JP2008045875A - バイオセンサの製造方法 - Google Patents

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【課題】生産コストの低減と生産性の向上を可能にしたバイオセンサの製造方法を提供することである。
【解決手段】バイオセンサの配線層は、配線材料を含む配線用液滴をマザープレートの配線形成領域に吐出する配線層描画工程(ステップS11)によって形成される。また、バイオセンサの触媒層は、触媒材料を含む触媒用液滴をマザープレートの電極形成領域に吐出する触媒層描画工程(ステップS13)によって形成される。そして、バイオセンサの電極層は、これら配線層と触媒層を下地にした無電解メッキによって形成される。
【選択図】図3

Description

本発明は、バイオセンサの製造方法に関する。
酵素やイオンチャンネルなどを利用したバイオセンサは、液体中の成分を検出するセンサとして広く普及している。例えば、酵素活性を利用したグルコースセンサは、血液中のグルコース濃度を検出するセンサとして広く普及している。成人病の1つである糖尿病の患者は、一日に数回にわたって血糖値を計測し、測定結果に基づいてインスリンの投与と、食事のコントロールを行わなければならない。そのため、糖尿病の患者には、グルコース濃度を簡便に検出できるグルコースセンサが不可欠である。
バイオセンサは、試料液の基質特異性を利用して、特定成分の変化を電気信号として検出する。バイオセンサは、試料液を収容する収容室の内部に、作用電極、対極電極、酵素、電子伝達媒体(メディエータ)などを有する。収容室は、毛細管力などを利用して試料液を内部に導入する。酵素やメディエータは、収容室に導入された試料液によって溶解されて、該試料液の酵素反応を開始させる。作用電極と対極は、酵素反応に伴う電流を検出して出力する。
上記電極の材料には、耐腐食性を図るため、パラジウム、白金、金などの貴金属が利用される。特許文献1では、スパッタリング法や真空蒸着法によって基板の全面に貴金属の薄膜を成膜し、該薄膜にレーザ加工を施して所定の電極パターンを形成する。特許文献2では、ベースフィルムに蒸着した貴金属の箔に加熱した凸版を押し当て、該箔を基板に熱転写して所定の電極パターンを形成する。特許文献3では、パターニングされた基板上の銅箔に、ニッケル層、パラジウムニッケル層、白金層を順次メッキ法で積層して所定の電極パターンを形成する。
特開2005−114359号公報 再公表特許公報WO2004/017057 特開2002−189012号公報
しかしながら、特許文献1では、電極膜厚や電極膜質を均一にするため、メタルマスクなどのマスクパターンの領域にも貴金属の薄膜を成膜させる必要がある。特許文献2では、電極形状を均一にするため、ベースフィルムの略全面にわたって貴金属の薄膜を成膜させる必要がある。そのため、高価な貴金属の消費量を多くして、バイオセンサの生産コストを高くする問題があった。
一方、特許文献3では、貴金属の消費を電極形成領域に限定できるものの、銅箔のマスキング工程、露光工程、エッチング工程などを必要とするため、生産工程数を多くして、バイオセンサの生産性を著しく低下させる問題があった。
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、生産コストの低減と生産性の向上を可能にしたバイオセンサの製造方法を提供することである。
本発明のバイオセンサの製造方法によれば、配線材料を含む第1液滴を基板の配線形成領域に吐出して前記配線形成領域に配線を描画する第1描画工程と、触媒材料を含む第2
液滴を前記基板の電極形成領域に吐出して前記電極形成領域に触媒層を描画する第2描画工程と、電極材料を含むメッキ液を前記触媒層に接触させて前記電極形成領域に電極層をメッキするメッキ工程と、を備えた。
本発明のバイオセンサの製造方法によれば、配線材料と電極材料が、それぞれ配線形成領域と電極形成領域の分だけ使用されるため、バイオセンサの生産コストを低減させることができる。また、マスキング工程、露光工程、エッチング工程などを要することなくバイオセンサを製造できるため、製造工程数を削減させることができ、バイオセンサの生産性を向上させることができる。
