本発明の第1実施形態の可動ニーボルスタを図1〜図4を参照して以下に説明する。
図1は、車両1の車室2内の前部を示す斜視図であって、車室2内には前部にインストルメントパネル3が設けられている。このインストルメントパネル3には、ステアリングホイール4に連結された図示略のステアリングシャフトを支持するステアリングサポートメンバ5が車幅方向に沿って設けられており、このステアリングサポートメンバ5の両端が車体骨格部材である図示略のフロントピラーに固定される。このステアリングサポートメンバ5は、剛性の高い円筒状の鋼材からなっており、左右のフロントピラーを結ぶことで車体剛性を高める機能も有している。
そして、ステアリングサポートメンバ5には、運転席10側となる左側に図2にも示すように第1実施形態の可動ニーボルスタ11が設けられており、助手席12側となる右側に後述する第2実施形態の可動ニーボルスタ13が設けられている。
図1に示すように、第1実施形態の可動ニーボルスタ11は、インストルメントパネル3の運転席10側の下部に設けられており、運転席10に着席した運転者の下肢を保護する。この可動ニーボルスタ11は、車室2内の意匠面を構成し運転席10に着席した運転者の下肢に対向する対向面部14をインストルメントパネル3から出没させて運転者の下肢に対し可逆的に進退させるものである。なお、インストルメントパネル3における可動ニーボルスタ11の上側には車両後方に突出するコラムカバー15が設けられ、このコラムカバー15の車両後方側にステアリングホイール4が設けられている。よって、対向面部14は、コラムカバー15の車両前方に位置する。
図3は、可動ニーボルスタ11の意匠面を構成する対向面部14を有する図1に示すカバー17を除く機構構成を示す斜視図である。可動ニーボルスタ11は、ステアリングサポートメンバ5に車幅方向に所定の間隔をあけて固定される複数具体的には一対の衝撃吸収部材25を有している。これらの衝撃吸収部材25は、板状の鋼材がプレス成形されて形成されるもので、それぞれが、全体として面状をなしステアリングサポートメンバ5の運転者から見て裏側に固定されて下方に延出する面部26と、この面部26の下縁部から湾曲しつつ車室内側に折り返す湾曲部(曲部)27と、全体として面状をなして湾曲部27の面部26とは反対側の縁部から上方に延出する面部28とを有しており、側面視が略U字状をなしている。
面部26は、ステアリングサポートメンバ5に上端部において固定されるとともにステアリングサポートメンバ5から下方に延出する上板部30と、上板部30の下縁部から屈曲して車室内側に若干延出する段板部31と、段板部31の車室内側の端縁部から屈曲して下方に延出する下板部32とを有しており、下板部32の下縁部に湾曲部27が繋がっている。そして、面部26には、上板部30、段板部31および下板部32にかけて、車幅方向中央に、上方に開口する切欠状の逃げ部33が形成されている。面部28の車幅方向中央には、上部側に偏って穴部35が形成されている。
ここで、衝撃吸収部材25には、強度を向上するための一対の段差状のビード部36が、それぞれ車幅方向の位置は一定で、面部26の段板部31における逃げ部33側から、下板部32、湾曲部27および面部28まで延在形成されている。また、湾曲部27および面部28には、一対のビード部36の間位置にも強度を向上するための凸状のビード部37が穴部35の手前位置まで形成されている。
また、可動ニーボルスタ11は、ステアリングサポートメンバ5の各衝撃吸収部材25の取付位置における車室内側に固定されるとともに、下方に延出して対応する衝撃吸収部材25に固定される一対の連結部材40を有している。これら一対の連結部材40も板状の鋼材がプレス成形されて形成されるもので、それぞれが、対応する衝撃吸収部材25の上板部30の段板部31側に固定される。これら連結部材40も、対応する衝撃吸収部材25の逃げ部33と車幅方向の位置を合わせて下方に開口する切欠部41が車幅方向中央に形成されており、正面視が略コ字状をなしている。
