JP2008056743A - ポリ乳酸系樹脂組成物及びその成形体 - Google Patents

ポリ乳酸系樹脂組成物及びその成形体 Download PDF

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Manabu Kanayama
学 金山
Keiji Masuyama
圭司 増山
Takuji Kuzutani
拓嗣 葛谷
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Abstract

【課題】植物度を維持しつつ、耐熱性に優れると共に、加熱による収縮が抑えられ、かつ耐衝撃性などの機械的特性に優れるポリ乳酸系樹脂組成物及びその成形体を提供する。
【解決手段】ポリ乳酸系樹脂組成物は、非晶性のポリ乳酸を主体とするポリ乳酸とポリオレフィンとを相溶化剤によりアロイ化してなるポリマーアロイ及び有機フィラーを含有し、かつ前記ポリオレフィンの含有量が30〜60質量%である。非晶性のポリ乳酸を構成する乳酸は、光学異性体であるD体とL体との合計量中のL体の割合が3〜97モル%であることが好ましい。また、ポリ乳酸と有機フィラーとを含む植物由来成分の含有量を表す植物度が25〜69質量%であることが望ましい。ポリオレフィンはポリプロピレンであることが最も好ましく、有機フィラーは、植物由来の繊維であることが好ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は、例えばドアトリム、ピラーガーニッシュ等の自動車用内装部材などとして好適に使用されるポリ乳酸系樹脂組成物及びその成形体に関するものである。
近年における地球温暖化や石油資源の枯渇の問題に対処すべく、植物由来のプラスチックを使用する検討が盛んに行われている。これは、植物由来のプラスチックを使用することにより、石油の使用量を抑えることができると共に、プラスチックの使用後に燃焼処理を行ったとき大気中の二酸化炭素(CO)の収支が変化しないというカーボンニュートラルの概念に基づいてその使用が推奨されている。その中でもポリ乳酸は、Nature Works社が年産14万トンのプラントを保有し、既に食品トレーやパーソナルコンピュータの筐体等の原料として供給され始めている。
しかし、このポリ乳酸を各種の用途において使用する場合には多くの課題がある。まず、ポリ乳酸はその光学純度が高いものは結晶性を有するものの、その結晶化速度が他の結晶性樹脂と比較して非常に遅いことから、通常の成形では低結晶状態となり耐熱性が低いという課題がある。そこで結晶化を促進させるために、金型による成形温度を100℃以上に設定して高価な結晶核剤を用いたり、成形後にアニール処理を施したりすることが試みられている。また、ポリ乳酸は硬くて脆い性質を有していることから、自動車部品等の成形体として使用するためには何らかの改良を行う必要がある。
具体的には、ポリ乳酸を他の樹脂とアロイ化して物性を改良したり、各種添加剤の配合により物性を改良したりする工夫がなされている。しかし、このような改良の場合には、植物由来の樹脂に石油系の樹脂を配合することから、本来の狙いである前記カーボンニュートラルとしての効果は減少する。そこで最近の考え方として、成形体全体のどれだけが植物由来で得られるものであるかを示す指標として「植物度」なる用語が使われ始めており、その度合いが高いほど環境に与える負荷が少ないものとして認識されつつある。
この種の改良として例えば、ポリ乳酸と、該ポリ乳酸より高いガラス転移温度を有する非晶性樹脂とを含む生分解性樹脂組成物が知られている(例えば、特許文献1を参照)。この生分解性樹脂組成物には、さらに充填剤としてタルク、マイカ等を添加することが好ましいと記載されている。また、ポリ乳酸系樹脂、結晶性ポリプロピレン系樹脂組成物及び無機フィラーを含有するポリ乳酸系樹脂組成物が知られている(例えば、特許文献2を参照)。
特開2005−60637号公報(第2頁〜第4頁) 特開2005−307128号公報(第2頁及び第3頁)
しかしながら、特許文献1及び2に記載されている具体的なポリ乳酸〔三井化学(株)製の商品名H−100〕は、L体の割合が98.2モル%という光学純度が高いことから、結晶性のポリ乳酸である。このため、そのようなポリ乳酸を含む樹脂組成物は、結晶化速度が遅く、低温の金型温度での成形では結晶化が不十分となり、結果として成形体の耐熱性が劣るという欠点があった。しかも、成形体が加熱されることで結晶化が進み、或いは経時的に結晶化が進むと、成形体に収縮が生ずる傾向があった。さらに、成形体は耐衝撃性などの機械的特性も変化するという問題があった。
