[第1実施形態]
図1に示すように、本実施形態の圧電アクチュエータ1は、2つの圧電カンチレバー2A,2Bを備えている。圧電カンチレバー2A,2Bは、同一平面上に配置されており、一方の圧電カンチレバー2Aは、他方の圧電カンチレバー2Bの先端部b1の片側に、その長さ方向に対して直角に連結されている。この圧電アクチュエータ1は、一方の圧電カンチレバー2Aに駆動電圧を印加するための第1上部電極7Aと、他方の圧電カンチレバー2Bに駆動電圧を印加するための第2上部電極7Bと、第1,第2の上部電極7A,7Bの共通の下部電極として用いられる共通下部電極9とを備えている。
圧電カンチレバー2A,2Bは、それぞれ、支持体3A,3Bと、下部電極4A,4Bと、圧電体5A,5Bと、上部電極6A,6Bとを備えている。前記第1上部電極7Aは、第1上部電極配線7Cを介して一方の圧電カンチレバー2Aの上部電極6Aに接続され、前記第2上部電極7Bは、他方の圧電カンチレバー2Bの上部電極6Bに接続されている。また、共通下部電極9は、各圧電カンチレバーの下部電極4A,4Bに接続されている。そして、第1上部電極7Aと共通下部電極9との間に電圧を印加することで、上部電極6Aと下部電極4Aとの間に電圧が印加され、圧電カンチレバー2Aが駆動される。同様に、第2上部電極7Bと共通下部電極9との間に電圧を印加することで、上部電極6Bと下部電極4Bとの間に電圧が印加され、圧電カンチレバー2Bが駆動される。
各圧電カンチレバー2A,2Bの支持体3A,3Bは板状の部材であり、例えば単結晶シリコン基板やSOI基板等のシリコン基板から形成されている。これらの支持体3A,3Bは、シリコン基板を形状加工することにより1枚の支持体3として一体的に形成されている。この支持体3はL字状に形成され、その基端部3Cが台座10に保持され、基端部3Cから延びた部分が、他方の圧電カンチレバー2Bの支持体3Bを構成し、この支持体3Bから直角に延びた部分が、一方の圧電カンチレバー2Aの支持体3Aを構成する。これにより、2つの圧電カンチレバー2A,2Bが機械的に連結されたものとなる。なお、台座10もシリコン基板から形成され、シリコン基板を形状加工することにより支持体3と一体的に形成されている。また、シリコン基板の形状加工する手法としては、フォトリソグラフィ技術やドライエッチング技術等を利用した半導体プレーナプロセス及びMEMSプロセスが用いられる。
共通下部電極9と下部電極4A,4Bとは、支持体3上に金属薄膜(本実施形態では2層の金属薄膜、以下、下部電極層ともいう)を、半導体プレーナプロセスを用いて形状加工することにより形成される。この金属薄膜の材料としては、例えば、1層目(下層)にはチタン(Ti)を用い、2層目(上層)には白金(Pt)を用いる。
共通下部電極9は、支持体3の基端部3C上にパッド状に形成され、他方の圧電カンチレバー2Bの下部電極4Bと導通している。この下部電極4Bは、支持体3B上のほぼ全面に形成され、一方の圧電カンチレバー2Aの下部電極4Aと導通している。この下部電極4Aは、支持体3A上のほぼ全面に形成されている。
圧電体5A,5Bは、1層の圧電膜(以下、圧電体層ともいう)を、半導体プレーナプロセスを用いて形状加工することにより、それぞれ、下部電極4A,4B上に互いに分離して形成されている。この圧電膜の材料としては、例えば、圧電材料であるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)が用いられる。圧電膜の厚みは、例えば1〜10μm程度とする。なお、圧電膜は、例えば、反応性アーク放電を利用したイオンプレーティング法により成膜する。この手法を用いることにより、良好な圧電特性を有する厚みのある膜を成膜することができる。
第1,第2上部電極7A,7Bと第2上部電極配線7Cと上部電極6A,6Bとは、圧電体層上の金属薄膜(本実施形態では1層の金属薄膜、以下、上部電極層という)を、半導体プレーナプロセスを用いて形状加工することにより形成されている。この金属薄膜の材料としては、例えば白金又は金(Au)が用いられる。
第1上部電極7Aは、支持体3の基端部3C上にパッド状に形成され、第1上部電極配線7Cと導通している。この第1上部電極配線7Cは、支持体3B上に線状に形成され、一方の圧電カンチレバー2Aの上部電極6Aと導通している。この上部電極6Aは、圧電体5A上のほぼ全面に形成されている。同様に、第2上部電極7Bは、支持体3の基端部3C上にパッド状に形成され、他方の圧電カンチレバー2Bの上部電極6Bと導通している。この上部電極6Bは、圧電体5B上のほぼ全面に形成されている。
なお、第1,第2上部電極7A,7Bは、支持体3の基端部3C上で、その下層の圧電体層及び下部電極層と共に形状加工されて、互いに分離して設けられていると共に、共通下部電極9と分離して設けられている。
ここで、第1,第2上部電極7A,7Bの分離について説明する。図2は、図1の圧電アクチュエータ1のI−I線断面図である。図2に示すように、圧電カンチレバー2Bの支持体3B上で、第1上部電極配線7C及びその下層の圧電体5Cが、圧電カンチレバー2Bの上部電極6B及びその下層の圧電体5Bと分離して設けられている。これにより、第1上部電極配線7Cは、圧電カンチレバー2Bの上部電極6Bと平面的に分離されると共に、圧電体5Cにより圧電カンチレバー2Bの下部電極4Bとの間で電気的に絶縁されている。よって、第1上部電極7Aと第2上部電極7Bとは、平面的に分離されると共に、共通下部電極4との間で絶縁(上部電極層と下部電極層との層間絶縁)されている。従って、第1,第2上部電極7A,7Bにより、圧電カンチレバー2A,2Bに対して独立に駆動電圧を印加することができる。
次に、圧電アクチュエータ1の作動について説明する。
まず、参考例として、図21に示す1つの圧電カンチレバー132Aを備える圧電アクチュエータ131を用いて、圧電カンチレバーの一般的な作動について説明する。この圧電アクチュエータ131において、圧電カンチレバー132Aは、支持体133Aと下部電極134Aと圧電体135Aと上部電極136Aとを備えている。支持体133Aは支持体133として一体的に形成されており、支持体133の端部133Bが台座137に保持され、端部133Bから延びた部分が支持体133Aを構成している。また、圧電アクチュエータ131には、圧電カンチレバー132Aに駆動電圧を印加するための上部電極136と下部電極134とが備えられている。上部電極136と下部電極134とは、支持体133の端部133B上にパッド状に形成され、それぞれ、上部電極136Aと下部電極134Aとに接続されている。なお、各構成の詳細は、圧電アクチュエータ1の圧電カンチレバー2Bと同じである。
図22は、図21に示す圧電アクチュエータ131の駆動状態を模式的に示した図である。圧電アクチュエータ131において、上部電極136と下部電極134との間に所定の直流電圧を印加して、圧電カンチレバー132Aを駆動させる。これにより、印加された電圧に応じて圧電体135Aが伸縮して、圧電カンチレバー132Aの先端部a1で接続部a0を支点として角度変位αが発生する。すなわち、圧電アクチュエータ131全体として、接続部a0を支点として、圧電アクチュエータ131の先端部(圧電カンチレバー132Aの先端部a1)で角度変位αが発生する。
これに対し、上記実施形態の圧電アクチュエータ1においては、まず、第1上部電極7Aと共通下部電極9との間に、所定の第1直流電圧(例えば、−10〜+30V)を印加して、圧電カンチレバー2Aを駆動する。これにより、圧電カンチレバー2Aと圧電カンチレバー2Bとの接続部a0を支点として、圧電カンチレバー2Aの先端部a1で、印加された第1直流電圧に応じた角度変位α(例えば、−1〜+3°)が発生する。これと共に、第2上部電極7Bと共通下部電極9との間に、所定の第2直流電圧(例えば、−10〜+30V)を印加して、圧電カンチレバー2Bを駆動する。これにより、圧電カンチレバー2Bと台座10との接続部b0を支点として、圧電カンチレバー2Bの先端部b1で、印加された第2直流電圧に応じた角度変位β(例えば、−1〜+3°)が発生する。
従って、圧電アクチュエータ1全体としては、圧電アクチュエータ1の基端部(圧電カンチレバー2Bの基端部b0)を支点として、圧電アクチュエータ1の先端部(圧電カンチレバー2Aの先端部a1)で、角度変位αと角度変位βとをベクトル的に加算した2つの角度成分を有する変位(α+β)が発生する。このとき、第1,第2直流電圧は独立に印加可能であり、圧電カンチレバー2A,2Bは独立に駆動されるので、角度変位αと角度変位βとを独立に制御することができる。よって、圧電アクチュエータ1は、その先端部を2軸で駆動することができる。
本実施形態によれば、2つの圧電カンチレバー2A,2Bを長さ方向が異なるように連結し、各圧電カンチレバーに独立に駆動電圧を印加できるので、圧電アクチュエータの先端部を2軸駆動することができる。
なお、本実施形態では、2つの圧電カンチレバー2A,2Bを直角に連結しているが、連結する圧電カンチレバーの数及び連結する角度は、任意に変更可能である。例えば、他の実施形態として、3つ以上の圧電カンチレバーを長さ方向が異なるように連結することで、圧電アクチュエータの先端部を3軸以上の多軸で駆動するものとしてもよい。
[第1実施形態の圧電アクチュエータの使用例]
図3は、第1実施形態の圧電アクチュエータ1を使用した光偏向素子(2次元光偏向素子)を示す。以下の説明では、第1実施形態と同一の構成については、第1実施形態と同一の参照符号を用いて説明を省略する。
