JP2008024745A - ポリエステル組成物およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高濃度で硫酸バリウム粒子を含有しながらも、急激な濾過圧上昇が発生しないポリエステル組成物およびその製造方法の提供。
【解決手段】硫酸バリウム粒子を、組成物の重量を基準として、30〜70質量%添加されたポリエステル組成物であって、硫酸バリウム粒子が、小粒径側から積算した50%体積粒径(D50)が1〜3μmの範囲にあり、超音波処理を10分間処理したときの、粒径0.5μm以下の粒子量が、全粒子の体積を基準として、高々8%以下であるポリエステル組成物、ならびに硫酸バリウム粒子を風力分級によって小粒径側の硫酸バリウム粒子を取り除く工程、風力分級後の硫酸バリウム粒子を、得られる組成物の重量を基準として、ポリエステルに30〜70質量%となるように溶融混練する工程からなるポリエステル組成物の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、硫酸バリウム粒子を30質量%という高濃度に含有するポリエステル組成物およびその製造方法に関するものである。さらに詳しくは、溶融押出し成形、特に白色ポリエステルフィルムを製造するための溶融押出し製膜時に、硫酸バリウム粒子の粒子凝集による溶融ポリマーフィルターの圧力上昇を抑制できるポリエステル組成物およびその製造方法に関する。
ポリエステルに硫酸バリウム粒子を含有させて白色ポリエステルフィルムとすることが特開2000−37835号公報(特許文献1)や特開2005−125700号公報で提案されている。例えば特許文献1では硫酸バリウム粒子を10〜80質量%、また特許文献2では硫酸バリウム粒子粒子を10〜25質量%含有させている。
ところで、このように硫酸バリウム粒子を高濃度で含有させたとき、フィルムなどに製膜するため溶融押出しすると、異物などを除去するために設けられているろ過フィルターが目詰まりし、急激な濾過圧上昇が発生する。そして、このような濾過圧上昇が発生すると、溶融押出し時の吐出圧が変動したり、ひどい場合は吐出自体ができなくなってしまうという問題があった。
特開2000−37835号公報 特開2005−125700号公報 特開2004−50479号公報
本発明の目的は、上述の従来技術が有する問題を解消し、高濃度で硫酸バリウム粒子を含有しながらも、急激な濾過圧上昇が発生しないポリエステル組成物およびその製造方法、さらにそれを用いた白色ポリエステルフィルムを提供することにある。
上記従来技術の有する問題を解決しようと鋭意研究したところ、粒度分布が同じでも濾過圧上昇に違いがあり、単に含有する硫酸バリウム粒子の粒径の大小では解決できないことを確認した。そして、さらに研究を進めた結果、濾過圧上昇の大きなものは超音波処理した後に極めて粒径の小さな粒子が大量に存在することが判明した。硫酸バリウム粒子において、超音波処理によってこのような粒径の小さな粒子が発生する理由としては、硫酸バリウム粒子にはきわめて弱い結合力で小さな粒子が集合した凝集粒子が混在し、これが超音波処理などによって結合が破壊されるためと考えられる。また、小さな粒子の存在によって濾過圧が上昇する理由としては、粒径の小さな硫酸バリウム粒子は比表面積が大きく凝集力が強いことから、溶融押出し工程で再凝集して極めて大きな凝集粒子を形成しやすく、再凝集によって形成された極めて大きな凝集粒子がろ過フィルターを目詰まりさせるためだと考えられる。
そして、このような濾過圧上昇を引き起こす小さな粒径の硫酸バリウム粒子、すなわちもともと存在する粒径の小さな硫酸バリウム粒子と超音波処理などの比較的小さな外力によって解砕される硫酸バリウム粒子とをともに取り除いたのが本発明である。
