JP2008056531A - 断熱煉瓦、断熱煉瓦の製造方法、及び耐火構造物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】熱風炉、真空脱ガス炉の隔壁を構成する断熱煉瓦1は、熱勾配の低温側端面1Bから所定深さの通気を遮断する通気遮断層を有し、この通気遮断層は、断熱煉瓦に樹脂を含浸させて形成されている。樹脂が熱分解によって消失しても、低温側端面1B側の一定領域において樹脂が残存するため、断熱煉瓦1の気密シール性を維持することができ、炉内流が外部に侵出するのを防止して、圧力容器の耐用性を大幅に向上させることができる。
【選択図】図1
Description
このため、このような断熱材料を熱風炉等に使用した場合、ガス、液体等の炉内流が断熱材の背面側まで侵出することがあり、断熱材の外部を覆う鉄皮等が侵食され、容器耐用性を低下させる原因ともなっていた。
一方、このような通気性を有するポーラスな材料に気密シール性を確保する方法としては、樹脂含浸ということが考えられ、例えば、ロール等を用いて繊維等のシート状の材料に含浸させる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
そして、熱風炉、真空脱ガス炉等の高温でかつ加圧状態又は減圧状態で使用しても、気密シール性を大幅に向上することができ、上述した容器耐用性を向上することのできる断熱煉瓦が要望されている。
ここで、通気遮断層は、断熱煉瓦内部の気孔内に充填される非通気性の材料によって構成することができ、非通気性の材料は、例えば、断熱煉瓦自体よりも熱伝導率の小さな材料を採用するのが好ましい。
また、断熱煉瓦としては、例えば、JIS R2611「耐火断熱れんが」に規定される特性を有するものを採用することができ、具体的には、本発明は、次の表1に規定される各種耐火断熱煉瓦に適用することができる。
ここで、通気遮断層を形成する樹脂としては、シーリング材等に用いられる種々の樹脂材料を採用することができる。
具体的な樹脂材料としては、シリコーン系、変成シリコーン系、ポリサルファイド系、ポリウレタン系のものを採用することができるが、シリコーン系を採用するのが好ましい。
また、成分系も1成分系、2成分系いずれも採用することができ、硬化タイプも反応硬化型、湿気硬化型、酸素硬化型、熱硬化型のいずれを採用することもできるが、熱硬化型のものを採用するのが好ましい。
また、熱硬化型のものを採用することにより、常温状態の粘度の低い状態で断熱煉瓦への含浸を促進させ、含浸後熱をかけて硬化させることにより、強固な通気遮断層を形成することができる。特に、高温雰囲気で断熱煉瓦を使用する場合、未硬化の部分があっても、使用中に硬化の促進を期待することができるので、好適である。
ここで、具体的に好適な材料としては、上述した種々の樹脂材料のうち、シリコーン系の樹脂を採用するのが好ましい。
そして、このような樹脂を採用することにより、断熱煉瓦の低温側端面と、この断熱煉瓦を囲む鉄皮との間の空間の温度を100℃以上に維持しても、熱分解による樹脂の消失を防ぐことができるため、該空間で水蒸気等による結露が生じる可能性を防止して、鉄皮の耐久性を向上させることができる。
一方、100℃未満の熱分解温度の樹脂を採用した場合、上記のように断熱煉瓦を囲む鉄皮との間の空間の温度を100℃以上に維持した場合、樹脂が消失してしまう。従って、断熱煉瓦の低温側端面の温度を樹脂の熱分解温度よりも低くしなければ気密シール性を確保できないので、断熱煉瓦の低温側端面と鉄皮の間の空間の温度が100℃よりも低くなる可能性が高く、水蒸気等による結露が生じる可能性があるため、鉄皮の耐久性上好ましくない。
さらに、シリコーン系樹脂を採用することにより、耐熱性のみならず、耐紫外線性等の耐候性にも優れているので、気密シール性に富んだ断熱煉瓦の耐久性を大幅に向上させることができる。
ここで、通常は、断熱煉瓦の厚みの略半分が通気遮断層となるのが好ましい点を考慮して、50mm以上と設定することができる。
この発明によれば、通気遮断層が少なくとも50mm以上の深さで形成されていることにより、通風路や真空脱ガス炉等に本発明に係る断熱煉瓦を用いた際、熱膨張差等で断熱煉瓦の一部が外側に押し出されても、押し出されて露出した側面部分にも樹脂が含浸されているため、断熱煉瓦を用いた断熱壁の気密シール性を確実に維持することができる。
