以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る電子鍵盤楽器の全体構成を示すブロック図である。
本鍵盤楽器は、鍵盤部KB、設定操作子2、ROM6、RAM7、タイマ8、表示装置9、外部記憶装置4、MIDIインターフェイス(MIDII/F)17、音源15が、バス16を介してCPU5にそれぞれ接続されて構成される。
また、CPU5にはタイマ8が接続され、MIDII/F17には外部のMIDI機器18が接続されている。音源15にはサウンドシステム3が接続されている。鍵盤部KBには、それぞれ複数の白鍵本体27及び黒鍵本体28が含まれ、さらに、各鍵本体27、28に対応して、押鍵スイッチ12及びタッチコントロールセンサ32が含まれる。設定操作子2には不図示の各種スイッチが含まれ、それらの操作による信号がCPU5に供給される。また、押鍵スイッチ12及びタッチコントロールセンサ32の検出信号もCPU5に供給される。
CPU5は、本楽器全体の制御を司る。ROM6は、CPU5が実行する制御プログラムや各種テーブルデータ等を記憶する。RAM7は、演奏データ、テキストデータ等の各種入力情報、各種フラグやバッファデータ及び演算結果等を一時的に記憶する。タイマ8は、タイマ割り込み処理における割り込み時間等の各種時間を計時する。外部記憶装置4は、上記制御プログラムを含む各種アプリケーションプログラムや各種楽曲データ、各種データ等を記憶する。
MIDII/F17は、外部のMIDI機器18からのMIDI(Musical Instrument Digital Interface)信号を入力したり、MIDI信号を外部装置に出力したりする。音源15は、鍵盤部KBから入力される演奏データや予め設定された演奏データ等を楽音信号に変換し、サウンドシステム3が、それらの楽音信号を音響に変換する。
図2は、本電子鍵盤楽器の主要部の断面図である。本鍵盤楽器は、鍵フレーム10に鍵ユニットUNTが取り付けられてなる。以降、本鍵盤楽器の奏者側(図2の左方)を前方とし、左右方向については奏者を基準として呼称する。なお、基板や、鍵フレーム10を支持する楽器本体の図示は省略されている。
鍵ユニットUNTは、例えば、所定鍵域(例えば、1オクターブ)分を単位として構成され、複数の白鍵本体27をそれぞれ有する第1白鍵ユニットWU1及び第2白鍵ユニットWU2と、複数の黒鍵本体28を有する黒鍵ユニットBUとが積層状態に組み付けられてなる。鍵フレーム10は、樹脂による一体成形、または樹脂と樹脂以外(金属等)の複合によって構成され、全鍵幅に亘る長さに一体に構成される。
図2に示すように、鍵フレーム10の前部10cの底部10caには、白鍵本体27、黒鍵本体28の押鍵時の下限位置(押鍵終了位置)を規制する下限ストッパ11が設けられる。鍵フレーム10の前後方向における中間に位置するほぼ水平な中間部10bの前部下部には、鍵本体27、28の非押鍵位置でもある離鍵時の上限位置(押鍵初期位置)を規制する上限ストッパ14が設けられる。下限ストッパ11、上限ストッパ14は、いずれもフェルト等の弾性部材で構成される。
図2に示すように、鍵フレーム10の中間部10bの前端部には、各白鍵本体27、黒鍵本体28に対応して、切り欠き部10dが形成されている。白鍵本体27、黒鍵本体28の各前部からは、押鍵されたときに下限ストッパ11に当接するストッパ当接片29、30が垂下して形成されている。ストッパ当接片29、30の下部における後方に延設された部分は、鍵フレーム10の中間部10bの対応する切り欠き部10d内に挿入されている。鍵フレーム10の中間部10bにはまた、白鍵本体27、黒鍵本体28の各々に対応して、2メイク式の押鍵スイッチ12(図1参照)が配設される。
詳細は図示しないが、黒鍵ユニットBUは、音高C#、D#、F#、G#、A#に相当する黒鍵本体28を備える。また、第1白鍵ユニットWU1は、音高C、E、G、Bに相当する白鍵本体27を備え、第2白鍵ユニットWU2は、音高D、F、Aに相当する白鍵本体27を備える。白鍵本体27、黒鍵本体28の前半部の上面は押鍵面27a、28aとして機能する。白鍵、黒鍵ユニットWU1、WU2、BUは、各々、樹脂で一体成形により構成される。
図2に示すように、黒鍵ユニットBUにおいて、各黒鍵本体28の後端部から薄板状のヒンジ部26が下方に延設され、ヒンジ部26の下端部が、所定鍵域(例えば、1オクターブ)分の長さに亘る黒鍵共通基端部23に接続されている。ヒンジ部26及び黒鍵共通基端部23は、鉛直方向に延び、鍵並び方向(左右方向)に平行である。各黒鍵本体28は、対応するヒンジ部26を介して、黒鍵共通基端部23を鍵支点部として上下方向(押離鍵方向)に回動(揺動)自在である。
