図1に、本発明のボール搭載装置の一例を、平面図(上面図)により示している。ボール搭載装置1は、ボールマウンタとも呼ばれ、基板100の所定の位置に、導電性ボールを配列するためのものである。本例では、基板100として、公称8インチまたは12インチの半導体ウエハを用いている。なお、基板100は、半導体ウエハに限定されるものではない。基板は、例えば、半導体が実装される半導体実装基板(半導体実装用基板)や多層基板などを含む、矩形状のプリント配線板(プリント回路板)であっても良い。
基板100に搭載される導電性ボールは、電極などとして機能するものであり、例えば直径が1mm以下、具体的には、直径が10〜500μm程度である。導電性ボールには、半田ボール(銀(Ag)や銅(Cu)などを含む、主成分が錫(Sn)からなるボール)、金あるいは銀などの金属製のボール、さらに、セラミックス製のボールあるいはプラスチック製のボールに導電性のメッキなどの処理が施されたものが含まれる。本例では、導電性ボールとして、90μm程度の半田ボールを用いている。
このボール搭載装置1は、減圧吸引などの方法によりウエハの反りを矯正した状態でウエハをセットするためのXYZθステージ2と、このステージ2に対してウエハ100をロード(供給)およびアンロード(収納)するためのローダ/アンローダ装置3と、ウエハ100の位置を微調整するためのプリアライメント装置4と、ウエハ100の反りを矯正するための矯正装置5と、ウエハ100にフラックスを塗布するためのフラックス印刷装置(フラックス塗布装置)6と、ウエハ100にマスク110を介して導電性ボールを配列(搭載、配置)するためのボール充填装置10aと、X軸テーブル、Y軸テーブル、Z軸テーブル、およびθテーブルを備えるステージ移送装置7とを有する。プリアライメント装置4、ローダ/アンローダ装置3、矯正装置5、フラックス印刷装置6、およびボール充填装置10aは、X方向に並んで配置されている。ウエハ100は、ステージ2の上面(本例ではX−Y平面)の上に支持された状態で、ステージ移送装置7により、矯正装置5、フラックス印刷装置6、およびボール充填装置10aの間を移動する。なお、ウエハ100をステージ2に保持する方法は、減圧吸着に限らず、静電チャックのようなものであってもよく、また、それらを併用することも可能である。
図2に、本発明の第1の実施形態にかかるボール充填装置の概略構成を平面図(上面図)により示してある。図3に、図2のボール充填装置の概略構成を断面図により示してある。
ボール充填装置10aは、導電性ボールをウエハ100に配置するための複数の開口を備えたマスク110を、このウエハ100にセットした状態で、マスク110の複数の開口に導電性ボールを充填するためのものである。マスク110の複数の開口は、個々の導電性ボールを基板(ウエハ)100の所定の場所に配置するためのものであり、開口の径は導電性ボールのサイズに対応したものである。
ボール充填装置10aは、マスク110の表面、例えば、上面(本例ではX−Y平面)110aを移動する、独立した2つの部分A1およびA2(以下、動区域という、図3参照)を形成するためのボール保持手段20aと、ボール保持手段20aを移動させるための移動装置(移動手段)30と、2つの動区域A1およびA2内に導電性ボールを補給するためのボール供給装置(ボール補給手段、以下、ボール補給装置という)40と、ボール保持手段20a、移動装置30、およびボール補給装置40を制御するための制御部50とを備えている。
ボール保持手段20aにより形成される2つの動区域A1およびA2は、独立した2つの導電性ボールの集団をマスク110の表面(上面)110aの異なる場所にそれぞれ保持するためのものである。マスク110の上面110aの2つの動区域A1およびA2に独立した2つの導電性ボールの集団をそれぞれ保持するためのボール保持手段20aとしては、2つのヘッド(ディスペンサ)21aおよび21bを備えたものを挙げることができる。本例では、2つのヘッド21aおよび21bは、ヘッド支持装置(ヘッド支持機構)35により支持されている。ヘッド支持装置35もまた、その動作が制御部50により制御されるようになっている。
ヘッド21aおよび21bを含むボール保持手段20aを移動させるための移動装置(移動手段、ヘッド移動装置、ヘッド移動手段、ヘッド移動機構)30は、X軸テーブル31xと、一対のY軸テーブル31y1および31y2とを有している。X軸テーブル31xは、モータ32xを備えており、一対のY軸テーブル31y1および31y2は、それぞれ、モータ32y1および32y2を備えている。X軸テーブル31xは、一対のY軸テーブル31y1および31y2を跨ぐように配置されている。ヘッド支持装置35がX軸テーブル31xにより動かされ、X軸テーブル31xがY軸テーブル31y1および31y2により動かされることにより、ヘッド21aおよび21bを含むボール保持手段20aは、ヘッド支持装置35を介して、マスク110の表面110aを2次元方向の任意の方向に移動する。
ヘッド支持装置35は、X方向に延び、2つのヘッド21aおよび21bの間の距離を変えられるX軸テーブル36x1および36x2を備えている。ヘッド用X軸テーブル36x1および36x2は、それぞれ、モータを備えており、ヘッド21aおよび21bを、X方向の同じ方向に任意の速度で、あるいは同期して、またはX方向の異なる方向に任意の速度で移動することができる。
また、ヘッド支持装置35は、ヘッド用Z軸テーブル36z1および36z2を備えている。ヘッド用Z軸テーブル36z1および36z2は、それぞれ、モータを備えている。したがって、2つのヘッド21aおよび21bは、X方向(第1の方向)に任意の間隔で並んだ状態で、Z方向(本例では上下方向)に沿って高さが可変する。
また、ヘッド支持装置35は、ヘッド回転用の2つのモータ37aおよび37bと、モータ37aおよび37bとヘッド21aおよび21bとをそれぞれ接続するためにZ方向に延びる軸(シャフト)38aおよび38bとを備えている。モータ37aおよび37bは、ヘッド用X軸テーブル36x1および36x2にそれぞれ支持されている。したがって、ヘッド支持装置35は、2つのヘッド21aおよび21bをそれぞれ支持するとともに、ヘッド21aおよび21bを、シャフト38aおよび38bを中心として、それぞれ回転させることが可能である。すなわち、本例では、これらのシャフト38aおよび38bの中心軸が、それぞれ、ヘッド21aおよび21bの回転軸(マスク100に対して垂直な軸)P1およびP2となり、ヘッド21aおよび21bは、それぞれ、垂直な軸P1およびP2を中心として回転(自転)する。2つのヘッド21aおよび21bを備えるボール保持手段20aは、ヘッド支持装置35を介して、ヘッド移動装置30に移動可能に支持されている。
ボール保持手段20aを支持するヘッド支持装置35のヘッド用X軸テーブル36x1および36x2は、取付金具33を介して、移動装置30のX軸テーブル31xに取り付けられている。したがって、ヘッド支持装置35に支持されている2つのヘッド21aおよび21bは、2つの導電性ボールの集団がマスク110の上面110aにおいて、X方向および/またはY方向に同期して移動するように動かされる。より詳しくは、本例では、ヘッド21aおよび21bは、上面110a(X−Y平面)において、ヘッド支持装置35によりX方向の間隔を固定あるいは可変させながら、移動装置30によりY方向に同期して移動される。以下、本例では、移動装置30を、ヘッド移動装置という。
図3に示すように、ボール保持手段20aには、2つのヘッド21aおよび21bによりそれぞれ形成される2つの動区域A1およびA2内のそれぞれに導電性ボールを補給するためのボール補給装置40が搭載されている。ボール補給装置40は、1つのボールタンク41と、このボールタンク41を支持するサポート42zとを備えている。サポート42zを介して、ボール補給装置40は、ボール保持手段20aと同期して移動する。
