JP2008059069A - 冷凍装置の制御方法及び制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】冷凍装置の制御対象機器の制御において、PI制御の不感帯内に入った場合においても、簡単かつ高精度な制御を実現する。
【解決手段】冷凍装置の運転制御を行う際に必要な所定の運転状態量とこの制御目標値との偏差を演算し、この偏差に基づいて、運転状態量を制御目標値に近づけるために制御される制御対象機器の動作量をPI演算により演算し、PI演算により演算された動作量が制御対象機器を動作させるために必要な必要動作量に達しない場合には、制御対象機器の動作を実行せずに、必要動作量に達しない動作量を蓄積し、蓄積した動作量が所定量に達した場合には、PI演算により演算された動作量が必要動作量に達していなくても、制御対象機器の動作を実行する。
【選択図】図3
【解決手段】冷凍装置の運転制御を行う際に必要な所定の運転状態量とこの制御目標値との偏差を演算し、この偏差に基づいて、運転状態量を制御目標値に近づけるために制御される制御対象機器の動作量をPI演算により演算し、PI演算により演算された動作量が制御対象機器を動作させるために必要な必要動作量に達しない場合には、制御対象機器の動作を実行せずに、必要動作量に達しない動作量を蓄積し、蓄積した動作量が所定量に達した場合には、PI演算により演算された動作量が必要動作量に達していなくても、制御対象機器の動作を実行する。
【選択図】図3
Description
本発明は、冷凍装置の制御方法及び制御装置、特に、冷凍装置の制御対象機器の不感帯内における制御方法及び制御装置に関する。
従来より、冷凍装置の膨張弁の制御を行う場合においては、比例動作(以下、P動作とする)と積分動作(以下、I動作とする)とを組み合わせたPI制御や、P動作及びI動作にさらに微分動作(以下、D動作とする)を組み合わせたPID制御を使用するのが一般的である(以下においては、D動作を含むPID制御及びD動作を含まないPI制御のいずれについてもPI制御と総称するものとする)。このようなPI制御では、膨張弁の制御に使用される運転状態量とこの制御目標値との偏差に基づいて、PI演算によって膨張弁の動作量を演算し、演算された動作量に応じて膨張弁を動作させるものである。しかし、PI演算によって演算される膨張弁の動作量が小さい場合には、PI制御の不感帯内に入るため、膨張弁を最適な制御状態にすることができなくなる。
これに対して、PI制御の定数を変更して膨張弁が敏感に動作させる手法を採用することが考えられる。また、特許文献1、2に開示されているように、流量調節弁等におけるPI制御の不感帯内に入った場合に、PI演算によって演算される動作量に一定の補正量を重畳したり、弁開度の現在値に一定の補正量を重畳することで、膨張弁を動作させる手法を採用することも考えられる。
特開2001−75651号公報
特開平11−345002号公報
しかし、膨張弁が敏感に動作するようにPI制御の定数を変更する手法を採用した場合には、PI制御の定数を適切な値に設定することができない場合には、制御が不安定になるおそれがある。しかも、PI制御の定数として適切な値を実験等によって求めようとした場合には、仮に、この値を求めることができたとしても、そのために多大な開発時間が必要となる。
また、PI演算によって演算される動作量に一定の補正量を重畳したり、弁開度の現在値に一定の補正量を重畳する手法を採用した場合には、PI演算により演算された動作量が小さい場合であるにもかかわらず、とりあえず膨張弁を動作させることになるため、膨張弁が敏感に動作する傾向が強く、制御が不安定になるおそれがある。
このように、冷凍装置の運転制御を行う際に動作する膨張弁のような制御対象機器の制御においては、PI制御の不感帯内に入った場合に、制御対象機器を最適な制御状態にすることが困難であり、また、特許文献1、2に開示された手法を用いた場合にも、制御が不安定になるおそれや、多大な開発時間が必要となるという問題がある。
本発明の課題は、冷凍装置の制御対象機器の制御において、PI制御の不感帯内に入った場合においても、簡単かつ高精度な制御を実現することにある。
第1の発明にかかる冷凍装置の制御方法は、冷凍装置の運転制御を行う際に必要な所定の運転状態量とこの制御目標値との偏差を演算し、この偏差に基づいて、運転状態量を制御目標値に近づけるために制御される制御対象機器の動作量をPI演算により演算し、PI演算により演算された動作量が制御対象機器を動作させるために必要な必要動作量に達しない場合には、制御対象機器の動作を実行せずに、必要動作量に達しない動作量を蓄積し、蓄積した動作量が所定量に達した場合には、PI演算により演算された動作量が必要動作量に達していなくても、制御対象機器の動作を実行するものである。