この光偏向素子11では、圧電アクチュエータ1の先端部(圧電カンチレバー2Aの先端部a1)に、ミラー部12が連結されている。ミラー部12は、ミラー部支持体13と、ミラー部支持体13上に形成されたミラー面反射膜14とを備えている。ミラー部支持体13は、シリコン基板から構成され、圧電アクチュエータ1の支持体3と一体的に形成されている。これにより、ミラー部12は、圧電アクチュエータ1と機械的に連結され、圧電アクチュエータ1の駆動に応じて回動する。
ミラー面反射膜14は、ミラー部支持体13上に成膜された金属薄膜(本実施形態では1層の金属薄膜)から形成されている。金属薄膜の材料としては、例えば金、白金、アルミニウム(Al)等が用いられる。金属薄膜の厚みは、例えば100〜500nm程度とする。金属薄膜は、例えば、スパッタ法、電子ビーム蒸着法等により成膜する。ミラー面反射膜14は、成膜した金属薄膜を半導体プレーナプロセスを用いて形状加工して形成されている。他の構成は、第1実施形態と同じである。
次に、この光偏向素子11の作動を説明する。まず、第1上部電極7Aと共通下部電極9との間に、所定の第1直流電圧を印加すると共に、第2上部電極7Bと共通下部電極9との間に、所定の第2直流電圧を印加する。これにより、第1実施形態と同様に、圧電カンチレバー2A,2Bが駆動され、圧電アクチュエータ1の先端部に、2つの角度成分を有する変位(α+β)が発生する。この変位に応じてミラー部10が回転してレーザ光等の光ビームを偏向する。このとき、圧電カンチレバー2A,2Bは独立に駆動電極を有しているため、角度変位αと角度変位βとを独立に制御することができ、ミラー部12を2軸駆動することが可能となる。また、圧電体5A,5Bは電荷を蓄積・保持することができるので、圧電カンチレバー2A,2Bはそれぞれ、変位α,βを保持することができる。よって、電圧を印加して所定の偏向角を得た後、この電圧の印加を停止しても、ミラー部12の偏向角を保持することができる。
なお、上述の光偏向素子11では、第1実施形態である2つの圧電カンチレバーを直角に連結した圧電アクチュエータにミラー部を連結するものとしたが、例えば、他の実施形態である、3つ以上の圧電カンチレバーを長さ方向が異なるように連結した圧電アクチュエータにミラー部を連結することで、ミラー部を3軸以上の多軸駆動するものとしてもよい。
[第2実施形態]
図4は、3つの圧電カンチレバー23A〜23Cを連結した第2実施形態の圧電アクチュエータ22を使用した多接点スイッチ21を示す。なお、本実施形態の圧電アクチュエータ22の基本的な構成は、第1実施形態の圧電アクチュエータ1と同じであるので、詳細な説明は第1実施形態を参照して省略する。
本実施形態の圧電アクチュエータ22において、圧電カンチレバー23A〜23Cは同一平面上に配置されており、第1,第3の圧電カンチレバー23A,23Cは、第2の(基端部側の)圧電カンチレバー23Bの先端部b1の両側に、それぞれ、その長さ方向に対して直角になるように連結されている。また、圧電アクチュエータ22は、第1の圧電カンチレバー23Aに駆動電圧を印加するための第1上部電極28Aと、第2の圧電カンチレバー23Bに駆動電圧を印加するための第2上部電極28Bと、第3の圧電カンチレバー23Cに駆動電圧を印加するための第3上部電極28Cと、第1〜第3上部電極28A〜28Cの共通の下部電極として用いられる共通下部電極30とを備えている。
圧電カンチレバー23A〜23Cは、それぞれ、支持体24A〜24Cと、下部電極25A〜25Cと、圧電体26A〜26Cと、上部電極27A〜27Cとを備えている。前記第1上部電極28Aは、第1上部電極配線28Dを介して第1の圧電カンチレバー23Aの上部電極27Aに接続されている。また、第2上部電極28Bは、第2の圧電カンチレバー23Bの上部電極27Bに接続されている。また、第3上部電極28Cは、第3上部電極配線28Eを介して第3の圧電カンチレバー23Cの上部電極27Cと接続されている。また、共通下部電極30は、各圧電カンチレバー23A〜23Cの下部電極25A〜25Cと接続されている。
そして、第1上部電極28Aと共通下部電極30との間に電圧を印加することで、上部電極27Aと下部電極25Aとの間に電圧が印加され、圧電カンチレバー23Aが駆動される。同様に、第2上部電極28Bと共通下部電極30との間に電圧を印加することで、上部電極27Bと下部電極25Bとの間に電圧が印加され、圧電カンチレバー23Bが駆動される。同様に、第3上部電極28Cと共通下部電極30との間に電圧を印加することで、上部電極27Cと下部電極25Cとの間に電圧が印加され、圧電カンチレバー23Cが駆動される。
各圧電カンチレバー23A〜23Cの支持体24A〜24Cは板状の部材で、シリコン基板を形状加工することにより1枚の支持体24として一体的に形成されている。これらの支持体24はT字状に形成されており、その基端部24Dが台座31に保持されており、基端部24Dから延びた部分が基端部側の圧電カンチレバー23Aの支持体24Bを構成し、この支持体24Bから分岐した両側の部分が、それぞれ第1,第3の圧電カンチレバーの22A,23Cの支持体24A,24Cを構成する。これにより、3つの圧電カンチレバー23A〜23Cが機械的に連結されたものとなる。なお、支持体24,台座31の詳細は、第1実施形態の支持体3,台座10と同じである。
共通下部電極30と下部電極25A〜25Cとは、支持体24上に成膜された金属薄膜(下部電極層)を半導体プレーナプロセスを用いて形状加工することにより形成されている。下部電極層の詳細は第1実施形態と同じである。共通下部電極30は、支持体24の端部24D上にパッド状に形成され、下部電極25Bと導通している。下部電極25Bは、支持体24B上のほぼ全面に形成され、下部電極25A,25Cと導通している。また、下部電極25A,25Cは、それぞれ支持体24A,24C上のほぼ全面に形成されている。
圧電体26A〜26Cは、下部電極層上に成膜された1層の圧電膜(圧電体層)から形成されている。圧電体層の詳細は第1実施形態と同じである。圧電体26A〜26Cは、圧電体層を半導体プレーナプロセスを用いて形状加工することにより、それぞれ、下部電極25A〜25C上に互いに分離して形成されている。
第1〜第3上部電極28A〜28Cと、第1,第3上部電極配線28D,28Eと、上部電極27A〜27Cとは、圧電体層上に成膜された金属薄膜(上部電極層)を、半導体プレーナプロセスを用いて形状加工することにより形成されている。上部電極層の詳細は第1実施形態と同じである。
第1上部電極28Aは、支持体24の端部24D上にパッド状に形成され、第1上部電極配線28Dと導通している。この第1上部電極配線28Dは、支持体24B上の圧電カンチレバー23A寄りの部分に線状に形成され、第1の圧電カンチレバー23Aの上部電極27Aと導通している。この上部電極27Aは、圧電体26A上のほぼ全面に形成されている。
同様に、第2上部電極28Bは、支持体24の端部24D上にパッド状に形成され、第2の圧電カンチレバー23Bの上部電極27Bと導通している。この上部電極27Bは、圧電体26B上のほぼ全面に形成されている。
同様に、第3上部電極28Cは、支持体24の端部24D上にパッド状に形成され、第3上部電極配線28Eと導通している。第3上部電極配線28Eは、支持体24B上の圧電カンチレバー23C寄りの部分に線状に形成され、第3の圧電カンチレバー23Cの上部電極27Cと導通している。上部電極27Cは、圧電体26C上のほぼ全面に形成されている。
なお、第1〜第3上部電極28A〜28Cは、支持体24の端部24D上で、その下層の圧電体層及び下部電極層と共に形状加工されて、互いに分離して設けられると共に、共通下部電極30と分離して設けられている。
このとき、第1実施形態について図2で説明したように、支持体24B上で、第1上部電極配線28D及びその下層の圧電体26Dが、上部電極27B及びその下層の圧電体26Bと分離して設けられている。これにより、第1上部電極配線28Dは、上部電極27Bと平面的に分離されると共に、圧電体26Dにより下部電極25Bとの間で絶縁されている。同様に、支持体24B上で、第3上部電極配線28E及びその下層の圧電体26Eが、上部電極27B及びその下層の圧電体26Bと分離して設けられている。これにより、第2上部電極配線28Eは、上部電極27Bと平面的に分離されると共に、圧電体26Eにより下部電極25Bとの間が絶縁されている。よって、第1〜第3上部電極28A〜28Cは、平面的に互いに分離されると共に、共通下部電極30との間で層間絶縁されている。従って、第1〜第3上部電極28A〜28Cにより、圧電カンチレバー23A〜23Cに独立に駆動電圧を印加することができる。
多接点スイッチ21は、上述の圧電アクチュエータ22と、第1〜第3接点32A〜32Cとで構成される。第1接点32Aは、第1の圧電カンチレバー23Aの先端部a1の下部に対向して設けられている。第1接点32Aは、先端部a1が上下方向に可動して接点部33Aに接触・非接触となることでOn・Offされる。同様に、第2接点32Bは、第2の圧電カンチレバー23Bの先端部b1の下部に対向して設けられている。第2接点32Bは、先端部b1が上下方向に可動して接点部33Bに接触・非接触となることでOn・Offされる。同様に、第3接点32Cは、圧電カンチレバー23Cの先端部c1の下部に対向して設けられている。第3接点32Cは、先端部c1が可動して接点部33Cに接触・非接触となることでOn・Offされる。このとき、圧電体26A〜26Cは電荷を蓄積・保持することができるので、3つの圧電カンチレバー23A〜23Cの先端部a1,b1,c1で発生する変位を保持することができる。よって、電圧を印加して所定の接続状態を得た後、この電圧の印加を停止しても、この接続状態(On・Off状態)を保持することができる。