ボール補給装置40は、2つのヘッド21aおよび21bの内部に、導電性ボールを補充するようになっている。本例では、シャフト38aおよび38bの内部が中空となっており、それぞれのシャフト38aおよび38bの上端部に、ボールタンク41から延びるフレキシブルチューブ43aおよび43bがそれぞれ差し込まれている。これにより、ボールタンク41からヘッド21aおよび21bの内部、すなわち、これらのヘッド21aおよび21bにより規定される動区域A1およびA2のそれぞれへボールを供給するための経路(ボール供給路)49aおよび49bが、フレキシブルチューブ43aおよび43bと、シャフト38aおよび38bとにより構成される。すなわち、シャフト38aおよび38bは、それぞれ、ヘッド21aおよび21bの回転軸として機能するとともに、ボール供給路49aおよび49bの一部をなす。
したがって、このボール補給装置40では、それぞれの2つのヘッド21aおよび21bを介して、2つの動区域A1およびA2内に導電性ボールを供給可能である。つまり、ボール補給装置40により、2つの導電性ボールの集団に対し、導電性ボールが補給される。
なお、上述したボール補給装置40では、1つのボールタンクから2つの動区域A1およびA2内に、導電性ボールが補充されるようになっているが、ボール補給装置は、これに限定されるものではない。図4に、ボール充填装置の変形例を断面図により示してある。ボール補給装置40は、図4に示すように、2つの動区域A1およびA2に対して、それぞれ、ボールタンク41aおよび41bを備えたようなものであってもよい。ボールタンク41aおよび41bは、それぞれ、サポート42z1および42z2に支持されている。
いずれのボール補給装置においても、それぞれの動区域A1およびA2に対して独立に、あるいは異なるタイミングでボールを供給するように制御できることが望ましい。なお、ボール補給装置は、それぞれの動区域A1およびA2に対して、同時に、同量のボールを供給するように制御してもよい。
また、上述したヘッド支持装置35では、2つのヘッド21aおよび21bの間の距離を変えられるように、モータを備えるヘッド用X軸テーブル36x1および36x2を有している。ヘッド支持装置に設けることが可能な構成であり、2つのヘッド21aおよび21bの間の距離が変えられるようにするための構成は、これに限定されるものではない。
図5に、ボール充填装置のさらなる変形例を一部断面図により示してある。このボール充填装置10aは、特に、円板状のウエハ100に導電性ボールを搭載する際に好適なものである。ボール充填装置10aでは、後述するように、2つのヘッド21aおよび21bの間隔をウエハ100の直径の半分の長さにセットし、この間隔を維持して、ウエハ100に導電性ボールを搭載(配置)する場合がある。導電性ボールを搭載するウエハ100の多くは、8インチまたは12インチである。したがって、2つのヘッド21aおよび21bの間隔は、4インチと6インチとの2つの間隔に変更できることが望ましい。図5に示したボール充填装置10aでは、X方向に沿って設けられた互いに隣り合う第1のヘッド21aと第2のヘッド21bとの間隔を、4インチと6インチとの2つの間隔に、手動で変更できるように構成されている。
図5に示したボール充填装置10aでは、ヘッド支持装置35は、ベース81と、このベース81に設けられ、第1のヘッド21aとの間隔が変わるように第2のヘッド21bをスライド支持する一対のレール82と、第2のヘッド21bのベース81に対するスライドを固定するストッパ83とを備えている。第1のヘッド21a、モータ37a、およびシャフト38aなどは、支持部材89aを介して、ベース81に固定されている。第2のヘッド21b、モータ37b、およびシャフト38bなどは、支持部材89bを介して、ベース81に設けられたレール82により、X方向にスライド可能に支持されている。
ストッパ83は、ベース81に設けられた2つのネジ孔84aおよび84bと、支持部材89bをベース81に固定するためのネジ(ボルト)85とを備えている。支持部材89bを挟んでネジ85をネジ孔84aまたは84bにねじ込むことにより、第2のヘッド21bのベース81に対する位置が固定される。本例では、第1のネジ孔84aにネジ85をねじ込むことにより、第1のヘッド21aと第2のヘッド21bとの間隔(X方向)が4インチに保たれる。また、第2のネジ孔84bにネジ85をねじ込むことにより、第1のヘッド21aと第2のヘッド21bとの間隔(X方向)が6インチに保たれる。なお、本例では、ネジ孔を2つとし、設定できる間隔を2つとしているが、ネジ孔の数を増やすことにより、設定できる間隔を増やすことも可能である。
図6に、ボール充填装置のさらなる変形例を一部断面図により示してある。このボール充填装置10aは、平面円形状の半導体ウエハ100に導電性ボールを搭載する際にも用いることができる。特に、平面矩形状のプリント配線板100に導電性ボールを搭載する際に好適である。基板として、プリント配線板100を用いる場合、2つのヘッド21aおよび21bの間隔は、後述するように、プリント配線板100の短辺の長さの半分とし、この間隔を維持して、プリント配線板100に導電性ボールを搭載(配置)することがある。導電性ボールを搭載するプリント配線板100は、半導体ウエハなどとは異なり、そのサイズが様々である。したがって、2つのヘッド21aおよび21bの間隔を、任意の間隔に連続的に変更できることが好ましい。図6に示したボール充填装置10aでは、X方向に沿って設けられた互いに隣り合う第1のヘッド21aと第2のヘッド21bとの間隔を、所定の範囲内において任意の間隔に、手動で変更できるように構成されている。
図6に示したボール充填装置10aが備えるストッパ83は、ハンドル86を含み、ハンドル86をロック位置に合わせることにより、第2のヘッド21bのベース81に対するスライドが固定されるようになっている。また、ハンドル86をロック位置から90度回転させて、解除位置に合わせることにより、第2のヘッド21bがベース81に対してスライド可能となる。
したがって、ハンドル86を解除位置に合わせ、第2のヘッド21bをベース81に対してスライドさせることにより、第1のヘッド21aと第2のヘッド21bとの間隔を、任意の間隔に手動で変更できる。その後、ハンドル86をロック位置に合わせることにより、第1のヘッド21aと第2のヘッド21bとの間隔を任意の間隔に保持できる。
図6に示したボール充填装置10aは、さらに、支持部材89aに取り付けられたスケール87と、支持部材89bに取り付けられた指針88とを含む。このボール充填装置10aでは、スケール87を指し示す指針88の位置を確認しながら、第2のヘッド21bをベース81に対してスライドさせることにより、第1のヘッド21aと第2のヘッド21bとの間隔を所望の値に容易に設定することができる。
図5および図6に示したボール充填装置10aは、ヘッド21aおよび21bの間隔を変えるための、モータやテーブルを省略できる。第1のヘッド21aと第2のヘッド21bとの間隔を容易に変更できる、簡単かつ安価な構成のボール充填装置を提供できる。なお、図5および図6に示した例では、第2のヘッド21bがベース81に対してスライドするように構成されているが、第1のヘッド21aおよび/または第2のヘッド21bがベース81に対してスライドするように構成してもよい。
図2に戻り、ボール保持手段20a、移動装置30、ヘッド支持装置35、およびボール補給装置40を制御するための制御部(制御ユニット、制御手段)50は、ボール保持手段20aのX軸テーブル36x1および36x2、Z軸テーブル36z1および36z2、ヘッド回転用のモータ37aおよび37b、ヘッド移動装置30のX軸テーブル31x、Y軸テーブル31y1および31y2などとも制御情報を送受信できる状態に接続されており、これらの動作を制御する。
