JP2008062643A - 粘着性蓄光エラストマー成形体 - Google Patents

粘着性蓄光エラストマー成形体 Download PDF

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Abstract

【課題】高い衝撃吸収性を有し、効率のよい蓄光性を示す柔軟性エラストマー成形体において、一体性と低い表面硬度を維持しつつ、粘着面と、粘着性を調整した面とを有する蓄光性柔軟性エラストマー成形体を提供する。
【解決手段】一体として形成され、蓄光顔料を含む柔軟性蓄光エラストマー成形体であって、粘着面と、JIS Z 0237で測定した粘着強さを粘着面の90%以下に調整された、下記(1)粘着性調整面が、表面に細かい凹凸が設けられ、平滑面との接触表面積が粘着面より小さい面である;および/または(2)粘着性調整面が、表面の少なくとも一部分に、厚さ0.001〜150μmで、粘着面の90%以下の粘着強さを有する非粘着性ないし低粘着性の薄層が存在する面である粘着性調整面とを有する粘着性蓄光エラストマー成形体。
【選択図】なし

Description

本発明は、粘着面と粘着性調整面とを有する粘着性蓄光エラストマー成形体、特にシートまたはフィルムに成形した成形体に関する。
近年、防災意識が高まる中で、防災グッズが必要不可欠なものとされてきている。その中でも、地震などによる災害が発生した後に暗視が可能なものとして、非常灯器具や蓄光顔料を含み、粘着性ないし接着性の面を有するステッカーや成形品などが使用されている。これらのものは、非常灯器具は電池の交換が必要であり、蓄光顔料を含むものも、単純に暗視できるものとしてでしか機能を果たしていないため、部屋などの複雑な場所において数箇所にあるだけでは、安全のための機能を充分に果たさない。そこで、そのような暗視可能な物品に緩衝材機能を追加して、今まで緩衝材を使用してきた箇所(たとえば、窓ガラスのコーキング、扉の緩衝材、机・椅子のコーナーの緩衝材、靴の中敷、メモ用具など)に貼着ないし装着して、その箇所を暗視可能にすれば、暗闇でも身体をぶつけることが少なくなる。また、仮に身体をぶつけたとしても、緩衝機能を備えているため、怪我の予防にも効果がある。一方、全表面を粘着性で構成すると、使用上に支障を生じる。
暗視が可能な粘着性エラストマーを用いる他の用途として、道路標識、表示板、広告などがある。
蓄光顔料を含む成形体として、特許文献1には、ガラス板、透明樹脂板、フィルムなどの透明基材に、蓄光顔料を分散させたものが開示されている。しかしながら特許文献1には、基材として柔軟なエラストマーを用いることも、その少なくとも1面を粘着性にすることも開示されていない。また特許文献1には、可視光線の透過性を維持するために、蓄光顔料の平均粒子径が1〜200nmであって、かつ粒子径400nm以上の蓄光顔料を低く抑制することが好ましいことが記載されている。しかし、特許文献1のように粒子径が小さいと、輝度が低く、残光時間が短くなる。
特許文献2には、シリコーンゲルまたはシリコーンゴムに蓄光顔料を分散させた、暗視可能な緩衝材が開示されている。特許文献3には、蓄光顔料を含有する液状ゴム原料から得られるエラストマーによって形成される凹凸シートが開示されている。このシート表面の凹凸パターンは、蓄光顔料を含有する液状ゴム原料を注入するためのものである。しかしながら特許文献2,3には、本発明の課題である、緩衝材の特定の面における粘着性を調整することは、記載されていないし、示唆されてもいない。
特許文献4には、透光性フィルムの一方の面に、蓄光顔料と、アクリルホットメルトやUV硬化型ゴムのような粘着剤との混合物を塗布して得られる蓄光性フィルムが開示されている。特許文献4には、透光性フィルムの他方の面に剥離剤を貼り付けることも開示されている。しかしながら特許文献4に用いられている透光性フィルムは、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニルのような樹脂であって、柔軟性エラストマーを用いることは記載されていない。また、特許文献4の方法では、フィルムに耐光性がなく、耐光性を上げるために紫外線吸収剤を添加すると残光時間が短くなる。
特許文献5および6には、蓄光顔料を含む蓄光層と透明ないし半透明の樹脂層を含む多層構造の蓄光シートが開示されている。特許文献6の構造には、粘着層や、必要によって備えられる剥離紙も開示されている。しかしながら、これらの蓄光シートには、柔軟なエラストマーは用いられておらず、またシートが多層構造であって、粘着層が剥離することがある。また、耐光性を上げるために紫外線吸収剤を添加すると残光時間が短くなる。
特開平9−95671号公報 特開平8−269208号公報 特開平8−238702号公報 特開2001−296804号公報 特開平5−100624号公報 特開2000−290643号公報
本発明の課題は、高い衝撃吸収性を有し、効率のよい蓄光性を示す柔軟性エラストマー成形体において、一体性と低い表面硬度を維持しつつ、粘着面と、粘着性を調整した面とを有する蓄光性柔軟性エラストマー成形体を提供することである。本発明のもうひとつの課題は、上記の特徴に加えて、透明性に優れた蓄光性柔軟性エラストマー成形体を提供することである。
本発明者らは、上記の課題を解決するために研究を重ねた結果、蓄光顔料を含有する柔軟性エラストマー成形体の一方の表面に、細かい凹凸を設け、および/または薄層を設けて、その面の粘着性を調整することにより、上記の課題を解決できることを見出して、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、一体として形成され、蓄光顔料を含む柔軟性蓄光エラストマー成形体であって、粘着調整面にてASTM D1403に規定された1/4コーンを用いて測定した針入度が200以下で、粘着調整面にてJIS K 7312のタイプCデュロメータで測定した表面硬さが60以下であり、かつ粘着面と、JIS Z 0237で測定した粘着強さを粘着面の90%以下に調整された、下記(1)および/または(2)の粘着性調整面とを有する、粘着性蓄光エラストマー成形体
(1)粘着性調整面が、表面に細かい凹凸が設けられ、平滑面との接触表面積が粘着面より小さい面である;
(2)粘着性調整面が、表面の少なくとも一部分に、厚さ0.001〜150μmで、粘着面の90%以下の粘着強さを有する非粘着性ないし低粘着性の薄層が存在する面である(ただし、該薄層が非粘着性の場合、該薄層は、表面の一部分に存在する);
に関する。さらに、本発明は、特定の粒子径を有する特定量の蓄光顔料を含む、光透過性を有する蓄光エラストマー成形体に関する。
