図1に、本発明の一形態にかかる搭載装置の概略構成を示してある。この搭載装置1は、ボールマウンタと呼ばれ、半導体基板(ウェハまたはワークピース)10の所定の位置に、導電性のボールを配置するためのものである。現状のウェハ10は、直径が8インチまたは12インチ程度のものが多い。基板10に搭載される導電性ボールは微細化されており、直径が1mm以下であり、直径が10〜500μm程度のボールを搭載することが検討されており、現状では直径30〜300μm程度のボールを搭載することが求められている。導電性ボールには、半田ボール、金あるいは銀などの金属製のボール、さらに、セラミック製のボールあるいはプラスチック製のボールに導電性のメッキなどの処理が施されたものが含まれる。
このボールマウンタ1は、吸引などの方法により反りを矯正した水平な状態で基板10をセットするための台盤(テーブル)2と、導電性ボールを基板10の所定の位置に配置するための複数の開口を備えたマスク11を基板10にセットするためのマスクハンドラー(マスクキャリア)3と、マスク11の開口に導電性ボールを充填するための充填装置5とを備えている。マスクハンドラー3は、実線で示した基板10の上方の位置と、二点鎖線で示した退避位置との間でマスク11を移動するための搬送ユニット31と、基板10とマスク11との位置あわせを行うアライメントユニット32とを備えている。マスク11を基板10にセットするためのデバイスは、マスク11の位置を固定し、基板10が上下および/または水平方向に移動してマスク11と基板10とを位置あわせするものであっても良い。また、マスク11は、マスク枠に固定されており、マスク枠を介してマスク11を人手で装置に送入することができる。
マスク11は、微小な導電性ボールが一つずつ挿入されるのに適したサイズの複数の開口を備えている。基板10は、通常、複数の半導体デバイスが含まれており、マスク11の複数の開口は、それらの半導体デバイスの所定の位置に導電性ボールを配置するためのルールに従った繰り返しのあるデザインで形成されている。マスク11に設けられたこれらの開口は、開孔、パターン孔、開口パターンなどと称されており、本明細書においても、複数の開口を対象として説明するときはそれらを開口パターンと記載することがある。
充填装置5は、基板10にセットされたマスク11の表面11aに沿って移動し、マスク11の開口に導電性ボールを充填するためのヘッド20と、このヘッド20をマスク11の表面11aの上で支持し、任意の方向に移動させるヘッド移動装置50と、ヘッド20の動きを制御するためのプログラム59pにより動作するコントローラ59とを備えている。ヘッド移動装置50は、マスク11に垂直な軸55を中心に回転するように支持するモータ56と、Y方向に伸縮可能なアーム53を介してモータ56を支持するキャリッジ52とを備えており、キャリッジ52はキャリッジシャフト51に沿ってX方向に移動する。したがって、移動装置50のアーム53、キャリッジ52およびキャリッジシャフト51により、ヘッド20は、マスク11の表面11aをX−Y方向の任意の位置にセットできる。また、制御用のプログラム59pにより、コントローラ59を介して移動装置50を制御することにより、ヘッド20を、マスク11の表面11aに沿って任意の軌跡を描くように移動できる。コントローラ59の多くは、コンピュータあるいはマイクロコンピュータを用いて構成される。制御用のプログラム(プログラム製品)59pは、ROMなどの適当な記録媒体に記録して提供される。充填装置5をLANなどのコンピュータネットワークを介して制御することも可能であり、プログラム59pをネットワーク上のサーバなどから提供することも可能である。
この搭載装置1は、導電性ボールを配置するための複数の開口を備えたマスク11を基板10にセットする第1の工程と、マスク11の表面11aに沿って移動するヘッド20により導電性ボールをマスク11の開口に充填する第2の工程とを有し、基板10の所定の位置に導電性ボールを搭載する。以降においては、充填装置5の構成および動作を説明しながら、充填する第2の工程の処理の詳細についてさらに説明する。
図2に、充填装置5のヘッド20を側面から見た様子を拡大して示してある。ヘッド20は、円盤状のスキージサポート21と、このスキージサポート21の下面21aからマスク11の表面11aに向かって突き出た6セットのスキージ22とを備えている。スキージサポート21の中心は、マスク11に対して垂直方向に延びたシャフト55に繋がっている。ヘッド20は、モータ56により、シャフト55を中心として、スキージサポート21を上方から見て反時計方向に回転駆動される。このヘッド20においては、モータ56が軸55を中心としてスキージサポート21をマスク11の表面11aに沿って回転駆動する手段となり、軸55がアーム53、キャリッジ52およびキャリッジシャフト51によりマスク11の表面11aに沿ってX―Yの任意の方向に移動される。したがって、ヘッド移動装置50により、ヘッド20を回転しながら、ヘッド20をマスク11の表面11aの上を任意の軌跡を描くように移動できる。キャリッジ52には、導電性ボールをシャフト55の内部を介してスキージサポート21の中心からマスク11の上に補給するボール補給装置60が搭載されている。制御プログラム59pは、コントローラ59を介して補給装置60から補給されるボールの量も制御する。
図3に、スキージサポート21の下面に取り付けられた6セットのスキージ22の配置を、スキージサポート21を上方から見た状態で示してある。また、図4に、ヘッド20の構成を、ヘッド20が静止している状態で、スキージサポート21の直径方向に切った断面により示してある。6セットのスキージ22は、それぞれが上方から見ると長方形になるように取り付けられた複数のスウィープ部材23を備えている。スウィープ部材23は、マスク11の表面11aに比較的柔らかく接し、表面11aに残った導電性ボール15を掃き集めることができるものであれば良い。スウィープ部材23としては、マスク11の表面11aに接するように曲げられたワイヤー、マスク11の表面11aに接するような形状のゴムプレートあるいはスポンジのような弾性部材、マスク11の表面11aに接する程度に伸びた無数のワイヤーを挙げることができる。
これらのスキージ22は、回転シャフト55と同心円状の内円26の回りに、円周方向に均等なピッチで、内円26の接線方向の反時計方向に、外円27まで直線的に延びるように配置されている。したがって、スキージ22がマスク11の表面11aに接した状態で、スキージサポート21を上方から見て反時計方向に回転させると、スキージ22の進行方向(回転方向)にある導電性ボール15を、矢印18のように、内円26の方向に押し払う。このため、マスク11の表面11aに残った導電性ボール15は、内円26の方向に移動され、内円26の内部に集められる。したがって、このヘッド20を用いた充填装置5において、内円26は、導電性ボール15の集団16をマスクの表面11aの一部に保持するための動区域に対応し、ヘッド20と共にマスク11の上を移動する。そして、ヘッド20が回転することにより、導電性ボール15が逸散しないように、ヘッド20により、動区域26の周辺である外円27から動区域26に向けて導電性ボール15が集められる。