次に、本実施形態の圧電アクチュエータ22及び多接点スイッチ21の作動について説明する。まず、第1〜第3上部電極28A〜28Cと共通下部電極30との間に、所定の第1〜第3直流電圧を印加して、圧電カンチレバー23A〜23Cを駆動させる。これにより、圧電カンチレバー23Aで、接続部a0を支点として先端部a1で第1直流電圧に応じた角度変位が発生する。また、圧電カンチレバー23Bで、接続部b0を支点として先端部b1で第2直流電圧に応じた角度変位が発生する。また、圧電カンチレバー23Cで、接続部c0を支点として先端部c1で第3直流電圧に応じた角度変位が発生する。これにより、圧電アクチュエータ22全体として、第1〜第3接点32A〜32Cに対向して配置されたそれぞれの先端部a1,b1,c1が上下方向に可動し、接点32A〜32CがOn・Offされる。
このとき、印加する第1〜第3直流電圧の組み合わせにより、3つの接点32A〜32Cの接続状態(On・Off状態)を8通り選択することが可能である。具体的には、例えば、下記の表1のようになる。表1において、接続状態が{1}とは第1接点32AのみがOn状態となっていることを示す。また、各圧電カンチレバー23A〜23Cの角度変位は、電圧が正(+)のときは、圧電カンチレバー23A〜23Cが配置された平面に対して上方向に発生し、電圧が負(−)のときは、下方向に発生するものとする。
本実施形態によれば、多接点スイッチを、例えば1軸駆動型のカンチレバーを接点の数だけ組み合わせた多接点スイッチに比べて小型にすることができる。これにより、例えば、非常に小型なマルチプレクサを提供することができる。そして、このような小型のマルチプレクサは、携帯電話用のRF信号(GHz帯域)の伝送経路の切替等に用いることができる。
[第3実施形態]
図5に示すように、第3実施形態の圧電アクチュエータ41は、4つの圧電カンチレバー42A〜42Dを備えている。また、圧電アクチュエータ41は、圧電カンチレバー42A,42Cに駆動電圧を印加するための第1上部電極47と、圧電カンチレバー42B,42Dに駆動電圧を印加するための第2上部電極48と、第1,第2上部電極47,48の共通の下部電極として用いられる共通下部電極51とを備えている。なお、本実施形態の圧電アクチュエータ41の基本的な構成は、第1実施形態の圧電アクチュエータ1と同じであるので、詳細な説明は第1実施形態を参照して省略する。
圧電カンチレバー42A〜42Dは、各圧電カンチレバー42A〜42Dの両端部a0〜d0,a1〜d1が隣り合うように並んで、同一平面上に平行に配置されている。そして、圧電カンチレバー42Aの端部a0と圧電カンチレバー42Bの端部b0との隣り合う部分が連結され、圧電カンチレバー42Bの端部b1と、圧電カンチレバー42Cの端部c1との隣り合う部分が連結され、圧電カンチレバー42Cの端部c0と、圧電カンチレバー42Dの端部d0との隣り合う部分が連結されている。これにより、圧電カンチレバー42A〜42Dは折り返すように連結される。
圧電カンチレバー42A〜42Dは、それぞれ、支持体43A〜43Dと、下部電極44A〜44Dと、圧電体45A〜45Dと、上部電極46A〜46Dとを備えている。前記第1上部電極47は、第1上部電極配線49Dを介して上部電極46Cに接続され、さらに第1上部電極配線49Bを介して上部電極46Aに接続されている。また、前記第2上部電極48は、上部電極46Dに接続され、さらに第2上部電極配線50Cを介して上部電極46Bと接続されている。また、前記共通下部電極51は、下部電極44A〜44Dと接続されている。
そして、第1上部電極47と共通下部電極51との間に電圧を印加することで、上部電極46A,46Cと下部電極44A,44Cとの間にそれぞれ電圧が印加され、圧電アクチュエータ41の先端部側から奇数番目の圧電カンチレバー42A,42Cが駆動される。同様に、第2上部電極48と共通下部電極51との間に電圧を印加することで、上部電極46B,46Dと下部電極44B,44Dとの間にそれぞれ電圧が印加され、圧電アクチュエータ41の先端部側から偶数番目の圧電カンチレバー42B,42Dが駆動される。
支持体43A〜43Dは板状の部材で、シリコン基板を形状加工することにより1枚の支持体43として一体的に形成されている。この支持体43は、その端部43Eが台座52に保持されており、端部43Eから延びた部分が支持体43Dを構成し、支持体43Dから折り返した部分が支持体43Cを構成し、支持体43Cから折り返した部分が支持体43Bを構成し、支持体43Bから折り返した部分が支持体43Aを構成する。これにより、圧電カンチレバー42A〜42Dが機械的に連結されたものとなる。なお、支持体43,台座52の詳細は、第1実施形態の支持体3,台座10と同じである。
共通下部電極51と下部電極44A〜44Dとは、支持体43上に成膜された金属薄膜(下部電極層)を半導体プレーナプロセスを用いて形状加工することにより形成されている。下部電極層の詳細は第1実施形態と同じである。共通下部電極51は、支持体43の端部43E上にパッド状に形成され、下部電極44Dと導通している。この下部電極44Dは、支持体43D上のほぼ全面に形成され、下部電極44Cと導通している。この下部電極44Cは、支持体43C上のほぼ全面に形成され、下部電極44Bと導通している。この下部電極44Bは、支持体43B上のほぼ全面に形成され、下部電極44Aと導通している。この下部電極44Aは、支持体43A上のほぼ全面に形成されている。
圧電体45A〜45Dは、下部電極層上に成膜された1層の圧電膜(圧電体層)を半導体プレーナプロセスを用いて形状加工することにより、それぞれ、下部電極44A〜44D上に互いに分離して形成されている。圧電体層の詳細は第1実施形態と同じである。
第1,第2上部電極47,48と、第1,第2上部電極配線49B,49D,50Cと、上部電極46A〜46Dとは、圧電体層上に成膜された金属薄膜(上部電極層)を半導体プレーナプロセスを用いて形状加工することにより形成されている。上部電極層の詳細は第1実施形態と同じである。
第1上部電極47は、支持体43の端部43E上にパッド状に形成され、第1上部電極配線49Dと導通している。この第1上部配線49Dは、支持体43D上に線状に形成され、上部電極46Cと導通している。この上部電極46Cは、支持体43C上のほぼ全面に形成され、第1上部電極配線49Bと導通している。この第1上部電極配線49Bは、支持体43B上に線状に形成され、上部電極46Aと導通している。この上部電極46Aは、支持体43A上のほぼ全面に形成されている。
同様に、第2上部電極48は、支持体43の端部43E上にパッド状に形成され、上部電極46Dと導通している。この上部電極46Dは、支持体43D上のほぼ全面に形成され、第2上部電極配線50Cと導通している。この第2上部電極配線50Cは、支持体43C上に線状に形成され、上部電極46Bと導通している。この上部電極46Bは、支持体43B上のほぼ全面に形成されている。
なお、第1,第2上部電極47,48は、支持体43の端部43C上で、その下層の圧電体層及び下部電極層と共に形状加工されて、互いに分離して設けられていると共に、共通下部電極51と分離して設けられている。
このとき、第1実施形態について図2で説明したように、支持体43D上で、第1上部電極配線49D及びその下層の圧電体が、上部電極46D及び圧電体45Dと分離して設けられている。これにより、第1上部電極配線49Dは、上部電極46Dと平面的に分離されると共に、その下層の圧電体により下部電極44Dとの間で絶縁されている。
同様に、支持体43C上で、第2上部電極配線50C及びその下層の圧電体が、上部電極46C及び圧電体45Cと分離して設けられている。これにより、第2上部電極配線50Cは、上部電極46Cと平面的に分離されると共に、その下層の圧電体により下部電極44Cとの間で絶縁されている。
同様に、支持体43B上で、第1上部電極配線49B及びその下層の圧電体が、上部電極46B及び圧電体45Bと分離して設けられている。これにより、第1上部電極配線49Bは、上部電極46Bと平面的に分離されると共に、その下層の圧電体により下部電極44Bとの間で絶縁されている。
このように、第1,第2上部電極47,48は、平面的に互いに分離されると共に、共通下部電極51との間で層間絶縁されている。従って、第1,第2上部電極47,48により、奇数番目の圧電カンチレバー42A,42Cと、偶数番目の圧電カンチレバー42B,42Dとに独立に駆動電圧を印加することができる。
次に、本実施形態の圧電アクチュエータ41の作動について説明する。まず、第1上部電極47と共通下部電極51との間に、所定の第1直流電圧を印加して、奇数番目の圧電カンチレバー42A,42Cを駆動させる。これと共に、第2上部電極48と共通下部電極51との間に、所定の第2直流電圧を印加して、偶数番目の圧電カンチレバー42B,42Dを駆動させる。
