JP2008038232A - スラグフォーミングを抑制できる溶鋼処理方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】転炉内において吹き下げられた溶鋼に対して、取鍋内において炭素を投入することにより、この溶鋼の炭素含有量を上昇せしめる溶鋼処理方法において、前記投入の一部又は全部は、炭素含有量C[wt%]が70を超える物質によるものとする。この物質の投入により添加される炭素の重量としての炭素添加重量Wc[kg/tonSteel]と、溶鋼処理の終了時点におけるスラグ中のCaO含有量[wt%]を同じくAl2O3含有量[wt%]で除した比としての溶鋼処理終了時比C/Aと、が下記式の何れかを満足するように溶鋼処理終了時比C/Aを制御する。
Wc<0.4のとき、Wc×1.7+0.6≦C/A≦2.0…(1)
0.4≦Wc<1.5のとき、Wc×0.2+1.2≦C/A≦2.0…(2)
1.5≦Wcのとき、1.5≦C/A≦2.0…(3)
【選択図】図1
Description
「溶鋼処理」:転炉から取鍋へ出鋼された溶鋼に対して実施される成分調整処理、及びそれに付随して実施される溶鋼攪拌処理あるいは真空脱ガス処理の総称を意味する。
「溶鋼処理の終了時点」:上記の溶鋼処理が終了した時点を意味する。
と、泡立ったスラグが前記の上端縁から溢れ出てしまうと懸念される。なお、スラグが当該上端縁から取鍋の外部へ溢れ出てしまうと、溶鋼処理を中断せざるを得ないケースもあり生産性が低下してしまうし、設備の損傷をも招いてしまう。
なお、図1において◆「黒塗りつぶし丸印」は「溶鋼処理中におけるスラグフォーミングは好適に抑制されていた(具体的にはスラグフォーミング量が常に300mm未満であった)ものの、スラグが固化してしまっていた」という結果を示し、◆「白抜き丸印」は「溶鋼処理中におけるスラグフォーミングが好適に抑制されていた(具体的にはスラグフォーミング量が常に300mm未満であった)」という結果を示し、◆「半月丸印」は「溶鋼処理中におけるスラグフォーミングは好適には抑制されていなかった(具体的にはスラグフォーミング量が常には300mm未満ではなかった)」という結果を示す。
即ち、炭素含有量C[wt%]が70を超える物質である例えばコークスや炭素塊などは、一般的に、塊状のまま取鍋内に投入される。このため、これらの物質は溶鋼中にスムーズには溶け込まれ難く、溶け残った物質が溶鋼中を浮上してスラグに至り、その物質がスラグ中の酸素と急激に反応することにより大量のCOを発生させてしまうからだと考えられる。
なお、溶鋼中のSi含有量やMn含有量などを調整することを目的として溶鋼中へ添加される合金にも、上記炭素は、最大10%程度含有されている。しかし、この合金中の炭素は、スラグフォーミングの原因とは成り難いと考えられる。なぜなら、合金中に含まれる炭素成分は溶鋼に対して極めて溶け込みやすいので、殆ど溶け残ることがないからである。
即ち、比して溶鋼処理終了時比C/Aが小さいと、溶鋼処理中に発生するCO気泡がスラグ中において安定的に存在でき、CO気泡が互いに凝集・合体することなく個別単独でスラグ中に留まれるからだと考えられる。
裏を返せば、比して溶鋼処理終了時比C/Aが大きいと、溶鋼処理中に発生するCO気泡がスラグ中において安定的には存在できないので、CO気泡が互いに凝集・合体しようとする(具体的には気泡の表面積を小さくしようとする)。これにより、CO気泡の夫々の体積が増大されるから、その強力な浮力によってスラグ中から大気中へ脱出しやすくなると考えられる。
即ち、取鍋内における炭素の前記投入の一部又は全部は、炭素含有量C[wt%]が70を超える物質の投入によるものとする。
