JP2008020416A - ヒータ付きセンサチップの異常検出装置及び異常検出方法 - Google Patents

ヒータ付きセンサチップの異常検出装置及び異常検出方法 Download PDF

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Abstract

【課題】被測定媒体である気体を加熱するヒータをチップ上に備えたセンサチップに気体中の水蒸気が降りかかってこのセンサチップが水で覆われた場合など、センサチップの機能不全に至る異常状態を迅速に検出し、このヒータ付きセンサチップの備わったシステムに異常発生を確実に知らせる。
【解決手段】被測定媒体である気体を加熱するヒータ抵抗体Rhをチップ上に備えたヒータ付きセンサチップ10の異常検出装置であって、ヒータ付きセンサチップが、ヒータの上流側と下流側の温度バランスの変化を検出することでセンサチップ上の気体の流速を計測するようになっており、かつヒータを加熱するための電圧が一定の閾値を超えるとセンサチップに異常が発生したとしてこの異常発生信号を出力するようになっている。
【選択図】図1

Description

本発明は、被測定媒体である気体を加熱するヒータをチップ上に備えかつこの気体の流量や熱物性を検出可能なセンサチップの異常を検出し、この異常発生をセンサチップが備わったシステム(以下、単にシステムと称することもある)に迅速に知らせるヒータ付きセンサチップの異常検出装置及び異常検出方法に関する。
極めて小さいシリコンチップ上にヒータと測温抵抗体をパターニングしてこのシリコンチップ上を流れる空気やガスなどの気体の流量を計測可能としたヒータ付きセンサチップは従来から知られている(例えば、特許文献1参照)。
かかるシリコンチップは、例えば約1.7mm角のシリコン基板のチップ上に異方性エッチングにより約1μmの膜状のダイアフラムを形成すると共に、このダイアフラムの下にキャビティを形成している。そして、ダイアフラムの中央部に導体パターンからなるヒータ抵抗体Rhを配置し、このヒータ抵抗体Rhを挟むように両側に導体パターンからなる上流側測温抵抗体Ruと下流側測温抵抗体Rdを配置している。
また、ダイアフラムの周囲近傍のシリコン基台上には導体パターンからなる周囲温度検出用抵抗体Rrを配置している。そして、ヒータ抵抗体Rhにはオペアンプから電源を供給している。
そして、ヒータ抵抗体Rhに電圧をかけると電流が流れて発熱する。気体が流れていないとき、上流側測温抵抗体Ru及び下流側測温抵抗体Rdはヒータ抵抗体Rhによって等しく温められるので、両者の抵抗値は等しい。気体が流れているとき、上流側測温抵抗体Ruに比べて下流側測温抵抗体Rdがより温められるので、上流側測温抵抗体Ruの抵抗値に比べて下流側測温抵抗体Rdの抵抗値が高くなる。上流側測温抵抗体Ruと下流側測温抵抗体Rdがその一部をなすブリッジ回路とオペアンプで両者の抵抗値のバランスの変化を検出することで、センサチップ上の気体の流量を計測するようになっている。
特許第2602117号公報(2頁、第1図)
このような極めて小さいセンサチップを燃焼機器に備えることで、燃焼機器の小型化を図りつつ最適な燃焼制御が行われている。かかるセンサチップの燃焼機器への利用の一例として、このセンサチップを燃焼機器のバーナに向かう空気導通路中に備え、空気がバーナに向かって空気導通路中を確実に流れているかどうかの確認を行うのに用いられている。
しかしながら、燃焼機器は様々な用途や環境において用いられるものであるから、場合によっては燃焼機器の空気流路内に非常に湿った空気が流れ込んでくることもあり、空気中の高い露点において水蒸気が霧状(ミスト状)になってセンサチップ上に降りかかることが考えられる。このときは、センサチップ自体は極めて小さいので、降りかかった霧状の水分が水滴化してセンサチップが水で完全に覆われてしまうことがある。