かくして本発明によれば、小粒径から積算した50%体積粒径(D50)が1〜3μmの範囲にあり、超音波処理を10分間処理したときの、粒径0.5μm以下の粒子量が、全粒子の体積を基準として、高々8%以下である硫酸バリウム粒子を、組成物の重量を基準として、30〜70質量%添加したポリエステル組成物が提供され、さらにそれを用いた白色ポリエステルフィルムも提供される。
また、本発明によれば、風力分級によって小粒径側の硫酸バリウム粒子を取り除く工程、風力分級後の小粒径から積算した50%体積粒径(D50)が1〜3μmの硫酸バリウム粒子を、得られる組成物の重量を基準として、ポリエステルに30〜70質量%となるように溶融混練する工程からなるポリエステル組成物の製造方法も提供される。
さらにまた、本発明の好ましい態様として、硫酸バリウム粒子の小粒径から積算した90%体積粒径(D90)と10%体積粒径(D10)との比(D90/D10)が10以下であること、硫酸バリウム粒子の超音波処理前のD50を超音波処理後の小粒径から積算した50%体積粒径(D50’)で割った比が、1〜1.50の範囲にあること、超音波処理後の粒径3.0μm以上の硫酸バリウム粒子の粒子量が、全粒子の体積を基準として、20%以下であること、超音波処理によって増加した粒径0.5μm以下の硫酸バリウム粒子の量(体積基準で、(超音波処理後の粒径0.5μm以下の硫酸バリウム粒子の量)−(超音波処理前の粒径0.5μm以下の硫酸バリウム粒子の量)が5%以下であること、ポリエステルの主たる成分が、ポリエチレンテレフタレートあるいはポリエチレンナフタレートであることの少なくともいずれかひとつを具備するポリエステル組成物、ポリエステル組成物の製造方法およびそれを用いた白色ポリエステルフィルムが提供される。
本発明によれば、濾過圧上昇を引き起こす小さな粒径の硫酸バリウム粒子、すなわちもともと存在する粒径の小さな硫酸バリウム粒子と超音波処理などの比較的小さな外力によって解砕される硫酸バリウム粒子とが極めて少量であることから、高濃度に硫酸バリウム粒子を含有していながらも濾過圧の急激な上昇がなく、溶融押出し工程を安定的にかつ長期間行うことができ、またその結果として品質の均一な白色ポリエステルフィルムなどの成形品を得ることができる。
本発明のポリエステル組成物は、硫酸バリウム粒子を、組成物の重量を基準として、30〜70質量%添加していることが必要である。硫酸バリウム粒子の量が下限未満では、白色ポリエステルフィルムとしたときの白度や反射特性などが不十分となりやすい。特に本発明の濾過圧上昇の抑制効果がより効果的に発現されやすいことから、硫酸バリウム粒子の量の下限は35質量%以上、特に40質量%以上が好ましい。一方、硫酸バリウム粒子の量が上限を超えると、硫酸バリウム粒子が脱落しやすくなったり、フィルムへの製膜性が低下しやすい。好ましい硫酸バリウム粒子の量の上限は65質量%以下、特に60質量%以下である。
本発明におけるポリエステルとしては、特に制限はされないが、エチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステルまたはエチレンナフタレートを主たる繰返し単位、特に繰り返し単位の70モル%以上とするポリエステルがフィルムへの製膜性などの点から好ましい。具体的なエチレンテレフタレートあるいはエチレンナフタレート単位を構成する成分とするポリエステルとしては、ホモのポリエチレンテレフタレートやホモのポリエチレンナフタレートのほかに、第3成分を共重合した、共重合ポリエチレンテレフタレートあるいは共重合ポリエチレンナフタレートが挙げられる。上記第3成分(共重合成分)としては、前述の特許文献1や特許文献2で挙げられたような、それ自体公知のものを好適に使用することができる。
本発明における硫酸バリウム粒子は、レーザー散乱測定法によって粒度分布を測定したとき、小粒径から積算した50%体積粒径(D50)が1〜3μmの範囲にあることが必要である。平均粒径が下限未満では、粒径0.5μm以下の粒子の割合を抑えるのが困難となったり、フィルムとしたときの白度や反射特性が損なわれたりする。好ましいD50は、1.2〜2.5μm、特に1.4〜2.2μmの範囲である。