このバイオセンサの製造方法において、前記第1描画工程は、試料液を収容する収容室の領域に前記配線を描画し、前記第2描画工程は、前記収容室の領域の前記配線を覆う前記触媒層を描画し、前記メッキ工程は、前記収容室の領域の前記配線を覆う前記電極層をメッキする構成であってもよい。
このバイオセンサの製造方法によれば、収容室の配線を電極層で覆うため、耐腐食性を有しない低コストの導電材料によって配線材料を構成させることができる。したがって、バイオセンサの生産コストを、さらに低減させることができる。
このバイオセンサの製造方法において、前記第2描画工程は、前記触媒材料を前記配線に固定するためのカップリング剤を前記電極形成領域に吐出して前記触媒層を描画する構成であってもよい。
このバイオセンサの製造方法によれば、触媒材料を配線に固定させることができ、配線と電極層の密着性を向上させることができる。
このバイオセンサの製造方法において、前記第2描画工程は、触媒材料を含む第2液滴を前記基板の電極形成領域に吐出して乾燥し、前記電極形成領域に紫外領域の光を照射して活性化する構成であってもよい。
このバイオセンサの製造方法によれば、紫外領域の光で活性化する光触媒などを触媒材料として利用させることができる。したがって、触媒材料の選択範囲を拡大させることができ、本製造方法の適用範囲を拡大させることができる。
このバイオセンサの製造方法において、前記第1描画工程は、銀、ニッケル、銅、カーボンブラックのいずれか1つを含む第1液滴を吐出して前記配線を描画し、前記メッキ工程は、パラジウム、白金、金のいずれか1つを含むメッキ液を前記触媒層に接触させて前記電極形成領域に電極層をメッキする構成であってもよい。
このバイオセンサの製造方法によれば、低コストの導電材料と高コストの貴金属が、それぞれ配線形成領域と電極形成領域の分だけ使用される。したがって、バイオセンサの生産コストを、さらに低減させることができる。
以下、本発明を具体化したバイオセンサ1を図1〜図6に従って説明する。図1は、バイオセンサ1の分解斜視図であり、図2は、バイオセンサ1を説明する図である。図1及び図2では、導電性を有する領域に薄いグラデーションを付している。
図1において、バイオセンサ1には、長尺状に形成された基板としての支持プレート2が備えられている。支持プレート2の上側には、支持プレート2よりも短いサイズに形成された帯状のスペーサプレート3と、カバープレート4と、が順に積層されている。
支持プレート2、スペーサプレート3、カバープレート4は、それぞれ絶縁性を有する基板である。これら3枚のプレートには、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリオキシメチレン、モノマーキャストナイロン、ポリブチレンテレフタレート、メタクリル樹脂、ABS樹脂、ガラスなどを用いることができる。
スペーサプレート3の一端(図1の左下端:先端)には、他端(基端)に延びる切り欠き部3aが形成されている。切り欠き部3aは、前記支持プレート2とカバープレート4に囲まれて、先端側に開口部(導入口H)を有した空間(収容室S)を形成する。収容室Sは、試料液が導入口Hから導入されるとき、毛細管力などによって試料液を内部に収容する。
カバープレート4は、収容室Sと大気との間を連通する連通孔4aを有する。連通孔4aは、試料液が導入口Hから導入されるとき、収容室Sの内圧を大気圧にして試料液を円滑に収容させる。
図2において、支持プレート2の上面には、受容層2aが形成されている。受容層2aは、空孔を有する多孔性の層であって、受容層2aに着弾した液滴の液状成分を吸収して、液滴中の微粒子を受容層2aの上面に残存させる。受容層2aには、例えば、アルミナ、アルミナ水和物のうちの少なくとも1つと、シリカ粒子と、バインダーとの混合物を乾燥処理したものを用いることができる。