また、燃料電池システムは、概して、主要な構成要素としてセルスタック、改質器、改質器を加熱するためのバーナ、改質器から出力される水素リッチガス中に含まれる一酸化炭素を取り除くための選択酸化部などからなっている。これらの構成要素は全て空気の供給を必要とし、それぞれ流量をモニタしたりフィードバック制御したりする必要があるため、空気流路内にセンサチップが搭載されている。そして、各構成要素に空気を供給する必要があり、燃焼機器と同様の原因でセンサチップが水で覆われてしまうことがある。
その他、CH系ガスを分析するためのガス分析器において、水分が混入したガスをその計測対象とするときに、上述と同様にセンサチップが水で覆われてしまうことがある。
上述したような現象により、センサチップが一旦水で覆われると、熱量としては微細な気体の熱的変化をとらえることを目的として、非常に繊細な設計がされているこのセンサチップは、この水が蒸発するまで機能不全に陥る。センサチップは上述の通り極めて小さな寸法形状を有しており、ヒータ抵抗体Rhの発生熱量は気体測定用に設計されていて非常に小さいため、自己発熱でセンサチップ上の水を乾燥させて除去することはほぼ不可能であり、一旦このような事態に陥るとセンサチップが機能不全のままとなって、センサチップからの信号を利用する例えば燃焼機器や燃料電池などのシステムの正常な作動を妨げるおそれがある。
一方、例えば特開平9−304140号公報には、発熱式流量計の結露対策の構造が記載されている。この結露対策の具体的構造は、発熱抵抗体の両端部に備わった導電性支持部材を覆う絶縁板の一部に座ぐりを形成し、この座ぐりを利用して発熱抵抗体とは関係のない部位に結露水を流すことで、絶縁板に付着した結露が導電性支持部材を伝わって発熱抵抗体まで滴下しないようにしている。
しかしながら、このような座ぐりを設けても、本願発明のような小型のセンサチップの結露対策としては十分な効果を期待できない。
本発明の目的は、被測定媒体である気体を加熱するヒータをチップ上に備えたセンサチップに気体中の水蒸気が霧状となって降りかかってセンサチップが水で覆われた場合など、センサチップの機能不全に至る異常状態を迅速に検出し、このヒータ付きセンサチップの備わったシステムに異常発生を確実に知らせることにある。
上述の課題を解決するために、本発明にかかるヒータ付きセンサチップの異常検出装置は、
被測定媒体である気体を加熱するヒータをチップ上に備えたヒータ付きセンサチップの異常検出装置であって、
前記ヒータ付きセンサチップが、前記ヒータの上流側と下流側の温度バランスの変化を検出することでセンサチップ上の気体の流速を計測するようになっており、かつ前記ヒータを加熱するための電圧が一定の閾値を超えると前記センサチップに異常が発生したとしてこの異常発生信号を出力することを特徴としている。
このような気体の流速を計測可能なヒータ付きセンサチップにおいて、ヒータを加熱するための電圧が一定の閾値を超えるとヒータ付きセンサチップに異常が発生したとしてヒータ付きセンサチップの機能不全の情報をシステムが利用することにより、このヒータ付きセンサチップを備えたシステムは誤作動を防止又は損害を最小に食い止めることができる。
また、本発明の請求項2に記載のヒータ付きセンサチップの異常検出装置は、
被測定媒体である気体を加熱するヒータをチップ上に備えたヒータ付きセンサチップの異常検出装置であって、
前記ヒータ付きセンサチップが、前記ヒータを加熱することによって被測定対象としての気体の熱物性を検出するようになっており、かつ前記ヒータを加熱するための電圧が一定の閾値を超えると前記センサチップに異常が発生したとしてこの異常発生信号を出力することを特徴としている。
また、本発明の請求項3に記載のヒータ付きセンサチップの異常検出方法は、ヒータ付きセンサチップは、前記ヒータを加熱することによって被測定対象としての気体の流速若しくは熱物性を検出するものであり、前記ヒータを加熱するための電圧、電流及び電力の何れか一つが予め定められた閾値を超えたことに基づいて前記ヒータ付きセンサチップ表面への水の付着を検出することを特徴としている。
