JP2008063718A - 炭素質ナノファイバー - Google Patents
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Abstract
【課題】優れた導電性を有する炭素質ナノファイバーを提供すること。
【解決手段】遷移金属の含有量が0.05〜10重量%であって、平均直径が1〜100nmであり、平均アスペクト比が少なくとも10であり、X線回折による黒鉛としての結晶性を示すd002が0.339〜0.346nm、かつLcが3〜20nmであり、中空年輪構造を有し、遷移金属の含有量が0.05〜10重量%、平均直径が1〜100nm、平均アスペクト比が少なくとも10、X線回折による黒鉛としての結晶性を示すd002が小さくとも0.348、Lcが大きくとも1nm、実質的に測定不可能なほど非晶質又は低結晶性である気相成長炭素繊維を不活性雰囲気中で1600〜2300℃で熱処理してなることを特徴とする炭素質ナノファイバー。
【選択図】図1
【解決手段】遷移金属の含有量が0.05〜10重量%であって、平均直径が1〜100nmであり、平均アスペクト比が少なくとも10であり、X線回折による黒鉛としての結晶性を示すd002が0.339〜0.346nm、かつLcが3〜20nmであり、中空年輪構造を有し、遷移金属の含有量が0.05〜10重量%、平均直径が1〜100nm、平均アスペクト比が少なくとも10、X線回折による黒鉛としての結晶性を示すd002が小さくとも0.348、Lcが大きくとも1nm、実質的に測定不可能なほど非晶質又は低結晶性である気相成長炭素繊維を不活性雰囲気中で1600〜2300℃で熱処理してなることを特徴とする炭素質ナノファイバー。
【選択図】図1
Description
この発明は、炭素質ナノファイバー、及びその製造方法に関し、更に詳しくは、優れた導電性を有する炭素質ナノファイバー、及び炉芯管を傷めることなく、優れた導電性を有する炭素質ナノファイバーを製造することのできる炭素質ナノファイバーの製造方法に関する。
気相成長炭素繊維(VGCF=Vapor Grown Carbon Fiber)及びカーボンナノファイバー(CNF=Carbon Nano-Fiber)を製造する際の黒鉛化は、通常、アルゴン及び窒素等の不活性雰囲気中で2500〜3000℃の温度に加熱処理すると言う方法で、行われる。
黒鉛化が進行すると、黒鉛結晶子の指標であるLcおよびLaが増大するので、結晶粒界が大きくなる。結晶粒界の増大は、結晶における欠陥が大きいことを意味する。したがって、気相成長炭素繊維及びカーボンナノファイバーの繊維としての強度が低下する。また結晶粒界が大きくなると、黒鉛化の進行に伴って角張った繊維或いは折れ曲がった繊維が形成される。
このような結晶粒界が増大した気相成長炭素繊維又はカーボンナノファイバーは、樹脂又はゴム等の母材と混合する際に折れてしまい、繊維長が短くなってしまう。それ故に、大きな結晶粒界を有する気相成長炭素繊維又はカーボンナノファイバーと母材とで作成した複合材料の特性例えば強度及び導電性等が、期待したほどではないと言う結果になる。
一方、VGCF及びCNFの黒鉛化処理工程では、触媒金属例えば鉄が蒸発して抜け出し、この抜け出した金属例えば鉄が反応管等の装置内における低温度領域例えば2000℃位の温度領域で析出する。析出した金属は、やっかいである。なぜならば、反応管として使用される黒鉛管は、鉄の析出により鉄カーバイド例えばセメンタイト化してしまう。つまり、鉄の析出により、反応管が劣化してしまうのである。また、鉄の析出により粒子状物となった鉄又はそのカーバイドが、製品であるVGCF又はCNFに混入して製品の品質低下をもたらす。このような問題点をなくするために、反応管の内壁から粒状の析出物を除去する作業が必要になる。このような作業は、製品製造の作業を一時中断させねばならないことを意味し、ひいては製造効率の低下を意味する。
この発明は、上記諸問題を解消することを目的とする。
この発明の目的は、優れた導電性、及び、母材と混合して得られる複合材料の強度等の特性低下を生じさせない炭素質ナノファイバー、及びその製造方法を提供することにある。
前記課題を解決するための第1の手段は、
遷移金属の含有量が0.05〜10重量%であって、平均直径が1〜100nmであり、平均アスペクト比が少なくとも10であり、X線回折による黒鉛としての結晶性を示すd002が0.339〜0.346nm、かつLcが3〜20nmであり、中空年輪構造を有し、以下の特性を有する気相成長炭素繊維を不活性雰囲気中で1600〜2300℃で熱処理してなることを特徴とする炭素質ナノファイバーである。
気相成長炭素繊維の特性
遷移金属の含有量:0.05〜10重量%
平均直径:1〜100nm
平均アスペクト比:少なくとも10
X線回折による黒鉛としての結晶性を示すd002:小さくとも0.348
Lc:大きくとも1nm
実質的に測定不可能なほど非晶質又は低結晶性である気相成長炭素繊維