さらに、可動ニーボルスタ11は、板状の鋼材がプレス成形されて形成され、ステアリングサポートメンバ5の各衝撃吸収部材25の取付位置における下面に固定されるとともに、車室内側に延出して対応する衝撃吸収部材25の面部28の穴部35よりも上側に固定される一対の連結部材43を有している。
一対の衝撃吸収部材25には、それぞれの車室内側の面部28の他方の面部26側に、板状の鋼材がプレス成形されて形成される支持台部45が固定されている。これらの支持台部45は、面部28の穴部35よりも湾曲部27側に固定される図示略の底板部と、底板部の車幅方向両側から立ち上がる一対の壁板部47とを有しており、一対の壁板部47の湾曲部27側には、車幅方向に沿って回動軸48が架設されている。また、一対の壁板部47は、面部28の穴部35の両側に位置するように底板部よりも湾曲部27とは反対側に延出しており、これらの延出部分にも車幅方向に沿って回動軸49が架設されている。この回動軸49は湾曲部27から離間した位置に設けられている。
一対の支持台部45の両回動軸48には、意匠面を構成する対向面部14を有する図1に示すカバー17を保持する保持部材52が車室内側に延出した状態で回動可能に支持されている。この保持部材52も、板状の鋼材がプレス成形されて形成されるもので、両側の回動軸48の相反側に支持され、各回動軸48から車室内側に延出する一対の延出板部53と、これら延出板部53の延出先端側同士を結ぶ連結板部54と、連結板部54から各延出板部53と対向するように車室外側に延出する一対の対向板部55とを有している。車幅方向一側の延出板部53および対向板部55には、車幅方向に沿う回動軸56が架設されており、車幅方向他側の延出板部53および対向板部55にも、車幅方向に沿う回動軸56が架設されている。ここで、連結板部54にカバー17が取り付けられると、その対向面部14が連結板部54に沿う姿勢となる。
そして、保持部材52の車幅方向一側の回動軸56とこれと同側の支持台部45の回動軸49とを結ぶように駆動部58が配置されており、保持部材52の車幅方向他側の回動軸56とこれと同側の支持台部45の回動軸49とを結ぶように駆動部58が配置されている。その際に、これら一対の駆動部58は、それぞれ、配設される側の衝撃吸収部材25に対し外側にある回動軸56から面部28の穴部35を通ってこの衝撃吸収部材25の内側に挿入されて衝撃吸収部材25の内側にある回動軸49に連結されている。つまり、駆動部58は一部が衝撃吸収部材25内に位置するように設けられている。
これら一対の駆動部58は、それぞれ、シリンダ60と、シリンダ60内に設けられ、図示略のリードスクリュを介して導入される電動モータの回転力でシリンダ60に対し進退するシャフト61とを有する剛体であり、全体として伸縮可能になっている。駆動部58は、シリンダ60が衝撃吸収部材25側の回動軸49に回動可能に連結され、シャフト61が保持部材52の回動軸56に回動可能に連結されていて、シリンダ60に対しシャフト61の進退で保持部材52つまり対向面部14を回動させて運転者に対して進退させる。つまり、一対の駆動部58は、同期して同様に駆動されることになり、シャフト61を最も後退させた縮長状態では保持部材52を車室外側に位置させることになり、このとき、保持部材52およびこれに固定されたカバー17の対向面部14は、図3に二点鎖線、図4に実線で示すように運転者に対して最も後退した待機位置に位置し、対向面部14は図4に実線で示すように車室内側に向けて前上がりの姿勢となる。他方、シャフト61を最も前進させた伸長状態では保持部材52を車室内側に位置させることになり、このとき、保持部材52およびこれに固定されたカバー17の対向面部14は図1,図4に二点鎖線、図3に実線で示すように運転者側に最も前進した突出端位置に位置し、対向面部14は図4に二点鎖線で示すように車室内側に向けて待機位置よりも水平に近い角度で前上がりの姿勢となる。なお、カバー17と保持部材52とが運転者に対し対向面部14を進退させる回動部62を構成しており、上記構成から、この回動部62がその車両前方側に回動中心である回動軸48を配置している。