このような気体の熱物性を検出可能なヒータ付きセンサチップにおいて、ヒータを加熱するための電圧が一定の閾値を超えるとヒータ付きセンサチップに異常が発生したとしてヒータ付きセンサチップの機能不全の情報をシステムが利用することにより、このヒータ付きセンサチップを備えたシステムは誤作動を防止又は損害を最小に食い止めることができる。
本発明によると、測定対象である気体を加熱するヒータをその表面に備えたセンサチップが水で覆われた場合など、センサチップの機能不全に至る異常状態を迅速に検出し、このヒータ付きセンサチップの備わったシステムに異常発生を確実に知らせるヒータ付きセンサチップの異常検出装置を提供できる。
より具体的には、気体の流量を計測可能なセンサチップか、気体の熱物性を検出可能なセンサチップにおいて、ヒータを加熱するための電圧が一定の閾値を超えるとセンサチップに異常が発生したとしてセンサチップの機能不全の情報をシステムが利用することにより、このセンサチップを備えたシステムは誤作動を防止又は損害を最小に食い止めることができる。
以下、本発明の一実施形態にかかるヒータ付きセンサチップの異常検出装置について説明する。なお、本明細書においては、抵抗素子の符号をもってその抵抗値を表すことがある(例えば、抵抗素子R1の抵抗値はR1である)。また、「電位」と「電圧」とを区別せずに「電圧」と表記する。本発明の一実施形態にかかるヒータ付きセンサチップの異常検出装置は、図1に示すように、システムとしての燃焼機器50に備わった流量計1の異常検出の一機能を果たすようになっている。
この流量計1は、燃焼機器50の一部をなす流路100に備わったヒータ付きセンサチップ10と、ヒータ付きセンサチップ10のヒータ抵抗体Rh(図2参照)を制御すると共に後述の測温抵抗体によるセンシングを行うセンサ制御回路20と、センサ制御回路20に電気的に接続された電圧検出部30(A/D変換器)と、電圧検出部30に電気的に接続され、システムとしての燃焼機器50に流量信号及びセンサチップ10の異常発生信号を送る処理部40を備えている。この電圧検出部30及び処理部40は、マイクロコンピュータにより実現される。また、燃焼機器50からは流量計1に電力が供給されるようになっており、流量計1の内部に設けられた図示しない電源ユニットにおいて安定した直流電流に変換されて、流量計1内部の各構成要素に給電される。
流量計1のヒータ付きセンサチップ10は、いわゆるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)によるセンサチップであり、例えば、背景技術の欄における特許文献1記載のものと同様の構成を有している。図1では詳細には示さないが、このヒータ付きセンサチップ10は、例えば約1.7mm角のシリコン基板のチップ上に異方性エッチングにより約1μmの膜状のダイアフラムを形成すると共に、このダイアフラムの下にキャビティを形成している。そして、ダイアフラムの中央部に物性安定度の高い例えば白金のパターンからなるヒータ抵抗体Rhを配置し、このヒータ抵抗体Rhを挟むように両側に例えば白金のパターンからなる上流側測温抵抗体Ruと下流側測温抵抗体Rdを配置している。
また、ダイアフラムの周囲近傍のシリコン基台上には例えば白金のパターンからなる周囲温度検出用抵抗体Rrを配置している。そして、ヒータ抵抗体Rhにはセンサ制御回路20を介して燃焼機器50から電源を供給している。
白金は安定かつ大きな温度抵抗係数を有しており、白金で構成された周囲温度検出用抵抗体Rr及びヒータ抵抗体Rhは温度制御に利用される。もちろん、この性質は白金に限定されるものではなくパーマロイやニクロムなどの金属材料等が同様の目的に使用されることがある。
