JP2007268993A - 平版印刷版原版及び平版印刷版原版積層体 - Google Patents

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Abstract

【課題】製造工程のずれに起因する平版印刷版原版表面の傷発生を抑制し、セッター搬送性が良好であり、製造する際に合紙除去工程が必要なく、エッジ汚れが発生し難い平版印刷版原版、及びその製造時においてズレの発生が抑制された平版印刷版原版積層体を提供する。
【解決手段】親水性表面を有するアルミニウム支持体上に、感光層、無機層状化合物を含む中間層、フィラーを含む保護層をこの順に積層した塗工ウェブを、該保護層表面に合紙を介在させずに裁断部材で板厚方向に挟み付けて裁断して製造されたことを特徴とする平版印刷版原版30、及び前記平版印刷版原版30を、アルミニウム支持体裏面側最表面と保護層側最表面とを直接接触させて、複数枚積層してなることを特徴とする平版印刷版原版積層体。
【選択図】図1

Description

本発明は光重合性感光性平版印刷版原版及び光重合性感光性平版印刷版原版積層体に関し、詳しくは、合紙を介在させずに積層した場合においても、ずれによる傷の発生が抑制された光重合性感光性平版印刷版原版及び光重合性感光性平版印刷版原版積層体に関するものである。
アルミニウム板を支持体とする平版印刷版原版を製造する方法としては、一般に、感光液を塗布、乾燥してできた塗工ウェブを合紙を介在させて積層し、所望のサイズに裁断する方法が採られている。この裁断の際、合紙を介在させないと、裁断後に集積部に搬送され集積された平版印刷版原版は、移動時にずれが発生し、合紙がないため、平版印刷版原版表面が擦られ保護層が傷付き、露光部分の感光層が重合せず溶出し画像とならない傷故障が発生するという問題が新たに生じた。
従来、露光工程に供される平版印刷版原版としては、一般に原版と原版の間に合紙が挿入された積層体が用いられていた。合紙は、原版同士の接着を防止し、セッターの搬送性を向上させる機能や、保護層のキズ防止機能を有する。しかし、製版作業の効率化を図るためには、合紙を挿入しない積層体を用いて、合紙除去工程を省略することが望まれていた。さらに合紙を用いないことは、コストダウンや環境への負荷の軽減という利点をもたらす。
一方、酸素遮断性を向上させるため、雲母を含有する最表面に層を設けた平版印刷版原版が提案されているが、雲母を含有することにより、裁断時にラジカルが発生し、エッジ汚れが発生した。雲母を含有しない保護層を有する平版印刷版原版を、合紙を介して切断する際にエッジ汚れを発生させないで裁断する方法は特許文献1に記載されている。
このため、製造工程におけるずれに起因する平版印刷版原版の傷の発生を、合紙を介在させることなく防止し、且つ、セッター搬送性が良好であり、合紙除去工程が必要ない平版印刷版原版及び平版印刷版原版積層体が望まれていた。
特開2003−63161号公報
上記問題点を考慮した本発明の目的は、製造工程における積層時のずれに起因する平版印刷版原版表面の傷発生を抑制し、セッター搬送性が良好であり、製造する際に合紙除去工程が必要なく、エッジ汚れが発生し難い平版印刷版原版、及びその製造時においてズレの発生が抑制された平版印刷版原版積層体を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、フィラーを含む保護層を塗設けることにより、その表面をフィラーによりマット化し、かつ感光層と保護層の間に酸素を遮断する中間層を塗設した平版印刷版原版により、上記目的が達成されることを見出し、本発明を成すに至った。
即ち、本発明は、
<1> 親水性表面を有するアルミニウム支持体上に、感光層、無機層状化合物を含む中間層、フィラーを含む保護層をこの順に積層した塗工ウェブを、該保護層表面に合紙を介在させずに裁断部材で板厚方向に挟み付けて裁断して製造されたことを特徴とする平版印刷版原版である。
<2> 前記フィラーが、有機樹脂微粒子であることを特徴とする<1>に記載の平版印刷版原版である。
<3> 前記保護層側の最表面におけるベック平滑度が、100秒以下であることを特徴とする<1>又は<2>に記載の平版印刷版原版である。
<4> 前記感光層が、下記(イ)〜(ニ)の各成分を含有する重合性ネガ型感光層であることを特徴とする<1>〜<3>の何れか1つに記載の平版印刷版原版である。
(イ)赤外線吸収剤
(ロ)重合開始剤
(ハ)重合性化合物
(ニ)バインダーポリマー
<5> <1>〜<4>の何れか1つに記載の平版印刷版原版を、アルミニウム支持体裏面側最表面と保護層側最表面とを直接接触させて、複数枚積層してなることを特徴とする平版印刷版原版積層体である。
本発明によれば、製造工程のずれに起因する平版印刷版原版表面の傷に対応する故障が抑制され、セッター搬送性が良好であり、製造する際に合紙除去工程が必要なく、エッジ汚れが発生し難い平版印刷版原版、及びその製造時においてズレの発生が抑制された平版印刷版原版積層体を提供することができる。
本発明の平版印刷版原版は、親水性表面を有するアルミニウム支持体上に、感光層、無機層状化合物を含む中間層、フィラーを含む保護層をこの順に積層した塗工ウェブを、該保護層表面に合紙を介在させずに裁断部材で板厚方向に挟み付けて裁断して製造されたことを特徴とする。
本発明をさらに詳細に説明する。
まず、塗工ウェブの裁断方法を説明する。
図1は、スリッタ装置の裁断部を示す断面図である。スリッタ装置には、上下一対の裁断刃10、20が左右に配置されている。これらの裁断刃10、20は円板上の丸刃からなり、上側裁断刃10aおよび10bは回転軸11に、下側裁断刃20aおよび20bは回転軸21に、それぞれ同軸上に支持されている。そして、上側裁断刃10aおよび10bと下側裁断刃20aおよび20bとは、相反する方向に回転される。平版印刷版原版30は、上側裁断刃10a、10bと下側裁断刃20a、20bとの間を通されて所定の幅に裁断される。更に具体的には、図1に示すスリッタ装置の裁断部の上側裁断刃10aと下側裁断刃20aとの隙間および上側裁断刃10bと下側裁断刃20bとの隙間(D)と上刃と下刃のかみ込み量(S)とを調製することにより目的端部断面形状を得ることができる。紙面端部汚れ発生の抑制やレーザー露光セッターでの自動搬送不良発生の抑制の観点から、上側裁断刃10aと下側裁断刃20aとの隙間および上側裁断刃10bと下側裁断刃20bとの隙間(D)は30〜100μmに設定して裁断するのが好ましく、40〜80μmがより好ましい範囲である。さらに、印刷版原版の歪みの防止等の観点から、上刃と下刃のかみ込み量(S)は50〜1000μmに設定して裁断するのが好ましく、200〜700μmがより好ましい。
図2は、本発明の上側裁断刃10aと下側裁断刃20aの形状を示すものである。また、図3は、図2のA部の拡大図であって、上側裁断刃10aの先端形状と下側裁断刃20aの先端形状および上側裁断刃と下側裁断刃の隙間を示す。図4は、図1のスリッタ装置、図2の裁断刃を用いて裁断を行った端部断面の形状を示す。
図4の切欠部の形状は凸型に湾曲していることが好ましく、より好ましくは屈曲部を有さない凸型湾曲である。屈曲部を有する場合には屈曲部にインキが付着して汚れが発生する場合がある。図4のダレ高さ(X)の好ましい範囲は、紙面端部汚れ発生の抑制やレーザー露光セッターでの自動搬送不良発生の抑制の観点から、30〜200μm、より好ましい範囲は40〜180μmである。同様の観点から、図4の切欠部の面積(Y)の好ましい範囲は200〜100000μm2であり、より好ましい範囲は500〜70000
μm2である。ダレ高さ(X)、切欠部の面積(Y)、バリ高さ(Z)は、超深度形状測
定顕微鏡VK−8500(キーエンス製)で測定可能である。
前記裁断された塗工ウェブ(平版印刷版原版)はベルト搬送され、集積部に集積される。集積部では平版印刷版原版を一枚一枚目的の枚数まで積載し、次の包装工程まで移動する。本発明においては、上述の塗工ウェブの裁断を前記塗工ウェブの保護層表面に合紙を介在させずに行うが、従来の塗工ウェブを用いると、包装工程までの移動の際、積載された平版印刷版原版にずれが発生、合紙がないため擦りにより平版印刷版原版に傷が発生する。
本発明においては、塗工ウェブが親水性表面を有するアルミニウム支持体上に、感光層、無機層状化合物を含む中間層、フィラーを含む保護層をこの順に積層したものであるため、保護層表面のフィラーにより形成された凹凸によって、アルミニウム支持体表面との接着やズレの発生が抑制され、かつ感光層と保護層の間に酸素を遮断する中間層を塗設したことにより、優れた酸素遮断性が得られ、ずれ発生が抑制され、その結果傷発生を抑制する効果が得られる。
<平版印刷版原版>
次に、本発明の平版印刷版原版について説明する。本発明の平版印刷版原版はアルミニウム支持体上に、感光層、無機層状化合物を含む中間層、フィラーを含む保護層をこの順に積層している。ここで、「この順に設けた」とは、支持体上に、感光層、中間層、保護層がこの順に設けられることを指し、目的に応じて設けられる他の層(例えば、バックコート層等)の存在を否定するものではない。
(保護層)
まず保護層から説明する。
保護層は、最表面層であり、後述する中間層の上に設けられ、中間層を保護する役割を有する。
[フィラー]
保護層に含まれるフィラーは、保護層表面をマット化する機能(凹凸を付与し、接着表面積を減少させる機能)を有するもので、保護層面裏面の接着性防止と保護層面にキズをつけにくくする効果を有する。
本発明で用いられるフィラーは、平版印刷版原版の保護層表面と隣接する平版印刷版原版のアルミニウム支持体裏面との接着、及び保護層表面とアルミニウム支持体裏面との間で生じるこすりキズを抑制するために添加するものである。このようなフィラーに望まれる基本的特性は、露光に用いる光の透過は実質阻害せず、空気中の湿分や、少なくとも60℃以下の温度により軟化したり、ベトついたりする事が無いことが好ましい。また保護層表面のマット化効果(凹凸を付与し、接着表面積を減少させる効果)が必要である。フィラーより形成される表面凹凸の指標としては、ベック平滑度が500秒以下であることが好ましく、より好ましくは100秒以下である。
本発明で用いられるフィラーとしては、キズ抑制の観点から、比較的柔らかく、弾性が有り、硬いアルミ裏面とこすれた時に生じる応力を緩和できる有機粒子が好ましく、更にキズ抑制の効果が平版印刷版原版を積層体とする場合の圧力によりつぶれないために有機樹脂微粒子が好ましい。中でも熱により融着しないよう架橋された粒子が好ましい。有機樹脂微粒子は保護層のバインダーと親和性が高く、膜中に均一に分散されてバインダーとの密着性を維持し、膜表面から脱離することが無いものが好ましい。
このような特性を備えた有機樹脂粒子としては、ポリ(メタ)アクリル酸エステル類、ポリスチレン及びその誘導体;ポリアミド類、ポリイミド類、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン類、及びそれらとポリビニルアルコールとの共重合体;ポリウレタン、ポリウレア、ポリエステル類などの合成樹脂粒子、更にキチン、キトサン、セルロース、架橋澱粉、架橋セルロース等の天然高分子粒子が挙げられる。中でも、合成樹脂粒子は、粒子サイズ制御の容易さや、表面改質により所望の表面特性を制御し易いなどの利点がある。尚、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び「メタクリル」を意味するものとする。
このような有機樹脂粒子の製造方法は、PMMA(ポリメチルメタクリレート)の如く、比較的硬い樹脂では、破砕法による微粒子化も可能であるが、懸濁重合法により粒子を合成する方法が、粒子径制御の容易性、精度から現在主流に採用されている。これら粒子の製造方法は、「微粒子・粉体の作製と応用」川口春馬監修、シーエムシー出版2005年初版発刊に記載されている。
