JP2008030005A - 電気脱イオン装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】被処理水中に硬度成分が含まれていても、スケールを発生させることなく、長期間安定に運転することができる電気脱イオン装置を提供する。
【解決手段】陰極12と陽極11との間に、複数のアニオン交換膜13とカチオン交換膜14とを交互に配列して濃縮室15と脱塩室16とを交互に形成してなる電気脱イオン装置において、濃縮室15にバイポーラ膜20を設けて濃縮室15内を陰極側区画室15Aと陽極側区画室15Bに区画し、この濃縮室15内にアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の混合樹脂を充填する。陰極側区画室15Aに充填される混合樹脂は、上部でアニオン交換樹脂の混合比率が高く、下部でカチオン交換樹脂の混合比率が高くなるように充填されている。また、陽極側区画室15Bの混合樹脂は、上部でカチオン交換樹脂の混合比率が高く、下部でアニオン交換樹脂の混合比率が高くなるように充填されている。
【選択図】図1
【解決手段】陰極12と陽極11との間に、複数のアニオン交換膜13とカチオン交換膜14とを交互に配列して濃縮室15と脱塩室16とを交互に形成してなる電気脱イオン装置において、濃縮室15にバイポーラ膜20を設けて濃縮室15内を陰極側区画室15Aと陽極側区画室15Bに区画し、この濃縮室15内にアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の混合樹脂を充填する。陰極側区画室15Aに充填される混合樹脂は、上部でアニオン交換樹脂の混合比率が高く、下部でカチオン交換樹脂の混合比率が高くなるように充填されている。また、陽極側区画室15Bの混合樹脂は、上部でカチオン交換樹脂の混合比率が高く、下部でアニオン交換樹脂の混合比率が高くなるように充填されている。
【選択図】図1
Description
本発明は、陰極と陽極との間に、複数のアニオン交換膜とカチオン交換膜とを交互に配列して濃縮室と脱塩室とを交互に形成してなる電気脱イオン装置に係り、特に、濃縮室の構成を改良することにより、濃縮室内でのスケールの発生を防止して長期間安定的にかつ効率良く運転可能な電気脱イオン装置に関する。
従来、半導体製造工場、液晶製造工場、製薬工業、食品工業、電力工業等の各種の産業又は民生用ないし研究施設等において使用される脱イオン水の製造には、図5に示すように、電極(陽極11,陰極12)の間に複数のアニオン交換膜(A膜)13及びカチオン交換膜(C膜)14を交互に配列して濃縮室15と脱塩室16とを交互に形成し、脱塩室16にイオン交換樹脂、イオン交換繊維又はグラフト交換体等からなるアニオン交換体及びカチオン交換体を混合又は複層状に充填した電気脱イオン装置が多用されている(特許文献1〜3参照)。なお、図5において、17は陽極室、18は陰極室である。
電気脱イオン装置は、水解離によってH+イオンとOH−イオンとを生成させ、脱塩室内に充填されているイオン交換体を連続して再生することによって、効率的な脱塩処理が可能であり、従来、広く用いられてきたイオン交換樹脂装置のような薬品を用いた再生処理を必要とせず、完全な連続採水が可能で、高純度の水が得られるという優れた効果を発揮する。
しかしながら、浄水場等で河川水、地下水等を除濁、脱塩素、軟化処理した水道水を電気脱イオン装置の被処理水として直接用いた場合や被処理水のカルシウム濃度が高い場合には、(1)濃縮室内でのスケール発生や(2)CO2負荷増大による処理水導電率の悪化等が起こることから、水道水を直接電気脱イオン装置の被処理水として通水することは行われていない。
上記(1),(2)の問題点のうち、(2)のCO2負荷の増大については、比較的安価な脱炭酸装置を電気脱イオン装置の前処理装置として用いることにより解決できる。
しかしながら、(1)の濃縮室内でのスケールを防止するためには、さらに軟化装置等を設置して水中の硬度成分を完全に除去することが必要となるが、軟化装置を用いた場合にはその再生が必要となり、再生不要の電気脱イオン装置を用いることによる利点が失われてしまう。