本発明により、高い衝撃吸収性を有し、蓄光性を示し、かつ低い表面硬度を維持した、粘着面と粘着性調整面とを有するエラストマー成形体、特にシートまたはフィルムを、環境に配慮した素原料を用いて、簡便に製造することができる。また、用いる蓄光顔料の平均粒子径、細粒含有量、および蓄光顔料の量を特定範囲に選択することにより、蓄光層に透明性を付与することができる。
本発明の柔軟性エラストマー成形体は、エラストマーを構成するポリマーが、代表的にはポリウレタン、ポリアクリル系もしくはポリシロキサンであるか、またはポリスチレンブロックを有する熱可塑性エラストマーなどであり、これらに限定されるものではない。
本発明の柔軟性エラストマー成形体は、柔軟性蓄光エラストマー成形体として優れた衝撃吸収性を示し、かつエラストマーとしての機能を生かすために、粘着調整面にてASTM D1403に規定された1/4コーンを用いて測定した針入度が200以下であり、かつ粘着調整面にてJIS K 7312のタイプCデュロメータで測定した表面硬さが60以下である。上記針入度が100以下で、上記タイプCデュロメータによる表面硬さが40以下であることが好ましい。針入度は、平らな試料に円錐状の針を落としてその進入する深さを測定したもので、針入度の数値が大きいほど表面が柔らかく、上記針入度200は、表面硬さの下限を示す。このような表面硬さが低い柔軟性エラストマーは、ポリマーが、化学的架橋で、もしくは水素結合やイオン結合のような二次架橋で、架橋密度の低い架橋体を形成することにより、またはハードセグメントによる結晶相の形成によって得られる弾性体で、弾性ゲルを包含する。
ポリウレタンエラストマーは、通常、ポリオールとイソシアネート化合物またはその誘導体から、ウレタン化反応によって製造することができる。
ポリオールは、数平均分子量が300〜10,000の、直鎖状または分岐状の分子骨格を有するもので、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンジオール、および2個のリシノール酸のような天然由来の水酸基含有脂肪酸を、ジオールで結合させて得られるビス(ヒドロキシ脂肪酸)エステルなどが例示され、1種を用いても、2種以上を併用してもよい。ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールおよびそれらの混合物が好ましい。比較的低粘度のポリオールを用いながら、架橋密度を抑制して、架橋密度の低い架橋体を形成するために、一部にモノオールを併用してもよい。
イソシアネート化合物は、分子中に少なくとも2個のイソシアナト基を含み、ポリオールと反応してウレタン結合を形成するもので、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートのような芳香族イソシアネート化合物;シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートのような脂環式イソシアネート化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートのような脂肪族イソシアネート化合物のいずれでもよく、1種を用いても、2種以上を併用してもよい。また、このようなイソシアネート化合物のビウレット体、アロファネート体、イソシアヌレート体のようなオリゴマー;カルボジイミド変性体;およびポリオールの末端にイソシアナト基含有基が結合したプレポリマーなどを用いることができる。イソシアネート化合物は、良好なエラストマーが得られ、その経時変化がなく、未反応物やオリゴマーの滲み出しがないことから、ポリオールの水酸基、またはモノオールを併用するときはポリオールとモノオールの水酸基合計量に対するイソシアナト基の比、すなわちイソシアネートインデックスは、0.85〜1.12の範囲が好ましく、0.95〜1.10がさらに好ましい。
ポリオールとイソシアネート化合物またはその誘導体との反応を促進するために、必要に応じて触媒を用いることが有効である。触媒としては、N−メチルモルホリン、1−イソブチル−2−メチルイミダゾール、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7のようなアミン類;オクタン酸スズ、ナフテン酸スズのようなカルボン酸金属塩;ジブチルスズジオクトアート、ジブチルスズジラウラートのような有機金属化合物;アセチルアセトナト鉄のような金属キレート化合物が例示され、1種を用いても、2種以上を併用してもよい。
ポリアクリル系エラストマーは、分子末端または側鎖に官能基を有するポリ(メタ)アクリル酸エステルを、架橋剤で架橋させて得られるエラストマーの総称である。(メタ)アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリルのようなアクリル酸アルキルエステル;アクリル酸メトキシエチルエステル、アクリル酸エトキシエチルエステルのようなアクリル酸アルコキシアルキルエステル;およびこれらに対応するメタクリル酸エステルが例示される。ポリ(メタ)アクリル酸エラストマーは、これらのモノマーを任意に重合させて合成される。本発明においてベースポリマーとして用いるには、モノマーの一部として、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸4−ヒドロキブチルのような側鎖に水酸基を有するアクリル酸エステル;それらに対応するメタクリル酸エステル;および/またはアクリル酸、メタクリル酸のような(メタ)アクリル酸を用いて、官能基を導入する。官能基としては、水酸基およびカルボキシル基が例示される。分子末端に選択的に官能基を導入するには、官能基をもたないモノマーをホモ重合または共重合させた後、最終段階において、上記の官能基を含有するモノマーを理論量導入するか;官能基をもたないモノマーと、トリメチルシロキシ基のような保護基を含有するモノマーとをグループトランスファー重合した後、末端に存在する保護基を脱保護するなどの方法を用いる。架橋剤としては、エポキシ基を有する化合物、触媒としては、ポリウレタンエラストマーと同様のアミン類、カルボン酸金属塩、有機金属化合物、金属キレート化合物などが挙げられる。さらに、架橋剤の一部または全部としてポリイソシアネート化合物、そのオリゴマーまたはプレポリマーを用いることができる。ポリマーの官能基として水酸基を有し、架橋剤中のイソシアネート系架橋剤の比率が高い一群のものを、ポリアクリルウレタンエラストマーという。本発明においては、ポリアクリルウレタンエラストマーも、ポリアクリル系エラストマーに包含される。
