JP2008045197A - 複合粉体の製造方法、及び複合粉体の製造装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】複合粉体の製造装置1において、筒型の回転ステージ2の内面に粉体11を載置する工程と、この回転ステージ2を回転させる工程と、この回転ステージ2に内包される位置に、付加物質の供給源3を導入する工程とによって、複合粉体の製造を行い、前記回転では、回転で生じる遠心力により、前記粉体を前記回転ステージに押し付ける。
【選択図】図1
Description
この修飾手法としては、例えば、液相中の粉体に対してpH調整等により粉体上に他物質を析出させる所謂液相法や、スパッタ装置等を用いて物理的に粉体修飾を行う物理的気相成長(Physical Vapor Deposition;PVD)法、及び化学的気相成長法(Chemical Vapor Deposition;CVD)法などが挙げられる。
例えば、液相法は最もよく利用され生産性も高いが、付加物質が還元されにくい金属や合金、窒化物、フッ化物である場合などには適用することが難しい。また、粉体の側が水分により変化してしまう材料である場合にも、適用することは難しい。
CVD法は、液相法に比べて材料面での制約が緩和されるものの、例えば付加物質として窒化物を用いる場合には還元性雰囲気で成膜を行うことが必須となるなど、制限が少なからず残る。また、生産性は液相法に比べて劣る。
PVD法の具体的手法としては、スパッタを挙げることができる(例えば特許文献1参照)。しかし、スパッタは成膜速度(成膜レート)が低いために、長い処理時間を要し、生産性を十分に高められないことが指摘されている。
これに対し、スパッタよりも成膜速度の高いPVD手法として、蒸着が知られている(例えば特許文献2参照)。すなわち、様々な修飾手法の中でも、制約が少ないPVD法、そして特に生産性にも優れた蒸着は、期待の大きい修飾手法となっている。
図3に、従来の複合粉体の製造装置101としてスパッタ装置の構成を示す。この従来のスパッタ装置においては、蒸着におけるのと異なり、付加物質が、その供給源となるターゲット103から直下に向けて放出される(ダウンスパッタ方式)。したがって、スパッタにおいては、加工対象物が粉体である場合にも、ターゲットから離間する直下に設けられた水平ステージ102上に粉体111を載置しておくだけで、スパッタを行うことができる。
これに対し、蒸着においては、付加物質の供給源となる蒸着源において、液状の付加物質を蒸発させることにより付加物質が放出されるため、付加物質は蒸着源よりも高い位置に向かう。したがって、加工対象物を蒸着源よりも下側に置いて上から蒸着を行うことは困難であるが、加工対象物を蒸着源より上側かつ蒸着源と対向させて(下向きに)配置固定しようとしても、加工対象物が粉体の場合には、この粉体が、予め与えられている加速度(重力)にひかれて落下してしまうため、安定的に固定することが困難となる。蒸発ではなく昇華によって蒸着を行えるケースもあるが、これは昇華に適した物質に限られてしまう。
まず、本発明に係る複合粉体の製造装置の実施の形態について説明する。
図1Aは、本実施形態に係る複合粉体の製造装置の概略構成図である。
この回転により、後述するように、粉体11の混合(撹拌)が図られるのみならず、粉体11が予め与えられている加速度(例えば重力)による蒸着源3などへの落下の回避も図られる。
この付加物質の供給源3には、電子線源4が併設されており、この電子線源4から電子線(Electron Beam)を蒸着源3内の付加物質へ向けて照射することにより(破線矢印)、付加物質を蒸発、放出させることができる(実線矢印)。このような、付加物質の放出を電子線によって促進する構成は、抵抗加熱などによって蒸発させることの難しい高融点物質による付加物質を用いる場合でも効率よく放出させることができる。
したがって、本実施形態に係る複合粉体の製造装置1によれば、従来障害となっていた付加物質の放出方向による制限の緩和ないし抑制が図られることにより、この制限によって組み合わせ困難とされてきた粉体と付加物質とを用いて、複合粉体を製造することが可能となる。
次に、本発明に係る複合粉体の製造方法の実施の形態について説明する。
本実施形態では、前述した本実施形態に係る複合粉体の製造装置1を用いる場合を例として、説明を行う。
回転ステージ2の回転数を充分に上げた後、筒型の回転ステージ2の内面に、粉体11を少しずつ導入する。
更に、予め回転速度を充分高くしておくことにより、回転ステージ2の内面に導入される多数の粉体11の混合(撹拌)を促すこともできるため、回転ステージ2の内面で粉体11が偏在することなく、より均等に付加物質の付着(修飾)を図ることができる。
なお、各粉体11が常に一定の向きで付加物質の供給源3に対向すると、その対向面のみに偏って付加物質が付着するおそれがあるため、回転ステージ2の(例えば回転方向とは異なる向きの)揺動や前述の撹拌補助部材などによって、粉体11同士の混合とともに、各粉体11自体の回転を促すことが好ましい。