すなわち、図3および以下の図面において、内円26および外円27として示した区域は仮想的なものである。しかしながら、このヘッド20をマスク11の表面11aにおいて、ヘッド移動装置50により回転させながら移動すると、マスク11の上に残った、内円26と外円27の範囲内の過剰な導電性ボール15は、ヘッド20の中心の内円26の方向に集められる。複数のスキージ22が、回転する方向(進行方向)に多重に配置されているので、ヘッド20が移動することにより内円26の周囲に食み出した導電性ボール15は次々と移動先の内円26の方向に集められる。したがって、ヘッド20の回転中心の回りの円形の動区域26に導電性ボール15が保持され、ヘッド20の移動と共に円形の動区域26が移動し、その中に保持された複数の導電性ボール15の集団16も移動する。このように、本例の充填装置5においては、ヘッド20の中心の仮想的な円形の区域26が、導電性ボール15の集団16が保持されるマスク11の表面11aの一部の動区域26となり、ヘッド20の移動により、その動区域26が移動する。
充填装置5のヘッド移動装置50は、マスク11の表面11aをXY平面として、そのXY平面の任意の方向にヘッド20を移動できる。また、ヘッド20の移動方向を、動的に任意に変えることができる。さらに、ヘッド20は、ヘッド20の移動方向に関わらず、回転することにより円形の動区域26の中に導電性ボール15を集めて保持できる。このため、充填装置5は、円形の動区域26に導電性ボール15を保持した状態で、動区域26をマスク11の表面11aの任意の方向に移動することができ、また、その移動方向を任意に、動的に変えることができる。
図5に、マスク11の表面11aをカバーするように、円形の動区域26を移動するための軌跡の一例を示している。図5(a)は、ヘッド20をマスク11の表面11aの上を螺旋状または渦巻き状の軌跡を描くように移動した例を模式的に示したものである。ヘッド20の移動により、ボール15を充填するため円形の動区域26も、螺旋状または渦巻き状の軌跡71でマスク11の表面全体を移動し、基板10の所定の位置に導電性ボール15を配置する。螺旋状または渦巻き状の軌跡71は、基板10が円形であったり、マスク11が円形であったり、導電性ボール15を充填する全体の領域が円形である場合に適している。ヘッド20を自転させながら、開口12が設けられている領域の外からマスク11の中心O付近へ移動させた後、マスク11の中央部から周辺部へ螺旋状に移動させる(螺旋状に向かう軌跡にする)ことにより、マスク中央部でのボール未充填を少なくすることができる。
なお、図5(a)には、動区域26の移動の軌跡71を、回転中心が移動する線で代表して示している。また、分かりやすくするために、ヘッド20と動区域26とを共に同じ円で示しているが、上述したように動区域26はヘッド20と同心円状に形成されるものであり、同じ大きさになるものではない。しかしながら、動区域26はヘッド20と同心円状に構成されるので、それらが移動する際の中心の軌跡は同じになる。また、本明細書において、動区域26の軌跡とは、中心の移動を示すものではなく、動区域26がマスク11の表面11aを移動した幅を持った跡あるいは経路を示す。さらに、動区域26の軌跡は、物理的には、マスクの開口12に導電性ボール15が充填されているという結果によって跡が残ると言えるとしても、マスク11の表面11aに何らかの痕跡を示すものでなくても良い。動区域26の軌跡の具体的な形態は、充填装置5の移動装置50を制御するプログラム59pにおいて、適当な関数あるいはルックアップテーブルなどのデータとして与えられる。
図5(b)に軌跡71の一部を拡大して示してある。図5(c)に軌跡71の一部をさらに拡大して示してある。動区域26によりマスク11の表面11aの全体を漏れなくカバーするために、充填装置5のヘッド移動装置50により、ヘッド20は、動区域26の軌跡の一部が重複するように動かされる。この例では、軌跡71の隣接する部分T(n)およびT(n+1)がほぼ50%重複するような軌跡71が選択されている。この軌跡71によりヘッド20を移動することにより、動区域26は、結果として、マスク11表面のほぼ全体を2回通るように移動し、マスク11の開口12にボール15を充填する。他の実施例では、動区域の直径が40mmで、螺旋ピッチが8mmである。この条件での重複率は80%である。
マスク11の開口パターン12への充填漏れを抑制するためには、動区域26を、重複率の高い軌跡を描くように移動することが望ましい。一方、軌跡の重複率が高いと、ボール15を基板10の全体に配置するために要する処理時間が長くなる。また、軌跡の重複率が高いと、ボール15の消費量が低下し、ボールが長時間にわたり動区域26に存在することにより損傷する確率が上がる。このため、動区域26は、重複率は10%〜98%の範囲の軌跡を描くように動かすことが好ましい。動区域26は、重複率は30%〜95%の範囲の軌跡を描くように動かすことがさらに好ましい。重複率が40%〜90%の軌跡は、動区域26を移動するための最適な軌跡である。
また、ヘッド20の移動速度は、遅過ぎると、ボール15を基板10の全体に配置するために要する時間がかかり過ぎる。一方、ヘッドの移動速度が速過ぎると、ボール15が開口12に落ち込まないうちに動区域26が通過する確率が高くなる。したがって、ヘッド20の移動速度は、2〜60mm/sの範囲が好ましく、さらに、5〜40mm/sの範囲であることが好ましい。本例の充填装置5においては、ヘッド20の移動速度は20mm/sとなるようにプログラム制御される。
図6(a)〜(e)に、螺旋状または渦巻き状の軌跡71の位置A〜位置Eにおける導電性ボール15の集団16の状態をそれぞれ模式的に示してある。動区域26の軌跡71を螺旋状または渦巻き状とした場合、位置Aから位置Eに至るまでの間、ヘッドの進行方向Sが連続的に変化し、位置Eで再び位置Aと同じ進行方向となる。位置Eを過ぎた後も、これが繰り返される。動区域26の軌跡71を螺旋状または渦巻き状とした場合、いずれの位置においても、導電性ボール15の集団16は、進行方向Sの基端側(後側)に三日月状に不均一に分布する。すなわち、動区域26の内部に、導電性ボールが存在する三日月状の領域26aと、導電性ボールが存在しない領域26bとが存在する。さらに、導電性ボールが存在する領域26aと導電性ボールが存在しない領域26bとの境界部分に、導電性ボールが一層となる部分29ができる。この導電性ボール15が一層となる部分29では、導電性ボール15が一層に敷き詰められているとは限らず、導電性ボール15が疎密に存在することもあり、基本的には、導電性ボール15の大部分が多層に重なっておらず、また、積層されていない状態で存在する。動区域26の軌跡71を螺旋状または渦巻き状とした場合、いずれの位置においても、三日月状に分布した導電性ボール15の集団16の進行方向の先端側(前側)に、導電性ボールが一層となる部分29が出来易い。