そこで本発明の目的とするところは、植物度を維持しつつ、耐熱性に優れると共に、加熱による収縮が抑えられ、かつ耐衝撃性などの機械的特性に優れるポリ乳酸系樹脂組成物及びその成形体を提供することにある。
上記の目的を達成するために、請求項1のポリ乳酸系樹脂組成物は、非晶性のポリ乳酸を主体とするポリ乳酸とポリオレフィンとを相溶化剤によりアロイ化してなるポリマーアロイ及び有機フィラーを含有し、かつ前記ポリオレフィンの含有量が30〜60質量%であることを特徴とする。
請求項2のポリ乳酸系樹脂組成物は、請求項1において、非晶性のポリ乳酸を構成する乳酸は、光学異性体であるD体とL体との合計量中のL体の割合が3〜97モル%であることを特徴とする。
請求項3のポリ乳酸系樹脂組成物は、請求項1又は請求項2において、ポリ乳酸と有機フィラーとを含む植物由来成分の含有量を表す植物度が25〜69質量%であることを特徴とする。
請求項4のポリ乳酸系樹脂組成物は、請求項1から請求項3のいずれか一項において、ポリオレフィンはポリプロピレンであることを特徴とする。
請求項5のポリ乳酸系樹脂組成物は、請求項1から請求項4のいずれか一項において、有機フィラーは、植物由来の繊維であることを特徴とする。
請求項6に記載の成形体は、請求項1から請求項5のいずれか一項のポリ乳酸系樹脂組成物を成形して形成され、0.45MPaの荷重を加えたときの荷重たわみ温度が70℃以上であることを特徴とする。
請求項7に記載のポリ乳酸系樹脂組成物の成形体は、請求項6において、成形は、ポリ乳酸系樹脂組成物を射出成形により金型温度が10〜50℃で行われることを特徴とする。
本発明によれば、次のような効果を発揮することができる。
請求項1に記載の発明のポリ乳酸系樹脂組成物においては、ポリマーアロイを形成するポリ乳酸が非晶性であり、結晶性を有していないことから、結晶化に基づく収縮の問題を考慮する必要性がない。さらに、ポリ乳酸系樹脂組成物には、ポリオレフィン及び有機フィラーが含まれているため、耐熱性のほか、機械的特性を高めることができる。従って、ポリ乳酸系樹脂組成物は、植物度を維持しつつ、耐熱性に優れると共に、熱や経時変化による収縮が抑えられ、かつ耐衝撃性などの機械的特性に優れている。
請求項2に記載の発明のポリ乳酸系樹脂組成物では、非晶性のポリ乳酸を構成する乳酸は、光学異性体であるD体とL体との合計量中のL体の割合が3〜97モル%であることから、請求項1に係る発明の効果に加えて、ポリ乳酸の非晶性を高め、その機能を十分に発現することができる。
請求項3に記載の発明のポリ乳酸系樹脂組成物では、前述の植物度が25〜69質量%であるため、請求項1又は請求項2に係る発明の効果に加えて、環境に与える負荷を減少させことができる。
請求項4に記載の発明のポリ乳酸系樹脂組成物では、ポリオレフィンはポリプロピレンであることから、請求項1から請求項3のいずれかに係る発明の効果に加え、ポリ乳酸系樹脂組成物より得られる成形体の軽量化を図ることができる。
請求項5に記載の発明のポリ乳酸系樹脂組成物では、有機フィラーは植物由来の繊維であることから、請求項1から請求項4のいずれかに係る発明の効果に加えて、植物度を高めることができる。
請求項6に記載の発明のポリ乳酸系樹脂組成物の成形体では、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のポリ乳酸系樹脂組成物を成形して形成され、0.45MPaの荷重を加えたときの荷重たわみ温度が70℃以上である。このため、成形体は請求項1から請求項5のいずれかに係る発明の効果を発揮することができると共に、特に耐熱性を向上させることができる。
請求項7に記載の発明のポリ乳酸系樹脂組成物の成形体では、前記成形はポリ乳酸系樹脂組成物を射出成形により金型温度が10〜50℃で行われることから、請求項6に係る発明の効果に加えて、低温で成形を行うことができる。
以下、本発明の最良と思われる実施形態について詳細に説明する。
