JP2008064498A - 電磁誘導式エンコーダ - Google Patents

Abstract

【課題】高精度且つ低電力でスライダ姿勢の傾きを検出して、エンコーダ出力を補正できるようにし、低価格で且つ高精度、高分解能の電磁誘導式エンコーダを提供する。
【解決手段】スケール３０上に配設された、測定方向に長く、測定方向と垂直な方向に複数の傾き検出用スケールコイル３４と、前記スライダ４０上に配設された、３相の傾き検出用送信コイル４４、及び、該送信コイル４４から測定方向に離れた位置の３相の傾き検出用受信コイル４６と、送受信９組の出力信号を３組ずつ所定の演算で足し合わせて得た３相信号Ｒ０、Ｒ１、Ｒ２から、２相信号に変換して、スケール３０に対するスライダ４０のヨー傾き角度θを求める手段（信号処理ＩＣ４８）と、求められたヨー傾き角度θにより、前記エンコーダトラック３２を用いて得られた変位を補正する手段（信号処理ＩＣ４８）とを備える。
【選択図】図２

Description

本発明は、スケール上に形成されたエンコーダトラックを用いて得られる出力から、スケールに対するスライダの変位を検出するようにされた電磁誘導式エンコーダに関する。特に、ノギスやリニアエンコーダに用いるのに好適な、スケールに対するスライダのヨー傾き角度を補正することが可能な電磁誘導式エンコーダに関する。

スケール本体に対して、測定子を有するスライダを摺動自在に設けた当接型測定器の中には、スライダの移動量を検出する測長手段の測長軸線から外れた位置に測定子を位置させた測定器、例えばノギスが知られている。ノギスは、図１に例示する如く、本尺１にスライダ２を摺動自在に設けると共に、本尺１及びスライダ２のそれぞれに、測定子である外側測定ジョー３及び内側測定ジョー４を直角（本尺１の長手方向に対して直角）に設けた構造であるから、測定子である各ジョー３、４が測長手段を構成する本尺１上に無いため、使い勝手が良いという利点がある。

しかしながら、ノギスのように、測定子が測長手段の測長軸線から外れた位置にある当接型測定器では、スライダ２を摺動自在に案内する本体（ノギスでは本尺１）の摺動基準端面の真直度によってスライダ２が本体（本尺１）に対して傾き、又、測定子（４）が被測定物に当接したときの測定力によりスライダ２が本体（本尺１）に対して傾き、それぞれ測定誤差が発生するという問題があった。

このような問題点を解決するべく、出願人は特許文献１で、図１に示した如く、一対のＹ軸測長センサ１２ｙ、１３ｙと、このセンサ１２ｙ、１３ｙの変位量の差分からスライダ２の傾き角度θを算出する傾き量算出回路２５を設け、誤差補正回路２２で求めた、スライダ２の傾き角度θに基づくジョー４の測定点Ｐにおける誤差δを、Ｘ軸測長センサ１１で検出されたスライダ２の移動量ｘから補正することを提案している。図において、２１は、Ｘ軸測長センサ１１の出力を計数する計数回路、２３、２４は、それぞれＹ軸測長センサ１２ｙ、１３ｙの出力を計数する計数回路、２７は表示器である。

上記のように、ノギスのようなアッベ誤差を生じる測長器においては、測定子へ測定圧が加わることによるスライダの姿勢変動が、測定の誤差を生じる。特に、出願人が特許文献２や３で提案したような、スケール上に形成された、波長の異なる複数（特許文献２では粗、中間、微細の３つ、特許文献３ではCoarse、Medium、Fineの３つ）のトラックを用いて得られる出力を合成して、スライダの絶対位置を求める電磁誘導式のアブソリュートエンコーダでは、スライダの姿勢変動により、複数のトラックの出力の組合せが変化して、誤った合成を行なう可能性があり、結果的には、表示値が誤った値を不連続に表示することになる。

一方、本発明が対象とする電磁誘導式エンコーダではないが、光電式エンコーダに関するものとして、特許文献４には、絶対位置検出用のエンコーダトラックの上下に傾き角度検出用のスケール目盛を配置し、その計数差で傾きを読み取ることが記載されている。

又、やはり本発明が対象とする電磁誘導式エンコーダではないが、静電容量式エンコーダに関するものとして、出願人は特許文献５で、測長方向と直交する方向に傾き角度検出用のセンサを配置して、測長方向以外の変位量（測長方向に垂直方向の変位やヨー角、ピッチ角等）を検出することを提案している。

特開平９−４９７２２号公報 特開２００５−３４５３７５号公報 特開２００６−９８１３９号公報 特開平７−３２４９４８号公報 特開２００１−２４９００１号公報

しかしながら、特許文献１や５に記載の技術は、静電容量式エンコーダに関するものであり、電磁誘導式エンコーダに、そのまま用いることはできない。

又、特許文献４に記載の技術では、スケール幅が狭く、エンコーダトラックの上下に配置したスケール目盛の間隔が十分に取れないと、傾きの検出分解能が低くなるという問題点を有していた。