遷移金属の含有量が0.05〜10重量%であって、平均直径が1〜100nmであり、平均アスペクト比が少なくとも10であり、X線回折による黒鉛としての結晶性を示すd002が0.339〜0.346nm、かつLcが3〜20nmであり、中空年輪構造を有し、以下の特性を有する気相成長炭素繊維を不活性雰囲気中で1600〜2300℃で熱処理してなることを特徴とする炭素質ナノファイバーである。
気相成長炭素繊維の特性
遷移金属の含有量:0.05〜10重量%
平均直径:1〜100nm
平均アスペクト比:少なくとも10
X線回折による黒鉛としての結晶性を示すd002:小さくとも0.348
Lc:大きくとも1nm
実質的に測定不可能なほど非晶質又は低結晶性である気相成長炭素繊維
前記課題を解決するための第2の手段は、
前記遷移金属の含有量が0.05〜10重量%であって、平均直径が1〜100nmであり、平均アスペクト比が少なくとも10であり、X線回折による黒鉛としての結晶性を示すd002が小さくとも0.348、かつLcが大きくとも1nmであり、実質的に測定不可能なほど非晶質又は低結晶性である、中空年輪構造の気相成長炭素繊維を、不活性雰囲気中で1600〜2300℃で熱処理することを特徴とする前記第1の手段に記載の炭素質ナノファイバーの製造方法である。
前記課題を解決するための第3の手段は、
前記遷移金属が鉄、ニッケル及びコバルトよりなる群から選択される少なくとも一種である前記第1の手段に記載の炭素質ナノファイバーである。
前記課題を解決するための第4の手段は、
前記遷移金属が鉄、ニッケル及びコバルトよりなる群から選択される少なくとも一種である前記第2の手段に記載の炭素質ナノファイバーの製造方法である。
前記遷移金属の含有量が0.05〜10重量%であって、平均直径が1〜100nmであり、平均アスペクト比が少なくとも10であり、X線回折による黒鉛としての結晶性を示すd002が小さくとも0.348、かつLcが大きくとも1nmであり、実質的に測定不可能なほど非晶質又は低結晶性である、中空年輪構造の気相成長炭素繊維を、不活性雰囲気中で1600〜2300℃で熱処理することを特徴とする前記第1の手段に記載の炭素質ナノファイバーの製造方法である。
前記課題を解決するための第3の手段は、
前記遷移金属が鉄、ニッケル及びコバルトよりなる群から選択される少なくとも一種である前記第1の手段に記載の炭素質ナノファイバーである。
前記課題を解決するための第4の手段は、
前記遷移金属が鉄、ニッケル及びコバルトよりなる群から選択される少なくとも一種である前記第2の手段に記載の炭素質ナノファイバーの製造方法である。
この発明によると、導電性に優れ、機械特性にも優れた炭素質ナノファイバーを提供することができる。
この発明によると、炉芯管内壁への鉄粒子析出により炉芯管の交換までの期間を長期化することができ、この発明に係る炭素質ナノファイバーを製造する方法を提供することができる。
<炭素質ナノファイバー>
この発明の炭素質ナノファイバーは、遷移金属の含有量が0.05〜10重量%であり、好ましくは0.1〜7.5重量%、さらに好ましくは、0.1〜5重量%である。
この発明の炭素質ナノファイバーは、遷移金属の含有量が0.05〜10重量%であり、好ましくは0.1〜7.5重量%、さらに好ましくは、0.1〜5重量%である。
遷移金属の含有量が0.05重量%未満であるのは、黒鉛結晶化が過剰に進行する程の温度で熱処理した結果である。また遷移金属の含有量がそのように少ない炭素質ナノファイバーは、折れやすくなることがある。なお、折れやすい炭素質ナノファイバーは、これを使用した複合材料の強度を低下させることがある。鉄含有量が10重量%を超えるときには、黒鉛化処理に供される気相成長炭素繊維が鉄に溶解し、炭素質ナノファイバーの原料である炭素繊維の一部又はかなりの部分が失われてしまうことがある。
ここで、前記遷移金属としては鉄、ニッケル及びコバルトよりなる群から選択される少なくとも一種の金属を挙げることができる。これらの金属の中でも鉄が好ましい。
炭素質ナノファイバー中の遷移金属例えば鉄の含有量は、前記範囲内であって、しかも黒鉛化処理前の繊維における遷移金属の含有量とほぼ同程度又は僅かに増加している程度であるのがよい。前記炭素質ナノファイバーにおける遷移金属の含有量が、黒鉛化処理前の繊維における遷移金属含有量に比べて1/2以下であるのは、好ましくない。
上記の遷移金属例えば鉄の含有量は、所定量の炭素質ナノファイバーを燃焼させ、残渣として得られる遷移金属酸化物を秤量し、遷移金属の含有量を求める方法により、求めることができる。したがって、この発明における炭素質ナノファイバーに含有される遷移金属と言うのは、元素を意味する。また、炭素質ナノファイバーに含有されている遷移金属の形態は、純金属であっても、炭化物、硫化物等の遷移金属化合物であってもよく、いずれの形態をとるにせよこの発明においては遷移金属元素として遷移金属が上記範囲の遷移金属含有量で炭素質ナノファイバーに含まれていることが重要である。
この発明に係る炭素質ナノファイバーは、その平均直径が1〜100nmであり、好ましくは1〜50nmであり、さらに好ましくは1〜30nmであり、特には1〜20nmである。