この制御部50は、マスク110をウエハ100にセットした状態で、2つのヘッド21aおよび21bにより、独立した2つの導電性ボールの集団を、マスク110の上面110aの一部の2つの動区域A1およびA2にそれぞれ保持する第1の機能(ボール保持機能)91を備えている。また、この制御部50は、各動区域A1およびA2の軌跡の一部が重複し、かつ、互いに異なる動区域A1およびA2の軌跡の一部が重複するように、2つの動区域A1およびA2を移動させる第2の機能(移動機能、動区域移動機能、ヘッド移動機能)92を備えている。より具体的には、第2の機能92は、各動区域A1およびA2が通過する各領域内においては、各動区域A1およびA2の軌跡の一部が重複し、各領域の境界においては、互いに異なる動区域の軌跡の一部が重複するように、ヘッド移動装置30により2つのヘッド21aおよび21bを移動させる機能である。
さらに、この制御部50は、補給装置40から、ヘッド21aおよび21bを介し、導電性ボールの集団に対して補給されるボールの量も制御する。この制御部50は、ボール補給装置40により、2つの動区域A1およびA2の内部に、それぞれ、導電性ボールが存在する領域と、導電性ボールが存在しない領域とが形成されるように、導電性ボールを補給する第3の機能(ボール補給機能)93を備えている。
この制御部50は、ボール搭載装置1全体を制御する機能、すなわち、ステージ2および装置3,4,5および6を制御する制御部を兼ねていてもよい。ステージ2および装置3,4,5および6を制御する制御部は、この制御部50と別体であってもよい。なお、制御部50の多くは、コンピュータあるいはマイクロコンピュータを用いて構成される。
また、制御部50はメモリを含み、そのメモリには、制御用のプログラム50pが格納されている。制御用のプログラム50pは、ボール保持手段20a(ヘッド21aおよび21b)の動作を制御するためのプログラムや、ボール補給装置40の動作を制御するためのプログラムを含む。すなわち、制御用のプログラム50pは、ヘッド21aおよび21bの軌跡(移動ルート)や、ヘッド21aおよび21b内へのボールの補給(補給のタイミングおよび補給量)を制御するためのプログラムを含む。
制御用のプログラム(プログラム製品)50pは、ROMなどの適当な記録媒体に記録して提供される。本例のマイクロボールマウンタ1や、本例のボール充填装置10aは、LANなどのコンピュータネットワークを介して制御することも可能であり、プログラム50pをネットワーク上のサーバなどから提供することも可能である。
図7に、2つのヘッド21aおよび21bをマスク上において移動させている状態を、断面図により示してある。図8に、2つのヘッド21aおよび21bの構成を上方から透かして示してある。
マスク110は、微小な導電性ボールBが一つずつ挿入されるのに適したサイズの複数の開口111を備えている。ウエハ100は、通常、複数の半導体デバイスを含んでおり、マスク110の複数の開口111は、これら半導体デバイスの所定の位置に導電性ボールBを規則的に配置するため、繰り返しのあるデザイン(パターン)で形成されている。マスク110に設けられた複数の開口111は、小開口、開孔、パターン孔などとも称されている。また、これらの開口111をまとめて、開口パターンなどと称することもある。このマスク110は、ある程度の張力(テンション)が与えられた状態でマスク枠に固定され、マスク保持装置11(図1参照)により保持されている。本例では、マスク110は、直径90μmの導電性ボールBをウエハ100に搭載するために形成されており、マスク厚は、50μm程度であって、直径が100μm程度の孔111が、ウエハ100に形成された電極101に対応した位置にあけられている。孔111の開口端は、面取りされていても良い。
本例では、マスク110の複数の開口111に導電性ボールBを充填するための2つのヘッド21aおよび21bは、実質的に同一の構成である。ヘッド21aおよび21bは、それぞれ、円盤状のスキージサポート61aおよび61bと、スキージサポート61aおよび61bの下面からマスク110の上面110aに向かって突き出た、12セットのスキージ62aおよび62bとを備えている。スキージサポート61aおよび61bの中心は、それぞれ、マスク110に対して垂直方向に延びた上記シャフト38aおよび38bに繋がっている。
ヘッド21aおよび21bは、それぞれ、上記モータ37aおよび37bにより、シャフト38aおよび38bを中心として、スキージサポート61aおよび61bを上方から見て、反時計方向に回転駆動される。このヘッド21aおよび21bでは、モータ37aおよび37bが、それぞれ、シャフト38aおよび38bを中心としてスキージサポート61aおよび61bをマスク110の上面110aに沿って回転駆動する手段となる。シャフト38aおよび38bは、それぞれ、ヘッド移動装置30により、マスク110の上面110aに沿って、X−Y平面の任意の方向に移動される。したがって、ヘッド21aおよび21bは、それぞれ、ヘッド移動装置30により、回転しながら、マスク110の上面110aの上を任意の軌跡を描くように移動できる。なお、ヘッドの回転方向(ヘッドの自転方向)は、上方から見て時計回りの方向であってもよい。ヘッドの回転方向を上方から見て時計回りの方向とする場合、スキージは、鏡像反転させた状態で配置するとよい。
スキージ62aおよび62bは、マスク110の上面110aに比較的柔らかく接し、上面110a上のボールBを掃き集めることができるものであれば良い。好ましくは、スキージ62aおよび62bは、いったん開口111に挿入されたボールBを掻き出さない程度の弾性を備えたものであるとよい。このようなスキージの一例としては、マスク110の上面110aに接するように曲げられたワイヤー、マスク110の上面110aに接するような形状のゴムプレートあるいはスポンジのような弾性部材、マスク110の上面110aに接する程度に伸びた無数のワイヤーなどを挙げることができる。
本例では、ヘッド21aおよび21bは、スキージ62aおよび62bとして、それぞれ、極細のワイヤーが複数本束ねられたものであって、その両端をかしめることにより1本のスキージとして機能するように構成されたスキージを、12セット用いている。12セットのスキージ62aおよび62bは、それぞれ、全体がU字状に成形され、回転シャフト38aおよび38bと同心円状の内円A1およびA2の回りに、円周方向に均等なピッチで、内円A1およびA2の接線方向の反時計方向に、外円C1およびC2まで、直線的に延びるように配置されている。
したがって、スキージ62aおよび62bがマスク110の上面110aに接した状態で、スキージサポート61aおよび61bを上方から見て反時計方向に、ヘッド21aおよび21bを回転させると、スキージ62aおよび62bの進行方向(回転方向)にあるボールBは、それぞれ、2つの内円A1およびA2に向けて押し払われる。このため、マスク110の上面110aに残ったボールBは、2つの内円A1またはA2に移動され、内円A1またはA2の内部に集められる。つまり、このヘッド21aおよび21bを用いたボール保持手段20aでは、内円A1およびA2は、導電性ボールの集団Bg1およびBg2を、マスク110の上面110aのそれぞれ異なる一部に保持するための2つの動区域A1およびA2に対応する。そして、スキージ62aおよび62bが、ボールを動区域A1およびA2に囲い込むための手段となる。したがって、本例では、2つの動区域A1およびA2は、実質的に同一形状であり、これら動区域A1およびA2は、ヘッド21aおよび21bとともに、マスク110の上を移動する。
また、本例では、動区域A1およびA2は、それぞれ、マスク110の上面110aであって、マスク110に対して垂直な軸P1およびP2(シャフト38aおよび38b)を中心とする円形の動区域となり、スキージ62aおよび62bは、それぞれ、マスク110に対して垂直な軸P1およびP2(シャフト38aおよび38b)を中心とする回転により、動区域A1およびA2の周囲から、導電性ボールBを集める手段となり、マスク110の上面110aの独立した2つの部分、すなわち、動区域A1およびA2に、独立した2つの導電性ボールの集団Bg1およびBg2をそれぞれ保持する。
