JP2008040046A - 光拡散シート及びそれを備えたスクリーンシート - Google Patents

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Abstract

【課題】高い光透過性を維持すると共に、視野角が広く、しかも、モアレのない鮮明な画像を得ることが可能な光拡散シートを提供する。
【解決手段】たて糸12とよこ糸11とが織り込まれた織物で構成される光拡散シート10であって、光透過性のある円もしくは擬似円断面形状の第1の繊維をよこ糸11として使用し、第2の繊維をたて糸12として使用し、よこ糸11が互いに平行で、屈曲なく、且つ略密接して配列された織組織構造を備えている。光拡散シート10は、よこ糸の繊維軸方向が映像装置の表示面の垂直方向又は水平方向に沿うように設置される。若しくは、よこ糸の繊維軸方向が映像装置の表示面の垂直方向及び水平方向の両方向に沿うように2枚積層して設置される。
【選択図】 図1

Description

本発明は、大型映像装置等において用いられる光拡散シート、特に視野角が狭い映像装置に使用される光拡散シート、及びそれを備えたスクリーンシートに関する。
光ファイバを使用したディスプレイ装置等の大型映像装置は、水平方向および垂直方向への広範囲にわたる画像提供を目的とするが、装置の映像投影システムによる光の指向性により映像装置単独では本来の目的を達成できない。そこで通常は映像装置の表示面に光拡散シートを設置し、視野角を得ている。
従来の映像を広範囲にわたり視認可能とする光拡散シートについては、「透明樹脂およびその光学的応用の新展開(第7章:光学機能フィルム)」と題する文献において報告されている。この文献にも記載されているように、従来の光拡散シートはポリプロピレンやポリエステルを基材とした光透過性の高い樹脂を基材とし、その樹脂中もしくは樹脂表面に光拡散機能を保有するガラスビーズなどの微粒子を分散して構成している(以下、「光学フィルム構造」という。)。しかし、従来の光拡散機能粒子と光透過性の高い樹脂から構成される光拡散シートでは、十分な視野角と輝度の両特性を得られていない。
フィルム以外には、フィルム上にロッドレンズやプラスチック光ファイバ等の光透過性ストランドを規則的に配列させて光拡散シートを構成する方法が特許文献1に、ロッドレンズや光透過性ストランドを編構造にて規則的に配列させ光拡散シートを構成する方法が特許文献2に、ロッドレンズや光透過性ストランドを織構造にて規則的に配列させ光拡散シートを構成する方法が特許文献3に記載されている。
実開昭59−121647号公報 特開昭64−76041号公報 実開平1−166335号公報 「透明樹脂およびその光学的応用の新展開(第7章:光学機能フィルム)」 種別:調査レポート 販売元:(株)東レリサーチセンター
上記特許文献1〜3に記載されているように、ロッドレンズもしくは光透過性ストランドを規則的に配列させることにより広い視野角を実現することは可能である。しかしながら、各特許文献1〜3は、以下の課題を有している。
即ち、特許文献1の方法は非生産的であり現実には実現できていない。具体的に説明すると、光透過性ストランドの直線性が悪いと、投影された画像にモアレが生じ、画像品質が低下するので、本来的に規則的に配列された光透過性ストランドの直線性が高精度で要請されている。しかしながら、特許文献1のようなフィルム基板上に光透過性ストランドを真っ直ぐに配列させて固着させることは、現実には困難であり、従って、上記要請に充分対応した光拡散シートが得られない。
また、特許文献2の方法は、編み構造の原理より、ロッドレンズ間に2本の糸が介在する構成となっており、ロッドレンズを隙間無く配置することは困難である。このように、光透過性ストランド間に2本の糸が介在すると、ロッドレンズ同士の間隔が大きく広がり、遮光面積も大きくなって、光透過率が低下し、画質が低下する。