平均直径が1nmであるということは、この発明の炭素質ナノファイバーが多層炭素質ナノファイバーであり得るための最下限を意味する。平均直径が100nmを超えると、そのような平均直径を有する炭素質ナノファイバーは導電性及び先端放電特性が不良になる。平均直径は、炭素質ナノファイバーを電子顕微鏡で観察し、所定の数の炭素質ナノファイバーを選んでその直径を測定することにより求められる。
この発明に係る炭素質ナノファイバーは、その平均アスペクト比が少なくとも10(平均長さで言うと、短くとも0.1μm)、好ましくは少なくとも30である。アスペクト比の上限値については、測定困難で具体的数値を挙げることができないが、30,000程度であると推測される。
炭素質ナノファイバーの平均アスペクト比が10未満であると、母材と組み合わせて得られる複合材料の機械的強度が向上せず、また導電性も劣ることがある。
この発明の炭素質ナノファイバーの黒鉛網面間距離を示す指標としてd002があり、これはX線回折により得ることができる。この発明に係る炭素質ナノファイバーのd002は、0.339〜0.346nmであり、好ましくは0.340〜0.345nmである。完全な黒鉛のd002は0.3354nmである。導電性の点からいうと黒鉛化物質のd002の値は0.3354nmに近ければ近い方が良い。しかしながら、この発明においては、d002の値を黒鉛のd002の値に近づけ過ぎると却って、その複合材料の導電性及び機械的強度等が不良になる。したがって、この発明の炭素質ナノファイバーは、上記範囲のd002の値となっている。炭素質ナノファイバーのd002が0.346nmを超えている場合には、黒鉛結晶が未発達なので炭素質ナノファイバーの導電性が低くて強度弾性率も低い。したがって、この炭素質ナノファイバーを使用する複合材料も導電性及び機械的性質が共に低くなる。また、炭素質ナノファイバーのd002が0.339nm未満まで結晶化即ち黒鉛化された場合には、黒鉛結晶粒界が大きくなって炭素質ナノファイバー自身が折れやすくなり、これによって複合材料の物性低下が生じると推察される。炭素質ナノファイバーを倍率5万倍以上の透過型電子顕微鏡で観察すると、先ずd002が0.346nmを超える炭素質ナノファイバーはその繊維長さ方向の状態としてなだらかである。d002が0.339〜0.346nmの範囲内にあると、その炭素質ナノファイバーは僅かに角張ることもあるがそれ程大きな曲がりではなく、なだらかなカーブとなっている。しかしながら、d002が0.339nm未満になるとそのような炭素質ナノファイバーには、鋭角的屈曲が多く見られ、なだらかなカーブが減少している。
Lcは黒鉛網面層の厚みを示し、d002と同様に黒鉛結晶性(黒鉛化度)を示す。この発明の炭素質ナノファイバーのLcは、3〜20nmであり、好ましくは4〜18nmである。このLcが3nm未満であると黒鉛化度が不十分であり、またLcが20nmを超えると黒鉛結晶粒界が大きくなり炭素質ナノファイバーが折れやすいと言った不都合を生じる。
この発明の炭素質ナノファイバーは中空であり、年輪構造を有する。この中空年輪構造を有する炭素質ナノファイバーは後述する製造方法により製造されることができる。
この発明の炭素質ナノファイバーは、優れた導電性、熱伝導性、機械的性質及び化学安定性を有することから、樹脂及びゴムをはじめ各種母材との複合材料を形成することができる。そしてその複合材料もまた優れた導電性等の特性を発現する。この発明の炭素質ナノファイバーはその特性から、水素吸蔵・化学吸着・電子線放射等への用途も可能である。
<炭素質ナノファイバーの製造方法>
この発明に関する炭素質ナノファイバーは、遷移金属含有量が0.05〜10重量%であって、平均直径が1〜100nmであり、平均アスペクト比が少なくとも10であり、X線回折による黒鉛としての結晶性を示すd002が小さくとも0.348、かつLcが大きくとも1nmであり、実質的に測定不可能なほど非晶質又は低結晶性である、中空年輪構造の気相成長炭素繊維を、不活性雰囲気中で1600〜2300℃で、好ましくは1700〜2200℃で、特には1800〜2100℃で熱処理することにより、得ることができる。
この発明に関する炭素質ナノファイバーは、遷移金属含有量が0.05〜10重量%であって、平均直径が1〜100nmであり、平均アスペクト比が少なくとも10であり、X線回折による黒鉛としての結晶性を示すd002が小さくとも0.348、かつLcが大きくとも1nmであり、実質的に測定不可能なほど非晶質又は低結晶性である、中空年輪構造の気相成長炭素繊維を、不活性雰囲気中で1600〜2300℃で、好ましくは1700〜2200℃で、特には1800〜2100℃で熱処理することにより、得ることができる。
中空年輪構造の気相成長炭素繊維を1600℃未満で加熱処理すると黒鉛化が不十分になってこの発明の炭素質ナノファイバーを得ることができない。加熱温度が2300℃を超えると炭素質ナノファイバーに含有されている遷移金属例えば鉄の蒸発が著しくなる。