ポリアクリルウレタンエラストマーは、上記のようなポリアクリル系エラストマーの一種であり、かつ前記ポリウレタンエラストマーの一部のポリオールおよび/またはモノオールとして、両末端および/または片末端に水酸基を有するポリ(メタ)アクリル酸エステルを用いることにより、分子中に(メタ)アクリル単位を導入したものとしても位置づけられる。このような反応性ポリ(メタ)アクリル酸エステルとしては、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸イソプロピル、ポリアクリル酸ブチル;および対応するポリメタクリル酸エステル、2種以上の(メタ)アクリル単位からなる共重合体などが例示される。残余のポリオールおよび/またはイソシアナト基を含むイソシアネートプレポリマーのポリオール成分として、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールなどを用いることができる。
ポリシロキサンエラストマーは、ビニル基含有ポリシロキサンをベースポリマーとし、Si−H結合含有ポリシロキサンを架橋剤として、塩化白金酸や白金錯体のような白金系化合物の触媒作用でヒドロシリル化反応によって得ることができる。この際、ビニル基含有ポリシロキサンとして、両末端にビニル基を有する直鎖状ポリシロキサン単独か、これに必要に応じて片末端にビニル基を有する直鎖状ポリシロキサンとを適宜配合して、1分子あたりのビニル基の数を平均0.4〜2.0個、好ましくは1.0〜2.0個に制御することにより、比較的低粘度のビニル基含有ポリシロキサンを用いながら、架橋密度を抑制して、架橋密度の低い架橋体を形成することができる。ケイ素原子に結合する有機基は、上記ビニル基以外は、1価の非置換または置換炭化水素基であり、通常は、合成が容易で、未硬化状態では粘度が比較的低く、硬化して得られるエラストマーが良好な性質を示すことから、メチル基が一般的であり、エラストマーに透明性や耐寒性を付与するために一部にフェニル基を用いるなどの改良がなされている。
ポリスチレンブロックを有する熱可塑性エラストマーは、両末端にハードセグメントとしてポリスチレンブロックを有し、それをポリブタジエンブロック、ポリイソプレンブロック、ポリ(エチレン・ブタジエン)ブロック、ポリ(エチレン・プロピレン)ブロックのようなソフトセグメントでつないだ構造を有し、代表的にはポリスチレン−ポリ(エチレン・ブタジエン)−ポリスチレンブロック共重合体である。
本発明に用いられる蓄光顔料は、硫化亜鉛、硫化(カルシウム・ストロンチウム)のような硫化物;アルミン酸カルシウム、アルミン酸ストロンチウム、アルミン酸(カルシウム・ストロンチウム)のようなアルミン酸塩、SrMgSiのような複合酸化物などの母体化合物を、銅、ビスマス、希土類、ハロゲンのような賦活剤で活性化したもので、場合によってはさらにケイ酸カルシウムなどによって表面処理を施してもよく、長時間の残光を有するものである。蓄光顔料は、単独で用いても、数種を混合して用いてもよい。個々の蓄光顔料に固有の発光色以外の色調の発光が必要な場合に、特に混合が有効である。
蓄光顔料の体積平均粒子径(D50)(以下、単に「平均粒子径という」)は、容易に入手でき、成形体の物理的性質を損なうことなく、しかも有効な輝度が得られることから、2〜1,000μmが好ましい。蓄光顔料は、粗いほど明るい輝度が得られるが、特に薄いシートで明るい輝度を得るためには、表面の平滑性を保つために、10μm以上、200μm未満の領域がさらに好ましい。一方、特に蓄光顔料を含有する層を通して文字や図形を読み取る必要があるなど、高い透明性を必要とする用途には、蓄光顔料による白濁を生じないことから、粒子径20μm以下の細粒の含有率が30体積%以下で、平均粒子径が30〜1,000μmの領域であることがさらに好ましく、細粒の含有率が10体積%以下で、平均粒子径が40〜1,000μmであることが特に好ましい。また、蓄光顔料には、破砕された不定形のものと、プラズマ処理などの方法によって球形にしたものがあるが、球形の蓄光顔料を用いることにより、蓄光顔料を含有する層の透明性を上げることができる。
蓄光顔料の配合量は、成形体が充分な蓄光輝度を示し、視覚で確認できる時間が10分以上あることを必要とし、一方、蓄光顔料をあまり多量に配合してもそれに見合う効果がなく、かえって成形体の機械的性質や透明性を損なうことから、発光面あたりの投入量指数は、0.25〜60.0が好ましく、0.25〜20.0がより好ましく、残光時間を重視する場合には、1.0〜15.0がさらに好ましい。透明性を重視する場合には、発光面あたり投入量指数は0.25〜50.0がさらに好ましく、0.25〜12.0がさらにより好ましく、0.5〜9.0が特に好ましい。
本発明のエラストマーは、本発明の特徴である残光時間や透明性に悪影響を与えない範囲で、必要に応じて、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、可塑剤、消泡剤、脱水剤などを配合してもよい。たとえば上記熱可塑性エラストマーは、表面硬度を下げるために、それと相溶性の炭化水素系可塑剤を、系全体の30〜70重量%配合してもよい。また、本発明の方法によって粘着性を調整しうる範囲で、粘着面の粘着性を向上させるために、粘着性を向上させる成分を共重合させるか、または粘着剤を配合してもよい。
熱可塑性エラストマー以外の上記の各エラストマーは、それぞれ必要な成分を混合し、反応によって硬化させて、エラストマーを得ることができる。たとえばポリウレタンエラストマーは、イソシアネート化合物以外の成分を混合してプレミックスとし、それとイソシアネート化合物を、撹拌機、ミキサー、ミキシングヘッドのような混合手段によって混合し、ただちに成形・硬化に供する。
ポリシロキサンエラストマーは、通常、ベースポリマーと架橋剤を含むプレミックスと、ベースポリマーと触媒を含むプレミックスを用意して、両者を同様の混合手段によって混合し、成形した後、70〜120℃で0.5〜2時間加熱することによってエラストマーを形成させる。あるいは、3−メチル−1−ブチン−3−オール、1−エチニル−1−シクロヘキサノールなどのアセチレンアルコール類のような反応抑制剤を配合して安定化させた、全成分を含む組成物を密閉容器に低温で保存し、それを容器から押出して成形し、加熱して反応抑制剤を揮散させ、120〜180℃で1〜6時間の加熱で硬化させてもよい。
熱可塑性エラストマーは、必要に応じて配合される可塑剤、粘着性付与剤などの成分と混練し、150℃以上の温度で、プレス成形、押出成形などの方法によって成形する。たとえば、予備混合の後、二軸押出機により、200℃で押出成形を行う。