このような問題点を解決するために、従来から電気脱イオン装置の前処理装置として、硬度成分及びCO2濃度を低減するために、一般的に逆浸透膜装置(RO膜装置)、脱炭酸塔などを設置する方法が用いられている。
しかしながら、RO膜装置は1〜2MPaという高圧で運転することから、高価な設備が必要となり、運転費用も上昇する。しかも、電気脱イオン装置の前処理装置としてRO膜装置を用いた場合でも、RO膜からわずかにリークしてくるカルシウムによって、電気脱イオン装置の濃縮室内で炭酸カルシウムスケールが発生するため、長期間安定運転を行うことはできないという問題もあった。そこで、RO膜装置を直列に2段配置してカルシウム等をさらに除去することも行われているが、経費等の点で実用的でない。このため、通常の給水条件において1段のRO膜装置で処理できる場合には、1段のRO膜装置で純水製造システムを設計せざるを得ず、かかる場合には、突発的にCa濃度や炭酸濃度が増加する等の給水条件の悪化や、RO膜装置の破過に対応できず、濃縮室内でスケールが発生する懸念がある。
このように電気脱イオン装置において、スケールが発生するメカニズムを、図6を参照して説明する。
電気脱イオン装置のスケール発生因子として最も問題となるのが炭酸カルシウムである。電気脱イオン装置では、濃縮室15の供給水として、一般的に被処理水が分岐して用いられる。この濃縮室15内においては、カチオン交換膜14側の脱塩室16からカルシウムイオン(Ca2+)がイオン交換されて透過し、電気的作用によってアニオン交換膜13の表面に近づいてくる。一方、アニオン交換膜13側の脱塩室16からは炭酸水素イオン(HCO3 −)が透過する。そして、濃縮室15内では、カルシウムイオン(Ca2+)又は炭酸水素イオン(HCO3 −)のがどちらか一方でも高くなると、下記(1),(2)の反応により炭酸カルシウム(CaCO3)が形成される。
HCO3 − + OH− → CO3 2− + H2O …(1)
Ca2+ + CO3 2− → CaCO3 …(2)
HCO3 − + OH− → CO3 2− + H2O …(1)
Ca2+ + CO3 2− → CaCO3 …(2)
このようにして濃縮室15内でスケールが発生すると、電気抵抗が上昇し、電圧値を一定に保てなくなるため、安定した処理性能を維持できなくなる。しかも、上記反応は不可逆反応であるため、上記反応が進行した場合には、モジュールの洗浄や、さらに放置し続けると最終的には装置の交換という事態もありうる。
また、一般に、炭酸カルシウムの飽和条件は下記式で表される。
log[Ca2+]+log[HCO3 −]+pHs=log(Ks/K2)
Ks:炭酸カルシウムの溶解度積
K2:炭酸の第2解離定数
pHs:炭酸カルシウムの飽和pH
log[Ca2+]+log[HCO3 −]+pHs=log(Ks/K2)
Ks:炭酸カルシウムの溶解度積
K2:炭酸の第2解離定数
pHs:炭酸カルシウムの飽和pH
実際の水溶液中のpHと炭酸カルシウムの飽和pH(pHs)との差はランジェリア指数(LSI)と呼ばれ、
LSI=pH−pHs>0
となると炭酸カルシウムが析出することになる。
LSI=pH−pHs>0
となると炭酸カルシウムが析出することになる。
電気脱イオン装置の濃縮室15内にもアニオン交換膜13側から脱塩室16内の水解離で発生したOH−イオンが透過してくるため、局所的にアルカリ性となっている。そのため、アニオン交換膜13の表面でのLSIは正(>0)となることから、この濃縮室15内のアニオン交換膜13の近傍に炭酸カルシウムスケールが析出することになる。また、水酸化カルシウムが形成されることもあり得る。
そこで、本出願人は、このような濃縮室内のスケール問題を解消するものとして、濃縮室内にバイポーラ膜を具備する電気脱イオン装置について先に提案した(特許文献4参照)。
特許第1782943号公報
特許第2751090号公報
特許第2699256号公報
特開2001−198577号公報