ここで、樹脂の含浸は、煉瓦端面の浸漬側とは反対側の端面を開放端として、毛細管現象を利用して含浸を行ってもよく、断熱煉瓦をすべて浸漬槽中の樹脂に浸漬して含浸させてもよい。
また、樹脂の粘度は、気孔内に充填可能な液体粘度として100mPa・s以上とし、圧送可能な液体粘度として10000mPa・s以下とすることが好ましい。
さらに、浸漬による断熱煉瓦への樹脂の含浸は、例えば、常温〜40℃で5分〜15分程度浸漬させることにより行うことができる。
この発明によれば、粘度が100mPa・s以上10000mPa・s以下の樹脂が投入された浸漬槽に断熱煉瓦を上記のような条件で浸漬するだけで、通気遮断層を形成することができるため、前述したJIS規格品の汎用断熱煉瓦を用いて簡単に本発明に係る断熱煉瓦を製造することができる。
ここで、真空状態における真空度としては、13.3Pa(0.1Torrを換算した値)程度とするのが好ましい。
この発明によれば、真空状態で樹脂の含浸を行うことにより、より確実に気孔に樹脂を含浸させることができるため、全体に気孔内に樹脂が含浸された極めて気密シール性の高い断熱煉瓦を製造することができる。
(7) 本発明において、前記樹脂の含浸は、加圧状態又は常圧状態と、真空状態とを繰り返して行われるのが好ましい。
ここで、加圧状態又は常圧状態とする場合、例えば、0.1MPa〜0.2MPa程度とするのが好ましい。
この発明によれば、一旦真空状態で含浸を行って、樹脂を断熱煉瓦内の気孔に浸透しやすくした後、加圧状態又は常圧状態で含浸を行うことにより、断熱煉瓦内の気孔部分により多くの樹脂を含浸させることができるので、樹脂の含浸を短時間で行うことができ、かつ極めて気密シール性の高い断熱煉瓦を製造することができる。
ここで、断熱煉瓦としては、煉瓦の一部を浸漬した断熱煉瓦を採用してもよく、煉瓦全体に樹脂が含浸され、煉瓦表面に樹脂の一部が浸出し、表面を触れるとタック性が残ったものを採用することもできる。
また、耐火構造物は、例えば、熱風炉、真空脱ガス炉等の内外で圧力変動が生じ易いものに本発明を採用するのが好ましい。
また、煉瓦の一部を浸漬した断熱煉瓦を採用した場合、煉瓦に含浸させる樹脂の量を少なくすることができるため、耐火構造物を構成する材料のコスト低減を図ることができる。
一方、煉瓦全体に樹脂が含浸され、表面にタック性が付与されることにより、断熱煉瓦を組み合わせる際に、煉瓦同士を接着する接着剤を省略することが可能となる上、煉瓦間の目地部分の通気を、タック性を有する煉瓦同士の密着により防止することができるので、一層良好な気密シール性を有する耐火構造物とすることができる。
〔第1実施形態〕
(1)材料仕様
本発明の実施形態に係る断熱煉瓦は、断熱煉瓦にシリコーン系樹脂を含浸させることにより製造される。
具体的には、断熱煉瓦としては、次の2種類の断熱煉瓦を採用している。尚、各々の品種の断熱煉瓦は、熱風炉、真空脱ガス炉等を含む種々の容器に使用することができる。
■ 品種1(JIS R2611 A類7種相当)
再加熱収縮率2%を超えない温度:1500℃
嵩比重:0.75以下
圧縮強さ:0.98(MPa)以上
平均温度350℃±10℃における熱伝導率:0.26(W/(m・K))以下
残存線変化率が0.5%を超えない温度:1600℃
嵩比重:0.70以下
600℃における熱伝導率:0.36(W/(m・K))以下
鉄分含有量:1.0質量%
品種1及び品種2の形状は、いずれも、230mm×115mm×75mmの直方体形状のものを採用した。
このSE1880は、
粘度が800(mPa・s)、
針入度が85(1/10mm)、
比重が0.97、
熱分解温度が400℃程度、
の特性を具備するものである。
尚、これ以外のシリコーン系樹脂として、同社のSE1885(2液硬化型)、SE1886(2液硬化型)についても同様に使用できることが確認できた。
これらの物性値及び熱分解温度は下記の通りである。
SE1885 SE1886
粘度(mPa・s) 400 1100
針入度(1/10mm) 90 50
比重 0.97 0.98
熱分解温度 400℃程度 400℃程度
