JP2008029756A - 歯の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】支持担体の内部に、歯胚以外の上皮系組織由来である培養細胞から実質的になる第1の細胞集合体と、歯胚由来である間葉系細胞から実質的になる第2の細胞集合体とを接触させて配置し、前記第1及び第2の細胞集合体を前記支持担体の内部で培養する。
【選択図】なし
Description
歯は、胎児期の発生過程の誘導によって形成され、複数の細胞種によって構築された機能単位であり、器官や臓器と同じであると考えられている。そのため歯は、成体内の造血幹細胞や間葉系幹細胞のような幹細胞から細胞種が発生する幹細胞システムによって発生するのではなく、現在、再生医療によって進められている幹細胞の移入のみ(幹細胞移入療法)では歯を再生することができない。また、歯の発生過程で特異的に発現する遺伝子を同定し、歯胚を人為的に誘導することによる歯の再生も考えられているが、遺伝子を特定しただけでは、歯の再生を完全に誘導することができない。
そこで、近年、単離された歯胚細胞を用いた歯胚を再構成させて、この再構成歯胚を移植することによる歯の再生を中心とした検討が行われている。
また、非特許文献2には、継代された培養細胞による上皮−間葉相互作用が実現可能な系とし、コラーゲンゲルによる共培養が有効であると記載されている。
歯胚の再生方法としては、例えば、特許文献1には、歯胚細胞を、線維芽細胞増殖因子等の生理活性物質の存在下で培養することが記載されている。また、特許文献2には、歯胚細胞及びこれらの細胞に分化可能な細胞のうち少なくとも1種類を、フィブリンを含む担体と一緒に培養することが提案されており、ここでフィブリンを含む担体は、歯胚の目的形状のものを使用して、特有の形態を有する「歯」を形成すると記載されている。
一方、特許文献5には、骨の欠損又は損傷を有する患者を治療するための歯の再生方法を開示している。この方法によれば、ポリグリコール酸メッシュ担体に間葉系細胞を播種した後に、上皮系細胞をコラーゲンと共に重層する又は上皮細胞シートで包むことによって、骨が形成される。なお、特許文献5では、骨の形状を構築するために担体を用いている。
更に、非特許文献3には、マウス足裏の上皮組織と歯胚由来の間葉組織から歯様の組織が形成されることが開示されている。
J. Dent. Res., 2002, Vol.81(10), pp.695-700 「歯および歯胚由来細胞を用いた再生医療とその可能性」、再生医療 日本再生医療学会雑誌、2005年、Vol.4(1), pp.79-83 J. Embryol. exp. Morph., 1970, Vol.24(1), pp.173-186
また、歯胚の再構築に歯胚由来の組織又は細胞、特に自家組織を利用する場合には、使用できる細胞数には限界があった。
(1) 支持担体の内部に、歯胚以外の上皮系組織由来である培養細胞から実質的になる第1の細胞集合体と、歯胚由来である間葉系細胞から実質的になる第2の細胞集合体とを接触させて配置する配置工程と、前記第1及び第2の細胞集合体を前記支持担体の内部で培養する培養工程と、を含む歯の製造方法である。
(2) 前記第1の細胞集合体を調製する第1の調製工程と、前記第2の細胞集合体を調製する第2の調製工程と、を前記配置工程の前に更に含む前記(1)に記載の歯の製造方法である。
(3) 前記第1の細胞集合体及び前記第2の細胞集合体の少なくとも一方が単一細胞集合物であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の歯の製造方法である。
(4) 前記上皮系組織が、口腔内上皮系組織であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の歯の製造方法である
(5) 前記上皮系組織が、成体由来の上皮系組織であることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の歯の製造方法である。
(6) 前記培養細胞が、初代培養細胞であることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の歯の製造方法である。
(7) 前記培養工程を他の動物細胞の存在下で行うことを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の歯の製造方法である。
(8) 前記培養工程を、歯周組織が形成されるまで継続することを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれか1項に記載の歯の製造方法である。
