JP2008038616A - 回転式圧縮機 - Google Patents

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Abstract

【課題】第1部材と第2部材とが圧接状態で相対的に偏心回転する回転式圧縮機において、該第2部材の挙動の安定化を図りつつ、該第1部材と第2部材との摩擦損失をできるだけ低減して、運転効率の向上を図る。
【解決手段】固定スクロール(21)における可動スクロール(22)とのスラスト面上に、周方向に延びる給油溝(21d,21d,21d)を設ける。給油溝(21d,21d,21d)は、周方向に均等に並ぶように3つ設けられていて、各給油溝(21d)には油溜まり(45)から供給路(46,46,46)を介して潤滑油が供給されるように構成されている。該各供給路(46,46,46)上には、上記給油溝(21d)と油溜まり(45)との差圧によって動作する圧力調整弁(51,51,51)が設けられている。なお、上記油溜まり(45)には貯留部(59)から給油路(47)を介して高圧の潤滑油が供給される。
【選択図】図2

Description

本発明は、回転式圧縮機に関し、特に運転効率の向上に係るものである。
従来より、冷凍装置等において冷媒を圧縮するための圧縮機として、例えば特許文献1に開示されるような回転式圧縮機が知られている。この種の圧縮機は、密閉されたケーシング内で、第1部材及び第2部材を圧接状態で相対的に偏心回転させることで、吸入した冷媒を該第1部材及び第2部材によって形成された圧縮室内で圧縮し、高圧の状態で吐出するように構成されている。具体的には、上記特許文献1の例では、ケーシング内に固定された第1部材としての固定スクロールと、該固定スクロールに噛合するとともに駆動機構に駆動軸を介して連結された第2部材としての可動スクロールと、を備えており、該可動スクロールは、その背面側に位置するフレーム上面の凹部内に配置され、上記駆動軸の先端に設けられた偏心部に連結されている。
上述のような構成の回転式圧縮機の場合、上記圧縮室内で冷媒が圧縮されると、該圧縮室を構成する上記第1部材及び第2部材には内圧が作用する。すなわち、該第1部材及び第2部材には、圧縮室の内圧によって、互いに離反する力(離反力)が加わる。このように第1部材及び第2部材に離反力が加わって互いに離れると、圧縮室の気密性を十分に保持できなくなり、圧縮効率の低下を招くことになるため、従来より、上記第2部材の背面側にシールリングによって高圧空間を設けたり、中間圧の背圧室を設けたりすることにより、該第2部材に第1部材への押し付け力を付与するようにしている。
一方、上記第2部材を第1部材側に押し付けすぎると、両者間の摩擦抵抗が大きくなって損失も大きくなるため、該第1部材の第2部材との摺動面(以下、スラスト面とも呼ぶ)に、ポケット部を設けて、該ポケット部に高圧の油を供給することで、第1部材と第2部材との圧接力のバランスをとるようにしている。
なお、上記特許文献1には、可動部材としての上記第2部材の傾斜、つまり転覆モーメントを軽減するために、第2部材と該第2部材の背面側に位置する固定フレームとの間に、高圧の潤滑油が供給される複数個の静圧ポケット部を設けた構成が開示されている。
特開平2−16381号公報
しかしながら、上述のように第1部材と第2部材とのスラスト面に高圧の潤滑油を供給する構成では、運転条件によって該第2部材が転覆すると、スラスト面間の隙間が大きくなって潤滑油が漏れ出してしまう。そうすると、上記第1部材と第2部材とのスラスト面間の圧力が低下して、両者が強く押し付けられることになり、両者間の摩擦損失が増大してしまう。
また、上述のように上記第2部材が転覆した状態では、上記第1部材と第2部材とによって形成される圧縮室の容積効率が低下するとともに、漏れた油によって該圧縮室内のガスが加熱されて損失を生じるため、上記第2部材の転覆をできるだけ速やかに復帰して損失を最低限に抑える必要がある。
本発明は、かかる諸点に鑑みてなされたものであり、第1部材と第2部材とが圧接状態で相対的に偏心回転する回転式圧縮機において、該第2部材の転覆を抑えることで損失の発生をできるだけ低減して、運転効率の向上を図ることにある。
上記目的を達成するために、本発明に係る回転式圧縮機(1,101)では、第1部材(21,135)と第2部材(22,140)とのスラスト面間に複数のポケット部(21d,135a)を設け、それぞれのポケット部(21d,135a)に対して高圧の潤滑油を供給する各供給路(46,147)上に、該各ポケット部(21d,135a)内の圧力調整を行うための圧力調整手段(51,151)を設けて、上記第2部材(22,140)の転覆を防止するようにした。
具体的には、第1の発明では、互いに圧接された状態で相対的に偏心回転する第1部材(21,135)及び第2部材(22,140)を備えているとともに、上記第1部材(21,135)と第2部材(22,140)とのスラスト面間に、該第2部材(22,140)の背面側に形成された背圧空間(S3,S3')よりも高圧の空間(S2,S2')から潤滑油を供給するように構成された回転式圧縮機(1,101)を対象とする。
そして、上記スラスト面間には、上記高圧空間(S2,S2')から供給路(46,147)を介してそれぞれ潤滑油の供給される複数のポケット部(21d,135a)が設けられ、上記複数のポケット部(21d,135a)に対して潤滑油を供給するそれぞれの供給路(46,147)には、該ポケット部(21d,135a)内の圧力を調整するための圧力調整手段(51,151)が設けられているものとする。
この構成により、第2部材(22,140)が傾斜(転覆)して、該第2部材(22,140)と第1部材(21,135)とのスラスト面間に位置するポケット部(21d,135a)から潤滑油が漏れ出した場合、該ポケット部(21d,135a)へ潤滑油を供給する供給路(46,147)上に設けられた圧力調整手段(51,151)によって該ポケット部(21d,135a)内を所定の圧力に調整することができる。すなわち、上記圧力調整手段(51,151)によって、上記第2部材(22,140)を転覆状態から元の安定した状態に復帰させるように上記ポケット部(21d,135a)内の圧力を調整することが可能となる。これにより、例えば、上記ポケット部(21d,135a)に供給する潤滑油量を減らして該ポケット部(21d,135a)内の圧力を下げることで、上記第2部材(22,140)を背圧によって第1部材(21,135)に強く押し付けることができ、これにより、該第2部材(22,140)の転覆を抑えることができる。
また、第1部材(21,135)と第2部材(22,140)とのスラスト面間には複数のポケット部(21d,135a)が設けられているため、上記第2部材(22,140)が転覆した場合に、第1部材(21,135)と第2部材(22,140)とのスラスト面間から潤滑油が漏れるのは一部のポケット部(21d,135a)だけであり、その他のポケット部(21d,135a)では所定の圧力状態に維持される、そうすると、潤滑油の漏れていない部分では、依然として第2部材(22,140)を第1部材(21,135)から離間させる方向に力が作用しているため、潤滑油の漏れた部分、すなわち第1部材(21,135)から離間している部分に対し該第1部材(21,135)側へ押し付ける方向のモーメントが作用することになる。このことによっても、上記第1部材(21,135)と第2部材(22,140)との隙間は減少するため、該第2部材(22,140)を転覆状態から速やかに復帰させることができる。
しかも、上述のように、ポケット部(21d,135a)を複数、設けるとともに、それぞれのポケット部(21d,135a)の供給路(46,147)に上記圧力調整手段(51,151)を設けることで、上記第2部材(22,140)が転覆した場合の潤滑油の漏れによる圧力低下を一部分だけに抑えることができ、スラスト面での摩擦損失の増大を最小限に抑えることができる。
ここで、上記ポケット部(21d,135a)は、上記第1部材(21,135)側のスラスト面に形成されていてもよい(第2の発明)し、上記供給路(46,147)及び圧力調整手段(51,151)は、上記第2部材(22,140)の内部に設けられていて、上記ポケット部(21d,135a)は、上記第2部材(22,140)側のスラスト面に形成されていてもよい(第3の発明)。こうすることで、上記第1部材(21,135)と第2部材(22,140)とのスラスト面間に高圧の潤滑油を直接且つ確実に供給することができ、両者のスラスト面間での摩擦損失の低減を図れる。
また、上記ポケット部(21d,135a)は、周方向に均等に並ぶように少なくとも3つ設けられているのが好ましい(第4の発明)。このように、ポケット部(21d,135a)を周方向に均等に設けることで、上記第1部材(21,135)と第2部材(22,140)とのスラスト面間に対して、周方向にほぼ均一に潤滑油を供給することができ、該第2部材(22,140)に対して均一に圧力を付与することができる。しかも、上記ポケット部(21d,135a)を少なくとも3つ設けることで、上記第2部材(22,140)が傾いても該第2部材(22,140)をポケット部(21d,135a)内の潤滑油の油圧によって確実に支持することができる。すなわち、上記第2部材の転覆時には、一部のポケット部(21d,135a)から潤滑油が漏れても、潤滑油の漏れていないポケット部(21d,135a)で該第2部材(22,140)を支持することができ、該第2部材(22,140)を転覆状態から速やかに元の安定した状態に復帰できるとともに、該第2部材(22,140)と第1部材(21,135)とのスラスト面間での摩擦損失の増大をできるだけ抑えることができる。
また、上記ポケット部(21d,135a)は、周方向に延びる溝部であるものとする(第5の発明)。このように、高圧の潤滑油が供給されるポケット部(21d,135a)を周方向に延びる溝状に形成することで、周方向に亘って第2部材(22,140)を支持することができ、該第2部材(22,140)の支持安定性を向上することができる。
