図1および図2は、本発明の一実施形態にかかる可動フロア装置を示している。この可動フロア装置は、運転席等からなる乗員用シート4に着座した乗員の足元部に位置する車体フロア3の上面を覆うように設置された昇降可能な可動ボード5と、この可動ボード5を昇降させる駆動源として上記乗員用シート4の下方に設置された電動モータ6と、この電動モータ6の駆動力を上記可動ボード5に伝達する駆動力伝達機構7とを備えている。
上記車体フロア3は、図1〜図3に示すように、車体の左右両側辺部において前後方向に延びるように設置されたサイドシル1と、車体の幅方向中央部おいて前後方向に延びるように設置されたフロアトンネル2との間に形成された略平坦なパネルによって構成されている。この車体フロア3の上面部には、車幅方向に延びて上記サイドシル1とフロアトンネル2とを連結するとともに、上記乗員用シート4の前端部が支持されるクロスメンバ11が突設されており、このクロスメンバ11よりも前方に位置するフロア前方部13上に、上記可動ボード5が設置されている。
上記フロア前方部13の前端部からは、エンジンルームと車室とを仕切るダッシュパネル15の下端部に接合されるフロアキックアップ部14が、前上がりの傾斜状態で車体の前方側に延びており、このフロアキックアップ部14の上方に、運転者により操作されるアクセルペダルやブレーキペダル等からなる足踏みペダル20が設置されている。また、上記ダッシュパネル15の下方部には、後下がりの傾斜状態で車体の後方側に延びる下部傾斜部16が形成されており、この下部傾斜部16と上記フロアキックアップ部14とが、部分的に重なり合う状態でスポット溶接等により接合されている。
図3に示すように、上記車体フロア3上には、サイドシル1およびフロアトンネル2の側壁と、クロスメンバ11の前壁と、フロアキックアップ部14とに囲まれ、上記フロア前方部13を底部とする凹部17が形成されている。この凹部17内には、図1〜図5に示すように、その凹形状に対応した形状を有するパレット8が配設され、このパレット8の内部に、上記可動ボード5が昇降可能な状態で設置されるようになっている。
上記パレット8は、図2〜図5に示すように、上記可動ボード5を収容するための凹部46が形成された樹脂製の一体成形品からなり、上記凹部46の底部を構成する底面部35と、この底面部35の左右両端部から略垂直に立ち上がる側壁面部36,36と、上記底面部35の前端部からフロアキックアップ部14に沿って前上がりの傾斜状態で車体の前方側に延びる前方傾斜面部38と、上記底面部35の後端部からクロスメンバ11の前壁に沿って立ち上がる後面部39と、サイドシル1側の側壁面部36の上端部から車幅方向外側に向かって略水平に延びる棚部40と、フロアトンネル2側の側壁面部36の上端部から車幅方向内側の斜め上方に延びる傾斜付き棚部41と、上記前方傾斜面部38の車幅方向内方寄りの前端部から斜め上方に突設され、乗員の左足が載置される載置面45aを有したフットレスト部45と、上記後面部39の上端部からクロスメンバ11の上面部に沿って車体の後方側に延びる後方延出部42と、この後方延出部42の左右両側部に突設された隆起部43,43とを有している。上記棚部40および傾斜付き棚部41は、左右の側壁面部36,36の上端部からそれぞれサイドシル1およびフロアトンネル2の側壁に近接する位置まで延びており、これらサイドシル1およびフロアトンネル2と上記各側壁面部36,36との隙間を覆うように設置されている。
図2および図3に示すように、上記パレット8の側壁面部36には、前上がりに傾斜した前後一対のスライド孔44a,44bが形成されており、可動ボード5に設けられた前後一対の支軸28a,28b(詳細は後述する)が、上記スライド孔44a,44bを通って外部に突出した状態で支持されるようになっている。
具体的に、上記パレット8の左右両外側部には、図1および図3に示す左右一対の支持部材30,30が設置されており、これら各支持部材30,30により、上記スライド孔44a,44bを通ってパレット8の外部に突出した上記支軸28a,28bの左右両端部が支持されている。すなわち、支持部材30は、上記可動ボード5との間にパレット8の側壁面部36を介在させた状態で可動ボード5を支持している。