また、第1及び第2の細胞集合体の緊密な接触状態によって細胞間相互作用を効果的に再現することができ、内側に象牙質、外側にエナメル質という歯に特有の層構造を有する歯を製造することができる。
また、歯の方向性は、歯冠や歯根の配置によって特定することができる。歯冠や歯根は、形状や組織染色などに基づいて目視にて確認することができる。
なお、本発明において「間葉系細胞」とは、間葉組織由来の細胞を意味し、「上皮系細胞」とは上皮組織由来の細胞を意味する。
本発明における間葉系細胞は、歯胚を形成する又は形成する可能性がある上記蕾状期から鐘状後期までのもの(以下、単に「歯胚」という)であればよく、細胞の分化段階の幼若性と均質性の観点から蕾状期から帽状期からのものであることが好ましい。
第1及び第2の細胞集合体を構成する細胞の数は、動物の種類や、支持担体の種類、硬さ及び大きさによって異なるが、細胞集合体1個あたり、一般に101〜108個、好ましくは103〜108個とすることができる。
本発明の製造方法における配置工程では、上記第1及び第2の細胞集合体を、細胞の接触状態を保持可能な支持担体の内部に配置するので、それぞれの細胞集合体を構成する細胞が、他方の細胞集合体を構成する細胞と混じり合うことがない。このように配置工程では、各細胞集合体を混合することなく配置するので、細胞集合体の間に境界線が形成される。このような配置形態を、本明細書中では適宜「区画化」と表現する。
本製造方法で用いられる第2の細胞集合体を構成する間葉系細胞は、生体内での細胞配置を再現して特有の構造及び方向性を有する歯を効果的に形成するために、歯胚由来であることが必要である。
歯胚以外の口腔内上皮系組織としては、例えば、口腔内の粘膜上皮組織、舌上皮組織、歯肉上皮組織等を挙げることができる。
好ましくは、周囲組織から歯胚組織を容易に分離するため及び/又は歯胚組織から上皮組織及び間葉組織を分離するために、酵素を用いてもよい。このような用途に用いられる酵素としては、ディスパーゼ、コラーゲナーゼ、トリプシン等を挙げることができる。
培養に用いられる培地としては、一般に動物細胞の培養に用いられる培地、例えばダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)等を用いることができ、細胞の増殖を促進するための血清を添加するか、あるいは血清に代替するものとして、例えばFGF、EGF、PDGF等の細胞増殖因子やトランスフェリン等の既知血清成分を添加してもよい。なお、血清を添加する場合の濃度は、そのときの培養状態によって適宜変更することができるが、通常10%とすることができる。細胞の培養には、通常の培養条件、例えば37℃の温度で5%CO2濃度のインキュベーター内での培養が適用される。また、適宜、ストレプトマイシン等の抗生物質やインスリン、コレラトキシン等を添加したものであってもよい。
単一細胞の状態になった上皮系細胞を、上記間葉系細胞の予備的培養条件と同様の条件を適用して培養することで上皮系の培養細胞を得ることができる。培養細胞を用いることで、必要な数量の第1の細胞集合体を調製することができ、また、より確実に歯を形成することができる。
本発明における培養細胞は、細胞株として樹立されたものであっても、初代培養細胞であってもよいが、安全性と自家移植の観点から、初代培養細胞であることが好ましい。初代培養細胞は、例えば、単一細胞状態の上皮系細胞を、FCSを添加したDMEM/F12培養液を用い、コラーゲンコートした培養シャーレなどで1日〜10日程度培養することで得ることができる。このときトランスフェリン、インスリン、コレラトキシン、上皮増殖因子等を適宜添加してもよい。また、培養液として市販のDefined keratinocyte serum-free medium(In vitorogen社製)などを用いてもよい。
なお、ここで支持担体は、第1及び第2の細胞集合体が担体内部で成育することができる程度の厚みを有すればよく、目的とする組織の大きさ等によって適宜設定することができる。
高密度の状態とは、組織を構成する際の密度と同等程度であることをいい、例えば、細胞集合体の場合、細胞配置時で5×107〜1×109個/ml、細胞の活性を損なわずに確実に細胞相互作用させるため好ましくは1×108〜1×109個/ml、最も好ましくは2×108〜8×108個/mlの密度をいう。このような細胞密度に細胞集合体を調製するには、細胞を遠心によって凝集させ沈殿化することが細胞の活性を損なわずに簡便に高密度化できるため好ましい。このような遠心は、細胞の生存を損ねない300〜1200×g、好ましくは500〜1000×gの遠心力に該当する回転数で3〜10分間おこなえばよい。300×gよりも低い遠心では、細胞の沈殿が不十分となって細胞密度が低くなる場合があり、一方、1200×gよりも高い遠心では細胞が損傷を受ける場合があるため、それぞれ好ましくない。