特許文献3の方法は、上記特許文献1、2に比べて、最も生産的である。しかしながら、光透過性ストランドをたて糸に使用する場合、織工程の原理から光透過性ストランドは必ず屈曲した状態となり、この屈曲が原因でモアレが発生するため、光拡散シートとしては不適当である。
本発明の目的は、上記した従来技術の問題点を解決し、高い光透過性を維持すると共に、視野角が広く、しかも、モアレのない鮮明な画像を得ることが可能な光拡散シート及びそれを備えたスクリーンシートを提供することである。
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、レンズ効果の得られる光透過性の高いストランドを織物のよこ糸として直線的に屈曲することなくほぼ隙間なく配列することにより、光透過率が高く広い視野角が得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。本発明の具体的構成は、以下の通りである。
請求項1記載の発明は、たて糸とよこ糸とが織り込まれた織物で構成される光拡散シートであって、光透過性のある円もしくは擬似円断面形状の第1の繊維をよこ糸として使用し、第2の繊維をたて糸として使用し、前記よこ糸が互いに平行で、屈曲なく、且つ略密接して配列された織組織構造を備えていることを特徴とする光拡散シート。
上記の如く、光透過性のある第1の繊維をよこ糸として使用することにより、よこ糸が屈曲することなくほぼ密接して配列された織組織が得られる。従って、かかる織組織構造を有する光拡散シートを大型映像装置のスクリーンに設置すると、視野角が広くモアレのない鮮明な画像を得ることが可能となる。
また、本発明のような織物構造の光拡散シートの場合、光透過性のあるよこ糸がそれぞれレンズ効果を発揮して入射光を拡散して出射するので、従来の光学フィルム構造の光拡散シートとほぼ同等の光拡散性を有する。加えて、本発明の光拡散シートは光透過性のあるよこ糸を用いるので、従来の光学フィルム構造の光拡散シートに比べて、光の透過率が高い。なぜなら、従来の光学フィルム構造の光拡散シートは、光透過性の高い樹脂を基材とし、その樹脂中もしくは樹脂表面に光拡散機能を保有するガラスビーズなどの微粒子を分散して構成されているので、基材と光拡散機能を保有する微粒子の2つの光透過部材が存在するからである。これに対して、本発明の光拡散シートでは、光透過部材としては光透過性のあるよこ糸のみだからである。このように、本発明の光拡散シートは、従来の光学フィルム構造の光拡散シートとほぼ同等の高い光拡散性を有し、且つ、高い光透過率を有することにより、広い視野角特性を有する。つまり、画像の正面から徐々に角度を増していっても、輝度の低下がなだらかに変化することになり、広範囲の角度位置において鮮明な画像と認識することが可能となる。
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の光拡散シートであって、前記よこ糸の密度は、[1(cm)/よこ糸直径(cm)]×0.5(本/cm)以上であることを特徴とする。
よこ糸が密接して配列されている場合は、よこ糸密度は1(cm)/よこ糸直径(cm)により算出された値である。本来的には、よこ糸を完全に隙間なく配列することが最も好ましい。しかしながら、本発明に係る光拡散シートの場合、たて糸がよこ糸間に介在しているので、よこ糸を完全に隙間なく配列することができず、現実には隙間が生じている。この隙間は可能な限り小さくするのが好ましい。そこで、たて糸分によるよこ糸密度の減少率を示す係数を0.5以上とした。即ち、よこ糸密度は、[1(cm)/よこ糸直径(cm)]×0.5(本/cm)以上とした。なお、減少率を示す係数を0.5以上に規制しているのは、それ以下の値であると、よこ糸の間隔が大きくなりすぎ、画質の低下により光拡散シートとしては適切でないからである。
また、請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の光拡散シートであって、前記たて糸の密度は、前記織物表面の全面積に対するたて糸が占める面積比に換算した場合に30%以下となることを特徴とする。