この物質の投入により添加される炭素の重量としての炭素添加重量Wc[kg/tonSteel]と、溶鋼処理の終了時点における、取鍋内の溶鋼上に浮設されているスラグ中の、CaO含有量[wt%]を、同じくAl2O3含有量[wt%]で除した比としての溶鋼処理終了時比C/Aと、が下記式(1)〜(3)の何れか一を満足するように前記溶鋼処理終了時比C/Aを制御する。
Wc<0.4のとき、Wc×1.7+0.6≦C/A≦2.0・・・(1)
0.4≦Wc<1.5のとき、Wc×0.2+1.2≦C/A≦2.0・・・(2)
1.5≦Wcのとき、1.5≦C/A≦2.0・・・(3)
本発明の実施の形態を説明する前に、上述の如く本願発明において制御対象としての前記比C/Aを、溶鋼処理の開始時点におけるものではなく、溶鋼処理の終了時点におけるものとした理由を以下に説明する。端的に言えば、溶鋼処理中のスラグフォーミングを抑制するには該溶鋼処理中における比C/Aを所定の値以上とすることが肝要であり(図1参照)、また、この比C/Aは該溶鋼処理中においてAl2O3の生成に伴って漸減せんとするものだからである(図2参照)。
4Al+3O2→2Al2O3
そして、上記溶鋼処理の開始時〜終了時においては、原則として、スラグのCaO含有量は変動しない一方で、上記のテルミット反応によりAl2O3は生成され続ける。従って、図2に示す如く溶鋼処理の前後における前記比C/Aが一致することは稀であり、通常、溶鋼処理の終了時点における比C/Aが同じく開始時点における比C/Aを下回る。
一方、図1に示した如く、溶鋼処理中のスラグフォーミングを好適に抑制するためには、該溶鋼処理中における比C/Aを常に所定の値以上とすることが肝要である。
以上の理由を総合的に判断すると、溶鋼処理中に発生するスラグフォーミングを効果的に抑制するためには、溶鋼処理の終了時点における前記比C/Aを適宜に制御することが合理的と言えるからである。
それでは、本実施形態における溶鋼製造の概略を説明する。
1.高炉で生成した溶銑をトーピードカーに出銑する。
2.このトーピードカーを用いて溶銑を転炉へ搬送し、この溶銑を転炉内へ装入する。
3.転炉に装入した溶銑に対して酸素を吹き込み、該溶銑に対する脱C処理及び脱P処理を実施する。なお、溶銑の炭素含有量C[wt%]は、製品目標C(炭素濃度)を考慮することなく、少なくとも0.1以下となるまで吹き下げるものとする。
4.3.の処理が終了したら、この転炉を傾け、取鍋に対して溶鋼を出鋼する。なお、この出鋼の時点における溶鋼の炭素含有量C[wt%]を念のため測定しておくことが好ましい(後述する表1を併せて参照、「転炉吹止C」)。
5.4.で溶鋼が注湯された取鍋を、溶鋼を処理するための設備(以下、溶鋼処理設備とも称する。)へ搬送する。
6.取鍋内の溶鋼上に浮設されているスラグの前記溶鋼処理終了時比C/Aを制御するために、必要に応じて、例えば、適量の生石灰及びAl灰を取鍋内へ投入する。詳しくは後述する。
7.溶鋼処理を実施する。
(8.取鍋を連続鋳造設備が備える連続鋳造機へ搬送し、該連続鋳造機が備えるタンディッシュへ取鍋内に収容されている溶鋼を注湯する。)
本工程では、溶鋼処理設備に搬送されてきた取鍋内に収容されている溶鋼及びスラグの成分などを調査する。具体的には、溶鋼処理を開始する前における下記項目を適宜の方法により調査する。
・溶鋼のC含有量
・溶鋼のMn含有量
・溶鋼のSi含有量
・溶鋼のAl含有量
・溶鋼の温度
・スラグのAl2O3含有量
・スラグのCaO含有量
・スラグの厚み
製造する鉄鋼の鋼種に応じて定まる所望の炭素含有量C[wt%](表1中、製品目標C)と、上記工程1において測定した溶鋼処理を開始する前における溶鋼の炭素含有量C[wt%]と、取鍋内に収容されている溶鋼の体積と、に基づいて、溶鋼処理中に取鍋内に投入すべき炭素の重量[kg/tonSteel]を算出する。
