JP2008041618A - 高圧放電ランプ - Google Patents

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Abstract

【課題】電極に使用されるタングステンに含まれる阻害物質の含有量に応じて、一々実験することなく適正な臭素濃度を簡単に規定できるようにする。
【解決手段】発光管内にタングステン電極が対向配設されると共に、所定量の臭素が封入されて成る高圧放電ランプにおいて、発光管内の封入臭素濃度Cを、次式により算出される濃度に規定した。 式:CS=E(CW+CH) CS:封入臭素濃度 E :誤差係数(=0.9〜1.1) CW:基準臭素濃度(=1.4〜1.6[×10−4μmol/mm3]) CH:補正臭素濃度(=ΣQn(=1〜10)/V=Σ(Mn/An)/V) Qn:タングステン電極が発光管内に突出する部分に含まれる10種類のタングステンハロゲン輸送サイクル阻害物質の夫々と反応する臭素のモル数 V :発光管有効容積 Mn:発光管内に突出された電極部分に含まれる各阻害物質の含有量 An:各阻害物質の原子量
【選択図】図1

Description

本発明は、発光管内にタングステン電極が対向配設されると共に、所定量の臭素が封入されて成る高圧放電ランプに関する。
液晶プロジェクターなどの投射型画像表示装置には、点光源に近似させた高輝度光源が望ましく、ショートアーク型高圧水銀放電ランプが用いられている。
そのショートアーク型高圧水銀放電ランプは、発光物質である水銀と、始動補助ガスとしてのアルゴンの他に、微量なハロゲンが化合物として封入されている。
ハロゲンは、ランプ点灯時にアークが接することにより最も高温となるタングステン電極先端部から蒸発したタングステンを電極先端に戻すように、タングステンハロゲン輸送サイクル作用を利用すべく封入している。
即ち、電極から蒸発したタングステンが発光管内壁に付着して黒化を生ずるが、その高温雰囲気中にハロゲンが存在すると、発光管内壁に付着したタングステンと反応してオキシ臭化タングステンとなり、これが電極先端に戻るタングステンハロゲン輸送サイクルが形成される。
特開平06−052830
しかし、ここに例示されているハロゲン族の内、沃素Iを用いると、封入濃度を上限値まで高めてもタングステンハロゲン輸送サイクルを維持するようには全く機能しない。また、塩素Clを用いると、極めて反応性が強いため、封入濃度を下限値10−6μmol/mmまで低くしてもタングステン電極先端の変形や、電極根元の腐食による細りが早期に発生するだけでなく、このような低濃度でバラツキなく安定的に封入することさえ困難であった。
さらに、臭素(Br)を用いた場合、その上限値として開示されている濃度10−4μmol/mmを封入しても、濃度不足と思われる黒化現象を早期に生じるという問題があった。
一方、高圧動作するランプの寿命末期において、点灯繰返しによる熱履歴に起因して発光管が熱応力限界を超えて破裂するため、その前に電極を落下させて破裂防止を図る技術が提案されている。
特開平11−297274
これは、発光管内の封入臭素濃度を適正に設定することにより、電極の先細りを起こさせ、所望のランプ寿命の直前で積極的に電極折れを生じさせることにより不点にして、発光管の破裂を防止しようとするものである。
しかしながら、タングステンメーカで精製されるファイブ9と称される99.999%の純タングステン電極といえども、精製されたロットごとにその組成は微妙に異なり、実験の結果、適正な封入臭素濃度はタングステン電極の製造ロットごとに微妙に異なることが判明した。