このとき、第1,第2直流電圧とは、奇数番目の圧電カンチレバー42A,42Cと偶数番目の圧電カンチレバー42B,42Dとの角度変位が逆方向に発生するように印加する。例えば、圧電アクチュエータ41の先端部を上方向に変位させる場合には、奇数番目の圧電カンチレバー42A,42Cを上方向に変位させ、偶数番目の圧電カンチレバー42B,42Dを下方向に変位させる。圧電アクチュエータ41の先端部を下方向に変位させるには、その逆にする。
図6は、本実施形態の圧電アクチュエータ41の駆動状態を模式的に示した図である。この図では、圧電アクチュエータ41の先端部を上方向に変位させる場合が例示されている。圧電カンチレバー42Dは、台座52と連結した端部d1を支点として、その端部d0に下方向の角度変位が発生している。また、圧電カンチレバー42Cは、圧電カンチレバー42Dの端部d0と連結した端部c0を支点として、その端部c1に上方向の角度変位が発生している。また、圧電カンチレバー42Bは、圧電カンチレバー42Cの端部c1と連結した端部b1を支点として、その端部b0に下方向の角度変位が発生している。また、圧電カンチレバー42Aは、圧電カンチレバー42Bの端部b0と連結した端部a0を支点として、その端部a1に上方向の角度変位が発生している。このように4つの圧電カンチレバー42A〜42Dを変位させることで、その先端部a1では、例えば、図22に示した1つの圧電カンチレバー132Aを備えるアクチュエータ131に比べて、より大きな変位が得られる。よって、圧電アクチュエータ41によれば、大きな出力を得ることが可能となる。
本実施形態によれば、4つの圧電カンチレバーが、各圧電カンチレバーの両端部が隣り合うように並んで配置されて折り返すように連結されると共に、隣り合う圧電カンチレバーを互いに逆方向に屈曲変形するように駆動電圧を印加可能である。これにより、圧電カンチレバーの長さ、ひいては圧電アクチュエータの長さを増大させることなく、また、エアダンピングの影響を増大させることなく、小型の圧電アクチュエータで大きな出力を得ることができる。
なお、本実施形態では、4つの圧電カンチレバーを連結するものとしたが、連結する圧電カンチレバーの数は任意に変更可能である。
[第4実施形態]
第4実施形態の圧電アクチュエータは、第3実施形態の圧電アクチュエータにおいて、圧電カンチレバーを駆動するために印加する電圧を交流電圧としたものである。本実施形態の圧電アクチュエータの構成は、第3実施形態と同一であるので、以下の説明では、第3実施形態と同一の参照符号を用いて説明を省略する。
第4実施形態の圧電アクチュエータの作動では、第1上部電極47と共通下部電極51との間に、所定の第1交流電圧を印加して、圧電カンチレバー42A,42Cを駆動させる。また、第2上部電極48と共通下部電極51との間に、所定の第2交流電圧を印加して、圧電カンチレバー42B,42Dを駆動させる。なお、第1交流電圧と第2交流電圧とは、位相を反転したものである。
本実施形態によれば、圧電カンチレバー42A〜42Dの第一次共振点付近の周波数の交流電圧を印加して、圧電アクチュエータ41を共振駆動させることで、印加電圧の大きさに対して、より大きな出力を得ることができる。また、圧電カンチレバー42A〜42Dの第一次共振点より小さい所定周波数以下(例えば、後述する図8に示す駆動特性試験においては約300Hz以下)の交流電圧を印加して、圧電アクチュエータ41を非共振駆動させることで、直流電圧を印加した場合と同様に、印加した電圧の大きさに応じた所定の出力を安定して得ることができる。この第一次共振点より小さい所定周波数以下の非共振駆動領域においては、任意の駆動周波数・駆動速度において、一定の出力を安定して得ることができる。
次に、図7,図8を参照して本実施形態の圧電アクチュエータ41の駆動特性の試験について説明する。なお、圧電アクチュエータ41は、後述の第6実施形態の製造方法により製造した。
試験条件としては、第1上部電極47と共通下部電極51との間に、0〜+30[V]の交流電圧Aを印加すると共に、第2上部電極48と共通下部電極51との間に、+30〜0[V]の交流電圧Bを印加した。印加した交流電圧A,Bを図7のグラフに示す。図7のグラフにおいて、横軸は時間であり、縦軸は印加電圧である。図7に示すように、交流電圧Aと交流電圧Bとは位相を反転したものである。
図8のグラフに、試験結果として、駆動時の圧電アクチュエータ41の先端部a1の変位量を示す。図8のグラフにおいて、横軸は、印加した交流電圧A,Bの周波数(駆動周波数)であり、縦軸は、非共振駆動時における先端部aの変位量を1としたときの相対値である。第一次共振点は、約700Hzに存在しており、その変位量は非共振駆動時の10倍以上となる。また、約500Hzまでは、駆動周波数によらずにほぼ一定の変位量が得られる。
なお、本実施形態では、第3実施形態の圧電アクチュエータの駆動電圧を交流電圧としたが、後述の第5,第7,第8実施形態の圧電アクチュエータの駆動電圧を交流電圧としても同様の駆動特性を得ることができる。
[第5実施形態]
図9に示す第5実施形態の圧電アクチュエータ61は、第3実施形態と同様に、4つの圧電カンチレバー62A〜62Dが連結されたものである。図9には、圧電アクチュエータ61の圧電カンチレバー62A〜62Dの部分が示されている。また、図10には、図9の領域IIの拡大図が示されている。圧電アクチュエータ61は、第3実施形態の圧電アクチュエータ41と基本的な構成は同じで、4つの圧電カンチレバー42A〜42Dの支持体43A〜43Dに係る構成が若干異なるものである。以下の説明では、第3実施形態と同一の構成については第3実施形態と同一の参照符号を用いて説明を省略する。
本実施形態の圧電アクチュエータ61において、4つの圧電カンチレバー62A〜62Dの支持体43A〜43Dは、それぞれ、直線部64A〜64Dとその両端の連結部65A〜65D,66A〜66Dとから構成されている。隣り合う圧電カンチレバーの連結部66A,66Bと、連結部65B,65Cと、連結部66C,66Dとは、それぞれ、U字状に連結されている。また、圧電カンチレバー62Dの連結部65Dが、台座53上の支持体43の基端部43Eに連結されて保持されている。
4つの圧電カンチレバー62A〜62Dの下部電極44A〜44Dは、それぞれ、圧電カンチレバー62A〜62Dの支持体(直線部と連結部とを合わせた全体)64A〜66A,64B〜66B,64C〜66C,64D〜66D上のほぼ全面に形成されている。また、圧電カンチレバー62A〜62Dの圧電体45A〜45Dと上部電極46A〜46Dとは、圧電カンチレバー62A〜62Dの支持体のうちの直線部64A〜64D上のほぼ全面に形成されている。また、圧電アクチュエータ61の第1上部電極配線67a,67bと、第2上部電極配線68a,68bとは、直線部64B〜64D上と連結部65B〜65D,66A〜66D上の側部に形成されている。
第1上部電極配線67b及びその下層の圧電体は、第1実施形態について図2で説明したように、圧電カンチレバー62Dの直線部64D上で、圧電カンチレバー62Dの上部電極46D及び圧電体45Dと分離して設けられている。これにより、第1上部電極配線67bは、上部電極46Dと平面的に分離されると共に、その下層の圧電体により下部電極44Dとの間で絶縁されている。
同様に、第1,第2上部電極配線67a,68a及びその下層の圧電体は、圧電カンチレバー62B,62Cの直線部64B,64C上で、それぞれ、圧電カンチレバー62B,62Cの上部電極46B,46C及び圧電体45B,45Cと分離して設けられている。さらに、連結部65B〜65D,66A〜66D上では、第1上部電極配線67a,67b及びその下層の圧電体と、第2上部電極配線68a,68b及びその下層の圧電体とが、分離して設けられている。
このように、圧電アクチュエータ61の第1,第2上部電極47,48は、平面的に互いに分離されると共に、共通下部電極51との間で層間絶縁されている。従って、第1,第2上部電極47,48により、圧電カンチレバー62A〜62Dに独立に駆動電圧を印加することができる。他の構成及び作動は、第3実施形態と同じである。
本実施形態によれば、第3実施形態の圧電アクチュエータ41と同様に、小型で且つ大きな出力を得ることができる。
[第6実施形態]
図11には、第6実施形態の圧電アクチュエータの製造方法を示す。この製造方法では、第3実施形態の圧電アクチュエータ41が製造される。なお、図11(a)〜(g)は、図5の圧電アクチュエータ41の断面を模式的に示している。
図11(a)に示すように、支持体43を形成する基板としては、SOI基板81を用いている。SOI基板81は、単結晶シリコン(活性層81a、又はSOI層ともいう)/酸化シリコン(中間酸化膜層81b)/単結晶シリコン(ハンドリング層81c)の張り合わせ基板である。SOI基板の各層の厚みは、例えば、活性層81aの厚みは5〜100μm、中間酸化膜層81bの厚みは0.5〜2μm、ハンドリング層81cの厚みは100〜600μmである。また、活性層81aの表面は光学研磨処理が施されている。
まず、図11(b)に示すように、SOI基板81の表面(活性層81a側)及び裏面(ハンドリング層81c側)に熱酸化炉(拡散炉)によって熱酸化シリコン膜82a,82bを形成する(熱酸化膜形成ステップ)。熱酸化シリコン膜82a,82bの厚みは、例えば0.1〜1μmとする。
次に、図11(c)に示すように、SOI基板81の表面に、下部電極層83、圧電体層84、上部電極層85を順次形成する。