しかしながら、上記特許文献4に記載された電気脱イオン装置では、電気脱イオン装置に流入してくる原水の水質や運転条件によっては、電解電圧の上昇が発生し、運転に支障をきたすおそれがあった。そこで、その電圧の上昇の原因について種々検討した結果、バイポーラ膜界面での水解離によって発生する水酸化物イオンと水素イオンとの移動が律速となって、電解抵抗が増加するためであることがわかった。
上記従来の問題点に鑑みて、本発明は、被処理水中に硬度成分が含まれていても、スケールを発生させることなく、長期間安定に運転することができる電気脱イオン装置を提供することを目的とする。
第1に本発明は、陰極と陽極との間に、複数のアニオン交換膜とカチオン交換膜とを交互に配列して濃縮室と脱塩室とを交互に形成し、前記濃縮室にアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂とを混合した混合樹脂を充填するとともに、当該濃縮室にバイポーラ膜を設けて、当該濃縮室内に陰極側区画室と陽極側区画室とを形成した電気脱イオン装置であって、前記陰極側区画室には、上部でアニオン交換樹脂の混合比率が高く、下部でカチオン交換樹脂の混合比率が高くなるように混合樹脂を充填し、前記陽極側区画室には、上部でカチオン交換樹脂の混合比率が高く、下部でアニオン交換樹脂の混合比率が高くなるように混合樹脂を充填したことを特徴とする電気脱イオン装置を提供する(請求項1)。
上記発明(請求項1)によれば、濃縮室内にバイポーラ膜を配置すると、アニオン交換膜側の脱塩室から濃縮室内に透過してきた炭酸水素イオンと、カチオン交換膜側から透過してきたカルシウムイオンとは、それぞれバイポーラ膜により遮断されるため、濃縮室内で炭酸カルシウムを形成することがない。これにより、濃縮室内での炭酸カルシウムスケールの発生を防止することができる。さらに、アニオン交換膜側から透過してくる脱塩室内の水解離で発生したOH−イオンもバイポーラ膜により遮断されるため、濃縮室内で水酸化カルシウムを形成することもない。そして、この濃縮室に設けられたバイポーラ膜で区画されたそれぞれの区画室内においては、陰極側区画室では上部でアニオン交換樹脂の混合比率を高くすることで、濃縮室内上部に透過してきた炭酸水素イオンはすばやく移動し、当該陰極側区画室の下部でカチオン交換樹脂の混合比率を高くすることで、バイポーラ膜の界面から発生した水素イオンが移動しやすく、濃縮室中部に透過してきた水酸化物イオンとの結合が起こりやすくなる。一方、陽極側区画室では、上部でカチオン交換樹脂の混合比率を高くすることで、濃縮室内上部に透過してきたカルシウムイオンはすばやく移動し、当該陽極側区画室下部でアニオン交換樹脂の混合比率を高くすることで、バイポーラ膜の界面から発生した水酸化物イオンが移動しやすく、濃縮室中部に透過してきた水素イオンとの結合が起こりやすくなる。この結果、電流が流れやすくなり、電圧上昇が抑制され、安定した処理水質が得られる。
上記発明(請求項1)においては、前記陰極側区画室に充填される混合樹脂のカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂との混合比率が、当該陰極側区画室上部で5:5〜1:9であり、中部で4.5:5.5〜5.5:4.5であり、下部で5:5〜9:1であり、前記陽極側区画室に充填される混合樹脂のカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂との混合比率が、当該陽極側区画室上部で5:5〜9:1であり、中部で4.5:5.5〜5.5:4.5であり、下部で5:5〜1:9であることが好ましい(請求項2)。
上記発明(請求項2)によれば、前述した請求項1の現象が好適に発揮され、より一層電流が流れやすくなり、電圧上昇が抑制され、安定した処理水質が得られる。
上記発明(請求項1,2)においては、前記バイポーラ膜は、アニオン交換層面が陽極側に位置し、カチオン交換層面が陰極側に位置するように設けられることが好ましい(請求項3)。
