JP2008052875A - 潤滑膜形成方法、並びに、潤滑膜を備える摺動体、磁気記録媒体、磁気ヘッドスライダ及びハードディスク - Google Patents

潤滑膜形成方法、並びに、潤滑膜を備える摺動体、磁気記録媒体、磁気ヘッドスライダ及びハードディスク Download PDF

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【課題】基材の表面の一部のみに固定され、かつ十分な耐久性を有する潤滑膜の形成方法を提供すること。潤滑剤が摺動面の一部のみに固定された摺動体、磁気記録媒体、磁気ヘッドスライダ及びハードディスクを提供すること。
【解決手段】炭素原子に結合したOH基22を有する潤滑剤21が塗布された基板10の表面の一部のみに対して、OH基22のOH結合の振動を励起する赤外レーザ光を照射し、表面の一部のみに潤滑膜を形成させるレーザ光照射工程を備える。
【選択図】図2

Description

本発明は、潤滑膜形成方法、並びに、潤滑膜を備える摺動体、磁気記録媒体、磁気ヘッドスライダ及びハードディスクに関する。
ハードディスクドライブにおける磁気記録媒体の表面や磁気ヘッドスライダの表面等、他の部材と摺動等の接触をする、又は、その可能性がある基材の表面(摺動面)には潤滑膜を形成する必要がある。
そして、例えば、特許文献1〜4に開示されるように、基材の表面に潤滑剤を塗布した後に加熱して潤滑剤を基材表面に固着させる方法や、特許文献5に開示されるように、基材の表面に潤滑剤を塗布した後にUVを照射する方法、特許文献6に開示されるように、基材の表面に潤滑剤を塗布した後に中性ラジカルを照射する方法、特許文献7〜9に開示されるように、基材の表面への潤滑剤層の形成時又は形成後に潤滑剤層をプラズマやガス等により表面改質する方法、特許文献10〜14に開示されるように、基材の表面へ極性基を有する潤滑剤を塗布する方法、特許文献15に記載されるように潤滑剤を塗布した後に300nm以下のレーザを照射して潤滑剤の一部を吹き飛ばして薄膜化する方法、特許文献16に記載されているように自己組織化単分子化膜を基材の表面に形成させた後に、潤滑剤を自己組織化単分子化膜に吸着させる方法等の潤滑膜形成方法が知られている。
特開平11−203670号公報 特開2001−93141号公報 特開2000−322734号公報 特開2003−228810号公報 特開平11−35452号公報 特開平6−215367号公報 特開平7−326151号公報 特開2004−152462号公報 特開2002−109718号公報 特開平6−44558号公報 特開平5−143975号公報 特開平5−189752号公報 特開平5−205246号公報 特開平6−172479号公報 特開平11−66555号公報 特開2005−187656号公報
しかしながら、従来の方法では、基材の表面の一部のみに固定され、かつ十分な耐久性を有する潤滑膜を得ることは困難であった。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり基材の表面の一部のみに固定され、かつ十分な耐久性を有する潤滑膜の形成方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は、潤滑剤が摺動面の一部のみに固定された摺動体、磁気記録媒体、磁気ヘッドスライダ及びハードディスクを提供することを目的とする。
本発明に係る潤滑膜の形成方法は、炭素原子に結合したOH基を有する潤滑剤が塗布された基板の表面の一部のみに対して、OH基のOH結合の振動を励起する赤外レーザ光を照射し、基材の表面の一部のみに潤滑膜を形成させるレーザ光照射工程を備える。
本発明に係る潤滑膜の形成方法によれば、赤外レーザ光の照射により潤滑剤のOH基のOH結合の振動が励起される。したがって、潤滑剤のOH基と基材の表面との反応性が高まり、潤滑剤を基材の表面に共有結合により結合させることが容易となり、得られる潤滑膜の耐久性が高くなる。
具体的には、以下のようなメカニズムが考えられる。すなわち、基材の表面には、ダングリングボンドと呼ばれる末端結合手が存在する。通常、このダングリングボンドには、他の原子と結合していない状態、OH基と結合している状態、水分子と水素結合(吸着)している状態等がある。そして、上記の発明によれば、レーザ光の照射により潤滑剤のOH基のOH結合の振動が励起されてOH基が活性化されて反応性が高まり、基材表面のダングリングボンドと結合しやすくなる。したがって、潤滑剤を、例えば炭素原子に結合したOH基由来のO原子を介して、基材表面のダングリングボンドと容易に共有結合させることができる。したがって、基材の表面に潤滑膜がより強く固着され、潤滑膜の耐久性が高まる。
さらに、本発明に係る潤滑膜の形成方法によれば、レーザ光を、基材の表面の一部のみに照射することにより、レーザ光の当たった部分の潤滑剤を選択的に基材表面のダングリングボンドと共有結合させることができるため、基材の表面の一部のみに固定された潤滑膜を容易に得ることができる。したがって、潤滑膜による凹凸を容易に基材の表面に形成することができる。また、必要とされる部分のみに潤滑膜を形成することができるので、潤滑膜の品質管理を容易に行うことができる。
ここで、上記レーザ光照射工程では、波長0.9〜8μmの赤外レーザ光を照射する、又は、赤外レーザによる多光子吸収により波長0.9〜8μmの光に対応するエネルギーを吸収させることが好ましい。特に、波長0.9〜1.1μm、又は、波長2.7〜3.0μmの赤外レーザ光を照射する、若しくは、赤外レーザによる多光子吸収により波長0.9〜1.1μm、又は、波長2.7〜3.0μmの光に対応するエネルギーを吸収させることが好ましい。
また、上記レーザ光照射工程では多光子吸収を行わせ、上記基材の表面、又は、上記潤滑剤のうち基材側の部分に赤外レーザ光の焦点が形成されるように赤外レーザ光を照射することが好ましい。
これによれば、基材の表面付近の潤滑剤のOH基に対して選択的に赤外光の吸収による励起をさせうるので、界面以外での余計な副反応等を抑制できて好ましい。また、多光子吸収においては、焦点以外では光がほとんど吸収されないので、潤滑剤により形成される潤滑剤層が厚くても十分に実施が可能である。
また、上記赤外レーザ光として、ホモジナイザを透過させた赤外レーザ光を用いることも好ましい。この場合、ホモジナイザによりレーザ光の強度分布が面内でフラットとなるので、広い面積を均一な照射強度で迅速に処理可能である。
また、基材の表面に塗布された上記潤滑剤の層は2nm以下の厚みとされていることが好ましい。
これによれば、赤外レーザ光を特に潤滑剤と基材との界面付近に十分に到達させられるため、基材の表面近傍に位置する潤滑剤のOH基への赤外レーザ光の吸収が効率よく行える。
また、赤外レーザ光の照射強度が、60J/cm以下であることが好ましい。
照射強度が60J/cm超であると潤滑剤や基材の表面にダメージを与える場合がある。
具体的には、例えば、赤外レーザ光として赤外パルスレーザ光を照射し、赤外パルスレーザ光の照射強度を60J/cm以下、パルス幅を0.1〜1ms、パルス数を1〜10、パルスの周波数を10〜50Hzとすることが好ましい。
また、上記レーザ光照射工程において、基材の表面温度を200℃以下に維持することが好ましい。
基材の表面温度が200℃超となると、潤滑剤の蒸発や劣化が起こる場合や、基材の劣化が起こる場合がある。
また、上記潤滑剤はフッ化有機化合物であることが好ましい。