本発明のエラストマー成形体の形状は特に限定されず、シートまたはフィルムのような、厚さを無視すれば平面状のものも、直方体、立方体、円筒、異形成形体のような立体構造を示すものも包含される。容易に成形され、一方の面が粘着性物質として実用的な粘着性を有する粘着面で、他方の面が調整された粘着性を有し、各種の用途に広く用いられることから、シートまたはフィルムが好ましく、光源としての特性と機械的性質の兼ね合いから、厚さ0.5〜20mmのシートがより好ましく、均質なシートを得やすいことから、厚さ0.5〜5mmのシートが特に好ましい。立体構造を示すものは、その少なくとも1個の面が粘着面で、他の少なくとも1個の面、たとえば粘着面と平行な面が、調整された粘着性を有する。粘着面は、JIS Z 0237で測定した粘着性が、目的に応じて好ましくは0.05〜15N/20mm、さらに好ましくは1〜13N/20mmである。
ここで、調整された粘着性を有するとは、その目的に応じて、その面が粘着性をまったく示さないか、上記JIS Z 0237で測定した粘着強さが、粘着面の粘着強さの90%以下、好ましくは80%以下であり、かつ0.1%以上、好ましくは1%以上に制御された粘着性を有することである。この比が90%を越えると、粘着性を調整した効果が充分でない。
本発明のエラストマー成形体は、たとえば前述のように、(1)粘着性調整面の表面が、細かい凹凸の存在により、対象平滑面との接触表面積が粘着面より小さくなり、たとえば単位表面積の98%以下、好ましくは95%以下になるように形成されているか;および/あるいは(2)粘着性調整面に、厚さ0.001〜150μm、好ましくは0.5〜100μmの非粘着性ないし低粘着性の薄層を有するかによって、上記の粘着面と粘着性調整面とが形成される。ここで、粘着性調整面は、同一の面が、上記の形態(1)と(2)を兼ねる形態の粘着性調整面であってもよい。
このようなエラストマー成形体は、注型、流延、射出成形、トランスファー成形、押出成形、ブロー成形など、任意の方法によって成形することができる。たとえば、未架橋の状態で流動性のエラストマー組成物で、架橋によってエラストマー成形体を形成するタイプのエラストマー組成物を、上面のない金型に、任意の厚さに注型することにより、上面が平滑な粘着面となるエラストマー成形体を作製することができる。
前述の調整された粘着性を有する面は、次のような方法によって製造することができる。このような方法により、プラスチックフィルムを貼り付ける方法に比べて、表面硬度を上昇させることなく、調整された粘着性を有する面を形成することができる。
第1の方法は、少なくとも1個の面に細かい凹凸を設けることにより、平滑面との接触表面積を粘着面より小さくして、エラストマーの表面硬度を上げることなく、調整された粘着性を有する面を形成させることである。凹凸は、規則的に、または不規則的に配列されていてよく、代表的には、深さが平均0.1〜1mm、幅が平均0.02〜0.2mmの不規則な線状の凹部が、3〜30本/cm入った皮革様の外観を呈するものである。
このような凹凸は、直接的又は間接的に、シボ加工、エンボス加工によって形成させることができる。具体的には、たとえば、成形に用いる型の、特定の面に当たる部位に細かい凹凸を設けて成形を行うことにより、成形された柔軟なエラストマーの該特定の面に細かい凹凸を設け、調整された粘着性を有する面を形成させることができる。また、熱可塑性エラストマーの場合には、可塑化温度以上に加熱した押し印によって、細かい凹凸を設けることができる。
また、別の方法として、細かい凹凸を設けた剥離紙もしくは剥離フィルムを用意し、たとえば金型の1個の面に敷いて、それに未硬化のエラストマーを注型もしくは流延することにより、柔軟なエラストマーの、その剥離紙もしくは剥離フィルムに接した面に細かい凹凸を設け、調整された粘着性を有する面を形成させることができる。
第2の方法は、成形品の一体性を保ちながら、少なくとも1個の面に厚さ0.001〜150μm、好ましくは0.05〜100μmの、非粘着性または低粘着性の薄層を設けることにより、エラストマーの表面硬度を上げることなく、調整された粘着性を有する面を形成させることである。薄層の厚さが0.001μm未満では、粘着性を制御よく調整することが困難であり、150μmを越えてもそれだけの効果の増大がなく、むしろ、粘着性以外の物性、たとえば表面硬さなどに、薄層の影響が出る。ここで、非粘着性ないし低粘着性の薄層とは、粘着面の90%以下、好ましくは80%以下の粘着強さを有する薄層をいう。
このような薄層は、粘着性調整面の少なくとも一部に存在する。すなわち、薄層は、粘着性調整面を完全に被覆してもよく、目的に応じてその面の粘着性を下げる程度に、一部分を被覆していてもよい。ただし、薄層が非粘着性の場合、粘着性調整面の粘着性が前述の範囲に入るために、粘着性調整面の一部分を被覆する薄層を形成させるように、制御して被覆する。
具体的には、たとえば、成形されたエラストマーの粘着性調整面に、スプレー、含浸、ロールコート、刷毛塗りなどの方法によって、剥離性を有する物質を、必要に応じて溶媒で希釈して塗布する。このような剥離性を有する物質としては、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ペルフルオロアルキルエーテル、ペルフルオロアルキルエーテルのオリゴマーおよびポリマー、コハク酸ビス(ペルフルオロアルキルエチル)エステル、トリス(ペルフルオロアルキル)エチルリン酸エステルのようなフッ素化合物;ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリメチルデシルシロキサン、ポリメチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)シロキサンのような、たとえば27℃における粘度が10,000〜3,000,000mm2/sの、非反応性の高粘度シリコーンオイルまたはシリコーン生ゴム;ポリエチレンワックス、パラフィンロウ、セレシンロウのような炭化水素系ワックス;カルナウバロウ、モンタンロウのような高級脂肪酸エステルワックスなどが例示される。また、第2の方法に属する別法として、インジウム−スズ酸化物、酸化スズのような透明な金属酸化物の層を、真空蒸着によって形成させることができる。