上記発明(請求項3)によれば、アニオン交換膜側の脱塩室から濃縮室内に透過してきた炭酸水素イオンと、カチオン交換膜側から透過してきたカルシウムイオンとを遮断するとともに、アニオン交換膜側から透過してくる脱塩室内の水解離で発生したOH−イオンもバイポーラ膜により遮断することができる。
また、上記発明(請求項1〜3)においては、前記脱塩室内にイオン交換体を充填した構成とすることができる(請求項4)。かかる発明(請求項4)によれば、脱塩室内で得られる脱イオン水の水質をより向上させることができる。
さらに、上記発明(請求項1〜4)においては、前記脱塩室の流出水の一部を該濃縮室の流入側へ供給する流路を設けた構成とすることができる(請求項5)。かかる発明(請求項5)によれば、水道水のようにカルシウム濃度の高い水を処理する場合であっても、脱イオン水の一部を濃縮室に導入することで、濃縮室の循環水を脱イオン水で希釈してカルシウム濃度を低減することができ、スケールを一層防止することができる。
本発明の電気脱イオン装置によれば、濃縮室内にバイポーラ膜を配置することにより、濃縮室内で炭酸水素イオンや水酸化物イオンとカルシウムイオンとが会合することがないので、濃縮室内で炭酸カルシウムや水酸化カルシウムの形成を抑制することができるため、被処理水中に硬度成分が含まれていても濃縮室内にスケールを発生させることなく、電気脱イオン装置を長期間安定に運転することができる。さらに、バイポーラ膜の境界面における水解離によって発生する水酸化物イオンと水素イオンとの移動が速やかに行われるので、電解抵抗の増加を押さえ、長期間安定に運転することができ、消費電力の低減を図ることができる。また、水質によっては、前処理装置として必要とされていたRO膜装置を省くことができ、設備コスト、処理コストの低減を図ることもできる。
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の電気脱イオン装置の一実施形態を示す概略構成図であり、図2及び図3は濃縮室の拡大断面図である。図1〜図3においては、図5及び図6に示す従来の電気脱イオン装置と同一の構成には同一の符号を付してある。
図1は、本発明の電気脱イオン装置の一実施形態を示す概略構成図であり、図2及び図3は濃縮室の拡大断面図である。図1〜図3においては、図5及び図6に示す従来の電気脱イオン装置と同一の構成には同一の符号を付してある。
本実施形態の電気脱イオン装置は、濃縮室15内にバイポーラ膜20を設けて、濃縮室15内に陰極側区画室15Aと陽極側区画室15Bとを区画して形成し、この濃縮室15内にアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の混合樹脂を充填した以外は、図5に示す従来の電気脱イオン装置と同様の構成となっている。
このバイポーラ膜20は、陽極11側にバイポーラ膜20のアニオン交換層20B側が、陰極12側にバイポーラ膜20のカチオン交換層20A側が位置するように濃縮室15内に設置する。
なお、本発明で用いるバイポーラ膜としては、陰イオン交換層と陽イオン交換層とを有し、水電解効率が高いものであれば良く、特に制限はない。また、場合によっては、陰イオン交換膜と陽イオン交換膜とを重ね合わせて用いてもよい。
このような電気脱イオン装置において、陰極側区画室15Aの混合樹脂は、上部でアニオン交換樹脂の混合比率が高く、下部でカチオン交換樹脂の混合比率が高くなるように充填されていて、バイポーラ膜20の界面において水解離によって発生した水素イオンの移動が促進される。また、陽極側区画室15Bの混合樹脂は、上部でカチオン交換樹脂の混合比率が高く、下部でアニオン交換樹脂の混合比率が高くなるように充填されており、バイポーラ膜20の界面における水解離によって発生した水酸化物イオンの移動が促進される。この結果、電流が流れやすくなっている。このような効果が得られる理由については後述する。