まず、本実施形態におけるポリ乳酸系樹脂組成物について説明する。係るポリ乳酸系樹脂組成物は、非晶性のポリ乳酸を主体とするポリ乳酸とポリオレフィンとを相溶化剤によりアロイ化してなるポリマーアロイに有機フィラーを含有し、かつポリオレフィンの含有量が30〜60質量%のものである。ポリ乳酸系樹脂組成物を調製する場合には、非晶性のポリ乳酸とポリオレフィンとを相溶化剤によりアロイ化してポリマーアロイを製造し、得られたポリマーアロイに有機フィラーを配合する方法又は非晶性のポリ乳酸、ポリオレフィン、相溶化剤及び有機フィラーを混合し、加熱、混練して調製する方法のいずれの方法も採用される。
ポリ乳酸は生分解性を有する樹脂であり、ポリ乳酸系樹脂組成物を成形して得られる成形体に生分解性を付与することができる。ポリ乳酸はその光学純度が高い結晶性のポリ乳酸と、そのような結晶性を有しない非晶性のポリ乳酸とがあるが、結晶性のポリ乳酸は結晶化速度が遅いため、低結晶の状態では耐熱性が低いことや、経時の収縮が発生するなどの点から本実施形態ではそのような問題を考慮する必要のない非晶性のポリ乳酸が用いられる。
ポリ乳酸を非晶性とするためには、ポリ乳酸を構成する乳酸は、光学異性体であるD体とL体との合計量中のL体の割合が3〜97モル%であることが好ましい。この場合、ポリ乳酸の非晶性が高められ、その機能が十分に発現される。ポリ乳酸が非晶性であることにより、加熱して結晶化を促す必要がなく、ポリ乳酸系樹脂組成物の成形を低温で行うことができる。L体の割合が3モル%未満又は97モル%を越えると、D体又はL体の含有量が極めて高くなり、ポリ乳酸が結晶性となって好ましくない。ポリ乳酸としては、非晶性のポリ乳酸のみを用いることができるほか、非晶性のポリ乳酸を主体(主成分)とし、それに結晶性のポリ乳酸を配合して用いることができる。
ポリ乳酸系樹脂組成物中におけるポリ乳酸の含有量は、20〜60質量%であることが好ましく、25〜50質量%であることがより好ましい。ポリ乳酸の含有量が20質量%未満の場合には、植物由来樹脂の割合が少なくなり、ポリ乳酸系樹脂組成物から得られる成形体の植物度が小さくなって好ましくない。その一方、60質量%を越える場合には、ポリ乳酸の含有量が過剰となり、成形体の耐熱性、耐衝撃性などの機械的特性が低下して好ましくない。
前記ポリオレフィンは、非晶性のポリ乳酸とポリマーアロイを形成する材料であり、ポリ乳酸系樹脂組成物より得られる成形体の耐熱性や機械的特性を高める機能を発現するものである。そのようなポリオレフィンとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレンなどが用いられる。これらのうち、ポリプロピレンは比重が小さく、ポリ乳酸系樹脂組成物より得られる成形体の軽量化を図ることができると共に、入手が容易で安価であるため最も好ましい。
ポリ乳酸系樹脂組成物中におけるポリオレフィンの含有量は30〜60質量%であることが必要である。ポリオレフィンの含有量が30質量%未満の場合には、ポリ乳酸系樹脂組成物から得られる成形体の耐熱性が不足すると同時に、耐衝撃性などの機械的特性も低下し、目的とする成形体が得られなくなる。その一方、ポリオレフィンの含有量が60質量%を越える場合には、ポリオレフィンが過剰であり、ポリ乳酸系樹脂組成物の植物度が小さくなって環境に与える負荷が大きくなり不適当である。
非晶性のポリ乳酸とポリオレフィンとは相溶化剤によりアロイ化されてポリマーアロイが形成され、ポリ乳酸系樹脂組成物から得られる成形体の物性を向上させる機能を果たす。相溶化剤としては、例えば極性基変性エラストマー、乳酸系ポリエステル共重合体、極性基変性ポリオレフィンなどが好適に用いられる。具体的には、極性基変性エラストマーとして旭化成ケミカルズ(株)製の商品名タフテックM1943、乳酸系ポリエステル共重合体として大日本インキ化学工業(株)製の商品名プラメートPD−150、極性基変性ポリオレフィンとして三井化学(株)製の商品名タフマーMP0620等が挙げられる。
アロイ化(相溶化)は、非晶性のポリ乳酸、ポリオレフィン及び相溶化剤を加熱、溶融し、混練することにより行われ、例えば2軸押出機を用い、200℃前後の温度で溶融、混練することにより行われる。このアロイ化により、相溶化剤の極性基がポリ乳酸側に作用し、重合体がポリオレフィン側に作用してポリマーアロイが形成されるものと考えられる。