また、本発明においてフィラーとして用いられる有機樹脂粒子の市販品としては、綜研化学株式会社製架橋アクリル樹脂(MX−300、MX−500、MX−1000、MX−1500H、MR−2HG、MR−7HG,MR−10HG、MR−3GSN、MR−5GSN、MR−7G、MR−10G、MR−5C、MR−7GC)、スチリル樹脂系のSX−350H、SX−500H、積水化成品工業製アクリル樹脂(MBX−5、MBX−8、MBX−12MBX−15、MBX−20、MB20X−5、MB30X−5、MB30X−8、MB30X−20、SBX−6、SBX−8、SBX−12、SBX−17)、三井化学製ポリオレフィン樹脂(ケミパールW100、W200、W300、W308、W310、W400、W401、W405、W410、W500、WF640、W700、W800、W900、W950、WP100)などが挙げられる。
更に、前記有機樹脂粒子に、その他無機フィラー、無機−有機複合フィラー等のフィラーを1種以上混合して用いてもよい。
前記無機フィラーとしては、金属及び金属化合物、例えば、酸化物、複合酸化物、水酸化物、炭酸塩、硫酸塩、ケイ酸塩、リン酸塩、窒化物、炭化物、硫化物及びこれらの少なくとも2種以上の複合化物等が挙げられ、具体的には、硝子、酸化亜鉛、アルミナ、酸化ジルコン、酸化錫、チタン酸カリウム、チタン酸ストロンチウム、硼酸アルミニウム、酸化マグネシウム、硼酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化チタン、塩基性硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム、窒化珪素、窒化チタン、窒化アルミ、炭化珪素、炭化チタン、硫化亜鉛及びこれらの少なくとも2種以上の複合化物等が挙げられる。好ましくは、硝子、アルミナ、チタン酸カリウム、チタン酸ストロンチウム、硼酸アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム等が挙げられる。
具体的には、水澤化学製のMizukasilP−510、P−526、P−603、P−604、P−527、P−802、P−553A、P−73、P−78A、P−78F、P−705、P−707などのシリカ微粒子が挙げられる。
前記無機−有機複合フィラーとしては、例えば、上記有機フィラーと無機フィラーの複合化物が挙げられ、無機フィラーとしては、金属粉体、金属化合物(例えば、酸化物、窒化物、硫化物、炭化物及びこれらの複合化物等)の粒子が挙げられ、好ましくは酸化物及び硫化物等であり、より好ましくはガラス、SiO2、ZnO、Fe23、ZrO2、SnO2、ZnS、CuS等の粒子が挙げられる。
前記フィラーの形状は、繊維状、針状、板状、球状、粒状(不定形、以下同じ意味である。)、テトラポット状およびバルーン状等が挙げられる。これらのうち、好ましいものは球状、粒状である。
また、前記フィラーの粒子サイズ分布は、単分散でも多分散でもよいが、単分散が好ましい。フィラーの大きさは、平均粒子径が1〜20μmであることが好ましく、より好ましくは、平均粒子径が2〜15μm、更に好ましくは、平均粒子径が3〜10μmである。フィラーの平均粒子径を1〜20μmとすることにより、上記本発明の効果がより有効に発現される。ここでフィラーの平均粒子径は、HORIBA製LA−910型装置で測定した。
フィラーの含有量は、保護層の全固形分量に対し、好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは1〜15質量%、さらに好ましくは2〜10質量%である。
これらのフィラーは、粉体で供給されるものは、保護層のバインダーの水溶液中に、ホモジナイザーや、ホモミキサー、ボールミル、ペイントシェーカーなどの簡易な分散機により分散する。このとき必要により界面活性剤を加える。分散すると粒子はより安定化する。このような分散に用いる界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、何れも使用可能である。
前記ノニオン界面活性剤としては、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、アルケニルエーテル類、ポリエチレングリコールアルキルエステル類、ポリエチレングリコールアリールエーテル類などが挙げられる。
前記アニオン界面活性剤としては、アルキルまたはアリールスルホン酸塩型、アルキルまたはアリール硫酸エステル塩型、アルキルまたはアリールリン酸塩エステル型、アルキルまたはアリールカルボン酸塩型の界面活性剤が挙げられる。
前記カチオン界面活性剤としては、アルキルアミン塩型、アルキルピリジニウム塩型、アルキルアンモニウム塩型界面活性剤が挙げられる。
更に界面活性剤の具体例については、「最新・界面活性剤の機能創製・素材開発・応用技術」堀内照夫、鈴木敏幸編集 技術教育出版社に記載されるものを挙げることができる。また、界面活性剤として三井化学製ケミーパルシリーズの微粒子を用いると、水に分散した状態で供給されるため、これらの分散物を直接、保護層水溶液中に添加撹拌し、塗布液を作製する。
本発明の平版印刷版原版は、積層して用いるという観点から、フィラーを含む保護層表面のベック平滑度が200秒以下であることが好ましく、特に100秒以下であることが好ましい。前記したフィラーの種類・含有量・粒径などを選択することで、上記ベック秒の範囲に制御することが可能である。
ベックの平滑度は、特定の条件で接触させた試験片とリング状の平面との間を、特定の初期差圧下で、一定量の大気圧空気が流れるのに必要な時間(秒)で表される。保護層側の最表面におけるベック平滑度の測定方法としては、JISP 8119に記載の方法が用いられる。測定は、熊谷理機工業株式会社製ベック平滑度試験機を用い、標準空気量の1/10即ち1ccの空気量で測定した。本願の請求項のベック平滑度は、この測定方法によって得られる値である。
[バインダー]
保護層に用いられるバインダーは、比較的、結晶性に優れた水溶性高分子化合物を用いることが好ましく、具体的には、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、酸性セルロース類、ゼラチン、アラビアゴム、ポリアクリル酸、などのような水溶性ポリマーが挙げられる。これらの中で、ポリビニルアルコールを主成分として用いることが、膜物性の観点から好ましい。保護層に使用することが好ましいポリビニルアルコールは、必要とされる酸素遮断性と水溶性を有するための、未置換ビニルアルコール単位を含有する限り、一部がエステル、エーテル、およびアセタールで置換されていてもよい。
また、同様に一部が他の繰り返し単位を有していてもよい。
前記ポリビニルアルコールの具体例としては、(株)クラレ製のPVA−105、PVA−110、PVA−117、PVA−117H、PVA−120、PVA−124、PVA−124H、PVA−CS、PVA−CST、PVA−HC、PVA−203、PVA−204、PVA−205、PVA−210、PVA−217、PVA−220、PVA−224、PVA−217EE、PVA−217E、PVA−220E、PVA−224E、PVA−405、PVA−420、PVA−613、L−8、PVA−102、PVA−103、PVA−104、PVA−135H、PVA−617、PVA−624、PVA−706、PVA−613、PVA−CS、PVA−CST;日本合成化学工業株式会社製のゴーセノールNL−05、NM−11、NM−14、AL−06、P−610、C−500、A−300、AH−17;日本酢ビ・ポバール株式会社製のJF−04、JF−05、JF−10、JF−17、JF−17L、JM−05、JM−10、JM−17、JM−17L、JT−05、JT−13、JT−15等が挙げられる。
また、ポリビニルアルコールを構成要素の一つとする共重合体としては、88〜100%加水分解されたポリビニルアセテートクロロアセテートまたはプロピオネート、ポリビニルホルマールおよびポリビニルアセタールおよびそれらの共重合体を用いてもよい。その他有用な重合体としてはポリビニルピロリドン、ゼラチンおよびアラビアゴム等が挙げられ、これらは単独または併用して用いてもよい。
上述のポリビニルアルコールの中でも、本発明にて好適に用いられるポリビニルアルコールとしては、71〜100%加水分解され、重合度が200〜2400の範囲のものを挙げることができる。更に高い酸素遮断性、優れた被膜形成性と低接着性表面を有するという観点で、ケン化度が91モル%以上のポリビニルアルコールを用いることがより好ましい。
具体的には、株式会社クラレ製の、PVA−102、PVA−103、PVA−104、PVA−105、PVA−110、PVA−117、PVA−120、PVA−124、PVA−117H、PVA−135H、PVA−HC、PVA−617、PVA−624、PVA−706、PVA−613、PVA−CS、PVA−CST、日本合成化学工業株式会社製の、ゴーセノールNL−05、NM−11、NM−14、AL−06、P−610、C−500、A−300、AH−17、日本酢ビ・ポバール株式会社製の、JF−04、JF−05、JF−10、JF−17、JF−17L、JM−05、JM−10、JM−17、JM−17L、JT−05、JT−13、JT−15等が挙げられる。
さらに、ポリビニルアルコールを酸変性したものも好適に用いられる。具体的には、イタコン酸やマレイン酸変性のカルボキシ変性ポリビニルアルコールやスルホン酸変性ポリビニルアルコールが好適なものとして挙げられる。これら酸変性ポリビニルアルコールもケン化度が91モル%以上のものであれば、より好ましく用いることができる。
具体的な酸変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、株式会社クラレ製のKL−118、KM−618、KM−118、SK−5102、MP−102、R−2105、日本合成化学工業株式会社製のゴーセナールCKS−50、T−HS−1、T−215、T−350、T−330、T−330H、日本酢ビ・ポバール株式会社製のAF−17、AT−17等が挙げられる。
上記の水溶性高分子化合物は、得られる平版印刷原版の感度や積層した平版印刷版原版同士の接着性などを考慮すると、保護層中の全固形分量に対して、45〜95質量%の範囲で含有されることが好ましく、50〜90質量%の範囲で含有されることがより好ましい。
上記水溶性高分子化合物は、少なくとも1種を用いればよく、複数種を併用してもよい。複数種の水溶性高分子化合物を併用した場合でも、その合計の量が上記範囲であることが好ましい。
保護層の塗布量は、得られる中間層の膜強度や耐キズ性、画質の維持、セーフライト適性を付与するための適切な酸素透過性を維持する観点から、乾燥塗布重量で、0.1g/m2〜4.0g/m2が好ましく、0.3g/m2〜3.0g/m2がより好ましい。
(中間層)
前述したフィラーを含む保護層を設けた場合、保護層自身は酸素遮断能が乏しいため、保護層の他に、酸素透過性が乏しく、酸素遮断機能を有する層として、中間層が必要となる。このような中間層を設けない場合、保護層のフィラーが存在する部位において、画像形成不良、強いては画像抜けを発生してしまう。
本発明での中間層は、酸素透過性が25℃60%RHにおいて、0.5〜50ml/m2・dayであることが好ましく、より好ましくは0.5〜30ml/m2・dayである。
[バインダー]
前記中間層に用いるバインダーとしては、保護層に用いるバインダーと同様にいずれの水溶性ポリマーを用いることができるが、特に酸素遮断の観点からポリビニルアルコールが好ましく、特に、ケン化度が91モル%以上のポリビニルアルコール(以降、このようなケン化度が91モル%以上のポリビニルアルコールを「特定ポリビニルアルコール」という。)を用いることが好ましい。前記中間層に用いるポリビニルアルコールとしては、前述した保護層に用いるポリビニルアルコールと同様のポリビニルアルコールを使用できる。
後述する現像性の観点から、前記中間層に用いるバインダーとして、例えば、イタコン酸やマレイン酸変性のカルボキシ変性ポリビニルアルコールやスルホン酸変性ポリビニルアルコール等も好適なものとして挙げられる。
これら酸変性ポリビニルアルコールもケン化度が91モル%以上のものであれば、より好ましく使用できる。
