JP2008015503A - 平版印刷版原版及び平版印刷版原版の積層体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】支持体上に、記録層を有し、最上層に、親水性ポリマー及びシリカで表面被覆した有機樹脂微粒子を含有する保護層を有することを特徴とする。有機樹脂微粒子は、ポリアクリル酸系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポシキ系樹脂、フェノール樹脂、及び、メラミン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂からなることが好ましく、保護層には、雲母化合物を含有することが好ましい。
【選択図】なし
Description
近年、画像情報を、コンピューターを用いて電子的に処理、蓄積、出力する、デジタル化技術が広く普及してきている。そして、そのようなデジタル化技術に対応した新しい画像出力方式が種々実用されるようになってきた。その結果レーザー光のような指向性の高い光をデジタル化された画像情報に従って走査し、リスフイルムを介すこと無く、直接印刷版を製造するコンピューター トゥ プレート(CTP)技術が切望されており、これに適応した平版印刷版原版を得ることが重要な技術課題となっている。
特に、親水性支持体上に、感光スピードに優れる光重合開始剤、付加重合可能なエチレン性不飽和化合物、及びアルカリ現像液に可溶なバインダーポリマーを含有する光重合型の記録層、並びに必要に応じて酸素遮断性の保護層を設けた平版印刷版原版(例えば、特許文献1参照)は、生産性に優れ、更に現像処理が簡便であり、解像度や着肉性もよいといった利点から、望ましい印刷性能を有するものである。
この問題に対し、記録層上に水溶性ポリマーを含有する保護層を設ける方法、或いは、無機質の層状化合物と水溶性ポリマーを含有する保護層を設ける方法(例えば、特許文献3参照。)が知られている。これらの保護層の存在により、重合阻害が防止され、記録層の硬化反応が促進され、画像部の強度を向上させることが可能となる。
平版印刷版原版同士の耐接着性の向上に関しては、前述の無機質の層状化合物と水溶性ポリマーを含有する保護層を設ける方法が有効であるが、より高い耐傷性が求められているのが現状である。
即ち、本発明の目的は、レーザー露光による書き込みが可能であり、かつ、記録層上に保護層を有する平版印刷版原版であって、製版作業における生産性を向上しうる平版印刷版原版を提供することにある。
より具体的には、レーザー露光による書き込みが可能である記録層上に、該記録層の重合阻害を抑制し、現像除去性に優れ、更に、平版印刷版原版を積層した場合にも、平版印刷版原版の保護層表面と隣接する平版印刷版原版の支持体側表面との接着を抑制し、また、保護層表面とアルミニウム支持体裏面との間で生じるこすりキズを改良しうる保護層を備えた平版印刷版原版を提供することにある。
また、本発明のさらなる目的は、合紙を介することなく積層しても、隣接する保護層と支持体裏面との接着及び保護層の傷つきが抑制された、製版作業に供して生産性を向上しうる、平版印刷版原版の積層体を提供することにある。
ここで、シリカで表面被覆した樹脂微粒子のコアとして用いる有機樹脂としては、ポリアクリル酸系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポシキ系樹脂、フェノール樹脂、及び、メラミン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂であることが好ましい。
本発明の保護層は単層構造のものであってもよく、また、複数層の積層構造を有する保護層であってもよいが、保護層を構成する層のうち、少なくとも1層に雲母化合物を含有することが好ましい態様である。
また、支持体がアルミニウム支持体であり、該支持体の裏面には有機樹脂からなるバックコート層を有することが好ましい。
本発明の請求項7に係る平版印刷版原版の積層体は、前記本発明の平版印刷版原版を、直接接触させて複数枚積層してなることを特徴とする。
通常、重合性ネガ型記録層を有する平版印刷版原版の保護層には、優れた酸素遮断性を有することからポリビニルアルコールなどの親水性ポリマーが用いられる。工場生産スケールで、このような平版印刷版原版を製造する場合に、ポリビニアルコール水溶液を主成分とする保護層塗布液中に、マット性を付与する目的で有機樹脂微粒子を添加分散した塗布液を調整すると、調製後、塗布開始までの間に数時間から1日程度塗布液を保存する間に、疎水性の有機樹脂微粒子が親水性ポリマーであるポリビニアルコールとの相溶性が低いために分離やすく、この塗布液を用いて記録層上に保護層を設ける際に、有機樹脂微粒子が偏在して保護層中に樹脂粒子が存在しない部分や樹脂粒子の凝集物が存在する部分などができるなどの問題が生じる。
即ち、シリカ成分により被覆された有機樹脂微粒子は、被膜形成成分である親水性ポリマーとの親和性に優れるため、樹脂粒子の均一分散が達成されるとともに、粒子界面における親水性ポリマーとの密着性が向上することで、塗布−乾燥後の皮膜性も向上し、外部と接触した場合でも有機微粒子の脱落がほとんど発生せず、安定した耐傷性が得られることが判明した。
また、本発明によれば、合紙を介することなく積層しても、隣接する保護層と支持体裏面との接着及び保護層の傷つきが抑制された、製版作業に供して生産性を向上しうる、平版印刷版原版の積層体を提供することができる。
まず、本発明の平版印刷版原版について述べる。
<平版印刷版原版>
本発明の平版印刷版原版は、支持体、好ましくは、表面親水性を示すアルミニウム支持体上に、赤外線吸収剤、重合開始剤、重合性化合物、及び所望によりバインダーポリマーを含有する重合性ネガ型記録層と、保護層と、を順次積層してなる平版印刷版原版であって、前記保護層が、シリカで表面被覆した有機樹脂微粒子と親水性ポリマーとを含有し、且つ、そのような保護層を平版印刷版原版の最上層として有することを特徴とする。
以下、本発明の平版印刷版原版を構成するこれらの各構成要素について説明する。
本発明に係る、平版印刷版原版の最上部に位置する保護層(以下、適宜、特定保護層と称する)は、シリカで表面被覆した有機樹脂微粒子(以下、適宜、シリカ被覆微粒子と称する)と、親水性ポリマーとを含有することを特徴とする。
本発明の平版印刷版原版における記録層は、以下に詳述するように、重合性ネガ型記録層であることから、通常、露光を大気中で行うために、画像形成反応を阻害する大気中に存在する酸素や水分、塩基性物質等の低分子化合物の記録層への混入を防止する目的で、該記録層の上に、保護層を設けている。
また、本発明に係る特定保護層は単層の場合には当該層中に、また、保護層が積層構造を有する場合には、保護層を形成する複数の層のいずれかに、雲母化合物を含有することが、酸素遮断性、外部圧力耐性、及び、耐接着性の諸特性を向上させるといった観点から好ましい。
以下、本発明に係る保護層に用いられる各成分について順次説明する。
本発明のシリカ被覆微粒子は、有機樹脂からなる微粒子をシリカで表面被覆してなる。コアとなる有機樹脂微粒子は、平版印刷版原版の保護層表面と隣接する平版印刷版原版の支持体裏面との接着及び、保護層表面とアルミニウム支持体裏面との間で生じるこすりキズを抑制するために添加するものである。このような、マット剤として働く微粒子に望まれる基本的特性は、露光に用いる光の透過は実質阻害せず、空気中の湿分や、温度によって、軟化したり、ベトついたりすることがない樹脂であって、最上部の保護層に添加得することで、その表面に適当な凹凸を付与し、接着表面積を減少させるものが好ましい。
本発明に係るシリカ被覆微粒子のコアとなる有機樹脂微粒子を構成する有機樹脂としては、先述べたような物性を有する樹脂であれば制限なく使用することができ、例えば、ポリアクリル酸系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポシキ系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。
なかでも、好ましいバインダーであるポリビニルアルコールとの親和性の観点から、ポリアクリル酸系樹脂、ポリウレタン系樹脂、及びメラミン樹脂などが好ましい。
シリカ被覆微粒子の構成としては、有機樹脂微粒子表面にシリカ微粒子が固体成分として付着しているものであっても、アルコキシシロキサン系化合物を縮合反応させて有機樹脂微粒子表面にシロキサン系化合物層を形成したものであってもよい。
シリカの表面被覆状態は、走査型電子顕微鏡(TEM)等による形態観察により確認することができ、また、シリカの被覆量は、蛍光X線分析などの元素分析によりSi原子を検知し、そこに存在するシリカの量を算出することで確認することができる。