希釈溶媒としては、フッ素化合物の場合は、メタノール、イソプロパノールのようなアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトンのようなケトン系溶媒;トルエン、キシレン、石油ベンジンのような炭化水素系溶媒を用いることができ、シリコーンおよびワックス類の場合は、トルエン、キシレン、石油ベンジンのような炭化水素系溶媒を用いることができる。また、エラストマーが溶媒に触れると侵されやすい場合など、上記離型性物質を、転写しやすいように、金型や剥離紙などに塗布し、溶媒の揮散温度を超える温度で処理して離型性物質の薄層を形成させ、そこからエラストマーの特定の面に転写して、エラストマーに薄層を形成させることにより、粘着性調整面を形成させることができる。
粘着性調整面を得るために、上記の2種の方法を併用することもできる。すなわち、細かい凹凸のある剥離性表面を作成して、その表面に離型性を有する物質の薄膜を形成させてもよい。その変形として、細かい凹凸のある離型性物質の薄層を、直接または転写によって、上記エラストマー表面に形成させてもよい。
以下、本発明を、実施例によって詳細に説明する。調製例、比較例および実施例において、特に断らない限り、部は重量部、配合などの%は重量比を示す。本発明は、実施例によって限定されるものではない。
実施例および比較例で得られたエラストマー成形体について、下記の試験法により、評価を行った。
(1)表面硬さ
厚さ10mmの試料を作製し、JIS K7312に準じて、タイプCデュロメータにより表面硬さを測定した。
(2)針入度
厚さ50mmの試料を作製し、ASTM D1403に規定された1/4コーンを用いて、針入度を測定した。
(3)粘着性
厚さ2.0mmの試料を作製し、JIS Z0237に準じて180°引き剥がし粘着力の測定を行った。ただし、実施例の各試料については、粘着性調整面と、粘着性を調整しない面について試験を行った。
(4)全光線透過率
厚さ2.0mmの試料について、JIS K7136に準じて、全光線透過率の測定を行った。
(5)残光時間
厚さ0.5〜5.0mmの試料について、照度400Luxの光源によって照射した後、暗所において試料からの残光が目視できなくなる時間を測定した。ただし、エラストマー、蓄光顔料および粘着性調整面の作製方法の比較は、2.0mmの試料によって行なった。測定は、照射後15,30,45,60分について行ない、それ以降は30分間隔で行なった。
ポリアクリル系エラストマー
調製例1
下記の原料を用いて、ポリアクリル系エラストマー組成物のプレミックスを調製した。
A−1:グリセリン−ポリオキシプロピレントリオール(3官能性、水酸基価:18.0);
A−2:片末端に水酸基を有するポリアクリル酸ブチル(1官能性、水酸基価:65)

C−1:オクタン酸スズ;
D−1:SrMgSi:Eu,Dy、平均粒子径(D50)20μm、不定形
撹拌機を備えた混合槽に、A−1 85部とA−2 15部をとり、撹拌機により撹拌して、ポリマー混合液を得た。これに、C−1 0.2部および必要量のD−1を添加して、均一になるまで室温で撹拌を続け、プレミックス1a〜1hを調製した。なお、D−1の添加量は、成形されたシートの厚さを考慮して、次式による投入量指数、すなわちシートの単位面積あたりのD−1の量が、表1に示す所定の量になるように、シートごとに定めた。ただし、表面硬さおよび針入度を試験するための肉厚試料には、厚さ2.0mmの試料と同じ添加量とした。
Figure 2008062643
比較例1
上面を開放したステンレス製の平箱状の金型を用いた。金型の底面に、移行性のない架橋型シリコーン剥離剤の層を平滑な剥離面として有する剥離紙を、剥離面を上にして敷いた。混合槽のプレミックス1bに、撹拌しながら20℃で下記のB−1 14部を注ぎ込んで均一になるまで混合し、ついで真空ポンプにより脱泡して、ポリアクリルウレタン組成物を調製した。
B−1:ヘキサメチレンジイソシアネートをポリプロピレングリコールと反応させて得られた、両末端にイソシアナト基を有するプレポリマー(NCO:12.1%);
これを上記金型に、上記の評価に必要な厚さに注型した。これを120℃の温風加熱炉に移し、ウレタン化反応による架橋を10分間行い、ついで70℃でさらに12時間加熱して、両面が平滑で均質な組成の、完全に硬化したポリアクリルウレタンエラストマーシートを得た。ただし、残光時間測定用の試料の厚さは、2.0mmとした。
実施例1〜6、A、B
剥離面に移行性のない架橋型シリコーン剥離剤の層を有し、かつ剥離面に、深さ0.3〜1mm、幅0.03〜0.1mmに分布する細かい凸部が不規則に平均4本/cm分散した皮革様の凹凸面(シボ)を有する剥離紙を、金型の底面に敷いたことと、プレミックス1a〜1hを用いて、試料の厚さとD−1の投入量指数を変えたシート作製した以外は、比較例1と同様にして、一方の面が平滑で、他方の面(粘着性調整面)が剥離面の凸部から転写された細かい凹部を有する、均質で完全に硬化したポリアクリルウレタンエラストマーシートを得た。各試料の表面硬さ、残光時間および粘着性調整面の粘着性を比較した。結果を表1に示す。なお、これらのシートの粘着面の粘着性は、対応する比較例1のシートとほぼ同等の粘着性(表3参照)を示した。
Figure 2008062643
調製例2
蓄光顔料の平均粒子径を変えて、アクリル系エラストマー組成物のプレミックスを調製した。すなわち、蓄光顔料D−1の代わりに下記の蓄光顔料を用いる以外は調製例1と同様にして、プレミックス2a〜2fを調製した。括弧内に、それを用いて調製したプレミックスを示す。
D−2:SrMgSi:Eu,Dy、平均粒子径(D50)40μm、粒子径20μm以下の細粒の含有率9体積%、不定形(プレミックス2a)
D−3:SrMgSi:Eu,Dy、平均粒子径40μm(D50)、粒子径20μm以下の細粒の含有率9体積%、球形(プレミックス2b)
D−4:SrMgSi:Eu,Dy、平均粒子径(D50)150μm、粒子径20μm以下の細粒の含有率4体積%、不定形(プレミックス2c〜2f)
なお、投入量指数は、成形された試料の厚さ2mmに対する価である。
比較例2
プレミックス2cを用いる以外は比較例1と同様にして、ポリアクリルウレタン組成物を調製し、ポリアクリルウレタンエラストマーシートを得た。ただし、残光時間測定用の試料の厚さは、2.0mmとした。
実施例7〜12
実施例と同様の試料を作製し、表面硬さ、全光線透過率および残光時間の比較を行った。すなわち、実施例1〜6、A、およびBで用いたのと同じ皮革様の凹凸面を有する剥離紙を、金型の底面に敷き、プレミックス2a〜2fを注型した以外は比較例2と同様にして、一方の面が平滑で、他方の面(粘着性調整面)が剥離面の凸部から転写された細かい凹部を有する、均質で完全に硬化したポリアクリルウレタンウレタンエラストマーシートを得た。各試料の表面硬さ、残光時間、全光線透過率および粘着性調整面の粘着性を比較した。ただし、残光時間および全光線透過率については、厚さ2mmの試料を用いた。結果を表2に示す。なお、実施例2のシートについても、全光線透過率の測定を行なった。これらの結果を、表2に示す。比較のために、表2には、実施例2の全光線透過率以外のデータも再録した。また、これらのシートの粘着面の粘着性は、対応する比較例2のシートとほぼ同等の粘着性(表3参照)を示した。