図7に、図6と比べて動区域26の内部の導電性ボール15の量を増やした場合における導電性ボール15の集団16の状態を示している。動区域26の内部の導電性ボール15の量を増やすと、導電性ボールが存在する領域26aは、動区域26の中心側に向かって広がる。これに伴い、導電性ボールが一層となる部分29もまた、動区域26の中心側に向かって広がる。この場合も、導電性ボール15の集団16は三日月状に分布する。
図8に、ヘッド20が回転しながら移動している状態を、スキージサポート21の直径方向に切った断面により示してある。スキージ22がマスク11の表面11aに接した状態で、スキージサポート21を上方から見て反時計方向に回転させるとともに、動区域26の軌跡71が螺旋状または渦巻き状となるように、動区域26をヘッド20と共にマスク11上において移動させると、いずれの位置においても、スキージ22の進行方向(回転方向)にある導電性ボール15が、内円26の方向に押し払らわれる。このため、マスク11の表面11aに残った導電性ボール15は、内円26の方向に移動され、内円26の内部に集められる。また、動区域26の内部では、導電性ボール15が不均一に分布するため、動区域26の内部の導電性ボール15が存在する領域26aには、導電性ボール15が存在しない領域26bとの境界部分に、導電性ボール15が一層となる部分29ができる。
図9に、スキージ22の先端がマスク11の表面11aに接している状態を拡大して示してある。各々のスキージ22は、複数のスウィープ部材23を備えており、それらがスキージ22の進行方向に多重に配置されている。複数のスウィープ部材23は、スキージ22の進行方向に対して、マスクの表面11aに当たる先端が後退するようにサポート21に取り付けられている。スウィープ部材23は、マスク11の上の導電性ボール15を進行方向Dの内側の円形の動区域26の方向に軽く押す、あるいは掃くようにして移動する。このため、ヘッド20の内側の円形の領域26に導電性ボール15の集団16が形成され、導電性ボール15が逸散しない状態に維持される。動区域26に集められたボール15は、自重により、その動区域26にあるマスク11の開口12に落下し、開口12にボール15が充填される。特に、導電性ボール15が一層で存在し、積層していない部分29がマスク11の開口12を通過するときに、導電性ボール15は開口12に最も効率良く充填される。基板10の表面には、マスク11の開口パターン12に対応して、予め半田付け用のフラックス17がスクリーン印刷されている。したがって、開口12に充填された導電性ボール15はフラックス17に密着し、基板10の所定の位置に仮固定される。導電性ボール15が搭載された基板10は、その後、公知のリフロー過程を経ることにより、ボール15が基板10に固定される。フラックス17は、ボールの仮固定力を高めるために、粘着力の大きい組成が好ましく、また、ボール15と反応してボール15との接着力を高める組成も好ましい。
この充填装置5においては、円形の動区域26という限られた面積に充填するためのボール15が常に集められる。したがって、動区域26に集められた導電性ボール15の状態を監視することにより、マスク11の開口12にボール15が充填される状況を制御することができる。
例えば、動区域26に保持される導電性ボール15は、開口12に充填されることにより消費される。このため、消費されるボール量に基づいて、ボール15はボール補給装置60から動区域26の内部に投入される。例えば、時間当たりに消費されるボール量に基づいて、所定時間間隔でボール15を供給することができる。したがって、動区域26の導電性ボール15の集団16の密度は維持され、ボール密度の低下により開口12に充填される確率が低下することは抑制される。図4に示したヘッド20は、動区域26のボール15の密度を検出する光学センサー65を備えている。補給装置60により、所定時間間隔でボールを補給しているにも関わらず、何らかの要因により動区域26のボール密度が低下して導電性ボールが存在する領域26aの面積が大幅に減少したり、導電性ボール15が存在しない領域26bが形成されないような状態になると、コントローラ59は、キャリッジ52に搭載されたボール補給装置60から導電性ボール15を動区域26に供給する量を制御する。また、ヘッド移動中のボール減少は、概略推測できるので、この推測に基づき、ボール供給装置60からボール15を連続的あるいは間欠的に供給することもできる。
ボール補給装置60に、ボール15を定期的にリニューアルする機構を設けることも可能である。長時間にわたりマスク11の開口12に振り込まれずに移動しているだけの状況が続くと、ボール15は、接触や磨耗などの要因により損傷する可能性がある。動区域26に保持されたボール15を回収して、そのような品質が劣化したボールを除去し、正常なボール15のみを充填用の動区域26に戻すことができる。
ボール15を保持しながら移動する動区域26の適切な面積は、導電性ボールの直径、マスク11の開口の密度などの条件により変わる。導電性ボール15の直径が10〜500μm程度であれば、直径が10〜100mmの円形の動区域26をマスク上に形成できるヘッド20を用いることが望ましい。ボールを保持するための動区域26が小さ過ぎると、マスク全体の開口にボールを充填するために要する時間が増大する。したがって、動区域26の直径は10mm以上が好ましい。一方、動区域26が大き過ぎると、動区域26の内部におけるボール15の移動が不十分になり、動区域26の内部に保持されるボール15の密度のムラが大きくなる。したがって、動区域26の直径は100mm以下が好ましい。円形の動区域26のより好ましい範囲は、20〜60mmである。
ヘッド20の回転速度が低すぎると、動区域26の内部におけるボール15の移動が不十分となり、ボール15が一層の状態で存在する領域29の面積が減少するので、ボール15の充填ミスが発生する可能性が上がる。したがって、ヘッド20の回転速度は、10rpm以上が好ましい。一方、回転速度が速すぎると、ボール15の移動速度が速くなり、ボール15が開口12に落ち込まないで通過する確率が高くなり、充填ミスが発生する可能性が上がる。したがって、ヘッド20の回転速度は、120rpm以下が好ましい。さらに好ましいヘッドの回転速度の範囲は、30〜90rpmである。例えば、本例の充填装置5においては、ヘッド20は、ボール15が集められる円形の動区域26の直径は40mm、回転数は45rpmになるようにプログラム制御される。