黒鍵ユニットBUと同様に、第1白鍵ユニットWU1において、各白鍵本体27の後端部から、ヒンジ部24が下方に延設され、ヒンジ部24の下端部が、第1白鍵共通基端部21に接続されている。第2白鍵ユニットWU2において、各白鍵本体27の後端部から、ヒンジ部25が下方に延設され、ヒンジ部25の下端部が、第2白鍵共通基端部22に接続されている。各白鍵本体27は、対応するヒンジ部24、25を介して第1、第2白鍵共通基端部21、22を鍵支点部として上下方向に回動自在である。ヒンジ部24及び第1白鍵共通基端部21、ヒンジ部25及び第2白鍵共通基端部22は、いずれも同厚で鉛直方向に延び、押鍵面27aとは直角を成し、鍵並び方向には平行である。
鍵ユニットUNTは、事前に一体的に組み付けられて、鍵フレーム10に取り付けられる。第1白鍵ユニットWU1、第2白鍵ユニットWU2及び黒鍵ユニットBUが組み付けられる際には、図2に示すように、それぞれの共通基端部である第1白鍵共通基端部21、第2白鍵共通基端部22及び黒鍵共通基端部23が前方から順に積層される。これら共通基端部21〜23が当接して積層され、3層に積層状態となったものが、全鍵共通基端部20となる。
鍵フレーム10の後部10aには、センサ支持部13が設けられる。センサ支持部13の下部13aと、共通基端部21〜23とには、前後方向に貫通する図示しない同心の穴が形成されている。これらの穴を介して、ネジ19によって、後方から鍵フレーム10にセンサ支持部13と共通基端部21〜23とが共締め状態で螺着固定されている。これにより、白鍵本体27、黒鍵本体28が、鍵フレーム10に対して回動自在に支持される。
また、センサ支持部13の上部13bの前面に、上記したタッチコントロールセンサ32(図1参照)が設けられ、各タッチコントロールセンサ32の前側にフェルト等の衝撃緩衝性を有した弾性材31が設けられる。すなわち、タッチコントロールセンサ32及び弾性材31が、白鍵本体27、黒鍵本体28の各後端面27b、28bとセンサ支持部13の上部13bとの間に介在している。図2に示す非押鍵状態においては、後端面27b、28bと弾性材31とは僅かな間隙を有して近接している。センサ支持部13及び弾性材31は、鍵本体27、28の後方への過剰な変位を抑制するストッパ部としての機能を果たす。なお、弾性材31は、複数のタッチコントロールセンサ32に対して1つが対応するように鍵並び方向に長く構成してもよい。
タッチコントロールセンサ32は、従前のいわゆるアフタタッチ制御用のアフタセンサに用いられる一般的なものと同様の構成である。例えば、タッチコントロールセンサ32は、圧力に応じて導電性自体が変化する感圧部材(感圧導電ゴムやチタン酸バリウム等)を備えた感圧センサであって、受けた圧力に応じた信号を検出信号として出力する。なお、白鍵本体27、黒鍵本体28の各後端面27b、28bと弾性材31とは、非押鍵状態において、タッチコントロールセンサ32に検知されない程度の圧力で軽く当接していてもよい。
鍵ユニットUNTの鍵フレーム10への組み付け後は、押鍵操作すると、各白鍵本体27、黒鍵本体28が、ヒンジ部24〜26の弾性により下方(押鍵の往方向)に回動し、下限ストッパ11にストッパ当接片29、30の下端が当接して、押鍵終了状態となる。一方、押鍵を解除すると、各白鍵本体27、黒鍵本体28が、ヒンジ部24〜26の弾性により上方(押鍵の復方向)に回動し、ストッパ当接片29、30の後方に延びた部分の上端が上限ストッパ14に当接して、各白鍵本体27、黒鍵本体28が押鍵初期位置に復帰する。
ところで、ヒンジ部24、25、26は、押鍵面27a、28aよりも下の位置で下方に延び、押鍵面27a、28aよりも共通基端部21〜23が下に位置するので、これらヒンジ部が上方に延びた構成や一般的な水平ヒンジの構成に比し、押鍵時における押鍵面27a、28aの軌跡が良好なものとなる。すなわち、通常、押鍵面27a、28a上の任意の位置(以下、「押鍵点」と呼称する)は、押鍵により回動支点を中心とした円上を回動移動するので、前後方向に着目すると、押鍵が進むにつれて押鍵点は後方に移動していく。
しかし、それだけでなく、ヒンジタイプの鍵では、ヒンジ部の撓みによっても押鍵点が変位する。例えば、水平ヒンジでは、ヒンジ部前部が下方に撓むことによる、押鍵点の位置の後方への変位が加わる。ヒンジ部が上方に延びた構成においても、ヒンジ部下部が後方に撓むことによる、押鍵点の位置の後方への変位が加わる。押鍵点の後方への変位量は、少ない方が、演奏上好ましい。
