には1つのものであるので、図12の構成を、それと等価のものとして図13のように示すことができる。この図13と前述した図2との比較から明らかなように、第1および第2の永久磁石23a,23b、電機子24a、第1および第2のコア25a,25bの間の位置関係は、前述した第1および第2の電磁石4a,6a、電機子5a、第1および第2のコア7a,8aの間の位置関係と同様であることが分かる。
このため、以下、電動機20の動作を、第1および第2の永久磁石23a,23b、電機子24a、第1および第2のコア25a,25bが、図13に示すように配置されているものとして説明する。また、この動作説明を、前述した電動機1の動作説明と同様、第1および第2の回転磁界の動きを仮想磁石18の物理的な動きに置き換えて行うものとする。
第1軸21を固定した状態で、第2軸22を回転させる場合の電動機20の動作は、図4および図5を用いて前述した電動機1の動作と同様であるので、その説明については省略する。なお、この場合、第2軸22の回転速度(以下「第2軸回転速度」という)V2は、前述した電動機1の軸3と同様、第1および第2の回転磁界の回転速度(以下「磁界回転速度」という)V0の1/2の大きさになり、V2=V0/2が成立する。すなわち、この場合の第1軸21の回転速度(以下「第1軸回転速度」という)V1、第2軸回転速度V2および磁界回転速度V0の関係は、図14(a)に示すように表される。
次に、図15および図16を参照しながら、第2軸22を固定した状態で、第1軸21を回転させる場合の電動機20の動作について説明する。なお、以下の説明では、仮想磁石18の第1および第2の永久磁石23a,23b側の磁極をそれぞれ、第1および第2の電機子磁極として、第1永久磁石23aとの間および第2永久磁石23bとの間にそれぞれ発生する回転磁界を、第1および第2の回転磁界として、説明する。
第1コア25aが、前述したように配置されているので、第1磁極と第1電機子磁極によって磁化されるとともに、第1磁極、第1コア25aおよび第1電機子磁極の間に、磁力線(以下「第1磁力線」という)G1’が発生する。同様に、第2コア25bが、前述したように配置されているので、第2電機子磁極および第2磁極によって磁化されるとともに、第2電機子磁極、第2コア25bおよび第2磁極の間に、磁力線(以下「第2磁力線」という)G2’が発生する。
まず、図15(a)に示すように、各第1コア25aが第1永久磁石23aに対向するとともに、各第2コア25aが隣り合う各2つの第2永久磁石23bの間に位置した状態から、第1および第2の回転磁界を同図の下方に回転させるように発生させる。その発生の開始時においては、各第1電機子磁極の極性を、それに対向する各第1磁極の極性と異ならせるとともに、各第2電機子磁極の極性をそれに対向する各第2磁極の極性と同じにする。
この状態から、仮想磁石18が図15(b)に示す位置に回転すると、第1コア25aと第1電機子磁極の間の第1磁力線G1’が曲がった状態になるのに伴い、第2電機子磁極が第2コア25bに近づくことによって、第2電機子磁極、第2コア25bおよび第2磁極を結ぶような第2磁力線G2’が発生する。その結果、第1および第2の永久磁石23a,23b、仮想磁石18、ならびに第1および第2のコア25a,25bにおいて、前述した図6(b)に示すような磁気回路が構成される。
この状態では、第1磁極と第1コア25aの間の第1磁力線G1’の総磁束量は高いものの、この第1磁力線G1’がまっすぐであるため、第1コア25aに対して第1永久磁石23aを回転させるような磁力が発生しない。また、第2磁極およびこれと異なる極性の第2電機子磁極の間の距離が比較的長いことにより、第2コア25bと第2磁極の間の第2磁力線G2’の総磁束量は比較的少ないものの、その曲がり度合いが大きいことによって、第2永久磁石23bに、これを第2コア25bに近づけるような磁力が作用する。これにより、第2永久磁石23bは、第1永久磁石23aとともに、仮想磁石18の回転方向すなわち磁界回転方向と逆方向(図15の上方)に駆動され、図15(c)に示す位置に向かって回転する。また、これに伴い、第1軸21が磁界回転方向と逆方向に回転する。
そして、第1および第2の永久磁石23a,23bが図15(b)に示す位置から図15(c)に示す位置に向かって回転する間、仮想磁石18は、図15(d)に示す位置に向かって回転する。以上のように、第2永久磁石23bが第2コア25bに近づくことにより、第2コア25bと第2磁極の間の第2磁力線G2’の曲がり度合いは小さくなるものの、仮想磁石18が第2コア25bにさらに近づくのに伴い、第2磁力線G2’の総磁束量は多くなる。その結果、この場合にも、第2永久磁石23bに、これを第2コア25b側に近づけるような磁力が作用し、それにより、第2永久磁石23bが、第1永久磁石23aとともに、磁界回転方向と逆方向に駆動される。
また、第1永久磁石23aが磁界回転方向と逆方向に回転するのに伴い、第1磁極と第1コア25aの間の第1磁力線G1’が曲がることによって、第1永久磁石23aに、これを第1コア25aに近づけるような磁力が作用する。しかし、この状態では、第1磁力線G1’に起因する磁力は、第1磁力線G1’の曲がり度合いが第2磁力線G2’よりも小さいことによって、上述した第2磁力線G2’に起因する磁力よりも弱い。その結果、両磁力の差分に相当する磁力によって、第2永久磁石23bが第1永久磁石23aとともに、磁界回転方向と逆方向に駆動される。
そして、図15(d)に示すように、第1磁極と第1コア25aの間の距離と、第2コア25bと第2磁極の間の距離が互いにほぼ等しくなったときには、第1磁極と第1コア25aの間の第1磁力線G1’の総磁束量および曲がり度合いが、第2コア25bと第2磁極の間の第2磁力線G2’の総磁束量および曲がり度合いとそれぞれほぼ等しくなる。その結果、これらの第1および第2の磁力線G1’,G2’に起因する磁力が互いにほぼ釣り合うことによって、第1および第2の永久磁石23a,23bが一時的に駆動されない状態になる。
この状態から、仮想磁石18が図16(a)に示す位置まで回転すると、第1磁力線G1’の発生状態が変化し、図16(b)に示すような磁気回路が構成される。それにより、第1磁力線G1’に起因する磁力が、第1永久磁石23aを第1コア25aに近づけるようにほとんど作用しなくなるので、第2磁力線G2’に起因する磁力によって、第2永久磁石23bは、第1永久磁石23aとともに、図16(c)に示す位置まで、磁界回転方向と逆方向に駆動される。