この冷凍装置の制御方法では、PI演算により演算された動作量が必要動作量に達しない場合、すなわち、PI制御の不感帯内に入った場合には、制御対象機器の動作を実行せずに、必要動作量に達しない動作量を蓄積し、蓄積した動作量が所定量に達した場合に、PI演算により演算された動作量が必要動作量に達していなくても、すなわち、PI制御の不感帯内に入っている場合であっても、制御対象機器の動作を実行するようにしているため、制御対象機器を簡単に最適な制御状態にすることができ、高精度な制御を実現することができる。
しかも、制御対象機器が敏感に動作するようにPI制御の定数を変更する従来の手法を採用する場合においては、PI制御の定数を適切な値に設定することができない場合には、ハンチングの発生等によって、制御が不安定になるおそれがあるが、本発明にかかる制御方法では、制御対象機器が敏感に動作するようにPI制御の定数を変更する必要がなく、PI制御の定数として適切な値を求めるための開発時間を短縮することができる。
また、PI演算によって演算される動作量等に一定の補正量を重畳する従来の手法を採用する場合においては、PI演算により演算された動作量が必要動作量に達しないにもかかわらず、とりあえず制御対象機器を動作させることになるため、制御対象機器が敏感に動作する傾向が強く現れやすく、制御が不安定になるおそれがあるが、本発明にかかる制御方法では、PI演算により演算された動作量を所定量に達するまで蓄積した後に制御対象機器を動作させるようにしているため、制御対象機器が敏感に動作する傾向が現れにくく、制御が不安定になるおそれが少なくできる。
第2の発明にかかる冷凍装置の制御方法は、第1の発明にかかる冷凍装置の制御方法において、制御対象機器の動作を実行した際に、蓄積した動作量をリセットするものである。
蓄積した動作量が所定量に達して制御対象機器の動作が実行された直後において、蓄積した動作量がリセットされないと、PI演算により演算された動作量が必要動作量に達しない場合であっても、制御対象機器の動作を実行した際における蓄積した動作量に、必要動作量に達しない動作量がさらに蓄積されてすぐに所定量に達することになるため、制御対象機器が不必要に動作されるという現象が生じてしまう。
そこで、この冷凍装置の制御方法では、制御対象機器の動作を実行した際に、蓄積した動作量をリセットすることで、上述のような現象が生じないようにして、制御対象機器の動作が適切に行われるようにしている。
第3の発明にかかる冷凍装置の制御方法は、第1又は第2の発明にかかる冷凍装置の制御方法において、必要動作量に達しない動作量は、正負の符号を含んだ値をそのまま加算することによって蓄積される。
運転状態量が制御目標値に非常に近い場合等のように、PI演算により演算された動作量が、必要動作量に達しない場合で、かつ、正値になったり負値になったりするような運転条件においては、制御対象機器を現在の制御状態から極力変更しないように動作させるほうがよい場合が多い。
そこで、この冷凍装置の制御方法では、必要動作量に達しない動作量を、正負の符号を含んだ値のままで加算して蓄積することで、PI演算により演算された動作量が、必要動作量に達しない場合で、かつ、正値になったり負値になったりするような運転条件においては、蓄積された動作量が所定量に達しにくくして、これにより、制御対象機器を現在の制御状態から極力変更しないように動作させるようにして、制御対象機器の動作が適切に行われるようにしている。
第4の発明にかかる冷凍装置の制御装置は、冷凍装置の運転制御を行う際に必要な所定の運転状態量とこの制御目標値との偏差を演算し、この偏差に基づいて、運転状態量を制御目標値に近づけるために制御される制御対象機器の動作量をPI演算により演算し、PI演算により演算された動作量が制御対象機器を動作させるために必要な必要動作量に達しない場合には、制御対象機器の動作を実行せずに、必要動作量に達しない動作量を蓄積し、蓄積した動作量が所定量に達した場合には、PI演算により演算された動作量が必要動作量に達していなくても、制御対象機器の動作を実行するものである。