さらに、上記圧力調整手段(51,151)は、上記ポケット部(21d,135a)と高圧空間(S2,S2')との差圧が所定値以上になった場合に上記供給路(46,147)内の潤滑油の流量を低減するように構成された圧力調整弁であるのが好ましい(第6の発明)。ここで、上記所定値とは、第2部材(22,140)が転覆して第1部材(21,135)との隙間が広がり、ポケット部(21d,135a)から潤滑油が漏れた場合の該ポケット部(21d,135a)と高圧空間(S2,S2')との差圧である。
このようにポケット部(21d,135a)内の圧力が下がって高圧空間(S2,S2')との差圧が所定値以上になった場合には、上記圧力調整弁(51,151)によって該ポケット部(21d,135a)に供給する潤滑油量を減らすことで、該ポケット部(21d,135a)の圧力をさらに低下させて上記第2部材(22,140)が背圧によって第1部材(21,135)に強く押しつけられるようにする。そうすると、第1部材(21,135)と第2部材(22,140)との隙間が小さくなって該第2部材(22,140)は転覆状態から元の安定した状態にもどる。
すなわち、上述のような構成にすることで、第2部材(22,140)が転覆しても、その転覆状態から自動的に安定した元の状態に戻ることができるため、該第2部材(22,140)と第1部材(21,135)とのスラスト面間での摩擦損失の増大をできるだけ抑えることができる。
なお、上記差圧が所定値よりも小さくなった場合には、上記圧力調整弁(51,151)は、供給路(46,147)内の潤滑油の流量を元に戻してポケット部(21d,135a)内の圧力を上昇させることで、上記第1部材(21,135)と第2部材(22,140)とのスラスト面間での摩擦損失をできるだけ小さくすることができる。
上述のような構成は、以下のような構成を有する回転式圧縮機(1,101)に適用が可能である。すなわち、上記第1及び第2部材(21,135,22,140)は、鏡板(21a,22a)に渦巻き状のラップ(21b,22b)が設けられたスクロール部材であってもよい(第7の発明)し、上記第1部材(135)は、環状のシリンダ室(160,165)を有するシリンダ(152,138)によって構成され、上記第2部材(140)は、上記シリンダ(152,138)に対して偏心した状態で上記シリンダ室(160,165)に収容され、該シリンダ室(160,165)を外側の圧縮室(160)と内側の圧縮室(165)とに区画する環状のピストン(142)によって構成され、上記各圧縮室(160,165)をそれぞれ高圧側(161,166)と低圧側(162,167)とに区画するブレード(145)が上記シリンダ(152,138)とピストン(142)とに跨って設けられている回転式圧縮機であってもよい(第8の発明)。
上記第1の発明によれば、第1部材(21,135)と第2部材(22,140)とのスラスト面間に高圧の潤滑油が供給される複数のポケット部(21d,135a)を設け、該各ポケット部(21d,135a)へ潤滑油を供給する各供給路(46,147)上に、該ポケット部(21d,135a)内の圧力を調整するための圧力調整手段(51,151)を設けたため、該圧力調整手段(51,151)によってポケット部(21d,135a)内の圧力を調整することで、上記第2部材(22,140)が転覆した場合に、該第2部材を元の安定した状態に速やかに戻すことが可能となり、第1部材(21,135)と第2部材とのスラスト面間の摩擦損失の増大を抑えることができる。
また、上記ポケット部(21d,135a)を複数、設けることで、上記第2部材(22,140)が転覆して一部のポケット部(21d,135a)から潤滑油が漏れ出しても残りのポケット部(21d,135a)内の圧力を維持できるため、該第2部材(22,140)と第1部材(21,135)とのスラスト面全体の圧力が低下して摩擦損失が増大するのを防止することができる。さらに、上述のように一部のポケット部(21d,135a)の圧力が維持されると、上記第2部材(22,140)の第1部材(21,135)から離間した部分に該第1部材(21,135)側へ押し付ける方向に力が作用するため、該第2部材(22,140)の転覆を速やかに且つ確実に元の安定した状態に戻すことができる。これにより、スラスト面間での摩擦損失の増大を最小限にすることができる。
上記第2及び第3の発明によれば、上記ポケット部は、第1部材若しくは第2部材のスラスト面に設けられるため、両部材のスラスト面間に高圧の潤滑油を直接且つ確実に供給することができ、第2部材を安定して支持することができる。
また、上記第4の発明によれば、上記ポケット部は、周方向に均等に並ぶように3つ設けられるため、上記第2部材を安定して支持することができるとともに、該第2部材が転覆しても、一部のポケット部からは潤滑油が漏れ出さないようにすることができ、第1部材と第2部材とのスラスト面間の摩擦損失の増大を最小限に抑えることができる。
さらに、上記第5の発明によれば、上記ポケット部は、周方向に延びる溝部であるため、上記第2部材を周方向に亘って支持することができ、該第2部材の支持安定性を向上することができる。
また、上記第6の発明によれば、上記圧力調整手段は、ポケット部と高圧空間との差圧が所定値以上になった場合に潤滑油の油量を低減するように動作する圧力調整弁であるため、上記第2部材が転覆して上記ポケット部から潤滑油が漏れ出し、ポケット部と高圧空間との差圧が所定値以上になった場合に、該ポケット部へ供給する潤滑油量を低減することで上記第2部材を転覆状態から元の安定した状態に確実に戻すことが可能となる。一方、該第2部材が転覆していないときには、上記ポケット部への潤滑油量は絞られないため、該第2部材と第1部材との摩擦損失を効率良く低減できる。
上記第7及び第8の発明によれば、以上のような構成を、第1及び第2部材(21,135,22,140)がスクロール部材であるスクロール圧縮機や、第1部材(21,135)が環状のシリンダ室を有するシリンダであり、第2部材(22,140)が該シリンダ室を2つの圧縮室に区画するピストンであり、各圧縮室をそれぞれ高圧側と低圧側とに区画するブレードがピストンとシリンダとに跨って設けられている回転式圧縮機に適用することで、これらの回転式圧縮機において上述の第1から第6までの各発明の効果を得ることができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
(実施形態1)
本発明の実施形態1に係る回転式圧縮機(1)は、第1部材としての固定スクロール(21)と第2部材としての可動スクロール(22)とが相対回転して、両者間に形成された圧縮室(C)内で冷媒を圧縮するように構成されたスクロール圧縮機であり、例えば、空気調和装置の蒸気圧縮式冷凍サイクルを行う冷媒回路に設けられる。
図1に示すように、上記回転式圧縮機(1)は、ケーシング(10)を備えている。該ケーシング(10)内には、冷媒を圧縮する圧縮機構(20)と、該圧縮機構(20)を駆動する駆動機構(30)とが収納されている。該駆動機構(30)は、圧縮機構(20)の下方に配置され、駆動軸(32)を介して該圧縮機構(20)に連結されている。
上記ケーシング(10)は、上下方向に延びる円筒状部材の両端を塞いだもので、これにより、該ケーシング(10)が密閉ドーム型の圧力容器を構成している。
上記圧縮機構(20)は、固定スクロール(21)と、該固定スクロール(21)に噛合する可動スクロール(22)とを備えると共に、固定スクロール(21)との間に該可動スクロール(22)を配置するための空間を形成するフレーム(23)を備えている。
上記フレーム(23)は、その全周に亘ってケーシング(10)の上部内面に気密状に接合されている。これにより、上記ケーシング(10)内は、フレーム(23)上方の低圧な空間(S1,S3)と、フレーム(23)下方の高圧空間(S2)とに区画されている。すなわち、本実施形態のスクロール圧縮機(1)は、低圧空間(S1)と高圧空間(S2)とを備えた、いわゆる高低圧ドーム型のスクロール圧縮機である。
上記フレーム(23)は、フレーム凹部(24)と軸受部(25)とを備えている。上記フレーム凹部(24)は、フレーム(23)の上面に上面視で略リング状に設けられた第1凹陥部(24a)と、該第1凹陥部(24a)の内側に設けられた第2凹陥部(24b)とにより構成されている。一方、上記軸受部(25)は、上記第2凹陥部(24b)の設けられたフレーム(23)中央部の下面側が下方に向かって膨出するように形成されたものである。図2にも示すように、この軸受部(25)には、貫通孔(25a)が形成されていて、該貫通孔(25a)の内周面に設けられた軸受(25b)によって該貫通孔(25a)を挿通する上記駆動軸(32)を回転自在に支持するように構成されている。
上記固定スクロール(21)は、略円板状の鏡板(21a)と、該鏡板(21a)の下面に立設された渦巻き状の固定側ラップ(21b)とを備えている。
一方、上記可動スクロール(22)は、略円板状の鏡板(22a)と、該鏡板(22a)の上面に立設された渦巻き状の可動側ラップ(22b)とを備えている。上記鏡板(22a)の下面には、下方に延設された略円筒状のボス(22d)が形成されている。上記可動側ラップ(22b)は、固定スクロール(21)のラップ(21b)に噛合するように構成されている。上記ボス(22d)には、駆動軸(32)の上端部に形成された偏心部(32a)が滑り軸受(22c)を介して挿入されていて、これにより該駆動軸(32)と駆動連結されている。
上記可動スクロール(22)の鏡板(22a)は、フレーム(23)の第2凹陥部(24b)の上方を覆いつつ、その外周端部が第1凹陥部(24a)内に位置している一方、上記ボス(22d)は第2凹陥部(24b)内に位置している。なお、上記フレーム(23)の第1凹陥部(24a)と第2凹陥部(24b)との間には、該第2凹陥部(24b)の外周を囲むように上面視でリング状の溝(23b)が形成されていて、該溝(23b)内には、シールリング(41)が配設されている。
上記可動スクロール(22)の鏡板(22a)と第1凹陥部(24a)の底面との間には、可動スクロール(22)の自転を阻止するためのオルダム継手(26)が配設されている。
