以下に、図1から図7を参照して、電子機器の一例である携帯型記憶装置の実施形態について説明する。
図1から図3に示すように、携帯型記憶装置11は、筐体12、プリント回路板13、液晶表示装置14、ハードディスク装置15、手動入力装置16、および電池17を備えている。筐体12は、樹脂により扁平な箱型に形成されている。筐体12は、厚み方向に2分割された第1の半部12Aと、第2の半部12Bとを有している。図2に示すように、筐体12は、厚み方向において互いに向かい合う第1の壁部12Cと第2の壁部12Dとを有している。第1の壁部12Cは、液晶表示装置14を外部に露出させるための開口12Eを有している。筐体12は、例えば、幅寸法Wが60mm、奥行き寸法Lが110mm、および厚み寸法Tが16mmで形成されている。筐体12の肉厚は、例えば1mmである。
記憶機構の一例であるハードディスク装置15は、筐体12の内部で、第2の壁部12Dに寄った位置に収容されている。ハードディスク装置15は、金属製の扁平なハウジングと、ハウジング内に収容されるディスクと、磁気ヘッドを有するキャリッジと、を有している。ハードディスク装置15の厚み寸法Aは、例えば、5mmである。もっとも、記憶機構としては、ハードディスク装置15に限られるものではない。記憶機構は、データ不揮発性のICメモリであるフラッシュメモリ等であってもよい。
電池17は、携帯型記憶装置11の電源として機能する。電池17の厚み寸法Bは、例えば、9mmである。
液晶表示装置14は、後述するアンテナ素子24による無線通信に悪影響を及ぼす部品の一例である。液晶表示装置14は、筐体12の内部で、第1の壁部12Cに寄った位置に収容される。液晶表示装置14は、第1の壁部12Cの開口12Eに臨んでいる。液晶表示装置14は、図示省略したが、例えば、ガラス基板、偏向板、液晶層、カラーフィルタ、バックライト、および透明電極などを有している。透明電極は、例えば、インジウムスズ酸化物(ITO:Indium-tin-oxide)で形成される。透明電極は、複数の配線が縦方向に延びている第1の部分と、複数の配線が横方向に延びている第2の部分とを有している。このため、透明電極は、全体として格子形状をなしており、電波吸収性を有する。液晶表示装置14は、後述するプリント配線板22の第1の面22Aに近接している。液晶表示装置14の厚み寸法Cは、例えば、3mmである。このため、前記ハードディスク装置15の厚み寸法Aは、液晶表示装置14の厚み寸法Cよりも大きくなっている。
手動入力装置16は、後述するアンテナ素子24による無線通信に悪影響を及ぼす部品の一例である。手動入力装置16は、記憶機構であるハードディスク装置15を操作するために用いられる。手動入力装置16は、例えば、複数の入力用ボタン21を有している。ユーザが入力用ボタン21を操作すると、ハードディスク装置15に対して、データの記録およびデータの読み出しなどを指示できる。手動入力装置16の周囲に位置する筐体12の一部は、ユーザが使用する際に把持する部分になる。手動入力装置16は、プリント配線板22の後述する第1の面22Aに近接している。手動入力装置16の厚み寸法Dは、例えば、4mmである。
図4に示すように、プリント回路板13は、筐体12の内部で、液晶表示装置14と記憶機構であるハードディスク装置15との間の位置に収容されている。プリント回路板13は、プリント配線板22と、プリント配線板22に実装された主要な回路部品23と、プリント配線板22に実装されたアンテナ素子24と、イヤホン用のプラグが差し込まれるジャック25と、を備えている。
図5に示すように、プリント配線板22は、方形の板状に形成されている。プリント配線板22は、液晶表示装置14、手動入力装置16、および主要な回路部品23に近接する第1の面22Aと、第1の面22Aとは反対側の第2の面22Bとを有している。プリント配線板22の第2の面22Bは、液晶表示装置14に対応する第1の領域26Aと、液晶表示装置14から外れている第2の領域26Bと、を有している。また、プリント配線板22の第2の面22Bは、手動入力装置16に対応する第1の領域27Aと、手動入力装置16から外れている第2の領域27Bと、を有している。さらに、プリント配線板22の第2の面22Bは、主要な回路部品23に対応する第1の領域28Aと、主要な回路部品23から外れている第2の領域28Bと、を有している。プリント配線板22は、第1の角部22Cと、第1の角部22Cと離れている第2の角部22Dとを有している。