Figure 2008062643
実施例13,14
フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体を、メチルエチルケトンで5%溶液に希釈して、比較例1と同様のステンレス製金型の底面にスプレー塗布し、風乾後、メチルエチルケトンが揮散するまで100℃に加熱して、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体層を剥離層として有するステンレス製金型を作製した。この金型に、プレミックス1b(実施例13)またはプレミックス2c(実施例14)とB−1との混合物を注型し、以下、比較例1と同様の加熱条件で加熱することにより、剥離面から移行して、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体の厚さ1μmの層が、一方の面(粘着性調整面)に部分的に形成されたポリアクリルウレタンエラストマーシートを得た。
実施例15,16
実施例1に用いた剥離紙と同様の細かい凹凸を底面に有し、上面を開放したステンレス製の平箱状の金型の底面に、実施例13と同様(実施例15)または、実施例14と同様(実施例16)にして、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体層を形成させた。この金型を用い、実施例2と同様にして、一方の面が平滑で、他方の面(粘着性調整面)が細かい凹凸を有し、かつフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体の厚さ1μmの層が部分的に形成されたポリアクリルウレタンエラストマーシートを得た。
実施例13〜16および比較例1,2のポリアクリルウレタンエラストマーシートの、表面硬さ、残光時間、全光線透過率および粘着性を測定した。その結果を表3に示す。ただし、各実施例については、表3には、粘着性調整面の粘着性を示す。これらのポリアクリルウレタンエラストマーシートの粘着面の粘着性は、対応する比較例1,2のポリアクリルウレタンエラストマーシートとほぼ同等の粘着性を示した。
Figure 2008062643
ポリウレタンエラストマー
調製例3
A−2の代わりに下記のA−3を用いる以外は、調製例1のプレミックス1bの調整に準じて、ポリウレタンエラストマー組成物のプレミックスを調製した。
A−3:n−ブタノール−ポリオキシプロピレンモノオール(1官能性、水酸基価:16.8)
すなわち、撹拌機を備えた混合槽に、A−1 70部とA−3 30部をとり、撹拌機により撹拌して、ポリマー混合液を得た。これに、C−1 0.2部および成形されたシートの厚さ2.0mmの際に投入量指数が2.89になる量のD−1を添加して、均一になるまで室温で撹拌を続け、プレミックス3を調製した。
比較例3
プレミックス3に下記のB−2 14.76部を注ぎ込んだ以外は比較例1と同様にして、ポリウレタンエラストマー組成物を調製した。
B−2:ジフェニルメタンジイソシアネートのカルボジイミド変性体(NCO:29.0%)
これを、比較例1と同様の剥離紙を敷いた金型に、比較例1と同様に注型および加熱して、両面が平滑で均質な組成の、ポリウレタンエラストマーシートを得た。残光時間の測定に用いるシートは、厚さ2.0mmとした。
実施例17
実施例2と同様の剥離紙を用いた以外は比較例3と同様にして、一方の面が平滑で、他方の面(粘着性調整面)が細かい凹凸を有する、均質で完全に硬化したポリウレタンエラストマーシートを得た。
実施例18
実施例13と同様の、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体層を剥離層として有する金型を用いた以外は比較例3と同様にして、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体の厚さ1μmの層が、一方の面(粘着性調整面)に部分的に形成されたポリウレタンエラストマーシートを得た。
実施例19
実施例15と同様の、細かい凹凸を底面に有し、かつフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体層を剥離層として有する金型を用いた以外は比較例3と同様にして、一方の面が平滑で、他方の面(粘着性調整面)が細かい凹凸を有し、かつフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体の厚さ1μmの層が部分的に形成されたポリウレタンエラストマーシートを得た。
実施例17〜19および比較例3のポリウレタンエラストマーシートの、表面硬さおよび粘着性を測定した。その結果を表4に示す。ただし、実施例17〜19については、表3には、粘着性調整面の粘着性を示す。実施例17〜19のポリウレタンエラストマーシートの粘着面の粘着性は、比較例3のポリウレタンエラストマーシートとほぼ同等の粘着性を示した。
Figure 2008062643
調製例4
調整例3のD-1の代わりに、下記の蓄光顔料D−5を使用した。
D−5:SrAl:Eu,Dy、平均粒子径(D50)20μm、不定形
すなわち、撹拌機を備えた混合槽に、A−1 70部とA−3 30部をとり、撹拌機により撹拌して、ポリマー混合液を得た。これに、C−1 0.2部および成形されたシートの厚さ2.0mmの際に投入量指数が2.89になる量のD−5を添加して、均一になるまで室温で撹拌を続け、プレミックス4を調製した。
比較例4
プレミックス4に下記のB−2 14.76部を注ぎ込んだ以外は比較例3と同様にして、ポリウレタンエラストマー組成物を調製した。
B−2:ジフェニルメタンジイソシアネートのカルボジイミド変性体(NCO:29.0%)
これを、比較例1と同様の剥離紙を敷いた金型に、比較例1と同様に注型および加熱して、両面が平滑で均質な組成の、ポリウレタンエラストマーシートを得た。残光時間の測定に用いるシートは、厚さ2.0mmとした。
実施例20
実施例2と同様の剥離紙を用いた以外は比較例4と同様にして、一方の面が平滑で、他方の面(粘着性調整面)が細かい凹凸を有する、均質で完全に硬化したポリウレタンエラストマーシートを得た。