好ましい平均粒子径は1〜30μmφであり、更に好ましくは、1.5〜20μmφであり、もっとも好ましくは、2〜15μmφである。この範囲において十分なスペーサー機能、マット性能を発現することができ、保護層表面への固定化が容易で、外部からの接触応力に対しても優れた保持機能を有する。
本発明に係る特定保護層におけるシリカ被覆微粒子の好ましい添加量は、5〜1000mg/m2であり、更に好ましくは、10〜500mg/m2であり、もっとも好ましくは、20〜200mg/m2である
また、保護層全体に対する好ましい添加量としては、保護層全固形分に対し、0.5〜95質量%であることが好ましく、1〜50質量%であることがより好ましく、もっとも好ましくは2〜20質量%の範囲である。
本発明に係る特定保護層には、前記シリカ被覆有機樹脂微粒子に加え、本発明の効果を損なわない限りにおいて、他の(シリカ被覆層を有しない)有機樹脂微粒子を併用することができる。
併用可能な有機樹脂微粒子としては、ポリ(メタ)アクリル酸エステル類、ポリスチレン及びその誘導体、ポリアミド類、ポリイミド類、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、などのポリオレフィン類、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエステル類などの合成樹脂からなる微粒子、及び、キチン、キトサン、セルロース、架橋澱粉、架橋セルロース等の天然高分子からなる微粒子などが好ましく挙げられる。
なかでも、合成樹脂微粒子は、粒子サイズ制御の容易さや、表面改質により所望の表面特性を制御し易いなどの利点がある。
これら微粒子粉体の製造方法は、「超微粒子と材料」日本材料科学会編、裳華房1993年発刊、「微粒子・粉体の作製と応用」川口春馬監修、シーエムシー出版2005年発刊等に詳細に記載されている。
これらの粒子の保護層固形分中の含有量は、1.0〜30質量%が好ましく、2.0〜〜20質量%がより好ましい。また、必須成分であるシリカ被覆微粒子に対して、5.0〜50質量%の範囲であることが好ましい。
これら任意成分としての有機樹脂微粒子は、これを併用することにより、表面マット効果、接着防止効果及び耐キズ性効果が向上するが、添加量が上記好ましい範囲を超えた場合には、感度低下や、保護層表面から有機微粒子が離脱しやすくなるといった問題を生じる懸念がある。
本発明の平版印刷原版は、重合性ネガ型記録層を有することから、酸素遮断性に優れた保護層を設けることが好ましい。
保護層を形成するバインダーとしては、均一な皮膜を形成し得るものであれば特に制限はないが、除去性の観点から親水性であることを要し、さらに、以下に詳述する観点から、水溶性ポリマーであることが好ましい。しかしながらこれに限定されるわけではなく、水不溶性ポリマーを本発明の効果を損なわない限りにおいて適宜選択して併用することも可能である。
保護層のバインダーとして使用しうる各種ポリマーとしては、具体的には、例えば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルイミダゾール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリ酢酸ビニルの部分鹸化物、エチレン−ビニルアルコール共重合体、水溶性セルロース誘導体、ゼラチン、デンプン誘導体、アラビアゴム等の水溶性ポリマーや、ポリ塩化ビニリデン、ポリ(メタ)アクリロニトリル、ポリサルホン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアミド、セロハン等のポリマー等が挙げられる。これらは、必要に応じて2種以上を併用して用いることもできる。
このような観点から、保護層のバインダー成分としては親水性ポリマーの中でも水溶性ポリマーが好ましく、特に、ポリビニルアルコールを主成分として用いることが好ましい。ポリビニルアルコールは優れた被膜形成性と比較的低接着性の表面を有する。
一般には、使用するPVAのケン化度が高い程、言い換えれば、未置換ビニルアルコール単位含率が高い程、酸素遮断性が高くなる。このため、本発明に係る保護層は、例えば、ケン化度が91モル%以上のポリビニルアルコールを主成分とすることが好ましく、後述するように、さらに保護層のいずれかに雲母化合物を併用することにより、保護層の酸素遮断性が一層向上する。
本発明に係る特定保護層の形成に好適に用いうる酸変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、株式会社クラレ製の、KL−118、KM−618、KM−118、SK−5102、MP−102、R−2105、日本合成化学工業株式会社製の、ゴーセナールCKS−50、T−HS−1、T−215、T−350、T−330、T−330H、日本酢ビ・ポバール株式会社製の、AF−17、AT−17等が挙げられる。
保護層を形成する水溶性ポリマーは1種のみを用いてもよく、目的に応じて複数種を併用してもよい。例えば、PVAにポリビニルピロリドンを併用することで酸素透過性を制御することができる。複数種の水溶性ポリマーを用いる場合においても、それらの総含有量が上記の質量範囲であることが好ましい。
本発明における保護層は、25℃−60%RH1気圧における酸素透過度が、0.5ml/m2・day以上100ml/m2・day以下であることが好ましく、この酸素透過度を達成する組成を選択する。
本発明に係る特定保護層の形成にあたっては、シリカ被覆微粒子及び所望により併用される有機樹脂微粒子は、粉体で供給されるものは、保護層の主成分であるポリビニルアルコールなどの水溶性ポリマーの水溶液中に、直接添加して分散すればよい。分散方法としては、例えば、ホモジナイザー、ホモミキサー、ボールミル、ペイントシェーカーなどの公知の簡易な分散機により分散する方法をとればよい。
ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、アルケニルエーテル類、ポリエチレングリコールアルキルエステル類、ポリエチレングリコールアリールエーテル類などが挙げられる。アニオン界面活性剤としては、アルキルまたはアリールスルホン酸塩型、アルキルまたはアリール硫酸エステル塩型、アルキルまたはアリールリン酸塩エステル型、アルキルまたはアリールカルボン酸塩型の界面活性剤が挙げられる。カチオン界面活性剤としては、アルキルアミン塩型、アルキルピリジニウム塩型、アルキルアンモニウム塩型界面活性剤が挙げられる。
より具体的には、これら界面活性剤の更に多くの具体例については「最新・界面活性剤の機能創製・素材開発・応用技術」堀内照夫、鈴木敏幸編集 技術教育出版社に記載されるものを挙げることができる。
例えば、記録層を露光する際に用いる光(本発明においては赤外光)の透過性に優れ、かつ、露光に関わらない波長の光を効率よく吸収しうる、着色剤(水溶性染料)を添加してもよい。これにより、感度を低下させることなく、セーフライト適性を高めることができる。
本発明の平版印刷版原版における保護層は単層構造であっても、複数の層を有する積層構造であってもよい。複数の層を有する場合には、最上層にシリカ被覆微粒子を含有することを要する。
本発明の平版印刷版原版における保護層には、雲母化合物を用いることが、酸素遮断性向上の観点から好ましい。雲母化合物を併用する場合、雲母化合物は保護層を構成する層のうち、いずれか一層に含まれていればよい。
例えば、単層構造の特定保護層のみを有する場合、これが最上層となるので、該保護層には、水溶性ポリマー、シリカ被覆微粒子に加え、雲母化合物を添加すればよく、積層構造の保護層の場合には、その最上層は水溶性ポリマーとシリカ被覆微粒子とを含有するが、雲母化合物は最上層に含まれていても、記録層近傍側の他の層中にバインダー、好ましくは水溶性ポリマーとともに含まれていてもよい。
シリカ被覆微粒子に対し、上記範囲において、分散性向上効果及びAl支持体裏面と擦り合わせた時の耐キズ性の向上を両立することができる。複数種の雲母化合物を併用した場合でも、これらの雲母化合物の合計の量が上記の重量比であることが必要である。
また、積層構造を有する保護層の場合、複数ある層のいずれかに雲母化合物を用いればよいが、当該層がシリカ被覆微粒子を含まない層である場合には、水溶性ポリマー100質量部に対して、雲母化合物を5〜50質量部の割合で添加することが好ましい。