上記オルダム継手(26)は、環状のリング(図1及び図2には断面のみ示す)からなる。リングの互いに対向する位置で且つ該リングの上側には、それぞれ、スクロールキー(図示省略)が突設されている一方、該スクロールキーに対してそれぞれ周方向に90度ずれた位置で且つ該リングの下側には、一対のフレームキー(図示省略)が突設されている。すなわち、上記スクロールキーおよびフレームキーは、リング径方向に延びるそれぞれの中心線が上面視で直角をなすように設けられている。
上記可動スクロール(22)の鏡板(22a)の下面には、上記オルダム継手(26)のスクロールキーに対応して径方向に延びる第1ガイド溝(図示省略)が形成されている。一方、上記フレーム(23)の第1凹陥部(24a)の底面にも、上記オルダム継手(26)のフレームキーに対応して径方向に延びる第2ガイド溝(図示省略)が形成されている。そして、上記第1ガイド溝および第2ガイド溝は、該第1ガイド溝にスクロールキーが、該第2ガイド溝にフレームキーが、それぞれ嵌合して摺動するように構成されている。すなわち、上記両キーおよび両ガイド溝は、可動スクロール(22)が自転運動を行うのを防止することができ、これにより、該可動スクロール(22)がフレーム(23)に対して公転運動を行うように構成されている。
図1に示すように、上記ケーシング(10)は、冷媒回路の冷媒を圧縮機構(20)に導くための吸入管(14)と、ケーシング(10)内の冷媒をケーシング(10)外に吐出するための吐出管(15)とを備えている。上記吸入管(14)は、低圧空間(S1)に連通し、上記吐出管(15)は、高圧空間(S2)に連通するように設けられている。このように、上記吸入管(14)を低圧空間(S1)に連通させることで、該吸入管(14)から吸入された冷媒は、一旦、該低圧空間(S1)内に入り、その後、圧縮機構(20)へ流れることになる。
図3にも示すように、上記圧縮機構(20)において、固定スクロール(21)に吸入口(Pi)および吐出口(Po)が形成されている一方、該固定スクロール(21)の固定側ラップ(21b)と可動スクロール(22)の可動側ラップ(22b)との接触部同士の間隙には、圧縮室(C)が区画形成されている。ここで、特に図示しないが、上記吸入口(Pi)は、圧縮室(C)の外周端から低圧空間(S1)に連通している一方、上記吐出口(Po)は、圧縮室(C)の内周端から吐出凹部(28a)及び連通路(図示省略)を介して高圧空間(S2)に連通している。なお、上記図3において、符号29が上記連通路の一部を構成する連通孔であり、それ以外の円孔は、ボルト穴である。
すなわち、上記圧縮機構(20)は、可動スクロール(22)の公転運動により、低圧空間(S1)の冷媒が吸入口(Pi)を通じて圧縮室(C)内に吸入され、該圧縮室(C)内で圧縮された後、吐出口(Po)から吐出され、吐出凹部(28a)及び連通路(図示省略)を通じて高圧空間(S2)へ流れるように構成されている。このように、上記圧縮室(C)では、吸入された冷媒が圧縮されるため、該圧縮室(C)を構成する上記固定スクロール(21)及び可動スクロール(22)には該圧縮室(C)の内圧が作用して、互いに離反するような力(離反力)が加わることになる。
上記駆動機構(30)は、高圧空間(S2)内に配設されたモータ(31)により構成されている。該モータ(31)は、ステータ(33)とロータ(34)とを備えていて、略円筒状のロータ(34)内には駆動軸(32)が挿入された状態で固定されている。
上記ケーシング(10)内の底部には、潤滑油の貯留される貯留部(59)が形成されている。上記駆動軸(32)は、その下端部が該貯留部(59)に浸漬された状態で配設されている。そして、上記ケーシング(10)内においてフレーム(23)よりも下方に位置し、高圧になっている貯留部(59)では、その圧力によって、上記駆動軸(32)を軸方向に貫通する給油孔としての貫通孔(32b)内を潤滑油が上昇して、該駆動軸(32)内部の分岐から該駆動軸(32)の各軸受(22c,25a)に給油される。
上記フレーム(23)の第2凹陥部(24b)内は、高圧空間(S2)に連通しており、高圧状態になっている。そのため、該第2凹陥部(24b)を覆う上記可動スクロール(22)は、その背面から固定スクロール(21)側へ押し付けられている。ここで、上記可動スクロール(22)背面の高圧部分は、該可動スクロール(22)の背面に配設されるシールリング(41)によって区画されているため、該シールリング(41)の大きさ(径方向寸法)によって上記押し付け力の大きさが決まる。
また、上記貯留部(59)内の潤滑油は、上記両スクロール(21,22)の外周側部分に位置する摺動面(以下、スラスト面とも呼ぶ)間にも供給される。すなわち、上記固定スクロール(21)の外周側に位置する摺動面上には、図3に示すように、平面視で略円弧状の給油溝(21d,21d,21d)が周方向に均等に並ぶように設けられていて、この給油溝(21d,21d,21d)内に上記貯留部(59)内の潤滑油が供給されるように構成されている。なお、この給油溝(21d)は、本発明におけるポケット部に相当し、該給油溝(21d)内に上記貯留部(59)から高圧の潤滑油を供給することで、その油圧によって上記可動スクロール(22)を固定スクロール(21)に対して支持できるようになっている。
具体的には、上記図3に示すように、上記給油溝(21d,21d,21d)は、上記固定スクロール(21)のスラスト面上に、周方向に延びるように且つ周方向に均等に配置されるように設けられている。また、上記各給油溝(21d)は、上記固定スクロール(21)の内部に各給油溝(21d,21d,21d)に対応して設けられ且つ連通路(52,52)によって隣り合うものと互いに連通するように配置された油溜まり(45,45,45)に対し、供給路(46)を介して連通していて、該油溜まり(45)内の潤滑油が供給されるように構成されている(図1及び図2参照)。この油溜まり(45)は、貯留部(59)と給油路(47)を介して連通しており、該貯留部(59)内の潤滑油が高圧空間(S2)の圧力により該給油路(47)を通って油溜まり(45)まで供給された後、上記各給油溝(21d)内へ供給するように構成されている。なお、上記給油路(47)は、上記固定スクロール(21)の内部に形成された給油孔(48)と、上記フレーム(23)の内部に形成された給油孔(49)と、該給油孔(49)の開口端部に嵌合された給油管(50)と、からなり、該給油管(50)の下端部が上記貯留部(59)内に位置付けられている。
ここで、上述したとおり、圧縮室(C)の内圧によって上記可動スクロール(22)には、固定スクロール(21)から離れようとする離反力が加わる一方、該可動スクロール(22)は、その背面に位置する上記フレーム(23)の第2凹陥部(24b)内が高圧状態であるため、上記固定スクロール(21)側へ押し付けられる。この押し付け力が大きすぎると、可動スクロール(22)と固定スクロール(21)との摺動面での摩擦損失が大きくなるため、上述のように該固定スクロール(21)の摺動面上に上記給油溝(21d,21d,21d)を設け、高圧の潤滑油を供給して上記押し付け力を緩和することで、離反力と押し付け力とのバランスを図るようにしている。
このように、上記可動スクロール(22)に対して作用する離反力と押し付け力とは、ケーシング(10)内の高圧空間(S2)が十分に高圧の状態になっていれば、互いにつり合って、圧縮室(C)の気密性を確保しながら、固定スクロール(21)と可動スクロール(22)との摺動面での摩擦損失を適切なものにすることができる。しかしながら、上記高圧空間(S2)内が十分に高圧の状態になっていない場合には、上記可動スクロール(22)の押し付け力が不足して、該可動スクロール(22)が傾いて固定スクロール(21)から部分的に離反する(いわゆる転覆)など該可動スクロール(22)は不安定な挙動を示す場合がある。
例えば、上述のように可動スクロール(22)が不安定な挙動を示すのは、高圧空間(S2)と低圧空間(S1)との差圧が小さいために押し付け力が不足する場合や、高圧空間(S2)と低圧空間(S1)との差圧がやや小さく、且つ該可動スクロール(22)の回転数が低いために、吐出口(Po)や隣接する圧縮室から圧縮室(C)内に向かってより高圧の冷媒ガスが多く漏れ込んで、該圧縮室(C)の内圧が上昇し、これにより離反力が増大して、相対的に可動スクロール(22)に対する押し付け力が不足する場合である。このときには、可動スクロール(22)が固定スクロール(21)に対して傾く(転覆)ので、該固定スクロール(21)の摺動面上の給油溝(21d)に供給された高圧の潤滑油が背圧空間(S3)内に漏れることになる。なお、上記高圧空間(S2)内の圧力が十分に高い場合や、該高圧空間(S2)内の圧力がやや低くても、上記可動スクロール(22)の回転数が十分に高く、圧縮室内への高圧ガスの漏れ込み量が少ないときには、該可動スクロール(22)の挙動は安定しており、上記固定スクロール(21)の給油溝(21d)から潤滑油が多量に漏れることはない。
そして、上述のように上記可動スクロール(21)が転覆して潤滑油が給油溝(21d)から漏れ出すと、その漏れた部分では上記可動スクロール(22)を支えるための圧力が低下し、摺動面間での摩擦損失が増大することになる。しかも、上記可動スクロール(22)の転覆によって容積効率が低下するとともに、漏れ油により該圧縮室(C)内のガスが加熱されて損失を生じる。
これに対し、本願発明では、上記各油溜まり(45)から上記各給油溝(21d)に潤滑油を供給するための各供給路(46)上に、該各給油溝(21d)内の圧力を調整するための圧力調整弁(51)を設けた。この圧力調整弁(51)は、略円錐台状の弁室(51a)内に球状の弁体(51b)を弾性部材としてのばね(51c)によって弾性支持したものであり、該弁室(51a)内をその軸線方向に流れる潤滑油量を該弁体(51b)の位置によって調整可能に構成されている。すなわち、上記圧力調整弁(51)の弁体(51b)は、略円錐台状の弁室(51a)内を軸線方向に移動することで、流路としての該弁室(51a)内の流路断面積を変化させることができる。