白金でできたヒータ抵抗体Rhに電圧をかけるとヒータ抵抗体Rhが発熱してセンサチップ近傍の気体を加熱し、ヒータ抵抗体Rhの上流側と下流側の温度バランスの変化を上流側測温抵抗体Ruと下流側測温抵抗体Rdが一部をなすブリッジ回路とオペアンプで検出することで、センサチップに備わった流路100の気体の流量を計測するようになっている。
図2は、センサ制御回路20のうち、ヒータ付きセンサチップ10のヒータ抵抗体Rhを制御する部分のみを示した回路図である(以下、この部分のみを指してセンサ制御回路20ということもある)。この回路は、ヒータ抵抗体Rhに印加される電圧又はセンサ制御回路の抵抗ブリッジに印加される電圧を監視する電圧検出部30(マイクロコンピュータに含まれている)に電気的に接続されている。
図2に示すヒータ回路の具体的構成は、大きく3つの部分から構成されている。第1の部分はセンサチップ上に白金パターンとして形成された発熱用のヒータ抵抗体Rhと周囲温度検出用抵抗体Rrからなり、第2の部分はセンサチップ上の抵抗体と電橋(ブリッジ)を構成させる為の抵抗素子R1,R2,R3からなり、第3の部分は、電源供給と平衡検出の為のオペアンプUBである。
周囲温度検出用抵抗体Rr及びヒータ抵抗体Rhは前述したように白金の物性による温度抵抗係数を持ち、温度が大きくなると、その抵抗値も比例して大きくなる性質をもつ。
具体的には、ブリッジは、抵抗素子R1,R3,Rrの直列接続と、抵抗素子R2及びヒータ抵抗体Rhの直列接続とをさらに並列接続して形成される。抵抗素子R1と抵抗素子R2の接続点がブリッジの給電端をなし、ヒータ抵抗体Rhと周囲温度検出用抵抗体Rrの接続点がブリッジの接地端をなす。ブリッジの給電端はオペアンプUBの出力端子に接続されており、オペアンプUBから給電を受ける。また、抵抗素子R1と抵抗素子R3の接続点がオペアンプUBの非反転入力端子に接続されており、抵抗素子R2とヒータ抵抗体Rhの接続点がオペアンプUBの反転入力端子に接続されている。
抵抗素子R1と抵抗素子R3の接続点は、オペアンプの出力電圧VbをR1:(R3+Rr)に分圧した電圧(基準電圧)を示す。抵抗素子R2とヒータ抵抗体Rhの接続点は、オペアンプの出力電圧VbをR2:Rhに分圧した電圧Vaを示す。
ヒータ抵抗体Rhはセンサチップの薄いダイアフラム上に構成されているので、センサ基台から熱的に絶縁されている。周囲温度検出用抵抗体Rrはセンサチップのシリコン基台上に構成されているので、その温度はシリコン基台の温度、すなわち周囲温度を示す。ヒータ抵抗体Rhを周囲温度検出用抵抗体Rrに対して温度上昇させる目的のため、ヒータ抵抗体Rhの温度と周囲温度検出用抵抗体Rrの温度が同等であるときには、抵抗素子R1と抵抗素子R3の接続点電位が、抵抗素子R2とヒータ抵抗体Rhの接続点電位より高くなるようにブリッジ回路の定数設計がされる。
つまり、ヒータ抵抗体Rhと周囲温度検出用抵抗体Rrの温度が同等のときは、オペアンプUBの非反転入力の電位が反転入力の電位を上回り、オペアンプUBのゲインにより増幅されてオペアンプUBの出力電位がブリッジの給電端に印加される。
このとき、ヒータ抵抗体Rh及び周囲温度検出用抵抗体Rrもそれぞれブリッジ回路の抵抗分圧に対応して、ブリッジ給電電位に比例した電圧がかかると同時に電圧に対応した電流が流れるため、それぞれの抵抗体で消費される電力に対応した発熱が起きる。
ところが、周囲温度検出用抵抗体Rrはセンサチップのシリコン基台上に構成されているため、その温度は上昇することなく周囲温度と同等の温度を保つのに対して、ヒータ抵抗体Rhは、センサ基台から熱絶縁されているため周囲の気体と同時に温度上昇していく。ヒータ抵抗体Rhの温度上昇に伴ってヒータ抵抗体Rhの抵抗値が、前述の通り上昇するため、ブリッジ回路のうち、抵抗素子R2対ヒータ抵抗体Rhの分圧比のみ変化する。このことにより、オペアンプUBの非反転入力と反転入力の関係はヒータ抵抗体Rhの温度上昇に伴って変化し、ヒータ抵抗体Rhの温度上昇に対応して非反転入力と反転入力の差が小さくなり、オペアンプUBの出力即ちブリッジ回路給電電位が小さくなってくる。従って、ヒータ抵抗体Rhの消費電力即ち発熱も小さくなり、ヒータ抵抗体Rh及び周囲の気体の温度上昇が鈍くなってきて、ある一定の温度上昇となるとヒータ回路は平衡状態となり、その結果、周囲温度に対するヒータ抵抗体Rhの温度上昇は一定となる。この意味において、オペアンプUBはヒータ抵抗体Rhの温度上昇に対して負帰還作用を持つと言える。