この冷凍装置の制御装置では、PI演算により演算された動作量が必要動作量に達しない場合、すなわち、PI制御の不感帯内に入った場合には、制御対象機器の動作を実行せずに、必要動作量に達しない動作量を蓄積し、蓄積した動作量が所定量に達した場合に、PI演算により演算された動作量が必要動作量に達していなくても、すなわち、PI制御の不感帯内に入っている場合であっても、制御対象機器の動作を実行するようにしているため、制御対象機器を簡単に最適な制御状態にすることができ、高精度な制御を実現することができる。
しかも、制御対象機器が敏感に動作するようにPI制御の定数を変更する従来の手法を採用する場合においては、PI制御の定数を適切な値に設定することができない場合には、ハンチングの発生等によって、制御が不安定になるおそれがあるが、本発明にかかる制御装置では、制御対象機器が敏感に動作するようにPI制御の定数を変更する必要がなく、PI制御の定数として適切な値を求めるための開発時間を短縮することができる。
また、PI演算によって演算される動作量等に一定の補正量を重畳する従来の手法を採用する場合においては、PI演算により演算された動作量が必要動作量に達しないにもかかわらず、とりあえず制御対象機器を動作させることになるため、制御対象機器が敏感に動作する傾向が強く現れやすく、制御が不安定になるおそれがあるが、本発明にかかる制御装置では、PI演算により演算された動作量を所定量に達するまで蓄積した後に制御対象機器を動作させるようにしているため、制御対象機器が敏感に動作する傾向が現れにくく、制御が不安定になるおそれが少なくできる。
以上の説明に述べたように、本発明によれば、以下の効果が得られる。
第1及び第4の発明では、制御対象機器を簡単に最適な制御状態にすることができ、高精度な制御を実現することができる。
第2及び第3の発明では、制御対象機器の動作が適切に行わせることができる。
以下、図面に基づいて、本発明にかかる冷凍装置の制御方法及び制御装置の実施形態について説明する。
(1)空気調和装置の構成
図1は、本発明にかかる冷凍装置の制御方法及び制御装置が採用された冷凍装置の一実施形態としての空気調和装置1の概略構成図である。空気調和装置1は、蒸気圧縮式の冷凍サイクル運転を行うことによって、室内の冷房等を行う装置である。
図1は、本発明にかかる冷凍装置の制御方法及び制御装置が採用された冷凍装置の一実施形態としての空気調和装置1の概略構成図である。空気調和装置1は、蒸気圧縮式の冷凍サイクル運転を行うことによって、室内の冷房等を行う装置である。
空気調和装置1は、いわゆるセパレートタイプの空気調和装置であり、主として、室外ユニット2と、室内ユニット4と、室外ユニット2と室内ユニット4とを接続する冷媒連絡管6、7とを備えており、蒸気圧縮式の冷媒回路10を構成している。
<室外ユニット>
室外ユニット2は、室外に設置されており、冷媒回路10の一部を構成する室外側冷媒回路10aを備えている。この室外側冷媒回路10aは、主として、室外熱交換器21を有している。
室外ユニット2は、室外に設置されており、冷媒回路10の一部を構成する室外側冷媒回路10aを備えている。この室外側冷媒回路10aは、主として、室外熱交換器21を有している。
室外熱交換器21は、例えば、伝熱管と多数のフィンとにより構成されたクロスフィン式のフィン・アンド・チューブ型熱交換器からなり、室外空気を熱源として、高圧冷媒の冷却器として機能する熱交換器である。室外熱交換器21の出口は、冷媒連絡管6を介して室内ユニット4(より具体的には、後述の膨張機構41)に接続されており、室外熱交換器21の入口は、冷媒連絡管7を介して室内ユニット4(より具体的には、後述の圧縮機43の吐出側)に接続されている。また、室外ユニット2は、本実施形態において、ユニット内に室外空気を吸入して、室外熱交換器21において冷媒と熱交換させた後に、ユニット外に排出するための室外ファン22を備えている。この室外ファン22は、例えば、プロペラファン等からなる送風機であり、室外ファン用モータ23によって駆動されるように構成されている。
また、室外ユニット2は、室外ユニット2を構成する室外ファン22等の各部の動作を制御する室外側制御部36を備えている。そして、室外側制御部36は、室外ユニット2の制御を行うために設けられたマイクロコンピュータ、メモリ等を有しており、室内ユニット4の室内側制御部56(後述)との間で制御信号等のやりとりを行うことができるようになっている。
<室内ユニット>
室内ユニット4は、室内に設置されており、冷媒回路10の一部を構成する室内側冷媒回路10bを備えている。この室内側冷媒回路10bは、主として、膨張機構41と、室内熱交換器42と、圧縮機43とを有している。
室内ユニット4は、室内に設置されており、冷媒回路10の一部を構成する室内側冷媒回路10bを備えている。この室内側冷媒回路10bは、主として、膨張機構41と、室内熱交換器42と、圧縮機43とを有している。