本発明は、前記従来の問題点を解決するべくなされたもので、電磁誘導式エンコーダにおいて、高精度且つ低電力でスライダ姿勢の傾きを検出して、エンコーダ出力を補正できるようにし、低価格で且つ高精度、高分解能の電磁誘導式エンコーダを提供できるようにすることを課題とする。

本発明は、スケール上に形成されたエンコーダトラックを用いて得られる出力から、スケールに対するスライダの変位を検出するようにされた電磁誘導式エンコーダにおいて、前記スケール上に配設された、測定方向に長く、測定方向と垂直な方向に複数の傾き検出用スケールコイルと、前記スライダ上に配設された、３相の傾き検出用送信コイル、及び、該送信コイルから測定方向に離れた位置の３相の傾き検出用受信コイルと、送受信９組の出力信号を３組ずつ所定の演算で足し合わせて得た３相信号から、２相信号に変換して、スケールに対するスライダのヨー傾き角度を求める手段と、求められたヨー傾き角度により、前記エンコーダトラックを用いて得られた変位を補正する手段とを備えることにより、前記課題を解決したものである。

前記複数の傾き検出用スケールコイルを、１本に直列接続して、安定した検出を可能にすることができる。

本発明によれば、傾き検出用送受信コイル間の長さを検出器の長手方向に取れるので、角度分解能を高く取れる。又、スケールに対するスライダのヨー傾きだけの変化を捉えられるので、ヨー傾き以外の変動要因を排除して、ヨー傾き角度を検出できる。更に、従来の電磁誘導式エンコーダの検出回路が使えるので、低電力で検出が可能である。

以下図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。

本実施形態は、図２に詳細に示す如く、スケール３０上に形成されたエンコーダトラック３２を用いて得られる出力から、スケール３０に対するスライダ（グリッドとも称する）４０の変位を検出するようにされた電磁誘導式エンコーダにおいて、スケール３０上に配設された、測定方向（図の左右方向）に長く、測定方向と垂直な方向に複数（図では４つ）の傾き検出用スケールコイル（以下単にスケールコイルとも称する）３４と、前記スライダ４０上に配設された、３相の傾き検出用送信コイル（以下単に送信コイルとも称する）４４、及び、該送信コイル４４から測定方向に離れた位置の３相の傾き検出用受信コイル４６と、送受信９組の出力信号を３組ずつ所定の演算で足し合わせて得た３相信号を２相信号に変換して、スケール３０に対するスライダ４０のヨー傾き角度θを求めると共に、求められたヨー傾き角度θにより、前記エンコーダトラック３２及びエンコーダグリッド４２を用いて得られた変位を補正する信号処理ＩＣ４８と、を備えたものである。

前記エンコーダトラック３２としては、例えば特許文献２や３に記載したように、ピッチが異なる３つのトラックが形成され、前記エンコーダグリッド４２は、これに対応してスライダ４０上に形成されている。

前記４つのスケールコイル３４は、図３に詳細に示す如く、例えば４つの長手方向に長い矩形のコイルが１本に直列接続されている。このスケールコイル３４は、直列接続することなく、互いに独立であってもよいが、図３のように直列接続して１本にまとめた方が、同じ電流が均一に流れるため、安定した検出が可能となる。このスケールコイル３４の幅Ｗは、図４に示す前記送信コイル４４及び受信コイル４６の幅Ｖよりも広ければ良く、送信コイル４４及び受信コイル４６の幅Ｖより広い分が、スライダ４０がスケール３０に対して傾いたときの余裕代となる。

前記送信コイル４４及び受信コイル４６は、図４に示す如く、信号処理ＩＣ４８を挟み、距離Ｌだけ離して配置されている。この送信コイル４４及び受信コイル４６は、例えばビルドアップ基板でなるスライダ４０上に、図５に詳細に示す如く、第１相０°、第２相１２０°、第３相２４０°のように３相配設される。

前記信号処理ＩＣ４８は、図４に示した如く、前記送信コイル４４の駆動回路５０及び前記受信コイル４６の受信回路５２を含む。前記駆動回路５０と送信コイル４４の接続、及び、前記受信コイル４６と受信回路５２の接続を図６に示す。

前記受信回路５２には演算回路５４が接続されており、この演算回路５４の演算は、次のようにして行なわれる。即ち、送信コイル４４をＡ、Ｂ、Ｃの３相、受信コイル４６を０、１、２の３相とすると、送信コイルＡ、Ｂ、Ｃを順番に駆動することによって、送受信の組合せで３×３＝９個の出力を得る。

この出力信号を、送信コイルＡのみを駆動したときに受信コイル０で得た出力をＡ０、同じく受信コイル１で得た出力をＡ１、同じく受信コイル２で得た出力Ａ２とし、送信コイルＢのみを駆動したときに受信コイル０で得た出力をＢ０、同じく受信コイル１で得た出力をＢ１、同じく受信コイル２で得た出力をＢ２とし、送信コイルＣのみを駆動したときに受信コイル０で得た出力をＣ０、同じく受信コイル１で得た出力をＣ１、同じく受信コイル２で得た出力をＣ２とすると、この９個の出力を、次式によりＲ０、Ｒ１、Ｒ２の３相信号に変換する。

