JP2008018392A - 菌濃縮殺菌装置および方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】電極4,5の間に交流電源3を印加し、流路6の流体中の菌9を誘電泳動により集める(菌濃縮)。菌濃縮が所定濃度に達した時、菌濃縮検知部13より検知信号を発し、パルス電源12を電極10と電極4,5に印加する。菌は集めて殺すし、流路6のギャップ間隔Gを小さく作っておけばパルス電圧は低くて済むので、殺菌効率が良い。
【選択図】図1
Description
薬剤による殺菌は、当初は効果があるものの、やがてその薬剤に対する耐性を具えた耐性病原菌の出現を招くことが多かった。すると、次にはそれに効く新たな薬剤の開発を迫られるということになり、結局、病原菌の変身とのイタチごっこに陥ることになる。これでは、新薬開発の度に多額の費用がかかるばかりか、いくら新薬を作ってもきりがないという欠点がある。
加熱殺菌は、病原菌が死滅するまで加熱して殺菌するものである。しかし、加熱殺菌では比較的長時間加熱しなければならないので、加熱により変質し易い商品(例、成分が熱で変質する飲料等の商品)の殺菌に使うのは、望ましくない。なぜなら、確かに殺菌は出来るが、商品が加熱により変質してしまい、商品価値を落としてしまうからである。
非加熱殺菌は、加熱以外の方法で病原菌を物理的に破壊して死滅させるものであり、例えば、電気パルス,マイクロ波,紫外線,オゾン,超高圧力を利用したものがある。これらによる殺菌は常温で行うことが出来るので、含有成分を変質させることもないという利点を有している。このようなことから、最近、非加熱殺菌が注目されて来ている。
病原菌の細胞膜を不可逆的に破壊するのに必要とされるのは、約10kV/cm以上の電界であるが、電極間のギャップ間隔dを小さく製作することがなされていなかったので、上記のような電界を生じさせる必要上、電極間に印加する電圧はどうしても高電圧とならざるを得なかった。
このように、高電圧を要するという事情や印加パルス数を多くしなければならないという事情があるため、どうしても所要電力が多くなり、殺菌効率が悪くなっていた。
またこの他に、高電圧パルスによる放電音は意外と大きく、周囲に耳障りな騒音を撒き散らすという問題点もあった。
本発明は、以上のような問題点を解決することを課題とするものである。
また、この構成に、該菌濃縮部による菌の濃縮が所定濃度に達したことを検知して検知信号を発する菌濃縮検知部を加え、該検知信号が発された時より物理的破壊手段部による殺菌がなされる構成とすることも出来る。
なお、前記した第4,第5の電極のギャップ側に面した表面に、放電痕発生防止のための誘電体板を施すようにしてもよい。
また、前記した各装置において、基盤の同一平面上に間隔を置いて第1,第2の電極を配設するに際し、互いに他方の電極に近い側の側縁を櫛の歯状にし、一方の電極の歯と歯との間に他方の電極の歯が配置されるよう配設することも出来る。
また、本発明で提案する第2の菌濃縮殺菌方法は、流体中の菌を誘電泳動により集めて濃縮する第1の過程と、所定濃度に菌が濃縮されたことを検知して検知信号を発する第2の過程と、該検知信号が発された時より菌に対する物理的破壊措置を講ずる第3の過程とにより、流体中の菌を殺菌するようにした方法である。
前記の第1,第2の菌濃縮殺菌方法における物理的破壊措置としては、電界の印加という措置を採用することも出来るし、ラジカルの散布という措置を採用することも出来る。
また、電界印加のためにパルス電圧を使用する場合でも、放電ギャップを微小にすれば低電圧のパルスで済むので、パルス放電の音は小さく、耳障りな騒音を周辺に撒き散らすこともない。特に、電極の表面を保護するため誘電体で覆うようにすると、放電は誘電体を介して行われることになるが、この場合の放電は無声放電とも言われる程、放電音を生じない。