また、図示しない直流電源Vccから電力供給を受けて作動するオペアンプUBは、上記の通りヒータ抵抗体Rhの温度上昇を自動調節するものである。なお、抵抗素子R1,R3の定数により、ヒータ抵抗体Rhの温度を任意に変更する設計が可能である。なお、ヒータ抵抗体Rhと周囲温度検出用抵抗体Rr以外の抵抗素子R1〜R3及びオペアンプUBは、例えばセンサチップ10が搭載されたプリント基板上に実装されている。
そして、センサ制御回路20が正常に動作している限り、オペアンプUBに加わる入力電圧は平衡しているので、流量センサ1のヒータ周囲が常に設定された温度まで上昇した状態となる。
一方、処理部40は、ここでは詳細には図示しないが、以下のように構成された周知のものである。センサチップ10の2つの測温抵抗体Ru,Rdを直列に接続し、これらの両端に定電圧を付与する。測温抵抗体RuとRdの中点の電圧と、基準電圧(定電圧)とを差動増幅器に入力して比較することにより両電圧の差を検出し、この差に基づいてマイクロコンピータで流量の計算を行う。即ち、流量が増加すると上流側測温抵抗体Ruと下流側測温抵抗体Rdの温度差による抵抗差は増加するので、基準電圧より電圧が大きく変化することになり、電圧変化は計測する流量に応じた値をとる。
なお、電圧検出部30は、オペアンプUBの出力端子と、抵抗素子R2及びヒータ抵抗体Rhの中点と、接地端子とに接続されて、それぞれの電圧Vb,Vaを測定する。例えば図2に示す電圧Vbを常に監視することで、図3に示すように、ヒータ抵抗体Rhを加熱するのに必要な電圧を常に把握している。そして、センサチップ10が水で覆われず正常な状態にあるときは、Vbは、図3の実線で示すように電圧VとVの範囲内に収まっている。
しかしながら、例えば経過時間tでセンサチップ10が水で覆われてしまうと、図3の二点鎖線で示すように、Vbは、所定の閾値Vt(図示しないメモリに予め設定されている)を越えて電源電圧Vccに限りなく近づいていく。
この現象は、ヒータ抵抗体Rhが水で覆われて、ヒータ抵抗体Rhの温度が水の温度即ち周囲温度つまり周囲温度検出用抵抗体Rrの温度と同等まで冷却されたため、オペアンプUBの非反転入力の電位が反転入力より高くなったため起こる。
また、センサチップ上で水蒸気が霧状に結露して降りかかってセンサチップを覆い尽くすときの水の温度は、周囲温度と同等であると考えるのが自然であるが、さらに言えば、このときのセンサチップを覆っている水の温度自体がセンサチップにとっての周囲温度となっている。
上のような状態は、露点の高い気体又は霧状に水を含んだ気体がセンサチップ上に迷い込んできたことが原因で引き起こされ、センサチップ上のヒータ抵抗体Rhの発熱にもかかわらず、その発熱を上回ってセンサチップ上に結露してしまう状態であり、ヒータ抵抗体Rhの発熱が継続していたとしても、原因そのものが取り除かれない限り回復することはない。
従って、電圧検出部30は、電圧Vbを常に監視し、この電圧Vbが所定の閾値Vtを越えるとセンサチップ10が何らかの機能不全に陥っているとして、この異常発生を異常発生信号として処理部40から燃焼機器50に知らせる。なお、この他に、次のような一般に常用されている判定方法も適用可能である。(1)電圧Vbが閾値を超えたまま所定時間が経過したときに異常と判定する。(2)電圧Vbが電源電圧Vccに到達したときに異常と判定する。(3)電圧Vbが電源電圧Vccに到達したまま所定時間が経過したときに異常と判定する。このような判定は、予め記憶されているプログラムに基づいてマイクロコンピュータが演算を行うことで実施される。