プリント配線板22の厚み寸法Eは、例えば0.8mmである。プリント配線板22は、さらに、上記電池17を通すための開口部22Eを有している。この携帯型記憶装置11では、開口部22Eに電池17が通されて薄型化が図られている。開口部22Eに通された電池17は、プリント配線板22を、主要な回路部品23が実装される部分と、アンテナ素子24が実装される部分とに分断する。これにより、主要な回路部品23からアンテナ素子24が隔離され、主要な回路部品23から生ずる不必要な電磁波の輻射からアンテナ素子24を守ることができる。
プリント配線板22は、さらに、アンテナ素子24に接続される第1のグランド層31と、主要な回路部品23が実装される部分に対応する第2のグランド層32とを備えている。この第1のグランド層31は、第2のグランド層32から独立している。第1のグランド層31と、第2のグランド層32とは、いずれも銅薄膜により構成されている。第1のグランド層31は、アンテナ素子24から発信された電波の一部を外部に輻射しており、アンテナ素子24の無線通信の性能を向上させている。
ジャック25は、アンテナ素子24による無線通信に悪影響を及ぼす部品の一例である。ジャック25は、プリント配線板22の第2の面22Bの前記第1の角部22Cに実装されている。ジャック25は、例えば円筒形状に形成されている。ジャック25は、金属部品を含んでおり、電波吸収性を有する。筐体12は、ジャック25の近傍に貫通孔33を有しており、ジャック25を外部に露出させている。
主要な回路部品23は、アンテナ素子24による無線通信に悪影響を及ぼす部品の一例である。図4に示すように、主要な回路部品23は、例えば、CPU34と、ROM(Read Only Memory)35と、RAM(Random Access Memory)36と、アンテナ素子24の無線通信を駆動するための無線モジュール37と、その他の回路部品38などを含んでいる。本実施形態では、無線モジュール37は、ワイヤレスランチップ(W−LANチップ)で構成される。CPU34、ROM35、RAM36、無線モジュール37、およびその他の回路部品38は、図示しない複数の配線によって互いに電気的に接続されている。CPU34、ROM35、RAM36、無線モジュール37、その他の回路部品38は、携帯型記憶装置11の電源がオンとなった状態において、互いに膨大な量の制御データ、タイミングをとるためのクロック信号、およびRAM36のアドレスなどをやり取りする。このため、主要な回路部品23から電磁波が発生し、この電磁波は、アンテナ素子24の無線通信に悪影響を及ぼす可能性がある。
アンテナ素子24は、無線通信用の電波を送受信するチップ部品である。アンテナ素子24は、プリント配線板22の第2の面22Bの前記第2の角部22Dに実装されている。また、アンテナ素子24は、第2の面22Bの第2の領域26B、27B、28Bに相当する位置に実装されている。このため、アンテナ素子24は、液晶表示装置14、手動入力装置16、および主要な回路部品23から外れた位置に配置されており、これらによる悪影響から逃れている。
また、アンテナ素子24は、ハードディスク装置15や、電池17からも外れた位置に配置している。このため、アンテナ素子24で送受信される電波が、ハードディスク装置15や、電池17によって吸収されることがない。アンテナ素子24により、ホットスポットと呼ばれるアクセスポイントの近くでインターネットに接続したり、携帯型記憶装置11同士で、例えば、映像データや音楽データなどを交換したりすることができる。
また、プリント配線板22には、電気回路41が実装されている。図6に示すように、この電気回路41は、上記アンテナ素子24と、上記無線モジュール37と、アンテナ素子24と無線モジュール37とを接続するための信号線42と、アンテナ素子24の近傍で信号線42の途中に設けられる第1のマッチング回路43と、無線モジュール37の近傍で信号線42の途中に設けられる第2のマッチング回路44と、を有している。信号線42は、アンテナ素子24との間で信号をやりとりして、その信号を無線モジュール37に伝達することができる。
信号線42は、アンテナ素子24による無線通信に悪影響を及ぼす部品の一例である。信号線42は、同軸ケーブル45を含んでいる。同軸ケーブル45は、第1のマッチング回路43と、第2のマッチング回路44とを接続している。同軸ケーブル45は、金属部品を含んでおり、アンテナ素子24によって送受信される電波を吸収する性質を有する。同軸ケーブル45は、その一端において、コネクタ46を介して第1のマッチング回路43に接続されている。また、同軸ケーブル45は、その他端において、コネクタ47を介して第2のマッチング回路44に接続されている。同軸ケーブル45は、プリント配線板22の第1の面22Aに実装されており、第1の面22Aに近接している。同軸ケーブル45は、無線モジュール37とアンテナ素子24との間で、周囲に電磁波が漏洩することを防止する。