具体的には、陰極側区画室15Aに充填する混合樹脂の混合比率は、図2に示す通り、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂との混合比率が、それぞれ陰極側区画室15Aの上部の混合樹脂21Aが5:5〜1:9であり、中部の混合樹脂21Bが4.5:5.5〜5.5:4.5であり、下部の混合樹脂21Cが5:5〜9:1の範囲内であって、上部でアニオン交換樹脂の混合比率が高く、下部でカチオン交換樹脂の混合比率が高くなるように充填されているのが好ましい。カチオン交換樹脂及びアニオン交換樹脂の混合比率が上記範囲外では、バイポーラ膜20界面における水解離によって発生した水素イオンの陰極側区画室15A内での移動促進効果が十分でなく、水酸化物イオンとの反応速度が低下して、電圧上昇の抑制効果が十分でない一方、アニオンの移動性も低下する。
また、陽極側区画室15Bに充填する混合樹脂の混合比率は、それぞれ陽極側区画室15Bの上部の混合樹脂22Aが5:5〜9:1であり、中部の混合樹脂22Bが4.5:5.5〜5.5:4.5であり、下部の混合樹脂22Cが5:5〜1:9の範囲内であって、上部でカチオン交換樹脂の混合比率が高く、下部でアニオン交換樹脂の混合比率が高くなるように充填されているのが好ましい。カチオン交換樹脂及びアニオン交換樹脂の混合比率が上記範囲外では、バイポーラ膜20界面における水解離によって発生した水酸化物イオンの陽極側区画室15B内での移動促進効果が十分でなく、水素イオンとの反応速度が低下して、電圧上昇の抑制効果が十分でない一方、カチオンの移動性も低下する。
次に、このような構成を有する電気脱イオン装置の作用について説明する。
図3に示すように、濃縮室15内にバイポーラ膜20を設けているので、アニオン交換膜13側の脱塩室16から濃縮室15内に透過してきた炭酸水素イオン及び水酸イオンはバイポーラ膜20を透過できず、また、カチオン交換膜14側から透過してきたカルシウムイオン及び水素イオンもこれを透過できない。このため、濃縮室15内での炭酸カルシウムスケールの発生は防止される。なお、説明の便宜上、図3においては、混合樹脂21A、21B及び21C、並びに混合樹脂22A、22B及び22Cについては省略してある。
図3に示すように、濃縮室15内にバイポーラ膜20を設けているので、アニオン交換膜13側の脱塩室16から濃縮室15内に透過してきた炭酸水素イオン及び水酸イオンはバイポーラ膜20を透過できず、また、カチオン交換膜14側から透過してきたカルシウムイオン及び水素イオンもこれを透過できない。このため、濃縮室15内での炭酸カルシウムスケールの発生は防止される。なお、説明の便宜上、図3においては、混合樹脂21A、21B及び21C、並びに混合樹脂22A、22B及び22Cについては省略してある。
このとき、バイポーラ膜20内では理論水電解電圧(0.83V)以上の電圧を印加することによって、水解離が発生するので電流は流れる。このため、バイポーラ膜20を濃縮室15内に設置することで電気脱イオン装置の脱イオン性能が損なわれることはない。
しかしながら、このままでは電解電圧が上昇し、消費電力的にも安定運転上も好ましくない。これは、前述したバイポーラ膜20界面での水解離によって発生する水酸化物イオンと水素イオンの移動が律速となって、電解抵抗が増加するためである。そこで、本実施例においては、陰極側区画室15Aに上部でアニオン交換樹脂の混合比率が高くなるように混合樹脂21A、21B及び21Cを充填しているので、アニオン交換膜(A膜)から陰極側区画室15Aの上部に透過してきた炭酸水素イオンはすばやく移動し、当該陰極側区画室15Aの下部ではこれとは逆にバイポーラ膜20の界面から発生した水素イオンが移動しやすくなるので、アニオン交換膜(A膜)から中部に透過してきた水酸化物イオンとの結合が起こりやすくなる。
また、陽極側区画室15Bでは、上部でカチオン交換樹脂の混合比率が高くなるように混合樹脂22A、22B及び22Cを充填しているので、カチオン交換膜(C膜)から陽極側区画室15Bの上部に透過してきたカルシウムイオンはすばやく移動し、当該陰極側区画室15Bの下部ではこれとは逆にバイポーラ膜20の界面から発生した水酸化物イオンが移動しやすくなるので、カチオン交換膜(C膜)から中部に透過してきた水素イオンとの結合が起こりやすくなる。これらにより、電流が流れ易くなり安定した処理水水質が得られることになる。