上記工程2と略同様に、製造する鉄鋼の鋼種に応じて定まる所望の各成分含有量(表1中、製品目標Mn及び製品目標Si)と、上記工程1において測定した溶鋼処理を開始する前における溶鋼の各成分含有量と、取鍋内に収容されている溶鋼の体積と、に基づいて、溶鋼処理中に取鍋内に投入すべき各成分の重量[kg/tonSteel]を算出する。
なお、上記各成分とは具体的には例えばMnやSiであって、本実施形態ではMnを含有するFeMn合金を、及びSiを含有するFeSi合金を取鍋内に適宜に投入することとしている。従って、先ず、上記において投入すべきMn及びSiの重量を算出し、次いで、これらMn及びSiを投入するために必要なFeMn合金及びFeSi合金の重量を算出する。
上記工程3で投入すべき重量が算出されたFeMn合金及びFeSi合金に含まれる炭素の重量を算出する。
上記工程2で算出した、溶鋼処理中に取鍋内に投入すべき炭素の重量の一部が上記で算出した各合金内に含まれる炭素によって賄われるので、残りの炭素の重量(炭素添加重量Wc)を求める。
なお、この際、当該残りの炭素の重量を確保するために必要となるコークス(又は炭素塊)の重量を求めておくと良い。
上記工程4で算出される炭素添加重量Wcに基づいて選択される下記式(1)〜(3)の何れか一の式によって、制御すべき前記溶鋼処理終了時比C/Aの上限及び下限を決定する(図4を併せて参照)。
Wc<0.4のとき、Wc×1.7+0.6≦C/A≦2.0・・・(1)
0.4≦Wc<1.5のとき、Wc×0.2+1.2≦C/A≦2.0・・・(2)
1.5≦Wcのとき、1.5≦C/A≦2.0・・・(3)
上記工程1で測定した溶鋼処理を開始する前における溶鋼の温度と、溶鋼処理の終了時における溶鋼の温度の目標値と、の差異に基づいて溶鋼処理中に昇温すべき溶鋼の温度幅を算出する。なお、「昇温すべき溶鋼の温度幅」は、取鍋内に収容されている溶鋼の体積と、上記工程3で算出した各合金の重量と、上記工程4で算出したコークスの重量と、を総合的に考慮して算出するものとする。
次いで、上記「昇温すべき溶鋼の温度幅」を確保するために溶鋼処理中に取鍋に投入すべきAlの重量を算出する。
上記工程1で測定した「溶鋼処理を開始する前における溶鋼のAl含有量」と、溶鋼処理の終了時における溶鋼のAl含有量の目標値(表1中、製品目標Al)と、上記工程6で算出した投入すべき(投入する)Alの重量と、を総合的に考慮して、溶鋼処理中に生成されるAl2O3の重量を算出する。より具体的には以下の如くである。
即ち、上記工程1で測定した溶鋼処理を開始する前における溶鋼が含有するAlと、溶鋼処理中に溶鋼を昇温せしめるために投入するAlと、の和のうち、溶鋼処理の終了時における溶鋼のAl含有量の目標値を満足するために要するAlを除いた残りのAlはすべて溶鋼処理中にAl2O3となってスラグに移行するとして、溶鋼処理中に生成されるAl2O3の重量を算出する。
上記工程1で測定したスラグ厚みと、既知の取鍋形状と、に基づいて、溶鋼処理の開始時におけるスラグの体積を算出する。
また、上記工程1で測定したスラグのAl2O3含有量及びCaO含有量などに基づいて、溶鋼処理の終了時点におけるスラグの前記比C/A(表1中、「成分調整を伴わない場合の溶鋼処理終了時比C/A」)を算出する。
そして、この比C/Aを、上記工程5において決定した上限及び下限によって定められる範囲内とするために溶鋼を処理する前に取鍋内に投入すべきCaOの重量及びAl2O3の重量を算出する。このとき、溶鋼処理中に生成されるAl2O3の重量(上記工程7参照)と、本工程で算出したスラグの上記体積と、を十分に考慮する。