フッ化有機化合物を潤滑剤として用いると高い潤滑性能及び撥水性能を発揮するが、従来基材への固定が困難であった。しかしながら、本発明では、このような潤滑剤を基材に十分に固定できるので、潤滑性能及び耐久性に優れた潤滑膜を容易に形成できる。
また、基材の表面は、炭素材料により形成されていることが好ましい。特に炭素材料は、表面の保護膜として十分な性能を有するが、化学的に安定した物質であるために潤滑剤の固定が困難であった。しかしながら、本発明によれば、炭素材料により形成された基材の表面に対しても潤滑剤を十分に固定できる。
上記潤滑膜は複数のドットパターンであることが好ましく、そのドット径は0.9〜100μmであることが好ましい。
これによれば、潤滑膜が他の部材と接触するときの接触面積を小さくすることができる。また、基材の表面にさらに潤滑剤層を備える場合には、潤滑剤の流動性をドットパターンによるアンカー効果により制御することができる。
本発明の潤滑膜形成方法は、上記レーザ光照射工程の後に、基材の表面に固定されていない潤滑剤を除去するクリーニング工程をさらに備えることが好ましい。
これによれば、基材の表面に流動する潤滑剤がほとんど存在しない潤滑膜が得られる。
さらに、本発明の潤滑膜形成方法は、上記クリーニング工程の後に、基材の表面に潤滑剤を塗布する潤滑剤再塗布工程をさらに備えることが好ましい。
これによれば、塗布された潤滑剤の層の表面に凹凸を持たせることができる。
本発明に係る摺動体は、摺動面の一部のみに潤滑膜が形成され、潤滑膜を構成する分子がC−O結合を有し、C−O結合のO原子が摺動面の原子と共有結合により結合している。
本発明に係る摺動体によれば、摺動面の一部のみに潤滑膜が形成されていることから、摺動面の潤滑特性を一定の範囲で自在に変化させることができる。さらに、本発明に係る摺動体によれば、潤滑膜の耐久性が十分に高いため、振動や衝撃等により、他の部材と摺動面が接触し、摺動した場合に、摺動面からの潤滑膜の脱落を十分に防止することできる。さらにまた、本発明に係る摺動体によれば、潤滑膜による凹凸を基材の表面に形成することができる。また、必要とされる部分のみに潤滑膜を形成することができるので、潤滑膜の品質管理を容易に行うことができる。
なお、本発明に係る摺動体は、上述の潤滑膜形成方法によって容易に形成することができる。
上記潤滑膜を構成する分子は、複数のフッ素原子を含む有機基を有することが好ましい。
フッ素原子を含む有機基を有する分子により潤滑膜が構成されることにより、高い潤滑性能が発揮されるため、このような潤滑膜を有する摺動体は潤滑性能に優れる。
上記摺動面は、炭素材料により形成されていることが好ましい。これにより、摺動面が十分に保護される。
また、上記潤滑膜は複数のドットパターンであることが好ましく、そのドット径は0.9〜100μmであることが好ましい。
これによれば、摺動面に凹凸が形成されるため、撥水効果が得られ、多湿下でも水滴が付着しづらい。
また、上記摺動面におけるドットパターンが存在していない部分とドットパターンの表面とに、潤滑剤分子が物理吸着してなる潤滑剤層を有することが好ましい。
これによれば、潤滑剤の流動性をドットパターンによるアンカー効果により制御することができる。
また、上記潤滑剤層の表面において、ドットパターンが存在していない部分よりもドットパターンが存在している部分の方が突出していることが好ましい。
これによれば、ドットパターンによるアンカー効果が向上し、潤滑剤の流動性をより高度に制御することができる。
本発明に係る磁気記録媒体は、上述の摺動体を備え、摺動体内に磁気記録層を有する。
また、上記磁気記録媒体は、摺動体が円板状であり、潤滑膜が円板状の摺動面のうちの、半径方向内側部、半径方向中央部、及び、半径方向外側部の少なくともいずれかの環状領域に形成されていることが好ましい。
本発明に係る磁気ヘッドスライダは、上述の摺動体を備え、摺動面に配置された磁気記録素子及び/又は磁気読取素子を有する。
本発明に係る磁気ヘッドスライダは、摺動面に、底部と、底部より突出した第1凸部とがあり、底部と第1凸部とのうちいずれかの表面に上記潤滑膜を備えることが好ましい。
本発明に係る磁気ヘッドスライダは、摺動面に、底部と、底部より突出した第1凸部と、第1凸部の周囲に設けられ、かつ第1凸部よりも低い第2凸部とがあり、第1凸部と、底部と、第2凸部とのうち少なくともいずれかの表面に上記潤滑膜を備えることも好ましい。
本発明に係る磁気ヘッドスライダは、上記磁気記録素子及び/又は磁気読取素子を含むセンサー部の表面に上記潤滑膜を備えることも好ましい。
本発明に係るハードディスクは、上述した磁気記録媒体と磁気ヘッドスライダとを備える。
本発明によれば、基材の表面の一部のみに固定され、かつ十分な耐久性を有する潤滑膜の形成方法を提供することができる。さらに、本発明によれば、潤滑剤が摺動面の一部のみに固定された摺動体、磁気記録媒体、磁気ヘッドスライダ及びハードディスクを提供することができる。
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明においては、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面においては、寸法比率は説明のものとは必ずしも一致していない。
まず、簡単のため単純な平板上の摺動体の摺動面の一部のみに潤滑膜を形成する方法について説明する。
(潤滑剤塗布工程)
図1に基づき、処理対象となる基材について説明する。基材10は、他の部材と摺動などの接触をする、又は、その可能性がある摺動面Sを有するものである。基材10の材質は特に限定されない。例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン等の金属、アルミナ等の金属酸化物、アルティック(Al2O3-TiC)等のセラミック、シリコン、ガラス、炭素材料(アモルファスカーボン)等の無機材料や、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエチレンナフタレート、ポリ塩化ビニル、環状炭化水素基含有ポリオレフィンなどの高分子化合物等が挙げられる。また、これら基材表面には、NiP、NiP合金、他の合金から選ばれる1種以上の膜をスパッタリング、真空蒸着等の物理的蒸着法(PVD:physical vapor deposition)、若しくは電解メッキ等により形成することができる。もちろん、基材10が多層構造であってもよいのは言うまでもない。
なお、本実施形態では、一例として、基材10としてCVD(chemical vapor deposition)法により作成された炭素系保護膜であるダイアモンドライクカーボン(アモルファスカーボン)を使用した場合を説明する。
基材10の表面には、通常、ダングリングボンド12と呼ばれる末端結合手が存在する。このダングリングボンド12には、他の原子と結合していないもの12a、OH基と結合しているもの12b、水分子と水素結合(吸着)しているもの12c等がある。もちろんこれ以外の分子と結合(吸着)している場合もある。
このようなダングリングボンド12は、炭素材料に限らずあらゆる固体材料に見られるものであり、特に共有結合性の強い材料に顕著に見られるものである。