上記支持部材30は、図3〜図5に示すように、フロア前方部13の上面部から略垂直方向に立ち上がり、上記パレット8の側壁面部36の外面に沿うように設置された垂直壁部31と、この垂直壁部31を支持するとともに上記フロア前方部13の上面にボルト等により固定される脚部32とを有している。上記垂直壁部31には、上記パレット8の各スライド孔44a,44bに対応する部位に、上記可動ボード5の支軸28a,28bがそれぞれ挿通される前後一対のガイド溝33a,33bが形成されている。
上記ガイド溝33a,33bは、垂直壁部31の下方部前後位置からそれぞれ車体の前方側の斜め上方に延び、その傾斜角度が互いに一致する状態で設置されている。詳細は後述するが、これらガイド溝33a,33bに各支軸28a,28bが挿通された上記可動ボード5には、上記駆動力伝達機構7を介して車体の前後方向の力が入力されるようになっており、この前後方向の力に応じて上記可動ボード5がガイド溝33a,33bに沿って前後方向に移動しつつ昇降するようになっている。すなわち、上記駆動力伝達機構7から前後方向の力を受けた可動ボード5が同方向に移動しつつ昇降するように案内するガイド手段が、前上がりに傾斜する上記ガイド溝33a,33bによって構成されている。
図6に示すように、上記パレット8の側壁面部36の外側面には、上記支持部材30の垂直壁部31に形成された係合孔部80と係合する係合爪部47が形成されており、これら係合爪部47と係合孔部80とが係合した状態で、上記パレット8が支持部材30に係脱可能に取り付けられるようになっている。上記係合爪部47は、上記パレット8の側壁面部36から外側に突出するベース部48aとその先端から下方に延びるフック部48bとからなる第1係合爪48と、この第1係合爪48を挟んだ前後両側2箇所に形成された楔状体からなる第2係合爪49,49とを有している。一方、上記係合孔部80は、上記第1係合爪48に対応した位置に形成された矩形状の孔からなる挿通部81aが上側に、これよりも幅狭のスリット部81bが下側に形成された第1係合孔81と、上記スリット81bを挟んだ前後両側2箇所であって上記第2係合爪49に対応する位置に形成された第2係合孔82,82とを有している。なお、上記第1係合爪48のフック部48bの裏面には、上記第1係合孔81のスリット部81bと略同一の幅を有して組付け時にこれに嵌挿される突起(図示省略)が設けられている。以上のような係合爪部47および係合孔部80を有したパレット8および支持部材30の組み付けは、フロア前方部13上に上記支持部材30が固定される前に行われる。具体的に、上記組み付けは、図7(a)に示すように、フロア前方部13上に固定される前の支持部材30に対し、その第1係合孔81の挿通部81aと上記第1係合爪48のフック部48bとを位置合わせした状態で、パレット8の側壁面部36を押し付け、さらにこの状態から上記第1係合爪48のフック部48bを第1係合孔81の挿通部81aに挿通させるように、上記パレット8を弾性変形させつつ下方に押し下げることによって行うことができる。これにより、図7(b)に示すように、第1係合爪48のフック部48bの裏面と第1係合孔81のスリット部81bの周縁部とが係合するとともに、第2係合爪49の上面部と第2係合孔82の上辺部とが係合し、これに応じて上記パレット8の支持部材30に対する上下方向および左右方向の相対移動が規制されることになる。
上記のようにして互いに組み付けられたパレット8と支持部材30とは、このうちの支持部材30の脚部32がフロア前方部13の上面部にボルト締結されることにより、フロア前方部13上に固定される。そして、上記脚部32のボルト締結作業を容易化するためのものとして、上記パレット8の底面部35には、図3に示すように、その四隅の所定範囲を切り欠いてなる複数の作業用孔37が形成されている。すなわち、上記支持部材30の脚部32をフロア前方部13上にボルト締結する際には、上記脚部32の上面を覆うパレット8の底面部35が邪魔になるため、この底面部35のうち上記脚部32のボルト締結部(脚部32に設けられたボルト穴設置部)に対応する部分に、それぞれ上記作業用孔37が設けられている。これにより、上記脚部32のボルト締結作業をこの作業用孔37を通じて容易に行うことが可能になる。