相溶化剤の含有量は、ポリ乳酸とポリオレフィンとのアロイ化によってポリマーアロイが形成されるに足る量であればよく、ポリ乳酸系樹脂組成物中に1〜15質量%であることが好ましく、3〜10質量%であることがより好ましい。相溶化剤の含有量が1質量%未満の場合、ポリ乳酸とポリオレフィンとの相溶化が不十分となり、成形体の耐熱性や機械的特性が低下する。一方、15質量%を越える場合、ポリ乳酸とポリオレフィンとの相溶化には過剰となり、過剰量の相溶化剤が成形体の物性に悪影響を及ぼして好ましくない。
前記有機フィラーは、ポリ乳酸系樹脂組成物から得られる成形体の耐熱性のほか、耐衝撃性などの機械的特性を高める機能を有している。有機フィラーとして具体的には、ケナフ繊維、竹繊維、バナナ繊維、ヤシ繊維等の植物由来の繊維などが用いられる。このような植物由来の繊維を用いることにより、ポリ乳酸系樹脂組成物の植物度を高めることができる。この有機フィラーとしてケナフ繊維又は竹繊維は成長が早く、安定的に入手できる点で好ましい。
有機フィラーの含有量は、ポリ乳酸系樹脂組成物中に5〜20質量%であることが好ましく、10〜15質量%であることがより好ましい。有機フィラーの含有量が5質量%未満の場合には、ポリ乳酸系樹脂組成物から得られる成形体の耐熱性や機械的特性が低下する傾向を示して好ましくない。その一方、20質量%を越える場合には、相対的に他の成分の含有量が少なくなってバランスを欠き、良好な成形体が得られなくなる。
ポリ乳酸系樹脂組成物には、上記各成分のほか、可塑剤、酸化防止剤、加水分解抑制剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、難燃剤等を目的に応じて配合することもできる。それらの成分は、各用途における常法に従って所定量が配合される。
ポリ乳酸系樹脂組成物の植物度は環境に与える負荷を減少させる観点から高い方が好ましいが、具体的には25〜69質量%であることが好ましい。この植物度が25質量%未満の場合、植物由来の材料以外の材料の割合が増大し、環境に与える負荷が大きくなって好ましくない。その一方、69質量%を越える場合、環境に与える負荷は小さくなるが、成形体の耐熱性や機械的特性が低下する傾向を示す。
次に、ポリ乳酸系樹脂組成物の成形体について説明する。係る成形体は、前述したポリ乳酸系樹脂組成物を射出成形法、押出成形法などの成形法により、常法に従って成形を行うことで製造される。得られる成形体は、0.45MPaの荷重を加えたときの荷重たわみ温度が70℃以上であることが、特に耐熱性を向上させる観点から好ましい。具体的に成形を行う場合には、ポリ乳酸系樹脂組成物を射出成形により、金型温度が10〜50℃で行われる。ポリ乳酸系樹脂組成物中のポリ乳酸は非晶性のポリ乳酸であることから、加熱によって結晶化を促進させる必要がないため、10〜50℃という低温で成形を行うことができる。すなわち、ポリ乳酸のガラス転移温度(57〜58℃)よりも低い温度で成形を行うことができる。
このようにして製造されるポリ乳酸系樹脂組成物の成形体は、耐熱性に優れると共に、熱や経時による収縮が抑制され、かつ耐衝撃性などの機械的特性に優れている。例えば、耐熱性については、前記荷重たわみ温度が好ましくは70℃以上、より好ましくは70〜95℃である。収縮性については80℃、2時間後における収縮率が好ましくは0.5%未満、より好ましくは0.1〜0.4%である。さらに、耐衝撃性については、衝撃エネルギーが好ましくは10kJ/m以上、より好ましくは13〜30kJ/mである。
さて、本実施形態の作用について説明すると、非晶性のポリ乳酸、ポリオレフィン、相溶化剤及び有機フィラーを押出機で加熱、混合し、混練することによりポリ乳酸系樹脂組成物が調製される。そのとき、ポリオレフィンの含有量は30〜60質量%に設定される。得られたポリ乳酸系樹脂組成物を例えば射出成形機を用いて金型内に射出し、金型温度40℃で成形を行うことにより成形体が製造される。
この場合、前記ポリ乳酸は非晶性であって、結晶性ではないことから、耐熱性や加熱による収縮性などがポリ乳酸によって影響を受けることがない。そのため、ポリ乳酸系樹脂組成物を低温の金型温度で成形することができる。また、ポリ乳酸とポリオレフィンとが相溶化剤により良好に相溶化されてポリマーアロイが形成されていることから、成形体は優れた物性を発現することができる。さらに、ポリ乳酸系樹脂組成物には、ポリオレフィン及び有機フィラーが含まれているため、それらの性質に基づいて成形体は耐熱性が高められると共に、耐衝撃性、引張強さ等の機械的特性が高められる。
以上の実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