なお、潤滑剤を塗布する前に、基材10を加熱する(例えば、80〜200℃、30分以上)、基材10の表面に紫外線(例えば、波長50〜350nm)を照射する、又は、基材10を減圧雰囲気下(例えば、1×10-1Torr以下)、不活性ガス雰囲気下(例えば、窒素、アルゴン等)、若しくは、低湿度環境下(例えば、RH10%以下)に保持すること等により、ダングリングボンド12に結合する分子(例えば水等)又は官能基(例えばOH基等)を脱離させておくことが好ましい。加熱や紫外線の照射は、真空中あるいは、窒素やアルゴン等の不活性ガス中、又は、低湿度環境(RH10%以下)で行うことが好ましい。なお、ダングリングボンドに結合する分子や官能基が残っていても本発明の実施が可能であることはいうまでもない。なお、基材にダメージを与えない程度の加熱温度やUV照射の強さとすることが好ましい。また、オゾン処理により表面の有機物等を除去しておくことも好ましい。
続いて、図2に基づき、基材10の表面に潤滑剤21を塗布して潤滑剤層20を形成する工程について説明する。なお、図2中、基材10の表面のダングリングボンドは全て他の原子と結合していないものとして描かれているが、これは簡略化のためであり、実際には図1のようにOH基と結合しているもの、水分子と水素結合(吸着)しているもの等も存在している。
潤滑剤21としては、炭素原子に結合したOH基を有する化合物であればよい。ここで言う炭素原子に結合したOH基とは、カルボキシル基(−COOH)やフェノール基等の複雑な官能基に含まれるものも含む概念である。
このような潤滑剤21としては、炭素原子に結合したOH基を有する炭化水素類の他、アルコール類(例えば、エルシルアルコール、リシノリルアルコール、アラシディルアルコール、カプリルアルコール、カプリンアルコール、ポリオレフィンアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、ポリアルキレングリコール等)、カルボン酸類(例えば、脂式カルボン酸、芳香族カルボン酸、オキソカルボン酸等)、炭素原子に結合したOH基を有するエステル類(例えば、炭素原子に結合したOH基を有するチオエステル、リン酸エステル、硝酸エステル等)、炭素原子に結合したOH基を有するエーテル類(例えば、炭素原子に結合したOH基を有するポリフェニルエーテル、ジメチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジエチルエーテル等)、炭素原子に結合したOH基を有するハロゲン化有機化合物(例えば、炭素原子に結合したOH基を有するハロゲン化エーテル、ハロゲン化アルコール、ハロゲン化カルボン酸等)が挙げられる。特に、炭素原子に結合したOH基を有するフッ化有機化合物が好ましく、例えば、炭素原子に結合したOH基を有するパーフルオロポリエーテルなどの炭素原子に結合したOH基を有するフッ化エーテル、フッ化アルコール、フッ化カルボン酸、炭素原子に結合したOH基を有するフッ化カルボン酸アルキルエステル、炭素原子に結合したOH基を有するフッ化ジエステルジカルボン酸化合物、炭素原子に結合したOH基を有するフッ化モノエステルモノカルボン酸化合物等が挙げられる。これらの中でも、特に、炭素原子に結合したOH基を有する鎖状フッ化有機化合物、特に、鎖状フッ化エーテルが好ましい。
特に、炭素原子に結合したOH基を有するフッ化エーテルの中でも、炭素原子に結合したOH基を有するパーフルオロポリエーテルが好ましく、特に、Fomblin Zとして知られる式(1)の化合物や、Fomblin Yとして知られる式(2)の化合物、Krytoxとして知られる式(3)の化合物、Demnumとして知られる式(4)の化合物等の、炭素原子に結合したOH基を末端に有する鎖状フルオロポリエーテルが特に好ましい。
X−CF2−O(−CF2−CF2−O−)m(−CF2−O−)nCF2−X (1)
X−CF2−O(−CF(CF3)−CF2−O−)m(−CF2−O−)nCF2−X (2)
X−CF2−O(−CF(CF3)−CF2−O−)mCF2−CF2−X (3)
X−CF2−CF2−O(−CF2−CF2−CF2−O−)mCF2−X (4)
ここで、m、nはそれぞれ1以上の整数を示す。Xは、−CF3、−CH2−OH、−CH2(−O−CH2−CH2−)p−OH、−CH2−O−CH(OH)−CH2−OHからなる群から選択されるいずれかの官能基であり、各化合物につき少なくとも一つはOH基を有する官能基を備える。ここで、Pは1以上の整数を示す。鎖状フルオロポリエーテルの分子量は特に限定されないが、その中心分子量は500から4000程度が好ましい。
また、潤滑剤21として、炭素原子に結合したOH基を有さない化合物、例えば、溶媒等を含んでもよいのは言うまでもない。
このような潤滑剤21の塗布は、公知の方法、例えば、真空蒸着法、PVD法、CVD法、浸漬法(ディップ法)、スピンコート法、スプレーコート法等により行うことができる。また、潤滑剤塗布前の基材10の表面に対して、真空中あるいは不活性ガス中での加熱や紫外線照射等の清浄化処理を行った場合には、清浄化された基材10の表面が、塗布時に大気中の酸素や水分、反応性の高い他の不純物(コンタミナント)等によって汚染されることを防ぐべく、この塗布を、真空中あるいは不活性ガス中で行うことが好ましい。
ここで潤滑剤21の塗布により得られる潤滑剤層20の厚みは特に限定されないが、赤外レーザを効率よく特に基材10と潤滑剤層20の界面及びその近傍へ到達させるべく、2nm以下程度とすることが好ましい。なお、多光子吸収の場合には、膜厚は特に限定されない。
(レーザ光照射工程)
続いて、上述の潤滑剤21が塗布された基板10の表面の一部のみに対して、OH基のOH結合の振動を励起すべく赤外レーザ光を照射するレーザ光照射工程について説明する。
まず、赤外レーザ光について説明する。OH結合は、図3に示すように概ね0.9〜8μm程度の波長の赤外光を吸収しやすいので、この波長0.9〜8μmに対応するエネルギーを吸収させることが可能な赤外レーザを照射することが好ましい。なお、図3において、点線bがベースライン、実線aがOH基のOH結合による吸収強度である。特に、0.9〜1.2μm(図3のW2の範囲)、2.7〜3.0μm(図3のW1の範囲)の波長に対応するエネルギーを吸収させることができる赤外レーザを照射することが好ましい。
具体的には、1光子吸収の場合には、例えば、0.9〜8μmの波長の赤外レーザ光を照射すればよく、特に、0.9〜1.2μm又は2.7〜3.0μmの波長の赤外レーザ光を照射すればよい。一方、2個以上の光子を吸収させる多光子吸収の場合には、所定の波長の赤外レーザ光により、波長0.9〜8μmの赤外レーザ光、好ましくは、0.9〜1.2μm又は2.7〜3.0μmの波長の赤外レーザ光に対応するエネルギーを吸収させればよい。例えば、エネルギーの和が上述のエネルギー範囲となる複数個の光子を同時又は連続的に供給すればよい。すなわち、多光子吸収の場合は、1光子吸収の場合よりも長い波長の光を照射することとなる。
赤外レーザ光の照射方法は特に限定されないが、例えば、図4の(a)に示すようなレーザ照射系LS1が例示できる。レーザ光源50からのレーザ光Lをコリメータ56で平行光にし、ホモジナイザ54により面内での強度分布を均一化してから潤滑剤層20の潤滑剤21に照射すればよい。この形態は、特に、1光子吸収を利用してOH基の振動を励起する場合に好適である。レーザ光源50としては、炭酸ガスレーザ、YAGレーザ等が挙げられる。
ここでホモジナイザ54としては、2つのレンズを組み合わせたものや、回折格子を用いたもの等公知のものを採用でき、ガウス分布型の面内強度分布を十分にフラットな面内強度分布にできるものが好ましい。
また、潤滑剤層20へのレーザ光の入射角度は、図4の(a)に示すように90°が最も効果的であるが、反射光から光源等を保護する必要がある場合には、入射角度を30〜60°とすることができる。