加熱処理としては、例えば、所定量の気相成長炭素繊維を、不活性雰囲気下で、高周波誘導加熱炉や抵抗加熱炉内に所定時間滞在させることにより、行うことができる。
この発明に係る炭素質ナノファイバーの製造方法の具体例をさらに以下に説明する。
この発明に係る炭素質ナノファイバーの一製造方法では、遷移金属含有化合物例えば鉄原子を含有する鉄原子含有化合物と、硫黄原子を含有する硫黄化合物と、炭化水素等の炭素源となりうる有機化合物と、キャリヤガスとを混合して得られる原料混合物を、反応管内における900〜1,300℃の温度に維持された反応領域に供給する。
−遷移金属含有化合物−
この発明における遷移金属含有化合物は、鉄原子等の遷移金属を含有し、反応管内で分解することにより、触媒としての遷移金属粒子例えば鉄粒子を発生することができる。
この発明における遷移金属含有化合物は、鉄原子等の遷移金属を含有し、反応管内で分解することにより、触媒としての遷移金属粒子例えば鉄粒子を発生することができる。
前記遷移金属含有化合物における分解温度は、遷移金属含有化合物の種類にもよるが通常50〜900℃であり、好ましくは70〜800℃、より好ましくは100〜700℃である。
前記遷移金属含有化合物は、反応管内における900〜1,300℃の温度に維持された反応領域に、気体の状態で供給されるのが好ましい。ただし、同一反応容器で前記反応領域より少し上流側で前記温度より低めの温度、例えば400〜900℃の帯域に前記遷移金属含有化合物が供給された場合でも、実質的に同様の結果を得ることができる。前記遷移金属含有化合物は、所定の反応温度にまで昇温される前に完全に気化することができるものが好適である。
好適な遷移金属含有化合物としては、例えば、有機遷移金属化合物、無機遷移金属化合物等を挙げることができる。
前記有機遷移金属化合物としては、例えば、フェロセン、鉄カルボニル、アセチルアセトナート鉄、オレイン酸鉄等の有機鉄化合物、ニッケロセン、ニッケルカルボニル、アセチルアセトナートニッケル、オレイン酸ニッケル等の有機ニッケル化合物、コバルトセン、コバルトカルボニル、アセチルアセトナートコバルト、オレイン酸コバルト等の有機コバルト化合物を挙げることができ、これらの中でも有機鉄化合物が好ましい。前記無機遷移金属化合物としては、例えば、塩化鉄等の無機鉄化合物、塩化ニッケル等の無機ニッケル化合物、及び塩化コバルト等の無機コバルト化合物等を挙げることができる。これらの中でも好ましいのは、フェロセンである。
−硫黄化合物−
この発明における硫黄化合物は、硫黄原子を含有し、触媒としての遷移金属原子と相互作用して、気相成長炭素繊維の生成を促進することができる。
この発明における硫黄化合物は、硫黄原子を含有し、触媒としての遷移金属原子と相互作用して、気相成長炭素繊維の生成を促進することができる。
前記硫黄化合物としては、例えば、有機硫黄化合物、無機硫黄化合物等を挙げることができる。
前記有機硫黄化合物としては、例えば、チアナフテン、ベンゾチオフェン、チオフェン等の含硫黄複素環式化合物等を挙げることができ、前記無機硫黄化合物としては、例えば、硫化水素等を挙げることができる。
−有機化合物−
この発明における有機化合物は、炭素質ナノファイバーを形成する炭素質における炭素源として採用されることができ、炭化水素を含有するのがより好ましい。
−有機化合物−
この発明における有機化合物は、炭素質ナノファイバーを形成する炭素質における炭素源として採用されることができ、炭化水素を含有するのがより好ましい。
前記有機化合物として具体的には、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、アントラセン等の芳香族炭化水素、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ヘプタン、ヘキサン、エチレン、プロピレン、アセチレン等の脂肪族炭化水素、ガソリン、軽油、灯油、重油、アントラセン油、クレオソート油、天然ガス等の混合物、アルコール、フラン等の含酸素有機物、アミン、ピリジン等の含窒素有機物等を挙げることができる。前記有機化合物中に遊離炭素が含まれている場合には、予め遊離炭素を除去するのが好ましい。
前記有機化合物が室温例えば20℃で液状である場合は、取り扱い性の観点から好適である。また、前記有機化合物が室温で固体状や粘性液状である場合は、この有機化合物を、例えばトルエン、ヘキサン等の低粘性溶媒に溶かして使用することができる。前記有機化合物として、前記含酸素有機物、前記含窒素有機物等を採用する場合には、炭化水素と併用するのが好ましい。
−キャリヤガス−
この発明におけるキャリヤガスとしては、例えば、水素等を好適に採用することができる。前記キャリヤガスには、水素以外に、例えば、炭素質ナノファイバーの生成反応に影響を与えない非反応性ガス、炭素質ナノファイバーの生成反応を促進することができる反応促進ガス、炭素質ナノファイバーの生成反応を阻害することができる反応阻害ガス等を添加することができる。