Ｒ０＝（Ａ２＋Ｂ１＋Ｃ０）／３ …（１）
Ｒ１＝（Ａ１＋Ｂ０＋Ｃ２）／３ …（２）
Ｒ２＝（Ａ０＋Ｂ２＋Ｃ１）／３ …（３）

ヨー傾きを与えた場合と、測長方向と垂直なラテラル方向に平行移動させた場合の、実測値から３相信号Ｒ０、Ｒ１、Ｒ２を演算した結果を図７及び図８に示す。図７から、ヨー傾き変化に対応するスライダの位置変化に対して、それぞれが１２０°位相差の正弦波状に変化しているのが分かる。この３相信号Ｒ０、Ｒ１、Ｒ２を公知の方法で２相信号に変換して、tan^-1計算することで、ヨー傾き角度θを計算することができる。

即ち、１２０°位相差の３相信号Ｒ０、Ｒ１、Ｒ２を、次式のようにＸ、Ｙ、Ｚとする。

Ｘ（θ）＝Ａsinθ …（４）
Ｙ（θ）＝Ａsin{θ−（２π／３）} …（５）
Ｚ（θ）＝Ａsin{θ−（４π／３）} …（６）

この３相信号Ｘ、Ｙ、Ｚを次のように演算すれば、sin成分とcos成分の２相信号に変換できる。

（３／２）^＊Ａsinθ＝Ｘ−（Ｙ／２）−（Ｚ／２） …（７）
（３／２）^＊Ａcosθ＝{（−２Ｙ／√３）＋（２Ｚ／√３）} …（８）

これから次式の計算をすればθを求めることができる。

θ＝tan^-1（sinθ／cosθ）
＝tan^-1[｛Ｘ−（Ｙ／２）−（Ｚ／２）｝／{−２（Ｙ／√３）＋（２Ｚ／√３）}]
…（９）

なお、３相−２相変換やtan^-1計算は、その都度計算するのではなく、予め求めておいた変換テーブルにより迅速に行うこともできる。

一方、図８に示したように、ラテラル方向の変化に対しては、３相信号Ｒ０、Ｒ１、Ｒ２は変化しない。従って、本発明により、ヨー傾きだけを検出できるセンサが実現できる。

上記のようにして求めたヨー角度θに基づいて、従来と同様の方法でエンコーダトラック３２及びグリッド４２を使って求めた絶対位置算出結果を補正する。

このように、測定圧によって傾いたジョー（ノギスの場合）に対し、ジョーの長さと上記ヨー角度θから補正値を割り出して、正確な測定が可能となる。

ここで、検出回路としては、従来の電磁誘導式エンコーダの方式がそのまま使え、低電力で動作が可能である。

なお、本発明は、ヨー傾き変化により測定値が不連続に変化するアブソリュートエンコーダに特に有効なものであるが、本発明の適用対象は、これに限定されず、インクリメンタル型のエンコーダであっても、効果がある。

特許文献１で出願人が提案した当接型測定器の構成を示す、一部ブロック図を含む平面図 本発明の実施形態の全体構成を示す斜視図 前記実施形態のスケールコイルを示す平面図 同じく送信コイル、受信コイル及び信号処理ＩＣを示す平面図 同じく送信コイル及び受信コイルの具体的な配置を示す説明図 同じく送信コイル及び受信コイルと信号処理ＩＣの接続を示すブロック図 本発明の原理を説明するための、ヨー傾きを与えた場合の３相出力信号の変化を示す線図 同じくラテラル方向変位を与えた場合の３相出力信号の変化を示す線図

符号の説明

３０…スケール
３２…エンコーダトラック
３４…傾き検出用スケールコイル
４０…スライダ
４２…エンコーダグリッド
４４…傾き検出用送信コイル
４６…傾き検出用受信コイル
４８…信号処理ＩＣ
５０…駆動回路
５２…受信回路
５４…演算回路
Ｒ０、Ｒ１、Ｒ２…３相出力信号

Claims (2)

1. スケール上に形成されたエンコーダトラックを用いて得られる出力から、スケールに対するスライダの変位を検出するようにされた電磁誘導式エンコーダにおいて、
   前記スケール上に配設された、測定方向に長く、測定方向と垂直な方向に複数の傾き検出用スケールコイルと、
   前記スライダ上に配設された、３相の傾き検出用送信コイル、及び、該送信コイルから測定方向に離れた位置の３相の傾き検出用受信コイルと、
   送受信９組の出力信号を３組ずつ所定の演算で足し合わせて得た３相信号から、２相信号に変換して、スケールに対するスライダのヨー傾き角度を求める手段と、
   求められたヨー傾き角度により、前記エンコーダトラックを用いて得られた変位を補正する手段と、
   を備えたことを特徴とする電磁誘導式エンコーダ。
2. 前記複数の傾き検出用スケールコイルが、１本に直列接続されていることを特徴とする請求項１に記載の電磁誘導式エンコーダ。

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