しかし、濃縮室15内にバイポーラ膜20を配置した場合であっても、水道水のようにカルシウム濃度の高い水を処理する場合には、スケールが発生する恐れがあるため、この場合には、脱塩室16から得られる脱イオン水の一部を濃縮室15に導入して、濃縮室循環水を脱イオン水で希釈してカルシウム濃度を低減することが好ましい。
本実施形態に係る電気脱イオン装置においては、濃縮室15内に陰極側区画室15Aと陽極側区画室15Bを形成し、この濃縮室15内にアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の混合樹脂21A、21B及び21C、並びに混合樹脂22A、22B及び22Cを充填しているが、脱塩室16内には、イオン交換繊維又はグラフト交換体等からなるアニオン交換体及びカチオン交換体を混合又は複層状に充填されていることが、得られる脱イオン水の向上の面で好ましい。さらに、陽極室17及び陰極室18にイオン交換体を充填してもよい。
本実施形態に係る電気脱イオン装置では、上述のように、濃縮室15にバイポーラ膜20を設けることで、濃縮室15内での炭酸カルシウムスケールを有効に防止することができるが、この場合においても、水道水のようにカルシウム濃度の高い水を処理する場合には、スケールが発生するおそれがある。したがって、この場合には、図4に示すように、脱塩室32から得られる脱イオン水の一部を濃縮室33に導入して、濃縮室33の循環水を脱イオン水で希釈してカルシウム濃度を低減することが好ましい。同様に電極室31内の水についても、脱イオン水を用いることが好ましい。
また、濃縮室15に導入する被処理水のみ軟化処理するようにしてもよく、この場合には、軟化装置が必要となるが、全ての被処理水を軟化処理する場合に比べてその処理コストは大幅に低減される。
以下、比較例及び実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
なお、以下の比較例及び実施例で用いた試験装置は、下記の装置を活性炭装置、電気脱イオン装置の順で直列に配置したものである。
活性炭装置:栗田工業社製「クリコールKW10−30」
電気脱イオン装置:栗田工業社製「クリテノンSH型」
処理水量:100L/hr
なお、以下の比較例及び実施例で用いた試験装置は、下記の装置を活性炭装置、電気脱イオン装置の順で直列に配置したものである。
活性炭装置:栗田工業社製「クリコールKW10−30」
電気脱イオン装置:栗田工業社製「クリテノンSH型」
処理水量:100L/hr
また、試験用の被処理水(市水)として以下のものを用意した。
被処理水:給水Ca濃度28ppm(CaCO3換算)
給水CO2濃度29ppm(CaCO3換算)
被処理水:給水Ca濃度28ppm(CaCO3換算)
給水CO2濃度29ppm(CaCO3換算)
〔比較例1〕
電気脱イオン装置のイオン交換膜及び脱塩室に充填するイオン交換樹脂として以下のものを用い、上記被処理水を電流値6.5A、水回収率80%、入口導電率170μS/cm、濃縮室初期流量25L/hrの条件で通水を行い、得られる処理水の1週間後、1月後、2月後及び3月後の印加電圧の経時変化を測定した。結果を表1に示す。なお、初期状態における印加電圧を合わせて示す。
電気脱イオン装置のイオン交換膜及び脱塩室に充填するイオン交換樹脂として以下のものを用い、上記被処理水を電流値6.5A、水回収率80%、入口導電率170μS/cm、濃縮室初期流量25L/hrの条件で通水を行い、得られる処理水の1週間後、1月後、2月後及び3月後の印加電圧の経時変化を測定した。結果を表1に示す。なお、初期状態における印加電圧を合わせて示す。
なお、濃縮室循環水の補給水及び電極室水としては、被処理水を用いた。
アニオン交換膜:旭化成工業社製,「アシプレックスA501SB」
カチオン交換膜:旭化成工業社製,「アシプレックスK501SB」
イオン交換樹脂:アニオン交換樹脂(三菱化学社製,「SA10A」)とカチオン交換樹脂(三菱化学社製,「SK1B」)とを6:4の体積混合比率で混合したもの。