そして、図16(c)に示す位置から、仮想磁石18が若干、回転すると、以上とは逆に、第1磁極と第1コア25aの間の第1磁力線G1’に起因する磁力が、第1永久磁石23aに、これを第1コア25aに近づけるように作用し、それにより、第1永久磁石23aが第2永久磁石23bとともに、磁界回転方向と逆方向に駆動され、第1軸21が磁界回転方向と逆方向に回転する。そして、仮想磁石18がさらに回転すると、第1磁極と第1コア25aの間の第1磁力線G1’に起因する磁力と第2コア25bと第2磁極の間の第2磁力線G2’に起因する磁力の差分に相当する磁力によって、第1永久磁石23aが第2永久磁石23bとともに、磁界回転方向と逆方向に駆動される。その後、第2磁力線G2’に起因する磁力が、第2永久磁石23bを第2コア25bに近づけるようにほとんど作用しなくなると、第1磁力線G1’に起因する磁力によって、第1永久磁石23aが第2永久磁石23bとともに駆動される。
以上のように、第1および第2の回転磁界の回転に伴い、第1磁極と第1コア25aの間の第1磁力線G1’に起因する磁力と、第2コア25bと第2磁極の間の第2磁力線G2’に起因する磁力と、これらの磁力の差分に相当する磁力とが、第1および第2の永久磁石23a,23bに、すなわち第1軸21に交互に作用し、それにより、第1軸21が磁界回転方向と逆方向に回転する。また、そのように磁力すなわち駆動力が、第1軸21に交互に作用することによって、第1軸21のトルクは、ほぼ一定になる。
この場合、図14(b)に示すように、第1軸21は、第1および第2の回転磁界と同じ速度で逆回転し、V1=−V0が成立する。これは、第1および第2の磁力線G1’,G2’に起因する磁力の作用によって、第1および第2のコア25a,25bが、第1磁極と第1電機子磁極の中間、および第2磁極と第2電機子磁極の中間にそれぞれ位置した状態を保ちながら、第1および第2の永久磁石23a,23bが回転するためである。
なお、第1軸21および第2軸22を回転可能にし、両者21,22の一方に動力を入力した状態で、他方を回転させる場合には、磁界回転速度V0、第1軸回転速度V1、および第2軸回転速度V2の間に、次のような関係が成立する。すなわち、前述したように、第1および第2の磁力線G1,G2に起因する磁力の作用によって、第1および第2のコア7a,8aは、第1磁極と第1電機子磁極の中間、および第2磁極と第2電機子磁極の中間にそれぞれ位置した状態を保ちながら回転する。このことは、第1および第2のコア25a,25bにも同様に当てはまる。第1および第2のコア25a,25bがそのように回転するので、両者25aおよび25bと一体の第2軸22の回転角度は、第1および第2の回転磁界の回転角度と、第1および第2の磁極の回転角度すなわち第1軸21の回転角度との平均値になる。
したがって、第1および第2の軸21,22の一方に動力を入力し、他方を回転させる場合の磁界回転速度V0、第1および第2軸の回転速度V1,V2の関係は、次式(3)によって表すことができる。
V2=(V0+V1)/2 ……(3)
この場合、磁界回転速度V0と、第1および第2の軸21,22の一方の回転速度を制御することによって、他方の回転速度を制御することができる。図14(c)は、第1および第2軸21,22をいずれも磁界回転方向に回転させた例、図14(d)は、第1軸21を逆回転させた例である。
以上のように、本実施形態によれば、第1および第2の軸21,22のいずれを回転させる場合にも、第1および第2の軸21,22の相対的な回転位置に応じて、第1および第2のコア25a,25bの磁化の状態が変わり、すべりを生じることなく回転させることが可能であり、同期機として機能するので、効率を高めることができる。また、第1電機子磁極、第1磁極および第1コア25aの数が、互いに同じに設定されるとともに、第2電機子磁極、第2磁極および第2コア25bの数が、互いに同じに設定されているので、第1および第2の軸21,22のいずれを駆動する場合にも、電動機20のトルクを十分に得ることができる。
さらに、電機子24aがケース2に固定されているので、例えば電機子24aを回転可能に構成した場合と異なり、電機子24aへの電力供給用のスリップリングが不要になる。したがって、その分、電動機20を小型化できるとともに、スリップリングおよびブラシの接触抵抗による発熱が発生することがなく、効率をさらに高めることができる。
また、第1および第2の永久磁石23a,23bを用いるので、両者23a,23bに代えて電磁石を用いた場合と異なり、第1実施形態の第2変形例と同様、可変電源15が不要になり、構成を単純化できるとともに、電動機20をさらに小型化することができる。さらに、同じ理由により、第1および第2の永久磁石23a,23bに代えて電磁石を用いた場合と異なり、電磁石への電力供給用のスリップリングが不要になり、その分、電動機20をより一層、小型化できるとともに、効率をより一層、高めることができる。
また、一般的なU相、V相およびW相の3相コイル24cを用いるので、第1実施形態と同様、特別な界磁巻線を用意することなく、電動機20を容易かつ安価に構成することができる。さらに、第1および第2の回転磁界を発生させるステータを、単一のステータ24で構成し、第1および第2の永久磁石23a,23bを、単一の第1軸21に取り付け、第1および第2のコア25a,25bを、単一の第2軸22に取り付ける。したがって、第1および第2の回転磁界発生用のステータを2つのステータで構成するとともに、第1および第2の永久磁石23a,23b、ならびに第1および第2のコア25a,25bをそれぞれ、別の部材に取り付ける場合と比較して、第1実施形態と同様、部品点数を削減でき、それにより、製造コストを削減できるとともに、電動機20を小型化することができる。
また、電機子24aと、第1および第2の永久磁石23a,23bと、第1および第2のコア25a,25bとの相対的な位置関係を求めるとともに、この位置関係に基づいて、第1および第2の回転磁界を制御する。さらに、図14から明らかなように、磁界回転速度V0を、第1および第2の軸回転速度V1,V2との間に共線関係を満たすように制御する。以上により、電動機20の適切な動作を確保することができる。
また、ステータ24、第1および第2のロータ23,25を、第1軸21の径方向に並ぶように配置するので、電動機20の軸線方向の寸法を小さくすることができる。
なお、第1および第2の永久磁石23a,23bに代えて、第1および第2の電磁石4a,6aまたは4e,6eを用いてもよい。その場合には、第1実施形態の第1または第2の変形例による前述した効果を、同様に得ることができる。また、ステータ24を回転可能に構成し、ステータ24と第1および第2のロータ23,25の一方に動力を入力した状態で、両者23,25の他方を回転させてもよい。この場合にも、同期機として機能するので、効率を高めることができる。