受容層2aの上面には、支持プレート2の長手方向略全幅にわたって延びる3つの配線層5が形成されている。配線層5は、作用配線層5w、対向配線層5c及び下地電極としての検出配線層5rによって構成されている。
作用配線層5w、対向配線層5c及び検出配線層5rは、それぞれ基端部が幅広の帯状に形成されている。作用配線層5w、対向配線層5c及び検出配線層5rは、それぞれ基端部と先端部との間の領域(中間部)が幅細の線状に形成されている。
作用配線層5wの先端部は、スペーサプレート3側から見て、収容室Sの領域に延びる略L字状に形成されている。対向配線層5cの先端部は、スペーサプレート3側から見て、作用配線層5wの先端を挟む略F字状に形成されている。検出配線層5rの先端部は、スペーサプレート3側から見て、収容室Sの領域に延びる幅広の帯状に形成されている。
本実施形態では、受容層2aの上側であって、これら作用配線層5w,対向配線層5c及び検出配線層5rの占有する領域を、それぞれ配線形成領域とする。
各配線層5の配線材料には、銀、パラジウム、白金、金、カーボンブラック、二酸化マンガンとカーボンブラックの混合物などを用いることができる。
各配線層5は、それぞれインクジェット法によって形成されている。すなわち、各配線層5は、それぞれ配線材料のナノ微粒子を分散媒で分散させた液状体を用い、粒径が数十μmからなる該液状体の液滴を配線形成領域に吐出し、配線形成領域に着弾した液滴を乾燥・焼成することによって形成されている。これによって、配線材料の使用を配線形成領域にのみ限定させることができ、配線材料の使用量を微小な液滴単位で制御させることができる。しかも、各触媒層6のサイズを数十μmの単位で制御させることができる。
各配線層5の中間部(幅細の線状部分)を除く領域には、それぞれ対応する配線層5の
領域全体を覆う触媒層6が積層されている。各触媒層6は、それぞれ対応する配線層5の領域全体に無電解メッキを施すための層であって、配線材料と電極材料に応じて選択された触媒材料からなる層である。
本実施形態では、受容層2aの上側であって、触媒層6の占有する領域を、それぞれ電極形成領域とする。
触媒材料には、例えば、カップリング剤と、カップリング剤によって固定された触媒金属と、からなるものを用いることができる。カップリング剤は、アミノ系有機官能基を有して触媒金属と金属錯体を形成し、該触媒金属を化学吸着によって配線層5の表面に保持させるものであればよい。カップリング剤には、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、トリメトキシシリルプロピルジエチレントリアミンなどを用いることができる。触媒金属は、無電解メッキにおける還元剤の酸化作用に対する触媒活性を有して、電極材料を無電解析出させることができるものであればよい。触媒金属には、例えばパラジウム、白金、金、ニッケル、銅、銀などを用いることができる。
また、触媒層6には、シリカ微粒子やアルミナ微粒子を触媒金属の担体としたものを用いることもできる。例えば、シリカ微粒子の表面に上記カップリング剤を吸着させて、カップリング剤の吸着したシリカ微粒子を触媒金属の化合物からなる溶液に浸漬し、微粒子表面に固定された触媒金属を還元させたものを用いることができる。触媒金属の化合物には、上記触媒金属の塩化物、水酸化物又は酸化物を用いることができ、その還元剤には、次亜燐酸ナトリウム、ジメチルアミンボラン、水素化ホウ素ナトリウムなどを用いることができる。
各触媒層6は、それぞれインクジェット法によって形成されている。すなわち、各触媒層6は、それぞれ上記触媒材料を含む液状体を粒径が数十μmの液滴にして電極形成領域に吐出し、電極形成領域に着弾した該液滴を乾燥させることにより形成されている。これによって、触媒材料の使用を電極形成領域にのみ限定させることができ、触媒材料の使用量を微小な液滴単位で制御させることができる。また、各触媒層6のサイズを数十μmの単位で制御させることができる。
各触媒層6の上側には、それぞれ対応する触媒層6の全体を覆う電極層7が積層されている。電極層7は、各配線層5の基端部(幅広部)を被覆する3つの端子電極層7Tと、作用配線層5wの先端部を被覆する作用電極層7Wと、対向配線層5cの先端部を被覆する対向電極層7Cと、検出配線層5rの先端部を被覆する被覆電極としての検出電極層7Rと、によって構成されている。