このような特定ポリビニルアルコールとして好適な酸変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、株式会社クラレ製の、KL−118、KM−618、KM−118、SK−5102、MP−102、R−2105、日本合成化学工業株式会社製の、ゴーセナールCKS−50、T−HS−1、T−215、T−350、T−330、T−330H、日本酢ビ・ポバール株式会社製の、AF−17、AT−17等が挙げられる。
前記特定ポリビニルアルコールは、保護層中の全固形分量に対して、45〜95質量%の範囲で含有されることが好ましく、50〜90質量%の範囲で含有されることがより好ましい。45質量%未満であると被膜形成性が不十分で感度が低下する場合があり、95質量%を超えると、積層した平版印刷版原版同士の接着を抑制する効果が表れにくくなる場合がある。
上記特定ポリビニルアルコールは、少なくとも1種を用いればよく、複数種を併用してもよい。複数種の特定ポリビニルアルコールを併用した場合でも、その合計の量が上記の質量範囲であることが好ましい。
[無機層状化合物]
更に中間層は、上述したバインダー(好ましくはケン化度が91モル%以上のポリビニルアルコール)と無機質の層状化合物とを含有することが好ましい。無機質の層状化合物を併用することにより、酸素遮断性はさらに高まり、硬度も増す。その結果、保護層は、上記の酸素等の遮断性に加え、変形などによる劣化やキズの発生を抑制することが可能となる。
無機層状化合物としては、例えば、一般式:A(B,C)2−5D410(OH,F,O)2〔ただし、Aは、K,Na,Caの何れかを示し、B及びCは、Fe(II),Fe(III),Mn,Al,Mg,Vの何れかを示し、Dは、Si又はAlを示す。〕で表される天然雲母、合成雲母等の雲母群などが挙げられる。
上記雲母群においては、天然雲母としては白雲母、ソーダ雲母、金雲母、黒雲母及び鱗雲母が挙げられる。また、合成雲母としては、フッ素金雲母KMg3(AlSi310)F2、カリ四ケイ素雲母KMg2.5(Si410)F2等の非膨潤性雲母、及びNaテトラシリリックマイカNaMg2.5(Si410)F2、Na又はLiテニオライト(Na,Li)Mg2Li(Si410)F2、モンモリロナイト系のNa又はLiヘクトライト(Na,Li)1/8Mg2/5Li1/8(Si410)F2等の膨潤性雲母等が挙げられる。更に、合成スメクタイトも有用である。
上記の雲母化合物の中でも、フッ素系の膨潤性雲母が特に有用である。即ち、この膨潤性合成雲母は、10〜15Å程度の厚さの単位結晶格子層からなる積層構造を有し、格子内金属原子置換が他の粘度鉱物より著しく大きい。その結果、格子層は正電荷不足を生じ、それを補償するために層間にNa+、Ca2+、Mg2+等の陽イオンを吸着している。これらの層間に介在している陽イオンは交換性陽イオンと呼ばれ、いろいろな陽イオンと交換する。特に、層間の陽イオンがLi+、Na+の場合、イオン半径が小さいため層状結晶格子間の結合が弱く、水により大きく膨潤する。その状態でシェアーをかけると容易に劈開し、水中で安定したゾルを形成する。膨潤性合成雲母はこの傾向が強く、本実施の形態において有用であり、特に、膨潤性合成雲母が好ましく用いられる。
雲母化合物の形状としては、拡散制御の観点からは、厚さは薄ければ薄いほどよく、平面サイズは塗布面の平滑性や活性光線の透過性を阻害しない限りにおいて大きいほどよい。従って、アスペクト比は20以上であり、好ましくは100以上、特に好ましくは200以上である。なお、アスペクト比は粒子の長径に対する厚さの比であり、例えば、粒子の顕微鏡写真による投影図から測定することができる。アスペクト比が大きい程、得られる効果が大きい。
雲母化合物の粒子径は、その平均長径が0.3〜20μm、好ましくは0.5〜10μm、特に好ましくは1〜5μmである。また、該粒子の平均の厚さは、0.1μm以下、好ましくは、0.05μm以下、特に好ましくは、0.01μm以下である。具体的には、例えば、代表的化合物である膨潤性合成雲母のサイズは、厚さが1〜50nm、面サイズ(長径)が1〜20μm程度である。
雲母化合物の中間層に含有される量は、積層した平版印刷版原版同士の接着の抑制やキズ発生の抑制、レーザ露光時の遮断による感度低下、低酸素透過性などの観点から、保護層の全固形分量に対し、5〜50質量%の範囲であることが好ましく、10〜40質量%の範囲が特に好ましい。複数種の雲母化合物を併用した場合でも、これらの雲母化合物の合計の量が上記の質量比であることが好ましい。
(酸素透過性制御剤)
中間層の酸素透過性を制御するために、ポリビニルアルコールに他の水溶性ポリマーを混合する方法がある。このような水溶性ポリマーとしては、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、可溶性でんぷん、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイド共重合化合物が挙げられる。
中でも下記一般式
HO−(CH2CH2O)a(C36O)b(CH2CH2O)c−H
で表される化合物が好適である。
ここでa、b及びcは1以上の整数を示す。また、上記一般式で表される化合物の分子量は200〜2700であることが好ましい。
また、無機層状化合物の含有量は、中間層の全固形分に対して、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは10〜40質量%である。
中間層の塗布量は、得られる中間層の膜強度や耐キズ性、画質の維持、セーフライト適性を付与するための適切な酸素透過性を維持する観点から、乾燥塗布重量で、0.1g/m2〜4.0g/m2が好ましく、0.3g/m2〜3.0g/m2がより好ましい。
(感光層)
次に、本発明に係る感光層について説明する。本発明の平版印刷版原版の感光層は、赤外線吸収剤、重合開始剤、重合性化合物、及びバインダーポリマーを含有することが望ましいが、これに限定されるものではない。更に必要に応じて、着色剤や他の任意成分を含むことができる。さらには、重合性ネガ型の感光層であることが望ましいが、これに限定されるものではない。
本発明における重合性ネガ型の感光層は、赤外光に感応するため、CTPに有用な赤外線レーザーに感光することができる。ここに含まれる赤外線吸収剤は、赤外線レーザーの照射(露光)に対し高感度で電子励起状態となり、かかる電子励起状態に係る電子移動、エネルギー移動、発熱(光熱変換機能)などが、感光層中に併存する重合開始剤に作用して、該重合開始剤に化学変化を生起させてラジカルを生成させる。
本発明の平版印刷版原版は、感光層が赤外線吸収剤を含有することにより、750nm〜1400nmの波長を有する赤外線レーザー光での直接描画される製版に特に好適であり、従来の平版印刷版原版に比べ、高い画像形成性を発現することができる。
以下に、本発明に係る感光層を構成する各成分について説明する。
[(イ)赤外線吸収剤]
本発明に係る感光層は、エネルギー移動機能(電子移動)や光熱変換機能などの発現を目的にして、赤外線吸収剤を含有することが好ましい。
赤外線吸収剤は、赤外線レーザーの照射(露光)に対し高感度で電子励起状態となり、かかる電子励起状態に係る電子移動、エネルギー移動、発熱(光熱変換機能)などが、後述する重合開始剤に作用して、該重合開始剤に高感度で化学変化を生起させてラジカルを生成させるのに有用である。
本発明において使用される赤外線吸収剤は、750nm〜1400nmの波長に吸収極大を有する染料又は顔料であることが好ましい。
染料としては、市販の染料及び例えば、「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。
好ましい染料としては、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭60−78787号等に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号等に記載されているスクワリリウム色素、英国特許434,875号記載のシアニン染料等を挙げることができる。
また、米国特許第5,156,938号記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号(米国特許第4,327,169号)記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号、同5−19702号に開示されているピリリウム化合物も好ましく用いられる。また、染料として好ましい別の例として、米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外吸収染料を挙げることができる。
また、本発明における赤外線吸収色素の好ましい他の例としては、以下に例示するような特開2002−278057号公報に記載の特定インドレニンシアニン色素が挙挙げられる。
Figure 2007268993
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、スクワリリウム色素、

ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体、インドレニンシアニン色素が挙げられる。更に、シアニン色素やインドレニンシアニン色素が好ましく、特に好ましい例として下記一般式(a)で示されるシアニン色素が挙げられる。
Figure 2007268993
一般式(a)中、X1は、水素原子、ハロゲン原子、−NPh2、X2−L1又は以下に示す基を表す。ここで、X2は酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子を示し、L1は、炭素原子数1〜12の炭化水素基、ヘテロ原子を有する芳香族環、ヘテロ原子を含む炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。なお、ここでヘテロ原子とは、N、S、O、ハロゲン原子、Seを示す。Xa -は後述するZa -と同様に定義され、Raは、水素原子、アルキル基、アリール基、置換又は無置換のアミノ基、ハロゲン原子より選択される置換基を表す。
Figure 2007268993
1及びR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。感光層塗布液の保存安定性から、R1及びR2は、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、更に、R1とR2とは互いに結合し、5員環又は6員環を形成していることが特に好ましい。
Ar1、Ar2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を示す。好ましい芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環及びナフタレン環が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素原子数12個以下のアルコキシ基が挙げられる。Y1、Y2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、硫黄原子又は炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を示す。R3、R4は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシル基、スルホ基が挙げられる。R5、R6、R7及びR8は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子又は炭素原子数12個以下の炭化水素基を示す。原料の入手性から、好ましくは水素原子である。また、Za -は、対アニオンを示す。ただし、一般式(a)で示されるシアニン色素が、その構造内にアニオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合にはZa -は必要ない。好ましいZa -は、感光層塗布液の保存安定性から、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びスルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオン、及びアリールスルホン酸イオンである。