このように、充填装置5のコントローラ59は、制御プログラム59pにより、ヘッド20により、このヘッド20と共にマスク11上を導電性ボール15の集団が移動する動区域26を形成させ、ヘッド移動装置50により、動区域26の軌跡の一部が重複するように動区域26を移動させる制御を行う。さらに、コントローラ59は、ヘッド20を移動する制御と並行して、ボール補給装置60により、動区域26に導電性ボール15が存在する領域26aと導電性ボール15が存在しない領域26bとが形成されるように導電性ボール15を補充する制御を行う。コントローラ59は、プログラム59pにより、マスク11の複数の開口12に導電性ボール15を充填する制御に加え、マスク11をセットする制御、ヘッド20により充填した後に、マスク11に残されたボール(残ボール)を除去する作業の制御なども行う。
図10に、マスク11の複数の開口12に導電性ボール15を充填することに関わる制御方法のさらに具体的な一例をフローチャートで示してある。まず、ステップ100において、移動装置50により、ヘッド20を回転させながら移動し、マスク11の上に動区域26を形成すると共に、動区域26の軌跡が螺旋状などの所定の形状を描くようにする。次に、ステップ101において、ボール補充条件が成立中であると、ステップ102において、ボール補給装置60により、動区域26にボール15を補給(供給)する。動区域26のボール15の密度、ボール15の存在する領域および/または存在しない領域の有無は、例えば光学センサー65によって検知できる。ステップ103において、動区域26の内部のボールの不均一性に関わる条件が所定の値に達すると、ボール補充完了条件が成立したと判断され、ステップ104においてボール補充状態がクリアされる。したがって、補給装置60は、動区域26に対するボール15の供給を停止する。ボール補充開始条件およびボール補充完了条件は、任意に決定することができるが、これらの条件は、以下の図11の結果を鑑みて設定することが望ましい。
図11に、導電性ボール15が動区域26の面積を一層で均一にカバーする基準量を1とした場合、動区域26に存在しているボール15の量と、マスク11の開口12に対する導電性ボール15の充填状態の良否との関係を示してある。ボール15を充填する第2の工程において、導電性ボール15の量が1/5以下になると、動区域26の内部の導電性ボール15の量が少なすぎて、マスク11の複数の開口12に導電性ボール15を良好に充填することが困難となり、生産性が低下する。動区域26のボールが存在する領域26aに対して、ボールが存在しない領域26bが大きくなりすぎるためである。ボールが存在する領域26aが小さすぎると、動区域26の内部でのボールの補給が間に合わなくなり、マスク11の開口にボール15を充填する面積が急激に減少し、充填ミスの原因になる。すなわち、ヘッド20の移動により、ボールが一層で存在する領域29において消費されると、ボールの補充が間に合わないため、ヘッド20の移動に伴い領域29の面積が急激に減少する可能性が生じる。したがって、ヘッド20の移動に追従し、充填に適した領域29を適当な面積だけ確保するためには、ボールが存在する領域26aに、ある程度、積層した状態でボールを蓄積しておくことが望ましい。
一方、導電性ボール15の量が15以上になると、動区域26の内部の導電性ボール15の量が多すぎることによる問題が発生する。第1の問題は、動区域26の内部から導電性ボール15が逸散し易くなることであり、導電性ボール15の利用効率が低下する。
第2の問題は、動区域26の内部に均一に導電性ボール15が存在しやすくなることである。これは、動区域26の内部に導電性ボール15が存在しない領域26bを形成し難くなることである。動区域26の内部に導電性ボール15が存在しない領域26bが形成されないと、動区域26の内部では、導電性ボール15のほとんどが積層された状態で存在する。このため、限られた面積に大量のボールが存在して相互に干渉し、ボールが詰まり、自由落下によるマスクの開口への充填が阻害される。すなわち、開口への充填に適した、導電性ボール15が一層の状態で存在する領域29を形成することが難しくなる。
したがって、充填する第2の工程では、導電性ボール15の量が、基準量に対して1/4〜10の範囲となるように補給量を制御することが望ましい。さらに望ましくは、導電性ボール15の量が、1/4〜3の範囲となるように補給量を制御することが望ましい。他方、導電性ボール15が動区域26内に移動中に存在する面積の割合と定義した存在比で記述すると、存在比が1/10〜2/3の範囲となるように補給量を制御することが望ましい。さらに望ましくは、導電性ボール15の存在比が、1/5〜2/5の範囲となるように補給量を制御することが望ましい。
回転することにより導電性ボール15に対して動区域26の方向に移動する力を加えるヘッド20は、本発明の最も好ましい実施例の1つである。動区域26の方向に導電性ボール15を集める方式として、ヘッドを振動させて、ヘッドの下に付いたスキージによりボール15を動区域26の方向に掃き集める方式を挙げることができる。この方式では、振動する方向および数、スキージの形状により、動区域26は円に限らず、円に外接する多角形になると考えられる。動区域26の形状が多角形の場合、ヘッドの移動方向によっては、ボール15を収集する能力に優劣が発生する可能性がある。これに対し、円形の動区域26は、ヘッド20の移動方向にボール15を収集したり保持したりする能力に優劣は生ぜず、ヘッド20の移動方向を任意に選択できる点で優れている。
また、ヘッド20をマスク11に対して垂直な軸を中心に回転させながら動区域26を螺旋状に移動させ、それにより導電性ボール15を動区域26の内部に三日月状に分布させる方法は、導電性ボール15を動区域26の内部に不均一に分布させる方法の最も好ましい実施例の1つである。導電性ボール15を動区域26の内部に三日月状に分布させるようにすると、マスク11の開口12への充填率を高めることができる。しかも、動区域26がヘッド20と共にマスク11上を移動している状態において導電性ボール15が不均一に分布する動区域26を、比較的簡単に、形成および維持することができる。
充填装置5のヘッド20のスキージ22は、充填用の動区域26の周囲からボール15を集めると共に、マスク11の充填用の動区域26に対応する部分を押さえて、平坦にする機能(能力)を備えている。スキージ22は、図3に示すように、ヘッド20の内円26と外円27の間、すなわち、円形の動区域26の周囲28に配置されている。スキージ22の先端は、マスク11の表面11aに残存するボール15を残さないように集めるために、マスク11の表面11aに適当な圧力により押し付けられる。したがって、マスク11の動区域26の部分に反りあるいは歪みがあっても、動区域26の周囲28の部分をスキージ22により押さえることにより、平坦(水平)な状態に矯正できる。
また、動区域からボールが逃げないように動区域を囲い、動区域からボールが散逸しない(逸脱して逃げない)ように囲う努力が新たな問題を発生させないようにすることが好ましい。例えば、スキージなどのボールを移動する手段がマスクの表面に完全に密着するように圧力をかけ過ぎると、開口に充填されたボールが飛び出したり、マスクが損傷したりする可能性がある。