臭素濃度の決定に際しては、同一ロットのタングステン電極を用いて発光管内の臭素濃度のみが異なる放電ランプを何種類か製造し、実際に点灯実験を行うことにより最適臭素濃度を実験的に求めるのが一般的であるが、2000〜5000時間程度のランプ寿命がある高圧放電ランプについて連続点灯実験をしても臭素濃度決定までに3〜7ヶ月もかかり、定格電圧の倍の電圧を印加して連続点灯させる過負荷連続点灯実験を行なっても臭素濃度決定までに1〜3ヶ月はかかるという問題があった。
このため、本発明者らはさらに実験を重ね、封入臭素濃度の違いの原因を究明したところ、タングステン電極には、タングステンハロゲン輸送サイクル阻害物質(以下、単に「阻害物質」という)が不純物として僅かながら含まれており、しかも、そのような阻害物質含有量がロットごとに異なることが判明した。
そして、さらに研究を重ねた結果、発光管内では、タングステンハロゲン輸送サイクルの反応が生じているが、同時に、阻害物質とハロゲンが反応するため、そのハロゲン相当分は、タングステンハロゲン輸送サイクルに寄与しないことが判明した。
発光管の封入臭素濃度は理論的には熱力学的計算により定まるが、この場合、阻害物質の濃度は全く考慮されていないため、現実には実験により求めざるを得ない。
しかしながら、個々に実験するのは面倒であるので、阻害物質の含まれていないタングステンを電極として用いたときに、熱力学的計算あるいは実験的に、適正なタングステンハロゲン輸送サイクルを生ずる基準臭素濃度を求めておき、実際に使用するタングステン電極に含まれる阻害物質含有量に応じた何らかの修正を加えることができれば、適正な封入臭素濃度を簡単に決定することができる。
そこで本発明は、発明者のこのような知見に基づきなされたもので、電極に使用されるタングステンに含まれる阻害物質の含有量に応じて、一々実験することなく適正な臭素濃度を簡単に規定できるようにすることを技術的課題としている。
この課題を解決するために、本発明は、発光管内にタングステン電極が対向配設されると共に、所定量の臭素が封入されて成る高圧放電ランプにおいて、前記発光管内の封入臭素濃度Cが、次式により算出される濃度に規定されていることを特徴とする。
式:C=E(C+C
:封入臭素濃度
E :誤差係数(=0.9〜1.1)
:基準臭素濃度(=1.4〜1.6[×10−4μmol/mm])
:補正臭素濃度(=ΣQn(=1〜10)/V=Σ(M/A)/V)
:タングステン電極が発光管内に突出する部分に含まれる10種類のタングス テンハロゲン輸送サイクル阻害物質(Al、Cu、Mn、Si、K、Ca、 Mg、Sn、Ur、Th)の夫々と反応する臭素のモル数(mol)
V :発光管有効容積
:発光管内に突出された電極部分に含まれる各阻害物質の含有量
:各阻害物質の原子量
本発明によれば、封入臭素濃度Cは、基本的には、タングステンハロゲン輸送サイクル阻害物質が含まれていないタングステン電極を使用したと想定したときの基準臭素濃度Cと、阻害物質の含有量に応じて定まる補正臭素濃度Cの和に基づいて規定される。
基準臭素濃度Cは、例えば、阻害物質の濃度が0あるいは極めて低いタングステン材料で形成された電極を取り付けたランプを点灯させたときに、タングステンハロゲン輸送サイクルを生ずる最適な濃度を、実験的又は理論的に求めれば良い。
本発明では、10種類の各阻害物質の濃度がいずれも0.2ppm以下のタングステン材料を用いて実験により得られた値を基準臭素濃度C=1.4〜1.6[×10−4μmol/mm]とした。
補正臭素濃度Cは、Al、Cu、Mn、Si、K、Ca、Mg、Sn、Ur、Thの10種類のタングステンハロゲン輸送サイクル阻害物質が放電により高温高圧のプラズマ状態となっている発光管内に蒸発したときに、一価として反応すると想定して臭素と反応するモル濃度を求めた。