そして、ヘッド21aおよび21bが回転することにより、導電性ボールBは、逸散しないように、ヘッド21aおよび21bにより、動区域A1およびA2の周辺である外円C1およびC2から、それぞれ、動区域である内円A1およびA2に集められる。
すなわち、図7および図8において、内円(動区域)A1およびA2と、外円C1およびC2とは、仮想的または設計的なものである。ヘッド21aおよび21bを、マスク110の上面110aにおいて、ヘッド移動装置30により回転させながら移動させると、マスク110の上に残った、内円A1およびA2と外円C1およびC2の範囲内の過剰な導電性ボールBは、ヘッド21aおよび21bの中心の内円A1およびA2の方向にそれぞれ集められる。
ヘッド21aおよび21bでは、それぞれ、複数のスキージ62aおよび62bが、回転する方向(進行方向)に多重に配置されている。このため、ヘッド21aおよび21bが移動することにより、内円A1およびA2の周囲に食み出した導電性ボールBは次々と移動先の内円A1およびA2の方向に集められる。したがって、ヘッド21aおよび21bの回転中心の回りの円形の動区域A1およびA2に、それぞれ、複数の導電性ボールBからなる導電性ボールの集団Bg1およびBg2が保持される。ヘッド21aおよび21bの移動とともに、円形の動区域A1およびA2が移動し、その中に保持された導電性ボールの集団Bg1およびBg2も移動する。そして、円形の動区域A1およびA2に保持された導電性ボールBは、マスク110の開口111に順次充填される。
また、動区域A1およびA2に保持される導電性ボールBは、開口111に充填されることにより消費される。このため、消費されるボール量に基づいて、ボールBはボール補給装置40から動区域A1およびA2内に投入(補給、供給)される。例えば、時間当たりに消費されるボール量に基づいて、所定時間間隔でボールBを供給することにより、動区域A1およびA2内に、常に適当な量のボールBを存在させておくことができる。ボール補給装置40により、動区域A1およびA2の導電性ボールの集団Bg1およびBg2の密度は維持され、動区域内のボール密度の低下により開口111にボールBが充填されなくなることを抑制できる。
また、図7に示すように、動区域A1およびA2を移動させると、それぞれその内部に、導電性ボールBが存在する領域E1と、導電性ボールが存在しない領域E2とが存在する。さらに、導電性ボールBが存在する領域E1と導電性ボールBが存在しない領域E2との境界部分に、導電性ボールBが一層となる部分(一層で存在する部分)Eができる。導電性ボールBが一層となる部分Eでは、導電性ボールBが一層に敷き詰められているとは限らず、導電性ボールBが疎密に存在することもあり、基本的には、導電性ボールBの大部分が多層に重なっておらず、また、積層されていない状態で存在する。
動区域A1およびA2は、それぞれその内部に導電性ボールBが不均一に分布した状態で、ヘッド21aおよび21bとともに、マスク110上を移動する。導電性ボールBが一層となる部分Eが、マスク110の開口111を通過するときに、導電性ボールBはマスク110の開口111に最も効率良く充填される。そして、充填により導電性ボールBが消費された部分には、導電性ボールBが多層あるいは積層された状態で存在する部分からボールBが補充されやすい。したがって、動区域A1およびA2の内部に導電性ボールBが一層となる部分Eが形成されるように、各動区域A1およびA2に、補給装置40から導電性ボールBを補給するようにするとよい。
動区域A1およびA2内の導電性ボールBの量が少なすぎると、ボールBが存在する領域E1に対し、ボールBが存在しない領域E2が大きくなり、充填ミスの原因になる。動区域A1およびA2の移動に追従し、充填に適した領域Eを適当な面積だけ確保するためには、ボールBが存在する領域E1に、ある程度、積層した状態でボールを蓄積しておくことが望ましい。
一方、動区域A1およびA2内の導電性ボールBの量が多すぎると、動区域A1およびA2内から導電性ボールBが逸散し易くなり、導電性ボールBの利用効率を低下させることになる。さらに、動区域A1およびA2内では、導電性ボールBのほとんどが積層された状態で存在することになり、動区域A1およびA2内に導電性ボールBが存在しない領域E2が形成されにくくなる。このため、限られた面積に大量のボールBが存在して相互に干渉し、ボールが詰まり、自由落下による開口111へのボールBの充填が阻害されやすく、充填ミスが発生する要因となる。
動区域の面積を大きくすると、その面積に対応して大量のボールを動区域に存在させる必要がある。しかしながら、大量のボールを広い面積に均等に保持することは非常に難しく、動区域によりボールを充填することが予定されている領域をカバーするように、ボールBが存在する領域E1を広く維持することは難しくなる。加えて、動区域を広げても、ボールBが一層で存在する領域Eを広げることはそれほど容易ではない。スキージの動きが動区域の中心部のボールまで伝わりにくかったり、ボールの積層化が進み易いなど、種々の要因がある。これに対し、動区域を小さく分割することにより、動区域内における導電性ボールの量を適当な範囲に維持することができ、領域Eを安定して形成できる。複数の動区域を設けると、各動区域A1およびA2の移動状況などにより、各動区域A1およびA2におけるボールの消費量は個別に変動する可能性がある。しかしながら、その変動は、ボール補給装置40により、各動区域A1およびA2のそれぞれに対して独立にボールを補給することにより解決できる。
動区域A1およびA2内における導電性ボールBの適当な量は、例えば、導電性ボールBが動区域A1およびA2の面積を一層で均一にカバーする基準量αに対して1/4α〜10αの範囲が好ましく、1/4α〜3αの範囲であることがさらに好ましい。導電性ボールBが動区域A1およびA2内に移動中に存在する面積の割合と定義した存在比(動区域A1およびA2の面積に対する導電性ボールBが存在する領域E1の面積の比)で記述すると、存在比は、1/10〜2/3の範囲が好ましく、1/5〜2/5の範囲がさらに好ましい。
動区域A1およびA2内のボール減少は、概略推測できるので、この推測に基づき、ボール補給装置40からボールBを連続的あるいは間欠的に供給することができる。また、この充填装置10aにおいては、円形の動区域A1およびA2という限られた面積に、開口111に充填するためのボールBが常に集められる。したがって、動区域A1およびA2に集められた導電性ボールBの状態を監視することにより、開口111にボールBが充填される状況を制御することもできる。ボール保持手段20a(例えば、ヘッド21aおよび21b)に、動区域A1およびA2のボール密度をそれぞれ検出する光学センサーを設け、ボールの状態を監視したり、ボールの補給の制御を行ってもよい。
ところで、本例の充填装置10aを用いて導電性ボールBをウエハ100に配列する際、導電性ボールBの充填ミスの発生率を低減させるためには、マスク110の上面110aのうちの、導電性ボールBを搭載すべき領域(以下、振込み領域という)Dの全域を漏れなくカバーすることが必要となる。充填ミスの発生率をさらに低減させるためには、動区域A1および/または動区域A2が、振込み領域Dの全域において、1回以上通過するように、ヘッド21aおよび21bを移動させることが好ましい。
本例では、制御部50は、移動装置30およびヘッド支持装置35により、2つのヘッド21aおよび21bをX方向(第1の方向)に並べて保持する機能と、2つのヘッド21aおよび21bにより形成される動区域A1およびA2をX方向と交差する(本例では直交する)Y方向(第2の方向)に往復動させる機能と、2つのヘッド21aおよび21bにより形成される動区域A1およびA2をY方向の往復動のそれぞれの端で、X方向に、同一にまたは反対に移動させる機能とを有している。
このため、本例の充填装置10aによれば、(一方の)動区域A1の軌跡T1の一部が重複するとともに、(他方の)動区域A2の軌跡T2の一部が重複し、かつ、これらの軌跡T1およびT2の一部が重複するように、2つの動区域A1およびA2を移動させることができる。また、動区域A1およびA2をある領域では1つの動区域、例えば、動区域A1をその動区域A1の軌跡が重なるように動かし、動区域A1およびA2がそれぞれカバーする領域の境界においてのみ、互いに異なる動区域A1およびA2の軌跡の一部が重複するように、これらの動区域A1およびA2を移動させることができる。