このように、センサチップ上で結露等が発生した場合、例えばVbの電圧が電源電圧Vccに近づく。この理由は、ガスや空気などの気体に比べると水の熱容量が非常に大きく、又、熱伝導率も気体に比べると水は非常に高い為、ヒータ抵抗体Rhの発熱量が絶対的に不足してしまい、ヒータ抵抗体Rhを覆う水の温度が気体に比べて非常に上昇しにくくなるからである。上述の通り、オペアンプUBはその負帰還作用により両入力端子の電圧を等しくするために出力を増加させるが、いつまで経ってもヒータ抵抗体Rhの温度が上昇しない(すなわち抵抗値が上昇しない)ため、出力を増加させた状態が継続することになる。
上述の通り、図2に示すセンサ制御回路20は、ヒータ抵抗体Rhの周囲温度が低ければ、電圧を上げてヒータ抵抗体Rhの電力を上げるように制御する回路となっているが、水が付着するとブリッジ回路となっている電圧は電源電圧Vccまで近づいてしまう。本実施形態にかかるヒータ付きセンサチップの異常検出装置は、マイクロコンピュータにより構成される電圧検出部30を用いて、電圧Vbを常に監視し、処理部全体の異常として処理し、処理部40において燃焼機器50にセンサチップ10の異常発生を発報する仕組みになっている。
なお、この場合、図2に示す電圧Vaも電圧検出部30で監視し、この電圧Vaがゼロ電位に近くなった場合に電圧Vbが閾値Vtを超えたことと併せて、ヒータ抵抗体Rhが水で覆われるなどの機能不全を起こしたと判断しても良い。このように電圧Vbの監視に加えて電圧Vaも常に監視することで、センサチップ10が機能不全に陥ったか否かの判断の信頼性をより向上させることができる。
なお、ここでは電圧Vb,Vaに基づいて異常判定を行う例を述べたが、これに限らず、ブリッジ上の何れのノードにおける電圧に基づいても異常判定を行うことが可能である。例えば抵抗素子R3と周囲温度検出用抵抗体Rrとの中点電圧を用いることも可能である。
以上のように、センサチップ10の異常発生を検出したときは、システムとして構成された燃焼機器50の燃焼制御部にセンサチップ10が機能不全と陥ったことを知らせる異常発生信号が送られる。これにより、燃焼機器50の燃焼制御部は、センサチップ10の出力を無視して安全上支障のない範囲で燃焼制御を継続するか、燃焼制御部を停止してポストパージ等の安全性確保の処理を行う。
ヒータ付きセンサチップ10がこのような異常検知装置を備えることで、露点の高い空気に含まれた水蒸気がセンサチップ上に滴下してヒータ付きセンサチップが機能不全に陥るのを迅速に検出する効果を有している。
一方、このようなシステムが燃料電池の場合にも、本発明におけるヒータ付きセンサチップを備えた流量計を適用することが可能である。即ち、燃料電池は、燃料ガスから発生させた水素ガスと、空気中の酸素とを反応させて電力を取り出すものであるが、この燃料ガス、水素ガス及び空気の流量を測定するための流量計に本発明の異常検知装置が用いられる。異常が検知された場合には燃料電池システムの制御装置に通知される。
また、本発明にかかるヒータ付きセンサチップ10の異常検知装置は、ガス成分分析器にも適用可能である。
ガス成分分析器は、ヒータを一定温度にした時にガスの熱物性に対応して変化するヒータ電力の差などを利用してガス組成を分析する機能を有している。そして、このガス成分分析器を用いることで、ガス中のメタン、プロパン、ブタン等の様々なガスの割合を分析することが可能となる。このガス成分分析器には、MEMSに関するヒータ付きセンサチップが用いられることがある。即ち、例えば特開2001−221758号公報に示すように、ガス成分分析器に発熱型のセンサチップが用いられている。具体的には、同文献の段落番号(0013)に記載されたように、センサのメンブレン上に抵抗体パターンからなる発熱体が形成され、この発熱体は、同文献の段落番号(0003)に記載されたように制御回路により一定温度に駆動されるようになっている。