図2に示すように、略円錐台状の弁室(51a)は、油溜まり(45)側から給油溝(21d)側へ向かうにつれて流路面積が小さくなるように形成されていて、上記弁体(51b)は弁室(51a)内面の給油溝(21d)側に上記ばね(51c)を介して弾性連結されているため、該弁体(51b)が弁室(51a)内を下方に移動すると、流路面積は小さくなり、該弁体(51b)が弁室(51a)内を上方に移動すると、流路面積が大きくなる。
上述のとおり、上記弁体(51b)は、弁室(51a)の内面に対して上記ばね(51c)によって弾性支持されているため、上記油溜まり(45)内の圧力と上記給油溝(21d)内の圧力との差によって力のつり合う位置まで移動することになる。すなわち、図2の例では、上記油溜まり(45)内の圧力が高くなると、上記弁体(51b)は弁室(51a)内を給油溝(21d)側に移動して、該給油溝(21d)への潤滑油の供給量を少なくする。
そうすると、上記給油溝(21d)内の圧力は大きく低下するため、摺動面間の隙間が大きくなって潤滑油が漏れ出した部分では、上記可動スクロール(22)に作用する背圧によって該可動スクロール(22)が固定スクロール(21)側に強く押し付けられ、転覆状態から速やかに元の安定した状態に戻る。
また、上述のように、上記給油溝(21d,21d,21d)は、周方向に並ぶように3箇所設けられているので、上記可動スクロール(22)の転覆によって該給油溝(21d,21d,21d)の1つ(若しくは2つ)から潤滑油が漏れ出した場合でも、潤滑油の漏れ出していない残りの給油溝(21d)内の油圧によって上記可動スクロール(22)を支持することができる。したがって、給油溝が一つだけで潤滑油が漏れると両スクロール(21,22)間の圧力が著しく低下する場合に比べ、摺動面間の摩擦抵抗を下げることができ、該摺動面間の摩擦損失の増大を確実に抑えることができる。
しかも、上述のとおり、上記可動スクロール(22)は、潤滑油の漏れ出していない給油溝(21d)内の油圧によって支持されていて、その部分では上記固定スクロール(21)から離間する方向に力が作用することになるため、該可動スクロール(22)に対し、潤滑油の漏れ出している部分を上記固定スクロール(21)側に押し付けるようなモーメントを作用させることになり、該可動スクロール(22)の転覆状態をより迅速且つ確実に元の状態に戻すことができる。これにより、上記固定スクロール(21)と可動スクロール(22)との摺動面間の摩擦損失をできるだけ小さくすることができる。
−運転動作−
次に、上述のような構成を有する回転式圧縮機(1)の運転動作について説明する。
まず、モータ(31)を駆動させると、駆動軸(32)が回転し、可動スクロール(22)が固定スクロール(21)に対して公転運動を行う。その際、オルダム継手(26)において、スクロールキーが可動スクロール(22)の第1ガイド溝内で摺動する一方、フレームキーがフレーム(23)の第2ガイド溝内で摺動するので、可動スクロール(22)の自転が防止される。したがって、可動スクロール(22)は、駆動軸(32)の偏心部(32a)の所定偏心量を公転半径とする公転運動を行う。
上記可動スクロール(22)の公転運動に伴って、圧縮室(C)の容積が周期的に増減を繰り返す。上記圧縮室(C)の容積が増大すると、冷媒回路の冷媒が吸入管(14)から低圧空間(S1)に吸入される。この低圧空間(S1)内に吸入された冷媒は、固定スクロール(21)の吸入口(Pi)から圧縮室(C)に吸い込まれる。次に、圧縮室(C)に吸い込まれた冷媒は、圧縮室(C)の容積が減少することにより、圧縮され、吐出口(Po)から吐出される。その後、圧縮された冷媒は、連通路を介して高圧空間(S2)へ流入して、吐出管(15)から冷媒回路に戻る。なお、本実施形態に係る回転式圧縮機(1)は、上述のとおり、スクロール圧縮機であり、圧縮機構(20)における冷媒の圧縮動作は従来公知のものと同様であるため、詳しい説明については省略する。
上記フレーム(23)の第2凹陥部(24b)内は、高圧空間(S2)に連通しているため高圧状態であり、該第2凹陥部(24b)に面する上記可動スクロール(2)は、その背面側から固定スクロール(21)側に押し付けられる。この押し付け力は、上記圧縮室(C)の内圧による離反力とは逆向きの力である。
一方、ケーシング(10)下部に位置する貯留部(59)内の潤滑油は、該貯留部(59)が高圧空間(S2)内にあることから、その圧力によって駆動軸(32)の貫通孔(32b)内を上方へ押し上げられて、該駆動軸(32)内部の分岐から該駆動軸(32)の各滑り軸受(22c,25a)に供給される。なお、オルダム継手(26)の各キーに対応して設けられたガイド溝などには、固定スクロール(21)の各給油溝(21d)から背圧空間(S3)に排出される潤滑油が供給される。
上記貯留部(59)内の潤滑油は、上記第2凹陥部(24b)以外に、上記両スクロール(21,22)の摺動面間に設けられた給油溝(21d)にも供給される。該給油溝(21d)内に供給された潤滑油は高圧状態であることから、上記可動スクロール(22)の押し付け力を緩和して、スクロール(21,22)間の摩擦損失の増大を防止することができる。
すなわち、上記貯留部(59)内の潤滑油は、高圧空間(S2)内の圧力によって、該貯留部(59)に下端部の位置付けられた給油管(50)内を上昇し、上記フレーム(23)の給油孔(49)及び上記固定スクロール(21)の給油孔(48)内を通って該固定スクロール(21)内の油溜まり(45)に供給される。そして、該油溜まり(45)内の潤滑油は、圧力調整弁(51)及び供給路(46)を介して上記固定スクロール(21)の摺動面に形成された給油溝(21d,21d,21d)に供給され、該各給油溝(21d)内を所定の圧力にする。この給油溝(21d,21d,21d)内の潤滑油の圧力によって上記可動スクロール(22)の押し付け力を緩和することができる。
そして、上記可動スクロール(22)が転覆すると、該可動スクロール(22)は固定スクロール(21)に対して傾いて両者間の隙間が部分的に大きくなるため、上記給油溝(21d)から潤滑油が漏れ出す。そうすると、該給油溝(21d)内の圧力が低下するため、高圧状態の上記油溜まり(45)との差圧が大きくなって、上記圧力調整弁(51)の弁体(51b)はばね(51c)の弾性力に抗して下方へ移動し、弁室(51a)内の流路断面積を小さくする。これにより、上記圧力調整弁(51)内を流れる潤滑油量は減少し、上記給油溝(21d)内の圧力はさらに大きく低下する。
上記給油溝(21d)内の圧力が低下すると、上記可動スクロール(22)には押し付け力としての背圧が作用しているため、上記固定スクロール(21)側に強く押し付けられることになり、該可動スクロール(22)と固定スクロール(21)との間隔が狭くなって、該可動スクロール(22)を転覆状態から転覆前の元の状態に戻すことができる。
また、上記給油溝(21d)は、周方向に並ぶように3つ設けられていることから、そのうちの一つ若しくは2つから潤滑油が漏れ出たとしても、潤滑油の漏れ出していない給油溝(21d)によって上記可動スクロール(22)を固定スクロール(21)から離反させるような力が作用し、これにより、該可動スクロール(22)の潤滑油が漏れ出した部分に上記固定スクロール(21)側へ押し付けるようなモーメントが作用することになる。したがって、このことによっても、上記可動スクロール(22)を固定スクロール(21)に押し付けることができ、該可動スクロール(22)を転覆状態から元の状態に確実に戻すことができる。
これにより、上記可動スクロール(22)を転覆状態からできるだけ速やかに転覆前の元の状態に戻すことができるため、該可動スクロール(22)と上記固定スクロール(21)との摺動面間の摩擦損失をできるだけ小さくすることができる。
上述のようにして、上記可動スクロール(22)を転覆状態から元の安定した状態に戻した後は、上記給油溝(21d)からの潤滑油の漏れが少なくなって該給油溝(21d)内の圧力は上昇し、上記油溜まり(45)との差圧は小さくなる。そうすると、上記圧力調整弁(51)の弁体(51b)はばね(51c)の弾性復元力によって上方へ移動して、弁室(51a)の流路断面積を増大させ、該圧力調整弁(51)内の潤滑油の流量を転覆前の流量まで増大させる。これにより、上記両スクロール(21,22)間の摩擦損失を転覆前のレベルまで戻す。
−実施形態1の効果−
以上説明したように、本実施形態によれば、固定スクロール(21)の可動スクロール(22)との摺動面に、周方向に並ぶように3つの給油溝(21d,21d,21d)を設け、該各給油溝(21d)に対して油溜まり(45)から潤滑油をそれぞれ供給するための各供給路(46)上に、該給油溝(21d)内の圧力調整手段としての圧力調整弁(51)をそれぞれ設けたため、上記可動スクロール(22)が転覆して上記給油溝(21d)から潤滑油が漏れ出した場合には、上記圧力調整弁(51)によって該給油溝(21d)内の圧力を下げて、上記可動スクロール(22)をその背圧によって固定スクロール(21)側に押し付けることができる。これにより、上記可動スクロール(22)を転覆状態からできるだけ速やかに且つ自動的に元の安定した状態に戻すことができるため、簡単な構成で該可動スクロール(22)と固定スクロール(21)との摺動面間の摩擦損失をできるだけ小さくすることができる。
また、上記給油溝(21d,21d,21d)を周方向に並ぶように3つ設けることで、そのうちの一つ若しくは2つから潤滑油が漏れ出した場合でも、残りの給油溝(21d)内の圧力は保持されるため、給油溝を1つしか設けておらず、潤滑油が漏れると該溝全体の圧力が大幅に低下するものに比べて、上記可動スクロール(22)と固定スクロール(21)との摺動面間の摩擦損失をできるだけ小さくすることができる。
しかも、上記給油溝(21d,21d,21d)を複数設けることで、潤滑油の漏れていない給油溝(21d)によって上記可動スクロール(22)には固定スクロール(21)から離反する方向の力が作用し、これにより、該可動スクロール(22)の固定スクロール(21)との間隔が広がっている部分、すなわち潤滑油の漏れ出している部分に、上記固定スクロール(21)側へ押し付けるようなモーメントが作用することになり、上記可動スクロール(22)を転覆状態からより迅速且つ確実に元の安定した状態に復帰させることができる。