上記のようにたて糸密度を規制するのは、たて糸の密度が大きいと、遮光される面積が大きくなって、光透過率が低下するからである。
また、請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の光拡散シートであって、
前記光拡散シートは、映像装置等の表示面に設置される光拡散シートであって、前記よこ糸の直径は、映像装置等の映像表示単体と同等もしくは小さいことを特徴とする。
「映像表示単体」とは、映像装置の表示面(光ファイバ映像装置の場合であれば、スクリーン)における1画素に相当するものである。
上記構成により、映像表示単体に少なくとも1本のよこ糸が通るようになるので、各映像表示単体全てにおいて光拡散効果が得られるので、全体として表示ムラのない表示が可能となる。
また、請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の光拡散シートを、よこ糸の繊維軸方向が互いに直交するように2枚積層してなることを特徴とする。
上記構成により、直交する2方向に光が拡散し、2次元方向に視野角が広がる光拡散シートが得られる。
また、請求項6記載の発明は、たて糸とよこ糸とが織り込まれた織物で構成され、たて糸とよこ糸が交差する交差部にそれぞれ映像表示単体が配置されてなる映像装置の表示面に設置される光拡散シートであって、光透過性のある円もしくは擬似円断面形状の第1の繊維をよこ糸として使用し、第2の繊維をたて糸として使用し、前記交差部において、前記よこ糸が互いに平行で、屈曲なく、且つ略密接して配列された織組織構造を備えていることを特徴とする。
上記構成の光拡散シートは、たて糸とよこ糸が交差する交差部において屈曲ない織組織構造を備えているので、かかる交差部が映像装置の映像表示単体(例えば、映像装置がLED映像装置の場合、1つのLEDに相当)を覆うように構成すれば、モアレのない鮮明な画像が得られることになる。
また、請求項7記載の発明は、請求項1〜6のいずれかに記載の光拡散シートに、前記光拡散シートが平面を保つように、よこ糸及びたて糸に張力を付与した状態を保持する保持手段を備えたことを特徴とするスクリーンシートである。
上記構成のスクリーンシートであれば、よこ糸及びたて糸に張力を付与した状態を保持する保持手段により、光拡散シートの平面状態が保持される。この結果、よこ糸に屈曲が生じず、モアレの発生のない鮮明な画像が得られる。
本発明によれば、視野角が広く鮮明な画像を実現可能な大型映像装置用の光拡散シート及びそれを備えたスクリーンシートを実現することができる。
以下、本発明に係る光拡散シート及びその光拡散シートを備えたスクリーンシートを、実施の形態に基づいて詳述する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は実施の形態1に係る光拡散シートの斜視図、図2は実施の形態1に係る光拡散シートを用いた映像装置の全体構成図、図3は映像装置におけるスクリーンの断面図、図4は映像装置におけるスクリーンの正面図、図5は図4の一部拡大図である。
実施の形態1に係る光拡散シートが使用される映像装置1は、光ファイバ映像装置であって、図2に示すように、大略的に画像投写機2、画像入力面3、光ファイバ群4、画像出力面5を備えて構成される。画像投写機2は、TV放送受像機、ビデオテープ再生装置、パソコン等からの画像を出力する。
画像出力面5は、スクリーン基板6の一方表面側に形成されている。画像出力面5には、図4に示すように、複数個の映像表示単体(以下、画素とも称する)7が予め定める配列パターンに従って配列されている。詳しくは、予め定める数の映像表示単体7が特定方向(以下、「水平方向」という。)Xに沿って一列に配列されて成る画素列を、水平方向Xと直交する方向(以下、「垂直方向」という。)Yに予め定める数だけ配列している。