本発明は、誘電泳動を利用して流体中の病原菌を集め(菌濃縮し)、集めた病原菌に対し物理的破壊措置を講ずるものであるが、物理的破壊措置として電界の印加を採用したものを第1の実施形態で説明し、ラジカルの散布を採用したものを第2,第3の実施形態で説明する。
図1は、本発明の菌濃縮殺菌装置の第1の実施形態を示す図である。図1において、1は菌濃縮殺菌装置、2は基盤、3は交流電源、4,5は電極、6は流路、7,8はスペーサ、9は菌、10は電極、11は流路形成体、12はパルス電源、13は菌濃縮検知部、30は物理的破壊手段部、31は菌濃縮部である。Gは、電極10と電極4(5)との間のギャップ間隔である。
図2は、本発明の菌濃縮殺菌装置の要部の斜視図であり、符号は図1のものに対応している。流路6に病原菌を含んでいる流体を流して殺菌するわけであるが、白抜きで描いてある大きな矢印は、その流体の流れ方向を示している。
先ず、ガラス等の絶縁部材である基盤2の表面に、平板状の電極4,5を並べて形成する。そして、絶縁部材のスペーサ7,8を介し、電極4,5に対向するよう平板状の電極10を形成する。流路形成体11は断面U字型とされ、電極10およびスペーサ7,8を外側から覆うと共に、電極4,5が形成された基盤2との間に流路6を形成する。この流路形成体11も絶縁部材で作る。
ここで誘電泳動による菌濃縮について説明する。誘電泳動は、流体中の誘電体微粒子が電界中に置かれると、分極し、分極と電界との相互作用力により、電気力線の密度が大の部分へと移動させられる現象である。誘電泳動は、交流電源で生ぜしめることが出来る。病原菌は、誘電体微粒子の1種であるから、誘電泳動を利用して、電気力線の密度大の部分に集めることが出来る(つまり、菌濃縮をすることが出来る。)。
なお、誘電泳動に関する特許文献としては、特開2002−174636公報,特開2003−000223号公報等がある。
誘電泳動力を求める式は理論的に明らかにされているが、それには誘電体微粒子の複素誘電率や、誘電体微粒子を含む流体の複素誘電率等が関係している。そして、それら複素誘電率には、印加電界の角周波数(即ち図1の交流電源3の周波数)が関係している。
従って、誘電泳動力を大にするには、流体の種類や誘電体微粒子の種類に応じて、交流電源3の周波数を適宜選定してやる必要がある(例えば、100KHz〜10MHz程度とする等)。
(なお、「誘電泳動」に類似する用語として「電気泳動」があるが、これは誘電泳動とは異なる。電気泳動は、荷電粒子が電界中に置かれると、荷電極性とは反対の極性の電極に向かって移動して行くという現象である。この場合に電極間に印加される電源は、直流電源である。)
低電圧による放電であるから、放電音は小さなものとなり、周囲に耳障りな騒音を撒き散らすこともなくなる。
第1の実施形態では、病原菌に物理的破壊措置を講ずる手段としてパルス電源12による電界を用いているから、物理的破壊手段部30は、パルス電源12,電極4,5,10等によって構成される。
なお、上例ではインピーダンスを監視することにより菌濃縮を検知する例を述べたが、電極4,5間のコンダクタンスも菌濃縮の程度により変化するので、コンダクタンスを監視することにより検知するようにしてもよい。
既に説明したように、誘電泳動は電気力線の密度が大の部分へ微粒子が移動する現象であるから、誘電泳動を生ずるための電極4,5の対向部分は、電気力線の密度大の部分が出来るだけ多く出来るような形状となっているのが望ましい。
図3はそのような形状の1例を示したもので、電極4,5の対向部分を櫛の歯状にし、一方の櫛の歯と歯との間に他方の櫛の歯が入り込むように配設したものである。このようにすると、単に長方形状の電極が並べて配置されている図1(図2)のものに比べ、電気力線の密度大の部分を多くすることが出来、菌濃縮能力(菌捕集効果)を大にすることが出来る。