さらに、第1および第2の回転磁界の制御を、電機子24aと、第1および第2の永久磁石23a,23bと、第1および第2のコア25a,25bとの相対的な位置関係に基づいて行っているが、ケース2またはステータ24の任意の部位と、第1軸21または第1ロータ23の任意の部位と、第2軸22または第2ロータ25の任意の部位との相対的な位置関係に基づいて行ってもよい。
次に、図17および図18を参照しながら、本発明の第3実施形態による電動機30について説明する。前述した第1および第2の実施形態の電動機1,20が回転機として構成されているのに対し、この電動機30は、リニアモータとして構成されている。また、図17および図18において、電動機30の構成要素のうち、前述した第1実施形態の電動機1と同じものについては、同じ符号を用いて示している。以下、第1実施形態と異なる点を中心として説明する。
電動機30のケース31は、前後方向(図17の奥側を前、手前側を後とする)を長手方向とする板状の底壁31aと、底壁31aの左右の両端部からそれぞれ上方に延び、互いに対向する側壁31bおよび31cとを一体に有している。
図18に示すように、電機子5a、第1および第2の電磁石4a,6aは、前後方向に並んでおり、この点のみが第1実施形態と異なっており、これらの数、ピッチや配置は、第1実施形態と同様である。
第1および第2の電磁石4a,6aは、底壁31aの上面の左端部および右端部に、固定部4hおよび6hを介して、それぞれ取り付けられている。また、両者4a,6aの鉄芯4b,6bは、側壁31b,31cの内面にそれぞれ取り付けられている。電機子5aは、底壁31aの上面の中央部に、固定部5eを介して取り付けられている。また、電機子5aに電力が供給されると、第1ステータ4との間および第3ステータ6との間に、第1および第2の移動磁界が、前後方向に移動するようにそれぞれ発生する。
また、電動機30は、前述した第1および第2のロータ7,8に代えて、第1および第2の移動子32,33を有している。第1および第2の移動子32,33は、前後方向に並んだ複数、例えば3個の第1および第2のコア7a,8aをそれぞれ有している。第1および第2のコア7a,8aはそれぞれ、前後方向に第1電磁石4aと同じピッチで等間隔に、かつ互い違いに配置されている。
また、第1および第2のコア7a,8aの底部には、車輪32a,33aがそれぞれ設けられている。第1および第2のコア7a,8aは、車輪32a,33aを介して底壁31aの上面のレール(図示せず)に載置されており、それにより、前後方向に移動自在であるとともに、左右方向に移動不能になっている。さらに、第1および第2のコア7a,8aは、その上端部に設けられた連結部32b,33bを介して、可動板34で連結されている。
なお、本実施形態では、ケース31が第1、第2、第4および第5の部材に、可動板34が第3および第6の部材に、第1および第2の移動子32,33が第1および第2の軟磁性体列に、それぞれ相当する。
また、電動機30には、位置センサ50c(第1相対位置関係検出装置、第2相対位置関係検出装置)が設けられており、位置センサ50cは、ケース31に対する可動板34の位置(以下「可動板位置」という)を表す検出信号をECU17に出力する。ECU17は、検出された可動板位置に応じ、電機子5a、第1および第2の電磁石4a,6aと、第1および第2のコア7a,8aとの相対的な位置関係を求めるとともに、この位置関係に基づいて、電機子5aの3相コイル5cへの通電を制御し、それにより、第1および第2の移動磁界を制御する。また、ECU17は、可動板位置に応じ、可動板34の移動速度(以下「可動板移動速度」という)を算出するとともに、算出した可動板移動速度と、電機子5a、第1および第2の電磁石4a,6aに供給されている電流に応じて、電動機1の負荷を算出するとともに、算出した負荷に応じて、電機子5a、第1および第2の電磁石4a,6aに供給される電流を、第1実施形態と同様にして制御する。
図18と図2の比較から明らかなように、第1および第2の電磁石4a,6a、電機子5a、第1および第2のコア7a,8aは、第1実施形態と同様に配置されている。したがって、第1および第2の移動磁界の発生に伴い、前述した第1および第2の磁力線G1,G2に起因する磁力の作用によって、可動板34は、第1および第2の移動磁界の移動方向に移動する。この場合にも、可動板位置に応じて、第1および第2のコア7a、8aの磁化の状態が変わり、すべりを生じることなく可動板34を移動させることが可能であり、電動機30は同期機として機能するので、第1実施形態と同様、効率を高めることができる。その他、第1実施形態の効果を同様に得ることができる。
なお、電動機30を次のようにして構成してもよい。すなわち、第1および第2の電磁石4a,6aを、可動板34とは別の第2可動板で連結するとともに、第2可動板と一体に前後方向に移動自在に構成する。そして、第2実施形態のように、この第2可動板および可動板34の一方を駆動してもよい。この場合、第2可動板および可動板34のいずれを駆動する場合にも、第2実施形態と同様、同期機として機能するので、効率を高めることができる。それに加え、電機子5aを、第3可動板で連結するとともに、第3可動板と一体に前後方向に移動自在に構成してもよい。この場合にも、同期機として機能するので、効率を高めることができる。
また、第1および第2の電磁石4a,6aに代えて、第1および第2の電磁石4e,6eまたは第1および第2の永久磁石4g,6gを用いてもよい。その場合には、第1実施形態の第1または第2の変形例による前述した効果を同様に得ることができる。
さらに、第1および第2の移動磁界の制御を、電機子5a、第1および第2の電磁石4a,6aと、第1および第2のコア7a,8aとの相対的な位置関係に基づいて行っているが、ケース31または第1〜第3のステータ4〜6の任意の部位と、可動板34または第1および第2の移動子32,33の任意の部位との相対的な位置関係に基づいて行ってもよい。
次に、図19を参照しながら、本発明の第4実施形態による電動機40について説明する。この電動機40は、第1実施形態の電動機1を2つの電動機に分割するとともに、両者をギヤ機構で連結したものである。同図において、電動機40の構成要素のうち、第1実施形態の電動機1と同じものについては、同じ符号を用いて示している。以下、第1実施形態と異なる点を中心として説明する。
この電動機40は、第1電動機41、第2電動機42およびギヤ部43を有している。第1電動機41は、第1実施形態の電動機1の第2ステータ6および第2ロータ8以外の構成要素で構成されており、電機子5aの各鉄芯5cの第1ロータ7と逆側の端部は、側壁2cに取り付けられている。また、電機子5aは、第1可変電源16aに接続されていて、第1実施形態と異なり、第1電機子磁極および第1回転磁界のみを発生させる。さらに、第1電動機41の軸41aは、ギヤ部43に連結されている。