さらに、映像表示単体7は、予め定める数の光ファイバ8(図2参照)の端部によって構成されている。最も単純な構成では、1本の光ファイバ8の端部が1画素を構成するが、複数本の光ファイバ8の端部を束ねて配置して1画素を構成してもよい。例えば、複数本の光ファイバ8の端部を行列状に配置して1画素を構成した場合は、光を出力させる光ファイバ8の数及び位置を適宜選択することによって中間階調表示を実現することができる。尚、以下の説明では、1本の光ファイバ8の端部が1映像表示単体7を構成している場合を例にとり説明する。
光ファイバ群4の各一方端部は、映像表示単体7を構成し、縦横に配列されて画像出力面5を形成する。本実施の形態においては、光ファイバ8の直径は0.75mmであり、従って、映像表示単体7の直径は0.75mmである。また、映像表示単体7のピッチP(図5参照)は4mmとされている。勿論、これに限定されるものではない。また、光ファイバ群4の各他方端部は、同様に縦横に配列されて画像入力面3を形成する。尚、画像出力面5と画像入力面3とでは、光ファイバ8の配列順序は同じであるが、画像入力面3の方が画像出力面5よりも密に配列されている(図4参照)。
画像入力面3は画像投写機(プロジェクタ、液晶表示器、CRT等)2の投写面に対して略平行に対面するように配置され、ここに画像投写機2からの出射光である画像(以下、画像Sと称する)が照射されると、各光ファイバ8の他方端部に入射した光が映像表示単体7である一方端部に導かれ、画像出力面5では、画像入力面3に照射された画像Sと同じ画像が表示される。但し、画像出力面5では、映像表示単体7である光ファイバ8が画像入力面3よりも粗く配列されているので、画像Sが拡大して表示される。
画像出力面5を形成するため、光ファイバ8の一方端部はスクリーン基板6に設けられた貫通孔9(図3参照)に挿通され、固定・保持される。スクリーン基板6は、例えばアクリル板で構成される。なお、画像出力面5が大型の場合には、スクリーン基板6は複数のブロック体6a(図4参照)を連接して構成されている。
光ファイバ8を用いた映像装置においては、画像出力面5での光ファイバ8の配列が画像入力面3のそれよりも大きい間隔でなされることから、出力画像の画素間隔が入力画像の画素間隔よりも大きくなり、入力画像を拡大して表示することができる。このような映像装置は、人が集まる施設、公園等に設置され利用されることが多いため、スクリーン基板6の表面に、光拡散シート10(図2、図3参照)を備えたスクリーンシート30(図2、図3参照)を設けて画像の視野角を拡げている。これによって、画像出力面5において、視野角を拡げ、かつ画素の配列が粗くなった分(画素の間隔が画像入力面3における光ファイバ8の間隔よりも大きくなった分)画素毎の光を拡散することで、画像出力面5にて拡大画像をムラなく表示することができる。なお、上記スクリーンシート30は、図2及び図3に示すように、光拡散シート10と、光拡散シート10の周縁部を固定する枠体31とから構成されている。この光拡散シート10は、後述するように、たて糸とよこ糸とが織り込まれた織物で構成されてシート化されたものであり、光拡散シート10の周縁部が枠体31により固定されることにより、よこ糸及びたて糸に張力を付与した状態で保持され、光拡散シート10の平面状態が保持される。この結果、よこ糸に屈曲が生じず、モアレの発生のない鮮明な画像を得ることが可能である。
ここで、注目すべきは、本実施の形態において用いられる光拡散シート10は、光学フィルム構造ではなく織物で構成されていることである。具体的には、図1に示すように、光透過性のある円もしくは擬似円断面形状の第1の繊維をよこ糸11として使用し、第2の繊維をたて糸12として使用し、よこ糸11を互いに平行で且つ所定の密度でほぼ密接した配列で製織することでシート化されている。
このように光透過性のある円もしくは擬似円断面形状の第1の繊維をよこ糸11として使用することにより、よこ糸11が屈曲することなく緻密に配列された織物としてシート化することが可能となる。この結果、このような光拡散シートを映像装置に使用すると、モアレのない鮮明な画像が得られることになる。この点に関しては、後述する本発明者等の実験により立証されている。