・ 本実施形態におけるポリ乳酸系樹脂組成物においては、非晶性のポリ乳酸を主体とするポリ乳酸とポリオレフィンとを相溶化剤によりアロイ化してなるポリマーアロイ及び有機フィラーが含まれている。上記ポリオレフィンの含有量は30〜60質量%である。従って、ポリ乳酸系樹脂組成物は、植物度を維持してカーボンニュートラルの効果を得ることができ、耐熱性に優れると共に、熱や経時による収縮が抑えられ、かつ耐衝撃性などの機械的特性に優れている。よって、ポリ乳酸系樹脂組成物は、ドアトリム、ピラーガーニッシュ等の自動車用内装部材などの原料として好適に使用することができる。
・ 非晶性のポリ乳酸を構成する乳酸は、光学異性体であるD体とL体との合計量中のL体の割合が3〜97モル%であることにより、ポリ乳酸の非晶性を高め、その機能を十分に発現することができる。
・ 前述の植物度が25〜69質量%であることにより、環境に与える負荷を減少させことができる。
・ ポリオレフィンはポリプロピレンであることにより、ポリ乳酸系樹脂組成物より得られる成形体の軽量化を図ることができると共に、製造コストを低減させることができる。
・ 有機フィラーは植物由来の繊維であることにより、ポリ乳酸系樹脂組成物の植物度を高めることができる。
・ ポリ乳酸系樹脂組成物の成形体では、前述のポリ乳酸系樹脂組成物を成形して形成され、0.45MPaの荷重を加えたときの荷重たわみ温度が70℃以上であることにより、特に耐熱性を向上させることができる。
・ ポリ乳酸系樹脂組成物の成形体を得るための成形は、ポリ乳酸系樹脂組成物を射出成形により金型温度が10〜50℃で行われ、低温で成形を行うことができる。
以下に、実施例及び比較例を挙げて、前記実施形態をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜6及び比較例1〜5)
下記に記載するポリ乳酸、ポリオレフィン、相溶化剤及び有機フィラーを表1に示す含有量(質量部)で、2軸押出機にて押出温度200℃で混練、押出ししてペレット化し、ポリ乳酸系樹脂組成物を得た。得られたポリ乳酸系樹脂組成物を射出成形機を用いて金型内に射出し、40℃に設定された金型で成形を行い、ポリ乳酸系樹脂組成物の成形体を製造した。製造された成形体は、全体が均一な成形体であり、ポリ乳酸とポリオレフィンとが相溶化剤によってアロイ化され、有機フィラーを含む成形体が形成された。
非晶性ポリ乳酸1:L−乳酸(L体)80モル%及びD−乳酸(D体)20モル%のポリ乳酸。
非晶性ポリ乳酸2:L−乳酸(L体)50モル%、D−乳酸(D体)30モル%、エチレングリコール10モル%及びコハク酸10モル%のポリ乳酸系共重合体。
結晶性ポリ乳酸:L−乳酸(L体)98モル%及びD−乳酸(D体)2モル%のポリ乳酸。
PP:ポリプロピレン
HDPE:高密度ポリエチレン
無水マレイン酸変性SEBS:スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体、旭化成ケミカルズ(株)製、商品名タフテックM1943。
ここで、比較例1ではポリ乳酸として結晶性ポリ乳酸のみを使用した例、比較例2では結晶性ポリ乳酸に非晶性ポリ乳酸を少量配合し、全体として結晶性ポリ乳酸を使用した例を示す。比較例3では、ポリオレフィンとしてポリプロピレンが25質量%という少量である例、比較例4では相溶化剤を配合しなかった例、及び比較例5では有機フィラーを配合しなかった例を示す。
そして、製造した各成形体について、耐熱性、アニール収縮性及び耐衝撃性を以下に示す方法により測定し、それらの結果を表1に示した。
耐熱性:JIS K 7191−1法〔低荷重たわみ温度(℃)〕
すなわち、加熱浴槽中における成形体の試験片に0.45MPaの曲げ応力を加えながら、一定速度で伝熱媒体を昇温させ、試験片が規定のたわみ量に達したときの伝熱媒体の温度をいう。
アニール収縮性:射出成形して2日経過後の成形体の試験片を80℃で2時間加熱したとき、加熱前後における試験片の収縮によるサイズ(大きさ)の変化の割合(%)を測定した。
耐衝撃性:シャルピー衝撃強さ(ノッチ付き)。すなわち、縦80mm、横10mm及び厚さ4mmのノッチ付き試験片を用い、JIS K 7111に準拠して衝撃エネルギー(kJ/m)を測定した。
Figure 2008056743