まず、下部電極層形成ステップで、SOI基板81の活性層81a側の熱酸化シリコン膜82a上に、2層の金属薄膜からなる下部電極層83を形成する。下部電極層83の材料としては、1層目(下層)の金属薄膜にはチタンを用い、2層目(上層)の金属薄膜には白金を用いる。各金属薄膜は、例えば、スパッタ法、電子ビーム蒸着法等により成膜する。各金属薄膜の厚みは、例えば1層目のチタンは30〜100nm、2層目の白金は100nm〜300nm程度とする。
次に、圧電体層形成ステップで、下部電極層83上に、1層の圧電膜からなる圧電体層84を形成する。圧電体層84の材料としては、圧電材料であるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を用いる。また、圧電膜の厚みは、例えば1〜10μm程度とする。圧電膜は、例えば、反応性アーク放電を利用したイオンプレーティング法により成膜する。反応性アーク放電を利用したイオンプレーティング法については、具体的には、本願出願人による特開2001−234331号公報、特開2002−177765号公報、特開2003−81694号公報に記載された手法を用いる。
このアーク放電プラズマを利用した反応性イオンプレーティング法は、プラズマガンで真空容器内に発生させた高密度酸素プラズマ中で原料金属を加熱蒸発させ、真空容器内或いは半導体基板上において各金属蒸気と酸素とが反応することにより、半導体基板上に圧電膜を形成するものである。この方法を用いることにより、比較的低い成膜温度においても高速に圧電膜を形成できる。特に、アーク放電反応性イオンプレーティング法による圧電膜を形成する際に、その下地として、例えば化学溶液堆積法(CSD(Chemical Solution Deposition)法)によりシード層を形成することで、より優れた圧電特性を有する圧電膜を形成することができる。
なお、圧電膜は、例えばスパッタ法、ゾルゲル法等により成膜してもよい。ただし、反応性アーク放電を利用したイオンプレーティング法を用いることにより、バルクの圧電体と同等の圧電特性を有する厚みのある膜を成膜することができる。
次に、上部電極層形成ステップで、圧電体層84上に、1層の金属薄膜からなる上部電極層85を形成する。上部電極層85の材料としては、白金又は金を用いる。金属薄膜は、例えば、スパッタ法、電子ビーム蒸着法等により成膜する。金属薄膜の厚みは、例えば10nm〜200nm程度とする。
次に、図11(d)に示すように、形状加工ステップで、上部電極層85、圧電体層84、下部電極層83の形状を加工して、圧電カンチレバー42A〜42Dの上部電極45A〜45D、圧電体44A〜44D、下部電極43A〜43Dを形成する。具体的には、まず、上部電極層85上にフォトリソグラフ技術を用いてレジスト材料をパターニングする。次に、パターニングしたレジスト材料をマスクとして、上部電極層85及び圧電体層84に対して、RIE(Reactive Ion Etching)装置を用いて、ドライエッチングを行う。これにより、第1,第2上部電極47,48と、上部電極46A〜46Dと圧電体45A〜45Dとが形成される。また、このとき、第1,第2上部電極配線49B,49d,50Cも形成される。
同様に、下部電極層83上にフォトリソグラフ技術を用いてレジスト材料をパターニングする。次に、パターニングしたレジスト材料をマスクとして、下部電極層83に対して、RIE装置を用いて、ドライエッチングを行う。これにより、共通下部電極51と下部電極44A〜44Dとが形成される。なお、電圧を印加するための共通下部電極51の電極パッドは、図11(d)に示した下部電極層83が露出した端部e1のように形成され、電圧を印加するための第1,第2上部電極47,48の電極パッドは、上部電極層85が露出した部分の端部e2のように形成される。
次に、図11(e)〜(g)に示すように、支持体形成ステップで、支持体43及び台座52が形成される。まず、図11(e)に示すように、活性層81a側の熱酸化シリコン膜82aと活性層81a(単結晶シリコン)の形状を加工する。まず、フォトリソグラフ技術を用いてレジスト材料をパターニングし、このパターニングしたレジスト材料をマスクとして、活性層81a側の熱酸化シリコン膜82aについて、RIE装置を用いてドライエッチングを行う。次に、同じマスクで、Deep−RIE装置を用いて、活性層81aのシリコンを加工する。Deep−RIE装置は、マイクロマシニング技術で使用されるドライエッチング装置であり、シリコンを垂直に深く掘ることが可能な装置である。
次に、図11(f)に示すように、ハンドリング層81cの形状を加工する。まず、SOI基板81の裏面にフォトリソグラフ技術を用いてレジスト材料をパターニングし、このパターニングしたレジスト材料をマスクとして、ハンドリング層81c側の熱酸化シリコン膜82bについて、RIE装置を用いてドライエッチングを行う。次に、同じマスクを用いて、Deep−RIE装置を用いて、ハンドリング層81cのシリコンを加工する。これにより、圧電アクチュエータ41の可動部の裏側を深く掘り下げ中空状態にすることで、圧電アクチュエータ41の可動部(圧電カンチレバー42A〜42Dの部分)の上下方向の駆動を可能にする。
次に、図11(g)に示すように、SOI基板81の中間酸化膜層81bを除去する。具体的には、図11(e)と同じマスクを用いて、SOI基板の裏側から中間酸化膜層81bをRIE装置を用いてドライエッチングする。これにより、圧電アクチュエータ61の可動部を周囲のSOI基板81から切り離すことで、圧電カンチレバー42A〜42Dを駆動可能にする。
以上の工程により、圧電アクチュエータ41が製造される。
この製造方法によれば、圧電アクチュエータ41を半導体プレーナプロセス及びMEMSプロセスを用いて一体的に形成することができるので、製造が容易であり、歩留まりの向上や量産が可能となる。さらに、圧電アクチュエータ41をデバイスに組み込む場合に、デバイス全体として半導体プレーナプロセス及びMEMSプロセスを用いて一体的に形成することが可能となるので、圧電アクチュエータ41を他のデバイスに組み込むことが容易となる。
なお、本実施形態の製造方法では、第3実施形態の圧電アクチュエータ41を製造するものとしたが、第1,第2,第4,第5実施形態の圧電アクチュエータを製造する際にも用いることができる。
[第7実施形態]
図12に示す第7実施形態の圧電アクチュエータ71は、第5実施形態の圧電アクチュエータ61において、上部電極層と下部電極層との間で絶縁するための層間絶縁膜を備えたものである。図12には、圧電アクチュエータ71の圧電カンチレバー72A〜72Dの上面図が示されている。また、図13には、図12の圧電アクチュエータ71の斜視図が示されている。この図では、説明のために層間絶縁膜73及び第1,第2上部電極配線76a,76b,77a,77bを分離して図示しているが、実際には、支持体43上に順次重ねられている。なお、以下の説明では、第5実施形態と同一の構成については、第5実施形態と同一の参照符号を用いて説明を省略する。
本実施形態の圧電アクチュエータ71では、第1,第2上部電極47,48と上部電極46A〜46Dのみが、上部電極層を形状加工して形成されている。上部電極層上には、層間絶縁膜73が形成されている。層間絶縁膜73は、上部電極層上に成膜された絶縁膜を半導体プレーナプロセスにより形状加工することにより形成されている。層間絶縁膜73の材料としては、シリコン窒化膜又はシリコン酸化膜を用いる。なお、層間絶縁膜73の材料としては、他の無機絶縁材料、或いはポリイミド等の有機絶縁材料を用いてもよい。
層間絶縁膜73は、支持体43上の全面に、下部電極44A〜44D、圧電体45A〜45D、上部電極46A〜46Dを覆うように形成されている。また、層間絶縁膜73には、第1上部電極配線用の第1開口部74a〜74cと、第2上部電極配線用の第2開口部75a〜75cとが形成されている。なお、図示は省略するが、層間絶縁膜73は、支持体43A〜43Dの端部43E上で、第1,第2上部電極47,48と共通下部電極51のパッド上に開口部が形成されている。
さらに、層間絶縁膜73上に、第1上部電極配線76a,76b、第2上部電極配線77a,77bが形成されている。第1,第2上部電極配線76a,76b,77a,77bは、絶縁膜上に成膜された金属薄膜からなる電極配線層を半導体プレーナプロセスにより形状加工することにより形成されている。電極配線層の材料としては、配線用の電極パターンの材料としては、金、白金、アルミ等を用いる。
第1上部電極配線76aは、その一端が支持体43A上の第1開口部74aを覆うように形成されて上部電極46Aと導通し、支持体43B上を通り支持体43C上まで配線されている。そして、第1上部電極配線76aは、その他端が支持体43C上の第1開口部74bを覆うように形成されて、上部電極46Cと導通している。
また、第1上部電極配線76bは、その一端が第1開口部74cを覆うように形成されて上部電極46Cと導通している。そして、第1上部電極配線76bは、支持体43D上を通り、図示は省略するが、支持体43E上まで配線されて、その他端が第1上部電極47上に設けられて導通している。
また、第2上部電極配線77aは、その一端が支持体43B上の第2開口部75aを覆うように形成されて上部電極46Cと導通し、支持体63C上を通り支持体43D上まで配線されている。そして、第2上部電極配線77aは、その他端が支持体43D上の第2開口部75bを覆うように形成されて、上部電極46Dと導通している。