ところが、本実施の形態では、押鍵により、ヒンジ部24、25、26の上部が前方に撓むので、ヒンジ部24、25、26の撓みは、上記回動支点を中心とした回動移動による後方への変位を相殺する方向に作用することになる。本実施の形態では、具体的には、押鍵往行程において、押鍵点の前後方向の位置は、徐々に前方に変位するようになっている。従って、白鍵本体27、黒鍵本体28の各後端面27b、28bについても、押鍵往行程において前方に変位する。
これにより、後端面27b、28bと弾性材31との前後方向の間隔は、押鍵初期位置に最小であり、白鍵本体27、黒鍵本体28が往方向に回動するにつれて徐々に大きくなって、押鍵終了位置において最大となる。また、上記のようなヒンジ部構成により、実質的な押鍵点の軌跡は、アコースティックグランドピアノのような長尺で鍵下部に支点を有する鍵における押鍵点の軌跡に近いものとなる。従って、押鍵面27a、28aの軌跡を良好にして、表現力向上にとってより好ましい状態にすることができる。
ここで、ヒンジ部24、25、26は、これらの上端が前後方向に撓むので、白鍵本体27、黒鍵本体28は、対応するヒンジ部24、25、26の撓みを介して前後方向に変位可能である。従って、何ら対策が施されていなければ、手等で前方から鍵本体27、28に後方への力がかけられると、鍵本体27、28は簡単に後方に変位してしまい、ヒンジ部24〜26に過剰な応力がかかるおそれがある。
しかしながら、本実施の形態では、非押鍵状態において、鍵本体27、28の各後端面27b、28bと弾性材31とが近接しており、鍵本体27、28に後方への力がかかれば、後端面27b、28bと弾性材31とが当接して、後方への操作力に抗する前方への力が、センサ支持部13から弾性材31を介して後端面27b、28bに与えられる。これにより、非押鍵状態における鍵本体27、28の後方への変位が抑制されるので、ヒンジ部24〜26の撓み量が少なくて済み、それらの塑性変形が防止される。その一方、押鍵初期位置を除けば、弾性材31から後端面27b、28bが離間するので、押離鍵行程における鍵本体27、28の回動動作には支障がない。
押鍵操作により、各押鍵スイッチ12は、白鍵本体27、黒鍵本体28のうち対応するものに押圧されて、押離鍵動作を検出する。また、非押鍵状態において鍵本体27、28が後方に付勢されると、その操作の有無と操作の程度(強さ)がタッチコントロールセンサ32によって検出される。鍵本体27、28の後方への操作は、主として、鍵前端側からの押圧によってなされる。そして、後述する図4でメイン処理を説明するように、押鍵スイッチ12で検出された押離鍵動作に基づく楽音を、音源15及びサウンドシステム3が発生させるようになっている。さらに、このようにして発生した楽音が、タッチコントロールセンサ32の出力信号に応じて制御されるようになっている。
図3(a)は、鍵盤部KBにおける一部の白鍵本体27の前端部の平面図である。図3(b)は、1つの白鍵本体27の前端部の平面図である。図3(c)は、変形例に係る1つの白鍵本体27の前端部の平面図であり、これについては後述する。
本実施の形態では、図3(a)、(b)に示すように、白鍵本体27の前端部27cは、平面視において、左右方向中央部が前方に突出した凸形状となっている。より具体的には、図3(b)に示すように、白鍵本体27の両側面における基点P1同士を結ぶ円弧状の曲線部27c1が形成されている。曲線部27c1において、両基点P1から最前端位置までの距離L1は、2.5〜7.5mm、好ましくは5mmに設定されている。図面上には表されていないが、基点P1には角張らないように微小のR形状が施されている。
このような形状により、例えば、グリッサンドのような演奏操作を白鍵本体27の前端部27cに対して前方から行う際、各白鍵本体27に対して後方への付勢力の増大/減少が円滑になる。従って、各白鍵本体27に対応するタッチコントロールセンサ32を、左右方向、すなわち、グリッサンドの操作方向に沿って次々とオン/オフさせることが容易となる。
上記のような前端形状は、鍵盤部KBにおけるすべての白鍵本体27に適用される。ただし、白鍵本体27のうちC鍵だけは、他の白鍵本体27よりも前端部27cの前方への突出が差Dだけ大きくなっている(図3(a)参照)。すなわち、基点P1の位置を全鍵共通として、上記距離L1がC鍵のものだけ大きく設定されている。なお、距離L1を同じくして基点P1の位置だけをC鍵だけ異ならせてもよいし、基点P1の位置及び距離L1共にC鍵だけ異ならせてもよい。要するに、前端部27cが他の白鍵本体27よりも突出していればよい。