すなわち、バイオセンサ1の基端部には、各配線層5の基端部に対応して、幅広の帯状に形成された3つの端子電極層7Tが備えられている。この端子電極層7Tと、対応する触媒層6と、配線層5と、によって端子電極が構成されている。
また、バイオセンサ1の先端部には、作用配線層5wの先端部に対応した作用電極層7Wが形成されている。作用電極層7Wは、スペーサプレート3側から見て、収容室Sの領域に延びる略L字状に形成されている。この作用電極層7Wと、作用配線層5wと、対応する触媒層6と、によって作用電極が構成されている。
また、バイオセンサ1の先端部には、対向配線層5cの先端部に対応した対向電極層7Cが形成されている。対向電極層7Cは、スペーサプレート3側から見て、作用配線層5wの先端を挟む略F字状に形成されている。この対向電極層7Cと、対向配線層5cと、
対応する触媒層6と、によって対向電極が構成されている。
また、バイオセンサ1の先端部には、検出配線層5rの先端部に対応した検出電極層7Rが形成されている。検出電極層7Rは、スペーサプレート3側から見て、収容室Sの領域に延びる幅広の帯状に形成されている。この検出電極層7Rと、検出配線層5rと、触媒層6と、によって検出電極が構成されている。
作用電極層7W、対向電極層7C及び検出電極層7Rは、試料液が収容室Sに収容されるとき、各配線層5を試料液から保護する。検出電極に対応する端子電極は、収容室Sが試料液で満たされるとき、外部測定装置に接続されて、試料液が収容室Sに充填されたか否かを検出する。作用電極に対応する端子電極と、対向電極に対応する端子電極は、収容室Sが試料液で満たされるとき、それぞれ外部測定装置に接続されて、作用電極と対向電極との間に所定の電圧を印加する。
各端子電極層7T、作用電極層7W、対向電極層7C及び検出電極層7Rの電極材料には、耐腐食性を有した貴金属(例えば、パラジウム、白金、金など)を用いることができる。
各電極層7は、それぞれ無電解メッキ法によって形成されている。すなわち、各電極層7は、それぞれ上記電極材料を含むメッキ浴に各触媒層6を有した支持プレート2を浸漬させて、各触媒層6の領域、すなわち電極形成領域に電極材料を析出させることにより形成されている。これによって、電極材料の使用を電極形成領域にのみ限定させることができ、電極材料の使用量を触媒層6の単位、すなわち微小な液滴単位で制御させることができる。また、各電極層7のサイズを数十μmの単位で制御させることができる。
作用電極層7W、対向電極層7C、検出電極層7Rの表面であって、収容室Sの内部に位置する表面には、それぞれ共通する試薬層Eが積層されている(図2において濃いグラデーションを付した領域)。試薬層Eには、酸化還元酵素やメディエータなどが含まれている。メディエータは、電極と酵素との間の電子移動媒体として機能するものでる。メディエータには、例えば、フェリシアン化アルカリ金属(フェリシアン化カリウム、フェリシアン化リチウム、フェリシアン化ナトリウムなど)p−ベンゾキノン、メチレンブルー、フェナジンエトサルフェート、などの酸化還元性の有機又は無機化合物の1種あるいは2種以上の組み合わせて用いることができる。酸化還元酵素は、対象成分(例えば、グルコース、乳酸、尿酸、ビリルビン、コレステロールなど)の酸化還元酵素であって、グルコースオキシターゼ、ラクテートオキシターゼ、コレステロールオキシターゼ、ビリルビンオキシターゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、ラクテートデヒドロゲナーゼなどを用いることができる。
試薬層Eは、試薬層Eの構成成分(例えば、酸化還元酵素やメディエータ)を溶解させた水溶液を調製し、該水溶液を作用電極層7W、対向電極層7C及び検出電極層7Rの表面に滴下して乾燥させることにより形成されている。