また、第2上部電極配線77bは、その一端が支持体43D上の第2開口部75cを覆うように形成されて上部電極46Dと導通している。そして、第3上部電極配線77bは、図示は省略するが、支持体43E上まで配線されて、その他端が第2上部電極48上に設けられ導通している。
図14は、図12の圧電アクチュエータ71のIII−III線断面図である。図14に示すように、支持体43D上の下部電極44D、圧電体45D、上部電極46Dを覆うように層間絶縁膜73が形成されている。第2上部電極配線77bは、第2開口部75cを覆うように形成されて、第2上部電極配線77bと上部電極46Dとが導通している。一方、第1上部電極配線76bは、層間絶縁膜73の上に形成されるので、上部電極46Dと分離されると共に、下部電極44Dとの間で絶縁されている。このように層間絶縁膜73を設けることで、第1実施形態について図2で示したように第1上部電極配線76bをその下層の圧電体と共に形状加工して分離する必要がなくなる。よって、本実施形態では、支持体63D上のほぼ全面に形成された圧電体45Dが、第1上部電極配線76bの下層の部分も含めて、圧電カンチレバー62Dの屈曲変形を発生させるために用いられる。
本実施形態によれば、第5実施形態と同様に、4つの圧電カンチレバーが、各圧電カンチレバーの両端部が隣り合うように並んで配置されて折り返すように連結されると共に、隣り合う圧電カンチレバーを互いに逆方向に屈曲変形するように駆動電圧を印加可能である。これにより、圧電カンチレバーの長さ、ひいては圧電アクチュエータの長さを増大させることなく、また、エアダンピングの影響を増大させることなく、小型の圧電アクチュエータで大きな出力を得ることができる。
さらに、本実施形態では、上部電極配線が層間絶縁膜上に設けられているので、上部電極配線の下の圧電体層を分離して層間絶縁する必要がない。従って、支持体上の圧電膜全体を圧電カンチレバーの屈曲変形を発生させる圧電体として用いることができる。すなわち、支持体上の圧電体の面積占有率をより高くすることができるため、より小型の圧電アクチュエータで大きな出力を得ることができる。
また前記第5実施形態においては、層間絶縁するために分離された圧電体層の部分が、圧電カンチレバーの屈曲変形に影響を与え、場合によっては圧電カンチレバーの屈曲変形を妨げる可能性があるが、本実施形態においては、当該部分を形成する必要がないため、圧電アクチュエータの駆動特性を向上することができる。さらに、圧電アクチュエータを層間絶縁膜で覆うことにより、湿度等の外部環境への耐性を向上することができる。
[第8実施形態]
図15に示す第8実施形態の圧電アクチュエータ70は、第3実施形態の圧電アクチュエータ41において、第7実施形態の圧電アクチュエータ71と同様に、上部電極層と下部電極層との間で絶縁するための層間絶縁膜を備えたものである。図15には、圧電アクチュエータ70の上面図が示されている。なお、以下の説明では、第3,第7実施形態と同一の構成については、第3,第7実施形態と同一の参照符号を用いて説明を省略する。
本実施形態の圧電アクチュエータ70では、第7実施形態と同様に、第1,第2上部電極47,48と上部電極46A〜46Dのみが、上部電極層を形状加工して形成されている。上部電極層上には、層間絶縁膜73が形成されている。層間絶縁膜73は、支持体43上の全面に、下部電極44A〜44D、圧電体45A〜45D、上部電極46A〜46Dを覆うように形成されている。さらに、層間絶縁膜73上に、第1,第2上部電極配線76a,76b,77a,77bが形成されている。なお、層間絶縁膜73と、第1,第2上部電極配線76a,76b,77a,77bとの詳細は第7実施形態と同様である。
第1上部電極配線76aは、その一端が支持体43A上の第1開口部74aを覆うように形成されて上部電極46Aと導通し、支持体43B上を通り支持体43C上まで配線されている。そして、第1上部電極配線76aは、その他端が支持体43C上の第1開口部74bを覆うように形成されて、上部電極46Cと導通している。
また、第1上部電極配線76bは、その一端が第1開口部74cを覆うように形成されて上部電極46Cと導通している。そして、第1上部電極配線76bは、支持体43D上を通り、支持体43E上まで配線されて、その他端が第1上部電極47上に設けられて導通している。
また、第2上部電極配線77aは、その一端が支持体43B上の第2開口部75aを覆うように形成されて上部電極46Cと導通し、支持体43C上を通り支持体43D上まで配線されている。そして、第2上部電極配線77aは、その他端が支持体43D上の第2開口部75bを覆うように形成されて、上部電極46Dと導通している。
また、第2上部電極配線77bは、その一端が支持体43D上の第2開口部75cを覆うように形成されて上部電極46Dと導通している。そして、第3上部電極配線77bは、支持体43E上まで配線されて、その他端が第2上部電極48上に設けられ導通している。他の構成及び作動は、第3実施形態と同様である。
本実施形態によれば、第3実施形態の圧電アクチュエータと同様に、小型で且つ大きな出力を得ることができる。
さらに、本実施形態では、第7実施形態と同様に、上部電極配線が層間絶縁膜上に設けられているので、上部電極配線の下の圧電体層を分離して層間絶縁する必要がない。従って、支持体上の圧電体の面積占有率をより高くすることができると共に、圧電アクチュエータの駆動特性を向上することができ、より小型の圧電アクチュエータで大きな出力を得ることができる。さらに、圧電アクチュエータを層間絶縁膜で覆うことにより、湿度等の外部環境への耐性を向上することができる。
なお、本実施形態では、第3実施形態の圧電アクチュエータにおいて、層間絶縁膜を備えるものとしたが、他の実施形態として、第1,第2,第4実施形態の圧電アクチュエータにおいて、層間絶縁膜を備えるものとしてもよい。この場合に、例えば、第1実施形態の圧電アクチュエータを使用した光偏向素子では、ミラー面反射膜と上部電極配線との材料を共通にして、電極配線パターン及びミラー面反射膜を同じ金属薄膜から形状加工して形成することができる。
[第9実施形態]
図16,図17に、第9実施形態における製造方法を示す。本実施形態の製造方法により、第8実施形態の圧電アクチュエータ70が製造される。本実施形態の製造方法は、第6実施形態の製造方法において、層間絶縁膜73を形成するステップと、第1,第2上部電極配線76a,76b,77a,77bを形成するステップとを備えたものである。以下の説明では、第6実施形態と同じ処理については、第6実施形態を参照して説明を省略する。なお、図16(a)〜(g)、図17(h)〜(j)は、図15の圧電アクチュエータ70の断面を模式的に示している。
図16(a)に示すように、支持体43を形成する基板としては、第6実施形態と同様のSOI基板81を用いる。まず、図16(b)に示すように、SOI基板81の表面(活性層81a側)及び裏面(ハンドリング層81c側)に熱酸化炉によって熱酸化シリコン膜82a,82bを形成する(熱酸化膜形成ステップ)。次に、図16(c)に示すように、SOI基板81の表面に、下部電極層83、圧電体層84、上部電極層85を順次形成する(下部電極層形成ステップ、圧電体層形成ステップ、上部電極層形成ステップ)。なお、熱酸化膜形成ステップ、下部電極層形成ステップ、圧電体層形成ステップ、上部電極層形成ステップは、第6実施形態の各ステップと同様である。
次に、図16(d)に示すように、上部電極層83、圧電体層84、下部電極層85の形状を加工して、上部電極、圧電体、下部電極を形成する(形状加工ステップ)。形状加工ステップの詳細は、第7実施形態と同様である。これにより、第1,第2上部電極47,48と、上部電極46A〜46Dと圧電体45A〜45Dとが形成される。ただし、このとき、第1,第2上部電極配線76a,76b,77a,77bは形成されない。なお、電圧を印加するための共通下部電極51の電極パッドは、図16(d)に示した下部電極層83が露出した端部e1のように形成され、電圧を印加するための第1,第2上部電極47,48の電極パッドは、上部電極層85が露出した端部e2のように形成される。
次に、図16(e),(f)に示すように、層間絶縁膜形成ステップで、層間絶縁膜73が形成される。まず、図16(e)に示すように、SOI基板81の活性層81a側の全面に、絶縁体の薄膜である絶縁膜86を形成する。絶縁膜86の材料としては、シリコン窒化膜又はシリコン酸化膜を用いる。絶縁膜86は、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いて成膜する。絶縁膜86の厚みは、例えば100〜500nm程度とする。
なお、絶縁膜86の材料としては、ポリイミド等の有機絶縁材料を用いてもよい。この場合には、例えばスピンコーティング法を用いて成膜する。このとき、絶縁膜86の厚みは、例えば0.5〜5μm程度とする。
次に、図16(f)に示すように、全面に成膜した絶縁膜86の形状を加工する。具体的には、まず、絶縁膜86上にフォトリソグラフ技術を用いてレジスト材料をパターニングする。次に、パターニングしたレジスト材料をマスクとして、絶縁膜86に対して、RIE装置を用いてドライエッチングを行う。これにより、各圧電カンチレバーの上部電極上で部分的に開口した層間絶縁膜73が形成される。なお、図16(f)に示した層間絶縁膜73の開口部f1のように、電圧を印加するための共通下部電極51の電極パッド上が開口され、層間絶縁膜73の開口部f2のように、電圧を印加するための第1,第2上部電極47,48の電極パッド上が開口される。また、第1開口部74a,74b,74cと第2開口部75a,75b,75cも開口部f2のように形成される。