この発明におけるキャリヤガスとしては、例えば、水素等を好適に採用することができる。前記キャリヤガスには、水素以外に、例えば、炭素質ナノファイバーの生成反応に影響を与えない非反応性ガス、炭素質ナノファイバーの生成反応を促進することができる反応促進ガス、炭素質ナノファイバーの生成反応を阻害することができる反応阻害ガス等を添加することができる。
前記非反応性ガスとしては、例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガス、窒素等を挙げることができ、前記反応促進ガスとしては、例えば、一酸化炭素、二酸化炭素、メタン等を挙げることができ、前記反応阻害ガスとしては、例えば、酸素、空気等を挙げることができる。
前記非反応性ガス及び前記反応促進ガスからなる群より選択される少なくとも一種のガスは、例えば、キャリヤガス中に50体積%以下添加することができ、好ましくは5〜40体積%、更に好ましくは10〜30体積%の範囲で添加することができる。
前記反応阻害ガスは、例えば、キャリヤガス中に30体積%以下添加することができ、好ましくは20体積%以下、更に好ましくは1〜10体積%の範囲で添加することができる。
−原料混合物−
この発明における原料混合物は、前記遷移金属含有化合物と、前記硫黄化合物と、前記有機化合物と、前記キャリヤガスとを混合して得ることができる。
この発明における原料混合物は、前記遷移金属含有化合物と、前記硫黄化合物と、前記有機化合物と、前記キャリヤガスとを混合して得ることができる。
前記原料混合物においては、原料混合物中における前記遷移金属の濃度が、0.025〜0.5モル%の範囲内になるように、原料混合物中に前記遷移金属含有化合物を配合し、原料混合物中における前記炭化水素の濃度が{273/(T−1000)}4〜10{273/(T−1000)}(ただし、Tは反応領域の絶対温度(K)を示す。)モル%の範囲内になるように、原料混合物中に前記有機化合物を配合することができる。
この発明においては、前記原料混合物中における前記遷移金属の濃度を0.025〜0.5モル%の範囲内に調整することにより、中空部が形成された気相成長炭素繊維を効果的に製造することができる。
前記遷移金属の濃度が0.5モル%を上回る場合には、得られる気相成長炭素繊維の収率が下がることがあり、前記遷移金属の濃度が0.025モル%を下回ると気相成長炭素繊維が生成しないことがある。
この発明においては、前記原料混合物中における前記炭化水素の濃度が{273/(T−1000)}4〜10{273/(T−1000)}(ただし、Tは反応領域の絶対温度(K)を示す。)モル%の範囲内になるように、前記原料混合物中に前記有機化合物を配合することができる。
前記原料混合物中における前記炭化水素の濃度は、例えば、前記遷移金属に対する炭素比率と、前記原料混合物中の有機物濃度と、反応領域の温度との関係で決定することができる。
例えば、水素雰囲気下における炭化水素の熱分解温度が一般に知られている窒素等の不活性ガス雰囲気下における炭化水素の熱分解温度より高くなること、トルエン等においては水素雰囲気下の高温で簡単にメチル基が外れることがあるが、それ以上の分解には到らないこと等を考慮して、前記原料混合物中における前記炭化水素の濃度を決定することができる。
前記原料混合物中における前記炭化水素の濃度は、反応温度が1,000〜1,200℃の範囲内である場合には特に、{273/(T−1000)}3〜10{273/(T−1000)}2(ただし、Tは反応領域の絶対温度(K)を示す。)モル%の範囲内になるように、前記原料混合物中に前記有機化合物を配合するのが好ましい。
前記原料混合物中における前記炭化水素の濃度が、10{273/(T−1000)}モル%を上回ると、気相成長炭素繊維における内周面から外周面までの距離、言い換えると気相成長炭素繊維における肉厚部の厚さが不必要に厚くなったり、気相成長炭素繊維を形成する炭素質中の水素原子含有割合が1%を越えることがある。前記炭素質中の水素原子含有割合が1%を越えると、気相成長炭素繊維の電気伝導性を低下させるという不都合を生じることがある。
前記原料混合物中における前記炭化水素の濃度が、{273/(T−1000)}4を下回ると、気相成長炭素繊維が生成しなくなったり、生産性が低下することがある。
この発明においては、前記原料混合物中の硫黄原子の濃度が、前記遷移金属の濃度に対して1/4〜5倍、特に1/2〜3倍の範囲内であるのが好ましく、前記原料混合物中における前記硫黄原子の濃度が、0.00625〜2.5モル%の範囲内、好ましくは0.0125〜1.5モル%の範囲内になるように、前記原料混合物中に前記硫黄化合物を配合することができる。
前記原料混合物中における前記硫黄原子の濃度が、0.00625〜2.5モル%の範囲内であると、前記遷移金属粒子が前記有機化合物を分解して、炭素を一方向に析出させる核としての活性を良好に保つことができ、曲がりくねりの少ないチューブ状の気相成長炭素繊維を効率良く容易に製造することができる。曲がりくねりは結晶成長が異常であったことの結果であり、曲がりくねりが少ないことは気相成長炭素繊維本来の特性(機械的性質、電気的性質、熱的性質等)が得られると言う利点を有する。