このとき、タングステン電極中、発光管内に突出する部分に存在する各阻害物質の質量Mn(n=1〜10)を基準として、これを原子量An(n=1〜10)で割ることにより、臭素が夫々の阻害物質と反応するモル数Qn(n=1〜10)を算出し、その総モル数ΣQn(n=1〜10)を発光管の容積Vで割ることにより補正臭素濃度C=ΣQn(n=1〜10)/Vが求められる。
最後に、基準臭素濃度Cと補正臭素濃度Cの和に誤差係数Eをかけて封入臭素濃度Cが算出される。
この誤差係数は、阻害物質の含有量の測定誤差や、金属が一価で臭素と反応すると想定したことによる誤差を相殺するもので、±10%の範囲を見込んでいる。
このように算出された濃度で臭素を封入したところ、阻害物質の含有量が異なるタングステンで電極を形成した場合でも、適正なタングステンハロゲン輸送サイクルにより、ランプ寿命が長く、早期黒化を起さず、さらに、寿命末期に積極的に電極折れを起させて点灯不能とし発光管の破裂を防止することのできる適正な封入臭素濃度を実験によらず簡単に決定することができるという効果を奏する。
本例では、電極に使用されるタングステンに含まれる阻害物質の含有量に応じて、一々実験することなく適正な臭素濃度を簡単に決定するという目的を達成するために、発光管内にタングステン電極が対向配設されると共に、所定量の臭素が封入されて成る高圧放電ランプにおいて、前記発光管内の封入臭素濃度Cを、次式により算出される濃度に規定することとした。
式:C=E(C+C
:封入臭素濃度
E :誤差係数(=0.9〜1.1)
:基準臭素濃度(=1.4〜1.6[×10−4μmol/mm])
:補正臭素濃度(=ΣQn(=1〜10)/V=Σ(M/A)/V)
:タングステン電極が発光管内に突出する部分に含まれる10種類のタングス テンハロゲン輸送サイクル阻害物質(Al、Cu、Mn、Si、K、Ca、 Mg、Sn、Ur、Th)の夫々と反応する臭素のモル数(mol)
V :発光管有効容積
:発光管内に突出された電極部分に含まれる各阻害物質の含有量
:各阻害物質の原子量
以下、本発明を図面に示す実施例に基づいて説明する。
図1は本発明に係る放電ランプの一例を示す説明図、図2は電極を示す説明図、図3はロットの異なるタングステンの阻害物質の組成を示す表、図4は実験結果を示すグラフである。
図1に示す放電ランプ1は、定格電力150Wの液晶プロジェクター用ショートアーク型高圧水銀ランプであって、その発光管2の管軸を反射鏡3の光軸Xに一致させ、対向するタングステン電極4,4間の発光点が、反射鏡3の焦点位置に位置するように配されている。
そして、発光管2は、ナトリウムNa及びリチウムLiその他のアルカリ金属の総含有率1ppmのノンアルカリ石英ガラスが用いられており、そのバルブ2aの内部空間の全容積から電極体積を差し引いた有効容積Vが85mmに形成されている。
タングステン電極4は、図2(a)に示すように、直径0.35mm、溶解前の長さ8.5mmの電極心棒5の先端側に、直径0.22mmのコイル6が内外二重の稠密状態に巻かれており、その巻数が内側8.5ターン、外側6.5ターンとなっている。
電極心棒5及びコイル6は、いずれも、ノンドープのタングステン材料で形成されている。
そして、図2(b)に示すように、点灯中にアークに接触する側となる先端部分をレーザやプラズマアークなどで溶解すると、その先端に直径約1mmの略球状の放電部4aが形成される。
タングステン電極4に、不純物として含まれるモリブデンMoは、含有率が高いと点灯初期に著しい電極損耗を起し、また、点灯中にタングステンーモリブデン合金による融点降下が生じるため、モリブデンMoの濃度が5ppm以下のものを用いており、より好ましくは濃度1ppm以下のものを用いる。
また、鉄Fe,コバルトCo,ニッケルNi,クロムCr,アルミニウムAl,ケイ素SiもタングステンWと容易に共有結合して合金を作り融点降下を起こすことがあるので、これらの濃度は夫々1ppm以下のものを用いることにより、寿命時間内での電極先端変形を防止している。