また、本発明における硫酸バリウム粒子は、前述のとおり、超音波処理を10分間行ってレーザー散乱測定法によって粒度分布を測定したとき、粒径0.5μm以下の粒子の個数が、全粒子の個数を基準として、高々8%以下であることが必要である。粒径0.5μm以下の粒子の個数が上限を超えると、溶融押出し時に急激な濾過圧上昇が発生してしまう。好ましい粒径0.5μm以下の粒子の個数の上限は、6%以下、特に5%以下である。このような硫酸バリウム粒子は、例えば後述の風力分級を行い、小粒径および小粒径となりやすい硫酸バリウム粒子を取り除くことで得ることができる。粒径0.5μm以下の粒子の個数の下限は特に制限されないが、風力分級などで極めて狭い粒径範囲の粒子だけを取り出したとしても、通常1%程度は存在する。
さらに、本発明で使用する硫酸バリウム粒子について、詳述する。
硫酸バリウム粒子粒子は、超音波処理を施していない状態で、小粒径から積算した90%体積粒径(D90)と10%体積粒径(D10)との比(D90/D10)が、10以下、さらに9以下、特に7以下であることが好ましい。上限を超えると、粒径0.5μm以下の硫酸バリウム粒子が発生しやすかったり、再凝集によらないフィルターを目詰まりさせうるような粗大粒子の割合が増え、結果として濾過圧上昇の抑制効果が乏しくなりやすい。なお、D90/D10の下限は特に制限されないが、風力分級などで極めて狭い粒径範囲の粒子だけを取り出したとしても、通常2.0程度である。
また、溶融押出し工程における条件の変化による影響を緩和しやすいことから、超音波処理を施していない状態での硫酸バリウム粒子のD50を、超音波処理を施した後の硫酸バリウム粒子のD50‘で割った比は、1〜1.50、さらに1〜1.3、特に1〜1.2の範囲にあることが好ましい。超音波処理前後のD50の変化が上限を超えると、長期間連続している間に溶融押出し条件が変化すると濾過圧上昇が大きくなったり、得られるフィルムの白度や反射特性にわずかながら変化が生じてしまうことがある。
また、本発明で使用する硫酸バリウム粒子は、濾過圧上昇を抑制するために、超音波処理前の粒径0.5μm以下の硫酸バリウム粒子の量が、全粒子の体積を基準として10%以下、さらに8%以下であることが好ましい。また、濾過圧上昇を抑制したり、溶融押出し工程における条件の変化による影響を緩和したりしやすいことから、超音波処理によって増加した粒径0.5μm以下の硫酸バリウム粒子の量(超音波処理後の粒径0.5μm以下の硫酸バリウム粒子の全粒子体積に占める割合−超音波処理前の粒径0.5μm以下の硫酸バリウム粒子粒子の全粒子体積に占める割合)は5%以下、さらに3%以下、特に1%以下であることが好ましい。また、粗大粒子の存在による欠点や濾過圧上昇を抑制するために、超音波処理後の粒径3.0μm以上の硫酸バリウム粒子の粒子量が、全粒子の体積を基準として、20%以下、さらに15%以下であることが好ましい。
ところで、本発明のポリエステル組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、例えば前述の特許文献3に記載の蛍光増白剤、UV吸収剤、酸化防止剤、熱安定剤、粘度調整剤、可塑剤、色相改良剤、核剤などの添加剤をポリマー中に含有させもよいし、酸化チタンなどのような白色顔料系の微粒子を併用してもよい。
次に、本発明のポリエステル組成物の製造方法について説明する。なお、特に断りのない限り、前述のポリエステル組成物で説明したのと同様なことがいえる。