これにより、C鍵の位置が視覚的にわかりやすいだけでなく、前方からの前端部27cに対するグリッサンド演奏操作時においても触覚によってオクターブの境目を認識容易となる。従って、C鍵の形状の違いが、演奏操作の際の指標となり得る。
なお、鍵前端側からのグリッサンドのような連続操作を円滑にする観点からは、前端部27cの鍵並び方向における中央部が平面視において前方に凸形状に形成されていればよく、円弧状に限られない。例えば、図3(c)に示すように、左右方向に平行なフラット部27c2と、白鍵本体27の両側面における基点P2とフラット部27c2とを直線的に結ぶ斜面部27c3とでカット型の凸形状が構成されてもよい。基点P2、及び、フラット部27c2と斜面部27c3との接続部にも、基点P1と同様の微小のR形状が施されている。
図3(c)の例において、中心線からのフラット部27c2の両端の距離をB、すなわち、フラット部27c2の幅を2×Bとすると、距離Bは、1〜4mm、好ましくは2.5mmに設定される。また、基点P2から最前端位置までの距離L2は、上記距離L1と同じとする。
図4は、本実施の形態におけるメインルーチンのフローチャートを示す図である。本処理は電源のオン時に開始される。
まず、初期化を実行、すなわち所定プログラムの実行を開始し、各種レジスタに初期値を設定して初期設定を行う(ステップS101)。次いで、パネル処理を実行、すなわち、設定操作子2の操作を受け付け、機器の設定や指示等を実行する(ステップS102)。次いで、楽音処理、すなわち、演奏データや、押鍵スイッチ12の検出信号に応じて演奏信号を生成し、発音消音処理を実行する(ステップS103)。このステップS103では、タッチコントロールセンサ32の検出信号もスキャンされる。
次に、検出信号を出力したタッチコントロールセンサ32は有効鍵域のものであるか否かを判別する(ステップS104)。すなわち、本実施の形態では、全鍵域ではなく、所定鍵域、例えば、音名C5〜B5までの鍵域を「有効鍵域」としている。この有効鍵域は、前記ステップS102のパネル処理で設定可能である。その判別の結果、検出信号を出力したタッチコントロールセンサ32が有効鍵域のものである場合は、ステップS105を実行してからステップS106に進む。一方、そうでない場合は、ステップS105を実行することなくステップS106に進む。ここで、上記有効鍵域は、前記ステップS102のパネル処理において設定される。全鍵域を有効鍵域とする設定も可能である。また、上記パネル処理において、アフタ制御処理自体の実行をしないというモードも設定可能であるとする。
前記ステップS105では、現在発音中の楽音に対して、「タッチコントロールセンサ32の検出信号に基づく楽音制御処理」(以下、「アフタ制御処理」と称する)を実行する。従って、有効鍵域における鍵本体27、28が後方に操作された場合にだけ、上記アフタ制御処理が実行され、有効鍵域以外の鍵本体27、28が後方に操作されても処理上は無視されることになる。
上記アフタ制御処理では、タッチコントロールセンサ32の検出信号が出力された際に発音中である楽音に対して、その楽音パラメータを制御する。その楽音パラメータとしては、音色、音量、ピッチ(音高)、エフェクト等の各種楽音パラメータが適用可能であり、どのパラメータを適用するかは、前記ステップS102のパネル処理でユーザにより割り当てされるとする。また、タッチコントロールセンサ32は、オンオフだけでなく、押圧の強さに応じた信号を出力するので、オンオフと、押圧の強さとに応じて楽音パラメータが制御される。なお、押圧の強さを無視して、オンオフのみに基づいて楽音パラメータが制御されるようにしてもよい。
一例として、有効鍵域C5〜B5鍵のいずれかの鍵本体27、28が後方に操作された場合は、その時点で発音中の楽音に対してビブラートがかかり、さらに、当該鍵本体27、28の後方への押圧強さに応じてビブラートの深さ(あるいは変化速さでもよい)が変化する。
他の一例として、前方からの白鍵本体27の前端部27cに対するグリッサンド演奏操作がされた場合は、その時点で発音中の楽音のピッチが連続的に変化して、いわゆるピッチベンド効果が付与される。例えば、有効鍵域C5〜B5鍵のうち、第1鍵から第2鍵までスライド操作すると、第1鍵から第2鍵までの音高差に応じた量(ピッチベンドレンジ)だけピッチが連続的に変化する。