本発明における保護層は、シリカ被覆微粒子を分散させた分散液と所望により併用される雲母化合物を分散させた分散液とを攪拌混合し、その分散液と、ポリビニルアルコールを含むバインダー成分(又は、ポリビニルアルコールを含むバインダー成分を溶解した水溶液)と、を配合してなる保護層用塗布液を、記録層上に塗布することで形成することができる。なお、保護層塗布液の調製時におけるシリカ被覆微粒子、雲母化合物及び親水性ポリマーの配合順序は、目的に応じて適宜変更することも可能である。具体的には、例えば、既述の如く、粉体で供給される粒子成分を、親水性ポリマー溶液中に直接添加して分散させることもできる。また、予め調製された粒子分散液に併用する他の粒子を直接添加して分散させることもできる。
なお、複数の層構成を有する保護層であって、雲母化合物が最上層ではなく、より記録層の近傍に存在する層に添加される場合には、当該層には、シリカ被覆微粒子を配合する必要がないことから、最上層の保護層塗布液は記述のように調製し、雲母化合物を含む層は、以下に詳述する方法により雲母化合物を分散させた塗布液を用いて形成すればよい。
ここで用いる分散機としては、機械的に直接力を加えて分散する各種ミル、大きな剪断力を有する高速攪拌型分散機、高強度の超音波エネルギーを与える分散機等が挙げられる。具体的には、ボールミル、サンドグラインダーミル、ビスコミル、コロイドミル、ホモジナイザー、ティゾルバー、ポリトロン、ホモミキサー、ホモブレンダー、ケディミル、ジェットアジター、毛細管式乳化装置、液体サイレン、電磁歪式超音波発生機、ポールマン笛を有する乳化装置等が挙げられる。上記の方法で分散した雲母化合物の2〜15質量%の分散物は高粘度或いはゲル状であり、保存安定性は極めて良好である。
この分散物を用いて保護層用塗布液を調製する際には、シリカ被覆微粒子や有機樹脂微粒子と併用する場合にはこれらの水分散物とを混合し、充分攪拌した後、ポリビニルアルコールを含むバインダー成分(又は、特定ポリビニルアルコールを含むバインダー成分を溶解した水溶液)と配合して調製するのが好ましい。同一層においてシリカ被覆微粒子などと共存しない場合には、この分散物とバインダー成分とを配合して調製すればよい。
水溶性の可塑剤としては、例えば、プロピオンアミド、シクロヘキサンジオール、グリセリン、ソルビトール等が挙げられる。また、水溶性の(メタ)アクリル系ポリマーを加えることもできる。更に、この塗布液には、記録層との密着性、塗布液の経時安定性を向上するための公知の添加剤を加えてもよい。
保護層が積層構造を有する場合、シリカ被覆微粒子を含有する最上層の塗布量は、0.1g/m2〜3.0g/m2であることが好ましく、0.5g/m2〜2.0g/m2であることがさらに好ましい。最上層と記録層との間に設けられる保護層の塗布量は0.1g/m2〜2.0g/m2であることが好ましく、0.2g/m2〜1.0g/m2であることがさらに好ましい。
保護層が積層構造を有する場合、最上層と記録層との間に設けられる層には、酸素遮断性に優れた水溶性ポリマーと雲母化合物とを含有することが、酸素遮断性とマット性の両立という観点から好ましい。
本発明に係る平版印刷版原版は、レーザーに感応性を有する記録層(感光層)を有する。該記録層は、必須成分として、増感色素、重合開始剤、重合性化合物、及びバインダーポリマーを含有し、更に必要に応じて、着色剤や他の任意成分を含む重合性ネガ型の記録層である。
この場合のラジカルの生成機構としては、1.赤外線吸収剤の光熱変換機能により発生した熱が、後述する重合開始剤(例えば、スルホニウム塩)を熱分解しラジカルを発生させる、2.赤外線吸収剤が発生した励起電子が、重合開始剤(例えば、活性ハロゲン化合物)に移動しラジカルを発生させる、3.励起した赤外線吸収剤に重合開始剤(例えば、ボレート化合物)から電子移動してラジカルが発生する、等が挙げられる。そして、生成したラジカルにより重合性化合物が重合反応を起こし、露光部が硬化して画像部となる。
以下に、本発明に係る記録層を構成する各成分について説明する。
本発明に係る記録層は、感度の観点から、レーザー露光における露光波長に適合する所定の波長の光を吸収する増感色素を含有する。
この増感色素が吸収し得る波長の露光により後述する重合開始剤のラジカル発生反応や、それによる重合性化合物の重合反応が促進されるものである。このような増感色素としては、公知の分光増感色素又は染料、又は光を吸収して光重合開始剤と相互作用する染料又は顔料が挙げられる。この増感色素が適合する波長のレーザー露光により高感度で電子励起状態となり、かかる電子励起状態に係る電子移動、エネルギー移動などが、後述する重合開始剤に作用して、該重合開始剤に高感度で化学変化を生起させてラジカルを生成させるのに有用である。
赤外線吸収剤は、赤外線レーザーの照射(露光)に対し高感度で電子励起状態となり、先にのべた電子励起状態に係る電子移動、エネルギー移動に加え、光熱変換機能により熱エネルギーが生成されるため、重合開始剤により高感度で化学変化を生起させるのに有用である。
本発明において使用される特に好ましい増感色素である赤外線吸収剤としては、750nm〜1400nmの波長に吸収極大を有する染料又は顔料が好ましく挙げられる。
好ましい染料としては、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭60−78787号等に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号等に記載されているスクワリリウム色素、英国特許434,875号記載のシアニン染料等を挙げることができる。
また、本発明における赤外線吸収色素の好ましい他の例としては、以下に例示するような特開2002−278057号公報に記載の特定インドレニンシアニン色素が挙げられる。
以下に示す基において、Xa −は後述するZa −と同様に定義され、Raは、水素原子、アルキル基、アリール基、置換又は無置換のアミノ基、ハロゲン原子より選択される置換基を表す。
また、特に好ましい他の例として更に、前記した特開2002−278057号公報に記載の特定インドレニンシアニン色素が挙げられる。
但し、対イオンとして、ハロゲンイオンを含有してないものが特に好ましい。
本発明に用いられる重合開始剤は、後述する重合性化合物の硬化反応を開始、進行させる機能を有し、熱により分解してラジカルを発生する熱分解型のラジカル発生剤、赤外線吸収剤の励起電子を受容してラジカルを発生する電子移動型のラジカル発生剤、又は、励起した赤外線吸収剤に電子移動してラジカルを発生する電子移動型のラジカル発生剤など、エネルギーを付与することでラジカルを生成させるものであればいかなる化合物を用いてもよい。例えば、オニウム塩、活性ハロゲン化合物、オキシムエステル化合物、ボレート化合物などが挙げられる。これらは併用してもよい。本発明ではオニウム塩が好ましく、中でも、スルホニウム塩が特に好ましい。
本発明において好適に用いられるスルホニウム塩重合開始剤としては、下記一般式(I)で表されるオニウム塩が挙げられる。
本発明における他のオニウム塩としては、下記一般式(II)及び(III)で表されるオニウム塩が挙げられる。
スルホニウム塩重合開始剤と他の重合開始剤とを併用する場合、その含有比(質量比)としては、100/1〜100/50が好ましく、100/5〜100/25がより好ましい。
また、重合開始剤は、他の成分と同一の層に添加してもよいし、別の層を設けそこへ添加してもよい。
本発明に用いられる重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であり、エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。このような化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に限定無く用いることができる。これらは、例えば、モノマー、プレポリマー、即ち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物並びにそれらの共重合体などの化学的形態をもつ。モノマー及びその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能イソシアネート類或いはエポキシ類との付加反応物、及び単官能若しくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基や、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更にハロゲン基や、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等がある。
イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等がある。
マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等がある。
(ただし、Ra及びRbは、H又はCH3を示す。)