本発明のポリエステル組成物の最大の特徴は、ポリエステルに添加する硫酸バリウム粒子として、特定の粒度分布を有するものを添加したことにある。そして、このような特定の粒度分布を有する硫酸バリウム粒子を得る方法は、特に制限されないが、通常の市販されている硫酸バリウム粒子をそのまま用いたり、小さい粒径のものを取り除くだけでは、超音波処理によって解砕される硫酸バリウム粒子が存在し、本発明の効果を発現させることはできない。そして、単に粒径の小さな硫酸バリウム粒子を取り除くのではなく、風力分級を用いることで、小粒径の硫酸バリウム粒子を取り除く際に、超音波処理によって解砕されるような弱い結合力で凝集している硫酸バリウム粒子をも分級処理時の風の力によって同時に解砕し、取り除けることを見出したのがもう一つの本発明であるポリエステル組成物の製造方法の特徴である。なお、風力分級の条件は用いる装置によって異なることから特定はできないが、前述のポリエステル組成物で説明した粒度分布になるように適宜調整すればよい。
なお、硫酸バリウム粒子中にある凝集粒子の解砕は、使用する風力分級処理装置によっても異なるが、例えば風力を大きくしたり、分級処理を繰り返すことによってより進めることが出来、一方小粒径の粒子の除去は、例えば粒径の比較的小さいが粒子の集まり(微粉)と粒径の比較的小さいが粒子の集まり(粗粉)の2つに分ける場合、微粉の割合を高くするほどより効果的に取り除くことが出来る。
硫酸バリウム粒子の製造方法としては、沈殿法が好ましく挙げられる。具体的な製造方法はクンストストッフ−ジャーナル(Kunststoff−Journal)8、No.10、30−36頁、又はNo.11、31−36頁に記載されており、バリウム塩と硫酸塩または硫酸から製造でき、平均粒径は反応条件により制御できる。
ポリエステルへの添加方法としては、重合段階での添加でも、一旦ポリエステルを製造したあと、溶融混練する際に添加してもよいが、30質量%以上という高濃度で硫酸バリウム粒子を添加することから、重合反応への影響を無くし、また重合反応容器の汚染などを防ぐ観点から、一旦ポリエステルを製造した後、それに溶融混練で前述の添加量となるよう添加するのが好ましい。
例えば、硫酸バリウム粒子を粉体の状態で供給する場合、原料であるポリエステル用押し出し機と当押し出し機に定量的に粉体供給が可能な供給装置を兼ね備えた溶融混錬押し出し機を用意し、これにポリエステル樹脂と硫酸バリウム粒子とを供給して溶融混錬し、押し出し、冷却すればよい。このときの硫酸バリウム粒子の濃度は30〜70%が好ましく、濃度が低いとフィルムにしたときの反射率が低く十分な性能を発揮できず、逆に濃度が高くなると粒子の分散性が低下しフィルター圧が上昇するので好ましくない。押し出し機は均一な混錬が可能で、粒子の分散性に効果的な二軸タイプが好ましく、例えばニーディングディスクおよび逆ねじの混錬用エレメントを配したスクリュー構成を有するベント式二軸混錬押し出し機などを好ましく挙げることが出来るが、それに限定されるものではない。
このようにして得られたポリエステル組成物は、単層フィルムの場合は、ダイから溶融したポリマーを押し出し未延伸シートとすること、積層フィルムの場合はフィードブロックを用いた同時多層押出し法により、積層未延伸シートを製造し、それらを製膜方向もしくは幅方向、好ましくはその両方向に延伸し、必要に応じて熱固定処理などを行えばよい。製膜方向の延伸としては、2個以上のロールの周速差を利用して行うのが好ましい。延伸温度はポリエステルのガラス転移点(Tg)以上の温度、更にはTg〜Tg+70℃の温度とするのが好ましい。延伸倍率は、用途の要求特性にもよるが、製膜方向、幅方向とも、好ましくは2.5〜4.0倍、さらに好ましくは2.8〜3.9倍である。
以下、実施例により本発明をさらに説明する。なお、得られたポリエステル組成物の特性は下記の方法で測定、評価した。
(1)極限粘度(IV)
ポリエステル0.6gをオルトクロロフェノール50ml中に、加熱溶解した後、一旦冷却させ、その溶液をオストワルド式粘度管を用いて35℃の温度条件で測定した溶液粘度から算出した。
(2)硫酸バリウム粒子の粒度分布測定