導入口Hから試料液(グラデーションを付した領域)が導入されるとき、試料液は、毛細管力によって収容室Sの内部に引き込まれる。連通孔4aは、収容室Sの内圧を大気圧にして収容室Sの内圧上昇を回避させる。すなわち、収容室Sの内部が、試料液で満たされる。
試薬層Eは、収容室Sが試料液で満たされるとき、試料液中に溶解して測定対象としての測定溶液を生成する。測定溶液は、試料液の基質と酸化還元酵素との間で酵素反応を進行させてメディエータを還元させる。還元されたメディエータを電気化学的に酸化すると
き、試料液の基質濃度に応じた電流値が検出される。
次に、上記バイオセンサ1の製造方法について図3〜図6に従って説明する。図3は、バイオセンサ1の製造工程を示すフローチャートであり、図4〜図6は、各製造工程を説明する図である。
図3において、まず、インクジェット法を利用して配線層5を描画する(第1描画工程としての配線層描画工程:ステップS11)。図4において、マザープレート2Mは、複数の支持プレート2を切り出し可能にしたマザー基板であって、矢印方向に搬送される。液滴吐出ヘッド20は、圧電素子や抵抗加熱素子などの圧力発生素子と、孔径が数十μのノズルNと、を有し、圧力発生素子の駆動にともなって、粒径が数十μmの微小な液滴をマザープレート2Mに向けて吐出させる。
液滴吐出ヘッド20は、配線材料を含む液状体(例えば、銀インク)を配線用液滴D1(第1液滴)にしてノズルNから順次吐出する。液滴吐出ヘッド20は、受容層2aに規定された各配線形成領域に配線用液滴D1の合一した配線層液状パターン5Lを描画する。
図3において、配線層描画工程を終了すると、配線層液状パターン5Lを乾燥・焼成する(配線層焼成工程:ステップ12)。すなわち、配線層液状パターン5Lを加熱して配線層液状パターン5Lに含まれる分散媒や溶媒を蒸発させて乾燥し、乾燥した配線層液状パターン5Lをさらに加熱あるいは加圧して焼成し、作用配線層5w、対向配線層5c及び検出配線層5rを形成する。
これによって、配線材料の使用を配線形成領域にのみ限定させることができ、配線材料の使用量を配線用液滴D1の単位で制御させることができる。また、各触媒層6のサイズや形状を、配線用液滴D1のサイズ(数十μm)の単位で制御させることができ、配線用液滴D1の吐出位置を変更するだけで、配線層5の形状やサイズを変更させることができる。そして、配線層5をパターニングするためのマスキング工程、露光工程、エッチング工程などを必要としないため、生産工程数を大幅に削減できる。
図3において、配線層焼成工程を終了すると、インクジェット法を利用して触媒層6を描画する(第2描画工程としての触媒層描画工程:ステップS13)。図5において、液滴吐出ヘッド20は、触媒材料を含む液状体を触媒用液滴D2(第2液滴)にしてノズルNから吐出し、予め規定された各電極形成領域に触媒用液滴D2の合一した触媒層パターン6Lを描画して乾燥する。例えば、各電極形成領域にカップリング剤からなるパターンを描画して120℃のオーブン中で加熱乾燥し、配線層5にカップリング剤を固定する(修飾する)。さらに、固定したカップリング剤の上側(電極形成領域)に、金属触媒の微粒子を分散させた液状体のパターンを描画して乾燥し、カップリング剤に金属触媒の微粒子を固定して触媒層パターン6Lを形成する。
これによって、触媒材料の使用を電極形成領域にのみ限定させることができ、触媒材料の使用量を触媒用液滴D2の単位で制御させることができる。しかも、各触媒層6(電極層7)のサイズや形状を触媒用液滴D2(数十μm)の単位で制御させることができ、触媒用液滴D2の吐出位置を変更するだけで、触媒層6(電極層7)の形状やサイズを変更させることができる。そして、触媒層6をパターニングするためのマスキング工程、露光工程、エッチング工程などを必要としないため、生産工程数を大幅に削減できる。
図3において、触媒層描画工程を終了すると、触媒層6を活性化する(触媒層活性化工程:ステップS14を実行する)。すなわち、電極材料を析出させるための表面処理を触
媒層パターン6Lの表面に施す。例えば、カップリング剤に固定された金属触媒に紫外領域の光(例えば、波長が172nmのエキシマ光)を照射して金属触媒を活性化する。あるいは、金属触媒の微粒子を保護するための有機分子に紫外領域の光を照射し、該有機分子を分解除去して金属触媒を活性化する。