前記硫黄原子の濃度が2.5モル%を上回ると、気相成長炭素繊維が生成しにくくなることがあり、前記硫黄原子の濃度が0.00625モル%を下回ると、曲がった気相成長炭素繊維が多量に生成することがある。
前記反応管内における反応領域に前記原料混合物を供給する場合には、例えば、前記原料混合物を、炭化水素、他の有機溶媒、或いは、少量の無機溶媒等に溶解して供給すると安定して供給することができる。
前記原料混合物の反応領域における滞在時間(反応領域の長さ/反応温度での原料混合物の流速)は、通常1分以内であり、好ましくは0.1〜30秒、更に好ましくは0.2〜20秒、特に好ましくは0.3〜10秒の範囲である。
かくして得られた気相成長炭素繊維は、炭素繊維以外に未反応原料や分解生成物の混合物であるタールが付着している。この付着物を除去した後、黒鉛化(高結晶化)処理をする。付着物の除去は、トルエン、ベンゼン、アセトン及びメチルエチルケトン(MEK)等の有機溶剤で洗浄するか、不活性雰囲気下に1000℃近傍に加熱処理するという加熱蒸発により行われる。更に、不活性雰囲気中例えば窒素及びアルゴンなどの不活性ガス中で、あるいは真空中で、高周波誘導加熱炉や抵抗加熱炉によって1600〜2300℃で、数〜数十分熱処理することにより、この発明の炭素質ナノファイバーとして得ることができる。
この発明の炭素質ナノファイバーは中空で黒鉛層が繊維長手方向に平行に配向した所謂年輪構造であるので、電気特性や機械特性(強度及び弾性率等)に優れ、複合材料として使用されることが多い。しかも炭素質ナノファイバーの一端に直径数nmの遷移金属微粒子例えば鉄微粒子が含まれているので、この遷移金属微粒子が磁界の影響を受けることを利用して炭素質ナノファイバーを配列させることもできる。特にある程度の粘性を持った樹脂中に含めた炭素質ナノファイバーがランダム配列であっても磁界の作用により樹脂中の炭素質ナノファイバーを一方向に配列させることができる等の利点がある。
この発明の炭素質ナノファイバー中の遷移金属微粒子が悪影響を及ぼす場合は、炭素質ナノファイバーを酸の液中に浸漬したり、酸蒸気中に曝すことにより遷移金属粒子を除去することもできる。
上記炭素質ナノファイバーの製造方法においては、触媒金属源として遷移金属含有化合物を用い、これが熱分解して生成される金属微粒子上に炭素繊維を成長させることにより加熱処理の原料となる気相成長炭素繊維を生成しているが、この発明に係る炭素質ナノファイバーの製造方法においては、気相成長炭素繊維の生成方法は前記の方法に制限されることはなく、前記性質を有する気相成長炭素繊維が生成されればどのような気相成長炭素繊維の生成方法であってもよい。
そのような気相成長炭素繊維の生成方法としては、例えば、特開昭58−180615号公報に開示されたところの、触媒金属の超微粉末を炭化水素の熱分解帯域に浮遊するように存在させ、その超微粉末を触媒として炭素繊維を成長させる方法、特許第3007983号公報に開示されたところの、触媒金属を含有する炭化水素油を800〜1200℃に保持された反応管内に噴出し、炭化水素を熱分解させて、その触媒金属上に炭素繊維を成長させる方法、及び特表昭62−500943号公報に開示されたところの、金属含有粒子を導入する方法を挙げることができる。
以下、実施例を示すが、この発明は以下に示される実施例に限定されることはなく、この発明の要旨の範囲内で様々に変形することができる。
(実施例1)
図1に示すように、縦型の気相成長炭素繊維製造装置1を使用して気相成長炭素繊維の製造を行った。
図1に示すように、縦型の気相成長炭素繊維製造装置1を使用して気相成長炭素繊維の製造を行った。
前記気相成長炭素繊維製造装置1は、原料タンク2、原料ポンプ3、原料気化器4、予熱器5、第1キャリヤガス流量計6、第2キャリヤガス流量計7、第3キャリヤガス流量計8、原料混合ガス供給ノズル9、反応管10、整流器11、第2キャリヤガス供給ノズル12、第3キャリヤガス供給ノズル13、電気炉14、繊維捕集器15、及びガス排出口16を有する。
前記反応管10の内径は8.5cmである。
前記整流器11の下端部から繊維捕集器15に向かって約80cmの位置までを反応領域とし、この反応領域が1180℃に維持され、更に前記反応領域から下流に向かって徐々に低温となるように、反応管10内の温度を制御した。
原料タンク2には、フェロセン:チオフェン:トルエンの混合比が、モル比で1.0:3.3:95.7の原料溶液を貯留した。
原料ポンプ3により、原料供給管17を介して原料溶液を原料気化器4に供給し、原料溶液を気化させて原料ガスとした後、この原料ガスが4体積%となるように、原料ガスと第1キャリヤガスとを混合した。
前記第1キャリヤガスは、水素であり、第1キャリヤガス供給管18を通じて原料ガス配管19内に供給され、原料ガスと混合される。
前記原料ガスと前記第1キャリヤガスとを、原料ガスが4体積%になるように混合して得られた原料混合ガスを、予熱器5により予熱した後、原料混合ガス供給管20を介して、原料混合ガス供給ノズル9に供給した。この原料混合ガスがこの発明における原料混合物に相当する。