粒度分布は、超音波発信器を有するフローセル方式供給装置(多機能サンプラーSALD−MS70)を有する島津製作所製レーザー散乱式粒度分布測定装置SALD−7000を使用して測定した。
測定前のエチレングリコールへの分散は、硫酸バリウム粒子粉体を5質量%スラリー濃度相当になるよう計量して、家庭用ミキサー(たとえばNational MXV253型料理用ミキサー)で10分間攪拌し、常温まで冷却したのち、フローセル方式供給装置に供給した。そして、該供給装置中で、脱泡のために30秒間超音波処理(超音波処理の強度は超音波処理装置のつまみをMAX値を示す位置から60%の位置)してから測定に供した。そして、粒度分布測定結果より小粒径から積算した粒径0.5μm以下の粒子の量(体積分率)、粒径3.0μm以下の粒子の量(体積分率)、10%体積粒径(D10)、50%体積粒径(D50)、90%体積粒径(D90)を求めた。なお、超音波処理は施しているが、これは脱泡のためであり、これらの測定値を超音波処理前の測定値とした。
また、超音波処理時間をさらに10分間行った以外は同様にして、小粒径から積算した粒径0.5μm以下の粒子の量(体積分率)、粒径3.0μm以下の粒子の量(体積分率)、10%体積粒径(D10’)、50%体積粒径(D50’)、90%体積粒径(D90’)を求めた。この値を超音波処理後の測定値とした。
(3)樹脂組成物の濾過性評価
得られた硫酸バリウム粒子を含有するポリエステル組成物をぺレットの状態で、吐出部に2000メッシュの金網フィルターを取り付けた(株)東洋精機製作所製小型二軸押し出し機(ラボプラストミル:二軸スクリュウフルフライト2D25S型)に300℃にて2Kg/Hrの流速で供給し、フィルター圧力の変化を測定した。そして、下記式より濾過圧上昇度(△P値)を算出した。
△P=P60−P15
(ここでP15はテスト開始15分後のフィルター圧力(MPa)を、P60はテスト開始60分後のフィルター圧力(MPa)をそれぞれ示す。)
(4)参考例1:ポリエステル樹脂Aの製造
テレフタル酸ジメチル89部およびイソフタル酸ジメチル11部とエチレングリコール70部の混合物に、テトラ−n−ブチルチタネート(Ti元素として0.0025部)を加圧反応が可能なSUS製容器に仕込み、0.07MPaの加圧を行い140℃から240℃に昇温しながらエステル交換反応させた後常圧に戻し、リン酸トリメチル0.0087部を添加し、エステル交換反応を終了させた。
その後重合触媒として酸化ゲルマニウム0.021部を加え、混合物を重合容器に移し、常法にて高真空のもと重縮合反応を行い、最終内温が290℃まで昇温し反応を終了させ、極限粘度0.71、融点が226℃のポリエステル樹脂Aを得た。
[比較例1]
沈降法によって製造された平均粒径が1.92μmの硫酸バリウム粒子を用意した。この硫酸バリウム粒子の超音波処理前後のD10、D90および粒径0.5μm以下の粒子の頻度は表1に示すとおりであった。
この硫酸バリウム粒子と上述のポリエステル樹脂Aとを、神戸製鋼所製混錬押し出し機NEXT−60型機にそれぞれ定量性を持つフィーダーより連続供給し、600回転、樹脂温310℃にて混錬し、続いて押し出し機にて250℃にてストランド状に押し出し、これをカッティングして、極限粘度尾(IV)0.55dl/g、硫酸バリウム粒子濃度63%のポリエステル組成物からなるペレットを得た。このときの生産能力(速度)は120Kg/Hrとした。
そして、得られたポリエステル組成物のペレットを140℃で4時間乾燥ののち、前述の濾過性評価の方法に沿って、濾過試験に供したところ、濾過圧上昇度(△P)は3.8MPaであった。
[実施例1]
比較例1に用いた硫酸バリウム粒子を、株式会社セイシン企業製気流分級機クラッシールN−20型機にて回転数3000rpm、処理速度20Kg/Hrにて風力分級処理し粗粉と微粉に分級し、微粉をカットした。このときの粗粉の収率は70%で、粗粉の硫酸バリウム粒子の超音波処理前後の各種粒径および粒径0.5μm以下と3μm以上の粒子の頻度は表1に示すとおりであった。