第2電動機42は、電動機1の第1ステータ4および第1ロータ7以外の構成要素で構成されており、電機子5aの各鉄芯5cの第2ロータ8と逆側の端部は、側壁2bに取り付けられている。また、電機子5aは、第1可変電源16aとは別の第2可変電源16bに接続されており、第2電機子磁極および第2回転磁界のみを第1回転磁界の回転方向と同じ方向に発生させる。さらに、第2電動機42の軸42aは、ギヤ部43に連結されている。また、電機子5a、第2電磁石6aおよび第2コア8aは、第1電動機41の電機子5a、第1電磁石4aおよび第1コア7aとそれぞれ比較し、その数がm倍で、ピッチが1/mになっている。以上の構成により、第2電動機42の軸42aは、第1電動機41の軸41aの1/mの回転速度で同じ方向に回転する。また、第2電動機42の軸42aは、ギヤ部43に連結されている。
なお、本実施形態では、第1電動機41のケース2が第1および第2の部材に、第2電動機42のケース2が第4および第5の部材に、軸41aおよび42aが第3および第6の部材に、第1および第2の電動機41,42の第2ステータ5が第1および第2の電機子列に、第1および第2の電動機41,42の電機子5aが第1および第2の電機子に、それぞれ相当する。
ギヤ部43は、複数のギヤを組み合わせたものであり、軸42aの回転を、m倍に増速し、軸41aに伝達するように構成されている。
第1および第2の電動機41,42には、第1および第2の回転位置センサ50d,50e(第1相対位置関係検出装置、第2相対位置関係検出装置)が設けられており、これらのセンサ50d,50eはそれぞれ、軸41a,42aの回転位置を表す検出信号を、ECU17に出力する。ECU17は、検出された軸41a,42aの回転位置に基づき、第1電磁石4aおよび電機子5aと第1コア7aとの相対的な位置関係と、第2電磁石6aおよび電機子5aと第2コア8aとの相対的な位置関係を求めるとともに、これらの位置関係に基づいて、電機子5aの3相コイル5cへの通電を制御し、それにより、第1および第2の回転磁界を制御する。
また、ECU17は、第1実施形態と同様、軸41a,42aの回転速度と第1および第2の電動機41,42の負荷を算出するとともに、算出したこれらのパラメータに応じて、電機子5a、第1および第2の電磁石4a,6aに供給される電流を制御する。
以上のように、電動機40は、第1実施形態の電動機1を2つの第1および第2の電動機41,42に分割し、両者41,42をギヤ部43で連結したものである。また、第2電動機42の軸42aが、第1電動機41の軸41aの1/mの速度で回転するとともに、軸42aの回転が、ギヤ部43でm倍に増速した状態で軸41aに伝達される。以上により、本実施形態によれば、第1実施形態の効果を同様に得ることができる。
なお、第2電動機42を、第1電動機41の1/mの回転速度で回転するように構成したが、これとは逆に、第1電動機41を、第2電動機42の1/mの回転速度で回転するように構成してもよい。また、第1および第2の電磁石4a,6aに代えて、第1および第2の電磁石4e,6eまたは第1および第2の永久磁石4g,6gを用いてもよい。さらに、軸41a,42aを必ずしも同心状に配置する必要はなく、例えば互いに直交するように配置し、両者41a,42aをギヤ部43で連結するようにしてもよい。
また、第1および第2の回転磁界の制御を、第1電磁石4aおよび電機子5aと第1コア7aとの相対的な位置関係と、第2電磁石6aおよび電機子5aと第2コア8aとの相対的な位置関係に基づいて行っているが、第1電動機41のケース2または第1および第2のステータ4,5の任意の部位と軸41aまたは第1ロータ7の任意の部位との相対的な位置関係と、第2電動機42のケース2または第2および第3のステータ5,6の任意の部位と軸42aまたは第2ロータ8の任意の部位との相対的な位置関係に基づいて行ってもよい。
次に、図20を参照しながら、本発明の第5実施形態による電動機60について説明する。この電動機60は、第4実施形態と同様、電動機1を分割した2つの電動機をギヤ機構で連結したものである。同図において、電動機60の構成要素のうち、第4実施形態の電動機40と同じものについては、同じ符号を用いて示している。以下、第4実施形態と異なる点を中心として説明する。
この電動機60は、第1電動機61、第2電動機71およびギヤ部81を有している。第1電動機61は、上述した第4実施形態の第1電動機41と比較して、軸41aに代えて第1軸62および第2軸63を有することと、第1ステータ4に代えて磁石ロータ64を有することが主に異なっている。
第1軸62の両端部は、軸受け9,65にそれぞれ回転自在に支持されており、第1軸62には、ギヤ62aが設けられている。第2軸63は、円筒状のもので、軸受け10に回転自在に支持されており、第1軸62に同心に回転自在に嵌合している。また、第2軸63には、前述した第1ロータ7のフランジ7bとギヤ63aが設けられている。これにより、第1コア7aは、第2軸63と一体に回転自在になっている。
磁石ロータ64は、複数の第1電磁石4aを有しており、これらの第1電磁石4aは、第1軸62に設けられたフランジ64aに取り付けられており、周方向に並んでいる。これにより、第1電磁石4aは、第1軸62と一体に回転自在になっている。また、第1電磁石4aの数や配置は、第1実施形態と同様である。なお、第1電磁石4aは、スリップリング(図示せず)を介して可変電源15に接続されている。
第2電動機71は、第1電動機61と対称に構成されており、第4実施形態の第2電動機42と比較して、軸42aに代えて第1軸72および第2軸73を有すること、第3ステータ6に代えて磁石ロータ74を有すること、電機子5aおよび第2コア8aが、第1実施形態とそれぞれ同じ数で同様に配置されていることが、主に異なっている。
第1軸72の両端部は、軸受け10,75にそれぞれ回転自在に支持されており、第1軸72には、ギヤ72aが設けられている。第2軸73は、前述した第2軸63と同様、円筒状のもので、軸受け9に回転自在に支持されており、第1軸72に回転自在に嵌合している。また、第2軸73には、前述した第2ロータ8のフランジ8bとギヤ73aが設けられている。これにより、第2コア8aは、第2軸73と一体に回転自在になっている。
磁石ロータ74は、複数の第2電磁石6aを有しており、これらの第2電磁石6aは、第1軸72に設けられたフランジ74aに取り付けられており、周方向に並んでいる。この構成により、第2電磁石6aは、第1軸72と一体に回転自在になっている。第2電磁石6aの数や配置は、第1実施形態と同様である。なお、第2電磁石6aは、第1電磁石4aと同様、スリップリング(図示せず)を介して可変電源15に接続されている。