また、本発明の平版印刷版原版では、後述の支持体や保護層等との密着性を向上せしめる目的で特定の構造を選択することもあり得る。
また、これらは単独で用いても2種以上併用してもよい。その他、付加重合性化合物の使用法は、酸素に対する重合阻害の大小、解像度、かぶり性、屈折率変化、表面粘着性等の観点から適切な構造、配合、添加量を任意に選択できる。更に、本発明の平版印刷版原版では、下塗り、上塗りといった層構成・塗布方法も実施し得る。
本発明に用いられるバインダーポリマーは、膜性向上の観点から含有されるものであって、膜性を向上させる機能を有していれば、種々のものを使用することがすることができる。中でも、本発明において好適なバインダーポリマーとしては、下記一般式(i)で表される繰り返し単位を有するバインダーポリマーである。以下、一般式(i)で表される繰り返し単位を有するバインダーポリマーを、適宜、特定バインダーポリマーと称し、詳細に説明する。
鎖状構造の連結基としては、エチレン、プロピレン等が挙げられる。また、これらのアルキレンがエステル結合を介して連結されている構造もまた好ましいものとして例示することができる。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−ノルボルニル基等の炭素数1〜10までの直鎖状、分枝状、又は環状のアルキル基が挙げられる。
アリール基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、インデニル基等の炭素数1〜10までのアリール基、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群から選ばれるヘテロ原子を1個含有する炭素数1〜10までのヘテロアリール基、例えば、フリル基、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基、キノリル基等が挙げられる。
アルケニル基の具体例としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、1−メチル−1−プロペニル基、1−シクロペンテニル基、1−シクロヘキセニル基等の炭素数1〜10までの直鎖状、分枝状、又は環状のアルケニル基が挙げられる。
アルキニル基の具体例としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、1−オクチニル基等の炭素数1〜10までのアルキニル基が挙げられる。R3が有してもよい置換基としては、R2が導入し得る置換基として挙げたものと同様である。但し、R3の炭素数は、置換基の炭素数を含めて1〜10である。
また、このようなバインダーポリマーの酸価(meg/g)としては、2.00〜3.60の範囲であることが好ましい。
前記特定バインダーポリマーと併用可能な他のバインダーポリマーは、ラジカル重合性基を有するバインダーポリマーであることが好ましい。
そのラジカル重合性基としては、ラジカルにより重合することが可能であれば特に限定されないが、α−置換メチルアクリル基[−OC(=O)−C(−CH2Z)=CH2、Z=ヘテロ原子から始まる炭化水素基]、アクリル基、メタクリル基、アリル基、スチリル基が挙げられ、この中でも、アクリル基、メタクリル基が好ましい。
かかるバインダーポリマー中のラジカル重合性基の含有量(ヨウ素滴定によるラジカル重合可能な不飽和二重結合の含有量)は、感度や保存性の観点から、バインダーポリマー1g当たり、好ましくは0.1〜10.0mmol、より好ましくは1.0〜7.0mmol、最も好ましくは2.0〜5.5mmolである。
バインダーポリマーのガラス転移点を高めるため手段としては、その分子中に、アミド基やイミド基を含有することが好ましく、特に、メタクリルアミドやメタクリルアミド誘導体を含有することが好ましい。
本発明に係る記録層には、以上の基本成分の他に、更にその用途、製造方法等に適したその他の成分を適宜添加することができる。以下、好ましい添加剤に関し例示する。
本発明に係る記録層には、その着色を目的として、染料若しくは顔料を添加してもよい。これにより、印刷版としての製版後の画像の視認性や、画像濃度測定機適性といったいわゆる検版性を向上させることができる。着色剤としては、具体例としては、例えば、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタンなどの顔料、エチルバイオレット、クリスタルバイオレット、アゾ系染料、アントラキノン系染料、シアニン系染料などの染料があり、中でも、カチオン性染料が好ましい。
着色剤としての染料及び顔料の添加量は、全記録層組成物中の不揮発性成分に対して約0.5質量%〜約5質量%が好ましい。
本発明に係る記録層においては、重合可能なエチレン性不飽和二重結合を有する化合物、即ち、重合性化合物の不要な熱重合を阻止するために少量の熱重合禁止剤を添加することが望ましい。適当な熱重合禁止剤としてはハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン第一セリウム塩等が挙げられる。熱重合禁止剤の添加量は、記録層組成物中の不揮発性成分の質量に対して約0.01質量%〜約5質量%が好ましい。また必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の添加量は、記録層組成物中の不揮発性成分に対して約0.5質量%〜約10質量%が好ましい。
更に、本発明に係る記録層には、硬化皮膜の物性を改良するための無機充填剤や、その他可塑剤、記録層表面のインク着肉性を向上させ得る感脂化剤等の公知の添加剤を加えてもよい。可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジドデシルフタレート、トリエチレングリコールジカプリレート、ジメチルグリコールフタレート、トリクレジルホスフェート、ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート、トリアセチルグリセリン等があり、バインダーポリマーと付加重合性化合物との合計質量に対し一般的に10質量%以下の範囲で添加することができる。
また、本発明に係る記録層において、後述する膜強度(耐刷性)向上を目的とした、現像後の加熱・露光の効果を強化するために、UV開始剤や、熱架橋剤等の添加も行うことができる。
(支持体の表面処理)
本発明における支持体には、後述のような親水化処理が施されたものが用いられる。このような支持体としては、紙、ポリエステルフィルム又はアルミニウム板が挙げられ、その中でも、寸法安定性がよく、比較的安価であり、必要に応じた表面処理により親水性や強度にすぐれた表面を提供できるアルミニウム板は更に好ましい。また、特公昭48−18327号公報に記載されているようなポリエチレンテレフタレートフィルム上にアルミニウムシートが結合された複合体シートも好ましい。
このようなアルミニウム支持体には、後述の表面処理が施され、親水化される。
粗面化処理方法は、特開昭56−28893号公報に開示されているような機械的粗面化、化学的エッチング、電解グレインなどがある。更に塩酸又は硝酸電解液中で電気化学的に粗面化する電気化学的粗面化方法、及びアルミニウム表面を金属ワイヤーでひっかくワイヤーブラシグレイン法、研磨球と研磨剤でアルミニウム表面を砂目立でするポールグレイン法、ナイロンブラシと研磨剤で表面を粗面化するブラシグレイン法のような機械的粗面化法を用いることができ、上記粗面化方法を単独或いは組み合わせて用いることもできる。その中でも粗面化に有用に使用される方法は塩酸又は硝酸電解液中で化学的に粗面化する電気化学的方法であり、適する陽極時電気量は50C/dm2〜400C/dm2の範囲である。更に具体的には、0.1〜50%の塩酸又は硝酸を含む電解液中、温度20〜80℃、時間1秒〜30分、電流密度100C/dm2〜400C/dm2の条件で交流及び/又は直流電解を行うことが好ましい。
以上のようにして処理され酸化物層を形成したアルミニウム支持体には、その後に陽極酸化処理がなされる。