本発明において、好適に用いることのできる一般式(a)で示されるシアニン色素の具体例としては、特開2001−133969公報の段落番号[0017]から[0019]に記載されたものを挙げることができる。
また、特に好ましい他の例として更に、前記した特開2002−278057号公報に記載の特定インドレニンシアニン色素が挙げられる。
本発明において使用される顔料としては、市販の顔料及びカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が利用できる。
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。これらの顔料のうち好ましいものはカーボンブラックである。
これら顔料は表面処理をせずに用いてもよく、表面処理を施して用いてもよい。表面処理の方法には、樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤、エポキシ化合物、ポリイソシアネート等)を顔料表面に結合させる方法等が考えられる。上記の表面処理方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)及び「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
顔料の粒径は0.01μm〜10μmの範囲にあることが好ましく、0.05μm〜1μmの範囲にあることが更に好ましく、特に0.1μm〜1μmの範囲にあることが好ましい。この好ましい粒径の範囲において、感光層中における顔料の優れた分散安定性が得られ、均一な感光層が得られる。
顔料を分散する方法としては、インク製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
これらの赤外線吸収剤は、本発明に係る感光層に用いる場合、他の成分と同一の層に添加してもよいし、別の層を設けそこへ添加してもよい。
これらの赤外線吸収剤は、感光層中における均一性や感光層の耐久性の観点から、感光層を構成する全固形分に対し0.01〜50質量%、好ましくは0.1〜10質量%、染料の場合特に好ましくは0.5〜10質量%、顔料の場合特に好ましくは0.1〜10質量%の割合で添加することができる。
[(ロ)重合開始剤]
本発明に用いられる重合開始剤としては、オニウム塩、活性ハロゲン化合物、オキシムエステル化合物、ボレート化合物などが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。本発明においては、重合開始剤としてオニウム塩が好ましく、中でも、スルホニウム塩が特に好ましい。
本発明において好適に用いられるスルホニウム塩重合開始剤としては、下記一般式(1)で表されるオニウム塩が挙げられる。
Figure 2007268993
一般式(1)中、R11、R12及びR13は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、又は炭素原子数12個以下のアリールオキシ基が挙げられる。(Z11-はハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、カルボキシレートイオン、及びスルホン酸イオンからなる群より選択される対イオンを表し、好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオン、カルボキシレートイオン、及びアリールスルホン酸イオンである。
以下に、一般式(1)で表されるオニウム塩の具体例(例示化合物:[OS−1]〜[OS−12])を挙げるが、これらに限定されるものではない。
Figure 2007268993
Figure 2007268993
上記したものの他、特開2002−148790公報、特開2002−148790公報、特開2002−350207公報、特開2002−6482公報に記載の特定の芳香族スルホニウム塩も好適に用いられる。
本発明においては、上記スルホニウム塩重合開始剤の他にも、他の重合開始剤(他のラジカル発生剤)を用いることができる。他のラジカル発生剤としては、スルホニウム塩以外の他のオニウム塩、トリハロメチル基を有するトリアジン化合物、過酸化物、アゾ系重合開始剤、アジド化合物、キノンジアジド、活性ハロゲン化合物、オキシムエステル化合物、トリアリールモノアルキルボレート化合物などが挙げられ、中でも、高感度であることから、オニウム塩が好ましい。また、上記のスルホニウム塩重合開始剤を必須成分として、これらの重合開始剤(ラジカル発生剤)を併用することもできる。
本発明において好適に用い得る他のオニウム塩としては、ヨードニウム塩及びジアゾニウム塩が挙げられる。本発明において、これらのオニウム塩は酸発生剤ではなく、ラジカル重合の開始剤として機能する。
本発明における他のオニウム塩としては、下記一般式(2)及び(3)で表されるオニウム塩が挙げられる。
Figure 2007268993
一般式(2)中、Ar21とAr22は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下のアリール基を示す。このアリール基が置換基を有する場合の好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、又は炭素原子数12個以下のアリールオキシ基が挙げられる。(Z21-は(Z11-と同義の対イオンを表す。
一般式(3)中、Ar31は、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下のアリール基を示す。好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、炭素原子数12個以下のアリールオキシ基、炭素原子数12個以下のアルキルアミノ基、炭素原子数12個以下のジアルキルアミノ基、炭素原子数12個以下のアリールアミノ基又は、炭素原子数12個以下のジアリールアミノ基が挙げられる。(Z31-は(Z11-と同義の対イオンを表す。
以下に、本発明において、好適に用いることのできる一般式(2)で示されるオニウム塩(例示化合物:[OI−1]〜[OI−10])、及び一般式(3)で示されるオニウム塩(例示化合物:[ON−1]〜[ON−5])の具体例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
Figure 2007268993
Figure 2007268993
Figure 2007268993
本発明において重合開始剤(ラジカル発生剤)として好適に用いることのできるオニウム塩の具体例としては、特開2001−133696号公報に記載されたもの等を挙げることができる。
なお、本発明において用いられる重合開始剤(ラジカル発生剤)は、極大吸収波長が400nm以下であることが好ましく、更に360nm以下であることが好ましい。このように吸収波長を紫外線領域にすることにより、平版印刷版原版の取り扱いを白灯下で実施することができる。
本発明における重合開始剤の総含有量は、感度及び印刷時の非画像部に汚れの発生の観点から、感光層を構成する全固形分に対し0.1〜50質量%、好ましくは0.5〜30質量%、特に好ましくは1〜20質量%である。
本発明における重合開始剤としては、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上の重合開始剤を併用する場合は、例えば、好適に用いられるスルホニウム塩重合開始剤のみを複数種用いてもよいし、スルホニウム塩重合開始剤と他の重合開始剤とを併用してもよい。
スルホニウム塩重合開始剤と他の重合開始剤とを併用する場合、その含有比(質量比)としては、100/1〜100/50が好ましく、100/5〜100/25がより好ましい。
また、重合開始剤は、他の成分と同一の層に添加してもよいし、別の層を設けそこへ添加してもよい。
本発明における感光層に、重合開始剤として好ましい、高感度のスルホニウム塩重合開始剤を用いる場合、ラジカル重合反応が効果的に進行し、形成された画像部の強度が非常に高いものとなる。従って、後述する保護層の高い酸素遮断機能とあいまって、高い画像部強度を有する平版印刷版を作製することができ、その結果、耐刷性が一層向上する。また、スルホニウム塩重合開始剤はそれ自体が経時安定性に優れていることから、作製された平版印刷版原版を保存した際にも、所望されない重合反応の発生が効果的に抑制されるという利点をも有することになる。
[(ハ)重合性化合物]
本発明に用いられる重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であり、エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。このような化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に限定無く用いることができる。これらは、例えば、モノマー、プレポリマー、即ち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物並びにそれらの共重合体などの化学的形態をもつ。モノマー及びその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能イソシアネート類或いはエポキシ類との付加反応物、及び単官能若しくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基や、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更にハロゲン基や、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等がある。
メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。
イタコン酸エステルとしては、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等がある。
クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等がある。
イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等がある。
マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等がある。
その他のエステルの例として、例えば、特公昭46−27926、特公昭51−47334、特開昭57−196231記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240、特開昭59−5241、特開平2−226149記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613記載のアミノ基を含有するもの等も好適に用いられる。更に、前述のエステルモノマーは混合物としても使用することができる。
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。その他の好ましいアミド系モノマーの例としては、特公
昭54−21726記載のシクロへキシレン構造を有すものを挙げることができる。
また、イソシアネートと水酸基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報中に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記一般式で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
CH2=C(Ra)COOCH2CH(Rb)OH・・・一般式
(ただし、Ra及びRbは、H又はCH3を示す。)