培養工程は、支持担体によって第1の細胞集合体と第2の細胞集合体との接触状態が維持されて行われればよく、第1及び第2の細胞集合体を有する支持担体単独による培養であっても、他の動物細胞の存在下での培養であってもよい。
培養期間としては、支持担体内部に配置された細胞数及び細胞集合体の状態、更には培養工程の実施条件によって異なるが、一般に、1〜300日、エナメル質を外側に有し、象牙質を内側に有する歯を形成するためには、好ましくは1〜120日、迅速に提供可能とする観点からは、好ましくは1〜60日とすることができる。更に歯周組織を備えた歯とするためには、一般に1〜300日、好ましくは1〜60日とすることができる。
また、組織や細胞集合体のガス交換や栄養供給の観点から器官培養を用いることが好ましい。器官培養では、一般に、動物細胞の増殖に適した培地上に多孔性の膜をフロートさせ、その膜上に支持担体で包埋された細胞集合体を置いて培養を行う。ここで用いられる多孔性の膜には、0.3〜5μm程度の孔を多数有した膜であることが好ましく、具体的にはセルカルチャーインサート(商品名)、アイソポアフィルター(商品名)を挙げることができる。
この用途に利用可能な動物は、哺乳動物、例えばヒト、豚、マウス等を好ましく挙げることができ、歯胚組織と同一の種に由来するものであることが更に好ましい。ヒト歯胚組織を移植する場合には、ヒト、又は免疫不全に改変したヒト以外の他の哺乳動物を用いることが好ましい。このような生体内成育に好適な生体部位としては、動物細胞の器官や組織をできる限り正常に発生させるためには、腎臓皮膜下、腸間膜、皮下移植等が好ましい。
移植による成育期間としては、移植時の大きさと発生させる歯の大きさによって異なるが、一般に、3〜400日とすることができる。例えば、腎臓皮膜下への移植期間は移植する培養物の大きさと再生させる歯の大きさによっても異なるが、歯の再生と移植先で発生させる歯の大きさの観点から7〜60日間であることが好ましい。
前培養の期間は短期であっても長期であってもよい。長期間、例えば3日以上、好ましくは7日以上とした場合には、歯胚から歯芽に発生させることができるので、移植後に歯ができるまでの期間を短縮することもできるため好ましい。前培養の期間としては、例えば腎臓皮膜下へ移植を行う場合の器官培養として、好ましくは1〜7日とすることが効率よく歯を再生するために好ましい。
(歯胚間葉系細胞と歯胚上皮系細胞の調製)
歯の形成を行うために、歯胚の再構築を行った。この実験モデルとしてマウスを用いた。
C57BL/6Nマウス(日本クレアから購入)の胎齢14.5日、胚仔から下顎切歯歯胚組織を顕微鏡下で常法により摘出した。下顎切歯歯胚組織をCa2+,Mg2+不含リン酸緩衝液(PBS(−))で洗浄し、PBS(−)に最終濃度1.2U/mlのディスパーゼ II (Roche, Mannheim, Germany)を添加した酵素液で室温にて12.5分間処理した後、10%FCS(JRH Biosciences, Lenexa, KS)を添加したDMEM(Sigma, St. Louis, MO)で3回洗浄した。さらにDNase I溶液 (Takara, Siga, Japan)を最終濃度70U/mlになるよう添加し歯胚組織を分散させ、25G注射針 (Terumo, Tokyo, Japan)を用いて外科的に歯胚上皮組織と歯胚間葉組織を分離した。
シリコングリースを塗布した1.5mLマイクロチューブ (Eppendorf, Hamburg, Germany)に、10%FCS(JRH Biosciences) 添加DMEM(Sigma)で懸濁した歯胚上皮系細胞を入れ、遠心分離(580×g)により細胞を沈殿として回収した。遠心後の培養液の上清をできる限り除去し、再度遠心操作を行い、実体顕微鏡で観察しながら細胞の沈殿周囲に残存する培養液を GELoader Tip 0.5−20μL (eppendorf) を用いて完全に除去し、再構成歯胚作製に用いる細胞を準備した。
次に、上記で調製された歯胚上皮系細胞及び歯胚間葉系細胞を用いて、歯胚再構築を行った。