そこで、スキージ22を構成する部材23は、半導体デバイスの接続端子として機能する導電性ボールなどの微小粒子を適度な力で押して、動区域26に向かって掃き集めることができるものであることが好ましい。さらに、このスウィープ部材23は、いったん開口12に挿入されたボール15を掻き出さない程度の弾性を備えたものであることが望ましい。
適当なスウィープ部材23の1つは、図3、図4、図8および図9に示した、スキージ22の長手方向に延びた樹脂製あるいは金属製のワイヤーである。マスク11の表面に沿って長手方向に延びたワイヤーの両端をU字型に曲げてスキージサポート21に取り付けた構成の部材23は、U字型のワイヤーの腹の部分がマスク11に接する。したがって、U字型のワイヤー23は、マスク11に損傷を与えず、適当な弾性を持った状態でマスク11に押し付けられ、マスク11の孔に入っているボール15をワイヤーの先端で掻き出し難い。さらに、U字型のワイヤー23は、スキージ22の進行方向に対して直交する方向に延びているので、ボール15を押し払う部材として適している。1つのスキージ22に多重あるいは多層に配置されたワイヤー23は、マスク11に柔軟に接しながら、確実にボール15を掃き集めるのに適している。また、ヘッド20の円形の動区域26の回りに配置された複数のスキージ22は、動区域26の周囲から満遍なくボール15を集め、さらに、マスク11の、動区域26の周囲の部分を確実に押さえるために適している。
図12に、ヘッド20および円形の動区域26の軌跡の異なる例を示してある。この例では、動区域26を、ジグザグ、サインカーブまたは蛇行するような軌跡72を描くように移動し、ヘッド20を動かして、動区域26によりマスク11の表面11aの全体をカバーしている。この軌跡72を採用する場合も、上記と同様に、隣接する部分の重複率が適切になるような軌跡72をプログラム59pにセットすることが望ましい。
図13(a)は、円形の基板10の代わりに、長方形の電子回路基板80に、全体が長方形の充填領域を備えたマスク81をセットして、導電性ボール15を配置する例を示してある。この例では、ヘッド20を動かすことにより、動区域26を、ジグザグ、サインカーブまたは蛇行するような軌跡73を描くように移動し、動区域26によりマスク81の表面81aの全体をカバーしている。図13(b)に示すように、軌跡73を採用する場合も、軌跡73の隣り合う部分T(n)およびT(n+1)を50%程度重複することが望ましい。ジグザグな軌跡73は、方形の充填領域をカバーするのに適した軌跡の1つである。また、方形の外周に沿ったルートを描く螺旋状の軌跡も、方形の充填領域をカバーするのに適した軌跡の1つである。
図14から図19に、ヘッドの異なる例を示してある。図14(a)は、異なる例のヘッド20aを底面の側から見た状態を示し、図14(b)は、ヘッド20aをスキージサポート21の上方から透かして見た状態で示してある。このヘッド20aは、スキージサポート21と、その下面21aからマスク11の表面11aに向かって突き出た12本のスキージ22aとを備えている。このヘッド20aは、上述したヘッド20に代わり充填装置5のヘッド移動装置50に取り付けて使用できる。各々のスキージ22aは、極細のワイヤーが複数本束ねられたものであり、その両端22rをかしめることにより1本のスキージとして機能するように構成されている。スキージ22aは、全体がU字状に成形され、サポート21の裏面21aの内円26の回りに、内円26の接線方向にほぼ延びるように取り付けられている。
図15(a)は、さらに異なる例のヘッド20bを底面の側から見た状態を示し、図15(b)は、ヘッド20bをスキージサポート21の上方から透かして見た状態で示してある。このヘッド20bは、スキージサポート21と、その下面21aからマスク11の表面11aに向かって突き出た8セットのスキージ22bを備えている。このヘッド20bは、上述したヘッド20に代わり充填装置5のヘッド移動装置50に取り付けて使用できる。これらのスキージ22bは、ポリイミドの薄板をU字状にして複数枚を積層したものである。このタイプのスキージとしては、樹脂製あるいは金属製の薄板を単体で用いるもの、あるいは積層して用いるものが挙げられる。マスク11との間で発生する可能性のある静電気の影響を避けるためには、スキージの好適な例は金属製のものである。また、プラスチック製のスキージは、表面に銅箔などの導電性の薄膜によりコーティングしたり、炭素を含有することにより導電性を与えることが望ましい。マスク11に接するスキージの先端の部分は、エッジであっても良い。スキージが薄膜により構成される場合は、その薄膜を折り返すことにより、折り返した面がマスク11に接するようにしても良い。
図16(a)は、さらに異なる例のヘッド20cを底面の側から見た状態を示し、図16(b)は、ヘッド20cをスキージサポート21の上方から透かして見た状態で示してある。このヘッド20cは、スキージサポート21と、その下面21aからマスク11の表面11aに向かって突き出た6セットのスキージ22cを備えている。これらのスキージ22cは、ほぼ直方体状に形成された導電性のスポンジにより構成されている。このヘッド20cも、上述したヘッド20に代わり充填装置5のヘッド移動装置50に取り付けて使用できる。
スキージの他の例としては、樹脂製あるいは金属製の極細のワイヤーをブラシの毛のようにスキージサポート21に取り付けたものを挙げることができる。また、スキージのセット数は、上記に限定されるものではない。さらに、内円26の接線方向にスキージをセットすることは、本発明の好ましい形態の1つであるが、本発明は、その形態に限定されるものではない。スキージの形態は、ヘッド20を回転することより内円26の方向にボール15を掃き集めるスウィーパとして機能するものであれば良い。例えば、内円26の接線方向に対して、斜めに配置しても良く、スキージ自体を湾曲させたり、螺旋状にしたりすることが可能である。
図17は、さらに異なるヘッド20dの構成を示している。このヘッド20dは、ボール15を掃き集めるための気体91をマスク11の表面11aに吹き付けるエアーノズル92を備えている。このヘッド20dも、上述したヘッド20に代わり充填装置5のヘッド移動装置50に取り付けて使用できる。エアーノズル92は、スキージの代わりにサポート21に取り付けられるものである。エアーノズル92の一例は、上記の図面に示した各タイプのスキージと同様に、サポート21の裏面21aの内円26の接線方向に外円27まで延びた直線状のノズル端93を備えたものである。このノズル端93には、焼結金属製などのフィルタ94が取り付けられており、フィルタ94を通してエアー91がマスク11の表面11aに向かって斜め下方に噴出する。したがって、吹き出されたエアー91は、マスク11の表面11aを内円26の方向に向かって流れる。このため、エアー91により導電性ボール15を内円の動区域26の方向に吹き払いながら、ヘッド20を移動できる。さらに、マスクの表面11aに吹き付けられるエアー91の圧力により、ボールを充填する動区域26の周囲のマスクの表面11aを押さえ、マスク11の歪みや反りを矯正できる。