また、特開昭51−37193号、特公平2−32293号、特公平2−16765号に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号、特公昭56−17654号、特公昭62−39417号、特公昭62−39418号記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。更に、特開昭63−277653号、特開昭63−260909号、特開平1−105238号に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する付加重合性化合物類を用いることによっては、非常に感光スピードに優れた光重合性組成物を得ることができる。
その他の例としては、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号、各公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートを挙げることができる。また、特公昭46−43946号、特公平1−40337号、特公平1−40336号記載の特定の不飽和化合物や、特開平2−25493号記載のビニルホスホン酸系化合物等も挙げることができる。また、ある場合には、特開昭61−22048号記載のペルフルオロアルキル基を含有する構造が好適に使用される。更に日本接着協会誌vol.20、No.7、300〜308ページ(1984年)に光硬化性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
これらの付加重合性化合物について、その構造、単独使用か併用か、添加量等の使用方法の詳細は、最終的な性能設計にあわせて任意に設定できる。例えば、次のような観点から選択される。感光スピードの点では1分子あたりの不飽和基含量が多い構造が好ましく、多くの場合、2官能以上が好ましい。また、画像部、即ち硬化膜の強度を高くするためには、3官能以上のものがよく、更に、異なる官能数・異なる重合性基(例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン系化合物、ビニルエーテル系化合物)のものを併用することで、感光性と強度の両方を調節する方法も有効である。大きな分子量の化合物や疎水性の高い化合物は、感光スピードや膜強度に優れる反面、現像スピードや現像液中での析出といった点で好ましく無い場合がある。また、感光層組成物中の他の成分(例えば、バインダーポリマー、開始剤、着色剤等)との相溶性、分散性に対しても、付加重合化合物の選択・使用法は重要な要因であり、例えば、低純度化合物の使用や、2種以上の併用により相溶性を向上させ得ることがある。
また、本発明の平版印刷版原版では、後述の支持体や保護層等との密着性を向上せしめる目的で特定の構造を選択することもあり得る。
感光層組成物中の付加重合性化合物の含有量に関しては、感度、相分離の発生、感光層の粘着性、更には、現像液からの析出性の観点から、感光層組成物中の固形分に対して、好ましくは5〜80質量%、更に好ましくは40〜75質量%の範囲で使用される。
また、これらは単独で用いても2種以上併用してもよい。その他、付加重合性化合物の使用法は、酸素に対する重合阻害の大小、解像度、かぶり性、屈折率変化、表面粘着性等の観点から適切な構造、配合、添加量を任意に選択できる。更に、本発明の平版印刷版原版では、下塗り、上塗りといった層構成・塗布方法も実施し得る。
[(ニ)バインダーポリマー]
本発明に用いられるバインダーポリマーは、膜性向上の観点から含有されるものであって、膜性を向上させる機能を有していれば、種々のものを使用することがすることができる。中でも、本発明において好適なバインダーポリマーとしては、下記一般式(i)で表される繰り返し単位を有するバインダーポリマーである。以下、一般式(i)で表される繰り返し単位を有するバインダーポリマーを、適宜、特定バインダーポリマーと称し、詳細に説明する。
Figure 2007268993
一般式(i)中、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2は炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子からなる群より選択される2以上の原子を含み構成され、その総原子数が2〜82である連結基を表す。Aは酸素原子又は−NR3−を表し、R3は水素原子又は炭素数1〜10の一価の炭化水素基を表す。nは1〜5の整数を表す。
一般式(i)におけるR1は、水素原子又はメチル基を表し、特にメチル基が好ましい。
一般式(i)におけるR2で表される連結基は、炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素
原子、及び硫黄原子からなる群より選択される2以上の原子を含み構成され、その総原子数が2〜82であり、好ましくは2〜50であり、より好ましくは2〜30である。ここで示す総原子数は、当該連結基が置換基を有する場合には、その置換基を含めた原子数を指す。より具体的には、R2で表される連結基の主骨格を構成する原子数が、1〜30であることが好ましく、3〜25であることがより好ましく、4〜20であることが更に好ましく、5〜10であることが最も好ましい。なお、本発明における「連結基の主骨格」とは、一般式(i)におけるAと末端COOHとを連結するためのみに使用される原子又は原子団を指し、特に、連結経路が複数ある場合には、使用される原子数が最も少ない経路を構成する原子又は原子団を指す。したがって、連結基内に環構造を有する場合、その連結部位(例えば、o−、m−、p−など)により算入されるべき原子数が異なる。
また、より具体的には、アルキレン、置換アルキレン、アリーレン、置換アリーレンなどが挙げられ、これらの2価の基がアミド結合やエステル結合で複数連結された構造を有していてもよい。
鎖状構造の連結基としては、エチレン、プロピレン等が挙げられる。また、これらのアルキレンがエステル結合を介して連結されている構造もまた好ましいものとして例示することができる。
この中でも、一般式(i)におけるR2で表される連結基は、炭素原子数3から30までの脂肪族環状構造を有する(n+1)価の炭化水素基であることが好ましい。より具体的には、任意の置換基によって一個以上置換されていてもよいシクロプロパン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロデカン、ジシクロヘキシル、ターシクロヘキシル、ノルボルナン等の脂肪族環状構造を有する化合物を構成する任意の炭素原子上の水素原子を(n+1)個除き、(n+1)価の炭化水素基としたものを挙げることができる。また、R2は、置換基を含めて炭素数3から30であることが好ましい。
脂肪族環状構造を構成する化合物の任意の炭素原子は、窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子から選ばれるヘテロ原子で、一個以上置き換えられていてもよい。耐刷性の点で、R2は縮合多環脂肪族炭化水素、橋架け環脂肪族炭化水素、スピロ脂肪族炭化水素、脂肪族炭化水素環集合(複数の環が結合又は連結基でつながったもの)等、2個以上の環を含有してなる炭素原子数5から30までの置換基を有していてもよい脂肪族環状構造を有する(n+1)価の炭化水素基であることが好ましい。この場合も炭素数は置換基が有する炭素原子を含めてのものである。
2で表される連結基としては、特に、連結基の主骨格を構成する原子数が5〜10のものが好ましく、構造的には、鎖状構造であって、その構造中にエステル結合を有するものや、前記の如き環状構造を有するものが好ましい。
2で表される連結基に導入可能な置換基としては、水素を除く1価の非金属原子団を挙げることができ、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アリールアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−アリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N’−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキルウレイド基、N’−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アリール−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基及びその共役塩基基、
アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(−SO3H)及びその共役塩基基、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、N−アシルスルファモイル基及びその共役塩基基、N−アルキルスルホニルスルファモイル基(−SO2NHSO2(alkyl))及びその共役塩基基、N−アリールスルホニルスルファモイル基(−SO2NHSO2(aryl))及びその共役塩基基、N−アルキルスルホニルカルバモイル基(−CONHSO2(alkyl))及びその共役塩基基、N−アリールスルホニルカルバモイル基(−CONHSO2(aryl))及びその共役塩基基、アルコキシシリル基(−Si(Oalkyl)3)、アリーロキシシリル基(−Si(Oaryl)3)、ヒドロキシシリル基(−Si(OH)3)及びその共役塩基基、ホスホノ基(−PO32)及びその共役塩基基、ジアルキルホスホノ基(−PO3(alkyl)2)、ジアリールホスホノ基(−PO3(aryl)2)、アルキルアリールホスホノ基(−PO3(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノ基(−PO3H(alkyl))及びその共役塩基基、モノアリールホスホノ基(−PO3H(aryl))及びその共役塩基基、ホスホノオキシ基(−OPO32)及びその共役塩基基、ジアルキルホスホノオキシ基(−OPO3(alkyl)2)、ジアリールホスホノオキシ基(−OPO3(aryl)2)、アルキルアリールホスホノオキシ基(−OPO3(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノオキシ基(−OPO3H(alkyl))及びその共役塩基基、モノアリールホスホノオキシ基(−OPO3H(aryl))及びその共役塩基基、シアノ基、ニトロ基、ジアルキルボリル基(−B(alkyl)2)、ジアリールボリル基(−B(aryl)2)、アルキルアリールボリル基(−B(alkyl)(aryl))、ジヒドロキシボリル基(−B(OH)2)及びその共役塩基基、アルキルヒドロキシボリル基(−B(alkyl)(OH))及びその共役塩基基、アリールヒドロキシボリル基(−B(aryl)(OH))及びその共役塩基基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。
本発明の平版印刷版原版では、感光層の設計にもよるが、水素結合可能な水素原子を有する置換基や、特に、カルボン酸よりも酸解離定数(pKa)が小さい酸性を有する置換基は、耐刷性を下げる傾向にあるので好ましくない。一方、ハロゲン原子や、炭化水素基(アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基)、アルコキシ基、アリーロキシ基などの疎水性置換基は、耐刷を向上する傾向にあるのでより好ましく、特に、環状構造がシクロペンタンやシクロヘキサン等の6員環以下の単環脂肪族炭化水素である場合には、このような疎水性の置換基を有していることが好ましい。これら置換基は可能であるならば、置換基同士、又は置換している炭化水素基と結合して環を形成してもよく、置換基は更に置換されていてもよい。
一般式(i)におけるAがNR3−である場合のR3は、水素原子又は炭素数1〜10の一価の炭化水素基を表す。このR3で表される炭素数1〜10までの一価の炭化水素基としては、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−ノルボルニル基等の炭素数1〜10までの直鎖状、分枝状、又は環状のアルキル基が挙げられる。