さらに、上記給油溝(21d,21d,21d)は周方向に均等に並ぶように3つ設けられているので、上記可動スクロール(22)を安定して支持できるとともに、該可動スクロール(22)が転覆しても、固定スクロール(21)との間隔が広がった部分に位置する給油溝(21d)から潤滑油が漏れ出すだけで、他の給油溝(21d)から潤滑油が漏れ出すのを防止できる。これにより、両スクロール(21,22)のスラスト面間全体で油圧が低下して摩擦損失が著しく増大するのを防止することができる。
−実施形態1の変形例−
上記実施形態1では、例えば図2に示すように、給油溝(21d,21d,21d)、該給油溝(21d,21d,21d)に潤滑油をそれぞれ供給するための供給路(46,46,46)、及び、該供給路(46,46,46)上にそれぞれ位置し、該給油溝(21d,21d,21d)内の圧力を調整するための圧力調整弁(51,51,51)を、固定スクロール(21)内に設けるようにしているが、これに限らず、図4に示すように、可動スクロール(22')内に設けるようにしてもよい。
具体的には、上記図4に示すように、可動スクロール(22')の固定スクロール(21')との摺動面に、周方向に均等に並ぶように3つの給油溝(71,71,71)が設けられている。また、上記可動スクロール(22')の鏡板(22a')の内部には、該給油溝(71,71,71)にそれぞれ連通し、且つ該可動スクロール(22')のボス(22d')内部における駆動軸(32)の偏心部(32a)との隙間(S4)に連通する供給路(72,72,72)が設けられている。この各供給路(72)は、ケーシング(10)の下部に位置する貯留部(59)から上記駆動軸(32)の貫通孔(32b)を通って、上記駆動軸(32)の偏心部(32a)の先端と上記可動スクロール(22)のボス(22d)との間に形成された貯留空間(S4)に流入した潤滑油を、上記各給油溝(71)に供給する役割を果たしている。
図5にも示すように、上記各供給路(72)には、それぞれ、上記各給油溝(71)内の圧力を調整するための圧力調整弁(73)が設けられている。この圧力調整弁(73)は、上述の実施形態1と同様、上記可動スクロール(22)のスラスト面に形成された給油溝(71,71,71)内と、上記貯留空間(S4)内、すなわち高圧空間(S2)内との圧力差に応じて弁体が移動して潤滑油の流量を調整するように構成されている。具体的には、上記圧力調整弁(73)は、上記給油溝(71,71,71)内と上記高圧空間(S2)内との差圧が所定値の場合には、潤滑油の流量をあまり絞ることなく、該給油溝(71,71,71)内の圧力を所定圧で維持する一方、上記可動スクロール(22)が転覆して上記給油溝(71)から潤滑油が漏れ出した場合には、該給油溝(71)内の圧力が低下して上記高圧空間(S2)との差圧が上記所定値よりも大きくなるため、潤滑油の流量を低減する方向に動作する。すなわち、上記圧力調整弁(73)は、上記実施形態1に示す圧力調整弁(51)と同じ構成を有していて、該実施形態1とは、図4に示すように、球状の弁体の移動方向が水平方向になるように設けられている点が異なるだけなので、構造の詳細については説明を省略する。
上述の構成のように、上記可動スクロール(22')に給油溝(71,71,71)、供給路(72,72,72)及び圧力調整弁(73,73,73)を設けることで、上記駆動軸(32)の貫通孔(32b)内を通る潤滑油を利用できるため、固定スクロール(21)側に別に供給路や油溜まりを設ける必要がなくなり、製作コストの低減や装置の小型化を図れる。
(実施形態2)
本実施形態に係る回転式圧縮機(101)も、上述の実施形態1と同様、例えば冷凍機の冷媒回路に設けられて冷媒を圧縮するために利用されるが、上記実施形態1の回転式圧縮機(1)とは構成が大きく異なるため、以下で構成及び動作について詳しく説明する。
図6に示すように、本実施形態に係る回転式圧縮機(101)は、いわゆる全密閉型に構成されている。この回転式圧縮機(101)は、縦長の密閉容器状に形成されたケーシング(110)を備えている。このケーシング(110)は、縦長の円筒状に形成された円筒部(112)と、椀状に形成されて、該円筒部(112)の両端に外側に凸に配設される一対の端板部(113)とによって構成されている。そして、上記円筒部(112)の上端側を塞ぐ一方の端板部(113)には、該端板部(113)を厚み方向に貫通する吐出管(114)が設けられ、上記円筒部(112)には、該円筒部(112)を厚み方向に貫通する吸入管(115)が設けられている。
ここで、この実施形態において、図6に示すように、上記吐出管(114)は、ケーシング(110)内部に連通している一方、上記吸入管(115)は、該ケーシング(110)内の圧縮機構(130)に繋がっている。すなわち、上記回転式圧縮機(101)は、圧縮機構(130)で圧縮された冷媒がケーシング(110)の内部空間へ吐出されて、その後、上記吐出管(114)を通ってケーシング(110)外へ送出されるように構成されており、該ケーシング(110)内が高圧の状態になる、いわゆる高圧ドーム型の圧縮機である。すなわち、この実施形態では、上記ケーシング(110)内の空間が高圧空間(S2')となる。
上記ケーシング(110)の内部には、上から下へ向かって順に、電動機(120)及び圧縮機構(130)が配設されている。また、上記ケーシング(110)の内部には、該ケーシング(110)の円筒部(112)内を筒軸方向に延びるように駆動軸(125)が配設されていて、この駆動軸(125)を介して、上記圧縮機構(130)及び電動機(120)が連結されている。なお、密閉容器状の上記ケーシング(110)内の底部は、上記圧縮機構(130)の各摺動部等に供給される潤滑油が溜められている貯留部(159)になっている。
上記駆動軸(125)は、主軸部(126)と偏心部(127)とを有している。この偏心部(127)は、駆動軸(125)の下端寄りの位置で、上記主軸部(126)よりも大径の円柱状に形成されている。また、この偏心部(127)は、軸心が主軸部(126)の軸心に対して偏心するように設けられている。さらに、上記偏心部(127)は、後述する圧縮機構(130)のピストン(140)を貫通した状態で、該ピストン(140)に対して一体回転可能に固定されている。
また、上記駆動軸(125)の内部には、該駆動軸(125)の下端から上方へ延びる給油通路としての貫通孔(125a)が形成されている。これにより、上記ケーシング(110)内の底部に位置する貯留部(159)の潤滑油は、駆動軸(125)下端の遠心ポンプ作用により、該駆動軸(125)の貫通孔(125a)内を上方へ押し上げられ、圧縮機構(130)の各摺動部等へ供給される。
上記電動機(120)は、ステータ(121)及びロータ(122)を備えている。このステータ(121)は、ケーシング(110)の円筒部(112)の内面に固定されている。上記ロータ(122)には、上記駆動軸(125)の主軸部(126)が貫通していて、この状態で円筒形状のステータ(121)の内側に配置されている。
上記圧縮機構(130)は、第1ハウジング(135)と、第2ハウジング(150)と、ピストン(140)とを備えている。この第1ハウジング(135)及び第2ハウジング(150)は、上下方向に重なるように配置されているとともに、該第1ハウジング(135)及び第2ハウジング(150)によって囲まれた空間内には上記ピストン(140)が収容されている。
上記ピストン(140)は、駆動軸(125)の偏心部(127)に摺動自在に嵌合する軸受部(143)と、該軸受部(143)の外周側で該軸受部(143)に対して同心状に位置する環状ピストン本体部(142)と、該軸受部(143)及び環状ピストン本体部(142)に対し図の下端側(圧縮機構(130)における軸方向の一端側)で連接するピストン側鏡板(141)とを備えていて、上記環状ピストン本体部(142)は、円環の一部分が分断された略C字型形状に形成されている。
上記第1ハウジング(135)は、平板部(136)と周縁部(138)と軸受部(137)とを備えており、該周縁部(138)でケーシング(110)の内面に固定されている一方、該軸受部(137)で上記駆動軸(125)を回転可能に支持している。
具体的には、上記平板部(136)は、厚肉の円板状に形成されていて、該平板部(136)の外周側に位置する上記周縁部(138)が、溶接等によって上記ケーシング(110)の円筒部(112)の内面に固定されている。また、上記平板部(136)の中央部分には、上方に向かって膨出する軸受部(137)が形成されていて、該軸受部(137)には、該軸受部(137)を上下方向に貫通した状態で上記駆動軸(125)の主軸部(126)を回転可能に支持する滑り軸受(137a)が設けられている。
上記周縁部(138)は、平板部(136)の下面よりも下方に向かって膨出した略円筒状に形成されていて、該周縁部(138)には径方向に貫通する吸入ポート(図示省略)が形成されている。この吸入ポートは、一端側が上記第1及び第2ハウジング(135,150)によって形成される空間に開口している一方、他端側には上記吸入管(115)が接続されていて、これにより、上記空間内に冷媒を吸入するための吸入通路の一部を構成している。
また、上記平板部(136)の下面には、上記周縁部(138)と同心円状に配置された略円筒状の内側シリンダ部(152)が突設されていて、これにより、該内側シリンダ部(152)と上記周縁部(138)との間に、シリンダ室(160,165)を形成している。そして、上記ピストン(140)の環状ピストン本体部(142)は、図7に示すように、シリンダ室(160,165)内に位置付けられている。
上記第2ハウジング(150)は、厚肉の円板状の部材で、その外周側で上記ケーシング(110)の内周面に固定されているとともに、該外周側部分では、上記第1ハウジング(135)に対しても密着状態で固定されている。また、上記第2ハウジング(150)の中央部分には、上記駆動軸(125)の主軸部(126)が貫通しており、その貫通孔の内周面には該主軸部(126)を回転可能に支持する滑り軸受(150a)が設けられている。さらに、上記第2ハウジング(150)の第1ハウジング(135)側の面(図6において上面)には、油溜まり部(150b)が形成されていて、後述するように背圧空間(S3')内に漏れ出た潤滑油が溜まるようになっている。なお、該油溜まり部(150b)には、図示しない排出油路が設けられていて、溜まった潤滑油を例えば低圧空間などに排出するように構成されている。