このように形成した電極4,4を発光管2内に対向配設し、基準臭素濃度C=1.4〜1.6[×10−4μmol/mm]の臭素を封入して点灯させたところ黒化現象を早期に生じた。これは、タングステン電極4に含まれる阻害物質の影響と考えられる。
図3は、異なるロットL〜Lのタングステン材料で形成されたタングステン電極4に含まれる不純物のうち、ハロゲンと反応してタングステンハロゲン輸送サイクルを阻害する10種類の阻害物質(Al,Ca,Cu,Mg,Mn.Si,K,U,Th)の濃度組成を示すグラフである。
まず、これらの濃度組成から阻害物質の含有量を算出する。
電極4の1本の全体の重さは約40mgであり、その溶解固化された放電部4aの重さは約15mgである。
また、放電部4aを形成する際に、電極4の先端部分及びコイル6に含まれていた不純物は蒸発して、固化された放電部4aには不純物はほとんど残っていない。
発光管2の両端封止部7,7に埋められてシールされる電極4の他端側埋込部4bは、埋込長さ約3.5mmで、その重さは約6.5mgである。この埋込部4bは、ランプ点灯中であってもに金属が蒸発するほどの高温にはならないので、この部分に含まれている阻害物質その他の不純物が蒸発することはない。
したがって、発光管2内に突出された電極4に含まれる阻害物質の含有量を算出する際に、本例では、電極4のうち先端側放電部4a及び他端側埋込部4bを除いた中間部4cに含まれている阻害物質の含有量を求めれば足りる。
中間部4cの重さは、電極4の全体の重さから放電部4a及び埋込部4bの重さを差し引いた18.5mg(=40−15−6.5)であり、両側の電極4,4の重さM=37mgとなり、これとタングステンメーカより供給されるロットごとの組成分析表に記載された夫々の阻害物質の含有率R(n=1〜10)から、各阻害物質の含有量M(n=1〜10)を下式により算出する。
=M×R
この中間部4cに不純物として存在する阻害物質がランプ点灯中の初期に、徐々に蒸発してバルブ2aの放電空間内に放出されて、タングステンハロゲン輸送サイクルを阻害するので、算出された含有量に基づき、これと反応する臭素のモル数を求める。
バルブ2a内は、放電により高温高圧のプラズマ状態となっているため、蒸発された阻害物質はハロゲンとの結合分解を繰り返しており、その価数を特定することができないため、一価として反応すると仮定して、そのモル数を求めた。
阻害物質を一価と仮定すれば、夫々の阻害物質のモル数は、これと反応する臭素のモル数Q(n=1〜10)に等しく、その阻害物質の含有量M及び原子量A(n=1〜10)より次式により求められる。 Q=M/A
夫々の阻害物質と反応する臭素のモル数Qの総和が、全ての阻害物質と反応する臭素の総モル数ΣQ(n=1〜10)であり、有効容積Vの発光管2内の臭素濃度Cは次式により求まる。
=ΣQ/V
この臭素濃度Cこそ、基準臭素濃度Cの臭素を封入したときの不足濃度に他ならないから、これを補正臭素濃度Cとすれば、発光管2内に封入すべき封入臭素濃度Cはこれらの和に基づいて次式で算出される。
=E(C+C
なお、臭素のモル数を算出する根拠となった阻害物質との反応メカニズムは必ずしも推論であり、その式も実際の反応メカニズムを反映しているとは言えず、さらに、不純物の分析結果にも誤差が含まれていることが予想されるため、これらを全て考慮して10%の誤差を含むものとし、誤差係数E=0.9〜1.1としている。
図3上段は、ロットLのタングステン材料を用いて、中間部4cの重さが二本で37mgのタングステン電極4を形成したときの各阻害物質の濃度R、含有量M、原子量A、モル数Qを示す。
本例では総モル数ΣQが、
ΣQ(n=1〜10)=7.326(×10−3μmol)
であるから、補正臭素濃度Cが、