特に、本実施の形態では、鍵本体27、28の後方への押圧強さの変化を、後方への操作中においても検出できる。従って、押圧強さに応じた制御内容を、制御中に変化させることも可能である。例えば、鍵本体27、28の後方への操作状態でその押圧力を変えることで、かかっているビブラートの深さを途中から深く/浅くする等の細かな制御も可能である。しかも、押鍵操作している手とは別の手で鍵本体27、28を後方へ操作することが可能であるので、多用な演奏が可能となる。
ここで、押鍵された鍵の離鍵後において当該鍵に対応する楽音の残音がある場合においては、当該鍵の残音も上記発音中の楽音に含まれる。また、アフタ制御処理による制御対象となる発音中の楽音は、リアルタイム演奏による楽音に限られず、演奏データに基づくものであってもよい。なお、アフタ制御処理による制御対象や内容はこれら例示したものに限られるものではない。前記ステップS106では、その他処理を実行して、前記ステップS102に戻る。
本実施の形態によれば、鍵本体27、28を、前後方向に変位可能に構成し、タッチコントロールセンサ32が、後端面27b、28bによって押圧されて、検出信号を出力し、その検出信号に基づいて、発音中の楽音の楽音パラメータが制御されるようにした。これにより、専用の操作子を設けることなく、非押鍵時の後方への鍵操作という、従来の押鍵状態でのアフタタッチ操作とは異なる新規な演奏操作によって、楽音を制御できるようになるので、演奏表現の幅が広がる。
特に、白鍵本体27の前端部27cの左右方向中央部が前方に凸形状となっているので、非押鍵時の鍵前端側からのグリッサンドのような連続操作等の後方への鍵操作によって楽音制御ができ、演奏態様を増やすことができる。よって、演奏表現力を向上させることができる。しかも、前端部27cが円弧状であるので、グリッサンドのような連続操作を円滑に行うことができる。
さらに、C鍵だけは、他の白鍵本体27よりも前端部27cの形状を異ならせたので、演奏位置(どこのオクターブ範囲を演奏しているのか等)を視覚及び触覚によって認識しやすくして、グリッサンド等の演奏操作の際の指標を得ることができる。
また、白鍵本体27及び黒鍵本体28は、白鍵ユニットWU1、WU2及び黒鍵ユニットBU中に複数分含まれ、個々に対応するヒンジ部24、25、26を介して、共通基端部21、22、23に接続されて一体に構成される。しかも、各白鍵本体27、黒鍵本体28は、それぞれ、個々に対応するヒンジ部24、25、26を介して、後方に単独変位可能で、各々の後方への操作が、対応するタッチコントロールセンサ32によって検出可能な構成となっている。これにより、複数の鍵本体27、28を鍵ユニットとして一体に構成して扱い容易にでき、なおかつ、後方への鍵操作を個別に検出することができる。
また、弾性材31が、鍵本体27、28の後方変位を抑制するストッパ部の機能を果たし、タッチコントロールセンサ32は、弾性材31に設けられて、弾性材31を介して鍵本体27、28から受ける圧力を検出するように配設された。これにより、鍵本体27、28の後方への動きを検出する機構の配設スペースが小さくて済む。
また、タッチコントロールセンサ32は、鍵本体27、28の後方への動きを検出できる場所であれば、どこに配設してもよいので、設計の自由度が高い。例えば、後述する第2の実施の形態でも配置場所を変えたものを例示するが、それ以外にも、例えば、鍵本体27、28の後半部下面等に下方に突出する突起部を設けると共に、該突起部に押圧されるタッチコントロールセンサを、鍵フレーム10の中間部10b上に配設するようにしてもよい。
なお、有効鍵域を、複数鍵域に分けて、分けた鍵域毎に異なる楽音パラメータをタッチコントロールセンサ32による制御対象として割り当ててもよい。例えば、音名C5〜B5鍵までがビブラート付与を対象とし、音名C6〜B6鍵までが音色変更を対象とする等である。このようにする場合は、上記したC鍵の前端部27cの形状違いが指標となって大いに役立つことになる。なお、さらに細かく、2〜3鍵または各鍵毎に異なる楽音パラメータを制御対象に割り当ててもよい。
なお、本実施の形態では、前端部27cの形状は、C鍵だけを他の白鍵本体27とは異ならせたが、これに限られず、例えば、C鍵を突出させずに逆に引っ込めてもよい、また、突出量で違いを出すことに限られず、形状を異ならせることだけでもよい。