特性を表1に示す。この粗粉を用いて比較例1と同様にしてポリエステル組成物樹脂Bを製造した。
そして、得られたポリエステル組成物のペレットを140℃で4時間乾燥ののち、前述の濾過性評価の方法に沿って、濾過試験に供したところ、濾過圧上昇度(△P)は0.54MPaであった。
[実施例2]
実施例1の風力分級処理において、同様の条件にて分級を2回繰り返し、表1に示す粉体物性の粗粉をえた。このとき2回合計の粗粉収率は30%となった。この粗粉を実施例1と同様にしてポリエステル組成物を製造した。なお、粗粉の硫酸バリウム粒子の超音波処理前後の各種粒径および粒径0.5μm以下と3μm以上の粒子の頻度は表1に示すとおりであった。
超音波処理前後のD10、D90および粒径0.5μm以下の粒子の頻度は表1に示すとおりであった。
そして、得られたポリエステル組成物のペレットを140℃で4時間乾燥ののち、前述の濾過性評価の方法に沿って、濾過試験に供したところ、濾過圧上昇度(△P)は0.35MPaであった。
[比較例2]
実施例1において、硫酸バリウム粒子を粗分ではなく、カットした微粉に変更した以外は同様な操作を繰り返した。なお、微粉の硫酸バリウム粒子の超音波処理前後の各種粒径および粒径0.5μm以下と3μm以上の粒子の頻度は表1に示すとおりであった。
そして、得られたポリエステル組成物のペレットを140℃で4時間乾燥ののち、前述の濾過性評価の方法に沿って、濾過試験に供したところ、濾過圧上昇度(△P)は5MPaを超えるものであった。
Figure 2008024745
本発明のポリエステル組成物およびその製造方法は、濾過圧上昇を引き起こす小さな粒径の硫酸バリウム粒子、すなわちもともと存在する粒径の小さな硫酸バリウム粒子と超音波処理などの比較的小さな外力によって解砕される硫酸バリウム粒子とが極めて少量にすることができることから、高濃度に硫酸バリウム粒子を含有していながらも濾過圧の急激な上昇がなく、溶融押出し工程を安定的にかつ長期間行うことができ、品質の均一な白色ポリエステルフィルムなどの成形品の原料およびその製造方法として好適に使用することが出来る。

Claims (6)

  1. 硫酸バリウム粒子を、組成物の重量を基準として、30〜70質量%添加されたポリエステル組成物であって、
    硫酸バリウム粒子が、小粒径側から積算した50%体積粒径(D50)が1〜3μmの範囲にあり、超音波処理を10分間処理したときの、粒径0.5μm以下の粒子量が、全粒子の体積を基準として、高々8%以下であることを特徴とするポリエステル組成物。
  2. 硫酸バリウム粒子の小粒径から積算した90%体積粒径(D90)と10%体積粒径(D10)との比(D90/D10)が10以下である請求項1記載のポリエステル組成物。
  3. D50を、超音波処理を10分間処理したときの小粒径側から積算した50%体積粒径を(D50’)とするとき、D50をD50’で割った比が、1〜1.50の範囲にある請求項1又は2記載のポリエステル組成物。
  4. ポリエステルの主たる成分が、ポリエチレンテレフタレートあるいはポリエチレンナフタレートである請求項1〜4記載のポリエステル組成物。
  5. 溶融押出し成形によってフィルムに製膜される請求項1記載のポリエステル組成物。
  6. 硫酸バリウム粒子を風力分級によって小粒径側の硫酸バリウム粒子を取り除く工程、風力分級後の小粒径から積算した50%体積粒径(D50)が1〜3μmの硫酸バリウム粒子を、得られる組成物の重量を基準として、ポリエステルに30〜70質量%となるように溶融混練する工程からなることを特徴とするポリエステル組成物の製造方法。
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