前記材料を用いて本実施形態に係る断熱煉瓦は、次の手順で製造される。
まず、シリコーン系樹脂が投入された樹脂槽中に断熱煉瓦を浸漬し、いわゆるどぶ付け状態とした後、樹脂槽毎断熱煉瓦を真空槽内に配設し、真空槽内の空気を脱気して真空含浸を実施した。真空含浸における到達真空度は、略13.3Pa(0.1Torrを換算した値)として15分間保持した。
次に、一旦真空槽内を常圧状態(0.1MPa)に戻し、再度前述と同様の条件で真空含浸を合計3回繰り返した。尚、常圧状態を加圧状態(0.2MPa)で行っても略同様の結果が得られることが確認された。
最後に、シリコーン系樹脂が含浸された断熱煉瓦を、50℃12時間の条件で加熱して含浸された樹脂を硬化させ、断熱煉瓦を完成させた。
得られた断熱煉瓦は、シリコーン系樹脂が全体に含浸され、外表面にシリコーン系樹脂が滲みだした状態で、手を触れるとタック性を有していた。
前記の手順で製造された品種1及び品種2の断熱煉瓦について、断熱煉瓦の熱勾配方向の厚みを230mmとし、稼働面側(高温側端面)を800℃、背面側(低温側端面)を20℃という条件で熱処理を行ったところ、稼働面側から略120mmで樹脂が消失していたが、背面側にはシリコーン系樹脂が残存していた。
この熱処理を行った断熱煉瓦から熱勾配方向に沿って試験片を切りだし、試験片の周囲を完全に密閉することができる試験片ホルダに装着し、稼働面に空気又は窒素ガス等の非酸化性ガスを供給して、例えば略0.5MPaの加圧状態として、稼働面側の空間及び背面側の空間の圧力差を測定したところ、変化が認められず、通気性が0であることが確認された。
また、稼働面側を、例えば13.3Pa(0.1Torrを換算した値)の真空状態として、稼働面側の空間及び背面側の空間の圧力差を測定したところ、同様に変化が認められず、通気性が0であることが確認された。
従って、適用される部位に応じて断熱煉瓦1に含浸させる樹脂12の種類を適切に選択することにより、断熱煉瓦1に熱勾配が生じて、高温側の樹脂が消失したとしても、低温側の樹脂12が残存するために、断熱煉瓦1の気密シール性が維持される。
次に、前述した品種1又は品種2の断熱煉瓦1を実際の圧力容器に適用した例について説明する。
(4-1)熱風炉への適用
図示を略したが、熱風炉は、例えば内燃式熱風炉であれば、その蓄熱期においては、熱風炉本体に燃料ガスと燃焼用空気を、燃焼装置で燃焼して燃焼排ガスを発生させ、熱風炉内の蓄熱装置内で燃焼排ガスの顕熱を蓄熱させる。
一方、送風期には、空気を送風用空気供給口より送風して蓄熱装置で熱交換させて熱風とし、送風管を介して高炉へ送風する。
送風期には蓄熱装置側から空気を送風し、蓄熱装置内で空気は1000℃〜1200℃に予熱され、熱風炉のドーム部を通って送風管を介して高炉に送風される。
従って、熱風炉の内部は1400℃の高温になるとともに、内圧も392.4Pa〜490.5Pa(4〜5kgf/cm2を換算した値)と高圧になる。
このような熱風炉の隔壁2は、高温かつ高圧に耐えるため、図3に示されるように、内側から耐火煉瓦21、断熱煉瓦22、及び鉄皮23を備えて構成される。
断熱煉瓦22は、前述した材料仕様及び製造方法によって得られた2品種の断熱煉瓦のうち、例えば、品種1のものが採用され、耐火煉瓦21の外周を囲むように配置されている。尚、各断熱煉瓦22間の目地部分には、目地材料等を介在させることなく、突き合わせた断熱煉瓦22同士のタック性によって互いに密着している。
鉄皮23は、断熱煉瓦22の外周に隙間を設けて断熱煉瓦22を囲むように配置されている。尚、このように鉄皮23及び断熱煉瓦22の間に隙間を設けているのは、内側の断熱煉瓦22が熱間挙動により動いても、断熱煉瓦22に応力が作用して破損することを避けるためである。
真空脱ガス炉は、減圧雰囲気を利用して溶鋼の脱ガス処理を行う炉であり、例えばRH真空脱ガス炉3の場合、図4に示されるように、上部槽31及び下部槽32を備え、下部槽32には、2本の環流管33が設けられ、さらにその先端に浸漬管34が設けられ、浸漬管34は、取鍋35内の溶鋼に浸漬される。