また、織物で構成される本発明に係る光拡散シート10は、光学フィルム構造で構成される光拡散シートに比べて以下の効果を奏する。即ち、光学フィルム構造で構成される光拡散シートの場合、充分な光拡散効果を有していても、光の透過率が充分でないので、正面から少し角度を持った斜め方向の輝度レベルが、鮮明な画像を認識することが可能な輝度レベルよりも低下する。従って、広い視野角を要求される大型スクリーン等には不適切である。
これに対して、本発明に係る織物で構成された光拡散シート10の場合は、光学フィルム構造で構成される光拡散シートとほぼ同等の光拡散効果を有すると共に、光の透過率が光学フィルム構造で構成される光拡散シートよりも極めて高い。そのため、正面からかなり大きい角度位置を持った斜め方向における輝度レベルが鮮明な画像を認識することが可能な輝度レベル以上となっている。従って、光拡散シート10は、視野角特性が極めて良好である。しかも、光学フィルム構造で構成される光拡散シートとほぼ同等の大きな光拡散効果を有するので、斜め方向からの輝度が緩やかな傾斜で低下していく。この結果、正面から見ても、斜め方向から見ても、輝度の変化が小さいため、どの角度位置から見ても、違和感なく映像を鮮明に見ることが可能となる。この点に関しては、後述する実験結果の検討(図10)に明確に示されている。
ここで、よこ糸11に用いる光透過性の高いストランドの具体例としては、ポリメチルメタクリレート系光ファイバ、ポリエチルアクリレート系光ファイバ、ナイロンモノフィラメント、ポリエチレンテレフタレートモノフィラメント等があげられる。もちろん光透過性の高い繊維はこれらに限定されるわけでない。
よこ糸11は、光拡散効果を大きくするために、可能な限り隙間無く配列させるのが好ましい。よこ糸密度で示すと[1(cm)/よこ糸直径(cm)]×0.5(本/cm)以上であることが好ましい。ここで、よこ糸密度は、織物1cm当たりに存在するよこ糸の本数を意味する。例えば、よこ糸の直径が0.2cmとすると、図6(1)に示すように、よこ糸密度は、1/0.2=5(本/cm)となる。実際の織物は、図6(2)に示すように、よこ糸11とよこ糸11との間にたて糸12が介在しているので、よこ糸を完全に隙間なく配列することができず、現実には隙間が生じている。この隙間は可能な限り小さくするのが好ましい。そこで、たて糸12によるよこ糸密度の減少率を示す係数を0.5以上とした。即ち、よこ糸密度は、[1(cm)/よこ糸直径(cm)]×0.5(本/cm)以上とした。なお、減少率を示す係数を0.5以上に規制しているのは、それ以下の値であると、よこ糸の間隔が大きくなりすぎ、画質の低下により光拡散シートとしては適切でないからである。
また、たて糸12の繊維の素材は、柔らかく光透過性の高い合成繊維で構成されるのが好ましい。光透過性が高いと、光透過率を高く維持することができるからである。具体的にはポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維等があげられるが、もちろんたて糸12に使用する繊維はこれらに限定されるわけではない。例えば、ポリメチルメタクリレート系光ファイバ、ポリエチルアクリレート系光ファイバを使用してもよい。
また、本実施の形態に係る光ファイバ映像装置用光拡散シート10の場合は、たて糸12に用いる繊維の太さは、よこ糸11に使用する光透過性の高いストランドより小さいことが、好ましい。なぜなら、たて糸がよこ糸より太いと、よこ糸に屈曲が生じ、これに起因して投影された画像にモアレが発生するからである。たて糸12とよこ糸11の直径比は、(たて糸直径/よこ糸直径)≦0.2に設定するのが好ましい。
また、たて糸12の密度は、高い光透過率を達成するために織物を構成するのに最低限必要な本数である。具体的には、織物表面でたて糸12の占める面積が30%以下となるたて糸太さおよび密度の組み合わせとされる。たて糸12の密度が大きいと、遮光される面積が大きくなって、光拡散効果が低減するからである。