エアーノズル92のエアー吐出部は、フィルタ94に代わり、スリットや微小な円柱状の孔の集合により構成しても良い。また、エアー91に代わり、窒素ガスあるいはアルゴンガスといった不活性ガス、あるいは導電性ボールの帯電性を制御するためにイオン化した気体を用いることも有効である。
エアーなどの気体を吹き出すタイプのヘッド20dにおいては、エアーの圧力によりボール15を駆動できる。したがって、充填装置5は、ヘッド移動装置50によりヘッド20dを任意の方向に動かすだけで、ヘッド20dを回転させなくても、充填するための動区域26にボール15を集めることができる。ヘッド20dを回転して内円の動区域26にボール15を集合させることもできる。このため、気体を吹き出すタイプのヘッド20dのみを用いる充填装置5は、ヘッドを回転駆動するモータ56を省くことが可能であり、ヘッド移動装置50の構成を簡易にできる。
図18に、エアーを吹出すタイプのヘッドの異なる例を示してある。このヘッド20eは、スキージサポート21と、その下面21aからマスク11の表面11aに向かって突き出たスキージタイプのノズル92を備えている。ノズル92は、例えば、ゴムなどの弾性のある部材により形成されており、マスク11の表面11aに接してマスクを押さえる。ノズル92は内側に向いた吹出し口93を備えており、内側に向かってエアー91を放出することにより導電性ボール15を動区域26に集める。このヘッド20eも、上述したヘッド20に代わり充填装置5のヘッド移動装置50に取り付けて使用できる。また、吹き出すエアー91により導電性ボール15を移動できるので、ヘッドを回転させずに導電性ボール15をはき集めることができるタイプでもある。
なお、図18に示した基板10は、その表面に導電性の層10aを備えており、さらに、導電性の層10aが保護膜13でカバーされ、導電性ボール15が装着される部分のレジスト13がエッチングなどにより除去されている。したがって、マスク11はレジスト層13と密着するように基板10の上にセットできる。そして、マスク11の開口12に充填された導電性ボール15が基板の表面10aに電気的なコンタクトをもった状態で装着され、個々の導電性ボール15が接続端子として機能する。
図19に、ヘッドのさらに異なる例をスキージサポートの上方から透かして見た状態を示してある。このヘッド20fは、方形のスキージサポート21と、そのスキージサポート21の裏面21aからマスク11の表面11aに向かって延びた平面視がV字状の2セットのスキージ22fとを備えている。V字状の2セットのスキージ22fは、その間に方形の動区域26が形成されるように向かい合ってサポート21に取り付けられている。したがって、ヘッド20fを図面の左右方向に振動することにより導電性ボール15はスキージ22fの間の動区域26に集められ、その動区域26の中で自重により導電性ボール15はマスク11の開口12に充填される。また、動区域26の周囲のマスク11の表面11aはスキージ22fにより押さえられるので、マスク11の歪みなどは矯正される。ヘッド20fは、振動しながら導電性ボール15を動区域26の中に保持したまま、XY平面の任意の方向に移動できる。そして、スキージ22fを振動させながら導電性ボール15を集める動作を行うので、動区域26の内部における導電性ボール15の分布の偏りを減らすことができる。
なお、本発明において、導電性ボール15が集められる動区域26の形状は、ヘッドが回転あるいは振動(揺動)し、さらに、ヘッドが任意の方向に進むので、ほとんどの場合は、明確な境界をもった幾何学的な図形にならない。しかしながら、ヘッドが回転しながらボールを集めるタイプは、動区域26は略円形ということができる。また、ヘッドが振動しながらボールを集めるタイプは、動区域26は、スキージの形状に依存した円形または円形に外接する多角形ということができる。本発明の多角形は、正方形に限定されず、三角形、さらには、5角形以上の多角形を含む。
また、上述したヘッドは本発明に含まれる幾つかの例であり、本発明は上記に限定されるものではない。本発明のヘッドは、2次元的な、限られた広がりを備えた動区域に充填用の導電性ボールを集団で保持しながら、マスクの表面を移動するものであり、その好適な1つの形態は、充填用の動区域の周辺から導電性を掃き集められるものである。そして、ヘッドを、その軌跡の一部が重複するようにマスクの表面を移動することにより、マスク全体の開口に効率よく導電性ボールを充填でき、充填ミスを減らすことができる。
本例のボールマウンタ1は、マスクハンドラー3と充填装置5とを搭載しているが、さらに、基板10を搬送してテーブル2にセットする装置、基板10の表面にフラックスを塗布する装置などを共に搭載することも可能である。これらの装置により、マスクをセットする工程およびボールを充填する工程に先立ち、基板をテーブルにセットする工程、フラックスを塗布する工程などを行うことも可能である。そして、これらの工程をシリーズで行なうシステムを提供することも可能である。
なお、本実施形態では、ヘッドの回転方向(ヘッドの自転方向)を、上方から見て反時計回りの方向にしているが、ヘッドの回転方向は、上方から見て時計回りの方向であってもよい。ヘッドの回転方向を上方から見て時計回りの方向とする場合、スキージやスウィープ部材は、本実施形態の配置に対して鏡像反転させた配置として、ヘッドに設けるとよい。また、本実施形態では、動区域の軌跡が螺旋状の場合、その軌跡の方向を、上方から見て時計回りの方向にしているが、動区域の螺旋状の軌跡の方向は、上方から見て反時計回りの方向であってもよい。
本実施形態の目的の1つは、導電性ボールを、マスクの複数の開口にミスが少なくより確実に充填でき、基板の所定の位置に導電性ボールをミスが少なくより確実に配置あるいは搭載できる導電性ボールの搭載方法、装置、装置の制御方法、および制御プログラムを提供することである。本実施形態の他の目的の1つは、導電性ボールのロス率を低減し、経済的に導電性ボールを基板の所定の位置に搭載できる導電性ボールの搭載方法、装置、装置の制御方法、および制御プログラムを提供することである。しかしながら、当業者にとって自明な部分的な変更やバリエーションは、本発明の範囲内であると考えられる。
上記に開示した導電性ボールの搭載方法は、基板に導電性ボールを配置するための複数の開口を備えたマスクを、前記基板にセットする第1の工程と、前記複数の開口に前記導電性ボールを充填する第2の工程とを有し、前記第2の工程は、前記マスクの表面に沿って移動するヘッドにより、前記導電性ボールの集団を前記マスクの表面の一部に保持するための動区域であって、前記ヘッドと共に前記マスク上を移動し、当該動区域の内部では、前記導電性ボールが不均一に分布する動区域を形成し、前記動区域の軌跡の一部が重複するように前記動区域を移動させることを含む。