膨張機構41は、主として、室外ユニット2の室外熱交換器21において冷却された冷媒の減圧を行うために、冷媒連絡管6を介して室外熱交換器21の出口に接続された電動膨張弁である。
室内熱交換器42は、例えば、伝熱管と多数のフィンとにより構成されたクロスフィン式のフィン・アンド・チューブ型熱交換器からなり、低圧冷媒の蒸発器として機能して室内空気を冷却する熱交換器である。室内熱交換器42の入口は、膨張機構41に接続されており、室内熱交換器42の出口は、圧縮機43の吸入側に接続されている。また、室内ユニット4は、本実施形態において、ユニット内に室内空気を吸入して、室内熱交換器42において冷媒と熱交換させた後に、供給空気として室内に供給するための室内ファン45を備えている。この室内ファン45は、例えば、ターボファンや多翼ファン等からなる送風機であり、室内ファン用モータ46によって駆動されるように構成されている。
圧縮機43は、低圧冷媒を吸入し、圧縮して高圧冷媒として吐出する機能を有する容積式圧縮機であり、圧縮機用モータ44によって駆動されるように構成されている。本実施形態において、圧縮機43は密閉型圧縮機であり、圧縮機用モータ44は圧縮機43のケーシング内に内蔵されている。圧縮機43の吸入側は、室内熱交換器42の出口に接続されており、圧縮機43の吐出側は、冷媒連絡管7を介して室外ユニット2の室外熱交換器21の入口に接続されている。
また、室内ユニット4には、各種のセンサが設けられている。具体的には、室内ユニット4には、圧縮機43に吸入される低圧冷媒の圧力を検知する吸入圧力センサ47と、圧縮機43に吸入される低圧冷媒の温度を検知する吸入温度センサ48とが設けられている。また、室内ユニット4は、室内ユニット4を構成する圧縮機43や室内ファン45等の各部の動作を制御する室内側制御部56を備えている。この室内側制御部56は、室内ユニット4の制御を行うために設けられたマイクロコンピュータやメモリ等を有しており、室外ユニット2の室外側制御部36との間で制御信号等のやりとりを行うことができるようになっている。
以上のように、この空気調和装置1では、室外側冷媒回路10aと、室内側冷媒回路10bと、冷媒連絡管6、7とが接続されて、蒸気圧縮式の冷媒回路10が構成されている。また、室内側制御部56と室外側制御部36とによって、空気調和装置1の制御装置8が構成されている。この制御装置8には、図2に示されるように、各種センサ(本実施形態においては、吸入圧力センサ47や吸入温度センサ48)が検知した運転状態量(圧力値や温度値等)に対応する信号を取り込むことができるようになっている。これらの信号は、制御装置8において、空気調和装置1の運転制御を行うために使用される。ここで、図2は、空気調和装置1の制御装置8の制御ブロック図(室内側制御部56及び室外側制御部36については、制御装置8としてまとめて図示)である。
(2)空気調和装置の動作
<空気調和装置の全体動作>
次に、空気調和装置1の全体動作について、図1を用いて説明する。
<空気調和装置の全体動作>
次に、空気調和装置1の全体動作について、図1を用いて説明する。
圧縮機43、室内ファン45及び室外ファン22を起動すると、低圧冷媒は、室内ユニット4において、圧縮機43に吸入されて圧縮されて高圧冷媒となる。その後、高圧冷媒は、冷媒連絡管7を経由して室外ユニット2に送られ、室外熱交換器21において、室外ファン22によって供給される室外空気と熱交換を行って冷却される。
そして、室外熱交換器21において冷却された高圧冷媒は、冷媒連絡管6を経由して室内ユニット4に送られる。この室内ユニット4に送られた高圧冷媒は、膨張機構41によって減圧されて低圧の気液二相状態の冷媒となって室内熱交換器42に送られ、室内熱交換器42において、室内ファン45によって供給される室内空気と熱交換を行って加熱されることによって蒸発して低圧冷媒となる。この室内熱交換器42において加熱された低圧冷媒は、再び、圧縮機43に吸入される。
<膨張機構の動作>
次に、上述の空気調和装置1の動作中における膨張機構41の動作について、図1〜図3を用いて説明する。図3は、本発明の冷凍装置の制御方法及び制御装置の実施形態にかかる制御対象機器としての膨張機構41の制御を示すフローチャートである。
次に、上述の空気調和装置1の動作中における膨張機構41の動作について、図1〜図3を用いて説明する。図3は、本発明の冷凍装置の制御方法及び制御装置の実施形態にかかる制御対象機器としての膨張機構41の制御を示すフローチャートである。