また、よこ糸11の直径は、映像装置の映像表示単体7と同等もしくは小さいことが好ましい。このように規制するのは以下の理由による。大型スクリーンのような場合は、上記したようにスクリーン基板6は複数のブロック体6aを継ぎ合わせて構成されている。このブロック体6aの継ぎ合わせを高精度で行うことが困難なことから、映像表示単位7が全て等しいピッチPとなっていない。また、光拡散シート10の側についても、織物構造であるので、現実的には等間隔で織れない。従って、スクリーン基板6に設置された光拡散シート10と、映像表示単体7とが、現実には高精度で位置合わせできないことから、ずれが生じる場合がある。これに起因して、映像表示単体7に1本もよこ糸11が通過しない状態が発生する恐れがある。かりに、そのような状態が発生すれば、光が拡散されない映像表示単体7が存在することになり、表示ムラが生じる。しかしながら、よこ糸11の直径を、映像表示単体7と同等もしくは小さく設定することにより、映像表示単体7に少なくとも1本のよこ糸が通るようになり、各映像表示単体7において光拡散効果が得られるので、全体として表示ムラのない表示が可能となる。
なお、より広い視野角で鮮明な画像を得る観点からは、全ての映像表示単体7によこ糸11が少なくとも2〜3本程度通るようなよこ糸直径を選択するのが好ましい。
なお、光拡散シート10を構成する織り組織は、具体的には平織り、綾織り、朱子織り等があげられる。図1のよこ糸が屈曲せずかつ互いに平行かつほぼ密接した配列が可能な織り構造を形成できる組織であればこれに限る物ではない。
次いで、光拡散シート10を備えたスクリーンシート30のスクリーン基板6への設置の態様について説明する。スクリーンシート30の設置に際しては、光拡散シート10を、図7(1)に示すようにプラスチック光ファイバの繊維軸(よこ糸の繊維軸)がスクリーン基板6のY方向に沿うように設置するか、又は、図7(2)に示すようにプラスチック光ファイバの繊維軸(よこ糸の繊維軸)がスクリーン基板6のX方向に沿うように設置する。前者の場合は、映像表示面の横方向(X方向)への視野角が大きくなる。後者の場合は、映像表示面の縦方向(Y方向)への視野角が大きくなる。
また、図7(3)、(4)に示すように2枚の織物を積層し、且つ、プラスチック光ファイバの繊維軸(よこ糸の繊維軸)がY方向のものと、X方向のものとを積層した構成の光拡散シートであってもよい。このような積層構成の光拡散シートを備えたスクリーンシートをスクリーン基板6に設置することにより、X方向及びY方向への視野角を拡大することができる。なお、1枚の織物は、それぞれ実施の形態1における光拡散シートと同様の構成である。
(実施の形態2)
図8は実施の形態2に係る光拡散シート10Aの斜視図である。
本実施の形態2に係る光拡散シート10Aは、光ファイバ映像装置より映像表示単体7のピッチが粗いLED映像装置の光拡散シートとして使用される。光拡散シート10Aは、たて糸12及びよこ糸11がメッシュ状に織り込まれた織組織構造を備えている。たて糸12及びよこ糸11の素材としては、一方又は両方にプラスチック光ファイバが使用される。また、たて糸12とよこ糸11の径が、同程度もしくはたて糸12が大きくても、モアレのない鮮明な画像を得ることが可能である。なぜなら、たて糸12がよこ糸11より太い場合であっても、交差部20ではほとんど屈曲が生じないからである。そこで、かかる交差部20がLED映像装置の映像表示単体(1つのLEDに相当)7を完全に覆うように構成すれば、モアレのない鮮明な画像が得られることになる。なお、LED映像装置に限らず、その他の密度の粗い映像装置に広く適用することができる。また、本実施の形態に係る光拡散シート10Aも、上記実施の形態1に係る光拡散シート10と同様に平面状態を保持するために、光拡散シート10Aの周縁部を枠体31によって固定したスクリーンシートとしてLED映像装置に設置される。
(その他の事項)
(1)上記実施の形態では、映像装置用の光拡散シートについて説明したけれども、本発明はこれに限定されるものではなく、照明装置用の光拡散シートにも適用することができる。