=ΣQ/V=0.8618(×10−4μmol/mm
となり、封入臭素濃度Cは、その上限値及び下限値より、
2.04≦C≦2.71(×10−4μmol/mm
となる。
このロットLのタングステン材料で形成した電極4を用いて、封入臭素濃度を1.5〜3.5(×10−4μmol/mm)まで0.1(×10−4μmol/mm)ずつ変化させた定格150Wのランプを数十本作成し、反射鏡と共にプロジェクター内に取付けて寿命試験を行った。
図4に、夫々の臭素濃度における寿命の平均をプロットしたものをスムージングしたグラフを実線B、Nで示す。
寿命は、黒化により照度が95%まで低下した時点(実線B図示)と、電極折れにより点灯不能となった時点(実線N図示)のいずれか早い方とした。
実験によれば、このロットLのタングステン電極4を用いたランプ1は、封入臭素濃度が1.95〜2.8(×10−4μmol/mm)で3500時間以上の寿命を有する。
そして、そのほとんどのランプ1が、3000時間程度経過した時点から電極4の根元が徐々に細くなっていき、3500〜4000時間で黒化する前に電極折れにより点灯不能となって寿命が尽きた。
式により求めた封入臭素濃度C=2.04〜2.71と、実験結果が概ね符合することがわかる。
即ち、本発明により、阻害物質含有量に応じて算出された封入臭素濃度Cの臭素を発光管2内に封入することにより、寿命期間中、臭素によるタングステンハロゲン輸送サイクルにより発光管2内の黒化が防止され、寿命末期において電極折れを起こさせて発光管2の破裂を防止することができた。
図3中段は、ロットLのタングステン材料を用いて同様に段具ステン電極4を形成した場合の各阻害物質の濃度R、含有量M、原子量A、モル数Qを示す。
本例では総モル数ΣQが、
ΣQ(n=1〜10)=8.588(×10−3μmol)
であるから、補正臭素濃度Cが、
=ΣQ/V=1.0104(×10−4μmol/mm
となり、封入臭素濃度Cは、その上限値及び下限値より、
2.17≦C≦2.87(×10−4μmol/mm
となる。
実施例1と同様に、このロットLのタングステン材料で形成した電極4を用いて、封入臭素濃度を0.1(×10−4μmol/mm)ずつ変化させた定格150Wのランプを数十本作成し、寿命試験を行った。
図4に、夫々の臭素濃度における寿命の平均をプロットしたものをスムージングしたグラフを破線B、Nで示す。
寿命は、黒化により照度が95%まで低下した時点(破線B図示)と、電極折れにより点灯不能となった時点(破線N図示)のいずれか早い方とした。
実験によれば、このロットLのタングステン電極4を用いたランプ1は、封入臭素濃度が2.05〜3.0(×10−4μmol/mm)で3500時間以上の寿命を有する。
そして、そのほとんどのランプ1が、3000時間程度経過した時点から電極4の根元が徐々に細くなっていき、3500〜4000時間で黒化する前に電極折れにより点灯不能となって寿命が尽きた。
式により求めた封入臭素濃度C=2.17〜2.87と、実験結果が概ね符合することがわかる。
即ち、本発明により、阻害物質含有量に応じて算出された封入臭素濃度Cの臭素を発光管2内に封入することにより、寿命期間中、臭素によるタングステンハロゲン輸送サイクルにより発光管2内の黒化が防止され、寿命末期において電極折れを起こさせて発光管2の破裂を防止することができた。
図3下段は、ロットLのタングステン材料を用いて同様に段具ステン電極4を形成した場合の各阻害物質の濃度R、含有量M、原子量A、モル数Qを示す。
本例では総モル数ΣQが、
ΣQ(n=1〜10)=5.407(×10−3μmol)
であるから、補正臭素濃度Cが、
=ΣQ/V=0.6362(×10−4μmol/mm
となり、封入臭素濃度Cは、その上限値及び下限値より、