本実施形態の空気調和装置1において、制御対象機器としての膨張機構41は、室内熱交換器42の出口における冷媒の過熱度PVが一定になるように開度調節されている。この膨張機構41の制御は、主として、室内熱交換器42内を流れる冷媒の流量を調節するために必要な制御であり、このため、室内熱交換器42の出口における冷媒の過熱度PVは、空気調和装置1の運転制御を行う際に必要な運転状態量として位置づけられ、この過熱度PVと制御目標値としての目標過熱度SVとの偏差Eがゼロに近づくように、膨張機構41の開度調節が行われる。
ここで、本実施形態においては、過熱度PVと制御目標値SVとの偏差Eをゼロに近づける手法として、膨張機構41のPI制御が使用されており、この膨張機構41のPI制御を制御装置8が実行するようになっている。
まず、ステップS1において、制御装置8が過熱度演算手段として機能することで、過熱度PVを求め、続いて、制御装置8が偏差演算手段として機能することで、この過熱度PVと目標過熱度SVとの偏差Eを演算する。ここで、過熱度PVは、空気調和装置1に設けられた各種センサによって検知される冷媒回路10内を流れる冷媒や構成機器の運転状態量に基づいて求めることが可能であるが、本実施形態においては、センサとして吸入圧力センサ47及び吸入温度センサ48が設けられていることから、吸入圧力センサ47によって検知される低圧冷媒の圧力を制御装置8に設定された換算式等を用いて飽和温度に換算することで求められる温度を、室内熱交換器42内を流れる冷媒の蒸発温度Teとし、吸入温度センサ48によって検知される低圧冷媒の温度を、室内熱交換器42の出口温度Toとして、出口温度Toから蒸発温度Teを減算することによって求められる。そして、偏差Eは、この過熱度PV及び目標過熱度SVを用いて、過熱度PVから目標過熱度SVを減算することによって求められる。ここで、目標過熱度SVは、制御装置8に設定されている。
尚、本実施形態においては、センサとして吸入圧力センサ47及び吸入温度センサ48が設けられていることから、吸入圧力センサ47によって検知される低圧冷媒の圧力を制御装置8に設定された換算式等を用いて飽和温度に換算することで求められる温度(蒸発温度Te)を、吸入温度センサ48によって検知される低圧冷媒の温度(出口温度To)から差し引くことによって過熱度PVを求めるようにしているが、これに限定されず、例えば、室内熱交換器42の入口温度を検知する温度センサや室内熱交換器42内を流れる冷媒の温度を検知する温度センサを設ける場合には、これらの温度センサによって検知される冷媒の温度を蒸発温度Teとして、室内熱交換器42の出口温度Toから差し引くことによって過熱度PVを求めるようにしてもよい。
次に、ステップS2において、制御装置8がPI演算手段として機能することで、偏差Eに基づいて、過熱度PVを目標過熱度SVに近づけるために制御される膨張機構41の動作量Uを演算する。尚、PI演算の方法については、一般によく知られているものであるため、ここでは、説明を省略する。また、PI演算においては、PI制御の定数が制御装置8に設定されているが、これらのPI制御の定数は、本実施形態において、主に、後述のPI制御の不感帯内に入っていない制御状態に対して適合する値に設定されている。
次に、ステップS3において、制御装置8がPI動作量判定手段として機能することで、PI演算により演算された動作量Uが膨張機構41を動作させるために必要な必要動作量Up、Unに達しているかどうか、すなわち、PI制御の不感帯内に入っていないかどうかを判定する。より具体的には、動作量Uが正値である場合には、必要動作量Up以上であるかどうかを判定し、動作量Uが負値である場合には、必要動作量Un以下であるかどうかを判定し、これらの条件を満たす場合には、動作量Uが必要動作量Up、Unに達しているもの、すなわち、PI制御の不感帯内に入っていないものと判定し、これらの条件を満たさない場合には、動作量Uが必要動作量Up、Unに達していないもの、すなわち、PI制御の不感帯内に入っているものと判定する。ここで、必要動作量Up、Unは、制御装置8に設定されている。