ギヤ部81は、第1および第2のギヤ軸82,83を有している。第1ギヤ軸82の第1および第2のギヤ82a,82bは、第1軸62,72のギヤ62aおよび72aに、それぞれ噛み合っている。これにより、第1軸62および72は、互いに同方向に同じ速度で回転するようになっている。また、第2ギヤ軸83の第1および第2のギヤ83a,83bは、第2軸63,73のギヤ63aおよび73aに、それぞれ噛み合っている。これにより、第2軸63および73は、互いに同方向に同じ速度で回転するようになっている。
また、第1電動機61には、第1および第2の回転位置センサ91,92(第1相対位置関係検出装置、第2相対位置関係検出装置)が設けられている。両者91,92はそれぞれ、第1および第2の軸62,72,63,73の回転位置を表す検出信号をECU17に出力する。ECU17は、検出されたこれらの回転位置に基づき、第2実施形態と同様、第1および第2の電動機61,71の電機子5aと、第1および第2の電磁石4a,6aと、第1および第2のコア7a,8aとの相対的な位置関係を求めるとともに、この位置関係に基づいて、第1および第2の電動機61,71の電機子5aの3相コイル5cへの通電を制御し、それにより、第1および第2の回転磁界をそれぞれ制御する。
なお、本実施形態では、第1および第2の電動機61,71のケース2が第1および第4の部材に、第1軸62および72が第2および第5の部材に、第2軸63および73が第3および第6の部材に、それぞれ相当する。また、第1および第2の電動機61,71の第2ステータ5が第1および第2の電機子列に、第1および第2の電動機61,71の電機子5aが第1および第2の電機子に、磁石ロータ64,74が第1および第2の磁極列に、それぞれ相当する。
以上の構成の電動機60は、第2実施形態と同様、第1軸62,72および第2軸63,73の一方を固定、またはこれらの一方に動力を入力した状態で、これらの他方を回転させるように構成されている。以上により、本実施形態によれば、第2実施形態の効果を同様に得ることができる。
なお、第4実施形態のように、例えば、第1および第2の電動機61,71の一方を、両者の他方の1/mの回転速度で回転するように構成するとともに、この一方の回転を他方にm倍に増速した状態で伝達するように、ギヤ部81を構成してもよい。また、第1および第2の電磁石4a,6aに代えて、第1および第2の電磁石4e,6eまたは第1および第2の永久磁石4g,6gを用いてもよい。さらに、第1および第2の軸62,63と第1および第2の軸72,73とを必ずしも同心状に配置する必要はなく、例えば互いに直交するように配置し、第1および第2の軸62,63と第1および第2の軸72,73とをギヤ部81で連結するようにしてもよい。
また、第1および第2の回転磁界の制御を、第1および第2の電動機61,71の電機子5aと、第1および第2の電磁石4a,6aと、第1および第2のコア7a,8aとの相対的な位置関係に基づいて行っているが、第1および第2の電動機61,71のケース2または第2ステータ5のそれぞれの任意の部位と、第1軸62,72または磁石ロータ64,74のそれぞれの任意の部位と、第2軸63,73または第1および第2のロータ7,8のそれぞれの任意の部位との相対的な位置関係に基づいて行ってもよい。
次に、図21を参照しながら、本発明の第6実施形態による電動機100について説明する。この電動機100は、電動機本体101を備えており、この電動機本体101は、図11などを用いて説明した第2実施形態の電動機20とまったく同様に構成されている。同図において、電動機100の構成要素のうち、第2実施形態と同じものについては、同じ符号を用いて示している。以下、第2実施形態と異なる点を中心として説明する。本実施形態では、ECU17が相対位置関係検出装置および制御装置に相当する。
図21に示すように、電動機本体101には、第1〜第3の電流センサ102〜104と、第1および第2の回転位置センサ105,106(相対位置関係検出装置)が設けられている。第1〜第3の電流センサ102〜104はそれぞれ、ステータ24(図11参照)のU相〜W相のコイル24cをそれぞれ流れる電流(以下、それぞれ「U相電流Iu」「V相電流Iv」「W相電流Iw」という)を表す検出信号をECU17に出力する。また、第1回転位置センサ105は、ステータ24の任意の1つの電機子24a(以下「基準電機子」という)に対する第1ロータ23の任意の1つの第1永久磁石23aの回転角度位置(以下「第1ロータ回転角θ1」という)を検出し、その検出信号をECU17に出力する。さらに、第2回転位置センサ106は、上記の基準電機子に対する第2ロータ25の任意の1つの第1コア25aの回転角度位置(以下「第2ロータ回転角θ2」という)を検出し、その検出信号をECU17に出力する。
ECU17は、上述した各種のセンサ102〜106からの検出信号に応じ、電動機本体101への通電を制御することによって、前述したステータ24で発生する第1および第2の回転磁界を制御する。この制御は、電動機本体101の電圧方程式に基づいて行われる。
この電動機本体101の電圧方程式は、次のようにして求められる。すなわち、電動機本体101は、一般的な1ロータタイプのブラシレスDCモータと比較して、ステータ24の構成は同じであるのに対し、永久磁石などで構成された第1ロータ23だけでなく、軟磁性体などで構成された第2ロータ25を有するという点が異なっている。このことから、U相〜W相の電流Iu,Iv,Iwに対する電圧は、一般的なブラシレスDCモータの場合とほぼ同じであるのに対し、第1および第2のロータ23,25の回転に伴ってU相〜W相のコイル24cに発生する逆起電圧は、一般的なブラシレスDCモータの場合と異なっている。
この逆起電圧は、次のようにして求められる。図22は、第1永久磁石23aや第1コア25a、ステータ24に相当する等価回路を示している。なお、同図は、便宜上、極数=2の場合を示しているが、電動機本体101の極数は、前述した電動機20と同様、2nである。この場合、第1コア25aを介さずに、U相〜W相のコイル24cをそれぞれ直接、通過する第1永久磁石23aの磁束Ψua1、Ψva1、Ψwa1は、次式(4)〜(6)でそれぞれ表される。
ここで、Ψfbは、各相のコイル24cを直接、通過する第1永久磁石23aの磁束の最大値であり、θe1は第1ロータ電気角である。この第1ロータ電気角θe1は、いわゆる機械角である第1ロータ回転角θ1を電気角度位置に換算した値であり、具体的には、第1ロータ回転角θ1に極数の1/2を乗算した値である。