この搭載方法において、前記第2の工程は、前記動区域に、前記導電性ボールが存在する領域と、前記導電性ボールが存在しない領域とが形成されるように、前記導電性ボールを補充することを含むことが望ましい。また、前記第2の工程は、前記導電性ボールの前記動区域に存在する量が、前記動区域の面積を一層で均一にカバーする基準量に対して1/4倍〜10倍となるように、前記導電性ボールを補充することを含むことが望ましい。さらに、前記第2の工程は、前記ヘッドを前記マスクに対して垂直な軸を中心に回転させながら前記動区域を螺旋状に移動することを含み、それにより前記導電性ボールは前記動区域の内部に三日月状に分布する、ことが望ましい。また、前記第2の工程は、前記導電性ボールが逸散しないように、前記ヘッドにより、前記動区域の周辺から前記動区域に向けて前記導電性ボールを集めることを含むことが望ましい。さらに、前記第2の工程は、前記ヘッドを、前記マスクに対して垂直な軸を中心に回転させながら、前記垂直な軸を前記マスクの表面に沿って移動させ、前記ヘッドの回転により、前記導電性ボールが逸散しないように前記導電性ボールを前記動区域に集めることを含むことが望ましい。
上記に開示した、基板上にセットされ、複数の開口を備えたマスクの表面の一部に導電性ボールを保持可能なヘッドと、そのヘッドを前記マスクの表面に沿って移動させる移動手段と、前記ヘッドと前記マスクの表面との間に前記導電性ボールを補給可能な補給手段とを有する装置の制御方法は、前記複数の開口に前記導電性ボールを充填する充填工程を有し、前記充填工程は、前記ヘッドにより、このヘッドと共に前記マスク上を前記導電性ボールの集団が移動する動区域を形成し、前記移動手段により、前記動区域の軌跡の一部が重複するように前記動区域を移動させ、前記補給手段により、前記動区域に前記導電性ボールが存在する領域と、前記導電性ボールが存在しない領域とが形成されるように、前記導電性ボールを補充することを含む。
前記充填工程は、前記移動手段により、前記ヘッドを前記マスクに対して垂直な軸を中心に回転させながら前記動区域を螺旋状に移動することを含み、それにより前記導電性ボールを前記動区域の内部に三日月状に分布させることが望ましい。また、前記充填工程は、前記移動手段により、前記マスクに対して垂直な軸を中心に回転させながら、前記垂直な軸を前記マスクの表面に沿って移動させ、前記ヘッドの回転により、前記導電性ボールが逸散しないように前記導電性ボールを前記動区域に集めることを含むことが望ましい。
また、上記に開示した、基板上にセットされ、複数の開口を備えたマスクの表面の一部に導電性ボールを保持可能なヘッドと、そのヘッドを前記マスクの表面に沿って移動させる移動手段と、前記ヘッドと前記マスクの表面との間に前記導電性ボールを補給可能な補給手段とを有する装置を制御するためのプログラムは、前記ヘッドにより、このヘッドと共に前記マスク上を前記導電性ボールの集団が移動する動区域を形成し、前記移動手段により、前記動区域の軌跡の一部が重複するように前記動区域を移動させ、前記補給手段により、前記動区域に前記導電性ボールが存在する領域と前記導電性ボールが存在しない領域とが形成されるように前記導電性ボールを補充させながら、前記複数の開口に前記導電性ボールを充填することを含む制御を行う。
また、上記に開示した装置は、導電性ボールを基板に配置するための複数の開口を備えたマスクを前記基板にセットした状態で、前記複数の開口に前記導電性ボールを充填する装置であって、前記マスクの表面の一部に前記導電性ボールの集団を保持するためのヘッドと、前記ヘッドを前記マスクの表面に沿って移動させる移動手段と、前記ヘッドと前記マスクの表面との間に前記導電性ボールを補給可能な補給手段と、当該装置を制御する制御手段とを有し、この制御手段は、前記ヘッドにより、このヘッドと共に前記マスク上を前記導電性ボールの集団が移動する動区域を形成し、前記移動手段により、前記動区域の軌跡の一部が重複するように前記動区域を移動させ、前記補給手段により、前記動区域に前記導電性ボールが存在する領域と、前記導電性ボールが存在しない領域とが形成されるように、前記導電性ボールを補充することを含む制御を行う。
前記移動手段は、前記ヘッドを、前記マスクの表面に沿って、螺旋を描く方向に、前記動区域の軌跡の一部が重複するように移動可能であることが望ましい。また、前記ヘッドは、前記導電性ボールが逸散しないように、前記動区域の周辺から前記動区域に向けて前記導電性ボールを前記動区域に集める手段を備えていることが望ましい。さらに、前記ヘッド移動手段は、前記ヘッドを前記マスクに対して垂直な軸を中心に回転させる手段と、前記垂直な軸を前記マスクの表面に沿って移動させる手段とを備えており、前記導電性ボールを集める手段は、当該ヘッドの回転により、当該ヘッドの回転中心を中心とする円形の前記動区域の方向に前記導電性ボールを移動させることが望ましい。また、上記に記載の装置と、前記基板に前記マスクをセットする装置とを有する搭載装置であってもよい。
上記に開示したように、マスクの表面全体を一方向に、または往復動するスキージにより導電性ボールを1つの方向あるいは往復する方向に移動させる代わりに、マスクの表面の一部の動区域にヘッドの回転などによりボールを集め、動区域に導電性ボールの集団を保持し、動区域を、その軌跡の一部が重複するように、ヘッドと共にマスク上を移動させる。さらに、動区域の内部においては、導電性ボールの分布が不均一になるようにする。そして、動区域の移動により、マスクの表面全体をカバーし、マスクの開口に導電性ボールを充填する。
上記に開示した1つの態様は、基板に導電性ボールを配置するための複数の開口を備えたマスクを、その基板にセットする第1の工程と、複数の開口に導電性ボールを充填する第2の工程とを有する導電性ボールの搭載方法である。この第2の工程は、以下を含む。
(a1)マスクの表面に沿って移動するヘッドにより、導電性ボールの集団をマスクの表面の一部に保持するための動区域であって、ヘッドと共にマスク上を移動し、動区域の内部では、導電性ボールが不均一に分布する動区域を形成すること。
(a2)動区域の軌跡の一部が重複するように動区域を移動させること。
第2の工程は、以下を含むことが望ましい。
(a3)動区域に、導電性ボールが存在する領域と、導電性ボールが存在しない領域とが形成されるように、導電性ボールを補充すること。
また、上記に開示した他の1つの態様は、基板上にセットされ、複数の開口を備えたマスクの表面の一部に導電性ボールを保持可能なヘッドと、そのヘッドをマスクの表面に沿って移動させる移動手段と、ヘッドとマスクの表面との間に導電性ボールを補給可能な補給手段とを有する装置の制御方法である。この制御方法は、複数の開口に導電性ボールを充填する充填工程を有し、充填工程は、以下を含む。
(b1)ヘッドにより、このヘッドと共にマスク上を導電性ボールの集団が移動する動区域を形成する。
(b2)移動手段により、動区域の軌跡の一部が重複するように動区域を移動させる。
(b3)補給手段により、動区域に導電性ボールが存在する領域と、導電性ボールが存在しない領域とが形成されるように、導電性ボールを補充する。