なお、動区域A1およびA2は、それぞれ、ヘッド21aおよび21bとは同心円状に形成されるものであり、同じ大きさになるものではない。しかしながら、以降においては、説明を容易にするために、動区域A1およびA2と、ヘッド21aおよび21bとの移動を共通した軌跡により示している。また、本明細書において、動区域A1およびA2の軌跡とは、中心の移動のみを示すものではなく、動区域A1およびA2がマスク110の上面110aを移動してなる幅を持った跡あるいは経路(通過帯)を示す。さらに、動区域A1およびA2の軌跡は、物理的には、マスク110の開口111に導電性ボールBが充填されているという結果によって跡が残ると言えるとしても、マスク110の表面110aに何らかの痕跡を示すものでなくても良い。
さらに、本例では、動区域A1およびA2を形成するために、これらよりも大きい外形を有するヘッド21aおよび21bを用いている。したがって、動区域A1と動区域A2との間隔の最小値は、ヘッド21aおよび21bの大きさの影響を受ける。動区域A1と動区域A2との距離は、ヘッド21aおよび21bのサイズにより決まる最小間隔よりも大きい。したがって、移動方向に対して直交した方向にヘッド21aおよび21bを配列する場合は、動区域A1および動区域A2の隣接した軌跡は重複しない。一方、ヘッド21aおよび21bの配列を移動方向に対して斜めにすることにより動区域A1およびA2の実質的な距離を小さくすることは可能であり、隣接する動区域A1およびA2の軌跡の一部を重複させることも可能である。
図9(a)および(b)に、2つの動区域の移動を示す軌跡の一例を示してある。なお、図9(a)および(b)において、円Dより内側が、多数の開口111が配置されている振込み領域である。また、動区域A1およびA2の軌跡とは、上述したように、中心の移動を示すものではなく、動区域A1およびA2がマスク110の上面110aを移動してなる幅を持った跡あるいは経路を示すものであるが、ここでは、動区域A1およびA2の中心の移動を代表して記載している。
図9(a)および(b)においては、ヘッド21aにより形成される動区域A1がウエハ100の中心Oから左側の領域a1をカバーし、ヘッド21bにより形成される動区域A2がウエハ100の中心Oから右側の領域a2をカバーするように、プログラム50pに予め記憶させておいたルート(軌跡)に沿って、ヘッド21aおよび21bを動かす。領域a1においては、動区域A1の軌跡T1の一部が重複するように、ヘッド21aを動かす。また、領域a2においては、動区域A2の軌跡T2の一部が重複するように、ヘッド21bを動かす。そして、領域a1およびa2の境界となる、ウエハ100の中心Oを通る境界の部分は、動区域A1およびA2の軌跡T1およびT2が重複するようにこれらのヘッド21aおよび21bを動かす。
ヘッド21aは、ウエハ100の中心OからスタートしてX方向を左側へ動き、ヘッド21bは、ウエハ100の右端からスタートしてX方向を左側に動き、最後にウエハ100の中心Oに到達する。
最初に、ヘッド21aおよびヘッド21bの中心のX方向の間隔を円形のウエハ100の半径に対応する距離にセットする。そして、独立した2つの導電性ボールの集団Bg1およびBg2を2つの動区域A1およびA2にそれぞれ保持させる。その後、ヘッド21aおよび21bをY方向に同期させながら移動させ、さらに、ヘッド21aおよび21bをX方向にも同期させながら移動することにより、ヘッドの動区域A1およびA2の上述した軌跡T1およびT2を実現できる。すなわち、互いに隣り合う動区域A1およびA2の間隔を所定の値(円形のウエハ100の半径に対応する値)に保ち、かつ、各動区域A1およびA2が通過する各領域a1およびa2内においては、各動区域A1およびA2の軌跡T1およびT2の一部が重複し、各領域a1およびa2の境界においては、互いに異なる動区域A1およびA2の軌跡T1およびT2の一部が重複するように、2つの動区域A1およびA2を移動させる。
この例は、ヘッド21aおよび21bの動きが非常にシンプルである。そして、ヘッド21aおよび21bがY方向にジグザグに動く範囲は、それぞれウエハ100のほぼ半分の範囲(領域)a1およびa2にそれぞれ限定されるので、タクトタイムを短縮できる。その一方で、それぞれのヘッド21aおよび21b、すなわち、動区域A1およびA2は、軌跡の最後または最初において、振込み領域Dの外を移動する。この例は、図3や図4に示した充填装置10aを用いて実施することもできるが、振込の途中で動区域A1およびA2の間隔(ヘッド21aおよび21bの間隔)が変わらないので、図5や図6に示した充填装置10aを用いても実施することが可能である。
また、ウエハ100の中央(中心O近傍)が、両方の動区域A1およびA2のスタート位置(始点)または最終位置(終点)となるような、動区域A1およびA2の軌跡T1およびT2の軌跡を採用することも可能である。図3や図4に示した本例の充填装置10aでは、2つのヘッド21aおよび21bの距離をヘッド用X軸テーブル36x1および36x2により振込み中においても変更できる。
図10(a)〜(c)に、2つの動区域の軌跡の他の例を示している。図10(a)に示すように、動区域A1およびA2の間隔IをI1とし、動区域A1およびA2をY方向に同期させながら、図面右側の動区域A2の中心が、ウエハ100の中心Oを通ってY方向に延びる直線上に位置するように、動区域A1およびA2を振込み領域D内に移動させる。そして、動区域A1およびA2のX方向の間隔IをI1としたまま、動区域A1およびA2を図面右側に向かうように、Y方向にジグザグに往復動させる。このとき、Y方向の往復動のそれぞれの端(外円Doutの円周上)では、動区域A1およびA2を、それぞれ、X方向に同一に、図面右側に距離J1だけ移動させる。この移動距離J1は、軌跡T1が次に通る軌跡T1と50%重複し、かつ、軌跡T2が次に通る軌跡T2と50%重複する距離である。これを、図面左側の動区域A1の中心が、ウエハ100の中心Oを通ってY方向に延びる直線上を通るまで繰り返す。
図10(b)に示すように、図面左側の動区域A1の中心が、ウエハ100の中心Oを通ってY方向に延びる直線上を通ると、動区域A1の軌跡T1は、動区域A2が最初に通った軌跡T2と、左側から50%重複することになる。このようにすることにより、ウエハ100の中央部分においても、動区域A1およびA2を2回通すことができる。その後、図面右側の動区域A2は、図面右側に、距離J1だけ移動させて停止する。図面左側の動区域A1は、この動区域A1が最初に通った軌跡T1と、左側から50%重複する位置まで、図面左側に距離J2(J2>J1)だけ移動させる。したがって、動区域A1およびA2のX方向の間隔Iは、I1からI2(I2>I1)に可変される。
動区域A1の移動が完了したら、図10(c)に示すように、動区域A1およびA2をY方向に同期させながら、動区域A1は、図面左側に向かうようにY方向にジグザグに往復動させ、動区域A2は、図面右側に向かうようにY方向にジグザグに往復動させる。このとき、Y方向の往復動のそれぞれの端では、動区域A1およびA2を、それぞれ、X方向に反対に距離J1だけ移動させることになり、このたびに、動区域A1およびA2のX方向の間隔Iは、I2、I3、I4・・・Inと広くなっていく。これを、動区域A1およびA2の中心が振込み領域Dの左右の端に達するまで繰り返すと、動区域A1およびA2が振込み領域D全域を2回ずつ通過したことになるため、動区域A1およびA2を振込み領域D外に退避させる。このようにすることにより、動区域A1およびA2の有効軌跡は、大略80〜90%となり、タクトタイムの短縮に有効である。