また、第1コア25aを介してU相〜W相のコイル24cをそれぞれ通過する第1永久磁石23aの磁束Ψua2、Ψva2、Ψwa2は、次式(7)〜(9)でそれぞれ表される。
ここで、Ψfaは、第1コア25aを介して各相のコイル24cを通過する第1永久磁石23aの磁束の最大値であり、θe2は第2ロータ電気角である。この第2ロータ電気角θe2は、上述した第1ロータ電気角θe1と同様、機械角である第2ロータ回転角θ2を電気角度位置に換算した値であり、具体的には、第2ロータ回転角θ2に極数の1/2を乗算した値である。
U相〜W相のコイル24cをそれぞれ通過する第1永久磁石23aの磁束Ψua、Ψva、Ψwaは、上述したU相〜W相のコイル24cを直接、通過する磁束Ψua1、Ψva1、Ψwa1と、第1コア25aを介して通過する磁束Ψua2、Ψva2、Ψwa2との和、すなわち、(Ψua1+Ψua2)、(Ψva1+Ψva2)および(Ψwa1+Ψwa2)でそれぞれ表される。したがって、これらの磁束Ψua、Ψva、Ψwaは、上述した式(4)〜(9)より、次式(10)〜(12)でそれぞれ表される。
また、これらの式(10)〜(12)を変形すると、次式(13)〜(15)が得られる。
さらに、U相〜W相のコイル24cをそれぞれ通過する第1永久磁石23aの磁束Ψua、Ψva、Ψwaを時間微分することによって、第1永久磁石23aおよび/または第1コア25aの回転に伴ってU相〜W相のコイル24cに発生する逆起電圧(以下、それぞれ「第1U相逆起電圧Vcu1」「第1V相逆起電圧Vcv1」「第1W相逆起電圧Vcw1」という)がそれぞれ得られる。したがって、これらの第1U相〜W相の逆起電圧Vcu1、Vcv1、Vcw1は、式(13)〜(15)を時間微分することにより得られた次式(16)〜(18)でそれぞれ表される。
ここで、ωe2は、θe2の時間微分値、すなわち、第2ロータ25の角速度を電気角速度に換算した値(以下「第2ロータ電気角速度」という)であり、ωe1は、θe1の時間微分値、すなわち、第1ロータ23の角速度を電気角速度に換算した値(以下「第1ロータ電気角速度」という)である。
また、図23は、第2永久磁石23bや第2コア25b、ステータ24に相当する等価回路を示している。この場合、第2永久磁石23bおよび/または第2コア25bの回転に伴ってU相〜W相のコイル24cに発生する逆起電圧は、上述した第1永久磁石23aおよび第1コア25aの場合と同様、次のようにして求められる。以下、これらのU相〜W相のコイル24cに発生する逆起電圧をそれぞれ、「第2U相逆起電圧Vcu2」「第2V相逆起電圧Vcv2」「第2W相逆起電圧Vcw2」という。
すなわち、前述したように第1および第2の永久磁石23a,23bは互いに一体であるので、各相のコイル24cを直接、通過する第2永久磁石23bの磁束の最大値は、各相のコイル24cを直接、通過する第1永久磁石23aの磁束の最大値と等しく、かつ、第2コア25bを介して各相のコイル24cを通過する第2永久磁石23bの磁束の最大値は、第1コア25aを介して各相のコイル24cを通過する第1永久磁石23aの磁束の最大値と等しい。また、前述したように、第2コア25bは、第1コア25aに対して周方向に互い違いに並んでおり、その中心が、第1コア25aの中心に対して、所定角度θの1/2、ずれている。すなわち、第1および第2のコア25a,25bの電気角度位置は、互いに電気角としてπ/2、ずれている(図23参照)。以上から、U相〜W相のコイル24cをそれぞれ通過する第2永久磁石23bの磁束Ψub、Ψvb、Ψwb(すなわち第2コア25bを介して通過する磁束と、介さずに直接、通過する磁束との和)は、次式(19)〜(21)でそれぞれ表される。
また、これらの式(19)〜(21)を変形すると、次式(22)〜(24)が得られる。
さらに、U相〜W相のコイル24cをそれぞれ通過する第2永久磁石23bの磁束Ψub、Ψvb、Ψwbを時間微分することによって、上述した第2U相〜W相の逆起電圧Vcu2、Vcv2、Vcw2がそれぞれ得られる。したがって、これらの逆起電圧Vcu2、Vcv2、Vcw2は、式(22)〜(24)を時間微分することにより得られた次式(25)〜(27)でそれぞれ表される。
また、前述したように、ステータ24は、その鉄芯24bの第1および第2の永久磁石23a,23b側の端部に、互いに異なる極性の磁極が発生するように構成されている。さらに、第1および第2の永久磁石23a,23bのうち、軸線方向に並んだもの同士の極性は、同じになっている。これらのことから明らかなように、軸線方向に並んだ第1および第2の永久磁石23a,23bの、前述した基準電機子に対する電気角度位置は、互いに電気角としてπずれている。このため、第1および/または第2のロータ23,25の回転に伴ってU相〜W相のコイル24cに発生する逆起電圧Vcu、Vcv、Vcwはそれぞれ、前述した第1U相〜W相の逆起電圧Vcu1、Vcv1、Vcw1と、第2U相〜W相の逆起電圧Vcu2、Vcv2、Vcw2との差、すなわち、(Vcua−Vcub)、(Vcva−Vcvb)および(Vcwa−Vcwb)となる。したがって、これらの逆起電圧Vcu、Vcv、Vcwは、式(16)〜(18)および式(25)〜(27)より、次式(28)〜(30)で表される。
ここで、U相〜W相のコイル24cの電圧(以下、それぞれ「U相電圧Vu」「V相電圧Vu」「W相電圧Vw」という)は、U相〜W相の電流Iu,Iv,Iwに対する電圧と、U相〜W相のコイル24cの逆起電圧Vcu,Vcv,Vcwとの和でそれぞれ表される。したがって、電動機本体101の電圧方程式は、次の式(31)で表される。
ここで、前述したように、Ru,RvおよびRwはそれぞれU相〜W相のコイル24cの抵抗であり、Lu,LvおよびLwはそれぞれ、U相〜W相のコイル24cの自己インダクタンスであり、いずれも所定値である。また、Muvは、U相コイル24cとV相コイル24cの間の相互インダクタンスであり、Mvwは、V相コイル24cとW相コイル24cの間の相互インダクタンスであり、Mwuは、W相コイル24cとU相コイル24cの間の相互インダクタンスであり、いずれも所定値である。さらに、sは微分演算子である。
一方、前述したように、一般的なブラシレスDCモータの電圧方程式は式(2)で表される。上記の式(31)と式(2)との比較から明らかなように、電動機本体101の電圧方程式は、(2θe2−θe1)および(2ωe2−ωe1)をロータの電気角度位置θeおよび電気角速度ωeにそれぞれ置き換えると、一般的なブラシレスDCモータの電圧方程式と同じになる。このことから、電動機本体101を作動させるためには、前述した第1および第2の回転磁界のベクトルの電気角度位置を(2θe2−θe1)で表される電気角度位置に制御すればよいことが分かる。また、このことは、極数やコイル24cの相数にかかわらずに成立するとともに、前述した第3実施形態のリニアモータとして構成された電動機30においても同様に成立する。