表1に示した結果より、実施例1〜6では耐熱性が74〜95℃であり、優れた耐熱性が示された。また、アニール収縮については、収縮量が0.18〜0.31%であり、成形体は良好な低収縮性を有していた。さらに、耐衝撃性については、13〜21kJ/mであり、成形体は優れた耐衝撃性を示した。
一方、比較例1及び2では、ポリ乳酸として結晶性のポリ乳酸を使用したことから、成形時には結晶化の進行が不十分で、アニール収縮性試験で結晶化が進行して成形体の収縮が大きくなったものと考えられる。また、比較例3では、ポリオレフィンとしてポリプロピレンが25.0質量%という少量であったため、耐熱性が低下すると同時に、耐衝撃性が大きく低下した。比較例4では、相溶化剤を配合しなかったことから、アロイ化が十分に達成されず、耐熱性が低く、耐衝撃性も低い結果であった。比較例5では有機フィラーを配合しなかったため、耐熱性が低下すると共に、耐衝撃性も低下した。
なお、本実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ ポリ乳酸系樹脂組成物の目的に応じてポリオレフィン、相溶化剤などをそれぞれ複数用いることもできる。
・ 有機フィラーとして、麻繊維、ヤシ殻繊維、キトサン繊維等を使用することもできる。
・ ポリ乳酸系樹脂組成物には、ポリオレフィン以外の熱可塑性樹脂として、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂等を配合することも可能である。
さらに、前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
・ 前記植物由来の繊維は、ケナフ繊維又は竹繊維であることを特徴とする請求項5に記載のポリ乳酸系樹脂組成物。このように構成した場合、請求項5に係る発明の効果に加えて、ケナフ及び竹は成長が速いことから、安定的に入手することができる。
・ 前記非晶性のポリ乳酸を主体とするポリ乳酸、ポリオレフィン、相溶化剤及び有機フィラーを混合し、加熱、混練して得られるものであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のポリ乳酸系樹脂組成物。このように構成した場合、請求項1から請求項5のいずれかに係る発明の効果に加えて、ポリ乳酸系樹脂組成物を1段で容易に調製することができる。
・ 請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のポリ乳酸系樹脂組成物を射出成形により金型温度が10〜50℃で成形することを特徴とするポリ乳酸系樹脂組成物の成形方法。この成形方法によれば、ポリ乳酸系樹脂組成物の成形体を低温で容易に成形することができる。

Claims (7)

  1. 非晶性のポリ乳酸を主体とするポリ乳酸とポリオレフィンとを相溶化剤によりアロイ化してなるポリマーアロイ及び有機フィラーを含有し、かつ前記ポリオレフィンの含有量が30〜60質量%であることを特徴とするポリ乳酸系樹脂組成物。
  2. 前記非晶性のポリ乳酸を構成する乳酸は、光学異性体であるD体とL体との合計量中のL体の割合が3〜97モル%であることを特徴とする請求項1に記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
  3. 前記ポリ乳酸と有機フィラーとを含む植物由来成分の含有量を表す植物度が25〜69質量%であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
  4. 前記ポリオレフィンはポリプロピレンであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
  5. 前記有機フィラーは、植物由来の繊維であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
  6. 請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のポリ乳酸系樹脂組成物を成形して形成され、0.45MPaの荷重を加えたときの荷重たわみ温度が70℃以上であることを特徴とする成形体。
  7. 前記成形は、ポリ乳酸系樹脂組成物を射出成形により金型温度が10〜50℃で行われることを特徴とする請求項6に記載の成形体。
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