これによって、電極層7を形成するときに、無電解メッキの反応性を向上させることができ、電極層7の膜厚均一性と、触媒層6(配線層5)と電極層7との間の密着性と、を向上させることができる。
図3において、触媒活性化工程を終了すると、触媒層6に無電解メッキを施して電極層7を形成する(電極メッキ工程:ステップS15)。図6において、活性化された触媒層6は、無電解メッキ液に浸漬されて、触媒層6のある領域にのみ、すなわち電極形成領域にのみ、触媒層6の全体を覆うように電極材料を析出させる。無電解メッキ液は、電極材料(例えば、パラジウム、白金、金)を析出させるための公知のメッキ液であって、例えばパラジウムのメッキ液には、パラジウム化合物と、次亜燐酸化合物と、アンモニア及び飽和アルキルアミン化合物の少なくとも1種と、高分子ポリエチレンイミンと、不飽和アルキルアミンと、からなる混合液を用いることができる。
これによって、電極材料の使用を電極形成領域にのみ限定させることができ、電極材料の使用量を触媒層6の単位、すなわち触媒用液滴D2の単位で制御させることができる。
次に、上記のように構成した本実施形態の効果を以下に記載する。
(1)上記実施形態によれば、バイオセンサ1の配線層5は、配線材料を含む配線用液滴D1をマザープレート2Mの配線形成領域に吐出する配線層描画工程によって形成される。また、バイオセンサ1の触媒層6は、触媒材料を含む触媒用液滴D2をマザープレート2Mの電極形成領域に吐出する触媒層描画工程によって形成される。そして、バイオセンサ1の電極層7は、これら配線層5と触媒層6を下地にした無電解メッキによって形成される。
したがって、配線材料と電極材料が、それぞれ配線形成領域と電極形成領域の分だけ使用される。よって、配線材料と電極材料の使用量を最小量に留めることができ、バイオセンサ1の生産コストを低減させることができる。また、マスキング工程、露光工程、エッチング工程などを要することなく、配線層5と電極層7を形成させることができる。そのため、バイオセンサ1の生産工程数を削減させることができ、バイオセンサ1の生産性を向上させることができる。
(2)しかも、配線層5と触媒層6を、それぞれ微小な液滴によって描画する。そのため、電極層7の形状変更やサイズ変更、配線層5のサイズ変更や数量変更に対して、より柔軟に対応することができる。すなわち、バイオセンサ1の設計変更に対して、より柔軟に対応することができる。
(3)また、配線層5と触媒層6を数十μmの粒径からなる液滴によって描画するため、電極層7や配線層5の微細化と高精度化を図ることができる。
(4)上記実施形態によれば、触媒層描画工程は、収容室Sの領域に位置する配線層5に対して、該配線層5の領域全体を覆う触媒層パターン6Lを描画する。また、電極メッキ工程は、収容室Sの領域に位置する配線層5に対して、該配線層5の領域全体を覆う電極層7を形成する。したがって、測定溶液による配線層5の腐食を、電極層7によって防止させることができる。よって、耐腐食性を有しない低コストの導電材料によって配線材料を構成させることができる。そのため、バイオセンサ1の生産コストを、さらに低減させることができる。
(5)上記実施形態によれば、触媒層描画工程は、カップリング剤を触媒層6の一部として描画し、金属触媒を配線層5に固定する。したがって、触媒材料を電極形成領域に固定させることができ、電極層7の膜厚均一性と、配線層5と電極層7との間の密着性を向上させることができる。
(6)上記実施形態によれば、触媒層活性化工程は、カップリング剤に固定された金属触媒に紫外領域の光を照射する。したがって、紫外領域の光で活性化する光触媒を触媒材料として利用させることができ、触媒材料の選択範囲を拡大させることができる。そのため、本製造方法の適用範囲を拡大させることができる。
尚、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、電極層7の下層に配線層5を形成する構成にした。これに限らず、例えば、電極層7の上層に配線層5を形成する構成にしてもよい。この際、試料液による配線層5の腐食を回避するため、配線層5は、収容室Sの外側に形成される構成が好ましい。