アリール基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、インデニル基等の炭素数1〜10までのアリール基、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群から選ばれるヘテロ原子を1個含有する炭素数1〜10までのヘテロアリール基、例えば、フリル基、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基、キノリル基等が挙げられる。
アルケニル基の具体例としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、1−メチル−1−プロペニル基、1−シクロペンテニル基、1−シクロヘキセニル基等の炭素数1〜10までの直鎖状、分枝状、又は環状のアルケニル基が挙げられる。
アルキニル基の具体例としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、1−オクチニル基等の炭素数1〜10までのアルキニル基が挙げられる。R3が有してもよい置換基としては、R2が導入し得る置換基として挙げたものと同様である。但し、R3の炭素数は、置換基の炭素数を含めて1〜10である。
一般式(i)におけるAは、合成が容易であることから、酸素原子又は−NH−であることが好ましい。
一般式(i)におけるnは、1〜5の整数を表し、耐刷の点で好ましくは1である。
以下に、一般式(i)で表される繰り返し単位の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2007268993
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一般式(i)で表される繰り返し単位は、バインダーポリマー中に1種類だけであってもよいし、2種類以上含有していてもよい。本発明における特定バインダーポリマーは、一般式(i)で表される繰り返し単位だけからなるポリマーであってもよいが、通常、他の共重合成分と組み合わされ、コポリマーとして使用される。コポリマーにおける一般式(i)で表される繰り返し単位の総含有量は、その構造や、感光層組成物の設計等によって適宜決められるが、好ましくはポリマー成分の総モル量に対し、1〜99モル%、より好ましくは5〜40モル%、更に好ましくは5〜20モル%の範囲で含有される。
コポリマーとして用いる場合の共重合成分としては、ラジカル重合可能なモノマーであれば従来公知のものを制限なく使用できる。具体的には、「高分子データハンドブック−基礎編−(高分子学会編、培風館、1986)」記載のモノマー類が挙げられる。このような共重合成分は1種類であってもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明における特定バインダーポリマーの分子量は、画像形成性や耐刷性の観点から適宜決定される。好ましい分子量としては、2,000〜1,000,000、より好ましくは5,000〜500,000、更に好ましくは10,000〜200,000の範囲である。
本発明おいて用いられるバインダーポリマーは、特定バインダーポリマー単独であってもよいし、他のバインダーポリマーを1種以上併用して、混合物として用いてもよい。併用されるバインダーポリマーは、バインダーポリマー成分の総質量に対し1〜80質量%、好ましくは1〜40質量%、更に好ましくは1〜20質量%の範囲で用いられる。併用できるバインダーポリマーとしては、従来公知のものを制限なく使用でき、具体的には、本業界においてよく使用されるアクリル主鎖バインダーや、ウレタンバインダー等が好ましく用いられる。さらには、本業界においてよく使用される重合性基を有するものが好ましく、また、酸性基を有するものが好ましい。
感光層組成物中での特定バインダーポリマー及び併用してもよいバインダーポリマーの合計量は、適宜決めることができるが、感光層組成物中の不揮発性成分の総質量に対し、通常、10〜90質量%であり、好ましくは20〜80質量%、更に好ましくは30〜70質量%の範囲である。
また、このようなバインダーポリマーの酸価(meg/g)としては、2.00〜3.60の範囲であることが好ましい。
−併用可能な他のバインダーポリマー−
前記特定バインダーポリマーと併用可能な他のバインダーポリマーは、ラジカル重合性基を有するバインダーポリマーであることが好ましい。
そのラジカル重合性基としては、ラジカルにより重合することが可能であれば特に限定されないが、α−置換メチルアクリル基[−OC(=O)−C(−CH2Z)=CH2、Z=ヘテロ原子から始まる炭化水素基]、アクリル基、メタクリル基、アリル基、スチリル基が挙げられ、この中でも、アクリル基、メタクリル基が好ましい。
かかるバインダーポリマー中のラジカル重合性基の含有量(ヨウ素滴定によるラジカル重合可能な不飽和二重結合の含有量)は、感度や保存性の観点から、バインダーポリマー1g当たり、好ましくは0.1〜10.0mmol、より好ましくは1.0〜7.0mmol、最も好ましくは2.0〜5.5mmolである。
また、併用可能な他のバインダーポリマーは、更に、アルカリ可溶性基を有するものが好ましい。バインダーポリマー中のアルカリ可溶性基の含有量(中和滴定による酸価)は、現像カスの析出性や耐刷性の観点から、バインダーポリマー1g当たり、好ましくは0.1〜3.0mmol、より好ましくは0.2〜2.0mmol、最も好ましくは0.45〜1.0mmolである。
このようなバインダーポリマーの質量平均分子量は、皮膜性(耐刷性)や、塗布溶剤への溶解性の観点から、好ましくは2,000〜1,000,000、より好ましくは10,000〜300,000、最も好ましくは20,000〜200,000の範囲である。
また、このようなバインダーポリマーのガラス転移点(Tg)は、保存安定性、耐刷性、及び感度の観点から、好ましくは70〜300℃、より好ましくは80〜250℃、最も好ましくは90〜200℃の範囲である。
バインダーポリマーのガラス転移点を高めるため手段としては、その分子中に、アミド基やイミド基を含有することが好ましく、特に、メタクリルアミドやメタクリルアミド誘導体を含有することが好ましい。
(その他の成分)
本発明に係る感光層には、以上の基本成分の他に、更にその用途、製造方法等に適したその他の成分を適宜添加することができる。以下、好ましい添加剤に関し例示する。
−着色剤−
本発明に係る感光層には、その着色を目的として、染料若しくは顔料を添加してもよい。これにより、印刷版としての製版後の画像の視認性や、画像濃度測定機適性といったいわゆる検版性を向上させることができる。着色剤としては、具体例としては、例えば、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタンなどの顔料、エチルバイオレット、クリスタルバイオレット、アゾ系染料、アントラキノン系染料、シアニン系染料などの染料があり、中でも、カチオン性染料が好ましい。
着色剤としての染料及び顔料の添加量は、全感光層組成物中の不揮発性成分に対して約0.5質量%〜約5質量%が好ましい。
−重合禁止剤−
本発明に係る感光層においては、重合可能なエチレン性不飽和二重結合を有する化合物、即ち、重合性化合物の不要な熱重合を阻止するために少量の熱重合禁止剤を添加することが望ましい。適当な熱重合禁止剤としてはハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン第一セリウム塩等が挙げられる。熱重合禁止剤の添加量は、感光層組成物中の不揮発性成分の質量に対して約0.01質量%〜約5質量%が好ましい。また必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の添加量は、感光層組成物中の不揮発性成分に対して約0.5質量%〜約10質量%が好ましい。
−その他の添加剤−
更に、本発明に係る感光層には、硬化皮膜の物性を改良するための無機充填剤や、その他可塑剤、感光層表面のインク着肉性を向上させ得る感脂化剤等の公知の添加剤を加えてもよい。可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジドデシルフタレート、トリエチレングリコールジカプリレート、ジメチルグリコールフタレート、トリクレジルホスフェート、ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート、トリアセチルグリセリン等があり、バインダーポリマーと付加重合性化合物との合計質量に対し一般的に10質量%以下の範囲で添加することができる。
また、本発明に係る感光層において、後述する膜強度(耐刷性)向上を目的とした、現像後の加熱・露光の効果を強化するために、UV開始剤や、熱架橋剤等の添加も行うことができる。
〔支持体〕
本発明における支持体には、親水性表面を有するアルミニウム支持体が用いられ、該親水性表面を有するアルミニウム支持体としては、後述のような親水化処理が施されたアルミニウム支持体が挙げられる。このような支持体としては、紙、ポリエステルフィルム又はアルミニウム板が挙げられ、その中でも、寸法安定性がよく、比較的安価であり、必要に応じた表面処理により親水性や強度にすぐれた表面を提供できるアルミニウム板は更に好ましい。また、特公昭48−18327号公報に記載されているようなポリエチレンテレフタレートフィルム上にアルミニウムシートが結合された複合体シートも好ましい。
本発明において最も好適な支持体としてのアルミニウム板とは、寸度的に安定なアルミニウムを主成分(90質量%以上)とする金属板であり、純アルミニウム板の他、アルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板、又はアルミニウム(合金)がラミネート若しくは蒸着されたプラスチックフィルム又は紙の中から選ばれる。以下の説明において、上記に挙げたアルミニウム又はアルミニウム合金からなる支持体をアルミニウム支持体と総称して用いる。前記アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなどがあり、合金中の異元素の含有量は10質量%以下である。本発明では純アルミニウム板が好適であるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有するものでもよい。このように本発明に適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来より公知公用の素材のもの、例えば、JIS A 1050、JIS A 1100、JIS A 3103、JIS A 3005などを適宜利用することができる。
また、本発明に用いられるアルミニウム支持体の厚みは、およそ0.1mm〜0.6mm程度である。この厚みは印刷機の大きさ、印刷版の大きさ及びユーザーの希望により適宜変更することができる。
このようなアルミニウム支持体には、後述の表面処理が施され、親水化される。
−粗面化処理−
粗面化処理方法は、特開昭56−28893号公報に開示されているような機械的粗面化、化学的エッチング、電解グレインなどがある。更に塩酸又は硝酸電解液中で電気化学的に粗面化する電気化学的粗面化方法、及びアルミニウム表面を金属ワイヤーでひっかくワイヤーブラシグレイン法、研磨球と研磨剤でアルミニウム表面を砂目立でするポールグレイン法、ナイロンブラシと研磨剤で表面を粗面化するブラシグレイン法のような機械的粗面化法を用いることができ、上記粗面化方法を単独或いは組み合わせて用いることもできる。その中でも粗面化に有用に使用される方法は塩酸又は硝酸電解液中で化学的に粗面化する電気化学的方法であり、適する陽極時電気量は50C/dm2〜400C/dm2の範囲である。更に具体的には、0.1〜50%の塩酸又は硝酸を含む電解液中、温度20〜80℃、時間1秒〜30分、電流密度100C/dm2〜400C/dm2の条件で交流及び/又は直流電解を行うことが好ましい。