前記原料混合ガス供給ノズル9の内径は2cmで、原料混合ガス供給ノズル9内が温度約400℃に制御されている。
前記原料混合ガスは室温で2L/分で供給されるので、原料混合ガス供給ノズル9からは、400℃で、24cm/秒の速度で原料混合ガスが吹き込まれていたことになる。
第2キャリヤガスは、純水素であり、第2キャリヤガス供給管21を介して、第2キャリヤガス供給ノズル12から整流器11に供給される。
前記第2キャリヤガスは室温で7L/分で供給されるので、整流器11に設けられた整流筒11aにおける内周壁面(内径7cm)と前記原料混合ガス供給ノズル9における外周壁面(外径4cm)との間隙を、約1180℃で22cm/秒で流下していたことになる。
第3キャリヤガスは、水素であり、第3キャリヤガス供給管22を介して、第3キャリヤガス供給ノズル13から整流器11に供給される。
前記第3キャリヤガスは室温で3L/分で供給されるので、整流器11に設けられた整流筒11aにおける外周壁面(外径7.5cm)と前記反応管10における内周壁面(内径8.5cm)との間隙を、約1180℃で20cm/秒で流下していたことになる。
この反応装置においては対流が起こらず、ガスの流れ方向が鉛直上方から鉛直下方へのピストンフローに近い気流であった。
前記原料混合ガス供給ノズル9から流下した原料混合ガスは、周囲の純水素ガスを巻き込むことにより、原料混合ガス中の原料ガスは水素中に拡散しながら流下した。
前記原料混合ガス及び純水素ガスは、更に反応管10の内周壁面に沿って流下する第3キャリヤガスと接触していると考えられ、前記原料混合ガス及び純水素ガスと前記反応管10の内周壁面との間に前記第3キャリヤガスを介在させることにより、例えば、前記反応管10の内周壁面に生成物が付着すること等を防止することができる。
反応領域での原料濃度は、ノズルから吹き出した直後は4%であるが、反応管中を流下するに従い、第2キャリヤガスと混合して徐々に希釈される。しかし、ピストンフローに近い流れの為、完全混合には至っていないと推察される。第3キャリヤガスとも徐々に混合されるが、反応管壁に近い処は水素が多く、反応管内部は原料成分/水素が多い流れになっているものと推察される。
この状態を30分間維持した後、原料供給ポンプ3を停止して5分放置後、反応管10内を窒素ガスで置換した。
前記ガス排出口16におけるフィルター部から0.9g、前記繊維捕集器15から2.2gの繊維が採集された。
前記繊維捕集器15から採集された気相成長炭素繊維は、その鉄含有量が
2.3質量%であり、SEM電子顕微鏡観察から得られたところの、平均直径は約10nmであった。X線回折法によるd002、Lcの測定を試みたが、回折ピークが不鮮明で実質的に測定不可能であった。TEM電子顕微鏡観察から中空(中空径4nm)で、中心に平行に黒鉛層が並んでいるのが確認され、黒鉛層が繊維軸平行に配向した年輪構造の繊維であることが確認された。
2.3質量%であり、SEM電子顕微鏡観察から得られたところの、平均直径は約10nmであった。X線回折法によるd002、Lcの測定を試みたが、回折ピークが不鮮明で実質的に測定不可能であった。TEM電子顕微鏡観察から中空(中空径4nm)で、中心に平行に黒鉛層が並んでいるのが確認され、黒鉛層が繊維軸平行に配向した年輪構造の繊維であることが確認された。
この気相成長炭素繊維を、窒素気流中で400℃10分、続けて1000℃
15分熱処理後、アルゴン気流中2100℃15分加熱処理をした。
15分熱処理後、アルゴン気流中2100℃15分加熱処理をした。
得られた繊維は、鉄含有量が2.4質量%であり、SEM電子顕微鏡観察から得られたところの、平均直径は10nmであり、X線回折法により決定されたd002は0.343nmであり、Lcが7nmであった。また、SEM電子顕微鏡の観察視野内に存在するいずれの繊維においてもその端部を発見することができず、したがって、観察されるいずれの繊維についてもその平均アスペクト比は明らかに100以上であった。また、TEM電子顕微鏡観察結果から、この繊維は中空年輪構造をした炭素質ナノファイバーであった。
上記方法とまったく同じ方法で、炭素質ナノファイバーを約50g作製した。この炭素質ナノファイバー40gとナイロン樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、商品名:NOVAMID)360gとからなる複合材料(繊維体積含有率約6%)を形成し、その複合材料の比抵抗を測定したところ、その値は1×10−1Ωcmであった。なお、比抵抗の測定は4端子法で行った。
(実施例2)
反応領域を1200℃に維持し、原料溶液としてフェロセン:チオフェン:トルエンの混合比がモル比で1.5:0.8:97.7の溶液を採用し、第1キャリヤガス及び第2キャリヤガスとしてそれぞれ純水素ガスを採用し、第3キャリヤガスとして純窒素ガスを採用し、前記原料溶液を気化させて原料ガスとした後、この原料ガスが2体積%となるように原料ガスと第1キャリヤガスとを混合して、原料混合ガスを得、この原料混合ガスを30cm/秒の速度で流下させ、前記第2キャリヤガスを12cm/秒で流下させ、前記第3キャリヤガスを12cm/秒で流下させた以外は、実施例1と同様に炭素繊維の製造を行った。