第1のマッチング回路43および第2のマッチング回路44は、電気回路41全体のインピーダンスを例えば50Ωに整合する。本実施形態では、マッチング回路が2箇所に設けられているため、電気回路41全体のインピーダンスの整合がより厳密になされる。上記したアンテナ素子24は、信号線42が設けられる第1の面22Aとは反対側の第2の面22Bに配置されており、信号線42による悪影響から逃れている。
携帯型記憶装置11から電波を発信する際には、無線モジュール37は、アンテナ素子24に向けて信号を送信する。この信号は、第2のマッチング回路44、コネクタ47、同軸ケーブル45、コネクタ46、および第1のマッチング回路43を経由して、アンテナ素子24に伝達される。そして、この信号は、アンテナ素子24およびこれに連なる第1のグランド層31において、電波として外部に輻射される。
一方、携帯型記憶装置11が外部から電波を受信する際には、アンテナ素子24で受信した信号は、第1のマッチング回路43、コネクタ46、同軸ケーブル45、コネクタ46、および第2のマッチング回路44を経由して、無線モジュール37に伝達される。これにより、携帯型記憶装置11は、外部から音楽データや画像データを受信することができる。その際、電気回路41のインピーダンスが厳密に整合されているため、受信した信号がロスなく無線モジュール37に伝達される。
続いて、図2と図7を参照して、この携帯型記憶装置11の使用状態について説明する。この携帯型記憶装置11を机の天板51上に置いて使用する際には、通常ユーザは、図2に示すように、液晶表示装置14を上側にして天板51上に置いて使用する。そして、液晶表示装置14に表示される画面を見ながら、手動入力装置16を操作する。
本実施形態では、ハードディスク装置15の厚み寸法Aは、液晶表示装置14の厚み寸法Cよりも大きいため、プリント配線板22は、筐体12の厚み寸法Tにおける中間部よりも上側に配置している。このため、プリント配線板22に実装されたアンテナ素子24と天板51との間には、所定長の隙間Sが確保される。これにより、アンテナ素子24を天板51から離れた位置に配置して、無線通信を安定化することができる。
図7に示すように、ユーザが携帯型記憶装置11を手で持った状態で、これを使用する場合には、携帯型記憶装置11は、手動入力装置16の付近の筐体12の一部が手によって把持される。アンテナ素子24は、プリント配線板22の第2の面22Bで、手動入力装置16から外れている第2の領域27Bに配置されている。このため、ユーザの手によって、アンテナ素子24の無線通信が妨げられることが回避されている。
なお、本実施形態では、図5に示すように、ジャック25は、第2の角部22Dに隣接する第1の角部22Cに設けられているが、これに限定されるものではない。ジャック25は、第2の角部22Dとは対角の位置にある角部22Fに実装してもよい。
以上が、携帯型記憶装置11の実施形態である。本実施形態によれば、アンテナ素子24は、無線通信に悪影響を及ぼす部品に近接している第1の面22Aとは反対側の第2の面22Bに実装されている。このため、この部品の影響を低減して、アンテナ素子24による無線通信を安定的に行うことができる。
この場合、上記部品は、アンテナ素子24との間で信号をやりとりする信号線42、つまり同軸ケーブル45である。このため、同軸ケーブル45とアンテナ素子24とをプリント配線板22の同じ面に実装すると、信号線42自体や同軸ケーブル45の金属部品によってアンテナ素子24が送受信する電波が吸収されることになるが、この構成によれば、アンテナ素子24の送受信する電波がこれらによって吸収されてしまうことを防止できる。
プリント配線板22の第2の面22Bは、アンテナ素子24に接続される第1のグランド層31を有し、この第1のグランド層31は、アンテナ素子24による無線通信の性能を向上させる。この構成によれば、アンテナ素子24により送信される電波の輻射性能の向上を図り、無線通信の特性を良好にできる。また、第1のグランド層31は、信号線42に近接している第1の面22Aとは反対側の第2の面22Bに設けられるため、この信号線42によって第1のグランド層31の効果が妨げられることを防止できる。さらに、第1のグランド層31は、同軸ケーブル45の裏側の位置に設けられるため、プリント配線板22上に別途に設置スペースを設ける必要がなく、プリント配線板22上のレイアウトを効率的に行うことができる。
プリント配線板22の第2の面22Bは、上記部品に対応する第1の領域26A、27A、28Aと、上記部品から外れている第2の領域26B、27B、28Bとを有し、アンテナ素子24は、第2の領域26B、27B、28Bに実装される。この構成によれば、無線通信に悪影響を及ぼす部品から離れた位置にアンテナ素子24を実装することができる。