このように粗面化処理したアルミニウム支持体は、酸又はアルカリにより化学的にエッチングされてもよい。好適に用いられるエッチング剤は、苛性ソーダ、炭酸ソーダ、アルミン酸ソーダ、メタケイ酸ソーダ、リン酸ソーダ、水酸化カリウム、水酸化リチウム等であり、濃度と温度の好ましい範囲はそれぞれ1〜50%、20〜100℃である。エッチングのあと表面に残留する汚れ(スマット)を除去するために酸洗いが行われる。用いられる酸は硝酸、硫酸、リン酸、クロム酸、フッ酸、ホウフッ化水素酸等が用いられる。特に電気化学的粗面化処理後のスマット除去処理方法としては、好ましくは特開昭53−12739号公報に記載されているような50〜90℃の温度の15〜65質量%の硫酸と接触させる方法及び特公昭48−28123号公報に記載されているアルカリエッチングする方法が挙げられる。以上のように処理された後、処理面の表面粗さRaが0.2〜0.5μm程度であれば、特に、方法、条件は限定しない。
−陽極酸化処理−
以上のようにして処理され酸化物層を形成したアルミニウム支持体には、その後に陽極酸化処理がなされる。
陽極酸化処理は硫酸、燐酸、シュウ酸若しくは硼酸/硼酸ナトリウムの水溶液が単独若しくは複数種類組み合わせて電解浴の主成分として用いられる。この際、電解液中に少なくともAl合金板、電極、水道水、地下水等に通常含まれる成分はもちろん含まれても構わない。更には第2、第3成分が添加されていても構わない。ここでいう第2、3成分とは、例えば、Na、K、Mg、Li、Ca、Ti、Al、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn等の金属のイオンやアンモニウムイオン等に陽イオンや、硝酸イオン、炭酸イオン、塩素イオン、リン酸イオン、フッ素イオン、亜硫酸イオン、チタン酸イオン、ケイ酸イオン、硼酸イオン等の陰イオンが挙げられ、その濃度としては0〜10000ppm程度含まれてもよい。陽極酸化処理の条件に特に限定はないが、好ましくは30〜500g/リットル、処理液温10〜70℃で、電流密度0.1〜40A/m2の範囲で直流又は交流電解によって処理される。形成される陽極酸化皮膜の厚さは0.5〜1.5μmの範囲である。好ましくは0.5〜1.0μmの範囲である。以上の処理によって作製された支持体が、陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアのポア径が5〜10nm、ポア密度が8×1015〜2×1016個/m2の範囲に入るように処理条件が選択されることが好ましい。
前記支持体表面の親水化処理としては、広く公知の方法が適用できる。特に好ましい処理としては、シリケート又はポリビニルホスホン酸等による親水化処理が施される。皮膜はSi、又はP元素量として2〜40mg/m2、より好ましくは4〜30mg/m2で形成される。塗布量はケイ光X線分析法により測定できる。
上記の親水化処理は、アルカリ金属ケイ酸塩、又はポリビニルホスホン酸が1〜30質量%、好ましくは2〜15質量%であり、25℃のpHが10〜13である水溶液に、陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム支持体を、例えば、15〜80℃で0.5〜120秒浸漬することにより実施される。
前記親水化処理に用いられるアルカリ金属ケイ酸塩としては、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウムなどが使用される。アルカリ金属ケイ酸塩水溶液のpHを高くするために使用される水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどがある。なお、上記の処理液にアルカリ土類金属塩若しくは第IVB族金属塩を配合してもよい。アルカリ土類金属塩としては、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸マグネシウム、硝酸バリウムのような硝酸塩や、硫酸塩、塩酸塩、リン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、ホウ酸塩などの水溶性の塩が挙げられる。第IVB族金属塩としては、四塩化チタン、三塩化チタン、フッ化チタンカリウム、シュウ酸チタンカリウム、硫酸チタン、四ヨウ化チタン、塩化酸化ジルコニウム、二酸化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、四塩化ジルコニウムなどを挙げることができる。
アルカリ土類金属塩若しくは、第IVB族金属塩は、単独又は2種以上組み合わせて使用することができる。これらの金属塩の好ましい範囲は0.01〜10質量%であり、更に好ましい範囲は0.05〜5.0質量%である。また、米国特許第3,658,662号明細書に記載されているようなシリケート電着も有効である。特公昭46−27481号、特開昭52−58602号、特開昭52−30503号に開示されているような電解グレインを施した支持体と、上記陽極酸化処理及び親水化処理を組合せた表面処理も有用である。
〔平版印刷版原版の作製〕
本発明の平版印刷版原版は、支持体上に、感光層、中間層、保護層をこの順に設け、更に必要に応じて、下塗り層等を設けてなる塗工ウェブを、既述のように該保護層表面に合紙を介在させずに裁断部材で板厚方向に挟み付けて裁断して得られる。
かかる平版印刷版原版を得るための塗工ウェブは、上述の各種成分を含む塗布液を、それぞれ、適当な溶媒に溶かして、支持体上に、順次塗布することにより製造することができる。
感光層を塗設する際には、前記感光層成分を種々の有機溶剤に溶かして、感光層塗布液とし、支持体又は下塗り層上に塗布される。
ここで使用する溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、エチレンジクロライド、テトラヒドロフラン、トルエン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メトキシプロパノール、メトキシメトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチルなどがある。これらの溶媒は、単独或いは混合して使用することができる。そして、感光層塗布液中の固形分の濃度は、2〜50質量%が適当である。
前記感光層の被覆量は、主に、感光層の感度、現像性、露光膜の強度・耐刷性に影響し得るもので、用途に応じ適宜選択することが望ましい。被覆量が少なすぎる場合には、耐刷性が十分でなくなる。一方多すぎる場合には、感度が下がり、露光に時間がかかる上、現像処理にもより長い時間を要するため好ましくない。走査露光用平版印刷版原版としては、その被覆量は乾燥後の質量で約0.1g/m2〜約10g/m2の範囲が適当である。より好ましくは0.5〜5g/m2である。
〔下塗り層〕
本発明に係る平版印刷版原版には、感光層と支持体との間の密着性や汚れ性を改善する目的で、下塗り層を設けてもよい。このような下塗り層の具体例としては、特公昭50−7481号、特開昭54−72104号、特開昭59−101651号、特開昭60−149491号、特開昭60−232998号、特開平3−56177号、特開平4−282637号、特開平5−16558号、特開平5−246171号、特開平7−159983号、特開平7−314937号、特開平8−202025号、特開平8−320551号、特開平9−34104号、特開平9−236911号、特開平9−269593号、特開平10−69092号、特開平10−115931号、特開平10−161317号、特開平10−260536号、特開平10−282682号、特開平11−84674号、特開平10−69092号、特開平10−115931号、特開平11−38635号、特開平11−38629号、特開平10−282645号、特開平10−301262号、特開平11−24277号、特開平11−109641号、特開平10−319600号、特開平11−84674号、特開平11−327152号、特開2000−10292号、特開2000−235254号、特開2000−352854号、特開2001−209170号、特願平11−284091号等に記載のものを挙げることができる。
<平版印刷版原版積層体>
本発明の平版印刷版原版積層体は、既述の平版印刷版原版をアルミニウム支持体裏面側最表面と保護層側最表面とを直接接触させて、複数枚積層してなることを特徴とする
上述のように、本発明の平版印刷版原版は、合紙を介在させることなく積層させた場合であっても、製造工程のずれに起因する平版印刷版原版表面の傷に対応する故障が抑制される。これにより、本発明の平版印刷版原版積層体は、製造時においてズレの発生が抑制された平版印刷版原版積層体であり、更に従来製造する際に必要であった、平版印刷版原版と合紙とを交互に積層する余分な工程、及びそれに用いられる材料を節約できる。
<製版方法>
以下、本発明における平版印刷版の製版方法について説明する。
本発明における平版印刷版の製版方法は、上述の本発明の平版印刷版原版を、保護層とアルミニウム支持体裏面とを直接接触させて複数枚積層してなる積層体(本発明の平版印刷版原版積層体)を、プレートセッター内にセットし、該平版印刷版原版を1枚づつ自動搬送した後に、750nm〜1400nmの波長で露光処理した後、実質的に加熱処理を経ることなく、搬送速度が1.25m/分以上の条件にて現像処理を行なうことが好ましい。
上述の本発明の平版印刷版原版は、中間に合紙を挟み込むことなく積層しても、平版印刷版原版の間の密着性や、保護層へのキズの発生が抑制されるため、上記のような製版方法に適用することができる。
本発明における平版印刷版の製版方法によれば、平版印刷版原版を、合紙を挟み込むことなく積層した積層体を用いることから、合紙の除去が不必要となる。
この製版方法は、上述した本発明の平版印刷版原版の製版にも好適であることはいうまでもないが、少なくとも、赤外線吸収剤、重合開始剤、及び重合性化合物を含有し、750nm〜1400nmの波長の露光によりアルカリ現像液に対する溶解性が低下する重合性ネガ型感光層を備えた平版印刷版原版のいずれにも好適に適用できる。具体的には、本発明に係る平版印刷版原版の感光層を構成する各成分の欄で説明した「赤外線吸収剤、重合開始剤、及び重合性化合物」の各成分を含有する感光層であればよく、バインダーポリマーとしては公知のものを含んでいてもよいし、含まなくてもかまわない。
また、本発明の平版印刷版の製版方法が適用される感光層としては、pH10〜13.5のアルカリ現像液に対する未露光部の現像速度が80nm/sec以上、かつ、該アルカリ現像液の露光部での浸透速度が50nF/sec以下である物性を有することが好ましい。この感光層の未露光部の現像速度や硬化後の感光層に対するアルカリ現像液の浸透速度の測定方法は、特願2004−248535号明細書に記載された方法を用いることができる。感光層の未露光部の現像速度や硬化後の感光層に対するアルカリ現像液の浸透速度の制御は、常法により行うことができるが、代表的なものとしては、前記特定バインダーポリマーを使用する方法の他、未露光部の現像速度の向上には、親水性の化合物の添加が有用であり、露光部への現像液浸透抑制には、疎水性の化合物の添加手段が有用である。
[露光]
本発明における露光処理に用いられる光源としては、750nm〜1400nmの波長で露光し得るものであれば、如何なるものでもよいが、赤外線レーザーが好適なものとして挙げられる。中でも、本発明においては、750nm〜1400nmの波長の赤外線を放射する固体レーザー及び半導体レーザーにより画像露光されることが好ましい。レーザーの出力は100mW以上が好ましく、露光時間を短縮するため、マルチビームレーザデバイスを用いることが好ましい。また、1画素あたりの露光時間は20μ秒以内であることが好ましい。平版印刷版原版に照射されるエネルギーは10〜300mJ/cm2であることが好ましい。露光のエネルギーが低すぎると感光層の硬化が十分に進行しない。また、露光のエネルギーが高すぎると感光層がレーザーアブレーションされ、画像が損傷することがある。
本発明における露光処理では、光源の光ビームをオーバーラップさせて露光することができる。オーバーラップとは副走査ピッチ幅がビーム径より小さいことをいう。オーバーラップは、例えば、ビーム径をビーム強度の半値幅(FWHM)で表わしたとき、FWHM/副走査ピッチ幅(オーバーラップ係数)で定量的に表現することができる。本発明ではこのオーバーラップ係数が0.1以上であることが好ましい。