また、どのオクターブを演奏しているのかを認識容易にする観点からは、前端部27cの形状は、上記開示した例に限られない。すなわち、各オクターブ内に含まれる白鍵本体27の前端部27cを、各々、複数のオクターブ間で共通としてもよい。例えば、1つのオクターブにおける最低音鍵から最高音鍵までの形状変化のパターン(例えば、高音側ほど徐々に突出量が大きくなる等)を、他のオクターブにおける形状変化のパターンと同様にすることで、どの音域のオクターブなのかが認識容易になる。なお、形状変化のパターンの変化を共通に構成することは、1オクターブを単位としてだけでなく、2オクターブ、あるいは複数鍵を単位として適用してもよい。
なお、白鍵本体27の前端部27cに凸形状を設けることは、全鍵域において適用することは必須でなく、前方からの操作がやりやすい一部の鍵域にのみ適用してもよい。また、本実施の形態では、白鍵本体27の前端部27cにのみ凸形状を適用したが、同様の形状を、黒鍵本体28の前端部に適用することを妨げるものではない。
なお、タッチコントロールセンサ32は、圧力センサに限られない。例えば、押圧力に応じた信号を出力するものであればよく、歪みセンサでもよい。また、構成を簡単にする観点からは、単純なオンオフ信号を出力するものであってもよい。
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態では、第1の実施の形態に比し、タッチコントロールセンサ、弾性材、上限ストッパ14、下限ストッパ11の各配置位置、及び、鍵本体27、28のストッパ当接片の形状が異なり、その他の構成は同様である。
図5は、本発明の第2の実施の形態に係る電子鍵盤楽器の主要部の断面図である。同図において、第1の実施の形態と同じ構成要素には同じ符号が付してある。
まず、図5に示すように、第1白鍵ユニットWU1、第2白鍵ユニットWU2及び黒鍵ユニットBUの全鍵共通基端部20が、ネジ19によって、後方から鍵フレーム10に直接、螺着固定されている。押離鍵による白鍵本体27、黒鍵本体28の動作は第1の実施の形態と同様であり、前後方向へも移動自在である。
また、上限ストッパ14は、鍵フレーム10の前部10cの下面に配設される。鍵フレーム10の中間部10bの上部前部には、上方に突出した突条部40が、鍵並び方向に沿って一体に形成されている。さらに、各鍵本体27、28に対応して、突条部40を含む中間部10bの前部上部に、タッチコントロールセンサ32に相当するタッチコントロールセンサ42が設けられ、各タッチコントロールセンサ42の前側に、弾性材31に相当する弾性材41が設けられる。
白鍵本体27、黒鍵本体28の各前部からは、ストッパ当接片29、30(図2参照)に相当するストッパ当接片43、44が垂下して形成されている。ストッパ当接片43、44は、ストッパ当接片29、30とは反対に、その下部が前方に延設され、該前方に延設された部分が、鍵フレーム10の中間部10bの対応する切り欠き部10d(図5参照)内に挿入されている。下限ストッパ11は、押鍵された鍵本体27、28のストッパ当接片43、44が当接するよう、第1の実施の形態(図2参照)に比し前側に配置されている。
図6は、本実施の形態におけるストッパ当接片43、44の拡大図である。弾性材41は弾性材31と同じ材料で構成され、鍵本体27、28の後方への過剰な変位を抑制するストッパ部としての機能を果たす点では同様である。しかし、その当接面の形状が異なっている。
すなわち、ストッパ当接片43、44と当接する側の前面である、弾性材41の当接面41aは、側面視前方に凸の曲率半径R1の曲面状に形成されている。一方、ストッパ当接片43、44において、弾性材41の当接面41aと対向する後面43a、44aは、側面視前方に凹の曲率半径R1の曲面状に形成されている。後面43a、44aと当接面41aとは僅かな間隙を有して近接している。非押鍵状態において鍵本体27、28が後方に付勢されると、両者が面当接し、第1の実施の形態と同様に、タッチコントロールセンサ42から検出信号が出力される。
また、図6に2点鎖線で示すように、少なくとも、ストッパ当接片43、44の後面43a、44aのうち当接面41aに対向する部分の曲面形状は、押離鍵による鍵本体27、28の回動行程において、その前後方向の位置が変化しないような形状になっている。すなわち、押離鍵行程のいずれのときでも、後面43a、44aと当接面41aとの間隔は一定である。これにより、押離鍵行程のいずれのときに鍵本体27、28が後方に付勢されたとしても、その後方への操作がタッチコントロールセンサ42によって一定の精度で検出される。なおかつ、後方への操作がない通常の押鍵操作を行う際には、後面43a、44aと当接面41aとが当接しないので、支障なく押鍵操作を行うことができる。