この場合も、上述した2種類のシステムと同じようにセンサチップ10に露点の高い被計測ガス中の水蒸気がセンサチップ上に滴下してセンサチップが機能不全に陥っていることを電圧検出部30で検出し、図1に示す処理部40の代わりにここでは図示しないガス物性検出部を介してシステムとしてのガス成分分析器50に知らせ、このガス成分分析器50にとって安全上支障のない範囲でセンサチップ10の出力信号を無視するか、又はガス成分分析器自体の作動を停止するなど適切な手段を講じることが可能になる。
以上説明したように、本発明にかかるセンサチップの異常検出装置は、気体の流量を計測可能なセンサチップか、気体の熱物性を検出可能なセンサチップにおいて、ヒータを加熱するための電圧が一定の閾値を超えるとセンサチップに異常が発生したとしてセンサチップの機能不全の情報をシステムが利用することにより、このセンサチップを備えたシステムの誤作動を防止又は損害を最小に食い止めることができる。
ここまでは、ヒータの上流及び下流にそれぞれ設けられた測温抵抗体により温度分布の状態を検出することによって気体の流速を測定する方式の流量計に、本発明を適用した実施例を述べてきた。しかしながら、本発明の適用範囲はこれにとどまらない。例えば、ヒータを常に一定温度に保つための消費電力から気体の流速を検出する、いわゆる自己発熱型の流量計に対しても本発明を適用可能である。この場合、ヒータを加熱するための電圧、電流及び電力のいずれか一つが予め定められた閾値を超えたことに基づいて前記ヒータ付きセンサチップの表面に水が付着したと判定することが可能である。
本発明にかかるヒータ付きセンサチップの異常検出装置をこれが備わるシステムとしての燃焼機器や燃料電池と共に示した図である。 図1に示すヒータ付きセンサチップのヒータ部分の回路図である。 電圧検出部がヒータ付きセンサチップの正常状態と異常状態を区別するためのVb電圧を時間との関係で示した図である。
符号の説明
1 流量計
10 (ヒータ付き)センサチップ
20 センサ制御回路
30 電圧検出部(マイクロコンピュータ)
40 処理部(マイクロコンピュータ)
50 燃焼機器、燃料電池、ガス成分分析器
100 流路
R1,R2,R3 抵抗素子
Rd 下流側測温抵抗体
Rh ヒータ抵抗体
Rr 周囲温度検出用抵抗体
Ru 上流側測温抵抗体
経過時間
UB オペアンプ
,V 電圧
Va,Vb 電圧
Vcc 電源電圧
Vt 閾値

Claims (3)

  1. 被測定媒体である気体を加熱するヒータをチップ上に備えたヒータ付きセンサチップの異常検出装置であって、
    前記ヒータ付きセンサチップが、前記ヒータの上流側と下流側の温度バランスの変化を検出することでセンサチップ上の気体の流速を計測するようになっており、かつ前記ヒータを加熱するための電圧が一定の閾値を超えると前記センサチップに異常が発生したとしてこの異常発生信号を出力することを特徴とするヒータ付きセンサチップの異常検出装置。
  2. 被測定媒体である気体を加熱するヒータをチップ上に備えたヒータ付きセンサチップの異常検出装置であって、
    前記ヒータ付きセンサチップが、前記ヒータを加熱することによって被測定対象としての気体の熱物性を検出するようになっており、かつ前記ヒータを加熱するための電圧が一定の閾値を超えると前記センサチップに異常が発生したとしてこの異常発生信号を出力することを特徴とするヒータ付きセンサチップの異常検出装置。
  3. 被測定媒体である気体を加熱するヒータをチップ上に備えたヒータ付きセンサチップの異常検出方法であって、
    前記ヒータ付きセンサチップは、前記ヒータを加熱することによって被測定対象としての気体の流速もしくは熱物性を検出するためのものであり、
    前記ヒータを加熱するための電圧、電流及び電力の何れか一つが予め定められた閾値を超えたことに基づいて前記ヒータ付きセンサチップ表面への水の付着を検出するヒータ付きセンサチップの異常検出方法。
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