本実施形態では上述したように、溶鋼を処理する前に投入するCaO及びAl2O3は、生石灰(CaOを約90〜95%(例えば93%)含む。)及びAl灰(Al2O3を約80〜90%(例えば85%)含む。)により供給することとしているので、前記のCaOの重量及びAl2O3の重量を夫々、溶鋼処理の前に投入すべき生石灰の重量及びAl灰の重量に換算する。
なお、Al灰は生石灰と比較して若干高価と言えるので、可能であれば、前記溶鋼処理終了時比C/Aは、生石灰のみの投入により調整することが好ましい。
図中において実施例・比較例に対応するプロットは、太線によって区分けすることにより区別できるようにしておいた。本図において「黒塗りつぶし丸印」・「白抜き丸印」・「半月丸印」が示すところは、図1についての説明文を参照されたい。
即ち、転炉及び取鍋は一度に250tの溶銑(又は溶鋼)を処理可能なサイズのものを用い、転炉内において実施される吹錬の終了時点(所謂吹止時点)における溶鋼の炭素含有量C[wt%]を0.02〜0.06%とし、同終了時点における溶鋼の温度(所謂吹止温度)[℃]を1630〜1720とした。なお、本試験における製品目標P[wt%]は、0.010〜0.025とした。
一方、前記溶鋼処理終了時比C/Aが過小となっていた場合は、溶鋼処理中に発生するスラグフォーミングのスラグフォーミング量を常には300mm未満と抑制することができなかったことが判る。なお、この場合、より具体的には約32%の確率で前記好ましくない結果となった。
また、前記溶鋼処理終了時比C/Aが過大となっていた場合は、溶鋼処理中に発生するスラグフォーミングのスラグフォーミング量を一応は常に300mm未満と抑制できたものの、スラグが固化してしまっていたことが判る。
即ち、取鍋内における炭素の前記投入の一部又は全部は、炭素含有量C[wt%]が70を超える物質の投入によるものとする。
この物質の投入により添加される炭素の重量としての炭素添加重量Wc[kg/tonSteel]と、
溶鋼処理の終了時点における、取鍋内の溶鋼上に浮設されているスラグ中の、CaO含有量[wt%]を、同じくAl2O3含有量[wt%]で除した比としての溶鋼処理終了時比C/Aと、が下記式(1)〜(3)の何れか一を満足するように前記溶鋼処理終了時比C/Aを制御する。
Wc<0.4のとき、Wc×1.7+0.6≦C/A≦2.0・・・(1)
0.4≦Wc<1.5のとき、Wc×0.2+1.2≦C/A≦2.0・・・(2)
1.5≦Wcのとき、1.5≦C/A≦2.0・・・(3)
Claims (1)
- 転炉内において炭素含有量C[wt%]が少なくとも0.1以下となるまで吹き下げられた溶鋼に対して、取鍋内において炭素を投入することにより、この溶鋼の炭素含有量C[wt%]を上昇せしめて所望の炭素含有量C[wt%]とする、溶鋼処理方法において、
取鍋内における炭素の前記投入の一部又は全部は、炭素含有量C[wt%]が70を超える物質の投入によるものとし、
この物質の投入により添加される炭素の重量としての炭素添加重量Wc[kg/tonSteel]と、
溶鋼処理の終了時点における、取鍋内の溶鋼上に浮設されているスラグ中の、CaO含有量[wt%]を、同じくAl2O3含有量[wt%]で除した比としての溶鋼処理終了時比C/Aと、
が下記式(1)〜(3)の何れか一を満足するように前記溶鋼処理終了時比C/Aを制御する、ことを特徴とする溶鋼処理方法
Wc<0.4のとき、Wc×1.7+0.6≦C/A≦2.0・・・(1)
0.4≦Wc<1.5のとき、Wc×0.2+1.2≦C/A≦2.0・・・(2)
1.5≦Wcのとき、1.5≦C/A≦2.0・・・(3)
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