このような運転席10側に設けられる第1実施形態の可動ニーボルスタ11は、対向面部14が運転者に対して最も後退した待機位置で待機しており、例えば運転者の運転席10への着座が運転席10に設けられた図示略の着座センサで検出されると、回動部62が車両前側の回動軸48を中心に下向きに回転し対向面部14を運転者に向け前進させた突出端位置に位置する。これにより、車両衝突時等にこの対向面部14で運転者の下肢を支承する。つまり、運転席10の運転者は図4に示すペダル63に足を載せていることから車両前方への移動時に足を逆V字状に角度を小さくする方向に曲げることになるが、このように曲がることで足は上方向に移動することになるため、水平に近い角度でインストルメントパネル3の下方に突出した対向面部14が足の上方向への移動に対し衝撃を良好に吸収する。
つまり、車両衝突時に運転者の膝の上昇で対向面部14が荷重を受けると、対向面部14が回動軸56に一端側で連結された駆動部58を押圧することになり、その結果、駆動部58の他端側に連結された回動軸49を支持する支持台部45およびこれが固定された衝撃吸収部材25の車室内側の面部28が車室外側に荷重を受けることになる。この荷重が所定値を超えると、駆動部58に連結された衝撃吸収部材25の車室内側の面部28が、下肢からの入力方向において相対する車室外側の面部26に向けて移動し、これら面部26を繋ぐ湾曲部27を塑性変形で曲げるとともに連結部材43を塑性変形で曲げて衝撃を吸収することになる。このとき、車室内側の面部28とともに車室外側の面部26に近づく駆動部58が車室外側の面部26に形成された逃げ部33に挿通することでこの面部26に当接することなくストロークする。
なお、可動ニーボルスタ11は、運転席10用の図示略のシートベルト装置の着脱に応じて進退が制御されるようになっており、運転席10用のシートベルト装置が装着された状態では対向面部14が待機位置に戻り、運転席10用のシートベルト装置が未装着の状態では対向面部14が突出端位置に位置する。これにより、運転者は下肢用のスペースが狭くならないようにシートベルト装置を装着することになり、よって、可動ニーボルスタ11は、シートベルト装置の装着を促すリマインダ装置としての役割も果たすことになる。
以上に述べた第1実施形態の可動ニーボルスタ11によれば、回動部62が、その車両前方側に回動中心である回動軸48を配置しているため、対向面部14はその車両後方側が下がることになり、運転席10に着席している運転者の車両前方の足先のスペースを確保することができる。また、運転者はペダル63に足を載せていることから車両前方への移動時に足を曲げることになるが、このように曲がることで足は上方向に移動することになるため、この方向に対し対向面部14を略垂直に配置可能となる。したがって、効率的なエネルギ吸収が可能となる。
また、インストルメントパネル3から出没可能な対向面部14が、コラムカバー15の車両前方に位置するため、没入状態の回動部62とインストルメントパネル3との見切り線がコラムカバー15の存在で目立たなくなり、外観性が向上する。
加えて、対向面部14を運転者に対して進退させる駆動部58が衝撃吸収部材25内に設けられているため、全体としてコンパクトになり、インストルメントパネル3における配置スペースを広く必要とせず、小さなスペースで完結できる。したがって、インストルメントパネル3における配置スペースを縮小でき、他の機能部品の設計自由度への影響を抑えることができる。
また、衝撃吸収部材25は、下肢からの荷重を対向面部14から駆動部58を介して受けると、駆動部58に連結された一方の面部28が下肢からの入力方向において相対する他方の面部26に向けて移動し、これら面部26,28を繋ぐ湾曲部27を曲げて衝撃を吸収することになるが、このとき面部28とともに面部26に近づく駆動部58が面部26に形成された逃げ部33に挿通することで大きくストロークできる。したがって、コンパクト化を図っても、衝撃吸収部材25が大きく変形できて、高い衝撃吸収性能を確保できる。