シリコングリースを塗布した1.5mLマイクロチューブ (Eppendorf, Hamburg, Germany)に、10%FCS(JRH Biosciences) 添加DMEM(Sigma)で懸濁した歯胚上皮系細胞、あるいは歯胚間葉系細胞を入れ、遠心分離(580×g)により細胞を沈殿として回収した。遠心後の培養液の上清をできる限り除去し、再度遠心操作を行い、実体顕微鏡で観察しながら細胞の沈殿周囲に残存する培養液を GELoader Tip 0.5−20μL (eppendorf) を用いて完全に除去し、再構成歯胚作製に用いる細胞を準備した。
シリコングリースを塗布したペトリディッシュに、2.4mg/mlの濃度に上記培養液で調製したCellmatrix type I-A (Nitta gelatin, Osaka, Japan) を30μL滴下してコラーゲンゲル溶液のドロップ(ゲルドロップ)を作製した。この溶液に、歯胚間葉系細胞の遠心後の沈殿を、0.1−10μLのピペットチップ (Quality Scientific plastics)を用いて、0.2−0.3μLアプライして、細胞集合体としての細胞凝集塊を作製した。次いで、先に作製した歯胚間葉系細胞の細胞凝集塊に接するように、歯胚上皮系細胞を同様の方法によりアプライして細胞凝集塊を作製し、両者が互いに密接するようにして再構成歯胚を作製した。
ピペットチップ16で先にゲルドロップ10内に配置された細胞凝集塊12は、ゲルドロップ10内で球体を構成する(図2(B)参照)。この後に他方の細胞凝集塊14を押し込むことによって、球体の細胞凝集塊12がつぶされて、他方の細胞凝集塊14を包むようになることが多い(図2(C)参照)。その後にゲルドロップ10を固化させることにより、細胞間の結合が強固になる(図2(D)参照)。
ゲルドロップ中で作製した再構成歯胚は、CO2インキュベーターに10分間静置してCellmatrix type I-A (Nitta Gelatin)を固化し、10%FCS(JRH) 添加DMEM(Sigma)にセルカルチャーインサート(ポアサイズが0.4ミクロンのPETメンブレン;BD, Franklin Lakes, NJ)が接するようにセットした培養容器のセルカルチャーインサートの膜上に、細胞凝集塊を支持担体である周囲のゲルと共に移して、18−24時間、器官培養した。培養後、周囲のゲルごと8週齢C57BL/6の腎皮膜下に移植して異所的な歯の発生を進行させて、歯を作製した。
移植後14日目に周囲の腎組織ごと再構成歯胚を摘出し、4%パラホルムアルデヒド−リン酸緩衝液で6時間固定した後、4.5%のEDTA(pH7.2)で24時間脱灰し、常法によりパラフィン包埋して、10μmの厚さで切片化した。各切片について、組織学的解析のために常法に従い、ヘマトキシリン−エオジン染色を行った。結果を図3に示す。
(1)口腔内上皮組織からの初代培養細胞の取得
C57BL/6Nマウス(3〜6週齢、日本クレアから購入)の口腔内、頬内面の粘膜組織及び舌組織をそれぞれ摘出し、Ca2+,Mg2+不含リン酸緩衝液(PBS(−))で数回洗浄した。口腔内粘膜組織は、メスで細切し、PBS(−)に最終濃度1.2U/mlのディスパーゼ II (Roche, Mannheim, Germany)を添加した酵素液で室温にて15分間処理した後、粘膜上皮組織をピンセットで選別した。一方、舌組織は、舌上皮組織と中央部の筋肉組織の間に、PBS(−)に最終濃度1.2U/mlのディスパーゼ II (Roche, Mannheim, Germany)を添加した酵素液を注射器で注入し、10から20分間処理した後、舌の上皮組織と筋肉組織をピンセットで分離した後、上皮組織をメスで細切した。それぞれの上皮組織から、上皮細胞をマイクロチップでピペッティングすることにより分散させ、それぞれ10%FCS(JRH Biosciences, Lenexa, KS)、ペニシリン(31μg/ml, Sigma)、ストレプトマイシン(50μg/ml, Sigma)、トランスフェリン(T; 10μg/ml, Sigma)、インスリン(I; 10μg/ml, Sigma)、コレラトキシン(C;10ng/ml, Sigma)を添加したDulbecco’s modified Eagle’s medium とHam’s nutrient F-12 の1対1の混合溶液であるDMEM/F12(Sigma, Chemical Company, St. Lois, MO)培養液に分散し、コラーゲンコートした培養シャーレに播種した。5日から2週間程度の培養で、上皮細胞が増殖し、コロニーを形成した。その後、0.05%トリプシン−0.02%EDTA(Sigma)を含むPBS(−)溶液で37℃にて15分間処理し、上皮細胞をシャーレから剥離して、粘膜上皮組織由来の初代培養細胞懸濁液と舌上皮組織由来の初代培養細胞懸濁液とをそれぞれ調製した。