実施例21
実施例13と同様の、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体層を剥離層として有する金型を用いた以外は比較例4と同様にして、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体の厚さ1μmの層が、一方の面(粘着性調整面)に部分的に形成されたポリウレタンエラストマーシートを得た。
実施例22
実施例15と同様の、細かい凹凸を底面に有し、かつフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体層を剥離層として有する金型を用いた以外は比較例4と同様にして、一方の面が平滑で、他方の面(粘着性調整面)が細かい凹凸を有し、かつフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体の厚さ1μmの層が部分的に形成されたポリウレタンエラストマーシートを得た。
実施例20〜22および比較例4のポリウレタンエラストマーシートの、表面硬さおよび粘着性を測定した。その結果を表5に示す。ただし、実施例20〜22については、表3には、粘着性調整面の粘着性を示す。実施例20〜22のポリウレタンエラストマーシートの粘着面の粘着性は、比較例4のポリウレタンエラストマーシートとほぼ同等の粘着性を示した。
Figure 2008062643
調製例5
調整例3のD-1の代わりに、下記の蓄光顔料D−6を使用した。
D−6:ZnS:Cu,Co、平均粒子径(D50)15μm、不定形
すなわち、撹拌機を備えた混合槽に、A−1 70部とA−3 30部をとり、撹拌機により撹拌して、ポリマー混合液を得た。これに、C−1 0.2部および成形されたシートの厚さ2.0mmの際に投入量指数が2.89になる量のD−6を添加して、均一になるまで室温で撹拌を続け、プレミックス5を調製した。
比較例5
プレミックス5に下記のB−2 14.76部を注ぎ込んだ以外は比較例3と同様にして、ポリウレタンエラストマー組成物を調製した。
B−2:ジフェニルメタンジイソシアネートのカルボジイミド変性体(NCO:29.0%)
これを、比較例1と同様の剥離紙を敷いた金型に、比較例1と同様に注型および加熱して、両面が平滑で均質な組成の、ポリウレタンエラストマーシートを得た。残光時間の測定に用いるシートは、厚さ2.0mmとした。
実施例23
実施例2と同様の剥離紙を用いた以外は比較例5と同様にして、一方の面が平滑で、他方の面(粘着性調整面)が細かい凹凸を有する、均質で完全に硬化したポリウレタンエラストマーシートを得た。
実施例24
実施例13と同様の、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体層を剥離層として有する金型を用いた以外は比較例5と同様にして、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体の厚さ1μmの層が、一方の面(粘着性調整面)に部分的に形成されたポリウレタンエラストマーシートを得た。
実施例25
実施例15と同様の、細かい凹凸を底面に有し、かつフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体層を剥離層として有する金型を用いた以外は比較例5と同様にして、一方の面が平滑で、他方の面(粘着性調整面)が細かい凹凸を有し、かつフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体の厚さ1μmの層が部分的に形成されたポリウレタンエラストマーシートを得た。
実施例23〜25および比較例5のポリウレタンエラストマーシートの、表面硬さおよび粘着性を測定した。その結果を表6に示す。ただし、実施例23〜25については、表には、粘着性調整面の粘着性を示す。実施例23〜25のポリウレタンエラストマーシートの粘着面の粘着性は、比較例5のポリウレタンエラストマーシートとほぼ同等の粘着性を示した。
Figure 2008062643
ポリシロキサンエラストマー
調製例6
下記の原料を用いて、ポリシロキサンエラストマー組成物のプレミックスを調製した。
A−4:両末端がジメチルビニルシロキシ単位で封鎖されたポリジメチルシロキサン(平均重合度200);
A−5:両末端がジメチルビニルシロキシ単位で封鎖されたポリジメチルシロキサン(平均重合度500);
B−3:両末端がジメチル水素シロキシ単位で封鎖されたポリジメチルシロキサン(平均重合度22);
B−4:両末端がトリメチルシロキシ単位で封鎖され、ジメチルシロキサン単位40モル%とメチル水素シロキサン単位60モルからなるポリメチル水素シロキサン(平均重合度42);
C−2:白金−テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン錯体(白金原子2.0%);
D−1:プレミックス1bに使用したもの。
すなわち、A−4 32部およびA−5 17.5部をニーダーに仕込み、これにB−3 9.8部およびB−4 0.2部を配合して、均一になるまで混和して、プレミックス6aを調製した。これを容器に取り出してニーダーをキシレンで充分に洗浄し、乾燥した後、A−4 32部およびA−5 18.5部をニーダーに仕込み、これにC−2 0.02部を配合し、投入量指数が2.89になる量のD−1を添加して、均一になるまで混和して、プレミックス6bを調製した。これをプレミックス6aとは別の容器に取り出した。
比較例6
プレミックス6aとプレミックス6bを等量とり、撹拌機で均一になるまで混合し、ついで真空ポンプにより脱泡して、ポリシロキサンエラストマー組成物を調製した。これを、比較例1と同様の金型に注型し、注型後の硬化条件を70℃、1時間とした以外は比較例1と同様にして、両面が平滑で均質な組成の、ポリシロキサンエラストマーシートを得た。
実施例26
実施例2と同様の剥離紙を用い、等量のプレミックス6aとプレミックス6bから、比較例6と同様にして、一方の面が平滑で、他方の面(粘着性調整面)が細かい凹凸を有する、均質で完全に硬化したポリシロキサンエラストマーシートを得た。
実施例27
プレミックス6aとプレミックス6bから比較例6と同様に調製した組成物を、実施例13と同様の、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体層を剥離層として有する金型に注型した以外は、比較例6と同様にして、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体の厚さ1μmの層が、一方の面(粘着性調整面)に部分的に形成されたポリシロキサンエラストマーシートを得た。