潤滑剤層20及び基材10へ照射する赤外レーザ光のスポット径は、潤滑剤層20の面積と対応させればよい。なお、照射面積が非常に大きい場合には、潤滑剤層20に対してビームスポットが相対的にスキャンするようにしてもよい。
また、図4の(b)に示すようなレーザ照射系LS2も考えられる。この照射系は、特に、2光子吸収等の多光子吸収に特に適するものである。コリメータ56により平行光としたレーザ光を、2次元走査光学系56によりスキャンし、スキャンされたレーザ光は、対物レンズ58により集光されて基材10の表面、又は、潤滑剤層20のうち基材10側の部分に焦点が形成されるように照射される。これにより、潤滑剤21のうち界面近傍の部分に集中してレーザ光を照射できる。
2次元走査光学系56は、例えば、2つのガルバノミラースキャナーなどにより構成され、図示しないスキャナドライバから制御されて潤滑剤層20上のレーザスポットを基材上を二次元に走査する。なお、基材側を走査してもよい。
レーザ光源50としては、上述の光源でもよいが、多光子吸収を可能とすべく、フェムト秒レーザ等の超短パルスレーザを供給するレーザ光源を用いることが好ましい。
また、いずれの場合であっても赤外レーザ光の照射強度は特に限定されないが、基材への影響や潤滑剤の蒸発等の影響を低減すべく60J/cm以下であることが好ましく、十分な振動励起を起こすべく0.01mJ/cm以上とすることが好ましい。なお、OH基の結合エネルギーは428〜510kJ/mol程度であり、OHの結合を切るためにはこれを超えるエネルギーを与えなければならないが、エネルギーが強すぎると潤滑剤の蒸発や不要な反応、基材への損傷などの問題を発生させるので、レーザ照射エネルギーは個々の試料に合わせて最適化する必要がある。
赤外レーザ光としてパルスレーザ光を照射する場合には、レーザ光の照射強度を60J/cm以下、パルス幅を0.1〜1ms、パルス数を1〜10、パルスの周波数を10〜50Hzとすることでレーザ処理部分の不要な温度上昇を抑制することができ好適である。
また、レーザ光源は複数あってもよい。
そして、このような赤外レーザ光の照射により、潤滑剤21のOH基のOH結合の振動が励起される。したがって、潤滑剤21のOH基と基材10の表面との反応性が高まり、潤滑剤21を基材10の表面に化学的に結合させることが容易となる。
特にこのような赤外レーザ光による固定化では、加熱処理やUV処理等に比べて選択的にOH基の加熱ができるので、少ないエネルギーで効果的な加熱が可能であり、また、短時間処理が可能である。したがって、熱劣化や、熱歪、不要な熱分解、材料の蒸発等が低減できる。また、図4(b)のような装置を用いた2光子吸収によれば、特に、基材の表面部分を選択的に処理できるのでより効率的である。
次いで、レーザ光を、基材10の表面の一部のみに照射する方法について説明する。
まず、図2及び図4の(a)に示すように、レーザ光源50と潤滑剤層20との間にマスクMを配置する方法がある。この方法によれば、レーザ光の当たった部分の潤滑剤を選択的に基材表面のダングリングボンドと共有結合させることができるため、基材の表面の一部のみに固定された潤滑膜を容易に得ることができる。
また、図4の(b)に示すレーザ照射系LS2により、集光されたレーザ光を基材10の一部のみに照射することもできる。
さらに、図5に示すように基材10上に保護膜(マスク)28を設け、この上に潤滑剤21を塗布し、潤滑剤層20を形成させた後に、基材10の表面全体にレーザ光を照射してもよい。このような方法によれば、レーザ光照射により形成される潤滑膜と基材との間の境界がより明瞭となるので好ましい。
このような保護膜28の構成材料としては、例えば、アモルファスカーボン系材料、アルミナ、チタンカーバイトなどのセラミックス材料、非鉄金属系材料、ポリマー系のフォトレジスト材料等が挙げられる。
このような構成材料を含む保護膜28は、例えば、蒸着法(CVD法, PVD法)、スプレーコート法、スピンコート法、ディップコート法等の公知の方法により形成することができる。
なお、このような保護膜28は、レーザ光照射工程後に、例えば、ブラスト処理、プラズマ処理等の物理的エッチング、化学エッチング、剥離等の公知の方法により取り除くことができる。
次に、レーザ照射後の潤滑剤21の状態について、図6に基づき考察する。レーザ光の当たった部分の潤滑剤21はOH基のOH結合の振動が励起されるので、OH基が活性化され、OとHとの解離等が起こって、基材10表面のダングリングボンド12と結合しやすくなる。したがって、レーザ光の当たった部分の潤滑剤21は、OH基由来のO原子を介して基材10表面のダングリングボンド12と共有結合24により結合し、潤滑膜30を構成する分子23を形成する。なお、潤滑膜30を構成する分子23は、潤滑剤21の炭素原子に結合したOH基におけるH原子を除いた残基である。よって、潤滑剤21がフッ化有機化合物であった場合には、潤滑膜30を構成する分子23が複数のフッ素原子を含む有機基を有することは言うまでもなく明らかである。
ここで、図6のように基材10の表面における潤滑膜30の形成されている部分及び形成されていない部分の表面の両方に潤滑剤層20が存在し、かつ潤滑膜30の形成されている部分及び形成されていない部分との間で、潤滑剤層20の表面の高さがほぼ同一である状態を状態Aとする。
なお、上記の方法によって形成される潤滑膜30は複数のドットパターンであることが好ましく、そのドット径は0.9〜100μmであることが好ましい。さらに、ドットパターンの形成された部分におけるドットパターンの密度は、潤滑剤の流動性を阻害しすぎない観点から、5〜50%であることが好ましい。ドットの形状に関しては、特に限定されないが、例えば、円形、楕円形、方形、フラクタルパターン等が挙げられる。
また、上記の方法によって形成される潤滑膜30は、基材10の表面の一部のみにベタに形成してもよく、基材10の表面の一部又は全部に複数のドットパターンとして形成してもよい。
このようにして、摺動面の一部のみに潤滑膜30が形成された摺動体が得られる。
(クリーニング工程)
続いて、潤滑膜30を構成する分子23以外の、基材10の表面に固定されていない潤滑剤21や、不要な副生物や異物、遊離油分等を潤滑膜30から除去(delube)する、必要に応じて行うクリーニング工程について図7に基づき説明する。
クリーニングは、フッ素系溶剤、エーテル、ヘキサン、アルコールなどの有機溶剤や、水、CO(ガス、超臨界流体)などの洗浄媒体を用い、これらの洗浄媒体と潤滑膜30とを接触させることにより行うことができる。クリーニング時には、潤滑膜30に対して超音波振動を与えてもよい。
また、低分子物質の除去が主目的であれば、真空引きや加熱により低分子物質を揮発させることによるクリーニングも可能である。これにより、基材10の表面に固定されていない潤滑剤21が少ない状態となる。クリーニング後の潤滑膜30の膜厚は特に限定されないが、2nm以下が好ましい。
なお、必要であれば、クリーニング後に残った潤滑剤21を加熱する(例えば、80〜200℃、30分以上)、あるいは、潤滑剤21に紫外線を照射して、潤滑剤21の残存するOH基やそれ以外の官能基を基材10のダングリングボンド12と結合させることもできる。
ここで、図7のように潤滑膜30以外の潤滑剤21が除去された状態を状態Bとする。
(潤滑剤再塗布工程)
さらに、クリーニング工程後の基材10の表面に潤滑剤21を再度塗布する、必要に応じて行う、潤滑剤再塗布工程について、説明する。
潤滑剤の再塗布は、例えば、蒸着法(CVD法, PVD法)、スプレーコート法、スピンコート法、ディップコート法等の公知の方法によって行う。