このようにして量の要望にも応え得ることは、以下に述べる他の実施形態の装置についても、同様である。
なお、菌濃縮の濃度の検知は、誘電泳動により菌が集められることによって変化する第1,第2電極間のインピーダンス(或いはコンダクタンス)を測定することにより行うことが出来る。
図4は、本発明の菌濃縮殺菌装置の第2の実施形態を示す図である。符号は図1のものに対応し、14は菌混入液、15は空間、16,17は電極、18は放電、19は交流電源である。同じ符号のものは図1の場合と同様のものであるので、それらについての説明は省略する。電極16,17は、流路形成体11の内側であって、電極4,5と対向する側の面に設けられる。電極16と17とは、互いに少し離されて(例えば、数百ミクロン離されて)配置される。
ラジカルを生じる放電をするために交流電源19に必要とされる電圧や周波数は、電極16と17との間隔、あるいは両者の間に満たされている流体の種類(例、空気,水)等により当然異なって来るが、それらを適宜設定することにより、数100V,数10Hz〜数100kHz程度のものにすることが出来る。このような交流電源は、格別の昇圧回路を組み込んだりしなくとも実現出来るから、安価に得ることが出来る。
図4に示すように、流路6の上下のギャップ間隔Gは、流路6断面の下半分を使って菌混入液14を流し、その上半分は空間15のままとしておくことも出来る。
このことからも理解されるように、第2の実施形態では、菌濃縮が行われる位置の上方で放電が行われるように、各電極の位置を決めるのが望ましい。
なお、ラジカルの発生は、空間(気体)中での放電のみならず、液体中での放電によっても行うことが出来るから、図4の流路6の全部を菌混入液14で満たし(つまり空間15を残さずに)、その液中で電極16,17間の放電を行うようにしてもよい。
電極16,17の表面を誘電体板20で覆えば、放電は薄い誘電体板20を介して行われるので、電極16,17の表面が放電痕により損傷されることがない。また、誘電体を介して行われる放電は、無声放電とも言われるように、放電音を生じることがない。従って、周囲に騒音を撒き散らすことがない。
なお、菌濃縮の濃度の検知は、誘電泳動により菌が集められることによって変化する第1,第2電極間のインピーダンス(或いはコンダクタンス)を測定することにより行うことが出来る。
図6は、本発明の菌濃縮殺菌装置の第3の実施形態を示す図であり、符号は図4のものに対応している。
これは、図4の第2の実施形態から菌濃縮検知部13を取り除いた構成のものである。菌濃縮検知部13は、菌濃縮がなされたかどうかを検知して、検知した時に初めて交流電源19を印加するために設けられているものである。
なお、図6の装置の変形例として、図5で示したように、誘電体板20で電極16,17を覆うようにした装置とすることも出来る。
Claims (15)
- 流体中の菌を誘電泳動により集めて濃縮する菌濃縮部と、
該菌濃縮部で濃縮した菌を物理的に破壊する措置を講ずる物理的破壊手段部と
を具えたことを特徴とする菌濃縮殺菌装置。
- 流体中の菌を誘電泳動により集めて濃縮する菌濃縮部と、
該菌濃縮部による菌の濃縮が所定濃度に達したことを検知して検知信号を発する菌濃縮検知部と、
該検知信号が発された時より濃縮した菌を物理的に破壊する措置を講ずるようにした物理的破壊手段部と
を具えたことを特徴とする菌濃縮殺菌装置。
- 絶縁部材の基盤と、
該基盤の同一平面上に間隔を置いて配設された第1,第2の電極と、
該第1,第2の電極とギャップを隔てて配設された第3の電極を内側に具えると共に該ギャップを菌混入流体の流路として形成する断面U字型の流路形成体と、
前記第1,第2の電極間に接続され、前記菌混入流体の菌に誘電泳動を生ぜしめるための交流電源と、
前記第1,第2の電極間における菌濃縮の濃度が所定値に達したことを検知して菌濃縮検知信号を発する菌濃縮検知部と、