実施例28
実施例15と同様の、細かい凹凸を底面に有し、かつフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体層を剥離層として有する金型を用いた以外は比較例6と同様にして、一方の面が平滑で、他方の面(粘着性調整面)が細かい凹凸を有し、かつフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体の厚さ1μmの層が部分的に形成されたポリシロキサンエラストマーシートを得た。
実施例26〜28および比較例6のポリシロキサンエラストマーシートの、針入度および粘着性を測定した。その結果を表7に示す。ただし、実施例26〜28については、表3には、粘着性調整面の粘着性を示す。実施例26〜28のポリシロキサンエラストマーシートの粘着面の粘着性は、比較例6のポリシロキサンエラストマーシートとほぼ同等の粘着性を示した。
Figure 2008062643
スチレン系熱可塑性エラストマー
調製例7
下記の原料を用いて、スチレン系熱可塑性エラストマーを含む組成物を調製した。
A−6:ポリスチレン−ポリ(エチレン・ブタジエン)−ポリスチレンブロック共重合体;
E−1:パラフィン系プロセスオイル(40℃における粘度20mm2/s);
E−2:水素添加テルペン系樹脂(軟化点150±5℃);
D−1:プレミックス1bに使用したもの。
すなわち、A−6 32.5部、E−1 62.5部およびE−2 5部を均一になるまで混合し、ついで投入量指数が2.89になる量のD−1をさらに添加して、均一になるまで撹拌を続け、組成物を調製した。
比較例7
組成物を、二軸押出成形機により、200℃で連続的にシート状に押出して、表面が平滑なスチレン系熱可塑性エラストマーシートを得た。
実施例29
比較例7と同様にして得られた熱可塑性エラストマーシートの一方の面に、200℃に加熱したアルミニウム製押し型を押し当てて、実施例2と同様の凹凸面(粘着性調整面)を設けたスチレン系熱可塑性エラストマーシートを得た。
実施例30
比較例7と同様にして得られた熱可塑性エラストマーシートの一方の面に、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体を、メチルエチルケトンで5%溶液に希釈してスプレー塗布し、風乾後、メチルエチルケトンが揮散するまで100℃に加熱して、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体の厚さ1μmの層を形成させて、スチレン系熱可塑性エラストマーシートを得た。
実施例31
実施例29と同様にして設けた凹凸面に、実施例30と同様にしてフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体の厚さ1μmの層を形成させて、スチレン系熱可塑性エラストマーシートを得た。
実施例29〜31および比較例7のスチレン系熱可塑性エラストマーシートの、表面硬さおよび粘着性を測定した。その結果を表8に示す。ただし、実施例29〜31については、表6には、粘着性調整面の粘着性を示す。実施例29〜31のスチレン系熱可塑性エラストマーシートの粘着面の粘着性は、比較例7のスチレン系熱可塑性エラストマーシートとほぼ同等の粘着性を示した。
Figure 2008062643
以上を総合して、本発明によって、一方の面に(1)細かい凹凸を設け、および/または(2)剥離性の薄層を設けることによって、その面を粘着性調整面としたエラストマーシートは、いずれも、そのような処理を行わない比較例のエラストマーシートに比べて、表面硬さ(または針入度)の大きな変化は見られず、粘着性調整面の粘着性が低下していた。粘着性調整面における粘着性の低下は、上記方法(1)と(2)を併用した場合に特に顕著であった。蓄光性については、蓄光顔料の添加量を調整することで、残光時間の制御が可能となった。特に透明性については、蓄光顔料の平均粒子径を上げ、かつ細粒の含有率を下げることによって、60%以上の透過率を得ることが可能となった。また、実施例7と実施例8の比較から明らかなように、形状が球形の蓄光顔料を用いることによって透明性を上げることができた。
本発明の粘着性蓄光エラストマー成形体は、その夜光性、柔軟性、高い衝撃吸収性、および粘着面と任意に粘着性を調整した面とを有することから、取扱いが容易で、道路などの標識、緩衝材、防災製品、家庭や病院などに用いられる保護材などに、きわめて有用である。

Claims (6)

  1. 一体として形成され、蓄光顔料を含む柔軟性蓄光エラストマー成形体であって、粘着調整面にてASTM D1403に規定された1/4コーンを用いて測定した針入度が200以下で、粘着調整面にてJIS K 7312のタイプCデュロメータで測定した表面硬さが60以下であり、かつ粘着面と、JIS Z 0237で測定した粘着強さを粘着面の90%以下に調整された、下記(1)および/または(2)の粘着性調整面とを有する、粘着性蓄光エラストマー成形体
    (1)粘着性調整面が、表面に細かい凹凸が設けられ、平滑面との接触表面積が粘着面より小さい面である;
    (2)粘着性調整面が、表面の少なくとも一部分に、厚さ0.001〜150μmで、粘着面の90%以下の粘着強さを有する非粘着性ないし低粘着性の薄層が存在する面である(ただし、該薄層が非粘着性の場合、該薄層は、表面の一部分に存在する)。
  2. 蓄光顔料の体積平均粒子径(D50)が、2〜1,000μmである、請求項1記載の蓄光エラストマー成形体。
  3. 蓄光顔料の量が、光源面あたり投入量指数0.25〜60.0である、請求項1または2記載の蓄光エラストマー成形体。
  4. 蓄光顔料の体積平均粒子径(D50)が、30〜1,000μm、粒子径20μm以下の細粒の含有率が30体積%以下であって、蓄光顔料の量が、光源面あたり投入量指数0.25〜50.0である、請求項1〜3のいずれか一項記載の、光透過性を有する蓄光エラストマー成形体。
  5. 蓄光顔料の形状が球形である、請求項1〜4のいずれか一項記載の、光透過性を有する蓄光エラストマー成形体。
  6. エラストマーの主成分であるポリマーが、ポリウレタン、ポリアクリル系もしくはポリシロキサンであるか、またはポリスチレンブロックを有する熱可塑性エラストマーである、請求項1〜5のいずれか一項記載の蓄光エラストマー成形体。
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