アニオン交換膜:旭化成工業社製,「アシプレックスA501SB」
カチオン交換膜:旭化成工業社製,「アシプレックスK501SB」
イオン交換樹脂:アニオン交換樹脂(三菱化学社製,「SA10A」)とカチオン交換樹脂(三菱化学社製,「SK1B」)とを6:4の体積混合比率で混合したもの。
〔比較例2〕
比較例1で用いた電気脱イオン装置の濃縮室にバイポーラ膜を設けて図1に示す電気脱イオン装置を組み立て、この電気脱イオン装置を用いたこと以外は同様にして、通水試験を行った。結果を表1に合わせて示す。
なお、バイポーラ膜としてはアストム社製CMS(商品名)を用いた。
比較例1で用いた電気脱イオン装置の濃縮室にバイポーラ膜を設けて図1に示す電気脱イオン装置を組み立て、この電気脱イオン装置を用いたこと以外は同様にして、通水試験を行った。結果を表1に合わせて示す。
なお、バイポーラ膜としてはアストム社製CMS(商品名)を用いた。
〔実施例1〕
比較例2の電気脱イオン装置において、バイポーラ膜で区画された陰極側区画室15Aにアニオン交換樹脂:カチオン交換樹脂の比率が上部9:1、中部5:5、下部1:9となるように混合樹脂を充填し、陽極側区画室15Bにアニオン交換樹脂:カチオン交換樹脂の比率が上部1:9、中部5:5、下部9:1となるように混合樹脂を充填した以外は、同様にして電気脱イオン装置を組み立て、この電気脱イオン装置を用いたこと以外は同様にして、通水試験を行った。結果を表1に示す。なお、アニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂は、比較例1で脱塩室に充填したものと同一のものである。
比較例2の電気脱イオン装置において、バイポーラ膜で区画された陰極側区画室15Aにアニオン交換樹脂:カチオン交換樹脂の比率が上部9:1、中部5:5、下部1:9となるように混合樹脂を充填し、陽極側区画室15Bにアニオン交換樹脂:カチオン交換樹脂の比率が上部1:9、中部5:5、下部9:1となるように混合樹脂を充填した以外は、同様にして電気脱イオン装置を組み立て、この電気脱イオン装置を用いたこと以外は同様にして、通水試験を行った。結果を表1に示す。なお、アニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂は、比較例1で脱塩室に充填したものと同一のものである。
〔実施例2〕
実施例1において、図4に示すように、被処理水の代りに脱塩室から得られた脱イオン水の一部(20%)を濃縮室循環水の補給水及び電極室水として送給したこと以外は、同様にして試験を行った。結果を表1に示す。
実施例1において、図4に示すように、被処理水の代りに脱塩室から得られた脱イオン水の一部(20%)を濃縮室循環水の補給水及び電極室水として送給したこと以外は、同様にして試験を行った。結果を表1に示す。
表1から明らかなように、比較例1の電気脱イオン装置では1週間で濃縮室側の差圧が上昇してしまい、運転不能となった。また、比較例2においては、通水開始1週間後には電解電圧が増加していった。これに対し、実施例1、2の電気脱イオン装置では、電圧の増加も少なく、3月間安定して運転することができた。また、得られた処理水の水質も良好であった。
10…イオン交換体
11…陽極
12…陰極
13…アニオン交換膜
14…カチオン交換膜
15…濃縮室
15A…陰極側区画室
15B…陽極側区画室
16…脱塩室
17…陽極室
18…陰極室
20…バイポーラ膜
21A,22C…混合樹脂(カチオン交換樹脂/カチオン交換樹脂=5:5〜1:9)
21B,22B…混合樹脂(カチオン交換樹脂/カチオン交換樹脂=4.5:5.5〜5.5:4.5)
21C,22A…混合樹脂(カチオン交換樹脂/カチオン交換樹脂=5:5〜9:1)
11…陽極
12…陰極
13…アニオン交換膜
14…カチオン交換膜
15…濃縮室
15A…陰極側区画室
15B…陽極側区画室
16…脱塩室
17…陽極室
18…陰極室
20…バイポーラ膜
21A,22C…混合樹脂(カチオン交換樹脂/カチオン交換樹脂=5:5〜1:9)