このように潤滑剤の再塗布を行うことによって、基材10上に表面に凹凸のある潤滑剤層20を形成することができる。
ここで、図8のように潤滑剤層20の表面において、潤滑膜30の存在していない部分よりも潤滑膜30の存在している部分が突出している状態を状態Cとする。
このようにして、本発明の好適な実施形態にかかる潤滑膜形成方法が完成する。
なお、ここでは、簡単のため単純な平板上の摺動体についてのみ説明したが、摺動体は、他の部材と摺動等の接触をする、又は、その可能性がある部材であれば特に限定されず、その具体例としては、摺動面を有するベアリング、例えば、すべり軸受、転がり軸受等や、以下に詳しく説明するハードディスクドライブにおける磁気記録媒体及び磁気ヘッドスライダが挙げられる。
[ハードディスク]
続いて、上記実施形態をハードディスクに適用した場合について説明する。
図9は、本実施形態に係るハードディスクドライブDの概略構成図である。ハードディスクDは、後述する磁気記録媒体40と磁気ヘッドスライダ60とを備え、高速回転する磁気記録媒体40の摺動面(図9の上面)に磁気ヘッドスライダ60によって磁気情報を書込み、また、磁気記録媒体40の摺動面から磁気ヘッドスライダ60によって磁気情報を読み出すものである。
図9において、ハードディスクDは、軸2の回りを回転する複数の円板状の磁気記録媒体40、磁気記録媒体40に対する読み書きを行う磁気ヘッドスライダ60、磁気ヘッドスライダ60を磁気記録媒体40のトラック上において位置決めするためのアセンブリキャリッジ部3、磁気ヘッドスライダ60における書込み・読取り動作を制御するための読み書き回路4、ハードディスクDにかかる加速度等の情報を検知するセンサ部15、磁気ヘッドスライダ60及び磁気記録媒体40間の間隔を制御するギャップ制御部16、磁気ヘッドスライダ60が退避される場所である退避部17、及び、これらを覆う筐体19を主として備えている。
アセンブリキャリッジ部3には、複数のアーム5が設けられている。これらアーム5はボイスコイルモータ(VCM)6によって軸7を中心にして角揺動可能であり、アーム5はこの軸7に沿った方向にスタックされている。各アーム5の先端部には、ヘッドジンバルアセンブリ14が取り付けられている。各ヘッドジンバルアセンブリ14の先端には、磁気ヘッドスライダ60が各磁気記録媒体40の表面に対向するように設けられている。ここで、磁気ヘッドスライダ60における磁気記録媒体40の表面と対向する面をエアベアリング面ABSとする。磁気記録媒体40は単数であっても良く、アーム5は一枚の磁気記録媒体40に対して一方の面にのみ配置されていても良い。
アセンブリキャリッジ部3が、アーム5を回転させると、磁気ヘッドスライダ60は、磁気記録媒体40の半径方向、すなわちトラックラインを横切る方向に移動する。また、アセンブリキャリッジ部3は、外部からの信号に基づいて、アーム5を回転させて、磁気ヘッドスライダ60を退避部17に退避させることができる。
[磁気記録媒体]
次に、本実施形態に係る磁気記録媒体40について説明する。図10の部分断面図に示すように、磁気記録媒体40は、基板125上に、下地層126、磁気記録層129、保護膜127、及び、保護膜127の表面の一部に形成された潤滑膜128がこの順で積層された構造を有する。
基板125の材料としては、例えば、ガラス、アルミニウム、Al系合金ガラス、プラスチック、セラミック、カーボン、シリコン、酸化表面を有するSi単結晶基板等を例示でき、また、フレキシブルディスク媒体や磁気テープ媒体の場合には、ポリアセテート等の合成樹脂を例示することができる。
下地膜126の材料に関して制限はなく、ハードディスク用磁気記録媒体の場合にはCr、Ni-P等を例示することができる。さらに、下地膜126の材料として、水平磁気記録媒体の場合にはCr合金等の非磁性材料が挙げられ、垂直磁気記録媒体の場合にはFe、Ni、Coを含む材料等の軟磁性材料等が挙げられる。特に、垂直磁気記録媒体の場合には、軟磁性下地層の下に、軟磁性下地層の結晶性の向上あるいは基板との密着性の向上のためにさらに、Ti、Ta、W、Cr、Pt、あるいはこれらを含む合金、あるいはこれらの酸化物、窒化物等の材料等からなる下地層をさらに有することができ、また、軟磁性下地層と記録層との間の中間には、Ru、Pt、Pd、W、Ti、Ta、Cr、Si、あるいはこれらを含む合金、あるいはこれらの酸化物、窒化物等の非磁性材料から成る中間層を有することができる。
磁気記録層129の材料としては、例えば、Coを主成分とし、少なくともPtを含み、必要に応じてCrを含む材料や、さらに酸化物を含んだ材料等が挙げられる。
保護膜127の材料としては、例えば、1〜10nm程度のダイアモンドライクカーボン等の炭素材料が挙げられる。ここでは、保護膜127の表面が前述の「基材の表面」に相当する。
そして、潤滑膜128が、前述の潤滑膜30に対応する。潤滑膜30を構成する分子は特に限定されないが、炭素原子に結合したOH基を末端に有する鎖状フルオロポリエーテルのOH基のH原子を除いた残基等の複数のフッ素原子を含む有機基を有することが特に好ましい。また、潤滑膜30を構成する分子の分子量は特に限定しないが、その中心分子量は500から4000程度が好ましい。
なお、図10における磁気記録媒体40では、潤滑膜128が図7の状態Bのように潤滑剤層を有していないが、図6の状態Aや図8の状態Cのように潤滑剤層を有していてもよい。
次に、磁気記録媒体40において、潤滑膜128が形成されるのに好ましい部位について説明する。
図11の(a),(c),(d)は、コンタクト・スタート・ストップ(CSS)方式の磁気記録媒体40を摺動面側から見た平面図である。なお、CSS方式の磁気記録媒体とは、ディスクの回転停止時に磁気ヘッドスライダと磁気記録媒体とが接触するCSSゾーン33(半径方向内側部に相当)を設けたものを指す。
本実施形態の磁気記録媒体40は、CSSゾーン33の他、データ部32(半径方向中央部に相当)及び外周部31(半径方向外側部に相当)を有し、これらのうち少なくともいずれかの領域に潤滑膜が複数のドットパターンとして形成されていることが好ましい。
図11の(b)は、ドットパターンの拡大図であるが、ドット径dは0.9〜100μmであることが好ましい。なお、ドットの形状に関して、図11の(b)では、円形として描かれているが、これに限られず、例えば、楕円形、方形、フラクタルパターン等であってもよい。
図11の(a)に示すようにデータ部32に潤滑膜128が複数のドットパターンとして形成されている磁気記録媒体40Aにおいては次の(1)〜(4)の効果が得られる。
(1)潤滑膜128が十分な耐久性を有するため、振動や衝撃等により、磁気記録媒体40が磁気ヘッドスライダ60に接触し摺動した場合に、摺動面からの潤滑膜128の脱落を十分に防止することができる。
(2)潤滑膜128が複数のドットパターンであることにより摺動面に凹凸が形成され、磁気記録媒体40と磁気ヘッドスライダ60との間の接触する可能性のある面積を減少させるため、磁気記録媒体40が磁気ヘッドスライダ60に接触した場合の摩擦と摩耗とを防止することができる。
(3)潤滑膜128が複数のドットパターンであることにより摺動面に凹凸が形成されるため、多湿下でも水滴が付着しづらい撥水効果が得られる。
(4)金子らによる日本機械学会論文集B66-644,139(2000)からも推測されるように、(3)で説明した撥水効果により、磁気記録媒体40と磁気ヘッドスライダ60との間の流動抵抗が減少するため、磁気ヘッドスライダ60の浮上安定性が得られる。