次に、図11(a)〜(c)に示した例について説明する。この例では、まず、図11(a)に示すように、動区域A1およびA2の間隔IをInとし、動区域A1およびA2をY方向に同期させながら、動区域A1は、図面右側に向かうようにY方向にジグザグに往復動させ、動区域A2は、図面左側に向かうようにY方向にジグザグに往復動させる。このとき、Y方向の往復動のそれぞれの端では、動区域A1およびA2を、それぞれ、X方向に反対に距離J1だけ移動させることになり、このたびに、動区域A1およびA2のX方向の間隔Iは、In、In-1、In-2・・・Imと狭くなっていく。なお、この移動距離J1は、上述したように、軌跡T1が次に通る軌跡T1と50%重複し、かつ、軌跡T2が次に通る軌跡T2と50%重複する距離である。
図11(b)に示すように、動区域A1およびA2を、ウエハの中心O近傍にまで移動させたら、動区域A1およびA2のX方向の間隔IをImで一定とし、動区域A1およびA2をY方向に同期させながら、動区域A1およびA2を図面左側に向かうように、Y方向にジグザグに往復動させる。このとき、Y方向の往復動のそれぞれの端では、動区域A1およびA2を、それぞれ、X方向に同一に、図面右側に距離J1だけ移動させる。これを、図面右側の動区域A2の中心が、ウエハ100の中心Oを通ってY方向に延びる直線上を通るまで繰り返す。
その後、図11(c)に示すように、動区域A1およびA2のX方向の間隔IをImとしたまま、動区域A1およびA2をY方向に同期させながら、動区域A1およびA2を図面右側に向かうように、Y方向にジグザグに往復動させる。このとき、Y方向の往復動のそれぞれの端では、動区域A1およびA2を、それぞれ、X方向に同一に、図面右側に距離J1だけ移動させる。これを、図面左側の動区域A1の中心が、ウエハ100の中心Oを通ってY方向に延びる直線上を通るまで繰り返す。これにより、動区域A1およびA2が振込み領域D全域を少なくとも2回ずつ通過したことになるため、動区域A1およびA2を振込み領域D外に退避させる。本例では、動区域A1およびA2が振込み領域Dの中央部分の一部を2回以上通過する点では動区域A1およびA2の有効軌跡は、図10に示した例よりも若干は長い。しかしながら、いずれのケースも、動区域A1およびA2は、ウエハ100の表面の半分の領域a1およびa2をそれぞれカバーし、それに加えて、領域a1およびa2の境界部分を共通にカバーするだけで良い。したがって、動区域A1およびA2の移動距離が減り、タクトタイムを短縮できる。
動区域A1およびA2を隣接あるいは並べた状態で、振込み領域DのX方向左側から右側まで動かすことも可能である。例えば、制御部50は、移動装置30およびヘッド支持装置35により、2つのヘッド21aおよび21bをX方向(第1の方向)に並べて保持する機能と、2つのヘッド21aおよび21bにより形成される動区域A1およびA2をX方向に往復動させる機能と、2つのヘッド21aおよび21bにより形成される動区域A1およびA2をX方向の往復動のそれぞれの端で、X方向と交差する(本例では直交する)Y方向(第2の方向)に、同一に移動させる機能とを有するようにしてもよい。
図12(a)〜(c)に、2つの動区域の軌跡のさらに異なる例を示している。図13は、図12に示した例について、一方の動区域の軌跡を抜き出して示している。図12(a)〜(c)に示した例においても、ヘッド21aにより形成される動区域A1がウエハ100の中心Oから左側の領域a1をカバーし、ヘッド21bにより形成される動区域A2がウエハ100の中心Oから右側の領域a2をカバーするようにヘッド21aおよび21bを動かしている。領域a1においては、動区域A1の軌跡T1の一部が重複するように、ヘッド21aを動かしている。また、領域a2においては、動区域A2の軌跡T2の一部が重複するように、ヘッド21bを動かしている。そして、領域a1およびa2の境界となる、ウエハ100の中心Oを通る境界の部分は、動区域A1およびA2の軌跡T1およびT2が重複するように、これらのヘッド21aおよび21bを動かしている。
具体的には、以下のようにして、ウエハ100にボールBを搭載する。最初に、ヘッド21aおよびヘッド21bの中心のX方向の間隔を円形のウエハ100の半径に対応する距離にセットする。そして、動区域A1およびA2の間隔を所定の値(円形のウエハ100の半径に対応する値)に保ち、動区域A1およびA2にそれぞれ導電性ボールの集団Bg1およびBg2を保持させる。その後、動区域A1およびA2の間隔を所定の値、すなわち、ウエハ100の半径に対応する値に保った状態で、プログラム50pに予め記憶させておいたルート(軌跡)に沿って、動区域A1およびA2のそれぞれを、X方向に往復動させ、X方向の往復動のそれぞれの端で、Y方向に同一に移動させる。全体としては、ヘッド21aおよび21bを、それぞれ、ジグザグの軌跡をたどらせながら、ウエハ100の一端側(図12(a)〜(c)において上側)から他端側(図12(a)〜(c)において下側)に向かってY方向に移動させる。このとき、各領域a1およびa2内においては、各動区域A1およびA2の軌跡T1およびT2の一部が重複し、各領域a1およびa2の境界においては、互いに異なる動区域A1およびA2の軌跡T1およびT2の一部が重複するように、複数の動区域A1およびA2が移動する。
この例もまた、図9(a)および(b)に示した例と同様に、ヘッド21aおよび21bの動きが非常にシンプルである。そして、ヘッド21aおよび21bがX方向にジグザグに動く範囲は、それぞれウエハ100のほぼ半分の範囲(領域)a1およびa2にそれぞれ限定されるので、タクトタイムを短縮できる。
しかも、この例によれば、動区域A1およびA2におけるボール消費量および消費速度(導電性ボールが開口に充填されることによる導電性ボールの消費量および消費速度)がほとんど同じであるため、各動区域A1およびA2内への導電性ボールBの補給が容易である。したがって、導電性ボールBが存在する領域E1と、導電性ボールBが存在しない領域E2とが形成されるように、導電性ボールを補給する制御が容易である。
すなわち、図9(a)および(b)に示した例の場合、序盤(初期の段階)では、動区域A1がウエハ100の中心およびその近傍と対応する領域、動区域A2がウエハ100の端部およびその近傍と対応する領域を通過するため、動区域A1におけるボール消費量(消費速度)が大きく、動区域A2におけるボール消費量(消費速度)が小さい。一方、終盤になると、これが逆転し、動区域A1がウエハ100の端部およびその近傍と対応する領域、動区域A2がウエハ100の中心およびその近傍と対応する領域を通過するため、動区域A1におけるボール消費量(消費速度)が小さくなり、動区域A2におけるボール消費量(消費速度)が大きくなる。このように、動区域A1およびA2において、それぞれ、ボール消費量(消費速度)が大きく異なると、動区域A1およびA2にボールを補給するタイミングおよび/またはボール補給量をそれぞれ異ならせなければならず、導電性ボールを補給する制御が難しくなりやすい。
これに対し、図12(a)〜(c)に示した例の場合、動区域A1およびA2が一往復する間にボールが振り込まれる領域の形状は対称であり、面積は同じである。このため、動区域A1およびA2におけるボール消費量および消費速度がほとんど同じである。したがって、動区域A1およびA2に補給するボールを、同じタイミングで同量補給するような比較的簡単な制御であっても、導電性ボールBが存在する領域E1と、導電性ボールBが存在しない領域E2とが形成されるように、動区域A1およびA2内のボールの量を維持できる。
図12(a)〜(c)に示した例は、特に、基板として、半導体ウエハのように平面円形状の基板を用いる場合に好適である。
基板として、プリント配線板のように平面矩形状の基板を用いる場合には、図9(a)および(b)に示したように、動区域A1およびA2を移動させてもよく、図12(a)〜(c)に示したように、動区域A1およびA2を移動させてもよい。いずれの場合も、動区域A1およびA2が一往復する間にボールが振り込まれる領域の面積が、序盤から終盤にかけて、常に、ほぼ等しくなるため、導電性ボールを補給する制御は、比較的容易である。