さらに、衝撃吸収部材25の面部28における湾曲部27から離間した位置に駆動部58が連結されているため、衝撃吸収部材25が下肢からの荷重を対向面部14から駆動部58を介して受けたときに、面部28が湾曲部27を効率良く曲げることになり、より効率的な衝撃吸収が可能となる。
なお、駆動部58のシリンダ60を回動可能に支持する回動軸49をシャフト61の進退軸線に対しオフセットさせることにより、回動軸49をシャフト61の進退軸線上に直交するように配置した場合に比べて、シャフト61の同じストロークに対してシャフト61の先端の回動軸56の前進量を多くできる。
次に、本発明の第2実施形態の可動ニーボルスタを図1,図2および図5を参照して以下に説明する。
図1に示すように、第2実施形態の可動ニーボルスタ13は、インストルメントパネル3の助手席12側の下部に設けられて助手席12に着席した乗員の下肢を保護する。この可動ニーボルスタ13は、車室2内の意匠面を構成し、助手席12に着席した乗員の下肢に対向する対向面部70をインストルメントパネル3から出没させてこの乗員の下肢に対し可逆的に進退させるものである。ここで、図1では、対向面部70が乗員に対し後退した状態を実線で、前進した状態を二点鎖線で示している。この第2実施形態の可動ニーボルスタ13は図2にも示すように助手席12側となる右側に設けられている。
図5は、第2実施形態の可動ニーボルスタ13の意匠面を構成する対向面部70を有する図1に示すカバー71を除く機構構成を示す斜視図である。可動ニーボルスタ13は、ステアリングサポートメンバ5に車幅方向に所定の間隔をあけて固定される複数具体的には一対の衝撃吸収部材75を有している。これらの衝撃吸収部材75は、板状の鋼材がプレス成形されて形成されるもので、それぞれが、全体として面状をなしステアリングサポートメンバ5の乗員から見て表側に固定されて車室内側(乗員側)に延出する面部76と、この面部76の車室内側の縁部から湾曲しつつ車室外側に折り返す湾曲部77と、全体として面状をなして湾曲部77の面部76とは反対側の縁部から車室外側に延出する面部78とを有しており、側面視が略U字状をなしている。
面部76の湾曲部77側には、車幅方向中央に、穴状の逃げ部80が形成されている。
また、面部78の湾曲部77とは反対側には、車室外側に開口する切欠部81が車幅方向中央に形成されている。
ここで、衝撃吸収部材75には、強度を向上するための凸状のビード部82が、車幅方向の中央部に、面部76の逃げ部80よりも車室外側から、湾曲部77および面部78まで延在形成されている。
また、可動ニーボルスタ13は、ステアリングサポートメンバ5の各衝撃吸収部材75の取付位置における下側に固定されるとともに、車室内側に延出して対応する衝撃吸収部材75に固定される一対の連結部材85を有している。これらの連結部材85も板状の鋼材がプレス成形されて形成されるもので、それぞれが対応する衝撃吸収部材75の面部76の逃げ部80よりも車室外側に固定される。これら連結部材85には、車幅方向の中央に、車室内側に開口する切欠部86が形成されており、平面視略コ字状をなしている。
さらに、可動ニーボルスタ13は、各衝撃吸収部材75の上側の面部76に固定されるとともに、連結部材85の切欠部86を通って下方に延出して下側の面部78に固定される一対の連結部材88を有している。これらの連結部材88も板状の鋼材がプレス成形されて形成されるもので、下部が下端側ほど幅広となる形状をなしており、この部分の車幅方向の中央に、下側に開口する切欠部89が形成され、正面視略逆Y字状をなしている。
一対の衝撃吸収部材75の下側の面部78の上面には、板状の鋼材がプレス成形されて形成される支持台部91がそれぞれ固定されている。支持台部91は、面部78の湾曲部77側に車幅方向に沿って立設される中間板部92と、この中間板部92の車幅方向両側から屈曲して車室外側に延出する一対の壁板部93と、各壁板部93の下縁部から相互離間方向に延出して面部78の切欠部81よりも湾曲部77側に固定される一対(一方のみ図示)の底板部94と、底板部94の車幅方向両側縁部から下方に屈曲し車室内側に延出する一対の支持板部95とを有している。一対の壁板部93には、車幅方向に沿う回動軸96が架設されており、一対の支持板部95にも、車幅方向に沿う回動軸97が架設されている。