21B,22B…混合樹脂(カチオン交換樹脂/カチオン交換樹脂=4.5:5.5〜5.5:4.5)
21C,22A…混合樹脂(カチオン交換樹脂/カチオン交換樹脂=5:5〜9:1)
Claims (5)
- 陰極と陽極との間に、複数のアニオン交換膜とカチオン交換膜とを交互に配列して濃縮室と脱塩室とを交互に形成し、前記濃縮室にアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂とを混合した混合樹脂を充填するとともに、当該濃縮室にバイポーラ膜を設けて、当該濃縮室内に陰極側区画室と陽極側区画室とを形成した電気脱イオン装置であって、
前記陰極側区画室には、上部でアニオン交換樹脂の混合比率が高く、下部でカチオン交換樹脂の混合比率が高くなるように混合樹脂を充填し、
前記陽極側区画室には、上部でカチオン交換樹脂の混合比率が高く、下部でアニオン交換樹脂の混合比率が高くなるように混合樹脂を充填した
ことを特徴とする電気脱イオン装置。 - 前記陰極側区画室に充填される混合樹脂のカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂との混合比率が、当該陰極側区画室上部で5:5〜1:9であり、中部で4.5:5.5〜5.5:4.5であり、下部で5:5〜9:1であり、
前記陽極側区画室に充填される混合樹脂のカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂との混合比率が、当該陽極側区画室上部で5:5〜9:1であり、中部で4.5:5.5〜5.5:4.5であり、下部で5:5〜1:9であることを特徴とする請求項1に記載の電気脱イオン装置。 - 前記バイポーラ膜は、アニオン交換層面が陽極側に位置し、カチオン交換層面が陰極側に位置するように設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気脱イオン装置。
- 前記脱塩室内にイオン交換体を充填したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電気脱イオン装置。
- 前記脱塩室の流出水の一部を前記濃縮室の流入側へ供給する流路を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電気脱イオン装置。
Priority Applications (2)
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---|---|---|---|
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Applications Claiming Priority (1)
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JP2006209121A JP2008030005A (ja) | 2006-07-31 | 2006-07-31 | 電気脱イオン装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2009226315A (ja) * | 2008-03-24 | 2009-10-08 | Japan Organo Co Ltd | 電気式脱イオン水製造装置及び脱イオン水の製造方法 |
JP2012152740A (ja) * | 2012-03-22 | 2012-08-16 | Japan Organo Co Ltd | 電気式脱イオン水製造装置及び脱イオン水の製造方法 |
CN113493264A (zh) * | 2020-04-01 | 2021-10-12 | 佛山市云米电器科技有限公司 | 一种家用净水装置 |
-
2006
- 2006-07-31 JP JP2006209121A patent/JP2008030005A/ja active Pending
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