操業に際しては、上部槽31及び下部槽32からなる脱ガス槽内を真空にして溶鋼を内部に吸い上げ、図4では図示を略したが、浸漬管34の一方に形成されたガス吹き込み口からAr又はN2ガスを吹き込んで脱ガス槽内に溶鋼を流入飛散させると槽内で脱ガスが行われ、脱ガスが行われた溶鋼は他方の浸漬管34から取鍋35内に戻される。
このため、真空脱ガス炉3の隔壁は、上部槽31及び下部槽32共に、内側から耐火煉瓦36、断熱煉瓦37、及び鉄皮38を備えて構成される。
耐火煉瓦36は、アルミナ系又はアルミナ−スピネル系の材料から構成され、脱ガスを行う空間を平面視で略円形状に囲んでいる。
鉄皮38は、断熱煉瓦37のさらに外周に隙間を設けて断熱煉瓦37を囲むように配置されている。
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
前述の第1実施形態では、断熱煉瓦1は、図1及び図2に示されるように、内部の気孔11にシリコーン系樹脂12がすべて含浸されていた。
これに対して第2実施形態に係る断熱煉瓦4は、図5に示されるように、断熱煉瓦4の背面(低温側端面)4Bから一定深さ寸法Dまでにシリコーン系樹脂が含浸され、稼働面(高温側端面)4Aに樹脂含浸が施されていない点が相違する。
断熱煉瓦4における含浸深さ寸法Dは、用いられる炉壁の熱間挙動によって決定することができるが、一般には、Dを略50mm程度に設定しておくのがよい。
また、含浸深さ寸法Dを略50mm程度とすることにより、炉内の熱の影響で一部の断熱煉瓦4が断熱壁の外側に押し出されても、露出した側面4Cにもシリコーン樹脂が含浸されているため、気密シール性を確実に維持することができる。尚、含浸深さ寸法Dが断熱煉瓦4の動きよりも小さく設定されている場合、側面4Cの樹脂が含浸されていない気孔部分が断熱壁外面に露出し、そこから炉内流が侵出する可能性があるため、含浸深さ寸法が略50mm以上の断熱煉瓦4で炉壁を構成することが重要である。
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
前記第1実施形態では、熱風炉の隔壁2の断熱煉瓦22間の目地部分、及び真空脱ガス炉3の隔壁における断熱煉瓦37間の目地部分は、突き合わせて表面のタック性により断熱煉瓦22、37同士を密着させていたが、本発明はこれに限られない。すなわち、接着剤等を用いて断熱煉瓦同士を密着固定させてもよい。尚、この場合、接着剤としては、断熱煉瓦37と接着性のよい材料を選択するのが好ましく、例えば、含浸した樹脂と同じ樹脂を用いて密着固定するとなお好ましい。
前記第1実施形態では、真空状態及び常圧状態を繰り返して真空含浸を行っていたが、これに限らず、真空状態の後、真空槽内を加圧するサイクルを繰り返して含浸を行ってもよい。
その他、本発明の実施の際の具体的な構造及び形状等は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造等としてもよい。
Claims (8)
- 熱勾配の低温側端面から所定深さの通気を遮断する通気遮断層を有することを特徴とする断熱煉瓦。
- 通気遮断層が断熱煉瓦に樹脂を含浸させて形成されていることを特徴とする請求項1記載の断熱煉瓦。
- 通気遮断層が100℃以上の熱分解温度の樹脂から構成されていることを特徴とする請求項2に記載の断熱煉瓦。
- 通気遮断層が低温側端面から高温側に50mm以上の深さで形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の断熱煉瓦。
- 粘度が100mPa・s以上10000mPa・s以下の樹脂が投入された浸漬槽に、少なくとも煉瓦端面を浸漬し、断熱煉瓦内部に樹脂を含浸させて通気遮断層を形成することを特徴とする断熱煉瓦の製造方法。
- 前記樹脂の含浸は、真空状態で行われることを特徴とする請求項5記載の断熱煉瓦の製造方法。
- 前記樹脂の含浸は、加圧状態又は常圧状態と、真空状態とを繰り返して行われることを特徴とする請求項6記載の断熱煉瓦の製造方法。
- 請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の断熱煉瓦を組み合わせて断熱層として構成されることを特徴とする耐火構造物。
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