さらに、上記圧縮機構(130)は、上記シリンダ室(160,165)を高圧室(161,166)と低圧室(162,167)とに区画するブレード(145)と、該ブレード(145)に対して環状ピストン本体部(142)を該環状ピストン本体部(142)の分断箇所において揺動可能に連結する連結部材としての揺動ブッシュ(156)と、を備えている。上記ブレード(145)は、シリンダ室(160,165)の径方向線上で、該シリンダ室(160,165)の内周側の壁面(内側シリンダ部(152)の外周面)から外周側の壁面(外側シリンダ部としての周縁部(138)の内周面)まで、環状ピストン本体部(142)の分断箇所を挿通して延在するように構成され、周縁部(138)(以下、外側シリンダ部ともいう)及び内側シリンダ部(152)に固定されている。なお、上記ブレード(145)は、外側シリンダ部(138)及び内側シリンダ部(152)と一体的に形成してもよいし、別部材を両シリンダ部(138,152)に取り付けてもよい。図7に示す例は、別部材を両シリンダ部(138,152)に固定した例である。
上記外側シリンダ部(138)の内周面と内側シリンダ部(152)の外周面とは、互いに同一中心上に配置された円筒面であり、その間に上記シリンダ室(160,165)が形成されている。上記ピストン(140)は、外周面が外側シリンダ部(138)の内周面よりも小径で、内周面が内側シリンダ部(152)の外周面よりも大径に形成されている。このことにより、ピストン(140)の外周面と外側シリンダ部(138)の内周面との間に外側シリンダ室(160)が形成され、ピストン(140)の内周面と内側シリンダ部(152)の外周面との間に内側シリンダ室(165)が形成されている。
具体的には、上記平板部(136)とピストン側鏡板(141)と外側シリンダ部(138)と環状ピストン本体部(142)との間に外側シリンダ室(160)が形成され、上記平板部(136)とピストン側鏡板(141)と内側シリンダ部(152)と環状ピストン本体部(142)との間に内側シリンダ室(165)が形成されている。また、上記平板部(136)とピストン側鏡板(141)とピストン(140)の軸受部(143)と内側シリンダ部(152)との間には、内側シリンダ部(152)の内周側で軸受部(143)の偏心回転動作を許容するための動作空間(168)が形成されている。この動作空間(168)は、本実施形態においては、高圧空間となるように構成されている。
また、ピストン(140)と第1ハウジング(135)とは、環状ピストン本体部(142)の外周面と外側シリンダ部(138)の内周面とが1点で実質的に接する状態(厳密にはミクロンオーダーの隙間があるが、その隙間での冷媒の漏れが問題にならない状態)において、その接点と位相が180°異なる位置で、環状ピストン本体部(142)の内周面と内側シリンダ部(152)の外周面とが1点で実質的に接するようになっている。
上記揺動ブッシュ(156)は、ブレード(145)に対して高圧室(161,166)側に位置する吐出側ブッシュ(156A)と、ブレード(145)に対して低圧室(162,167)側に位置する吸入側ブッシュ(156B)とから構成されている。該吐出側ブッシュ(156A)及び吸入側ブッシュ(156B)は、いずれも断面形状が略半円形の同一形状に形成され、フラット面同士が対向するように配置されている。そして、両ブッシュ(156A,156B)の対向面の間のスペースがブレード溝(158)を構成している。
このブレード溝(158)に上記ブレード(145)が挿入され、揺動ブッシュ(156A,156B)のフラット面が該ブレード(145)と実質的に面接触し、揺動ブッシュ(156A,156B)の円弧状の外周面が環状ピストン本体部(142)と実質的に面接触している。揺動ブッシュ(156A,156B)は、ブレード溝(158)にブレード(145)を挟んだ状態で、該ブレード(145)の面方向に進退するように構成されている。また、上記揺動ブッシュ(156A,156B)は、環状ピストン本体部(142)がブレード(145)に対して揺動するように構成されている。したがって、上記揺動ブッシュ(156)は、該揺動ブッシュ(156)の中心点を揺動中心として上記環状ピストン本体部(142)がブレード(145)に対して揺動可能となり、かつ上記環状ピストン本体部(142)がブレード(145)に対して該ブレード(145)の面方向へ進退可能となるように構成されている。
なお、この実施形態では両ブッシュ(156A,156B)を別体とした例について説明したが、両ブッシュ(156A,156B)は、一部で連結することにより一体構造としてもよい。
以上の構成において、駆動軸(125)が回転すると、環状ピストン本体部(142)は、揺動ブッシュ(156)がブレード(145)に沿って進退しながら、揺動ブッシュ(156)の中心点を揺動中心として揺動する。この揺動動作により、環状ピストン本体部(142)と第1ハウジング(135)との接触点が図8(A)から図8(H)へ順に移動する。なお、図8はいわゆる可動ブッシュ方式の圧縮機構(130)の動作状態を表す図であり、図8(A)から図8(H)まで45°間隔で環状ピストン本体部(142)が図の時計回り方向に移動している様子を表している。このとき、上記環状ピストン本体部(142)は駆動軸(125)の周りを公転するが、自転はしない。
図7に示すように、上記第1ハウジング(135)には、吸入管(115)に連通する吸入ポート(139)が設けられていて、該吸入ポート(139)の一端側が外側シリンダ室(160)の低圧室(162)に開口している。また、上記環状ピストン本体部(142)には、上記外側シリンダ室(160)の低圧室(162)と内側シリンダ室(165)の低圧室(167)とを連通する貫通孔(144)が形成されている。
また、上記第1ハウジング(135)には外側吐出ポート(154)及び内側吐出ポート(155)が形成されている。これらの吐出ポート(154,155)は、それぞれ、上記第1ハウジング(135)の平板部(136)をその軸方向に貫通している。上記外側吐出ポート(154)の下端は外側シリンダ室(160)の高圧室(161)に臨むように開口し、上記内側吐出ポート(155)の下端は内側シリンダ室(165)の高圧室(166)に臨むように開口している。一方、これらの吐出ポート(154,155)には、該吐出ポート(154,155)を開閉するための吐出弁(図示省略)が設けられている。
上記ピストン(140)における環状ピストン本体部(142)及び軸受部(143)の先端面(図6における上端面)は、共に上記第1ハウジング(135)の平板部(136)に摺接している一方、上記第1ハウジング(135)の内側シリンダ部(152)の先端面(図6における下端面)も上記ピストン(140)の鏡板部(141)と摺接している。これにより、上記第1ハウジング(135)の内側シリンダ部(152)と上記ピストン(140)とによって形成される上記シリンダ室(160,165)は気密状態になっている。なお、詳しくは後述するが、この気密状態を保持するために、上記ピストン(140)にはその背面側から押し付け力が作用するように構成されている。
図6に示すように、上記第2ハウジング(150)の上面には、上記ピストン(140)の鏡板部(141)の中央部に対応してシールリング(170)が設けられている。すなわち、このシールリング(170)は、上記第2ハウジング(150)とピストン(140)との間の空間を径方向に分割するように設けられている。
そして、上記シールリング(170)よりも内周側の空間は、ケーシング(110)内の高圧空間(S2')と連通していて、上記貯留部(159)から駆動軸(125)の貫通孔(125a)内を通ってきた高圧の潤滑油が供給されるように構成されている。すなわち、上記シールリング(170)よりも内側の空間は高圧の状態になっているため、上記ピストン(140)に対して上記第1ハウジング(135)側に押し付ける背圧が作用する。
ここで、本実施形態に係る回転式圧縮機(101)も上述の実施形態1に係るスクロール式の圧縮機(1)と同様、上記シリンダ室(160,165)の内圧によって、上記ピストン(140)が第1ハウジング(135)に対して離反するような離反力が生じる。これに対して、上述のような押し付け力を上記ピストン(140)に作用させることにより、該ピストン(140)が上記第1ハウジング(135)から離反するのを防止することができ、該ピストン(140)と第1ハウジング(135)とによって形成される上記シリンダ室(160,165)の気密性が保たれるようになっている。
一方、上記シールリング(170)よりも外周側の空間は、背圧空間(S3')であり、該シールリング(170)を越えて進入する潤滑油や、後述する給油溝(135a)から漏れ出た潤滑油によって、該空間内の圧力が、上記吸入ポート(139)よりも高圧で且つ上記ケーシング(110)内の高圧空間(S2')よりも低圧の中間圧になっている。このことにより、この背圧空間(S2')内の圧力も上記ピストン(140)を背面側から押し付けるように作用する。
また、本実施形態でも、上記ピストン(140)に作用する押し付け力が大きすぎると、該ピストン(140)と第1ハウジング(135)との摩擦抵抗が大きくなって、損失が増大するため、該第1ハウジング(135)のピストン(140)側の面に、上記貯留部(159)からピストン(140)内の潤滑油流路(147)及び弁(151)を介して高圧の潤滑油が供給される給油溝(135a)が設けられている。この給油溝(135a)を設けることで、該第1ハウジング(135)とピストン(140)との摩擦抵抗を低減することができ、損失が増大するのを防止できる。