上記可動ボード5は、図3に示すように、乗員の足(踵部)が載置される平板状のボード部22と、その外周縁部に沿った矩形枠状に形成されて上記ボード部22を着脱自在に支持するフレーム24とから構成されている。このうちのフレーム24には、その対向する辺どうしを連結する第1および第2の補強プレート26,27と、フレーム24の四隅において隣接する辺どうしを連結する4つの連結金具25とがそれぞれ設けられており、これら補強プレート26,27および連結金具25の上面に、上記ボード部22が取付ビス等によって着脱自在に取り付けられるようになっている。すなわち、上記ボード部22は、これら補強プレート26,27等を介してフレーム24に支持されている。
また、上記ボード部22は、比較的軽量な樹脂製材料や、必要に応じてその上面に敷設される表層マット材等から構成されている。一方、上記フレーム24は、矩形枠状に折り曲げられた金属製のパイプから構成されている。このようにして、フレーム24の剛性は、これに支持される上記ボード部22の剛性よりも高くなるように設定されている。
上記フレーム24の前後2箇所には、車幅方向に延びる支軸28a,28bが溶接により固定されている。この支軸28a,28bは、その左右両端部が上記フレーム24の左右両側辺部よりも外側に突出する状態で取り付けられており、この支軸28a,28bの左右両端部が、上記支持部材30のガイド溝33a,33bに挿通されて支持されるようになっている。また、各支軸28a,28bには、上記ガイド溝33a,33bに挿通された後の各支軸28a,28bの両端部に係止される着脱可能なスピードナット29が取り付けられており、このスピードナット29が上記ガイド溝33a,33bの周縁部に当接することにより、上記各支軸28a,28bの車幅方向の移動が規制されるようになっている。
図1および図3に示すように、上記可動ボード5は、クロスメンバ11の上方を跨いで下方に垂下する側面視逆L字状体からなる連結部材57を介して上記駆動力伝達機構7に連結されている。この連結部材57は、図8および図9に示すように、クロスメンバ11の上方を覆うように水平に延びる水平面部58と、この水平面部58の前端部からクロスメンバ11の前壁に沿って下方に延びる垂下部59と、この垂下部59の下端部に設置され、上記支軸28aが挿通される筒状のボス部60とを有しており、このボス部60に挿通される支軸28aを支点に回動可能な状態で上記可動ボード5と駆動力伝達機構7とを連結している。図9においてハッチングで示す部位Wは溶接箇所を表わしており、この溶接箇所Wを介して上記支軸28aとフレーム24の後辺部とが並列状態で互いに接合されるようになっている。なお、上記連結部材57のボス部60とフレーム24とは溶接されておらず、上記支軸28aに対してボス部60が自由に相対回転できるようになっている。このように構成された可動ボード5および連結部材57は、上記パレット8および支持部材30とともにあらかじめ車外で組み付けられた状態でフロア前方部13上に設置される。
図2および図3に示すように、上記可動ボード5と駆動力伝達機構7とを連結する連結部材57の上方には、その連結部周辺を隠蔽するためのカバー部材90が設置されている。このカバー部材90は、上記パレット8後端の左右両側部に形成された隆起部43,43の間に位置して両部材の間の空間を埋めるように設置されている。
上記乗員用シート4は、図1に示すように、車室前部の運転席側および助手席側にそれぞれ個別に設置されたセパレートタイプのシートであり、乗員の着座面を構成するシートクッション61と、このシートクッション61の後端部から上方に立ち上がるシートバック62と、このシートバック62の上端部に取り付けられたヘッドレスト63とを備えている。上記シートクッション61は、その本体部(クッション材)を下方から覆うような状態で支持するクッションフレーム64を有し、このクッションフレーム64の下方には、車体の前後方向に延びるシートスライドレール65が配設されている。そして、上記乗員用シート4は、このシートスライドレール65を介して前後方向に移動可能な状態で車体フロア3上に支持されている。
上記シートスライドレール65は、前上がりの傾斜状態で車体側に固定された断面C字状部材等からなる左右一対のロアレール67と、このロアレール67に沿って摺動可能に支持された左右一対のアッパレール66とを有し、上記アッパレール66がロアレール67に対して相対変位するのに応じて、上記乗員用シート4が前後方向に移動するようになっている。