陽極酸化処理は硫酸、燐酸、シュウ酸若しくは硼酸/硼酸ナトリウムの水溶液が単独若しくは複数種類組み合わせて電解浴の主成分として用いられる。この際、電解液中に少なくともAl合金板、電極、水道水、地下水等に通常含まれる成分はもちろん含まれても構わない。更には第2、第3成分が添加されていても構わない。ここでいう第2、3成分とは、例えば、Na、K、Mg、Li、Ca、Ti、Al、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn等の金属のイオンやアンモニウムイオン等に陽イオンや、硝酸イオン、炭酸イオン、塩素イオン、リン酸イオン、フッ素イオン、亜硫酸イオン、チタン酸イオン、ケイ酸イオン、硼酸イオン等の陰イオンが挙げられ、その濃度としては0〜10000ppm程度含まれてもよい。陽極酸化処理の条件に特に限定はないが、好ましくは30〜500g/リットル、処理液温10〜70℃で、電流密度0.1〜40A/m2の範囲で直流又は交流電解によって処理される。形成される陽極酸化皮膜の厚さは0.5〜1.5μmの範囲である。好ましくは0.5〜1.0μmの範囲である。以上の処理によって作製された支持体が、陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアのポア径が5〜10nm、ポア密度が8×1015〜2×1016個/m2の範囲に入るように処理条件が選択されることが好ましい。
本発明の平版印刷版原版には、耐傷性をより向上させる目的で、支持体裏面を修飾することが好ましい。支持体裏面の修飾方法としては、例えば、アルミニウム支持体を用いた場合には、その裏面に、記録層側と同じ様に全面に均一に陽極酸化皮膜を形成する方法や、バックコート層を形成する方法などが挙げられる。陽極酸化皮膜を形成する方法をとる場合の被膜形成量としては、0.6g/m2以上であることが好ましく、0.7〜6g/m2の範囲であることが好ましい。これらのうち、バックコート層を設ける方法がより有効であり好ましい。以下、これらの裏面処理方法について説明する。
最初に、アルミニウム支持体裏面に、記録層側と同じ様に全面に均一に陽極酸化皮膜を0.6g/m2以上形成する方法について記載する。陽極酸化皮膜の形成は、支持体表面処理において説明したのと同様の手段により行われる。支持体裏面に設けられる陽極酸化皮膜の厚みは、0.6g/m2以上であれば有効であり、性能上の観点からはその上限には特に制限はないが、皮膜形成時の電力などのエネルギー、形成に要する時間などを考慮すれば6g/m2程度であればよく、実用的な好ましい皮膜量は0.7g〜6g/m2であり、より好ましい範囲としては1.0g〜3g/m2である。
陽極酸化皮膜の量は、蛍光X線を用い、Al2O3のピークを測定し、ピーク高さと被膜量の検量線により、換算することができる。
次に、アルミニウム支持体裏面にバックコート層を設ける方法について記載する。本発明におけるバックコート層としては、どのような組成のものを用いてもよいが、特に、以下に詳述する有機金属化合物又は無機金属化合物を加水分解及び重縮合させて得られる金属酸化物と、コロイダルシリカゾルとを含むバックコート層や有機樹脂被膜からなるバックコート層が好ましく挙げられる。
(2−1.金属酸化物とコロイダルシリカゾルとを含むバックコート層)
本発明におけるバックコート層の好ましい第1の態様として、金属酸化物とコロイダルシリカゾルとを含むバックコート層が挙げられる。
より具体的には、有機金属化合物あるいは無機金属化合物を水および有機溶媒中で、酸、またはアルカリなどの触媒で加水分解、及び縮重合反応を起こさせたいわゆるゾル−ゲル反応液により形成されるバックコート層が好ましい。
バックコート層形成に用いる有機金属化合物あるいは無機金属化合物としては、例えば、金属アルコキシド、金属アセチルアセトネート、金属酢酸塩、金属シュウ酸塩、金属硝酸塩、金属硫酸塩、金属炭酸塩、金属オキシ塩化物、金属塩化物およびこれらを部分加水分解してオリゴマー化した縮合物が挙げられる。
金属アルコキシドはM(OR)nの一般式で表される(Mは金属元素、Rはアルキル基、nは金属元素の酸化数を示す)。具体例としては、例えば、Si(OCH3)4、Si(OC2H5)4、Si(OC3H7)4、Si(OC4H9)4、Al(OCH3)3、Al(OC2H5)3、Al(OC3H7)3、Al(OC4H9)3、B(OCH3)3、B(OC2H5)3、B(OC3H7)3、B(OC4H9)3、Ti(OCH3)4、Ti(OC2H5)4、Ti(OC3H7)4、Ti(OC4H9)4、Zr(OCH3)4、Zr(OC2H5)4、Zr(OC3H7)4、Zr(OC4H9)4などが挙げられ、その他にも、例えば、Ge、Li、Na、Fe、Ga、Mg、P、Sb、Sn、Ta、Vなどの原子のアルコキシドが挙げられる。さらに、CH3Si(OCH3)3、C2H5Si(OCH3)3、CH3Si(OC2H5)3、C2H5Si(OC2H5)3などのモノ置換珪素アルコキシドも用いられる。
このようにして形成された金属酸化物とコロイダルシリカゾルとを含むバックコート層の塗布量としては、0.01〜3.0g/m2であることが好ましく、0.03〜1.0g/m2であることがさらに好ましい。
本発明におけるバックコート層の他の好ましい例としては、支持体裏面に形成された有機樹脂被膜からなるバックコート層が挙げられる。
本態様においてバックコート層を形成しうる好ましい樹脂のとしては、例えば、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。なかでも、形成される層の物理的強度が高いという観点から、フェノール樹脂が好ましく、より具体的には、例えば、フェノールホルムアルデヒド樹脂、m−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、p−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、m−/p−混合クレゾールホルムアルデヒド樹脂、フェノール/クレゾール(m−,p−,又はm−/p−混合のいずれでもよい)混合ホルムアルデヒド樹脂等のノボラック樹脂やピロガロールアセトン樹脂が好ましく挙げられる。
フェノール樹脂としては、その重量平均分子量が500以上であることが画像形成性の点で好ましく、1,000〜700,000であることがより好ましい。また、その数平均分子量が500以上であることが好ましく、750〜650,000であることがより好ましい。分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は1.1〜10であることが好ましい。
界面活性剤の添加量は、目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、バックコート層中に0.1〜10.0質量%の範囲で添加することができる。
バックコート層に特に好適に使用しうるフッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステルなどのアニオン型、パーフルオロアルキルベタインなどの両性型、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩などのカチオン型及びパーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基及び親水性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基、親水性基及び親油性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油性基含有ウレタンなどの非イオン型が挙げられる。更にこれらの中でも前記フルオロ脂肪族基が下記一般式(1)で表される基であることが好ましい。
ここで、Xが2価の連結基を表すとき、アルキレン基、アリーレン基等の連結基は、置換基を有するものであってもよく、また、その構造中に、エーテル基、エステル基、アミド基などから選ばれる連結基を有するものであってもよい。アルキレン基、アリーレン基に導入可能な置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基、アリール基等が挙げられ、これらはさらに置換基を有するものであってもよい。これらのうち、Xとしては、アルキレン基、アリーレン基、又は、エーテル基、エステル基、アミド基などから選ばれる連結基を有するアルキレン基が好ましく、無置換のアルキレン基、無置換のアリーレン基、又は、内部にエーテル基或いはエステル基を有するアルキレン基がより好ましく、無置換のアルキレン基、又は、内部にエーテル基或いはエステル基を有するアルキレン基が最も好ましい。
このようなフッ素系界面活性剤をバックコート層中に0.5〜10質量%程度含むことが好ましい。
上記バックコート層において、最も好ましいのは、有機樹脂からなるバックコート層である。
本発明の平版印刷版原版は、支持体上に、記録層と保護層とをこの順に設け、更に必要に応じて、下塗り層等を設けてなる。かかる平版印刷版原版は、上述の各種成分を含む塗布液を、それぞれ、適当な溶媒に溶かして、支持体上に、順次塗布することにより製造することができる。