次に、電極配線形成ステップで、図16(g)に示すように、上部電極用の電極配線パターンを形成する。まず、SOI基板71の熱酸化膜82a側の全面に、1層の金属薄膜からなる電極配線層87を形成する。電極配線層87の材料としては、例えば金、白金、アルミ等を用いる。また、電極配線層87は、例えばスパッタ法、蒸着法を用いて成膜する。電極配線層87の厚みは、例えば100〜500nm程度とする。
次に、電極配線層87の形状を加工する。具体的には、まず、電極配線層87上にフォトリソグラフ技術を用いてレジスト材料をパターニングする。次に、パターニングしたレジスト材料をマスクとして、電極配線層87に対して、RIE装置を用いてドライエッチングを行う。これにより、図15に示したような、開口部44a,44b,45a,45bで上部電極46A〜46Dと導通すると共に、支持体63E上で第1,第2上部電極47,48と導通する電極配線パターン(上部電極配線)76a,76b,77a,77bが形成される。
次に、図17(h)〜(j)に示すように、SOI基板81を加工して圧電アクチュエータ71の支持体63及び台座52を形成する(支持体形成ステップ)。なお、支持体形成ステップは、第7実施形態のステップと同様である。
以上の工程により、圧電アクチュエータ70が製造される。
本実施形態の製造方法によれば、第6実施形態と同様に、圧電アクチュエータ70を半導体プレーナプロセス及びMEMSプロセスを用いて一体的に形成することができるので、製造が容易であり、歩留まりの向上や量産が可能となる。さらに、圧電アクチュエータ70をデバイスに組み込む場合に、デバイス全体として半導体プレーナプロセス及びMEMSプロセスを用いて一体的に形成することが可能となるので、圧電アクチュエータ71を他のデバイスに組み込むことが容易となる。
なお、本実施形態では、第8実施形態の圧電アクチュエータ(第3実施形態の圧電アクチュエータに層間絶縁膜を備えた圧電アクチュエータ)を製造するものとしたが、本実施形態の製造方法は、第1,第2,第4実施形態の圧電アクチュエータに層間絶縁膜を備えた圧電アクチュエータ、及び第7実施形態の圧電アクチュエータ(第5実施形態の圧電アクチュエータに層間絶縁膜を備えた圧電アクチュエータ)を製造する際にも用いることができる。
[第10実施形態]
図18には、第10実施形態の圧電アクチュエータ91を使用した可変キャパシタを示す。本実施形態の圧電アクチュエータ91は、4つの圧電アクチュエータ92〜95を組み合わせたものである。そして、可変キャパシタは、圧電アクチュエータ91の4つの圧電アクチュエータ92〜95の先端部にキャパシタ部96が連結されたものである。なお、各圧電アクチュエータ92〜95の基本的な構成は、第5又は第7実施形態と同じであるので、以下では説明を省略する。
本実施形態の圧電アクチュエータ91において、4つの圧電アクチュエータ92〜95は、同一平面上に配置され、矩形形状の導体支持部97の4隅にその先端部92a1〜95a1がそれぞれ連結されている。
一方の1対の圧電アクチュエータ92,93は、導体支持部97の一方の側で対向して設けられている。また、他方の1対の圧電アクチュエータ94,95は、導体支持部97の他方の側で対向して設けられている。さらに、これらの一方の1対の圧電アクチュエータ92,93と他方の1対の圧電アクチュエータ94,94とは、導体支持部97を挟んで対向して設けられている。
また、一方の1対の圧電アクチュエータ92,93は、その基端部92d1,93d2が、導体支持部97の一方の側に設けられた台座105A上に保持された支持体基端部104Aの隣り合う2隅に連結されて支持されている。また、他方の1対の圧電アクチュエータ94,95は、その基端部94d1,95d1が、導体支持部97の他方の側に設けられた台座105B上に保持された支持体基端部104Bの隣り合う2隅に連結されて支持されている。
4つの圧電アクチュエータ92〜95は、それぞれ4つの圧電カンチレバー92A〜92D,93A〜93D,94A〜94D,95A〜95Dを備えている。また、圧電アクチュエータ92〜95は、それぞれ、圧電カンチレバー92A〜92D,93A〜93D,94A〜94D,95A〜95Dの支持体として一体的に形成された支持体100〜103を備えている。
なお、導体保持部97、支持体100〜103,104A,104Bは、シリコン基板を形状加工することにより1枚の支持体として一体的に形成されている。これにより、導体保持部97は、4つの圧電アクチュエータ92〜95と機械的に連結され、圧電アクチュエータ92〜95の駆動に応じて変位するものとなる。さらに、台座105A,105Bも、シリコン基板を形状加工することにより、前記1枚の支持体と一体的に形成されている。
また、一方の台座105A上には、圧電アクチュエータ92,93に駆動電圧を印加するための電極セット109Aが設けられている。この電極セット109Aは、圧電カンチレバー92A,92C,93A,93Cに駆動電圧を印加するための第1上部電極106Aと、圧電カンチレバー92B,92D,93B,93Dに駆動電圧を印加するための第2上部電極107Aと、第1,第2上部電極106A,107Aの共通の下部電極として用いられる共通下部電極108Aとを備えている。
同様に、他方の台座105B上には、他方の1対の圧電アクチュエータ94,95に駆動電圧を印加するための電極セット109Bが設けられている。この電極セット109Bは、圧電カンチレバー94A,94C,95A,95Cに駆動電圧を印加するための第1上部電極106Bと、圧電カンチレバー94B,94D,95B,95Dに駆動電圧を印加するための第2上部電極107Bと、第1,第2上部電極106B,107Bの共通の下部電極として用いられる共通下部電極108Bとを備えている。
なお、図示は省略するが、第1,第2上部電極106A,106B,107A,107Bは、第5又は第7実施形態と同様に、第1、第2上部電極配線を介して、圧電カンチレバー92A〜92D,93A〜93D,94A〜94D,95A〜95Dの所定の上部電極と接続されている。
キャパシタ部96は、導体保持部97の下面に保持された板状の上側導体98と、上側導体98と所定の間隔を隔てて対向して設けられた板状の下側導体99とで構成される。上側導体98と下側導体99と間の間隔を変化させることにより、可変キャパシタの容量が可変となる。
次に、本実施形態の圧電アクチュエータ91を使用した可変キャパシタの作動について説明する。図19は、可変キャパシタの駆動状態を模式的に示した図である。この図では、可変キャパシタの上側導体98を上下方向に駆動する場合が例示されている。まず、第1上部電極106A,106Bと共通下部電極108A,108Bとの間に、所定の第1直流電圧を印加すると共に、第2上部電極107A,107Bと共通下部電極108A,108Bとの間に、第1直流電圧と逆極性の所定の第2直流電圧を印加する。これにより、圧電アクチュエータ92〜95が駆動され、印加電圧に応じて、先端部92a1〜95a1で所定の同じ方向(例えば上方向)に変位が発生する。同様に、第1,第2直流電圧と逆極性の電圧をそれぞれ印加することで、圧電アクチュエータ92〜95が駆動され、印加電圧に応じて、先端部92a1〜95a1で所定の同じ方向(例えば下方向)に変位が発生する。
この変位によって、導体保持部97及び上側導体98が上下方向に平行移動する。よって、図19で点線で示したように、上側導体98を上下方向に平行移動させて上側導体98と下側導体99との間隔を変更し、可変キャパシタの容量を制御する。このとき、圧電カンチレバー92A〜92D,93A〜93D,94A〜94D,95A〜95Dの圧電体は電荷を蓄積・保持することができるので、4つの圧電アクチュエータ92〜95の先端部92a1〜95a1で発生する変位を保持することができる。よって、電圧を印加して所定の容量を得た後、この電圧の印加を停止しても、この容量を保持することができる。
本実施形態によれば、圧電アクチュエータ92〜95で大きな出力が得られるので、上側導体98と下側導体99との間隔の可変な範囲が大きく、広い範囲で容量を制御することができる。
なお、上述の可変キャパシタでは、上側導体98を圧電アクチュエータ91に接続して駆動するものとしたが、下側導体99を圧電アクチュエータ91に接続して駆動するものとしてもよい。さらに、他の実施形態として、上側導体98と下側導体99とをそれぞれ異なる圧電アクチュエータに接続して、両方を駆動するものとしてもよい。
また、本実施形態では、第5又は第7実施形態と同様の圧電アクチュエータを4つ組み合わせて使用するものとしたが、第3又は第8実施形態の圧電アクチュエータを4つ組み合わせて使用するものとしてもよい。
[第11実施形態]
図20には、第11実施形態の圧電アクチュエータ111を使用した光偏向素子123を示す。本実施形態の圧電アクチュエータ111は、2つの圧電アクチュエータ112,113を組み合わせた2軸駆動型の圧電アクチュエータである。そして、光偏向素子123は、この2軸駆動型の圧電アクチュエータ111の先端部にミラー部115が連結された2次元光偏向素子である。なお、各圧電アクチュエータ112,113の基本的な構成は、第5又は第7実施形態と同じであるので、以下では説明を省略する。