そして、動作量Uが必要動作量Up、Unに達しているものと判定された場合には、ステップS4の処理に移行し、制御装置8がPI動作出力手段として機能することで、PI演算により演算された動作量Uに応じて膨張機構41を動作させ、後述の蓄積動作量Uaをリセットする。より具体的には、過熱度PVが目標過熱度SVよりも大きい場合には、ステップS1において演算される偏差Eが正値になり、ステップS2においてPI演算により演算される動作量Uも正値になることから、膨張機構41は、現在の弁開度から動作量Uに応じた変更開度分だけ大きくなるように動作させられる。これにより、室内熱交換器42内を流れる冷媒の流量が増加して、室内熱交換器42の出口温度Toが低くなり、過熱度PVが小さくなり、偏差Eがゼロに近づく方向に制御されることになる。逆に、過熱度PVが目標過熱度SVよりも小さい場合には、ステップS1において演算される偏差Eが負値になり、ステップS2においてPI演算により演算される動作量Uも負値になることから、膨張機構41は、現在の弁開度から動作量Uに応じた変更開度分だけ小さくなるように動作させられる。これにより、室内熱交換器42内を流れる冷媒の流量が減少して、室内熱交換器42の出口温度Toが高くなり、過熱度PVが大きくなり、偏差Eがゼロに近づく方向に制御されることになる。
一方、動作量Uが必要動作量Up、Unに達していないものと判定された場合には、膨張機構41の動作を実行せずに、ステップS5の処理に移行し、制御装置8が動作量蓄積手段として機能することで、必要動作量Up、Unに達しない動作量Uを蓄積する。そして、この必要動作量Up、Unに達しない動作量Uを蓄積する処理は、ステップS6において、必要動作量Up、Unに達しない動作量Uを蓄積して得られる蓄積動作量Uaが所定量Uap、Uanに達するまで実行される。より具体的には、ステップS4において、必要動作量Up、Unに達しないと判定された動作量Uは、ステップS5において、正負の符号を含んだ値をそのまま加算することによって蓄積される。このため、過熱度PVが目標過熱度SVよりも大きい状態(ステップS1において演算される偏差EやステップS2においてPI演算により演算される動作量Uが正値となる状態)が継続される場合には、ステップS1〜S6の処理が順次繰り返されて、PI演算により演算される動作量Uが加算されることで蓄積動作量Uaが大きくなり、所定量Uap以上まで達することになる。また、過熱度PVが目標過熱度SVよりも小さい状態(ステップS1において演算される偏差EやステップS2においてPI演算により演算される動作量Uが負値となる状態)が継続される場合には、ステップS1〜S6の処理が順次繰り返されて、PI演算により演算される動作量Uが加算されることで蓄積動作量Uaが小さくなり(すなわち、負側に大きくなり)、所定量Uan以下まで達することになる。ここで、所定量Uap、Uanは、制御装置8に設定されており、例えば、所定量Uapは必要動作量Upと同じ値に、また、所定量Uanは必要動作量Unと同じ値に設定することができる。
そして、ステップS6において、蓄積動作量Uaが所定量Uap、Uanに達しているものと判定された場合には、ステップS7の処理に移行し、制御装置8が蓄積動作出力手段として機能することで、蓄積動作量Uaに応じて膨張機構41を動作させ、蓄積動作量Uaをリセットする。より具体的には、過熱度PVが目標過熱度SVよりも大きい状態(ステップS1において演算される偏差EやステップS2においてPI演算により演算される動作量Uが正値となる状態)が継続されている場合には、蓄積動作量Uaが所定量Uapに達することから、膨張機構41は、現在の弁開度から蓄積動作量Uaに応じた変更開度分だけ大きくなるように動作させられる。これにより、室内熱交換器42内を流れる冷媒の流量が増加して、室内熱交換器42の出口温度Toが低くなり、過熱度PVが小さくなり、偏差Eがゼロに近づく方向に制御されることになる。逆に、過熱度PVが目標過熱度SVよりも小さい状態(ステップS1において演算される偏差EやステップS2においてPI演算により演算される動作量Uが負値となる状態)が継続される場合には、蓄積動作量Uaが所定量Uanに達することから、膨張機構41は、現在の弁開度から蓄積動作量Uaに応じた変更開度分だけ小さくなるように動作させられる。これにより、室内熱交換器42内を流れる冷媒の流量が減少して、室内熱交換器42の出口温度Toが高くなり、過熱度PVが大きくなり、偏差Eがゼロに近づく方向に制御されることになる。
このように、本実施形態の膨張機構41の制御においては、PI演算により演算された動作量Uが必要動作量Up、Unに達しない場合、すなわち、PI制御の不感帯内に入った場合には、膨張機構41の動作を実行せずに、必要動作量Up、Unに達しない動作量Uを蓄積し、蓄積動作量Uaが所定量Uap、Uanに達した場合に、PI演算により演算された動作量Uが必要動作量Up、Unに達していなくても、すなわち、PI制御の不感帯内に入っている場合(すなわち、PI演算により演算された動作量Uが膨張機構41を動作させるために必要な必要動作量Up、Unに達していない場合)であっても、膨張機構41の動作を実行するようにしているため、膨張機構41を簡単に最適な制御状態にすることができ、高精度な制御を実現することができる。