これらのコロニーを、間葉系細胞のマーカーとなる中間系フィラメントのビメンチンについて、抗ビメンチン抗体(Progen Biotechnik GmbH, Heidelberg, Germany)とFITC結合抗マウスIgG血清(MP Biomedicals, Ohio, USA)とを用いて免疫染色を行ったところ、いずれの上皮系細胞においてもビメンチン陽性の間葉細胞のコロニーは認められなかった。また上皮系細胞のマーカーであるサイトケラチン14(CK14)とサイトケラチン18(CK18)について、抗CK14抗体(Serotec, Oxford, UK)又は抗CK18抗体(Progen Biotechnik GmbH, Heidelberg, Germany)とFITC結合抗マウスIgG血清(MP Biomedicals, Ohio, USA)とを用いて免疫染色を行ったところ、口腔粘膜上皮系細胞ではそのほとんどがCK14陽性細胞であり、一方、舌上皮系細胞の場合には、CK14又はCK18陽性のコロニー、及びその両方とも陽性のコロニーが存在した。これらのことから、上記方法によって、いずれの上皮組織からも上皮系初代培養細胞を取得することが可能であり、それぞれの上皮系初代培養細胞には複数種類の上皮系初代培養細胞が存在した。
参考例と同様にして、歯胚組織から歯胚間葉組織を分離した。
次に、上記で調製された口腔粘膜上皮組織由来の初代培養細胞(実施例1)又は舌上皮組織由来の初代培養細胞(実施例2)と、歯胚間葉組織とを用いて、歯胚再構築を行った。
参考例と同様にして、口腔粘膜上皮組織由来の初代培養細胞又は舌上皮組織由来の初代培養細胞を用いて、第1の細胞集合体としての細胞凝集塊を作製した。
歯胚間葉組織をゲルドロップ中に移した後、上記細胞凝集塊に、歯胚間葉組織の歯胚における組織境界面側を、タングステン針を用いて細胞凝集塊に密着させて再構成歯胚を作製した。
(1)クローニングと細胞培養
C57BL/6とCBAのハイブリッドである胎齢18日のp53ノックアウトマウスから、口腔粘膜組織を摘出した。この組織をCa2+,Mg2+不含リン酸緩衝液(PBS(−))で数回洗浄した。口腔内粘膜組織は、メスで細切し、PBS(−)に最終濃度1.2U/mlのディスパーゼ II (Roche, Mannheim, Germany)を添加した酵素液で室温にて15分間処理した後、粘膜上皮組織をピンセットで選別した。上皮組織から、上皮細胞をマイクロチップでピペッティングすることにより分散させ、それぞれ10%FCS(HyClone, Utah, USA)、ペニシリン(31μg/ml, Sigma)、ストレプトマイシン(50μg/ml, Sigma)、トランスフェリン(T; 10μg/ml, Sigma)、インスリン(I; 10μg/ml, Sigma)、コレラトキシン(C;10ng/ml, Sigma)を添加したDulbecco’s modified Eagle’s medium とHam’s nutrient F-12 の1対1の混合溶液であるDMEM/F12(Sigma, Chemical Company, St. Lois, MO)培養液に分散し、組織培養シャーレ又はコラーゲンコートした培養シャーレに播種し、37℃のCO2インキュベーター(5%CO2)にて培養した。その後、限界希釈して増殖したコロニーの中で、均質な形態を有するコロニーを位相差顕微鏡下で選別し、マイクロピペットのチップで機械的に剥離させることで、単一のクローンに由来する細胞株を単離した。単離した細胞を24穴培養プレートに移して同様の条件で培養し、高細胞密度になったところで0.05%トリプシン−0.02%EDTAにて処理し、100〜300個の細胞を再播種した。この継代操作を数回繰り返して、組織培養シャーレに播種した細胞からoe系列の上皮系培養細胞株(oe5, oe7, oe1c2, oe2d1, oe2i)を、コラーゲンコートした培養シャーレに播種した細胞からbm系列の上皮系培養細胞株(bm4a5, bm6bg, bm6b3b)をそれぞれ得た。上皮系培養細胞株の代表的な位相差顕微鏡像を図7に示す。
また、歯胚上皮組織を用い、上記と同様にして、歯胚由来の上皮系培養細胞株(de1〜de5)を得た。
(a)免疫細胞化学染色