タッチコントロールセンサ42の検出信号に基づく楽音制御処理であるアフタ制御処理については、第1の実施の形態と同様であり、発音中の楽音の楽音パラメータが制御される。ただし、非押鍵状態時だけでなく、押鍵途中や押鍵終了状態においても、タッチコントロールセンサ42が信号を出力すれば、それに基づいて発音中の楽音の楽音パラメータが制御されるものとする。従って、演奏態様は第1の実施の形態よりも増す。
本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を奏する。それだけでなく、演奏態様を増やして演奏表現力を一層向上させることができる。
なお、本実施の形態において、アフタ制御処理における制御対象は、発音中の楽音のすべてとする代わりに、後方への操作がなされた当該鍵に対応する音高の楽音のみを制御対象としてもよい。そのようにした場合、例えば、押鍵終了状態、離鍵途中または離鍵後のいて当該鍵がさらに後方に操作されたときは、従来のアフタタッチ処理と同様の処理を当該鍵に対応する楽音に対して施すようにしてもよい。
なお、本実施の形態において、構成を簡単にする観点からは、後面43a、44a及び当接面41aの曲面構成を廃止してもよい。その場合、例えば、後面43a、44aの上下方向中間部にくびれを設ける等によって上下2箇所を当接部とし、少なくとも非押鍵時と押鍵終了時にだけ後面43a、44aと当接面41aとが適切に近接して、後方への鍵操作が適切に検出され得るようにすると共に、それ以外の押離鍵途中では互いに大きく離間して、後方への鍵操作が検出されないように構成してもよい。
なお、本実施の形態において、非押鍵状態時と押鍵終了状態時とで、アフタ制御処理における制御対象を異ならせるようにしてもよい。その場合、押鍵スイッチ12がオンされているか否かによって、押鍵状態を判別し、オンのときとオフのときとで、アフタ制御処理によって制御される楽音パラメータあるいはその制御内容を異ならせるようにすればよい。
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態では、第1の実施の形態に対して、タッチコントロールセンサ32に代えて押圧式のスイッチを設ける点が異なる。また、上限ストッパ14、下限ストッパ11の各配置位置、及び、鍵本体27、28のストッパ当接片の形状が異なり、その他の構成は同様である。
図7は、本発明の第3の実施の形態に係る電子鍵盤楽器の主要部の断面図である。同図において、第1の実施の形態と同じ構成要素には同じ符号が付してある。
まず、図7に示すように、第2の実施の形態と同様に、第1白鍵ユニットWU1、第2白鍵ユニットWU2及び黒鍵ユニットBUの全鍵共通基端部20が、ネジ19によって、後方から鍵フレーム10に直接、螺着固定されている。押離鍵による白鍵本体27、黒鍵本体28の動作は第1、第2の実施の形態と同様であり、前後方向へも移動自在である。
白鍵本体27、黒鍵本体28の各前部からは、ストッパ当接片43、44(図5参照)に相当するストッパ当接片56、57が垂下して形成されている。ストッパ当接片56、57は、後面43a、44a(図6参照)のような凹曲面が形成されておらず、側面視直線状の面である点が、第2の実施の形態におけるストッパ当接片43、44と異なり、その他の部分はストッパ当接片43、44と同様に構成される。
上限ストッパ14、下限ストッパ11の各配置は第2の実施の形態(図5参照)と同様である。鍵フレーム10の中間部10bの前部上部には、後方ストッパ55が固着等によって固定的に設けられている。後方ストッパ55は、弾性材31と同様の材料で構成される。後方ストッパ55は、各白鍵本体27、黒鍵本体28に対応して設けられるが、複数の鍵本体27、28に共通に設けてもよい。鍵本体27、28が押鍵初期位置にあるときには、後方ストッパ55の前面に、ストッパ当接片56、57の後面が近接している。鍵本体27、28が後方に付勢されると、後方ストッパ55にストッパ当接片56、57が当接し、鍵本体27、28の後方への過剰な変位を抑制するストッパ部としての機能が果たされる。
鍵フレーム10の後部10a上部には、スイッチ基板支持部50がネジ54によって固定され、スイッチ基板支持部50の前面上部には、スイッチ基板53がネジ58によって配設固定されている。そして、各鍵本体27、28に対応して、スイッチ基板53の上部に、複数メイク(例えば、2メイク)式の後方スイッチ52が設けられている。後方スイッチ52は、押鍵スイッチ12と同様に構成されるが、これに限られない。すなわち、押圧されてオンするものであればよく、メンブレンスイッチ、タクトスイッチ等でもよい。