また、上記シートスライドレール65の後方部には、上記アッパレール66の前後移動に応じて上記乗員用シート4の後方部を昇降させるチルト機構50が設けられている。このチルト機構50は、上記クッションフレーム64の後方部とシートスライドレール65との間に設置された後方リンク部材54と、上記ロアレール67の後方部に固定されて上記後方リンク部材54をスライド自在に支持する支持プレート51とを備えている。また、上記シートスライドレール65の前方部には、アッパレール66とクッションフレーム64とにそれぞれ両端部が枢支された前方リンク部材56が設置されている。
上記後方リンク部材54は、側面から見て三角形状に形成された板状の部材であり、その各頂点部A〜Cが、上記アッパレール66に突設された突板55と、上記クッションフレーム64の後方部と、支持プレート51とにそれぞれ枢支されている。また、上記支持プレート51には、シートスライドレール65よりも急角度で前上がりに傾斜したスライド溝52が形成されており、上記後方リンク部材54の下側の頂点部Cがこのスライド溝52に沿ってスライド自在に支持されている。これにより、上記乗員用シート4の前後移動時に、後方リンク部材54が上記アッパレール66の突板55との枢支点(頂点部A)を支点に揺動変位して上記クッションフレーム64の後部が昇降されるようになっている。
具体的に、例えば乗員用シート4のクッションフレーム64がシートスライドレール65に沿って図1に示す後端位置から図13に示す前端位置に移動した場合には、支持プレート51に支持された後方リンク部材54の頂点部Cが、スライド溝52に沿って急角度で斜め上方に移動する一方、アッパレール66の突板55に枢支された頂点部Aは、アッパレール66の設置角度に沿って緩やかな角度で斜め上方に移動する。これにより、後方リンク部材54が上記頂点部Aを支点としてクッションフレーム64との枢支点である頂点部Bを上方に変位させるように揺動変位し、これに応じて図13に示すように、クッションフレーム64の後方部が所定距離上方に押し上げられることになる。
以上のような乗員用シート4には、上記可動ボード5を昇降駆動するための電動モータ6とは別体のシート駆動用モータと、このシート駆動用モータの駆動力を上記シートスライドレール65のアッパレール66に伝達することにより、このアッパレール66を前後方向に駆動するスライド駆動機構(いずれも図示省略)とが設けられており、上記シート駆動用モータが正転または逆転作動するのに応じて、クッションフレーム64がロアレール67に沿って前後方向に移動するとともに、上記後方リンク部材54等からなるチルト機構50によってクッションフレーム64の後方部が押し上げられるようになっている。
例えば、上記乗員用シート4に背の低い乗員Sが着座する際に、図外の操作スイッチを操作して上記シート駆動用モータを正転させることにより、乗員用シート4を車体の前方側にスライド変位させると、図13に示すようにシートクッション61の前方部がロアレール67に沿って上昇するとともに、シートクッション61の後方部が押し上げられることになるため、シートクッション61に対する乗員Sの着座中心を表すヒップポイントが、乗員Sの身長に対応して前部上方に移動することにより、この乗員Sの視線が適正ラインLに一致することになる。また、上記乗員用シート4の前方移動に応じてシートクッション61の後端部が押し上げられて、その設置角度が水平に近い状態となることにより、足の長さが相対的に短くなる低身長者Sが、膝を大きく折り曲げてその膝下部を所定角度で垂下させた状態で着座できるようになるため、この低身長者Sの足先が床面から離間した状態となることが防止される。
一方、上記乗員用シート4に背の高い乗員Tが着座する際に、上記シート駆動用モータを逆転させて乗員用シート4を車体の後方側にスライド変位させると、図1に示すように、シートクッション61の前方部がロアレール67に沿って下降するとともに、シートクッション61の後方部が押し下げられることになるため、シートクッション61に対する乗員Tの着座中心を表すヒップポイントが、乗員Tの身長に対応して後部下方に移動することにより、この乗員Tの視線が適正ラインLに一致することになる。また、上記乗員用シート4の後方移動に応じてシートクッション61が前上がりの傾斜状態となることにより、足の長さが相対的に長くなる高身長者Tが、膝の折曲げ角度を小さくしてその膝下部を前方に延ばした状態で着座できるようになるため、この高身長者Tの着座姿勢が窮屈な状態になることが防止される。