ここで使用する溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、エチレンジクロライド、テトラヒドロフラン、トルエン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メトキシプロパノール、メトキシメトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチルなどがある。これらの溶媒は、単独或いは混合して使用することができる。そして、記録層塗布液中の固形分の濃度は、2〜50質量%が適当である。
本発明に係る平版印刷版原版には、記録層と支持体との間の密着性や汚れ性を改善する目的で、中間層(下塗り層)を設けてもよい。このような中間層の具体例としては、特公昭50−7481号、特開昭54−72104号、特開昭59−101651号、特開昭60−149491号、特開昭60−232998号、特開平3−56177号、特開平4−282637号、特開平5−16558号、特開平5−246171号、特開平7−159983号、特開平7−314937号、特開平8−202025号、特開平8−320551号、特開平9−34104号、特開平9−236911号、特開平9−269593号、特開平10−69092号、特開平10−115931号、特開平10−161317号、特開平10−260536号、特開平10−282682号、特開平11−84674号、特開平11−38635号、特開平11−38629号、特開平10−282645号、特開平10−301262号、特開平11−24277号、特開平11−109641号、特開平10−319600号、特開平11−84674号、特開平11−327152号、特開2000−10292号、特開2000−235254号、特開2000−352854号、特開2001−209170号、特願平11−284091号等に記載のものを挙げることができる。
以下、本発明の平版印刷版の製版方法について説明する。
本発明の平版印刷版の製版方法は、上述の本発明の平版印刷版原版を、保護層とアルミニウム支持体裏面とを直接接触させて複数枚積層してなる積層体を、プレートセッター内にセットし、該平版印刷版原版を1枚ずつ自動搬送した後に、750nm〜1400nmの波長で露光処理した後、実質的に加熱処理を経ることなく、搬送速度が1.25m/分以上の条件にて現像処理を行なうことを特徴とする。
上述の本発明の平版印刷版原版は、中間に合紙を挟み込むことなく積層しても、平版印刷版原版の間の密着性や、保護層へのキズの発生が抑制されるため、上記のような製版方法に適用することができる。
本発明の平版印刷版の製版方法によれば、平版印刷版原版を、合紙を挟み込むことなく積層した積層体を用いることから、合紙の除去が不必要となり、製版工程における生産性が向上する。
本発明における露光処理に用いられる光源としては、750nm〜1400nmの波長で露光し得るものであれば、如何なるものでもよいが、赤外線レーザーが好適なものとして挙げられる。中でも、本発明においては、750nm〜1400nmの波長の赤外線を放射する固体レーザー及び半導体レーザーにより画像露光されることが好ましい。レーザーの出力は100mW以上が好ましく、露光時間を短縮するため、マルチビームレーザデバイスを用いることが好ましい。また、1画素あたりの露光時間は20μ秒以内であることが好ましい。平版印刷版原版に照射されるエネルギーは10〜300mJ/cm2であることが好ましい。露光のエネルギーが低すぎると記録層の硬化が十分に進行しない。また、露光のエネルギーが高すぎると記録層がレーザーアブレーションされ、画像が損傷することがある。
本発明における現像処理では、現像液を用いて、記録層の非画像部を除去する。
なお、本発明においては、上述のように、現像処理における処理速度、即ち、現像処理における平版印刷版原版の搬送速度(ライン速度)は、1.25m/分以上であることを要し、より好ましくは、1.35m/分以上である。また、搬送速度の上限値には特に制限はないが、搬送の安定性の観点からは、3m/分以下であることが好ましい。
以下、本発明に用いられる現像液について説明する。
本発明に用いられる現像液は、pH14以下のアルカリ水溶液であることが好ましく、また、芳香族アニオン界面活性剤を含有することが好ましい。
本発明における現像液に用いられる芳香族アニオン界面活性剤は、現像促進効果、重合性ネガ型の記録層成分及び保護層成分の現像液中での分散安定化効果があり、現像処理安定化において好ましい。中でも、本発明に用いられる芳香族アニオン界面活性剤としては、下記一般式(A)又は一般式(B)で表される化合物であることが好ましい。
m、nは、それぞれ独立に、1〜100から選択される整数を表し、中でも、1〜30が好ましく、2〜20がより好ましい。また、mが2以上の場合、複数存在するR1は同一でも異なっていてもよい。同じく、nが2以上の場合、複数存在するR3は同一でも異なっていてもよい。
t、uは、それぞれ独立に、0又は1を表す。
p、qはそれぞれ、0〜2から選択される整数を表す。Y1、Y2は、それぞれ単結合、又は炭素原子数1〜10のアルキレン基を表し、具体的には、単結合、メチレン基、エチレン基が好ましく、特に単結合が好ましい。
(Z1)r+、(Z2)s+は、それぞれ独立に、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、或いは、無置換又はアルキル基で置換されたアンモニウムイオンを表し、具体例としては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、アンモニウムイオン、炭素数1〜20の範囲の、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基が置換した2級〜4級のアンモニウムイオンなどが挙げられ、特に、ナトリウムイオンが好ましい。r、sはそれぞれ、1又は2を表す。
以下に、具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
これらその他の界面活性剤の現像液中における含有量は有効成分換算で、0.1から10質量%が好ましい。
本発明に係る現像液には、例えば、硬水に含まれるカルシウムイオンなどによる影響を抑制する目的で、2価金属に対するキレート剤を含有させることが好ましい。2価金属に対するキレート剤としては、例えば、Na2P2O7、Na5P3O3、Na3P3O9、Na2O4P(NaO3P)PO3Na2、カルゴン(ポリメタリン酸ナトリウム)などのポリリン酸塩、例えばエチレンジアミンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、そのアミン塩;ジエチレントリアミンペンタ酢酸、そのカリウム塩、ナトリウム塩;トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ニトリロトリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1,2−ジアミノシクロヘキサンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1,3−ジアミノ−2−プロパノールテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩などのようなアミノポリカルボン酸類の他2−ホスホノブタントリカルボン酸−1,2,4、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;2−ホスホノブタノントリカルボン酸−2,3,4、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1−ホスホノエタントリカルボン酸−1,2、2、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、そのカリウム塩、そのナトリウム塩などのような有機ホスホン酸類を挙げることができ、中でも、エチレンジアミンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、そのアミン塩;エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、そのアンモニウム塩、そのカリウム塩、;ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、そのアンモニウム塩、そのカリウム塩が好ましい。
このようなキレート剤の最適量は使用される硬水の硬度及びその使用量に応じて変化するが、一般的には、使用時の現像液中に0.01〜5質量%、より好ましくは0.01〜0.5質量%の範囲で含有させる。