ECU17は、このような観点に基づいて第1および第2の回転磁界を制御する。具体的には、図21に示すように、ECU17は、目標電流算出部17a、電気角変換器17b、電流座標変換器17c、偏差算出部17d、電流制御器17e、および電圧座標変換器17fを有しており、ベクトル制御によりU相〜W相の電流Iu,Iv,Iwを制御することによって、第1および第2の回転磁界を制御する。
上記の目標電流算出部17aは、後述するd軸電流Idおよびq軸電流Iqの目標値(以下、それぞれ「目標d軸電流Id_tar」「目標q軸電流Iq_tar」という)を算出するとともに、算出した目標d軸電流Idおよび目標q軸電流Iqを、偏差算出部17dに出力する。なお、これらの目標d軸電流Idおよび目標q軸電流Iqは、例えば電動機本体101の負荷などに応じて算出される。
電気角変換器17bには、第1および第2の回転位置センサ105,106でそれぞれ検出された第1および第2のロータ回転角θ1,θ2が入力される。電気角変換器17bは、入力された第1および第2のロータ回転角θ1,θ2に極数の1/2を乗算することによって、前述した第1および第2のロータ電気角θe1,θe2を算出する。また、算出した第1および第2のロータ電気角θe1,θe2を、電流座標変換器17cおよび電圧座標変換器17fに出力する。
電流座標変換器17cには、第1および第2のロータ電気角θe1,θe2に加え、第1〜第3の電流センサ102〜104でそれぞれ検出されたU相〜W相の電流Iu,Iv,Iwが入力される。電流座標変換器17cは、入力された3相交流座標上でのU相〜W相の電流Iu,Iv,Iwを、第1および第2のロータ電気角θe1,θe2に基づき、dq座標上でのd軸電流Idおよびq軸電流Iqに変換する。このdq座標は、(2θe2−θe1)をd軸とし、このd軸に直交する軸をq軸として、(2ωe2−ωe1)で回転するものである。具体的には、d軸電流Idおよびq軸電流Iqは、次式(32)によって算出される。
また、電流座標変換器17cは、算出したd軸電流Idおよびq軸電流Iqを偏差算出部17dに出力する。
偏差算出部17dは、入力された目標d軸電流Id_tarとd軸電流Idとの偏差(以下「d軸電流偏差dId」という)を算出するとともに、入力された目標q軸電流Iq_tarとq軸電流Iqとの偏差(以下「q軸電流偏差dIq」という)を算出する。また、算出したd軸電流偏差dIdおよびq軸電流偏差dIqを、電流制御器17eに出力する。
電流制御器17eは、入力されたd軸電流偏差dIdおよびq軸電流偏差dIqに基づき、所定のフィードバック制御アルゴリズム、例えばPI制御アルゴリズムによって、d軸電圧Vdおよびq軸電圧Vqを算出する。これにより、d軸電圧Vdは、d軸電流Idが目標d軸電流Id_tarになるように算出され、q軸電圧Vqは、q軸電流Iqが目標q軸電流Iq_tarになるように算出される。また、算出したd軸およびq軸の電圧Vd,Vqを、電圧座標変換器17fに出力する。
電圧座標変換器17fは、入力されたd軸電圧Vdおよびq軸電圧Vqを、入力された第1および第2のロータ電気角θe1,θe2に基づいて、3相交流座標上でのU相〜W相の電圧Vu,Vv,Vwの指令値(以下、それぞれ「U相電圧指令値Vu_cmd」「V相電圧指令値Vv_cmd」「W相電圧指令値Vw_cmd」という)に変換する。具体的には、U相〜W相の電圧指令値Vu_cmd,Vv_cmd,Vw_cmdは、次式(33)によって算出される。
また、電圧座標変換器17fは、算出したU相〜W相の電圧指令値Vu_cmd,Vv_cmd,Vw_cmdを前述した可変電源16に出力する。
これに伴い、可変電源16は、U相〜W相の電圧Vu,Vv,Vwを、U相〜W相の電圧指令値Vu_cmd,Vv_cmd,Vw_cmdにそれぞれなるように電動機本体101に印可する。それにより、U相〜W相の電流Iu〜Iwが制御される。この場合、これらの電流Iu〜Iwは、次式(34)〜(36)でそれぞれ表される。
ここで、Iは、目標d軸電流Id_tarおよび目標q軸電流Iq_tarに基づいて定まる各相の電流の振幅である。
上記のような電流制御によって、第1および第2の回転磁界のベクトルの電気角度位置が、(2θe2−θe1)で表される電気角度位置に制御されるとともに、第1および第2の回転磁界の電気角速度(以下「磁界電気角速度ωMF」という)が、(2ωe2−ωe1)で表される電気角速度に制御される。その結果、磁界電気角速度ωMF,第1および第2のロータ電気角速度ωe1,ωe2の関係は、次式(37)で表されるとともに、例えば図24のように示され、同図に示すように共線関係となる。
また、U相〜W相の電流Iu,Iv,Iwが流れることによって発生する機械的出力Wは、リラクタンス分を除くと、次式(38)で表される。
この式(38)に式(28)〜(30)および式(34)〜(36)を代入し、整理すると、次式(39)が得られる。
この機械的出力Wと、第1および第2のロータ23,25のトルク(以下、それぞれ「第1ロータトルクT1」「第2ロータトルクT2」という)と、第1および第2のロータ電気角速度ωe1,ωe2との関係は、次式(40)で表される。
これらの式(39)と式(40)から明らかなように、第1および第2のロータトルクT1,T2は、次式(41)および(42)でそれぞれ表される。
すなわち、第1ロータトルクT1と第2ロータトルクT2の間には、|T1|:|T2|=1:2が成立する。
また、第1および第2のロータ電気角速度ωe1,ωe2をいずれも一定に制御する定速制御中には、第1および第2のロータ回転角θ1,θ2ならびに第1および第2のロータ電気角速度ωe1,ωe2を検出することなく、磁界電気角速度ωeFを(2・ωe2REF−ωe1REF)で表される電気角速度に制御する。ここで、ωe2REFは、第2ロータ電気角速度ωe2の所定値であり、ωe1REFは、第1ロータ電気角速度ωe1の所定値である。
以上のように、本実施形態によれば、第1および第2の回転磁界のベクトルの電気角度位置を(2θe2−θe1)で表される電気角度位置に制御するとともに、磁界電気角速度ωMFを、第1および第2のロータ電気角速度ωe1,ωe2との間に共線関係を満たすように制御するので、電動機本体101の適切な動作を確保することができる。また、第1永久磁石23aおよび第1コア25aの回転角度位置のみを検出すればよいので、第1および第2の永久磁石23a,23bならびに第1および第2のコア25a,25bの回転角度位置をそれぞれ別個のセンサで検出する場合と比較して、部品点数を削減でき、それにより、製造コストを削減できるとともに、電動機100を小型化することができる。