図1および図2に示すように、上記乗員用シート4には、車幅方向に延びて左右一対のロアレール67,67の下面部どうしを連結する車幅方向メンバ68が設置されており、この車幅方向メンバ68上に、上記電動モータ6の駆動力を可動ボード5に伝達する駆動力伝達機構7が支持されている。この駆動力伝達機構7およびその支持部を図10に示す。本図に示すように、上記車幅方向メンバ68の中央部付近には所定距離下方に凹入する凹入部68aが形成され、この凹入部68a上に設置された揺動支持機構79を介して、上記駆動力伝達機構7が揺動自在に支持されている。
上記揺動支持機構79は、上記車幅方向メンバ68の凹入部68a上に立設された左右一対の固定プレート69,69と、平面視コ字状体からなるとともにその左右両側辺部が上記固定プレート69,69にピポットPを介してそれぞれ枢支された揺動ブラケット76とを有しており、このうちの揺動ブラケット76の前端面が駆動力伝達機構7の第2のギアボックス78(詳細は後述する)の後面側に締結固定された状態で、上記駆動力伝達機構7を揺動自在に支持している。
上記駆動力伝達機構7は、図1〜3および図10に示すように、車体の前後方向に延びてその前端部が上記連結部材57を介して可動ボード5の後端部に連結されるロッド73と、このロッド73と上記電動モータ6の出力軸とを連動連結する第1および第2のギアボックス77,78とを有している。このうち第2のギアボックス78の前面側には、図10に示すように、平面視で縦長の逆コ字状体からなるとともに、上記ロッド73を案内するためのガイド溝75(以下、ロッド用ガイド溝75と称する。)が左右両側部に形成されたガイドブラケット74が締結固定されている。
上記ロッド73は、上記第2のギアボックス78内のウォームナット87(図12参照;詳細は後述する)によりねじ送りされて前後方向に進退するねじ軸70と、このねじ軸70の前端部に締結ピン72を介して接続された延長ロッド71とから構成されている。図11は図10のXI−XI線に沿った断面を表わしており、この図11に示すように、上記延長ロッド71は、ねじ軸70の前端部を内部に収容する断面視コ字状体からなり、その左右両側辺部を貫通するとともに上記ねじ軸70の周面の対向する2箇所に嵌着される左右一対の締結ピン72,72を介してねじ軸70に接続されている。
図3に示すように、上記延長ロッド71の前端部には、上記連結部材57に対応するように幅広に形成された連結部材対応部88が形成されており、この連結部材対応部88が図1および図8に示すように連結部材57の裏面に重ね合わされて取付ビス等で締結されることにより、上記延長ロッド71が連結部材57を介して可動ボード5の後端部に連結されるようになっている。より具体的に、上記延長ロッド71は、フレーム24の後辺部に溶接固定された支軸28aに連結部材57を介して連結されている。
上記第1のギアボックス77は、複数のピニオン歯車等からなる減速ギア機構(図示省略)を内部に備えており、この減速ギア機構を介して上記電動モータ6の出力軸の回転速度を減速しつつその駆動力を上記第2のギアボックスに伝達するように構成されている。一方、図12に示すように、上記第2のギアボックス78は、上記第1のギアボックス77の出力側から延びる軸部85と一体に回転するようにこれに止着されたウォーム軸86と、このウォーム軸86と回転中心が直交する状態で噛み合わされるウォーム歯面を外周面に有するとともに上記ロッド73のねじ軸70が嵌合される雌ねじを内周面に有したウォームナット87とを内部に備えており、上記ウォーム軸86によりウォームナット87が回転駆動されるのに応じて、このウォームナット87に嵌合されたねじ軸70をねじ送りして前後方向に移動させるように構成されている。