この場合、上記部品は、液晶表示装置14であり、この液晶表示装置14は、格子形状をなした電極を有している。この構成によれば、アンテナ素子24を、液晶表示装置14から外れている第2の領域26Bに配置できる。このため、液晶表示装置14の電波吸収性によってアンテナ素子24の無線通信が妨げられることを防いで、無線通信を安定化できる。
この場合、上記部品は、記憶機構であるハードディスク装置15を操作するための手動入力装置16である。よって、アンテナ素子24は、手動入力装置16から外れている第2の領域27Bに配置される。ユーザは、手動入力装置16周りの筐体12の一部を把持して携帯型記憶装置11を使用する。一般に、人体は、電波吸収性を有することが知られている。上記構成によれば、アンテナ素子24をユーザが把持する領域から外れた位置に配置することができる。これにより、ユーザの手が、アンテナ素子24の無線通信に対して悪影響を及ぼす事態を防止できる。
この場合、上記部品は、プリント配線板22の第1の面22Aに実装された主要な回路部品23である。よって、アンテナ素子24は、主要な回路部品23から外れている第2の領域28Bに配置される。この構成によれば、主要な回路部品23から発信される電磁波の影響によって、無線通信が乱されることを回避して、アンテナ素子24による無線通信を安定化できる。
ジャック25は、プリント配線板22の第1の角部22Cに実装されるとともに、アンテナ素子24は、プリント配線板22の第2の角部22Dに実装される。この構成によれば、アンテナ素子24の周囲には、自由空間が確保されるため、アンテナ素子24による無線の通信特性を良好にできる。また、電波吸収性のある金属製のジャック25をアンテナ素子24から極力遠い位置に配置することができる。これにより、ジャック25が、アンテナ素子24の無線通信に悪影響を及ぼす事態を回避できる。
液晶表示装置14は、筐体12内の第1の壁部12Cに寄った位置に収容され、ハードディスク装置15は、筐体12内の第2の壁部12Dに寄った位置に収容されるとともに、プリント配線板22は、筐体12内の液晶表示装置14とハードディスク装置15との間の位置に収容される。また、ハードディスク装置15の厚み寸法は、液晶表示装置14の厚み寸法よりも大きい。これらの構成によれば、液晶表示装置14を上側に、ハードディスク装置15を下側にして、携帯型記憶装置11を机の天板51に載置して使用する際に、アンテナ素子24を天板51から離れた位置に配置することができる。これにより、机の天板51による電波吸収の影響を排除して、アンテナ素子24による無線通信を安定化できる。
電気回路41は、アンテナ素子24の近傍で信号線42の途中に設けられる第1のマッチング回路43と、無線モジュール37の近傍で信号線42の途中に設けられる第2のマッチング回路44と、を具備している。この構成によれば、アンテナ素子24の近傍と、無線モジュール37の近傍との2箇所に第1および第2のマッチング回路43、44が設けられるため、電気回路41のインピーダンスの整合を厳密かつ容易に行うことができる。これにより、信号線42を通る信号の電損ロスを低減することができる。また、信号線42は、これらを接続する同軸ケーブル45を含み、同軸ケーブル45は、第1のマッチング回路43と第2のマッチング回路44とを接続する。この構成によれば、第1のマッチング回路43と第2のマッチング回路44との間で、外部に電磁波が漏れ出してしまうことを防止できる。これにより、アンテナ素子24による無線通信性能を向上できる。
本発明の電子機器および電気回路は、携帯型記憶装置用に限らず、例えば携帯電話機やポータブルコンピュータのようなその他の電子機器に対しても実施可能である。その他、電子機器および電気回路は、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できることは勿論である。
A…厚み寸法、C…厚み寸法、11…携帯型記憶装置、12…筐体、12C…第1の壁部、12D…第2の壁部、12E…開口、14…液晶表示装置、15…ハードディスク装置、16…手動入力装置、17…電池、22…プリント配線板、22A…第1の面、22B…第2の面、22C…第1の角部、22D…第2の角部、23…主要な回路部品、24…アンテナ素子、25…ジャック、26A、27A、28A…第1の領域、26B、27B、28B…第2の領域、31…第1のグランド層、37…無線モジュール、41…電気回路、42…信号線、43…第1のマッチング回路、44…第2のマッチング回路、45…同軸ケーブル