一対の支持台部91の両回動軸97には、対向面部70の意匠面を構成するカバー71を保持する保持部材100が回動可能に連結されている。この保持部材100も、板状の鋼材がプレス成形されて形成されるもので、両側の回動軸97のそれぞれの両端側に連結されて車室内側に延出する二対の延出板部101と、これら延出板部101の延出先端側同士を結ぶとともに車室外側に延出する主板部102と、主板部102の車室外側から上方に延出する二対の支持板部103とを有している。車幅方向一側の一対の支持板部103には、車幅方向に沿って回動軸104が架設されており、図示は略すが車幅方向他側の一対の支持板部103にも、車幅方向に沿って回動軸104が架設されている。ここで、主板部102にカバー71が取り付けられると、その対向面部70が主板部102に沿う姿勢となる。
そして、保持部材100の車幅方向一側の回動軸104とこれと同側の支持台部91の回動軸96とを結ぶように駆動部108が配置されており、保持部材100の車幅方向他側の回動軸104とこれと同側の支持台部91の回動軸96とを結ぶように駆動部108が配置されている。その際に、これら一対の駆動部108は、それぞれ対応する衝撃吸収部材75に対し外側にある回動軸104から面部78の切欠部81を通って衝撃吸収部材75の内側に挿入されて衝撃吸収部材75の内側の回動軸96に連結されている。つまり、駆動部108は一部が衝撃吸収部材75内に位置するように設けられている。
これら一対の駆動部108は、それぞれ、シリンダ110と、シリンダ110内に設けられ図示略のリードスクリュを介して導入される電動モータの回転力でシリンダ110に対し進退するシャフト111とを有する剛体であり、全体として伸縮可能になっている。駆動部108は、シリンダ110が衝撃吸収部材75側の回動軸96に回動可能に連結され、シャフト111が保持部材100の回動軸104に回動可能に連結されていて、シリンダ110に対しシャフト111の進退で保持部材100を回動させて乗員に対して進退させる。つまり、一対の駆動部108は、同期して同様に駆動されることになり、シャフト111を最も後退させた縮長状態では保持部材100を図5に二点鎖線で示すように車室外側に位置させることになり、このとき、保持部材100に保持されたカバー71の対向面部70は乗員に対して最も後退した待機位置に位置し、車室内側に向けて前上がりの姿勢となる。他方、シャフト111を最も前進させた伸長状態では図5に実線で示すように保持部材100を車室内側に位置させることになり、このとき、保持部材100は乗員側に最も前進した突出端位置に位置し、対向面部70は車室内側に向けて待機位置よりも鉛直に近い角度で前上がりの姿勢となる。なお、カバー71と保持部材100とが運転者に対し対向面部70を進退させる回動部112を構成しており、上記構成から、この回動部112がその車両後方側に回動中心である回動軸97を配置している。
このような第2実施形態の可動ニーボルスタ13は、保持部材100で保持されたカバー71の対向面部70が乗員に対して最も後退した待機位置で待機しており、例えば乗員の助手席12への着座が助手席12に設けられた図示略の着座センサで検出されると、回動部112が車両後側の回動軸97を中心に車両前後方向の後向きに回転し、対向面部70を乗員に向け前進させた突出端位置に位置する。これにより、車両衝突時等にこの対向面部70で乗員の下肢を支承する。つまり、助手席12の乗員はペダルに足を載せていないことから車両前方への移動時に足をそのまま前方に移動させることになるため、鉛直に近い角度でインストルメントパネル3の下方に突出した対向面部70が足の車両前方への移動に対し衝撃を良好に吸収する。