上記のようにウォームナット87の回転駆動に応じてねじ軸70がねじ送りされると、このねじ軸70および上記延長ロッド71からなるロッド73から可動ボード5の後端部に、連結部材57を介して車体の前後方向の力が入力され、これに応じて上記可動ボード5がその両側の支持部材30に形成されたガイド溝33a,33bに案内されながら昇降変位することになる。例えば、可動ボード5が図1および図8に示す下降位置にあるときに、上記電動モータ6が正転して上記ねじ軸70が前方にねじ送りされ、これに応じて可動ボード5の後端部に前方向きの力が入力されると、この可動ボード5の支軸28a,28bが上記ガイド溝33a,33bに沿って斜め上方に移動することにより、可動ボード5が図13に示す上昇位置に変位する。このとき、上記各支軸28a,28bをそれぞれ案内するガイド溝33a,33bの傾斜角度が互いに一致していることから、可動ボード5はその設置角度を略水平向きに維持したまま上記ガイド溝33a,33bに沿って上昇することになる。一方、この状態から上記電動モータ6が逆転して上記ねじ軸70が後方にねじ送りされ、これに応じて可動ボード5の後端部に後方向きの力が入力されると、上記各支軸28a,28bがガイド溝33a,33bに沿って斜め下方に移動することにより、可動ボード5が図1に示す下降位置に変位することになる。
図1および図13を比較すると分かるように、上記可動ボード5の後端部に連結部材57を介して連結されたロッド73の側面視での設置角度は、上記可動ボード5の昇降変位に伴って所定の角度範囲で変化する。例えば、可動ボード5が図1に示す下降位置にあるときのロッド73の設置角度は略水平向きとされているが、この状態から可動ボード5が図13に示す上昇位置に変位し、この可動ボード5に連結されたロッド73の前端部が上昇すると、これに応じてロッド73が上記揺動支持機構79のピポットP(図12)を支点に揺動変位して斜め上方に傾斜した状態に移行することにより、当該ロッド73の側面視での設置角度が所定角度だけ変化する。これに対し、可動ボード5は上記のように水平向きの設置角度を維持したまま上昇するため、この可動ボード5と上記ロッド73との設置角度の差(相対角度)がある程度変化することになるが、このような相対角度の変化は、ロッド73と可動ボード5とを連結する連結部材57が上記可動ボード5との連結点である支軸28aを支点に回動変位することで吸収されるようになっている。すなわち、上記可動ボード5に対してロッド73の設置角度が相対変位するのを許容する屈曲許容部が、上記支軸28aとこの支軸28aが挿通される連結部材57のボス部60とによって構成されている。一方、上記ロッド73を含んだ駆動力伝達機構7を支持する揺動支持機構79は、上記のような可動ボード5の昇降変位に伴い、図12(a)(b)に示すように、揺動ブラケット76を固定プレート69に対してピポットPを支点に回動変位させ、これに応じて上記ロッド73の設置角度を変化させる。すなわち、上記揺動支持機構79は、上記可動ボード5の昇降変位に伴うロッド73の設置角度の変化を許容しながら上記駆動力伝達機構7を支持するように構成されている。
上記のような駆動力伝達機構7を介して昇降駆動される可動ボード5は、乗員用シート4の前後移動に連動して昇降するように構成されている。すなわち、乗員用シート4を前後方向に移動させるために乗員が図外の操作スイッチを操作すると、可動ボード5駆動用の電動モータ6も作動し、これに応じて可動ボード5が昇降駆動されるようになっている。例えば、低身長者Sが乗員用シート4に着座する際に、図外の操作スイッチを操作して乗員用シート4を車体の前方側に移動させると、これに連動して電動モータ6が正転するとともに駆動力伝達機構7のロッド73が前方に押し出され、これに応じて可動ボード5が図13に示す上昇位置に変位する。一方、高身長者Tが乗員用シート4に着座する際に、乗員用シート4を車体の後方側に移動させると、これに連動して電動モータ6が逆転するとともに駆動力伝達機構7のロッド73が後退し、これに応じて可動ボード5が図1に示す下降位置に変位する。これにより、乗員の踵部が載置される上記可動ボード5の設置高さが、乗員S,Tの足の長さに適した位置に調節されるようになっている。
以上説明したように、上記実施形態によれば、車体フロア3(のフロア前方部13)上に昇降可能に設置される可動ボード5を、乗員の足が載置される板状のボード部22と、これよりも高い剛性を有して上記ボード部22を支持する矩形枠状のフレーム24とによって構成したため、可動ボード5の剛性を充分に確保しながら、その重量をより軽減して装置の低コスト化等を図ることができる。すなわち、乗員の足が載置されるボード部22が金属製パイプからなる高剛性のフレーム24に支持されてなる本実施形態の可動ボード5では、上記ボード部22自身の剛性がそれほど高くなくても、可動ボード5全体としては比較的高い剛性を確保することができるため、この可動ボード5の剛性を乗員の足載置荷重にも充分耐え得る程度の大きさに容易に設定することができる。そして、上記のように高い剛性が要求されないボード部22として、例えば樹脂製材料等の軽量な材料を用いることができるため、これに応じて可動ボード5の重量を軽減することができる。しかも、乗員の足の載置面を形成する当該ボード部22の面積は、矩形枠状の上記フレーム24の面積と比べてかなり大きいため、このボード部22に軽量な材料を用いれば、その分だけ大幅に可動ボード5を軽量化することができる。このように、上記実施形態によれば、可動ボード5の軽量化と高剛性化とを効率よく両立させることができる。