本発明に係る現像液に用いられるアルカリ剤としては、例えば、第3リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、硼酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、水酸化ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、及び同リチウムなどの無機アルカリ剤及び、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドなどの有機アルカリ剤等が挙げられる。本発明においては、これらを単独で用いてもよいし、若しくは2種以上を組み合わせて混合して用いてもよい。
ここで、導電率を調整するための導電率調整剤として、有機酸のアルカリ金属塩類、無機酸のアルカリ金属塩類等を添加することが好ましい。
現像後の加熱には非常に強い条件を利用することができる。通常は加熱温度が200〜500℃の範囲で実施される。現像後の加熱温度が低いと十分な画像強化作用が得られず、高すぎる場合には支持体の劣化、画像部の熱分解といった問題を生じるおそれがある。
印刷時、版上の汚れ除去のため使用するプレートクリーナーとしては、従来公知のPS版用プレートクリーナーが使用され、例えば、マルチクリーナー、CL−1、CL−2、CP、CN−4、CN、CG−1、PC−1、SR、IC(富士写真フイルム株式会社製)等が挙げられる。
(シリカ被覆微粒子の水分散物の作製)
(1)オプトビーズ6500M水分散物の調製
純水74g中に、分散安定性向上を目的として、ノニオン界面活性剤(日本乳化剤(株)製、エマレックス710)を3.0gとカルボキシメチルセルロース(第一工業製薬(株)セロゲンPR)を3.0g添加溶解する。この水溶液に、シリカ複合架橋メラミン樹脂微粒子(日産化学工業(株)製、オプトビーズ6500M)20.0gを加え、株式会社日本精機製作所製エースホモジナイザーで、10,000rpmで、15分間分散し、オプトビーズ6500M水分散物を得た。
上記オプトビーズ6500M水分散物の、オプトビーズ6500Mに代えて、シリカ複合架橋アクリル樹脂微粒子(根上工業(株)製アートパールJ−7P)20.0gを添加したほかは、(1)6500M水分散物の調製と同様にしてアートパールJ−7水分散物を得た。
(3)アートパールU−800T水分散物の調製
上記オプトビーズ6500M水分散物の、オプトビーズ6500Mに代えて、シリカ複合架橋ウレタン樹脂微粒子(根上工業(株)製アートパールU−800T)20.0gを加えたほかは、(1)6500M水分散物の調製と同様にしてアートパールU−800T水分散物を得た。
(支持体の作製)
厚さ0.30mm、幅1030mmのJIS A 1050アルミニウム板を用いて、以下に示す表面処理を行った。
表面処理は、以下の(a)〜(f)の各種処理を連続的に行った。なお、各処理及び水洗の後にはニップローラで液切りを行った。
このようにして得られたアルミニウム支持体の表面粗さRaは0.27(測定機器;東京精密(株)製サーフコム、蝕針先端径2ミクロンメーター)であった。
次に、このアルミニウム支持体に下記下塗り層用塗布液をワイヤーバーにて塗布し、90℃30秒間乾燥した。塗布量は10mg/m2であった。
・下記構造の高分子化合物A(重量平均分子量:3万) 0.05g
・メタノール 27g
・イオン交換水 3g
下記記録層塗布液[P−1]を調製し、上記のアルミニウム支持体にワイヤーバーを用いて塗布した。乾燥は、温風式乾燥装置にて115℃で34秒間行い、平版印刷版原版を得た。乾燥後の被覆量は1.4g/m2であった。
・赤外線吸収剤(IR−1) 0.074g
・重合開始剤(OS−12) 0.280g
・添加剤(PM−1) 0.151g
・重合性化合物(AM−1) 1.00g
・特定バインダーポリマー(BT−1) 1.00g
・エチルバイオレット(C−1) 0.04g
・フッ素系界面活性剤 0.015g
(メガファックF−780−F 大日本インキ化学工業(株)、
メチルイソブチルケトン(MIBK)30質量%溶液)
・メチルエチルケトン 10.4g
・メタノール 4.83g
・1−メトキシ−2−プロパノール 10.4g
前記の如く、記録層塗布液[P−1]を用いて形成した記録層の表面に、下記保護層塗布液[1]をワイヤーバーで塗布し、温風式乾燥装置にて125℃75秒間乾燥させたて保護層を形成し、実施例1の平版印刷版原版を得た。
この保護層の全塗布量は(乾燥後の被覆量)は1.6g/m2であった。
・合成雲母(ソマシフME−100、8%水分散液、コープケミカル(株)製) 94g
・ポリビニルアルコール
(CKS−50:ケン化度99モル%、重合度300、日本合成化学工業株式会社製)
58g
・第一工業製薬(株)セロゲンPR 24g
・界面活性剤−1(BASF社製、プルロニックP−84) 2.5g
・界面活性剤−2(日本エマルジョン社製、エマレックス710) 5g
・シリカ複合有機樹脂微粒子水分散物(オプトビーズ6500M水分散物) 15g
[前記分散物の調製(1)で得たもの]
・純水 1364g
実施例1の保護層用塗布液の組成において、シリカ被覆有機樹脂微粒子の種類と雲母化合物の添加量を下記表1のように変えた他は、実施例1と同様にして、実施例2〜5の平版印刷版原版を得た。
実施例1で用いたのと同じ記録層塗布液[P−1]を用いて形成した記録層の表面に、下記保護層塗布液[2]をワイヤーバーで塗布し、温風式乾燥装置にて125℃75秒間乾燥させて第1の保護層を形成した。
この保護層の全塗布量は(乾燥後の被覆量)は0.5g/m2であった。
・合成雲母(ソマシフME−100、8%水分散液、コープケミカル(株)製) 94g
・ポリビニルアルコール
(CKS−50:ケン化度99モル%、重合度300、日本合成化学工業株式会社製)
82g
・界面活性剤−1(BASF社製、プルロニックP−84) 2.5g
・界面活性剤−2(日本エマルジョン社製、エマレックス710) 5g
・純水 1384g
この第2の保護層の全塗布量は(乾燥後の被覆量)は1.2g/m2であった。
・ポリビニルアルコール
(CKS−50:ケン化度99モル%、重合度300、日本合成化学工業株式会社製)
58g
・第一工業製薬(株)セロゲンPR 24g
・界面活性剤−1(日本エマルジョン社製、エマレックス710) 5g
・シリカ複合有機樹脂微粒子水分散物 (オプトビーズ6500M水分散物) 20g
・純水 1384g
実施例1で用いたのと同じ記録層塗布液[P−1]を用いて形成した記録層の表面に、下記保護層塗布液[4]をワイヤーバーで塗布し、温風式乾燥装置にて125℃75秒間乾燥させて第1の保護層を形成した。
この保護層の全塗布量は(乾燥後の被覆量)は0.5g/m2であった。
・合成雲母(ソマシフME−100、8%水分散液、コープケミカル(株)製) 94g
・ポリビニルアルコール
(CKS−50:ケン化度99モル%、重合度300、日本合成化学工業株式会社製)
82g
・界面活性剤−1(BASF社製、プルロニックP−84) 2.5g
・界面活性剤−2(日本エマルジョン社製、エマレックス710) 5g
・純水 1384g
次に、この第1の保護層の表面に、下記保護層塗布液[5]をワイヤーバーで塗布し、温風式乾燥装置にて125℃60秒間乾燥させて第2の保護層を形成し、実施例7の平版印刷版原版を得た。
この第2の保護層の全塗布量は(乾燥後の被覆量)は1.2g/m2であった。
・ポリビニルアルコール
(CKS−50:ケン化度99モル%、重合度300、日本合成化学工業株式会社製)
58g
・第一工業製薬(株)セロゲンPR 24g
・界面活性剤−1(日本エマルジョン社製、エマレックス710) 5g
・シリカ複合有機樹脂微粒子 (アートパールJ−7P水分散物) 20g
・純水 2793g
(シリカ被覆微粒子の水分散物の調製)
(4)コロイダルシリカ表面被覆有機粒子(MS1)の調製
(4−1)アクリレート粒子を含む水分散体の調製
メチルメタクリレ−ト90質量部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(新中村化学工業(株)製、商品名「NKエステルM−90G」、#400)5質量部、4−ビニルピリジン5質量部、アゾ系重合開始剤(和光純薬工業(株)製、商品名「V50」)1質量部及びイオン交換水400質量部をフラスコに仕込み、窒素ガス雰囲気下で攪拌しながら70℃に昇温した。この温度で攪拌しつつ24時間保持した。この反応混合物をイオン交換水で希釈することにより、アミノ基の陽イオン及びポリエチレングリコール鎖を有する官能基を備えた平均粒子径6μmのポリメチルメタクリレート系粒子を10質量%含む水分散体を得た。重合収率は92%であった。
この水分散体100質量部をフラスコに仕込み、これにメチルトリメトキシシラン1質量部を添加し、40℃で2時間攪拌した。その後、1規定硝酸水溶液を添加してpHを2.0に調整することにより、アクリレート粒子を含む水分散体を得た。