上記により得られた細胞株について、二次抗体としてFITC結合抗マウスIgG血清を用い、一次抗体として抗サイトケラチン18(CK18)(Progen Biotechnik GmbH, Heidelberg, Germany)、抗ビメンチン(Progen)、抗サイトケラチン10(CK10)(1/10; Progen)、抗サイトケラチン13(CK13)(1/10; Progen)、抗サイトケラチン14(CK14)(1/100; Serotec, Oxford, UK)、抗p63(4A4, 1/100; Calbiochem, Damstadt, Germany)のそれぞれの抗体を用いて、実施例1と同様にして免疫染色を行った。結果を表1に示す。
上記により得られた細胞株について、常法によりタンパク質を抽出し、それぞれのサンプルに50μgのタンパク質が含まれるように調製した。一次抗体として抗CK18、抗CK14、抗ビメンチンのそれぞれの抗体を用い、二次抗体としてホースラディッシュ過酸化酵素結合抗体(1/5000, MP Biomedicals)を用いて常法により化学発光分析を行った。結果を表1に示す。
上記により得られた細胞株(oe2, oe7, oe2i, bm4a5, bm6bg, bm6b3b)及び歯胚上皮細胞株(de3)から、それぞれ全RNAを抽出し、常法によりcDNAを調製した。このcDNAを鋳型としてPCRを行い、CD71、β1−インテグリン、β4−インテグリン、α6−インテグリン、アメロジェニン、mBD1、プレキシンA1〜A4及びGAPDHの各遺伝子の発現の有無を確認した。尚、PCRに用いたそれぞれのプライマー対(配列番号1〜22)を表2に示す。
プレキシンA1は、すべての細胞株(oe5, oe7, oe2i, bm4a5, bm6bg, bm6b3b, de3)で発現が認められ、プレキシンA4はすべての細胞株(oe5, oe7, oe2i, bm4a5, bm6bg, bm6b3b, de3)で発現が認められなかった。また、プレキシンA2及びA3については、口腔上皮粘膜組織由来の細胞株(oe5, oe7, oe2i, bm4a5, bm6bg, bm6b3b)で発現が認められ、歯胚上皮組織由来の細胞株(de3)では発現が認められなかった。
次に、口腔粘膜上皮組織由来の細胞株(oe5, oe7, oe2i, bm4a5, bm6bg, bm6b3b)及び歯胚上皮組織由来の細胞株(de1〜de5)と、CD−1マウス(胎齢16.5日)の下顎第一臼歯の歯胚から分離した歯胚間葉組織とを用いて、歯胚再構築を行った。
参考例と同様にして、口腔粘膜上皮組織由来の細胞株及び歯胚上皮由来の細胞株を用いて、第1の細胞集合体としての細胞凝集塊を作製した。
上記細胞凝集塊を用い、実施例1と同様にして再構成歯胚を作製した。
得られた再構成歯胚を、参考例と同様に培養して歯を作製し、組織学的解析を行った。結果を図8に示す。また、再構成歯胚によって作製できた歯の数を表3に示す。
12 細胞凝集塊(第1の細胞集合体)
14 細胞凝集塊(第2の細胞集合体)
16 ピペットチップ
Claims (8)
- 支持担体の内部に、歯胚以外の上皮系組織由来である培養細胞から実質的になる第1の細胞集合体と、歯胚由来である間葉系細胞から実質的になる第2の細胞集合体とを接触させて配置する配置工程と、
前記第1及び第2の細胞集合体を前記支持担体の内部で培養する培養工程と、
を含む歯の製造方法。 - 前記第1の細胞集合体を調製する第1の調製工程と、前記第2の細胞集合体を調製する第2の調製工程と、を前記配置工程の前に更に含む請求項1に記載の歯の製造方法。
- 前記第1の細胞集合体及び前記第2の細胞集合体の少なくとも一方が単一細胞集合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の歯の製造方法。
- 前記上皮系組織が、口腔内上皮系組織であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の歯の製造方法。
- 前記上皮系組織が、成体由来の上皮系組織であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の歯の製造方法。
- 前記培養細胞が、初代培養細胞であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の歯の製造方法。
- 前記培養工程を他の動物細胞の存在下で行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の歯の製造方法。
- 前記培養工程を、歯周組織が形成されるまで継続することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の歯の製造方法。
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