また、上記実施形態によれば、電動モータ6の駆動力を可動ボード5に伝達する駆動力伝達機構7(のロッド73)を、ボード部22に比べて剛性の高いフレーム24に(連結部材57および支軸28aを介して)連結するようにしたため、この駆動力伝達機構7から入力される駆動力を効率よく可動ボード5に伝達し、これに応じて可動ボード5を確実に昇降変位させることができる。さらには、上記フレーム24に対してボード部22が着脱自在に支持されていることにより、ボード部22をフレーム24から取り外すだけで可動ボード5下方の車体フロア3(つまりフロア前方部13)を露出させることができるため、この車体フロア3を容易に清掃できるという利点もある。
また、上記実施形態のように、フレーム24の対向する辺どうしを連結する補強プレート26,27を設け、この補強プレート26,27上で上記ボード部22を支持するようにした場合には、乗員の足が載置されるボード部22の支持剛性を、簡単かつ効果的に高めることができるため、乗員の足載置荷重をより確実に支持できるという利点がある。
また、上記実施形態のように、可動ボード5の後端部(フレーム24の後辺部)に、駆動力伝達機構7を介して車体の前後方向の力を入力し、これに応じて上記可動ボード5を昇降変位させるようにした場合には、可動ボード5の下方に例えば昇降駆動用のリンク機構等からなる特別な装置を何ら設けることなくこの可動ボード5を昇降変位させることができるため、可動ボード5の下降時の設置高さをより低くすることができる。これにより、特に体格の大きい乗員の着座姿勢が窮屈になるのを効果的に防止でき、体格に応じたより広範囲な着座姿勢を乗員にとらせることが可能になる。
また、上記実施形態のように、可動ボード5の左右両側に一対の支持部材30,30を設置し、この支持部材30に設けられたガイド溝33a,33bに上記可動ボード5の支軸28a,28bを摺動自在に支持させた場合には、簡単かつコンパクトな構成で可動ボード5を支持できるとともに、この可動ボード5を上記ガイド溝33a,33bに沿って案内しながら安定した状態で確実に昇降変位させることができるという利点がある。さらには、可動ボード5の昇降動作を案内するガイド手段として、前上がりに傾斜する上記ガイド溝33a,33bを設けたことで、このガイド溝33a,33bに上記支軸28a,28bの両端部を挿通させて支持するだけの簡単な構成で、可動ボード5に加わる乗員の足載置荷重を、上記支軸28a,28bと摺接するガイド溝33a,33bの周縁部によって確実に支持しつつ、上記可動ボード5をスムーズに昇降変位させることができるという利点がある。
また、上記実施形態のように、可動ボード5におけるフレーム24の前後2箇所に上記支軸28a,28bを設置し、これに対応して設けられた2つのガイド溝33a,33bの傾斜角度を互いに一致させるようにした場合には、各ガイド溝33a,33bに沿った支軸28a,28bの摺動に応じて昇降変位する可動ボード5の側面視での設置角度を一定に維持することができるため、例えば可動ボード5を水平向きに維持したまま円滑に昇降変位させることができる。
また、上記実施形態のように、電動モータ6の駆動力に応じて車体の前後方向に移動するロッド73を駆動力伝達機構7に設け、このロッド73を上記可動ボード5のフレーム24の後辺部に連結部材57等を介して連結し、上記ロッド73の進退動作に応じて上記可動ボード5に車体の前後方向の力を入力するようにした場合には、伝達ロスの少ない簡単な構成で上記電動モータ6の駆動力を可動ボード5に確実に伝達できるという利点がある。
なお、以上説明したような自動車の可動フロア装置は、本発明の一実施形態であって、その具体的な構成等は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。