コロイダルシリカ粒子(日産化学(株)製、商品名「スノーテックスO」、平均一次粒子径12nm)を水中に分散させ、これに1規定水酸化カリウム水溶液を添加してpHを調整することにより、コロイダルシリカ粒子を10質量%含有するpHが8.5の水分散体を得た。
(4−3)コロイダルシリカ表面被覆有機粒子(MS1)の調製
上記(4−1)得られた有機粒子を含む水分散体100質量部に、上記(4−2)で得られたコロイダルシリカ粒子を含む水分散体50質量部を攪拌しながら2時間かけて徐々に添加し、更にその後2時間攪拌することにより、ポリメチルメタクリレート系粒子にシリカ粒子が付着した粒子を含む水分散体を得た。
次いで、得られた水分散体にビニルトリエトキシシラン2質量部を添加して1時間攪拌した後、更にテトラエトキシシラン1質量部を添加した。これを60℃に昇温させ、攪拌を3時間継続した後、室温まで冷却することにより、平均粒子径6.5μmφのコロイダルシリカ表面被覆有機粒子(以下、適宜、MS1と称する)を10質量%含有する水分散体を調製した。
その後、攪拌を止め24時間静置させる事でMS1を沈降させ、上澄み液をデカンテーションで取り除いた。その後、純水を200重量部加え24時間静置の後、上澄み液をデカンテーションで取り除いた。ハーフウエット状態のMS1に70℃の温風を吹き付け乾燥させ12重量部の固形体を取り出した。
得られたMS1を走査型電子顕微鏡で観察したところ、ポリメチルメタクリレート系粒子の表面の80%にシリカ粒子が付着していることが確認された。
上記(4−3)で得られたMS1(固形体)10重量部を雲母分散液(コープケミカル(株) MEB−3L 雲母固形分3.2%)190重量部に添加し、株式会社日本精機製作所製エースホモジナイザーを用いて、10,000rpmで、15分間分散し、MS1水分散物を得た。
実施例1で用いたのと同じ記録層塗布液[P−1]を用いて形成した記録層の表面に、下記保護層塗布液[4]をワイヤーバーで塗布し、温風式乾燥装置にて125℃75秒間乾燥させて第1の保護層を形成した。
この保護層の全塗布量は(乾燥後の被覆量)は0.5g/m2であった。
・合成雲母(ソマシフME−100、8%水分散液、コープケミカル(株)製) 94g
・ポリビニルアルコール
(CKS−50:ケン化度99モル%、重合度300、日本合成化学工業株式会社製)
82g
・界面活性剤−1(BASF社製、プルロニックP−84) 2.5g
・界面活性剤−2(日本エマルジョン社製、エマレックス710) 5g
・純水 1384g
この第2の保護層の全塗布量は(乾燥後の被覆量)は1.2g/m2であった。
・ポリビニルアルコール
(CKS−50:ケン化度99モル%、重合度300、日本合成化学工業株式会社製)
58g
・第一工業製薬(株)セロゲンPR 24g
・界面活性剤−1(日本エマルジョン社製、エマレックス710) 5g
・シリカ複合有機樹脂微粒子 (上記MS1水分散物) 20g
・純水 2793g
実施例1で用いた支持体の裏面に、下記バックコート層塗布液[1]をワイヤーバーで塗布し、温風式乾燥装置にて125℃60秒間乾燥させて有機樹脂からなるバックコート層を形成したものを支持体として用いた他は、実施例1と同様にして、実施例9の平版印刷版原版を得た。
このバックコート層の全塗布量は(乾燥後の被覆量)は0.5g/m2であった。
・PR55422 (住友ベークライト(株)(フェノール/m−クレゾール
/p−クレゾール=5/3/2 平均分子量 5300) 1.0g
・フッ素系界面活性剤(F780F、大日本インキ化学工業(株)) 0.005g
・メチルエチルケトン 25g
実施例1の保護層用塗布液の組成において、シリカ複合有機樹脂微粒子及び合成雲母を添加しない他は、実施例1と同様にして、比較例1の平版印刷版原版を得た。
〔比較例2〕
実施例6の保護層用塗布液の組成において、最上層にシリカ複合有機樹脂微粒子を添加しない他は、実施例6と同様にして、比較例2の平版印刷版原版を得た。
(1)感度の評価
得られた平版印刷版原版を、Creo社製Trendsetter800II Quantumにて、解像度2400dpi、外面ドラム回転数200rpm、出力0〜8Wの範囲で、logEで0.15ずつ出力を変化させて露光した。なお、露光は25℃50%RHの条件下で行った。
現像して得られた平版印刷版の画像部濃度を、マクベス反射濃度計RD−918を使用し、該濃度計に装備されている赤フィルターを用いてシアン濃度を測定した。測定した濃度が0.9を得るのに必要な露光量の逆数を感度の指標とした。
なお、評価結果は、実施例1で得られた平版印刷版の感度を100とし、他の平版印刷版の感度はその相対評価とした。値が大きいほど、感度が優れていることを意味する。
得られた平版印刷版原版20枚の間に合紙を挟むことなく積層して積層体を形成した。この積層体を、既にカセットにセットしてある本発明の平版印刷版原版の上にエッジから5cmずらして(積層した20枚の版材がカセット内の版材のエッジから5cm外側へ飛び出した状態で)重ねた後、飛び出した20枚の版材のエッジを水平方向に押し込んで、積層した20枚の一番下の版の裏面アルミニウム支持体が、カセット中の最上の平版印刷版原版の保護層表面をこするようにしながら、カセット内へ設置した。この保護層表面を、アルミニウム支持体裏面でこすられた版材を、耐キズ性の評価用版材とした。
この版材をセッティング部分からオートローダーにて、Creo社製Trendsetter3244に搬送し、解像度2400dpiで50%平網画像を、出力7W、外面ドラム回転数150rpm、版面エネルギー110mJ/cm2で露光した。露光後、上記感度評価と同様に現像処理を行なった。得られた平版印刷版の平網画像中に発生したキズの有無を目視評価した。
評価は1〜5の官能評価で行い、3が実用下限レベル、2以下は実用上不可レベルとした。
得られた平版印刷版原版(10×10cm)3枚を、25℃75%RHの環境下で2時間調湿後、3枚の原版を同方向に合紙の挟み込みのない状態で順次重ねて積層体を得た。この積層体を、アルミニウムラミネート層を有するクラフト紙で密閉包装し、4kgの荷重をかけた状態で、30℃環境下5日間放置した。その後の積層体について、平版印刷版原版の記録層側表面(保護層表面)と隣接する平版印刷版原版の支持体側表面との接着状態を評価した。
平版印刷版原版同士の接着は、1〜5の官能評価で行い、3が実用下限レベル、2以下は実用上不可レベルとした。以上の結果を表1に示す。
また、実施例1と実施例6との対比において、雲母化合物を含有する保護層とシリカ被覆微粒子を含む最上部の保護層との積層構造を有するものは、感度及び耐傷性にさらなる向上が見られることがわかる。
これに対し、シリカ被覆有機樹脂微粒子を含まない保護層を有する比較例1、2の平版印刷版原版は、感度には優れるものの、高湿下に置かれた後の平版印刷版原版同士に接着が見られ、アルミニウム支持体裏面と保護層表面がこすられた時に発生する耐キズ性が著しく劣っていることがわかった。
Claims (7)
- 支持体上に、記録層を有し、最上層に、親水性ポリマー及びシリカで表面被覆した有機樹脂微粒子を含有する保護層を有することを特徴とするネガ型平版印刷版原版。
- 前記支持体が、アルミニウム支持体であり、前記記録層が、増感色素、重合開始剤、重合性化合物、及びバインダーポリマーを含有することを特徴とする請求項1記載の重合性ネガ型平版印刷版原版。
- 前記親水性ポリマーがポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の平版印刷版原版。
- 前記有機樹脂微粒子を構成する有機樹脂が、ポリアクリル酸系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポシキ系樹脂、フェノール樹脂、及び、メラミン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
- 前記保護層が単層構造もしくは複数層の積層構造を有し、該層構造の少なくとも1層に雲母化合物を含有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
- 前記支持体がアルミニウム支持体であり、該支持体の記録層非形成面に有機樹脂からなるバックコート層を有することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
- 請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の平版印刷版原版を、直接接触させて複数枚積層してなる平版印刷原版の積層体。
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