詳しくは、上記給油溝(135a,135a,135a)は、第1ハウジング(135)のスラスト面に、周方向に延びるように且つ周方向に均等配置されるように3つ設けられている。この給油溝(135a)は、本発明におけるポケット部に相当し、該給油溝(135a)内に上記貯留部(159)から高圧の潤滑油が供給されることで、その油圧により上記ピストン(140)が支持されるようになっている。
また、上記各給油溝(135a)は、上述の実施形態1と同様、上記第1ハウジング(135)の内部に形成された油溜まり(145)と供給路(147)を介して連通していて、該油溜まり(146)内の潤滑油が供給されるように構成されている。なお、この油溜まり(146)には、図示しない給油路を介して上記貯留部(159)内の潤滑油が供給される。
ところで、上述のような構成の回転式圧縮機(101)においても、吐出圧力と吸入圧力との差圧が小さい場合には、上記ピストン(140)の背圧が不十分であり、ピストン(140)の挙動が不安定になる。このように上記ピストン(140)の挙動が不安定になった状態、すなわち該ピストン(140)が傾いた状態では、上記第1ハウジング(135)とピストン(140)との間の隙間が拡がるため、該第1ハウジング(135)に設けられた給油溝(135a)から潤滑油が漏れ出してしまう。
これに対し、上記ピストン(140)の挙動を安定させるために、上記実施形態1と同様、上記油溜まり(145)から上記各給油溝(135a)に潤滑油をそれぞれ供給するための各供給路(146)上に、該各給油溝(135a)内の圧力を調整するための圧力調整弁(151)を設けた。この圧力調整弁(151)は、上述の実施形態1と同様、上記給油溝(135a)内と油溜まり(145)内との差圧に応じて該給油溝(135a)内に供給する潤滑油量を調整するように構成されたもので、その具体的な構成は、上記実施形態1のものと同じなので、構成の詳しい説明については省略する。
すなわち、上記実施形態1と同様、上記圧力調整弁(151)は、上記ピストン(140)が転覆して上記第1ハウジング(135)の給油溝(135a)から潤滑油が漏れ出すと、該給油溝(135a)内の圧力が低下し、該給油溝(135a)と油溜まり(145)との差圧が大きくなるため、該給油溝(135a)内に供給する潤滑油量を低減するように動作する。これにより、上記給油溝(135a)内の圧力はさらに大きく低下するため、摺動面間の隙間が大きく潤滑油の漏れた部分では、上記ピストン(140)に作用する背圧によって該ピストン(140)が第1ハウジング(135)側に強く押し付けられて、該ピストン(140)は転覆状態から元の安定した状態に速やかに復帰する。
また、上述のように、上記給油溝(135a,135a,135a)は、周方向に並ぶように3箇所設けられているので、上記ピストン(140)の転覆によって該給油溝(135a,135a,135a)の1つ(若しくは2つ)から潤滑油が漏れ出した場合でも、潤滑油の漏れ出していない残りの給油溝(135a)内の油圧によって上記ピストン(140)を支持することができるので、給油溝を一つだけ設けた場合に比べて摺動面間の摩擦損失の増大を抑えることができる。
しかも、上述のとおり、上記ピストン(140)は、潤滑油の漏れ出していない給油溝(135a)内の油圧によって支持されていて、その部分では上記第1ハウジング(135)から離間する方向に力が作用することになるため、該ピストン(140)に対し、潤滑油の漏れ出している部分を上記第1ハウジング(135)側に押し付けるようなモーメントを作用させることになり、該ピストン(140)の転覆状態をより迅速且つ確実に元の安定した状態に戻すことができる。これにより、上記第1ハウジング(135)とピストン(140)との摺動面間の摩擦損失をできるだけ小さくすることができる。
−運転動作−
上述したように、本実施形態に係る上記回転式圧縮機(101)は、主に冷凍機の冷媒回路に設けられている。そして、この回転式圧縮機(101)は、蒸発器で蒸発した冷媒を吸入して圧縮し、高圧となったガス冷媒を凝縮器へ向けて吐出する。
ここでは、上記回転式圧縮機(101)が冷媒を圧縮する動作について、図8を参照しながら説明する。
まず、電動機(120)を起動すると、ロータ(122)の回転が駆動軸(125)を介して圧縮機構(130)のピストン(140)に伝達される。そうすると、揺動ブッシュ(156A,156B)がブレード(145)に沿って往復運動(進退動作)を行い、かつ、環状ピストン本体部(142)及び揺動ブッシュ(156A,156B)が一体的になってブレード(145)に対して揺動動作を行う。その際、揺動ブッシュ(156A,156B)は、環状ピストン本体部(142)及びブレード(145)に対して実質的に面接触をする。そして、環状ピストン本体部(142)が外側シリンダ部(138)及び内側シリンダ部(152)に対して揺動しながら公転し、圧縮機構(130)が所定の圧縮動作を行う。
具体的に、外側シリンダ室(160)では、図8(B)の状態で低圧室(162)の容積がほぼ最小であり、ここから駆動軸(125)が図の右回りに回転して図8(C)〜図8(A)の状態へ変化するのに伴って該低圧室(162)の容積が増大するときに、冷媒が、吸入管(115)及び吸入ポート(139)を通って該低圧室(162)に吸入される。
上記駆動軸(125)が一回転して再び図8(B)の状態になると、上記低圧室(162)への冷媒の吸入が完了する。そして、この低圧室(162)は今度は冷媒が圧縮される高圧室(161)となり、ブレード(145)を隔てて新たな低圧室(162)が形成される。駆動軸(125)がさらに回転すると、上記低圧室(162)において冷媒の吸入が繰り返される一方、高圧室(161)の容積が減少し、該高圧室(161)で冷媒が圧縮される。高圧室(161)の圧力が所定値となって吐出空間との差圧が設定値に達すると、該高圧室(161)の高圧冷媒によって弁が開き、高圧冷媒が吐出空間からケーシング(110)内の高圧空間(S2')へ流出する。
内側シリンダ室(165)では、図8(F)の状態で低圧室(167)の容積がほぼ最小であり、ここから駆動軸(125)が図の右回りに回転して図8(G)〜図8(E)の状態へ変化するのに伴って該低圧室(167)の容積が増大するときに、冷媒が、吸入管(115)、吸入ポート(139)、及び貫通孔(144)を通って内側シリンダ室(165)の低圧室(167)へ吸入される。
駆動軸(125)が一回転して再び図8(F)の状態になると、上記低圧室(127)への冷媒の吸入が完了する。そして、この低圧室(127)は今度は冷媒が圧縮される高圧室(126)となり、ブレード(145)を隔てて新たな低圧室(127)が形成される。駆動軸(125)がさらに回転すると、上記低圧室(167)において冷媒の吸入が繰り返される一方、高圧室(166)の容積が減少し、該高圧室(166)で冷媒が圧縮される。高圧室(166)の圧力が所定値となって吐出空間との差圧が設定値に達すると、該高圧室(166)の高圧冷媒によって弁が開き、高圧冷媒が吐出空間からケーシング(110)内の高圧空間(S2')へ流出する。
外側シリンダ室(160)ではほぼ図8(E)のタイミングで冷媒の吐出が開始され、内側シリンダ室(165)ではほぼ図8(A)のタイミングで吐出が開始される。つまり、外側シリンダ室(160)と内側シリンダ室(165)とでは、吐出のタイミングがほぼ180°異なっている。外側シリンダ室(160)及び内側シリンダ室(165)で圧縮されてケーシング(110)内の高圧空間(S2')へ流出した高圧の冷媒は吐出管(114)から吐出され、冷媒回路で凝縮行程、膨張行程、及び蒸発行程を経た後、再度圧縮機(101)に吸入される。
ここで、上記ピストン(140)と第2ハウジング(150)との間の空間のうち、シールリング(170)によって区画された内側の空間内は、上記高圧空間(S2')に連通しているため高圧状態であり、該ピストン(140)は、その背面側から第1ハウジング(135)側に押し付けられている。この押し付け力は、上記圧縮室(C)の内圧による離反力とは逆向きの力である。
一方、上記貯留部(159)の潤滑油は、駆動軸(125)下端の遠心ポンプ作用により、該駆動軸(125)の貫通孔(125a)内を上方へ押し上げられて、圧縮機構(130)の各滑り軸受(137a,150a)や、内外シリンダ室(160,165)、上記シールリング(170)等へ供給される。
そして、上記第1ハウジング(135)のスラスト面上に形成された給油溝(135a,135a,135a)に対しては、上記貯留部(159)内の潤滑油が図示しない給油路を介して上記第1ハウジング(135)内の油溜まり(146)内に一旦、供給された後、供給路(147,147,147)及び圧力調整弁(151,151,151)を介して供給される。
このとき、上記給油溝(21d)に供給される潤滑油は高圧状態であることから、上記可動スクロール(22)の押し付け力を緩和して、第1ハウジング(135)とピストン(140)との間の摩擦損失が増大するのを防止できる。
ところで、上述の実施形態1と同様、上記ピストン(140)が転覆すると、該ピストン(140)は第1ハウジング(135)に対して傾いて両者間の隙間が部分的に大きくなるため、上記給油溝(135a)から潤滑油が漏れ出す。そうすると、該給油溝(135a)内の圧力が低下するため、高圧状態の上記油溜まり(145)との差圧が大きくなって、上記圧力調整弁(151)は、潤滑油の流量を減少させて、上記給油溝(135a)内の圧力を低下させる。
そして、上記給油溝(135a)内の圧力が低下すると、上記ピストン(140)には押し付け力としての背圧が作用しているため、上記第1ハウジング(130)側に強く押し付けられることになり、該ピストン(140)と第1ハウジング(130)との間隔が狭くなって、該ピストン(140)を転覆状態から元の安定した状態に速やかに戻すことができる。
また、上記給油溝(135a)は、周方向に並ぶように3つ設けられていることから、そのうちの一つ若しくは2つから潤滑油が漏れ出したとしても、潤滑油の漏れ出していない給油溝(135a)によって上記ピストン(140)を第1ハウジング(130)から離間させるような力が作用し、これにより、該ピストン(140)の潤滑油が漏れ出した部分に上記第1ハウジング(130)側に押し付けるようなモーメントが作用することになる。したがって、このことによっても、転覆して隙間の拡がった上記ピストン(140)を第1ハウジング(130)に対して位置修正する方向により強く押し付けることができ、該ピストン(140)を転覆状態から安定した状態に確実且つ速やかに復帰することができる。