さらに、トルクや回転数の制御用のマップとして、(2ωe2−ωe1)とトルクと電圧との関係を表すマップを実験で求め、そのようなマップに応じて第1および第2の回転磁界を制御すればよいので、第1および第2のロータ23,25ごとにマップを用意する必要がないとともに、その制御が極めて容易であり、ECU17のメモリの削減や演算負荷の低減が可能になる。
なお、本実施形態による制御手法は、以下のようにして、第1〜第5の実施形態の電動機1,20,30,40,60にも適用することができる。まず、第1実施形態の電動機1の場合には、第1および第2の回転磁界を次のようにして制御すればよい。すなわち、基準電機子に対する第1コア7aの電気角度位置をセンサなどで検出し、第2ロータ電気角θe2として用いる。また、第1および第2の永久磁石23a,23bに対応する第1および第2の電磁石4a,6aが前述したような位置に固定されていることから、第1ロータ電気角θe1を値0とし、第1および第2の回転磁界のベクトルの電気角度位置を2θe2で表される電気角度位置に制御するとともに、磁界電気角速度ωMFを2ωe2で表される電気角速度に制御すればよい。第2実施形態の場合は、本実施形態とまったく同様であるため、その説明については省略する。
第3実施形態の電動機30の場合には、上述した第1実施形態の場合と同様、基準電機子に対する第1コア7aの電気角度位置をセンサなどで検出し、第2ロータ電気角θe2として用い、第1および第2の移動磁界のベクトルの電気角度位置を2θe2で表される電気角度位置に制御するとともに、第1および第2の移動磁界の電気角速度を2ωe2で表される電気角速度に制御すればよい。また、第3実施形態において、前述したように、第1および第2の電磁石4a,6aを第2可動板と一体に移動可能に構成した場合には、基準電機子に対する第1電磁石4aの電気角度位置を検出し、第1ロータ電気角θe1として用い、第1および第2の移動磁界のベクトルの電気角度位置を、(2θe2−θe1)で表される電気角度位置に制御するとともに、第1および第2の移動磁界の電気角速度を、(2ωe2−ωe1)で表される電気角速度に制御すればよい。
第4実施形態の電動機40の場合には、第1および第2の電磁石4a,6aが前述したような位置に固定されていることから、第1実施形態の場合と同様、第1ロータ電気角θe1を値0とする。また、電動機40が第1および第2の電動機41,42に分割されているものの、後者の極数が前者のm倍の関係にあるので、第1電動機41の電機子5aに対する第1コア7aの電気角度位置と、第2電動機42の電機子5aに対する第2コア8aの電気角度位置が互いに電気角としてπ/2ずれていることは、第1実施形態と同様である。したがって、第1コア7aの電気角度位置をセンサなどで検出し、第2ロータ電気角θe2として用いるとともに、第1および第2の回転磁界を第1実施形態の場合と同様にして制御すればよい。
また、第5実施形態の電動機60は、第4実施形態と異なり、第1および第2の電磁石4a,6aが回転可能に構成されているものの、両者の数や位置が第1実施形態と同様であるため、第1電動機61の電機子5aに対する第1電磁石4aの電気角度位置と、第2電動機71の電機子5aに対する第2電磁石6aの電気角度位置とは互いに同じになる。以上から、この電動機60の場合には、第1電磁石4aの電気角度位置を検出し、第1ロータ電気角θe1として用い、第1コア7aの電気角度位置をセンサなどで検出し、第2ロータ電気角θe2として用いるとともに、第1および第2の回転磁界を第2実施形態の場合と同様にして制御すればよい。
なお、本実施形態では、第1ロータ回転角θ1として、基準電機子に対する第1永久磁石23aの回転角度位置を用いているが、第2永久磁石23bの回転角度位置を用いてもよく、あるいは、ケース2またはステータ24の任意の部位に対する第1軸21または第1ロータ23の任意の部位の回転角度位置を用いてもよい。また、本実施形態では、第2ロータ回転角θ2として、基準電機子に対する第1コア25aの回転角度位置を用いているが、第2コア25bの回転角度位置を用いてもよく、あるいは、ケース2またはステータ24の任意の部位に対する第2軸22または第2ロータ25の任意の部位の回転角度位置を用いてもよい。さらに、極数=2の場合には、第1および第2のロータ回転角θ1,θ2を電気角度位置に変換せずに、第1および第2の回転磁界の制御にそのまま用いてもよいことはもちろんである。
また、本実施形態では、第1および第2の回転磁界の制御を、U相〜W相の電流Iu,Iv,Iwのベクトル制御により行っているが、第1および第2の回転磁界のベクトルの電気角度位置を(2θe2−θe1)で表される電気角度位置に制御するとともに、磁界電気角速度ωMFを(2ωe2−ωe1)で表される電気角速度になるように制御できるものであれば、他の任意の手法により行ってもよい。例えば、第1および第2の回転磁界の制御を、U相〜W相の電圧Vu,Vv,Vwの制御により行ってもよい。以上のことは、本実施形態の制御手法を第1〜第5の実施形態の電動機1,20,30,40,60に適用した場合にも同様に当てはまる。
なお、本発明は、説明した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、本実施形態では、第1および第2の電磁石4a,4e,6a,6e、電機子5a,24a、第1および第2のコア7a,25a,8a,25b、第1および第2の永久磁石4g,23a,6g,23bを、それぞれ等間隔に配置しているが、不等間隔で配置してもよい。また、本実施形態では、電動機1、20および40において、第1コア7a,25aの数を第1電機子磁極および第1磁極の数と、第2コア8a,25bの数を第2電機子磁極および第2磁極の数と、それぞれ同じに設定しているが、第1コア7a,25aの数および第2コア8a,25bの数を、より小さな値に設定してもよい。
さらに、本実施形態では、電機子5a,24aのコイル5c,24cを、U相、V相およびW相の3相コイルで構成しているが、この相数はこれに限らないことは、もちろんである。また、本実施形態では、コイル5c,24cを集中巻きで鉄芯5b,24bに巻回しているが、この巻回し方はこれに限らず、例えば波巻きでもよい。さらに、本実施形態では、電動機1,20,30,40,60および電動機本体101を制御する制御装置として、ECU17を用いているが、これに限らず、例えば、マイクロコンピュータを搭載した電気回路などを用いてもよい。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。