タクトタイムをより短縮させるためには、往復動のそれぞれの端における方向転換の回数は少ない方が好ましい。したがって、平面矩形状の基板にボールを搭載する場合、2つヘッドは、基板の短辺と平行となるように並べて配置し、2つのヘッドの間隔を、基板の短辺の長さの半分とし、2つのヘッドを長辺方向に沿って移動させることが好ましい。
図14(a)〜(c)に、2つの動区域の軌跡のさらに他の例を示している。本例は、特に、基板として、プリント配線板のように平面矩形状の基板を用いる場合に好適である。図中符号Cは、プリント配線板100の中心である。動区域A1およびA2の軌跡T1およびT2は、基本的には、図9(a)および(b)に示した例と同様である。
図12(a)〜(c)に示した例、図14(a)〜(c)に示した例は、図3や図4に示した充填装置10aを用いて実施できる。また、振込の途中で動区域A1およびA2の間隔(ヘッド21aおよび21bの間隔)が変わらないので、図5や図6に示した充填装置10aを用いても実施できる。ウエハに対して、プリント配線板100はサイズが様々になる。したがって、プリント配線板100に導電性ボールを搭載する場合は、ヘッド間を任意に設定できる、図6に示した充填装置10aがより適している。
なお、動区域A1およびA2の軌跡T1およびT2は、これらに限定されるものではない。動区域が移動する領域を、領域a1およびa2に分けずに、振込領域Dを2つあるいはそれ以上の動区域の移動によりカバーすることも可能である。例えば、動区域A1およびA2を斜めなどに隣接させた状態で、振込み領域DのX方向左側から右側まで動かすことが可能である。動区域A1およびA2のX方向の位置を入れ替えたり、動区域A1の軌跡が、隣接する動区域A2の軌跡と重なるように動区域A1およびA2の間隔およびX方向の移動距離を調整することにより、軌跡の重複率も確保できる。しかしながら、動区域A1およびA2のX方向の移動距離は、上記のように動区域A1およびA2によりそれぞれ異なる領域a1およびa2をカバーする場合と比較すると長くなる。
これらの例では、いずれも、振込み領域Dの全域において、軌跡T1が次に通る軌跡T1またはT2と50%重複するとともに、軌跡T2が次に通る軌跡T1またはT2と50%重複するように、動区域A1およびA2を動かしている。したがって、動区域A1が2回通る領域と、動区域A2が2回通る領域と、動区域A1およびA2が1回ずつ(トータル2回)通る領域とにより、振込み領域Dの全域をカバーできる。なお、外円Doutでは、動区域A1または動区域A2が1回通る。なお、動区域A1およびA2の軌跡T1およびT2の具体的な形態は、充填装置10aを制御する制御部50内に記憶されたプログラム50pにおいて、適当な関数あるいはルックアップテーブルなどのデータとして与えられる。
マスク110の開口パターンへの充填漏れを抑制するためには、軌跡の重複率を高くすることが望ましい。一方、軌跡の重複率が高いと、1枚のウエハに導電性ボールを配列するために要する時間(タクトタイム)が長くなる。また、軌跡の重複率が高いと、導電性ボールの時間当たりの消費量が低下し、導電性ボールが長時間にわたり動区域に存在することになり、導電性ボールを損傷する確率が上がる。このため、動区域A1およびA2は、軌跡T1およびT2により形成される全体としての軌跡の重複率が、10%〜98%の範囲となるように動かすことが好ましい。さらに好ましい重複率の範囲は、30%〜95%である。重複率が40%〜90%の軌跡は、動区域A1およびA2を移動させるための最適な軌跡である。
また、動区域A1およびA2の移動速度(本例では、ヘッド21aおよび21bの移動速度と実質的に同義)が遅過ぎると、タクトタイムが長くなり過ぎる。一方、動区域A1およびA2の移動速度が速過ぎると、ボールBがマスク110の開口111に落ち込まないうちに、動区域A1およびA2が通過する確率が高くなる。したがって、動区域A1およびA2の移動速度は、2〜120mm/sの範囲が好ましく、さらに、5〜80mm/sの範囲であることが好ましい。本例の充填装置10aにおいては、ヘッド21aおよび21bの移動速度は20〜80mm/sとなるようにプログラム制御されている。
動区域A1およびA2は小さくできるが、小さ過ぎると、再び、タクトタイムが長くなる。したがって、円形の動区域A1およびA2の直径は10mm以上が好ましい。一方、動区域A1およびA2が大き過ぎると、動区域A1およびA2内におけるボールBの移動が不十分になり、動区域A1およびA2内に保持されるボールBの密度のムラが大きくなり、場合によっては、導電性ボールBが一層となる部分Eを良好に形成できなくなる可能性があることは上述した通りである。したがって、円形の動区域A1およびA2の直径は100mm以下が好ましい。円形の動区域A1およびA2のより好ましい範囲は、20〜60mmである。ボールBを保持しながら移動する動区域A1およびA2の適切な面積(動区域A1およびA2の最適半径)は、動区域A1およびA2の移動速度、軌跡T1およびT2の重複率、振込み条件、導電性ボールBの直径、マスク110の形状(マスク110の開口111の密度など)の条件により変わる。導電性ボールBの直径が10〜500μm程度であれば、ヘッド21aおよび21bの好適な例は、直径が10〜100mmの円形の動区域A1およびA2をマスク上に形成できるものである。例えば、本例の充填装置10aにおいては、円形の動区域A1およびA2の直径は約40mmとなるようなヘッド21aおよび21bが選択されている。
また、ヘッド21aおよび21bにより動区域A1およびA2を形成する場合、ヘッド21aおよび21bの回転速度が低すぎると、動区域A1およびA2内におけるボールBの移動が不十分となり、ボールBが一層の状態で存在する領域Eの面積が減少するので、ボールBの充填ミスが発生する可能性が高くなる。したがって、ヘッド21aおよび21bの回転速度は、10rpm以上が好ましい。一方、ヘッド21aおよび21bの回転速度が速すぎると、ボールBの移動速度が速くなり、ボールBが開口111に落ち込まないで通過する確率が高くなるので、この場合も、ボールBの充填ミスが発生する可能性が高くなる。したがって、ヘッド21aおよび21bの回転速度は、120rpm以下が好ましい。さらに好ましいヘッド21aおよび21bの回転速度の範囲は、30〜90rpmである。
ヘッド21aおよび21bの具体的な動作は、充填装置10aを制御する制御部50内に記憶されたプログラムにおいて、適当な関数あるいはルックアップテーブルなどのデータとして与えられる。本例の充填装置10aにおいては、ヘッド21aおよび21bの回転数は、それぞれ45rpmとなるようにプログラム制御されている。
図15に、ボール充填装置の制御方法の一例をフローチャートにより示してある。まず、ステップ201において、基板(ウエハ)100およびマスク110をセットする。ステップ202において、2つのヘッド21aおよび21bにより、マスク110の上面110aに、2つの独立した動区域A1およびA2を形成する。そして、ボール保持機能91により、独立した2つの導電性ボールの集団Bg1およびBg2を、マスク110の上面110aの一部の独立した2つの動区域A1およびA2にそれぞれ保持させる。ステップ203において、移動機能92により、領域a1およびa2においては、各動区域A1およびA2の軌跡T1およびT2の一部が重複し、かつ、領域a1およびa2の境界部分においては互いに異なる動区域A1およびA2の軌跡T1およびT2の一部が重複するように、2つの動区域A1およびA2を動かす(移動させる)。これにより、2つの動区域A1およびA2により、振込み領域Dの全域を所定の重複率でカバーする。