図11の(c)に示すようにCSS部33に潤滑膜128が複数のドットパターンとして形成されている磁気記録媒体40Bにおいても、磁気記録媒体40Aの場合と同様(1)〜(4)の効果が得られる。
図11の(d)に示すように外周部31に潤滑膜30が複数のドットパターンとして形成されている磁気記録媒体40Cにおいても、磁気記録媒体40Aの場合と同様(1)〜(4)の効果が得られる。
図12の(a),(b)は、ロード・アンロード方式の磁気記録媒体40を摺動面側から見た平面図である。なお、ロード・アンロード方式の磁気記録媒体とは、ディスクの回転停止時に磁気記録媒体40の最外周よりも外にあるランプ(図示せず)に磁気ヘッドスライダ60を乗り上げさせて磁気記録媒体40から磁気ヘッドスライダ60を退避させるものであり、最外周の領域には、ランプから降りてきた磁気ヘッドスライダ60を磁気記録媒体40上にランディングさせるためのデータを書き込まないランディングゾーン34(半径方向外側部に相当)を設けたものを指す。
本実施形態の磁気記録媒体40は、ランディングゾーン34の他、データ部32(半径方向中央部及び内側部に相当)を有し、これらのうちいずれかの領域に潤滑膜128が複数のドットパターンとして形成されていることが好ましい。
図12の(a)に示すようにデータ部32に潤滑膜128が複数のドットパターンとして形成されている磁気記録媒体40Dにおいては、磁気記録媒体40Aの場合と同様(1)〜(4)の効果が得られる。
図12の(b)に示すようにランディングゾーン34に潤滑膜128が複数のドットパターンとして形成されている磁気記録媒体40Eにおいても、磁気記録媒体40Aの場合と同様(1)〜(4)の効果が得られる。
潤滑膜128が複数のドットパターンとして形成された磁気記録媒体40は、図6の状態Aや図8の状態Cのようにさらに摺動面におけるドットパターンが存在していない部分とドットパターンの表面とに、潤滑剤分子が摺動面と物理吸着してなる潤滑剤層を有することが好ましい。
これによれば、ドットパターンとその密度を調整することにより、ドットパターンのアンカー効果により潤滑剤層30中の潤滑剤21の流動性を調整することができる。また、上述のアンカー効果により、磁気記録媒体40の回転によって生じる遠心力により潤滑剤21が移動して潤滑剤層30の厚みが偏り、厚い部分の潤滑剤層30における潤滑剤21が磁気ヘッドスライダに移着することを防止することができる。さらに、スティクション(磁気記録媒体に磁気ヘッドスライダが吸着する現象)や、ルブピックアップ(磁気記録媒体から磁気ヘッドスライダに潤滑剤が移着する現象)を抑制することができる。
さらに、図8の状態Cの潤滑剤層30を有する場合には、摺動面に凹凸のある潤滑剤30層が形成されるため、特にスティクションやルブピックアップの抑制効果が高い。
さらにまた、図11や図12のように複数のドットパターン128を形成した領域を表面の一部のみに設け、かつドットパターン形成部及びドットパターン非形成部上に潤滑剤層20がある場合には、ドットパターン形成部(例えば図11の(c)のCSS部33)と、ドットパターン非形成部(データ部32、外周部31)とで、潤滑剤の流動性を変えることができる。
以上説明した磁気記録媒体40の製造方法としては、公知の方法により、基板125上に下地層126、磁気記録層129、保護膜127を順に形成した後に、上述の潤滑膜の形成方法により摺動面の一部のみに潤滑膜128を形成すればよい。
[磁気ヘッドスライダ]
次に、本実施形態に係る磁気ヘッドスライダ60について説明する。図13の模式断面図に示すように、磁気ヘッドスライダ60は、基板115上に、下地層116、保護膜117、及び、保護膜117の表面の一部に形成された潤滑膜118がこの順で積層された構造を有する。
基板115の材料としては、例えば、アルミナ・チタン・カーバイド(Al2O3-TiC)焼結体のようなセラミックス材料、アルミナAl2O3等の金属酸化物、Tiのような金属材料、Si、Cのような非金属無機材料、等の非磁性絶縁材料が挙げられる。
下地層116の材料としては、珪素、窒化珪素等が挙げられる。
保護膜117の材料としては、アモルファスカーボン(例えば、ダイアモンドライクカーボン、グラファイトカーボン、水素添加カーボン、窒素添加カーボン、フッ素添加カーボン等)や各種金属添加カーボン等の炭素材料、WC、WMoC、ZrN、BN、B4C、SiO2、ZrO2等の無機材料が好適であり、例えば、厚み1〜3nm程度とすることができる。ここでは、保護膜117の表面が前述の「基材の表面」に相当する。
そして、潤滑膜118が、前述の潤滑膜30に対応する。潤滑膜30を構成する分子は特に限定されないが、炭素原子に結合したOH基を末端に有する鎖状フルオロポリエーテルのOH基のH原子を除いた残基等の複数のフッ素原子を含む有機基を有することが特に好ましい。また、潤滑膜30を構成する分子の分子量は特に限定しないが、その中心分子量は500から4000程度が好ましい。
次に、図14に示す磁気ヘッドスライダ60の斜視図により、本実施形態の磁気ヘッドスライダ60を説明する。
本実施形態における磁気ヘッドスライダ60は、スライダ150と、このスライダ150の端面上に形成された薄膜磁気ヘッド140とを主として備えており、磁気ヘッドスライダ60は概ね矩形板形状をなしている。図14における手前側の面は、磁気記録媒体40(図9参照)の摺動面に対向配置される磁気記録媒体対向面、すなわち、エアベアリング面(Air Bearing Surface)ABSである。エアベアリング面ABSは、スライダ150及び薄膜磁気ヘッド140により形成されている。磁気記録媒体40が回転すると、この回転に伴って磁気記録媒体40と磁気ヘッドスライダ60との間に形成される空気流によって磁気ヘッドスライダ60が磁気記録媒体40の摺動面から浮上し、エアベアリング面ABSは磁気記録媒体40の摺動面から離隔する。なお、本実施形態では、エアベアリング面ABSが摺動面に対応する。
薄膜磁気ヘッド140は、磁気記録媒体40から磁気情報を読み取る読取り素子72Rと、磁気記録媒体40に磁気情報を書き込む書込み素子72Wと、これら読取り素子72R及び書込み素子72Wを保護するアルミナ等の絶縁性材料製の被覆部65とを主として備える。薄膜磁気ヘッド140において、読取り素子72Rは基板110に近い側、書込み素子72Wは基板110から遠い側に設けられている。
読取り素子72Rや書込み素子72Wとしては、公知のものをそれぞれ任意好適に利用できる。例えば、読取り素子72Rとしては、磁気抵抗効果を利用したMR素子、例えば、GMR素子、AMR素子、TMR素子等を用いることができる。また、書込素子72Wとしては、所定のギャップが形成された磁気回路と、磁気回路を取り囲む薄膜コイルとを備えた誘導型の電磁変換素子を利用することができる。
薄膜磁気ヘッド140におけるスライダ150とは反対の面140aには、電極パッド61a,61b,61c,61dがこの順に設けられている。
そして、書込み素子72Rは接続線(図示しない)によって電極パッド61a,61bと電気的に接続されており、読込み素子72Wは接続線(図示しない)によって電極パッド61c,61dと電気的に接続されている。