つまり、車両衝突時に乗員から荷重を受けると、保持部材100がその回動軸104に一端側が連結された駆動部108を押圧することになり、その結果、駆動部108の他端側を回動軸96で支持する支持台部91およびこれが固定された衝撃吸収部材75の下側の面部78が前上がりに荷重を受けることになる。この荷重が所定値を超えると、駆動部108に連結された衝撃吸収部材75の面部78が、下肢からの入力方向つまり前上がり方向において相対する上側の面部76に向けて移動し、これら面部76,78を繋ぐ湾曲部77を塑性変形で曲げるとともに連結部材88を塑性変形で曲げて衝撃を吸収することになる。このとき、下側の面部78とともに上側の面部76に近づく駆動部108が上側の面部76に形成された逃げ部80に挿通することでこの面部76に当接することなくストロークする。
なお、この可動ニーボルスタ13も、助手席12用の図示略のシートベルト装置の着脱に応じて進退が制御されるようになっており、助手席12用のシートベルト装置が装着された状態では対向面部70が待機位置に戻り、助手席12用のシートベルト装置が未装着の状態では対向面部70が突出端位置に位置する。これにより、運転者は下肢用のスペースが狭くならないようにシートベルト装置を装着することになり、よって、可動ニーボルスタ13は、シートベルト装置の装着を促すリマインダ装置としての役割も果たすことになる。
以上に述べた第2実施形態の可動ニーボルスタ13によれば、助手席12の乗員はペダル等に足を載せていないことから車両前方への移動時に足をそのまま前方に移動させることになるが、回動部112がその車両後方側に回動中心である回動軸97を配置しているため、対向面部70はその車両前方側が下がることになり、足の移動方向に対し対向面部70を良好に対向させることができる。したがって、効率的なエネルギ吸収が可能となる。
また、回動部112がその車両後方側、つまりインストルメントパネル3との見切り線近傍に回動中心である回動軸97を有しているため、インストルメントパネル3と没入状態の回動部112との合わせ精度が高く、外観性が向上する。
次に、本発明の第3実施形態の可動ニーボルスタを主に図6を参照して以下に、第1実施形態との相違部分を中心に説明する。
第3実施形態の可動ニーボルスタ115は、第1実施形態と同様に、インストルメントパネル3の運転席10側に位置するもので運転席10に着席した運転者の下肢を保護するものである。
第3実施形態の可動ニーボルスタ115は、第1実施形態と同様の一対の衝撃吸収部材25と、一対の連結部材40と、一対の連結部材43を有している。そして、一対の衝撃吸収部材25には、それぞれ、板状の鋼材がプレス成形されて形成される一対の支持板116が面部28の車室内側に固定されている。これらの支持板116は、面部28の車室内側に固定される固定板部117と、固定板部117から穴部35を介して車室外側に延出する延出板部118とを有しており、同じ穴部35に挿通された一対の延出板部118の車室外側に車幅方向に沿って図示略の回動軸が架設されている。
また、一対の衝撃吸収部材25の湾曲部27の内側にはそれぞれ回動軸120が架設されており、これら回動軸120には、図1に示すカバー17を保持して回動部62を構成する一対の保持部材121が車室内側に延出した状態で回動可能に支持されている。これらの保持部材121も、板状の鋼材がプレス成形されて形成されるもので、それぞれ、対応する回動軸120の両側に支持され、この回動軸120から車室内側に延出する一対の延出板部122と、これら延出板部122の延出先端側同士を結ぶ連結板部123とを有している。各保持部材121には、それぞれ一対の延出板部122に、車幅方向に沿う回動軸124が架設されている。ここで、連結板部123にカバー17が取り付けられると、その対向面部14が連結板部123に沿う姿勢となる。
そして、各保持部材121の回動軸124と同側の一対の支持板116間の図示略の回動軸とを結ぶように駆動部126がそれぞれ配置されている。