上述のようにして、上記ピストン(140)を転覆状態から元の状態に戻した後は、上記給油溝(135a)からの潤滑油の漏れがなくなって該給油溝(135a)内の圧力は上昇し、上記油溜まり(145)との差圧は小さくなる。そうすると、上記圧力調整弁(151)は、潤滑油の流量を転覆前の流量まで増大させて、上記給油溝(135a)内の油圧によって上記ピストン(140)と第1ハウジング(135)との摩擦抵抗を転覆前のレベルまで小さくする。
−実施形態2の効果−
以上説明したように、本実施形態によれば、第1ハウジング(130)のピストン(140)との摺動面に、周方向に並ぶように3つの給油溝(135a,135a,135a)を設け、該各給油溝(135a)に対して油溜まり(145)から潤滑油をそれぞれ供給するための各供給路(146)上に、該給油溝(135a)内の圧力調整手段としての圧力調整弁(151)をそれぞれ設けたため、上記ピストン(140)が転覆して上記給油溝(135a)から潤滑油が漏れ出た場合に、上記圧力調整弁(151)によって該給油溝(135a)内の圧力を下げて、上記ピストン(140)をその背圧によって第1ハウジング(130)側に押し付けることができる。これにより、上記ピストン(140)を転覆状態からできるだけ速やかに且つ自動的に元の安定した状態に復帰することができるため、該ピストン(140)と第1ハウジング(135)との摺動面間の摩擦損失の増大をできるだけ抑えることができる。
また、上記給油溝(135a,135a,135a)を周方向に並ぶように3つ設けることで、そのうちの一つ若しくは2つから潤滑油が漏れ出た場合でも、残りの給油溝(135a)内の圧力は保持されるため、給油溝を1つしか設けておらず、潤滑油が漏れると該溝全体の圧力が大幅に低下するものに比べ、上記ピストン(140)と第1ハウジング(135)との摺動面間の摩擦損失をできるだけ抑えることができる。
しかも、上記給油溝(135a,135a,135a)を複数設けることで、潤滑油の漏れていない給油溝(135a)によって上記ピストン(140)には第1ハウジング(135)から離反する方向の力が作用し、これにより、該ピストン(140)の第1ハウジング(135)との間隔が広がっている部分、すなわち潤滑油の漏れ出している部分に、上記第1ハウジング(135)側へ押し付けるようなモーメントが作用することになり、上記ピストン(140)を転覆状態からより迅速且つ確実に安定した元の状態に復帰させることができる。
さらに、上記給油溝(135a,135a,135a)は周方向に均等に並ぶように3つ設けられているので、上記ピストン(140)を安定して支持できるとともに、該ピストン(140)が転覆しても、第1ハウジング(135)との間隔が広がった部分に位置する給油溝(135a)から潤滑油が漏れ出すだけで、他の給油溝(135a)から漏れ出すのを防止でき、摺動面間での摩擦損失の増大を最小限に抑えることができる。
《その他の実施形態》
上記各実施形態は、以下のような構成としてもよい。
上記各実施形態では、圧縮機構(20,130)とモータ(31,120)とが上下方向に延びる駆動軸(32,125)によって連結された縦置き型のスクロール圧縮機であるが、この限りではなく、例えば、圧縮機構とモータとが横方向に延びる駆動軸によって連結された横置き型のスクロール圧縮機であってもよい。
また、上記実施形態1では、ケーシング(10)内に低圧空間(S1)と高圧空間(S2)とが設けられた高低圧ドーム型のスクロール圧縮機を前提としていて、上記実施形態2では、ケーシング(10)内に高圧空間(S2')のみが設けられた高圧ドーム型の圧縮機を前提としているが、この限りではなく、例えば、上記実施形態1において、高圧ドーム型のスクロール圧縮機であってもよいし、上記実施形態2において、高低圧ドーム型の圧縮機であってもよい。
また、上記各実施形態では、給油溝(21d,21d,…,135a,135a,…)を周方向に並ぶように3つ設けているが、この限りではなく、4つ以上であってもよいし、2つであってもよい。ただし、安定して可動スクロール(22)若しくはピストン(140)を支持するためには、3つ以上のほうが好ましい。また、上述のような溝ではなく、例えば平面視で円形状の凹部など、潤滑油を供給可能な空間であってもよい。この場合にも、力のバランス上、3つ以上であるのが好ましい。
さらに、上記実施形態2では、給油溝(135a,135a,135a)、供給路(147,147,147)及び圧力調整弁(151,151,151)を固定側の第1ハウジング(135)の内部に設けているが、この限りではなく、上記実施形態1の変形例と同様、回転側のピストン(140)の内部に設けてもよい。
さらにまた、上記実施形態2では、ピストン(140)を可動側にした可動ブッシュ式について説明したが、該ピストン(140)を固定側にした固定ブッシュ式のものなど、ピストンと他の部材とが圧接状態で相対的に偏心回転する構成であって、両者間に潤滑油の供給される構成であれば、どのような構成であってもよい。
以上説明したように、本発明は、第1部材と第2部材との摺動面間に高圧の潤滑油が供給されるポケット部を設け、該ポケット部内の圧力制御を行う圧力調整手段を設けることで、第2部材が転覆した場合でも、速やかに元の安定した状態に復帰することができ、摩擦損失の増大を抑えられるから、例えば第1部材と第2部材との摺動面間に潤滑油の供給される回転式圧縮機について特に有用である。
本発明の実施形態1に係る回転式圧縮機の縦断面図である。 図1の回転式圧縮機のうち圧縮機構を拡大して示す部分拡大断面図である。 固定スクロールを図1における下方から見た場合の図である。 実施形態1の変形例に係る回転式圧縮機の図2相当図である。 給油溝への潤滑油供給系統を模式的に示す図である。 実施形態2に係る回転式圧縮機の図1相当図である。 圧縮機構の要部を示す横断面図である。 圧縮機構の動作を示す横断面図である。
符号の説明
1,101 回転式圧縮機
10,110 ケーシング
21 固定スクロール(第1部材)
21a 鏡板
21b 固定側ラップ(ラップ)
21d 給油溝(ポケット部)
22 可動スクロール(第2部材)
22a 鏡板
22b 可動側ラップ(ラップ)
46,147 供給路
51,151 圧力調整弁(圧力調整手段)
135 第1ハウジング(第1部材)
135a 給油溝(ポケット部)
138 周縁部(シリンダ)
140 ピストン(第2部材)
142 環状ピストン部(ピストン)
145 ブレード
152 内側シリンダ部(シリンダ)
160,165 シリンダ室(圧縮室)
161,166 高圧室
162,167 低圧室
S1 低圧空間
S2,S2' 高圧空間
S3,S3' 背圧空間

Claims (8)

  1. 互いに圧接された状態で相対的に偏心回転する第1部材(21,135)及び第2部材(22,140)を備えているとともに、上記第1部材(21,135)と第2部材(22,140)とのスラスト面間に、該第2部材(22,140)の背面側に形成された背圧空間(S3,S3')よりも高圧の空間(S2,S2')から潤滑油を供給するように構成された回転式圧縮機(1,101)であって、
    上記スラスト面間には、上記高圧空間(S2,S2')から供給路(46,147)を介してそれぞれ潤滑油の供給される複数のポケット部(21d,135a)が設けられ、
    上記複数のポケット部(21d,135a)に対して潤滑油を供給するそれぞれの供給路(46,147)には、該ポケット部(21d,135a)内の圧力を調整するための圧力調整手段(51,151)が設けられていることを特徴とする回転式圧縮機。
  2. 請求項1において、
    上記ポケット部(21d,135a)は、上記第1部材(21,135)側のスラスト面に形成されていることを特徴とする回転式圧縮機。
  3. 請求項1において、
    上記供給路(46,147)及び圧力調整手段(51,151)は、上記第2部材(22,140)の内部に設けられていて、
    上記ポケット部(21d,135a)は、上記第2部材(22,140)側のスラスト面に形成されていることを特徴とする回転式圧縮機。
  4. 請求項1から3のいずれか一つにおいて、
    上記ポケット部(21d,135a)は、周方向に均等に並ぶように少なくとも3つ設けられていることを特徴とする回転式圧縮機。
  5. 請求項1から4のいずれか一つにおいて、
    上記ポケット部(21d,135a)は、周方向に延びる溝部であることを特徴とする回転式圧縮機。
  6. 請求項1から5のいずれか一つにおいて、
    上記圧力調整手段(51,151)は、上記ポケット部(21d,135a)と高圧空間(S2,S2')との差圧が所定値以上になった場合に上記供給路(46,147)内の潤滑油の流量を低減するように構成された圧力調整弁であることを特徴とする回転式圧縮機。
  7. 請求項1から6のいずれか一つにおいて、
    上記第1及び第2部材(21,22)は、鏡板(21a,22a)に渦巻き状のラップ(21b,22b)が設けられたスクロール部材であることを特徴とする回転式圧縮機。
  8. 請求項1から6のいずれか一つにおいて、
    上記第1部材(135)は、環状のシリンダ室(160,165)を有するシリンダ(152,138)によって構成され、
    上記第2部材(140)は、上記シリンダ(152,138)に対して偏心した状態で上記シリンダ室(160,165)に収容され、該シリンダ室(160,165)を外側の圧縮室(160)と内側の圧縮室(165)とに区画する環状のピストン(142)によって構成され、
    上記各圧縮室(160,165)をそれぞれ高圧側(161,166)と低圧側(162,167)とに区画するブレード(145)が上記シリンダ(152,138)とピストン(142)とに跨って設けられていることを特徴とする回転式圧縮機。
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