反応領域を1200℃に維持し、原料溶液としてフェロセン:チオフェン:トルエンの混合比がモル比で1.5:0.8:97.7の溶液を採用し、第1キャリヤガス及び第2キャリヤガスとしてそれぞれ純水素ガスを採用し、第3キャリヤガスとして純窒素ガスを採用し、前記原料溶液を気化させて原料ガスとした後、この原料ガスが2体積%となるように原料ガスと第1キャリヤガスとを混合して、原料混合ガスを得、この原料混合ガスを30cm/秒の速度で流下させ、前記第2キャリヤガスを12cm/秒で流下させ、前記第3キャリヤガスを12cm/秒で流下させた以外は、実施例1と同様に炭素繊維の製造を行った。
前記繊維捕集器15から1.6g、前記ガス排出口16におけるフィルター部から1.2gの繊維が採集された。
前記繊維捕集器15から採集された気相成長炭素繊維は、その鉄含有量が3.0重量%であり、SEM電子顕微鏡観察から得られたところの、平均直径は15nmであった。X線回折法によるd002、Lcの測定を試みたが、回折ピークが不鮮明で実質的に測定不可能であった。TEM電子顕微鏡観察から中空(中空径5nm)で、中心に平行に黒鉛層が並んでいるのが確認され、黒鉛層が繊維軸平行に配向した年輪構造の繊維であることが確認された。
この気相成長炭素繊維を窒素気流中で400℃で15分、続けて1000℃で
20分の熱処理をした後、アルゴン気流中で2000℃で20分の加熱処理をした。
20分の熱処理をした後、アルゴン気流中で2000℃で20分の加熱処理をした。
得られた繊維は、鉄含有量が3.2質量%であり、SEM電子顕微鏡観察から得られたところの、平均直径は15nmであり、X線回折法により決定されたd002は0.345nmであり、Lcが6nmであった。また、SEM電子顕微鏡の観察視野内に存在するいずれの繊維においてもその端部を発見することができず、したがって、観察されるいずれの繊維についてもその平均アスペクト比は明らかに100以上であった。また、TEM電子顕微鏡観察結果から、この繊維は、中空年輪構造をした炭素質ナノファイバーであった。
この炭素質ナノファイバーとシリカゴムとからなる複合材料を形成し、その複合材料の比抵抗を測定したところ、その値は繊維体積含有率4%で1×10−2Ωcmであった。
1・・・気相成長炭素繊維製造装置、2・・・原料タンク、3・・・原料ポンプ、4・・・原料気化器、5・・・予熱器、6・・・第1キャリヤガス流量計、7・・・第2キャリヤガス流量計、8・・・第3キャリヤガス流量計、9・・・原料混合ガス供給ノズル、10・・・反応管、11・・・整流器、11a・・・整流筒、12・・・第2キャリヤガス供給ノズル、13・・・第3キャリヤガス供給ノズル、14・・・電気炉、15・・・繊維捕集器、16・・・ガス排出口、17・・・原料供給管、18・・・第1キャリヤガス供給管、19・・・原料ガス配管、20・・・原料混合ガス供給管、21・・・第2キャリヤガス供給管、22・・・第3キャリヤガス供給管。
Claims (4)
- 遷移金属の含有量が0.05〜10重量%であって、平均直径が1〜100nmであり、平均アスペクト比が少なくとも10であり、X線回折による黒鉛としての結晶性を示すd002が0.339〜0.346nm、かつLcが3〜20nmであり、中空年輪構造を有し、以下の特性を有する気相成長炭素繊維を不活性雰囲気中で1600〜2300℃で熱処理してなることを特徴とする炭素質ナノファイバー。
気相成長炭素繊維の特性
遷移金属の含有量:0.05〜10重量%
平均直径:1〜100nm
平均アスペクト比:少なくとも10
X線回折による黒鉛としての結晶性を示すd002:小さくとも0.348
Lc:大きくとも1nm
実質的に測定不可能なほど非晶質又は低結晶性である気相成長炭素繊維 - 前記遷移金属の含有量が0.05〜10重量%であって、平均直径が1〜100nmであり、平均アスペクト比が少なくとも10であり、X線回折による黒鉛としての結晶性を示すd002が小さくとも0.348、かつLcが大きくとも1nmであり、実質的に測定不可能なほど非晶質又は低結晶性である、中空年輪構造の気相成長炭素繊維を、不活性雰囲気中で1600〜2300℃で熱処理することを特徴とする前記請求項1に記載の炭素質ナノファイバーの製造方法。
- 前記遷移金属が鉄、ニッケル及びコバルトよりなる群から選択される少なくとも一種である前記請求項1に記載の炭素質ナノファイバー。
- 前記遷移金属が鉄、ニッケル及びコバルトよりなる群から選択される少なくとも一種である前記請求項2に記載の炭素質ナノファイバーの製造方法。
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-
2007
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