一方、鍵本体27、28の後端面には、各後方スイッチ52に対向して、各々、アクチュエータ部51が一体に形成される等によって設けられる。非押鍵状態において、アクチュエータ部51は、対応する後方スイッチ52に僅かな間隙を有して近接している。非押鍵状態において鍵本体27、28が後方に付勢されると、アクチュエータ部51が後方スイッチ52を押圧し、後方スイッチ52がメイクして検出信号が出力され、その検出信号がCPU5に供給される。従って、後方への操作に関しては、オンオフと、後方への押圧強さ(ベロシティ)とが検出される。
そして、少なくともオンオフによって楽音パラメータが制御され、制御対象によっては押圧の強さによっても制御される。アフタ制御処理の内容は、第1の実施の形態と同様である。本実施の形態によれば、第1の実施の形態のように、鍵本体27、28の後方への操作状態においてさらなる押圧によって制御内容を変化させることはできないが、それ以外では、第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
なお、上記各実施の形態において、タッチコントロールセンサ32、42、後方スイッチ52をアフタ制御処理に利用したが、これ以外にも応用が考えられる。例えば、タッチコントロールセンサ32等のオンオフを、押鍵スイッチ12のオンオフと同様に見なし、キーオン/キーオフ信号として利用してもよい。この場合、タッチコントロールセンサ32のキーオンで発生する楽音と押鍵スイッチ12のキーオンで発生する楽音とは、異なった音色を割り当てておいてもよい。あるいは、どの鍵が後方に操作されたかによって、スプリット位置を決定する等の応用も可能である。
なお、上記各実施の形態において、押鍵終了状態におけるさらなる押鍵力を検出する従前の一般的なアフタセンサを併せて設けて、押鍵された鍵の楽音に対して該アフタセンサにより付与される効果(例えば、ビブラート)を、さらにタッチコントロールセンサ32、42、後方スイッチ52の出力によって変化(例えば、ビブラート深さや速さを制御)させるようにしてもよい。
なお、上記各実施の形態において、構成を簡単にする観点からは、タッチコントロールセンサ32等は、鍵毎ではなく複数鍵に共通に設け、当該複数鍵のうちどの鍵が後方に付勢されても検出信号が出力されるようにしてもよい。
なお、上記各実施の形態において、タッチコントロールセンサ32等は、全鍵に対応して設けるのではなく、一部の鍵域乃至鍵にのみ対応して設けてもよい。また、黒鍵本体28に対応するものを廃止して、白鍵本体27に対応するもののみ設けてもよい。
なお、上記各実施の形態において、構成を簡単にする観点からは、アフタ制御処理における制御対象の割り当ては、鍵域毎に固定されていてもよい。例えば、C4〜B4鍵にはビブラート効果付与、C5〜B5鍵にはトレモロ効果付与等を固定的に割り当てておいてもよい。
なお、上記各実施の形態において、鍵支点構成として、ヒンジ部24〜26が鉛直方向に延設された構成を例示したが、非押鍵時の後方への鍵操作に応じて楽音を制御して演奏表現力を向上させることに限っていえば、この構成に限るものではない。すなわち、鍵本体27、28を前後方向に移動自在に支持する鍵支点構成であればよい。
なお、鍵盤楽器の奥行き寸法を極力抑えると共に、押鍵面27a、28aの軌跡を良好にする観点からは、ヒンジ部24〜26は、押鍵面27aに対して交差し且つ鍵並び方向に平行に形成されていればよい。従って、例えば、後方に向かって下方に斜めに傾斜していてもよい。また、共通基端部自体はヒンジ部24〜26とは平行でなくてもよく、同厚である必要もない。また、ヒンジ部24〜26との間に前後方向の段差を有していてもよい。
なお、各鍵が鍵ユニットUNTの一部として構成されたものを例示したが、複数の鍵本体27、28の扱い容易の効果を求めないならば、各鍵が単体で構成されるものについても、本発明を適用可能である。
なお、押鍵に対して適当な慣性を付与するハンマ体が鍵に連動して回動するようにされたハンマ体付きの鍵盤楽器においても、本発明を適用可能である。
27c 前端部、 10 鍵フレーム、 27 白鍵本体(鍵本体部)、 28 黒鍵本体(鍵本体部)、 32、42 タッチコントロールセンサ(検出手段)、 52 後方スイッチ(検出手段)