このような磁気ヘッドスライダ60のエアベアリング面ABS上には、キャビティー部79,110(底部に相当)、パッド部73,74,75(第1凸部に相当)、シャロー部78(第2凸部に相当)が設けられている。パッド部73,75は、スライダ150のエアベアリング面ABS上に形成されている。また、パッド部74は、スライダ150のエアベアリング面上から薄膜磁気ヘッド140のエアベアリング面上までに亘って形成されており、基板110のエアベアリング面ABS上に形成されたパッド部74a及び薄膜磁気ヘッド140のエアベアリング面ABS上に形成されたセンサー部(パッド部)74bを有する。これらのパッド部73,74,75は、キャビティー部79,110から磁気記録媒体40の摺動面に向かうように突出している。センサー部74bの表面に、読取り素子72R及び書込み素子72Wの一部が露出している。
パッド部73,74,75のキャビティー部79,110からの突出高さは互いに同じである。
これらのパッド部73,74,75は、磁気記録媒体40上での磁気ヘッドスライダ60の浮上量を安定化させるために設けられるものであり、パッド部の位置、数、形状は特に限定されない。
また、磁気ヘッドスライダ60のエアベアリング面ABSには、さらに、パッド部73,75の周囲に設けられたシャロー部78が形成されている。シャロー部78も、パッド部73,74,75と同様にキャビティー部79,110から磁気記録媒体40に向かって突出している。シャロー部78におけるキャビティー部79,110からの突出高さは、パッド部73,74,75の高さよりも低い。
次に、磁気ヘッドスライダ60において、潤滑膜118が形成されるのに好ましい部位について、磁気ヘッドスライダ60をエアベアリング面ABSから見た平面図、図15〜18に基づき説明する。
本実施形態の磁気ヘッドスライダ60は、シャロー部78、キャビティー部79,110、パッド部73,74,75、センサー部74bのうち少なくともいずれかの表面に潤滑膜118が形成されていることが好ましい。
図15に示すようにシャロー部78に潤滑膜118が形成されている磁気ヘッドスライダ60Aにおいては次の(1)、(2)の効果が得られる。
(1)浮上時に空気流入端となるシャロー部78に不純物(磁気記録媒体40からの潤滑剤等を含む)が付着することにより起こるヘッドクラッシュを防止することができる。
(2)シャロー部78に潤滑膜118を設けることにより、エアベアリング面ABSの表面エネルギーを変化させることができ、それにより空気との摩擦抵抗が変化し、浮上姿勢のピッチ角を微調整することができる。その結果として、磁気ヘッドスライダ60の浮上安定性を向上させることができる。
図16に示すようにキャビティー部79,110に潤滑膜118が形成されている磁気ヘッドスライダ60Bにおいては次の(1)、(2)の効果が得られる。
(1)浮上中に負圧部となるキャビティー部79,110での不純物(磁気記録媒体40からの潤滑剤等を含む)の吸着(Fly Stiction)及びそれらの蓄積を防止することができる。
(2)キャビティー部79,110に潤滑膜を設けることにより、エアベアリング面ABSの表面エネルギーを変化させ、それにより空気との摩擦抵抗を下げることにより、キャビティー部79,110での乱流の発生を抑制し、浮上安定性を向上させることができる。
図17に示すようにパッド部73,74,75に潤滑膜118が形成されている磁気ヘッドスライダ60Cにおいては次の(1)、(2)の効果が得られる。
(1)磁気記録媒体40との接触する可能性のあるパッド部73,74,75の摩擦及び摩耗を防止することが可能となる。これにより、摩耗粉の発生や摩擦の低下による磁気ヘッドスライダと磁気記録ディスクとの接触によるダメージを減少させることが可能となる。
(2)スティクション(磁気記録媒体に磁気ヘッドスライダが吸着する現象)を防止することができ、磁気記録媒体40から磁気ヘッドスライダ60が離れる(Take off)ことが容易となる。
図18に示すようにセンサー部74bに潤滑膜118が形成されている磁気ヘッドスライダ60Dにおいては次の(1)、(2)の効果が得られる。
(1)浮上時に磁気記録媒体40に近づき、接触する可能性の高いセンサー部74bに潤滑膜118を設けることで、センサー部74bのダメージを軽減することができる。
(2)浮上時に空気流出端となるセンサー部74bに不純物(磁気記録媒体40からの潤滑剤等を含む)が付着することにより、磁気記録媒体40と磁気ヘッドスライダ60との間隔が狭まり、接触する問題があった。これに対し、センサー部74bに潤滑膜118を設けることにより、エアベアリング面ABSの表面エネルギーを低下させることが可能となり、スティクション(磁気記録媒体に磁気ヘッドスライダが吸着する現象)やヘッドクラッシュを防止することができる。
なお、上述した各々の潤滑膜118はドットパターンとして形成してあってもよく、ベタに形成してあってもよい。また、図13における磁気記録媒体40では、潤滑膜118が図7の状態Bのように潤滑剤層を有していないが、図6の状態Aや図8の状態Cのように潤滑剤層を有していてもよい。
また、本実施形態における磁気ヘッドスライダ60においては、レーザ光を用いて潤滑膜30の形成を行っているので、熱により磁気記録素子72W及び磁気読取素子72Rが劣化することは少ない。
これらの磁気ヘッドスライダ60の製造方法としては、公知の方法により、基板上に磁気ヘッド140を形成した後、媒体対向面ABSの形成及び研磨を行い、その後、蒸着法(真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法など)等の公知の方法により下地層116、保護膜117を形成する。そして、この保護膜117を基材として、上述の潤滑膜の形成方法を実施すればよい。
(実施例1〜3)
Co基板上に、真空下でダイアモンドライクカーボンを3nmの厚みで形成して基材とした。この潤滑剤層の一部に直径10μmの円形状の開口を複数有するフォトレジストを厚み100nmで形成した。フォトレジストとしてはノボラック樹脂を用いた。その後、潤滑剤を基材の表面に厚み1.2nm程度となるように塗布して潤滑剤層を形成した。潤滑剤としては(1)式のFomblin Zを用いた。その後、波長1.064μmのパルス赤外レーザ光(Nd−YAGレーザ)を潤滑剤層に照射した。レーザのパルス幅は0.3msとした。また、レーザ照射強度は、実施例1〜3の順に、それぞれ、9.6、11.6、13.5J/cm2とした。このようにして、潤滑膜を有するサンプル基板を得た。
(実施例4)
潤滑剤層の一部にフォトレジストを形成する代わりに、直径100μmの円形状の開口を複数有するマスクを介してレーザを照射したこと以外は実施例2と同様にしてサンプル基板を得た。
(比較例1)
レーザを照射しない以外は実施例1と同様にしてサンプル基板を得た。
(評価)
圧子先端が直径8μmのダイヤモンドチップを用い、3.98mNの荷重で、各サンプル基板の潤滑膜(厚み約1.1nm)のスクラッチ試験を行った。そして、スクラッチ傷の深さD及び幅Wを走査型エリプソメータで測定した。結果を図19に示す。
また、実施例3及び比較例については、スクラッチ試験をしていないサンプル表面について、TOF型の二次イオン質量分析計(SIMS)で質量分析し、潤滑剤において特徴的なC−F結合と、磁気記録媒体磁性層に存在するCo原子との比を取得した。結果を図20に示す。
図19から理解されるように、実施例1〜4では、レーザ非照射である比較例に比べて十分な潤滑膜の耐久性が発現した。
また、図20から理解されるように、実施例1〜4では、比較例に比べて基材上に固定された潤滑剤の濃度(面吸着密度)を高められることが明らかとなった。質量分析は真空中で行われるので、レーザ加工されていない基材表面の潤滑剤、即ち、基材と未結合の潤滑剤が蒸発する。したがって、比較例(レーザ強度0)の潤滑膜厚が、実施例におけるレーザ加工部分の潤滑膜厚よりも小さくなったことが考えられる。さらに、実施例においては、レーザ加工により、保護膜であるダイアモンドライクカーボンと潤滑剤分子とが強固に反応し、比較例に比して潤滑剤分子の面吸着密度の高密度化がおこっていることが考えられる。