本実施形態の圧電アクチュエータ111において、2つの圧電アクチュエータ112,113は、同一平面上に配置されており、一方の圧電アクチュエータ112は、その基端部112d1が、他方の圧電アクチュエータ113の先端部113a1に、出力方向が互いに直交するように連結されている。また、2軸駆動型の圧電アクチュエータ114は、これらの圧電アクチュエータ112,113にそれぞれ駆動電圧を印加するための電極セット116,117を備えている。
圧電アクチュエータ112,113は、それぞれ、圧電カンチレバー112A〜112D,113A〜113Dを備えている。また、圧電アクチュエータ112,113は、それぞれ、圧電カンチレバー112A〜112D,113A〜113Dの支持体として一体的に形成された支持体118,119を備えている。これらの支持体118,119は、シリコン基板を形状加工することにより、1枚の支持体120として一体的に形成されている。支持体120は、その基端部121が台座122上に保持され、基端部121から伸びた部分が、他方の圧電アクチュエータ113の支持体119を構成し、この支持体119から延びた部分が、一方の圧電アクチュエータ112の支持体118を構成する。これにより、2つの圧電アクチュエータ112,113が機械的に連結されたものとなる。なお、台座122もシリコン基板から形成され、支持体120と一体的に形成されている。
一方の圧電アクチュエータ112の電極セット116は、先端部側から奇数番目の圧電カンチレバー112A,112Cに駆動電圧を印加するための第1上部電極116aと、先端部側から偶数番目の圧電カンチレバー112B,112Dに駆動電圧を印加するための第2上部電極116bと、第1,第2上部電極116a,116bの共通の下部電極として用いられる共通下部電極116cとを備えている。同様に、他方の圧電アクチュエータ113の電極セット117は、先端部側から奇数番目の圧電カンチレバー113A,113Cに駆動電圧を印加するための第1上部電極117aと、先端部側から偶数番目の圧電カンチレバー113B,113Dに駆動電圧を印加するための第2上部電極117bと、第1,第2上部電極117a,117bの共通の下部電極として用いられる共通下部電極117cとを備えている。
電極セット116,117の各電極116a、116b、116c,117a,117b,117cは、それぞれ、支持体120の端部121上にパッド状に形成されている。なお、図示は省略するが、第1,第2上部電極116a,116b,117a,117b,は、第6実施形態と同様に、第1、第2上部電極配線を介して圧電カンチレバー112A〜112D,113A〜113Dの所定の上部電極と接続されている。
光偏向素子123において、ミラー部124は矩形形状で、その一辺が圧電アクチュエータ111の先端部(一方の圧電アクチュエータ112の先端部112a1)に連結されている。ミラー部124は、ミラー部支持体125と、ミラー部支持体125上に形成されたミラー面反射膜126とを備えている。なお、ミラー面反射膜126の詳細は、第1実施形態の圧電アクチュエータ1を使用した光偏向素子11のミラー面反射膜14と同じである。また、ミラー部支持体125は、前記光偏向素子11のミラー部支持体13と同様に、シリコン基板から形成され、圧電アクチュエータ111の支持体120と一体的に形成されている。これにより、ミラー部124は、圧電アクチュエータ111と機械的に連結され、圧電アクチュエータ111の駆動に応じて回動する。
次に、本実施形態の圧電アクチュエータ111及び光偏向素子123の作動を説明する。まず、第1上部電極116aと共通下部電極116cとの間に、所定の第1直流電圧を印加すると共に、第2上部電極116bと共通下部電極116cとの間に、第1直流電圧と逆極性の所定の第2直流電圧を印加する。これにより、圧電アクチュエータ112の基端部112d1を支点として、圧電アクチュエータ112の先端部112a1で角度変位αが発生する。
これと共に、第1上部電極117aと共通下部電極117cとの間に、所定の第3直流電圧を印加すると共に、第2上部電極117bと共通下部電極117cとの間に、第3直流電圧と逆極性の所定の第4直流電圧を印加する。これにより、圧電アクチュエータ113の基端部113d1を支点として、圧電アクチュエータ113の先端部113a1で角度変位βが発生する。
これにより、圧電アクチュエータ111全体として、その先端部に、2つの角度成分を有する変位(α+β)が発生する。この変位に応じてミラー部124が回転してレーザ光等の光ビームを偏向する。このとき、圧電アクチュエータ112,113は独立に駆動電極を有しているため、角度変位αと角度変位βとを独立に制御することができ、ミラー部124を2軸駆動することが可能となる。また、圧電カンチレバー112A〜112D,113A〜113Dの圧電体は電荷を蓄積・保持することができるので、圧電アクチュエータ111,112はそれぞれ、変位α,βを保持することができる。よって、電圧を印加して所定の偏向角を得た後、この電圧の印加を停止しても、ミラー部124の偏向角を保持することができる。
本実施形態によれば、小型で大きな出力を得ることができる2つの圧電アクチュエータが、出力方向が直交するように連結されていると共に、各圧電アクチュエータに独立に駆動電圧が印加可能である。よって、小型で大きな出力を得ることができる2軸駆動型の圧電アクチュエータとなっている。そして、上述の光偏向素子123では、本実施形態の圧電アクチュエータの先端部にミラー部を連結することで、小型で大きな偏向角を得ることができる。
なお、本実施形態では、2つの圧電アクチュエータを出力方向が直交するように連結するものとしたが、連結する角度は任意に変更可能であり、2つの圧電アクチュエータが異なる出力方向となればよい。
また、本実施形態では、2つの圧電アクチュエータを出力方向が直交するように連結し、その先端部にミラー部を連結して2次元光偏向素子としたが、他の実施形態として、3つ以上の圧電アクチュエータを出力方向が異なるように連結するものとしてもよい。そして、この圧電アクチュエータの先端部にミラー部を連結することで、3軸以上の多軸駆動が可能な、小型で大きな偏向角を得ることができる光偏向素子とすることができる。
また、本実施形態では、第5又は第7実施形態と同様の圧電アクチュエータを2つ組み合わせて使用するものとしたが、第3又は第8実施形態の圧電アクチュエータを2つ組み合わせて使用するものとしてもよい。
1…圧電アクチュエータ、2A,2B…圧電カンチレバー、3,3A,3B…支持体、4A,4B…下部電極、5A,5B…圧電体、6A,6B…上部電極、7A…第1上部電極、7B…第2上部電極、7C…第2上部電極配線、9…共通下部電極、10…台座、
11…光偏向素子、12…ミラー部、13…ミラー面反射膜、14…ミラー部支持体、
21…多接点スイッチ、22…圧電アクチュエータ、23A〜23C…圧電カンチレバー、24,24A〜24C…支持体、25A〜25C…下部電極、26A〜26C…圧電体、27A〜27C…上部電極、28A〜28C…第1〜第3上部電極、28D,28E…第1,第3上部電極配線、30…共通下部電極、31…台座、32A〜32C…第1〜第3接点、
41…圧電アクチュエータ、42A〜42D…圧電カンチレバー、43,43A〜43D…支持体、44A〜44D…下部電極、45A〜45D…圧電体、46A〜46D…上部電極、47…第1上部電極,48…第2上部電極、49B,49D…第1上部電極配線、50C…第2上部電極配線、51…共通下部電極、52…台座、
61…圧電アクチュエータ、62A〜62D…圧電カンチレバー、64A〜64D…直線部、65A〜65D,66A〜66D…連結部、67a,67b…第1上部電極配線、68a,68b…第2上部電極配線、
70…圧電アクチュエータ、71…圧電アクチュエータ、72A〜72D…圧電カンチレバー、73…層間絶縁膜、74a〜74c…第1開口部、75a〜75c…第2開口部、76a,76b…第1上部電極配線、77a,77b…第2上部電極配線、
81…SOI基板、81a…活性層、81b…中間酸化膜層、81c…ハンドリング層、82a,82b…熱酸化シリコン膜、83…下部電極層、84…圧電体層、85…上部電極層、86…絶縁膜、87…電極配線層、
91…圧電アクチュエータ、92〜95…圧電アクチュエータ、92A〜92D,93A〜93D,94A〜94D,95A〜95D…圧電カンチレバー、96…キャパシタ部、97…導体保持部、98…上側導体、99…下側導体、100〜103,104A,104B…支持体、105A,105B…台座、106A,106B…第1上部電極、107A,107B…第2上部電極、108A,108B…共通下部電極、109A,109B…電極セット、
111…圧電アクチュエータ、112,113…圧電アクチュエータ、112A〜112D,113A〜113D…圧電カンチレバー、116,117…電極セット、116a,117a…第1上部電極、116b,117b…第2上部電極、116c,117c…共通下部電極、118〜121…支持体、122…台座、
123…光偏向素子、124…ミラー部、125…ミラー部支持体、126…ミラー面反射膜、
131…圧電アクチュエータ、132A…圧電カンチレバー、133,133A…支持体、134,134A…下部電極、135A…圧電体、136,136A…上部電極、137…台座。