ステップ204において、2つの動区域A1およびA2を移動中(2つの動区域A1およびA2が終点にまで至っていない状態)であって、ステップ205において、動区域A1およびA2の内部に導電性ボールBを補給(補充)する必要が生じた場合には、ステップ206において、ボール補給機能93により、ボール補給装置40から、シャフト38aおよび38bを含むボール供給路49aおよび49b、並びに、ヘッド21aおよび21bを介して、導電性ボールの集団Bg1およびBg2に対し、導電性ボールBを補給(補充)する。このとき、動区域A1およびA2の内部に、導電性ボールが存在する領域E1と、導電性ボールが存在しない領域E2とが形成されるように、それぞれ導電性ボールを補給する。ステップ204において、2つの動区域A1およびA2が終点にまで移動したら、ジョブを終了する。
ウエハ100の上面には、マスク110の開口パターンに対応して、予め半田付け用のフラックスがスクリーン印刷されている。したがって、開口111に充填された導電性ボールBはフラックスに密着し、ウエハ100の所定の位置に仮固定される。導電性ボールBが搭載されたウエハ100は、その後、公知のリフロー過程を経る。これにより、ボールBがウエハ100に固定される。
以上のように、本例の充填装置10aによれば、ボール保持手段20aにより、マスク110の上面110aに2つの独立した動区域A1およびA2を形成し、これら動区域A1およびA2に、独立した2つの導電性ボールの集団Bg1およびBg2をそれぞれ保持させ、この状態で、移動装置30によりボール保持手段20aを移動させる。したがって、1つの動区域を移動させるよりも、タクトタイムを短縮できる。
しかも、本例の充填装置10aによれば、ボール保持手段20aが2つのヘッド21aおよび21bを備えている。したがって、これらのヘッド21aおよび21bにより、独立した2つの動区域A1およびA2を形成できる。2つの独立したヘッド21aおよび21bを備えるボール保持手段20aは、2つの独立した動区域A1およびA2を形成するのに好適である。
また、スキージ62aおよび62bを備えるヘッド21aおよび21bは、独立した2つの動区域A1およびA2を形成するのに好適である。スキージ62aおよび62bを備えるヘッド21aおよび21bは、それぞれ、動区域A1およびA2の周囲からボールBを集める機能とともに、マスク110の動区域A1およびA2に対応する部分を押さえて、平坦にする機能を備えている。したがってマスク110に反りや歪みがあったとしても、動区域A1およびA2の周囲の部分はスキージ62aおよび62bにより押さえられるため、少なくともボールBが振り込まれる動区域A1およびA2においては、平坦度を改善できる。
図16に、本発明の第2の実施形態にかかるボール充填装置の概略構成を平面図により示してある。図17に、図16のボール搭載装置を一部断面とした側面図により示してある。
このボール充填装置10bは、マスク110の上面110aを移動する独立した2つ動区域を形成するためのボール保持手段20bと、ボール保持手段20bを移動させるための移動装置30と、2つの動区域A1およびA2内に導電性ボールを補給するためのボール補給装置と、ボール保持手段20b、移動装置30、およびボール補給装置を制御するための制御部とを備えている。
ボール保持手段20bを移動させるための移動装置30は、第1の実施形態と同様に構成されているため、重複する説明は、図面に同符号を付して省略する。
ボール保持手段20bは、2つのヘッド21aおよび21bを備えており、これらヘッド21aおよび21bにより、2つの動区域A1およびA2に、独立した2つの導電性ボールの集団をそれぞれ保持するように構成されている。また、ボール保持手段20bは、さらに、2つのヘッド21aおよび21bを回転させるための1つのモータ37と、2つのヘッド21aおよび21bに対応する2つのシャフト38aおよび38bと、2つのシャフト38aおよび38bの間に設けられたシャフト39とを備えている。
モータ37の軸37rには、プーリーが取り付けられている。シャフト38aおよび38bには、それぞれ、プーリー72aおよび72bが取り付けられている。シャフト39には、3つのプーリー73a、73bおよび73cが取り付けられている。そして、シャフト38aのプーリー72aとシャフト39のプーリー73aとの間、シャフト38bのプーリー72bとシャフト39のプーリー73bとの間、モータ37の回転軸37rのプーリーとシャフト39のプーリー73cとの間には、それぞれ、ベルト74a、74b、および74cが掛け渡されている。
したがって、モータ37の回転は、ベルト74c→プーリー73c→シャフト39→プーリー73a→シャフト38aを伝わって、ヘッド21aを回転駆動させるとともに、ベルト74c→プーリー73c→シャフト39→プーリー73b→シャフト38bを伝わって、ヘッド21bを回転駆動させる。したがって、このボール保持手段20bでは、1つのモータ37で2つのヘッド21aおよび21bが回転するようになっている。このボール保持手段20bは、移動装置30のX軸テーブル31xに、直に取り付けられている。
また、シャフト38aは、支持部材75aを介して、シャフト39に取り付けられている。これにより、ヘッド21aは、シャフト39を中心として、回転自在である。同様に、また、シャフト38bは、支持部材75bを介して、シャフト39に取り付けられている。これにより、ヘッド21bは、シャフト39を中心として、回転自在である。したがって、支持部材75aと支持部材75bとのなす角度を変えることにより、ヘッド21aとヘッド21bとは、X方向における間隔が可変である。
また、シャフト38aおよび38bの内部が中空となっており、それぞれのシャフト38aおよび38bを介して、ボール補給装置から、動区域A1およびA2内にボールが補給される点は、第1の実施形態と同様であるため、重複する説明は、図面に同符号を付して省略する。
なお、ヘッドの数は、2つに限定されるものではなく、3つ以上であってもよい。また、ボール保持手段は、独立した複数の領域を形成できるものであれば、必ずしも、これらの動区域にそれぞれ対応する複数のヘッドを備えていなくてもよい。すなわち、複数の動区域は、必ずしも、これら動区域にそれぞれ対応する複数のヘッドにより形成しなくてもよい。さらに、動区域の数は、2つに限定されるものではなく、3つ以上であってもよい。
独立した複数の動区域を形成するボール保持手段としては、例えば、少なくとも1つの部材(例えば、ヘッド)の振動により、部材の下に付いたスウィープ部材(例えば、スキージ)により、ボールを動区域の方向に掃き集める方式のものが挙げられる。ただし、この手段は、振動する方向および数、スウィープ部材の形状などにより、動区域は円ではなく、円に外接する多角形になる場合がある。動区域の形状が多角形の場合、部材の移動方向によっては、ボールを収集する能力に優劣が発生する可能性がある。
独立した複数の動区域を形成するボール保持手段として、回転することにより導電性ボールに対して複数の動区域の方向に移動する力を加える複数のヘッドのような部材は、好ましい形態の1つである。円形の動区域は、部材の移動方向にボールを収集したり保持したりする能力に優劣は生ぜず、部材の移動方向を任意に選択できる点で優れている。
また、独立した複数の動区域を形成するボール保持手段は、スキージを備えた部材でなくてもよい。例えば、部材は、ボールを複数の動区域に掃き集めるための気体をマスクの表面に吹き付けるエアーノズルを備えたタイプのものであってもよい。気体を吹き出すタイプの部材は、部材自体を回転駆動させるモータを省くことが可能であり、充填装置の構成を簡易にできる。また、磁力によりマスクに吸着するタイプのヘッドを採用することも可能である。
また、移動機構を含む上述した実施形態は本発明に含まれるボール充填装置などを実現するための一例に過ぎない。例えば、それぞれの動区域を形成するための複数のヘッドはそれぞれX方向およびY方向に移動するための移動装置に接続されていても良い。X−Yテーブルのような移動装置に限らず、アームを用いた移動装置であっても良い。X−Yテーブルによりそれぞれのヘッドを移動するように支持しても良い。
本実施形態の目的の1つは、タクトタイムを短縮できる装置、装置の制御方法、およびボール搭載方法を提供することである。しかしながら、当業者にとって自明な部分的な変更やバリエーションは、本発明の範囲内であると考えられる。