上記に開示したさらに他の態様は、基板上にセットされ、複数の開口を備えたマスクの表面の一部に導電性ボールを保持可能なヘッドと、そのヘッドをマスクの表面に沿って移動させる移動手段と、ヘッドとマスクの表面との間に導電性ボールを補給可能な補給手段とを有する装置を制御するプログラムである。このプログラムは、ヘッドにより、このヘッドと共にマスク上を導電性ボールの集団が移動する動区域を形成し、移動手段により、動区域の軌跡の一部が重複するように動区域を移動させ、補給手段により、動区域に導電性ボールが存在する領域と導電性ボールが存在しない領域とが形成されるように導電性ボールを補充させながら、複数の開口に導電性ボールを充填することを含む制御を行うためのものである。
上記に開示したさらに他の態様は、導電性ボールを基板に配置するための複数の開口を備えたマスクを基板にセットした状態で、複数の開口に導電性ボールを充填する装置である。この装置は、マスクの表面の一部に導電性ボールの集団を保持するためのヘッドと、ヘッドをマスクの表面に沿って移動させる移動手段と、ヘッドとマスクの表面との間に導電性ボールを補給可能な補給手段と、当該装置を制御する制御手段とを有する。この制御手段は、上記(b1)、(b2)および(b3)を含む制御を行う。本発明のさらに他の態様は、この充填する装置と、基板にマスクをセットする装置とを有する搭載装置である。
ヘッドおよび動区域をマスクの表面に沿って移動させることは、マスクがセットされた基板とヘッドおよび動区域との相対的な位置を変化させることを意味し、ヘッドおよび基板の何れか一方、あるいは両方を移動させることを含む。
基板とは、導電性ボールが搭載される対象を指し、半導体ウェハ、回路基板、転写用基板およびその他のワークピースを含むものである。動区域の軌跡とは、動区域がマスクの表面を移動したことにより通過した部分あるいは経路を指す。また、動区域が通過することにより、マスクの軌跡に当たる部分の開口には導電性ボールが充填されるが、マスクの表面などに通過したことを示す明瞭な跡が残ることを要するものではない。
上記では、マスク上の導電性ボールを、単純に移動させるのではなく、限られた動区域に保持した状態で移動させる。これにより、マスクの表面に導電性ボールが自由に広がることが抑制され、導電性ボールの集団が存在する範囲(導電性ボールが逸散しない範囲)である動区域を設定する。
動区域は、その内部に導電性ボールが不均一に分布した状態で、その軌跡の一部が重複するように、ヘッドと共にマスク上を移動する。動区域は、導電性ボールが存在する領域と導電性ボールが存在しない領域とを有し、導電性ボールが存在する領域の少なくとも一部、例えば、導電性ボールが存在しない領域との境界部分には、導電性ボールが一層で存在する、または、多層ではない状態、あるいは積層されていない状態で存在する。導電性ボールが一層となる部分がマスクの開口を通過するとき、導電性ボールはマスクの開口に最も効率良く充填される。充填により導電性ボールが消費された部分には、導電性ボールが多層あるいは積層された状態で存在する部分からボールが補充されやすい。
したがって、比較的少数の導電性ボールにより、動区域の内部に、補給あるいは補充に適した導電性ボールの密度の比較的高い領域と、振込みあるいは充填に適した導電性ボールが一層となる部分を形成できる。このため、その動区域が通過する部分のマスクの開口に対し効率良く導電性ボールを充填でき、充填ミスの発生率を低くできる。そして、動区域を、その軌跡の一部が重複するように動かすことで、導電性ボールが不均一に分布する動区域の中の導電性ボールが存在する領域によりマスクの表面全体を漏れなくカバーし、導電性ボールの充填ミスの発生率を小さくできる。
また、上記では、マスク上の限られた動区域に保持すべき導電性ボールの数は、マスク全体の開口に対し一様に充填するために要求される微小粒子の量に比較すれば非常に少なくて良い。したがって、マスク上を移動することにより損傷する可能性のある導電性ボールの量は少なくなり、充填する際にロスになる導電性ボールの量は少なくなる。
さらに、マスクの上を往復動するだけのスキージであると、同じ領域を完全に重複してスキージが動くので、最初のスキージの通過を除くと、その後のスキージの動きによっては充填ミスの開口にボールが充填されるだけである。したがって、往復動の場合は、最初の一回または数回を除き、スキージによりボールを繰り返し移動して充填ミスを減らそうとすると、ボールの損傷だけが進み、この点でもボールのロスが大量に発生しやすい。
動区域を、その軌跡の一部が重複するように動かすことで、動区域の移動により、新たに充填される開口が表れる。このため、例えばヘッドとマスクの表面との間に導電性ボールを補給可能な補給手段(動区域に導電性ボールを供給する手段)を設けることが望ましい。移動する動区域に、導電性ボールが存在する領域と、導電性ボールが存在しない領域とを有するように補給手段により導電性ボールを適量補充することにより、動区域に充填に適した状態に導電性ボールが保持された領域を継続して形成できる。マスクの開口に対し効率良く導電性ボールを充填するためには、導電性ボールが動区域に存在する量が、この動区域の面積を一層で均一にカバーする基準量に対して1/4倍〜10倍となるように制御することが望ましい。導電性ボールが動区域に存在する量が、基準量に対して1/4倍〜3倍となるように制御することがさらに好ましい。
動区域あるいはヘッドの軌跡を一部重複させて、マスクの表面全体をカバーするためには、動区域は、ジグザグ状に、またはサインカーブを描くように移動させることができる。動区域は、螺旋状または渦巻き状に移動することが好ましい。ヘッドをマスクに対して垂直な軸を中心に回転させながら動区域を螺旋状に移動し、それにより導電性ボールが動区域の内部に三日月状に分布するようにすると、マスクの開口への充填率を高めることができ、しかも、動区域がヘッドと共にマスク上を移動している状態において導電性ボールが不均一に分布する動区域を、比較的簡単に、形成および維持することができる。
動区域の移動方向に関わらず、導電性ボールが逸散しないように、ヘッドによって動区域の周辺から動区域に向けて導電性ボールを集めやすい動区域の形状は、円または円に外接する多角形である。例えば、動区域に向かって周囲の導電性ボールを掃き集めるようにヘッドを振動させることができる。また、ボールを充填するための動区域に向かってヘッドからエアーなどの気体を吹き出すことにより、導電性ボールを掃き集めることができる。導電性ボールが逸散しないように導電性ボールを集めるための好ましい方法の1つは、ヘッドを回転させることにより、ヘッドの中心の動区域に向かって導電性ボールを動かして導電性ボールを集めることである。ヘッドを、マスクに対して垂直な軸を中心に回転させながら、垂直な軸をマスクの表面に沿って移動させ、ヘッドの回転により導電性ボールが逸散しないように導電性ボールを動区域に集めることにより、導電性ボールの集団を動区域に良好に保持しながら移動させることができる。