これら一対の駆動部126は、それぞれ、ベース127と、ベース127に対し進退するシャフト128と、ベース127内に設けられた図示略の駆動機構でシャフト128をベース127に対し進退させる電動モータ129とを有している。駆動部126は、ベース127が衝撃吸収部材25側の図示略の回動軸にブラケット130を介して回動可能に連結され、シャフト128が保持部材121の回動軸124に回動可能に連結されていて、ベース127に対しシャフト128の進退で保持部材121つまり図1に示すカバー17の対向面部14を回動させて運転者に対して進退させる。
つまり、一対の駆動部126は、同期して同様に駆動されることになり、シャフト128を最も後退させた縮長状態ではそれぞれ連結された保持部材121を車室外側に位置させることになり、このとき、一対の保持部材121に固定されたカバー17の対向面部14は、運転者に対して最も後退した待機位置に位置し、車室内側に向けて前上がりの姿勢となる。他方、シャフト128を最も前進させた伸長状態では一対の保持部材121を車室内側に位置させることになり、このとき、対向面部14は運転者側に最も前進した突出端位置に位置し、待機位置よりも水平に近い角度で前上がりの姿勢となる。
このような運転席10側に設けられる第3実施形態の可動ニーボルスタ11も、カバー17と保持部材121とからなる回動部62がその車両前方側に回動中心である回動軸120を配置しているため、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
次に、本発明の第4実施形態の可動ニーボルスタを主に図7を参照して以下に、第2実施形態との相違部分を中心に説明する。
第4実施形態の可動ニーボルスタ133は、第2実施形態と同様に、インストルメントパネル3の助手席12側に位置するもので助手席12に着席した乗員の下肢を保護するものである。
第4実施形態の可動ニーボルスタ133は、第2実施形態と同様の一対の衝撃吸収部材75と、一対の連結部材85と、一対の連結部材88を有している。そして、一対の衝撃吸収部材75には、それぞれ、板状の鋼材がプレス成形されて形成される一対の支持板140が面部78に固定されている。これらの支持板140は、面部78の車室内側に固定される固定板部141と、固定板部141から切欠部81を介して上側に延出する延出板部142と、固定板部141から下方に延出する支持板部143とを有しており、同じ切欠部81に挿通された一対の延出板部142に車幅方向に沿って回動軸144が架設されている。
また、支持板部142の先端には回動軸145が設けられており、第2実施形態に対して、カバー71を保持して回動部112を構成する保持部材100が、それぞれが一対の延出板部101および一対の延出板部103を有するように二つの分割体100Aに分割されており、各分割体100Aが、車両後方側の回動軸145に回動可能に支持されている。第4実施形態において、一対の駆動部135は、それぞれ、ベース136と、ベース136に対し進退するシャフト137と、ベース136内に設けられた図示略の駆動機構でシャフト137をベース136に対し進退させる電動モータ138とを有している。駆動部135は、ベース136がブラケット139を介して回動軸144に回動可能に連結され、シャフト137が分割体100Aの回動軸104に回動可能に連結されていて、ベース136に対しシャフト137の進退で分割体100Aを回動させて乗員に対して進退させる。つまり、一対の駆動部135は、同期して同様に駆動されることになり、シャフト137を最も後退させた待機状態では分割体100Aを車室外側に位置させることになり、このとき、分割体100Aは乗員に対して最も後退した位置に位置し、対向面部70は車室内側に向けて前上がりの姿勢となる。他方、シャフト137を最も前進させた伸長状態では分割体100Aを車室内側に位置させることになり、このとき、分割体100Aは乗員に対して最も前進した位置に位置し、対向面部70は車室内側に向けて待機状態よりも鉛直に近い角度で前上がりの姿勢となる。
このような第4実施形態の可動ニーボルスタ133も、分割体100Aおよびカバー71からなる回動部112がその車両後方側に回動中心である回動軸145を配置しているため、第2実施形態と同様の効果を奏することができる。