・上記実施形態では、バイオセンサ1が、作用電極、対向電極、検出電極を有する構成にした。これに限らず、例えば、検出電極に代えて参照電極を設けても良く、あるいは、別途参照電極を追加する構成であってもよい。あるいは、作用電極と対向電極のみを有する構成であってもよい。
・上記実施形態では、支持プレート2が、受容層2aを有する構成にした。これに限らず、例えば、支持プレート2の上面に紫外線照射処理やプラズマ照射処理などの表面処理を施して液滴に対する所望の濡れ性を付与する構成であってもよい。すなわち、吐出した液滴が所望するサイズのパターンを形成する場合、支持プレート2は、受容層2aを有しない構成であってもよい。
・上記実施形態では、カップリング剤を加熱乾燥する構成にした。これに限らず、カップリング剤を室温で乾燥するだけの構成であってもよく、配線層5にカップリング剤を固定できる工程であればよい。
・上記実施形態では、触媒層6がカップリング剤を有する構成にした。これに限らず、例えば、触媒層6は、単に、触媒金属化合物を還元剤で還元させたものであってもよい。
・上記実施形態では、配線層5を単層構造で構成にした。これに限らず、配線層5を多層構造で構成してもよい。
本実施形態のバイオセンサを説明する分解斜視図。 同じく、バイオセンサを説明する図。 同じく、バイオセンサの製造工程を説明するフローチャート。 同じく、バイオセンサの製造工程を説明する図。 同じく、バイオセンサの製造工程を説明する図。 同じく、バイオセンサの製造工程を説明する図。
符号の説明
L…試料液、S…収容室、1…バイオセンサ、2…基板としての支持プレート、5…配線層、6…触媒層、7…電極層。

Claims (5)

  1. 配線材料を含む第1液滴を基板の配線形成領域に吐出して前記配線形成領域に配線を描画する第1描画工程と、
    触媒材料を含む第2液滴を前記基板の電極形成領域に吐出して前記電極形成領域に触媒層を描画する第2描画工程と、
    電極材料を含むメッキ液を前記触媒層に接触させて前記電極形成領域に電極層をメッキするメッキ工程と、
    を備えたことを特徴とするバイオセンサの製造方法。
  2. 請求項1に記載のバイオセンサの製造方法において、
    前記第1描画工程は、試料液を収容する収容室の領域に前記配線を描画し、
    前記第2描画工程は、前記収容室の領域の前記配線を覆う前記触媒層を描画し、
    前記メッキ工程は、前記収容室の領域の前記配線を覆う前記電極層をメッキする、
    ことを特徴とするバイオセンサの製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載のバイオセンサの製造方法において、
    前記第2描画工程は、前記触媒材料を前記配線に固定するためのカップリング剤を前記電極形成領域に吐出して前記触媒層を描画する、
    ことを特徴とするバイオセンサの製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか1つに記載のバイオセンサの製造方法において、
    前記第2描画工程は、前記触媒材料を含む第2液滴を前記基板の電極形成領域に吐出して乾燥し、前記電極形成領域に紫外領域の光を照射して活性化する、
    ことを特徴とするバイオセンサの製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか1つに記載のバイオセンサの製造方法において、
    前記第1描画工程は、銀、ニッケル、銅、カーボンブラックのいずれか1つを含む第1液滴を吐出して前記配線を描画し、
    前記メッキ工程は、パラジウム、白金、金のいずれか1つを含むメッキ液を前記触媒層に接触させて前記電極形成領域に電極層をメッキする、
    ことを特徴とするバイオセンサの製造方法。
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