1.83≦C≦2.46(×10−4μmol/mm
となる。
各実施例と同様に、このロットLのタングステン材料で形成した電極4を用いて、封入臭素濃度を0.1(×10−4μmol/mm)ずつ変化させた定格150Wのランプを数十本作成し、寿命試験を行った。
図4に、夫々の臭素濃度における寿命の平均をプロットしたものをスムージングしたグラフを鎖線B、Nで示す。
寿命は、黒化により照度が95%まで低下した時点(鎖線B図示)と、電極折れにより点灯不能となった時点(鎖線N図示)のいずれか早い方とした。
実験によれば、このロットLのタングステン電極4を用いたランプ1は、封入臭素濃度が1.8〜2.5(×10−4μmol/mm)で3500時間以上の寿命を有する。
そして、そのほとんどのランプ1が、3000時間程度経過した時点から電極4の根元が徐々に細くなっていき、3500〜4000時間で黒化する前に電極折れにより点灯不能となって寿命が尽きた。
式により求めた封入臭素濃度C=1.83〜2.46と、実験結果が概ね符合することがわかる。
即ち、本発明により、阻害物質含有量に応じて算出された封入臭素濃度Cの臭素を発光管2内に封入することにより、寿命期間中、臭素によるタングステンハロゲン輸送サイクルにより発光管2内の黒化が防止され、寿命末期において電極折れを起こさせて発光管2の破裂を防止することができた。
以上述べたように、本発明は、発光管内にタングステン電極が対向配設されると共に、所定量の臭素が封入する高圧放電ランプの用途に適用できる。
本発明に係る放電ランプの一例を示す説明図。 電極を示す説明図。 ロットの異なるタングステンの阻害物質の組成を示す表。 実験結果を示すグラフ。
符号の説明
1 放電ランプ
2 発光管
4 タングステン電極
4a 放電部
4b 埋込部
4c 中間部
封入臭素濃度
基準臭素濃度
補正臭素濃度
E 誤差係数

Claims (5)

  1. 発光管内にタングステン電極が対向配設されると共に、所定量の臭素が封入されて成る高圧放電ランプにおいて、
    前記発光管内の封入臭素濃度Cが、次式により算出される濃度に規定されていることを特徴とする高圧放電ランプ。
    式:C=E(C+C
    :封入臭素濃度
    E :誤差係数(=0.9〜1.1)
    :基準臭素濃度(=1.4〜1.6[×10−4μmol/mm])
    :補正臭素濃度(=ΣQn(=1〜10)/V=Σ(M/A)/V)
    :タングステン電極が発光管内に突出する部分に含まれる10種類のタングス テンハロゲン輸送サイクル阻害物質(Al、Cu、Mn、Si、K、Ca、 Mg、Sn、Ur、Th)の夫々と反応する臭素のモル数(mol)
    V :発光管有効容積
    :発光管内に突出された電極部分に含まれる各阻害物質の含有量
    :各阻害物質の原子量
  2. 前記タングステン電極が、モリブデンMoの含有率を5ppm以下、アルミニウムAl、コバルトCo、鉄Fe、ニッケルNi及びシリコンSiの含有率を夫々1ppm以下とするノンドープタングステンで形成された請求項1記載の高圧放電ランプ。
  3. 前記一対の電極の少なくとも一方は、ノンドープタングステンで形成された電極ロッドの放電側先端部近傍にノンドープタングステンで形成されたコイルが巻回され、そのコイルが加熱溶融されて前記電極ロッドに固定されて成る請求項1又は2記載の高圧放電ランプ。
  4. 前記タングステン電極として、モリブデンMoの含有率が1ppm以下とするノンドープタングステンを用いた請求項1乃至3のいずれか記載の高圧放電ランプ。
  5. 前記発光管がノンアルカリ石英で形成された請求項1記載の高圧放電ランプ。







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