本実施形態では、前述した仮想軸を、粉体11に予め与えられている加速度(本例では重力)の方向と直交する軸として選定するとともに、付加物質供給源3及び電子線源4の導入を、この(紙面と直交する)仮想軸に沿って行う。仮想軸の選定に加えて、導入方向の選定をこのように行うことにより、回転ステージ2の内面に粉体2を適度に押し付けた状態を維持したまま、付加物質供給源3及び電子線源4の導入をスムーズに行うことも可能となる。
このようにして、PVD法(本例では蒸着)により、図1Bに示すような、粉体11に付加物質12が付着した複合粉体13を製造する。
また、重力加速度との相対遠心加速度(RCF:Rerative Centrifugal Force)は、回転ステージ2の回転半径及び毎分回転数(rpm;revolution per minute)をr及びNとすると、単位Gにおいて、RCF=1118r N2×10−8で表されると考えられる。
各粉体11は、遠心力が1Gを超えた場合に回転ステージ2へと押し付けられる(落下等によって回転ステージ2から離れることがなくなる)。
したがって、回転ステージ2内の多数の粉体11が、予め与えられている加速度(本例では重力)の存在下で、回転ステージ2の内面に押し付けられる1G以上の力を受けるようにするために、回転ステージ2の(鉛直方向について)上端となる位置においても、重力加速度と同じ押し付け力が得られるように、遠心力として2G以上の力がかかるように運転することが好ましい。例えば、回転ステージ2の開放部の半径が50cmならば、必要な70rpm以上の毎分回転数で回転させることが好ましい。
本発明の実施例について説明する。
まず、第1の実施例として、燃料電池触媒用の複合粉体として、カーボン粉体に、付加物質として白金(Pt)とルテニウム(Ru)の合金を修飾することにより、複合粉体を製造した。
本実施例では、この燃料電池21の例えば水素極23を構成する触媒層23cと、酸素極24を構成する触媒層24cとに、前述した触媒用の複合粉体を用いることにより、液相法で作製した従来の複合粉体を触媒に用いた場合に比べて、燃料電池21の出力が約10%向上することを確認することができた。
検討は、前述した本実施形態に係る製造方法による蒸着と、従来方式による(水平ステージを用いる)スパッタを比較することにより行った。具体的には、蒸着源出力とスパッタ出力とを同程度に設定し、同量の粉体に対して一定量の付加物質を付着させるまでの時間を比較した。
その結果、処理時間は、本実施形態に係る製造方法による蒸着の方が、処理時間において1/3程度、つまり速度において3倍程度、効率よく処理を行えることが確認できた。
また、本実施形態に係る複合粉体の製造装置によれば、付加物質の供給源と、この付加物質の供給源を内包するための筒型の回転ステージとを有することから、PVD法による粉体への付加物質の付着において、付加物質の放出方向による制限が緩和ないし抑制されることにより、従来この制限によって組み合わせ困難とされてきた粉体と付加物質とによって、複合粉体を製造することが可能な製造装置を構成することができる。
回転ステージ2の形状選定の具体例としては、円筒形状の開放部に臨む端部に、粉体11の落下防止のためのガイドを設けた構成などが挙げられる。
また、本実施形態に係る複合粉体の製造方法によれば、特に付加物質の供給を蒸着で行う場合、スパッタ法やレーザーアブレーション法等の他のPVD法よりも高い成膜速度で製造を行うことができるため、短時間により多くの粉体を処理することが可能となり、生産性の向上も図られる。
また、複合粉体は燃料電池の触媒に限られない。すなわち本発明に係る複合粉体の製造方法は、様々な複合粉体の製造に用いることができる。
Claims (4)
- 物理的気相成長(Physical Vapor Deposition)法により、粉体に、該粉体とは異なる付加物質が付加された複合粉体を製造する複合粉体の製造方法であって、
内面を前記粉体の載置面とする、筒型の回転ステージに、前記粉体を載置する工程と、
前記回転ステージを、前記筒型の開放部を含む仮想軸を中心として回転させる工程と、
前記回転ステージに内包される位置に、前記付加物質の供給源を導入する工程と
を有し、
前記回転で生じる遠心力により、前記粉体を前記回転ステージに押し付ける
ことを特徴とする複合粉体の製造方法。 - 前記仮想軸を、前記粉体に予め与えられている加速度の方向と直交する軸として選定し、
前記付加物質の供給源の導入を、前記仮想軸に沿って行う
ことを特徴とする請求項1に記載の複合粉体の製造方法。 - 前記物理気相成長法が、蒸着であり、前記付加物質の供給源が、蒸着源
ことを特徴とする請求項1に記載の複合粉体の製造方法。 - 付加物質の供給源と、該付加物質の供給源を内包するための筒型の回転ステージとを有する
ことを特徴とする複合粉体の製造装置。
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