前記検知信号が発された時より前記第3の電極と前記第1,第2の電極との間に印加され、前記菌混入流体中の菌を物理的に破壊する電界を生ぜしめるパルス電源と
を具えたことを特徴とする菌濃縮殺菌装置。
- 絶縁部材の基盤と、
該基盤の同一平面上に間隔を置いて配設された第1,第2の電極と、
該第1,第2の電極とギャップを隔てて配設された第4,第5の電極を内側に具えると共に該ギャップを菌混入流体の流路として形成する断面U字型の流路形成体と、
前記第1,第2の電極間に接続され、前記菌混入流体の菌に誘電泳動を生ぜしめるための交流電源と、
前記第1,第2の電極間における菌濃縮の濃度が所定値に達したことを検知して菌濃縮検知信号を発する菌濃縮検知部と、
前記検知信号が発された時より前記第4,第5の電極との間で放電するよう印加され、前記菌混入流体中の菌を物理的に破壊するラジカルを生ぜしめる第2の交流電源と
を具えたことを特徴とする菌濃縮殺菌装置。
- 絶縁部材の基盤と、
該基盤の同一平面上に間隔を置いて配設された第1,第2の電極と、
該第1,第2の電極とギャップを隔てて配設された第4,第5の電極を内側に具えると共に該ギャップを菌混入流体の流路として形成する断面U字型の流路形成体と、
前記第1,第2の電極間に接続され、前記菌混入流体の菌に誘電泳動を生ぜしめるための交流電源と、
前記第4,第5の電極との間で放電するよう印加され、前記菌混入流体中の菌を物理的に破壊するラジカルを生ぜしめる第2の交流電源と
を具えたことを特徴とする菌濃縮殺菌装置。
- 第4,第5の電極のギャップ側に面した表面に、放電痕発生防止のための誘電体板を施した
ことを特徴とする請求項4または5記載の菌濃縮殺菌装置。
- 菌濃縮検知部として、
菌濃縮の濃度の検知を、誘電泳動により菌が集められることによって変化する第1,第2電極間のインピーダンスを測定することによって行う構成とした
ことを特徴とする請求項3,4,5または6記載の菌濃縮殺菌装置。
- 菌濃縮検知部として、
菌濃縮の濃度の検知を、誘電泳動により菌が集められることによって変化する第1,第2電極間のコンダクタンスを測定することによって行う構成とした
ことを特徴とする請求項3,4,5または6記載の菌濃縮殺菌装置。
- 基盤の同一平面上に間隔を置いて第1,第2の電極を配設するに際し、互いに他方の電極に近い側の側縁を櫛の歯状にし、一方の電極の歯と歯との間に他方の電極の歯が配置されるよう配設した
ことを特徴とする請求項3,4,5,6,7または8記載の菌濃縮殺菌装置。
- 流体中の菌を誘電泳動により集めて濃縮し、
濃縮した菌に対して物理的破壊措置を講ずる
ことを特徴とする菌濃縮殺菌方法。
- 流体中の菌を誘電泳動により集めて濃縮する第1の過程と、
所定濃度に菌が濃縮されたことを検知して検知信号を発する第2の過程と、
該検知信号が発された時より菌に対する物理的破壊措置を講ずる第3の過程と
により流体中の菌を殺菌するようにした
ことを特徴とする菌濃縮殺菌方法。
- 菌濃縮の濃度の検知を、
誘電泳動により菌が集められることによって変化する誘電泳動電極間のインピーダンスを測定することにより行うようにした
ことを特徴とする請求項11記載の菌濃縮殺菌方法。
- 菌濃縮の濃度の検知を、
誘電泳動により菌が集められることによって変化する誘電泳動電極間のコンダクタンスを測定することにより行うようにした
ことを特徴とする請求項11記載の菌濃縮殺菌方法。
- 物理的破壊措置として、
電界の印加という措置を採用した
ことを特徴とする請求項10,11,12または13記載の菌濃縮殺菌方法。
- 物理的破壊措置として、
ラジカルの散布という措置を採用した
ことを特徴とする請求項10,11,12または13記載の菌濃縮殺菌方法。
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