しかも、膨張機構が敏感に動作するようにPI制御の定数を変更する従来の手法を採用する場合においては、PI制御の定数を適切な値に設定することができない場合には、ハンチングの発生等によって、制御が不安定になるおそれがあるが、本実施形態の膨張機構41の制御では、膨張機構41が敏感に動作するようにPI制御の定数を変更する必要がなく、PI制御の定数として適切な値を求めるための開発時間を短縮することができる。
また、PI演算によって演算される動作量等に一定の補正量を重畳する従来の手法を採用する場合においては、PI演算により演算された動作量が必要動作量に達しないにもかかわらず、とりあえず膨張機構を動作させることになるため、制御対象機器が敏感に動作する傾向が強く現れやすく、制御が不安定になるおそれがあるが、本実施形態の膨張機構41の制御では、PI演算により演算された動作量Uを所定量Uap、Uanに達するまで蓄積した後に膨張機構41を動作させるようにしているため、膨張機構41が敏感に動作する傾向が現れにくく、制御が不安定になるおそれが少なくできる。
また、仮に、ステップS7において、蓄積動作量Uaをリセットしないものとした場合には、蓄積動作量Uaが所定量Uap、Uanに達して膨張機構41の動作が実行された直後において、膨張機構41の動作を実行した際における蓄積動作量Uaに、必要動作量Up、Unに達しない動作量Uがさらに蓄積されてすぐに所定量Uap、Uanに達してしまい、膨張機構41が不必要に動作されるというような現象が生じてしまうが、本実施形態の制御では、上述のように、ステップS7において、蓄積動作量Uaをリセットするようにしているため、上述のような現象が生じることなく、膨張機構41の動作が適切に行われるようになっている。
また、PI演算により演算された動作量Uが必要動作量Up、Unに達しない状態(すなわち、ステップS5、S6の処理が実行される状態)になった後に、蓄積動作量Uaが所定量Uap、Uanに達することなく(すなわち、ステップS7の処理が実行されることなく)、PI演算により演算された動作量Uが必要動作量Up、Unに達した場合には、ステップS4の処理が実行されて、PI演算により演算された動作量Uに応じて膨張機構41を動作させることになるが、この際においても、蓄積動作量Uaをリセットするようにしているため、膨張機構41の動作が実行された直後において、蓄積動作量Uaに必要動作量Up、Unに達しない動作量Uがさらに蓄積されてすぐに所定量Uap、Uanに達してしまう現象が生じることはなく、膨張機構41の動作が適切に行われるようになっている。
また、過熱度PVが目標過熱度SVに非常に近い場合等のように、PI演算により演算された動作量Uが、必要動作量Up、Unに達しない場合で、かつ、正値になったり負値になったりするような運転条件においては、膨張機構41を現在の制御状態から極力変更しないように動作させるほうがよい場合が多いが、本実施形態の制御では、ステップS5において、必要動作量Up、Unに達しない動作量Uは、正負の符号を含んだ値をそのまま加算することによって蓄積されるため、ステップS1〜S6の処理が順次繰り返されて、PI演算により演算される動作量Uが加算されても、蓄積動作量Uaがゼロ近くの値で推移して、所定量Uap、Uanに達しにくくなっており、これにより、膨張機構41が現在の制御状態から極力変更しないように動作されることになり、膨張機構41の動作が適切に行われるようになっている。
(3)他の実施形態
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
(A)
上述の実施形態においては、室内ユニットに圧縮機が設けられた、いわゆるリモートコンデンサタイプの空気調和装置に本発明を適用した例を説明したが、これに限定されず、他のタイプの空気調和装置や冷凍装置に本発明を適用してもよい。
上述の実施形態においては、室内ユニットに圧縮機が設けられた、いわゆるリモートコンデンサタイプの空気調和装置に本発明を適用した例を説明したが、これに限定されず、他のタイプの空気調和装置や冷凍装置に本発明を適用してもよい。
(B)
また、上述の実施形態においては、膨張機構の制御に対して本発明を適用した例を説明したが、これに限定されず、他の制御対象機器の制御に対して本発明を適用してもよい。