図1は、本発明の好適な実施形態を示す模式断面図である。 図2は、本発明の好適な実施形態を示す図1に続く模式断面図である。 図3は、OH基のOH結合の吸収波長分布を示すグラフである。 図4は、レーザ照射系の一例を示すものであり、(a)はレーザビームを所定の面積のスポットに拡大して照射する系であり、(b)はレーザビームを集光して照射する系である。 図5は、本発明の他の好適な実施形態を示す模式断面図である。 図6は、本発明の好適な実施形態を示す図2に続く模式断面図である。 図7は、本発明の好適な実施形態を示す図6に続く模式断面図である。 図8は、本発明の好適な実施形態を示す図7に続く模式断面図である。 図9は、本発明の好適な実施形態に係るハードディスク装置を示す模式図である。 図10は、本発明の好適な実施形態に係る磁気記録媒体の部分断面図である。 図11は、本発明の好適な実施形態に係るCSS方式の磁気記録媒体の平面図である。 図12は、本発明の好適な実施形態に係るロード・アンロード方式の磁気記録媒体の平面図である。 図13は、本発明の好適な実施形態に係る磁気ヘッドスライダの模式断面図である。 図14は、本発明の好適な実施形態に係る磁気ヘッドスライダの斜視図である。 図15は、本発明の好適な実施形態に係る磁気ヘッドスライダの平面図である。 図16は、本発明の好適な実施形態に係る磁気ヘッドスライダの平面図である。 図17は、本発明の好適な実施形態に係る磁気ヘッドスライダの平面図である。 図18は、本発明の好適な実施形態に係る磁気ヘッドスライダの平面図である。 図19は、実施例1〜4及び比較例1の条件及びスクラッチ試験の結果を示す表である。 図20は、実施例3及び比較例1において基材表面に固定されている潤滑剤の濃度(密度)を示すグラフである。
符号の説明
10…基材、12…ダングリングボンド、20…潤滑剤層、21…潤滑剤、50…レーザ光源、28…保護膜、30…潤滑膜、40…磁気記録媒体、60…磁気ヘッドスライダ、D…ハードディスク。

Claims (29)

  1. 炭素原子に結合したOH基を有する潤滑剤が塗布された基板の表面の一部のみに対して、前記OH基のOH結合の振動を励起する赤外レーザ光を照射し、前記基材の表面の一部のみに潤滑膜を形成させるレーザ光照射工程を備える潤滑膜形成方法。
  2. 前記レーザ光照射工程では、波長0.9〜8μmの赤外レーザ光を照射する、又は、赤外レーザ光による多光子吸収により波長0.9〜8μmの赤外レーザ光に対応するエネルギーを吸収させる、請求項1に記載の潤滑膜形成方法。
  3. 前記レーザ光照射工程では、波長0.9〜1.1μm又は波長2.7〜3.0μmの赤外レーザ光を照射する、若しくは、赤外レーザ光による多光子吸収により波長0.9〜1.1μm又は波長2.7〜3.0μmの赤外光に対応するエネルギーを吸収させる、請求項1に記載の潤滑膜形成方法。
  4. 前記レーザ光照射工程では多光子吸収を行わせ、前記基材の表面、又は、前記潤滑剤のうち前記基材側の部分に前記赤外レーザ光の焦点が形成されるように前記赤外レーザ光を照射する、請求項1〜3のいずれかに記載の潤滑膜形成方法。
  5. 前記赤外レーザ光として、ホモジナイザを透過させた赤外レーザ光を用いる、請求項1〜3のいずれかに記載の潤滑膜形成方法。
  6. 前記基材の表面に塗布された前記潤滑剤の層は2nm以下の厚みとされている、請求項1〜5のいずれかに記載の潤滑膜形成方法。
  7. 前記赤外レーザ光の照射強度は、60J/cm以下である、請求項1〜6のいずれかに記載の潤滑膜形成方法。
  8. 前記赤外レーザ光として赤外パルスレーザ光を照射し、前記赤外パルスレーザ光の強度を60J/cm以下、パルス幅を0.1〜1ms、パルス数を1〜10、パルスの周波数を10〜50Hzとする、請求項1〜6のいずれかに記載の潤滑膜形成方法。
  9. 前記レーザ光照射工程において、前記基材の表面温度を200℃以下に維持する、請求項1〜8のいずれかに記載の潤滑膜形成方法。
  10. 前記潤滑剤はフッ化有機化合物である、請求項1〜9のいずれかに記載の潤滑膜形成方法。
  11. 前記基材の表面は、炭素材料により形成されている、請求項1〜10のいずれか記載の潤滑膜形成方法。
  12. 前記潤滑膜は複数のドットパターンである、請求項1〜11のいずれかに記載の潤滑膜形成方法。
  13. 前記ドット径は0.9〜100μmである、請求項12に記載の潤滑膜形成方法。
  14. 前記レーザ光照射工程の後に、前記基材の表面に固定されていない潤滑剤を除去するクリーニング工程をさらに備える、請求項1〜13に記載の潤滑膜形成方法。
  15. 前記クリーニング工程の後に、前記基材の表面に潤滑剤を塗布する潤滑剤再塗布工程をさらに備える、請求項14に記載の潤滑膜形成方法。
  16. 摺動面の一部のみに潤滑膜が形成され、
    前記潤滑膜を構成する分子はC−O結合を有し、
    前記C−O結合のO原子は前記摺動面の原子と共有結合により結合している摺動体。
  17. 前記潤滑膜を構成する分子は、複数のフッ素原子を含む有機基を有する、請求項16に記載の摺動体。
  18. 前記摺動面は、炭素材料により形成されている、請求項16又は17に記載の摺動体。
  19. 前記潤滑膜は複数のドットパターンである、請求項16〜18のいずれかに記載の摺動体。
  20. 前記ドット径は0.9〜100μmである、請求項19に記載の摺動体。
  21. 前記摺動面における前記ドットパターンが存在していない部分と前記ドットパターンの表面とに、潤滑剤分子が物理吸着してなる潤滑剤層を有する、請求項19又は20に記載の摺動体。
  22. 前記潤滑剤層の表面において、ドットパターンが存在していない部分よりもドットパターンが存在している部分の方が突出している、請求項21に記載の摺動体。
  23. 請求項16〜22に記載の摺動体を備え、前記摺動体内に磁気記録層を有する磁気記録媒体。
  24. 前記摺動体は円板状であり、前記潤滑膜は円板状の前記摺動面のうちの、半径方向内側部、半径方向中央部、及び、半径方向外側部の少なくともいずれかの環状領域に形成されている、請求項23に記載の磁気記録媒体。
  25. 請求項16〜22に記載の摺動体を備え、前記摺動面に配置された磁気記録素子及び/又は磁気読取素子を有する磁気ヘッドスライダ。
  26. 前記摺動面には底部と、前記底部より突出した第1凸部とがあり、前記底部と前記第1凸部とのうちいずれかの表面に前記潤滑膜を備える、請求項25に記載の磁気ヘッドスライダ。
  27. 前記摺動面には底部と、前記底部より突出した第1凸部と、前記第1凸部の周囲に設けられ、かつ前記第1凸部よりも低く前記底部よりも高い第2凸部とがあり、前記第1凸部と、前記底部と、前記第2凸部とのうち少なくともいずれかの表面に前記潤滑膜を備える、請求項25に記載の磁気ヘッドスライダ。
  28. 前記磁気記録素子及び/又は磁気読取素子を含むセンサー部の表面に前記潤滑膜を備える、請求項25に記載の磁気ヘッドスライダ。
  29. 請求項23又は24に記載の磁気記録媒体と、
    請求項25〜28のいずれかに記載の磁気ヘッドスライダとを備えるハードディスクドライブ。
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