(2)また、上記実施の形態では、光拡散シートのたて糸及びよこ糸に張力を付与した状態を保持する保持手段として、光拡散シートの周縁部を固定する枠体31を例示したけれども、本発明はこれに限定されず以下のような保持手段を用いることもできる。
たて糸及びよこ糸に張力を付与しながらフィルムでサンドイッチする。光拡散シートだけなら表面が凹凸のためゴミが詰まったりしやすいが、このようなフィルムでサンドイッチする構成であれば、フィルム表面が凹凸のない平面のため、ゴミの詰まりの発生を解消できる。
また、上記フィルムに代えて、アクリル板を使用するようにしてもよい。
また、サンドイッチしたシートをブロック毎にタイル状に貼り付けるようにしてもよい。
上記実施の形態1に係る光拡散シートであって、以下の条件のたて糸及びよこ糸を平織りで織り込んだ光拡散シート(以下、本願発明X1と称する)と、上記実施の形態1に係る積層構造の光拡散シート(以下、本願発明X2と称する)と、市販の光拡散シート(以下、比較例Yと称する)について、視野角特性の評価を行った。
(1)本願発明X1の条件
・よこ糸の条件
よこ糸の素材:ポリメチルメタクリレート(PMMA)を主原料とするプラスチック光ファイバ(以後POFと称す)
よこ糸の直径:0.25mm(なお、映像表示単体7の径:0.75mmより小さい径)
・たて糸の条件
たて糸の素材:ポリエステルブライトモノフィラメント
たて糸の直径:22dtex(直径40μm)
たて糸密度:45本/cm
(2)本願発明X2の条件
上記本願発明X1と同様の条件で製造された織物構造の光拡散シートが2枚、それぞれPOF繊維軸が直交するように積層した積層構造の光拡散シートを使用した。
(3)比較例Yの条件
光学フィルム構造の光拡散シートを比較例Yとした。
(4)測定条件及び測定方法
光源:150Wのハロゲンランプ
測定方法:実施の形態1に係る光ファイバ映像装置のスクリーン基板の前面に光拡散シートを設置し、そこから距離1mの場所での輝度を輝度計によって測定した。また、光拡散シートを設置しない場合についても同様に輝度を測定した。
なお、本願発明X1はスクリーン基板の図7(1)の状態で設置し、本願発明X2は図7(3)のように一方のPOFの繊維軸が画面のX方向となるように設置した。
(実験結果)
視野角特性を図9,図10に示す。図9は視野角に対する輝度減衰率を示すグラフであり、図10は視野角に対する輝度率を示すグラフである。図9では、光拡散シートを設置しない場合の輝度減衰率も併せてプロットしている。
また、図10における「輝度率」とは、光拡散シートのない場合の輝度に対する光拡散シートのある場合の輝度の比(%表示)を示したものである。従って、輝度率100%で光拡散シートなしと同等の輝度を示すことになる。
(実験結果の検討)
図9の結果から明らかなように、今回開発したPOF織物を映像装置に設置した場合(本願発明X1,X2の場合)、視野角が0度から12度程度までは、光拡散シートの無い場合とほぼ同様に輝度が減衰する。しかしながら、本願発明X1,X2の場合は、視野角が12度程度以上になると、光拡散シートの無い場合よりも輝度の減衰が大きく抑制されていることが認められる。つまり、画像の正面から徐々に角度を増していても、輝度の減衰の割合がなだらかに変化することが認められる。このことは、広範囲の角度位置で画像を見ても、鮮明な画像と認識することが可能であることを意味する。即ち、本願発明X1,X2を映像装置に設置した場合、広い視野角特性を得られるという優れた効果を奏することが理解される。特に、POFがXYの垂直方向に上下2層にPOF織物を積層設置した場合は、Y方向(映像装置では上下方向)において、X方向(映像装置では左右方向)の特性を示す図9とほぼ同様の特性が確認されており、この結果、全方向への視野角拡大効果が得られるので、光拡散シートとして適していることがわかった。