また、上述の実施形態においては、膨張機構の制御に対して本発明を適用した例を説明したが、これに限定されず、他の制御対象機器の制御に対して本発明を適用してもよい。
運転容量を可変できる圧縮機を使用する場合には、この圧縮機の運転容量をPI制御によって制御する場合がある。例えば、圧縮機の運転容量を制御することによって、冷房運転時における蒸発温度が目標値で一定になるようにしたり、室内ユニットの吸入空気温度や吹出空気温度あるいは室内温度が目標値で一定になるようにする場合があるが、このような圧縮機の制御に対して本発明を適用してもよい。
風量を可変できる室内ファンや室外ファンを使用する場合には、この室内ファンや室外ファンの風量をPI制御によって制御する場合がある。例えば、室内ファンの風量を制御することによって、吹出空気温度が目標値で一定になるようにしたり、室外ファンの風量を制御することによって、冷房運転時における凝縮圧力が目標値で一定になるようにする場合があるが、このような室内ファンや室外ファンの制御に対して本発明を適用してもよい。
室内ユニットに電気ヒータを設ける場合には、この電気ヒータの運転容量をPI制御によって制御する場合がある。例えば、除湿運転時において、電気ヒータの運転容量を制御することによって、吹出空気温度が目標値で一定になるように、室内熱交換器において冷却された室内空気を再加熱する場合があるが、このような電気ヒータの制御に対して本発明を適用してもよい。
本発明を利用すれば、冷凍装置の制御対象機器の制御において、PI制御の不感帯内に入った場合においても、簡単かつ高精度な制御を実現することができる。
1 空気調和装置(冷凍装置)
41 膨張機構(制御対象機器)
41 膨張機構(制御対象機器)
Claims (4)
- 冷凍装置の運転制御を行う際に必要な所定の運転状態量とこの制御目標値との偏差(E)を演算し、
前記偏差に基づいて、前記運転状態量を前記制御目標値に近づけるために制御される制御対象機器の動作量をPI演算により演算し、
前記PI演算により演算された動作量が前記制御対象機器を動作させるために必要な必要動作量に達しない場合には、前記制御対象機器の動作を実行せずに、前記必要動作量に達しない動作量を蓄積し、
前記蓄積した動作量が所定量に達した場合には、前記PI演算により演算された動作量が前記必要動作量に達していなくても、前記制御対象機器の動作を実行する、
冷凍装置の制御方法。 - 前記制御対象機器の動作を実行した際に、前記蓄積した動作量をリセットする、請求項1に記載の冷凍装置の制御方法。
- 前記必要動作量に達しない動作量は、正負の符号を含んだ値をそのまま加算することによって蓄積される、請求項1又は2に記載の冷凍装置の制御方法。
- 冷凍装置の運転制御を行う際に必要な所定の運転状態量とこの制御目標値との偏差を演算し、
前記偏差に基づいて、前記運転状態量を前記制御目標値に近づけるために制御される制御対象機器の動作量をPI演算により演算し、
前記PI演算により演算された動作量が前記制御対象機器を動作させるために必要な必要動作量に達しない場合には、前記制御対象機器の動作を実行せずに、前記必要動作量に達しない動作量を蓄積し、
前記蓄積した動作量が前記必要動作量に達した場合に、前記PI演算により演算された動作量が前記必要動作量に達していなくても、前記制御対象機器の動作を実行する、
冷凍装置の制御装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006232405A JP2008059069A (ja) | 2006-08-29 | 2006-08-29 | 冷凍装置の制御方法及び制御装置 |
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JP2008059069A true JP2008059069A (ja) | 2008-03-13 |
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JP (1) | JP2008059069A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2014231975A (ja) * | 2013-05-30 | 2014-12-11 | 三菱電機株式会社 | 冷凍サイクル装置 |
-
2006
- 2006-08-29 JP JP2006232405A patent/JP2008059069A/ja active Pending
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