また図10では、市販の光拡散シートとの比較を行った。映像装置単体の輝度と比較した数値では、POF織物(本願発明X1,X2)の方が、市販の光拡散シート(比較例Y)より高い数値を示しており輝度の低下が少ないことがわかる。また、本願発明X1,X2と比較例Yのグラフ形状がほぼ同形であることより、本願発明X1,X2の光拡散効果は、比較例Yの光拡散効果とほぼ同等と判断できる。したがって、本願発明X1,X2は、比較例Yより、高い光の透過性を保有しながら同程度の光拡散効果も併せ持つと考えられる。これはPOFが光学フィルム構造より光の透過率が高いことも要因の一つであると推測され、実際に映像装置に設置した場合、POF織物(本願発明X1,X2)は広い視野角で明るく鮮明な画像を実現できることを意味する。つまり、POF織物(本願発明X1,X2)は、市販の光拡散シート(比較例Y)よりも視野角特性が極めて良好であることを意味する。
また、X方向(映像装置左右方向)もしくはY方向(映像装置垂直方向)のどちらか一方向のみ視野角の拡大効果を必要とする時は、POF織物を1枚設置するほうが市販の光拡散シートより倍以上の明るい画像が得られており(図10)、効果的である。
本発明に係る光拡散シートは、光ファイバ映像装置等の大型映像装置の光拡散シートに好適に実施される。
実施の形態1に係る光拡散シートの斜視図。 実施の形態1に係る光拡散シートを用いた映像装置の全体構成図。 映像装置におけるスクリーンの断面図。 映像装置におけるスクリーンの正面図。 図4の一部拡大図。 よこ糸密度を説明するための図。 光拡散シートの設置状態を示す図。 実施の形態2に係る光拡散シート10Aの斜視図。 視野角に対する輝度減衰率を示すグラフ。 視野角に対する輝度率を示すグラフ。
符号の説明
1:光ファイバ映像装置 2:画像投写機
3:画像入力面 4:光ファイバ群
5:画像出力面 6:スクリーン基板
7:映像表示単体 8:光ファイバ
10,10A:光拡散シート 11:よこ糸
12:たて糸 20:交差部
30:スクリーンシート 31:枠体

Claims (7)

  1. たて糸とよこ糸とが織り込まれた織物で構成される光拡散シートであって、
    光透過性のある円もしくは擬似円断面形状の第1の繊維をよこ糸として使用し、第2の繊維をたて糸として使用し、前記よこ糸が互いに平行で、屈曲なく、且つ略密接して配列された織組織構造を備えていることを特徴とする光拡散シート。
  2. 前記よこ糸の密度は、[1(cm)/よこ糸直径(cm)]×0.5(本/cm)以上であることを特徴とする請求項1記載の光拡散シート。
  3. 前記たて糸の直径は前記よこ糸の直径より小さく、前記たて糸の密度は、前記織物表面の全面積に対するたて糸が占める面積比に換算した場合に30%以下となることを特徴とする請求項1又は2記載の光拡散シート。
  4. 前記光拡散シートは、映像装置等の表示面に設置される光拡散シートであって、前記よこ糸の直径は、映像装置等の映像表示単体と同等もしくは小さいことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光拡散シート。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の光拡散シートを、よこ糸の繊維軸方向が互いに直交するように2枚積層してなることを特徴とする光拡散シート。
  6. たて糸とよこ糸とが織り込まれた織物で構成され、たて糸とよこ糸が交差する交差部にそれぞれ映像表示単体が配置されてなる映像装置の表示面に設置される光拡散シートであって、
    光透過性のある円もしくは擬似円断面形状の第1の繊維をよこ糸として使用し、第2の繊維をたて糸として使用し、前記交差部において、前記よこ糸が互いに平行で、屈曲なく、且つ略密接して配列された織組織構造を備えていることを特徴とする光拡散シート。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の光拡散シートに、前記光拡散シートが平面を保つように、よこ糸及びたて糸に張力を付与した状態を保持する保持手段を備えたことを特徴とするスクリーンシート。
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