本発明に使用する露光装置の光源の走査方式は特に限定はなく、円筒外面走査方式、円筒内面走査方式、平面走査方式などを用いることができる。また、光源のチャンネルは単チャンネルでもマルチチャンネルでもよいが、円筒外面方式の場合にはマルチチャンネルが好ましく用いられる。
本発明においては、上述のように、露光処理された平版印刷版原版は、特段の加熱処理及び水洗処理を行なうことなく、現像処理に供される。この加熱処理を行なわないことで、加熱処理に起因する画像の不均一性を抑制することができる。また、加熱処理及び水洗処理を行なわないことで、現像処理において安定な高速処理が可能となる。
[現像]
本発明における現像処理では、現像液を用いて、感光層の非画像部を除去する。
なお、本発明においては、上述のように、現像処理における処理速度、即ち、現像処理における平版印刷版原版の搬送速度(ライン速度)は、1.25m/分以上であることを要し、より好ましくは、1.35m/分以上である。また、搬送速度の上限値には特に制限はないが、搬送の安定性の観点からは、3m/分以下であることが好ましい。
以下、本発明に用いられる現像液について説明する。
−現像液−
本発明に用いられる現像液は、pH14以下のアルカリ水溶液であることが好ましく、また、芳香族アニオン界面活性剤を含有することが好ましい。
−芳香族アニオン界面活性剤−
本発明における現像液に用いられる芳香族アニオン界面活性剤は、現像促進効果、重合性ネガ型の感光層成分及び保護層成分の現像液中での分散安定化効果があり、現像処理安定化において好ましい。中でも、本発明に用いられる芳香族アニオン界面活性剤としては、下記一般式(A)又は一般式(B)で表される化合物であることが好ましい。
Figure 2007268993
上記一般式(A)又は一般式(B)において、R1、R3は、それぞれ独立に、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1〜5のアルキレン基を表し、具体的には、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基等が挙げられ、中でも、エチレン基、プロピレン基が特に好ましい。
m、nは、それぞれ独立に、1〜100から選択される整数を表し、中でも、1〜30が好ましく、2〜20がより好ましい。また、mが2以上の場合、複数存在するR1は同一でも異なっていてもよい。同じく、nが2以上の場合、複数存在するR3は同一でも異なっていてもよい。
t、uは、それぞれ独立に、0又は1を表す。
2、R4は、それぞれ独立に、直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜20のアルキル基を表し、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ドデシル基等が挙げられ、中でも、メチル基、エチル基、iso−プロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基が特に好ましい。
p、qはそれぞれ、0〜2から選択される整数を表す。Y1、Y2は、それぞれ単結合、又は炭素原子数1〜10のアルキレン基を表し、具体的には、単結合、メチレン基、エチレン基が好ましく、特に単結合が好ましい。
(Z1r+、(Z2s+は、それぞれ独立に、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、或いは、無置換又はアルキル基で置換されたアンモニウムイオンを表し、具体例としては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、アンモニウムイオン、炭素数1〜20の範囲の、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基が置換した2級〜4級のアンモニウムイオンなどが挙げられ、特に、ナトリウムイオンが好ましい。r、sはそれぞれ、1又は2を表す。
以下に、具体例(例示化合物:K−1〜K−12)を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2007268993
Figure 2007268993
これら芳香族アニオン界面活性剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。芳香族アニオン界面活性剤の添加量は、現像液中における芳香族アニオン界面活性剤の濃度が1.0〜10質量%の範囲とすることが好ましく、より好ましくは2〜10質量%の範囲とすることが効果的である。ここで、含有量が1.0質量%以下であると、現像性低下及び感光層成分の溶解性低下を招き、含有量が10質量%以上であると、印刷版の耐刷性を低下させる。
本発明に係る現像液には、前記芳香族アニオン界面活性剤以外に、その他の界面活性剤を併用してもよい。その他の界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンナフチルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンステアレート等のポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート等のソルビタンアルキルエステル類、グリセロールモノステアレート、グリセロールモノオレート等のモノグリセリドアルキルエステル類等のノニオン界面活性剤である。
これらその他の界面活性剤の現像液中における含有量は有効成分換算で、0.1から10質量%が好ましい。
(2価金属に対するキレート剤)
本発明に係る現像液には、例えば、硬水に含まれるカルシウムイオンなどによる影響を抑制する目的で、2価金属に対するキレート剤を含有させることが好ましい。2価金属に対するキレート剤としては、例えば、Na227、Na533、Na339、Na24P(NaO3P)PO3Na2、カルゴン(ポリメタリン酸ナトリウム)などのポリリン酸塩、例えばエチレンジアミンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、そのアミン塩;ジエチレントリアミンペンタ酢酸、そのカリウム塩、ナトリウム塩;トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ニトリロトリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1,2−ジアミノシクロヘキサンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1,3−ジアミノ−2−プロパノールテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩などのようなアミノポリカルボン酸類の他2−ホスホノブタントリカルボン酸−1,2,4、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;2−ホスホノブタノントリカルボン酸−2,3,4、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1−ホスホノエタントリカルボン酸−1,2、2、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、そのカリウム塩、そのナトリウム塩などのような有機ホスホン酸類を挙げることができ、中でも、エチレンジアミンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、そのアミン塩;エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、そのアンモニウム塩、そのカリウム塩、;ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、そのアンモニウム塩、そのカリウム塩が好ましい。
このようなキレート剤の最適量は使用される硬水の硬度及びその使用量に応じて変化するが、一般的には、使用時の現像液中に0.01〜5質量%、より好ましくは0.01〜0.5質量%の範囲で含有させる。
また、本発明に係る現像液には、現像調整剤として有機酸のアルカリ金属塩類、無機酸のアルカリ金属塩類を加えてもよい。例えば、炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、クエン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウムなどを単独若しくは2種以上を組み合わせて混合して用いてもよい。
(アルカリ剤)
本発明に係る現像液に用いられるアルカリ剤としては、例えば、第3リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、硼酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、水酸化ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、及び同リチウムなどの無機アルカリ剤及び、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドなどの有機アルカリ剤等が挙げられる。本発明においては、これらを単独で用いてもよいし、若しくは2種以上を組み合わせて混合して用いてもよい。
また、上記以外のアルカリ剤として、アルカリ珪酸塩を挙げることができる。アルカリ珪酸塩は塩基と組み合わせて使用してもよい。使用するアルカリ珪酸塩としては、水に溶解したときにアルカリ性を示すものであって、例えば珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウム、珪酸アンモニウムなどがある。これらのアルカリ珪酸塩は1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明に用いられる現像液は、支持体の親水化成分としての珪酸塩の成分である酸化ケイ素SiO2と、アルカリ成分としてのアルカリ酸化物M2O(Mはアルカリ金属又はアンモニウム基を表す)との混合比率、及び濃度の調整により、最適な範囲に容易に調節することができる。酸化ケイ素SiO2とアルカリ酸化物M2Oとの混合比率(SiO2/M2Oのモル比)は、支持体の陽極酸化皮膜が過度に溶解(エッチング)されることに起因する放置汚れや、溶解アルミニウムと珪酸塩との錯体形成に起因する不溶性ガスの発生を抑制するといった観点から、好ましくは0.75〜4.0の範囲であり、より好ましくは0.75〜3.5の範囲で使用される。
また、現像液中のアルカリ珪酸塩の濃度としては、支持体の陽極酸化皮膜の溶解(エッチング)抑制効果、現像性、沈殿や結晶生成の抑制効果、及び廃液時における中和の際のゲル化防止効果などの観点から、現像液の質量に対して、SiO2量として、0.01〜
1mol/Lが好ましく、より好ましくは0.05〜0.8mol/Lの範囲で使用される。
本発明において使用される現像液には、上記の成分の他に、必要に応じて以下のような成分を併用することができる。例えば、安息香酸、フタル酸、p−エチル安息香酸、p−n−プロピル安息香酸、p−イソプロピル安息香酸、p−n−ブチル安息香酸、p−t−ブチル安息香酸、p−t−ブチル安息香酸、p−2−ヒドロキシエチル安息香酸、デカン酸、サリチル酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸等の有機カルボン酸;プロピレングリコール等の有機溶剤;この他、還元剤、染料、顔料、硬水軟化剤、防腐剤等が挙げられる。
本発明に用いられる現像液は、25℃におけるpHが10〜12.5の範囲であることが好ましく、pH11〜12.5の範囲であることがより好ましい。本発明における現像液は、前記界面活性剤を含むため、このような低pHの現像液を用いても、非画像部において優れた現像性を発現する。このように、現像液のpHを比較的低い値とすることにより、現像時における画像部へのダメージを軽減するとともに、現像液の取扱い性にも優れる。
また、該現像液の導電率xは、2<x<30mS/cmであることが好ましく、5〜25mS/cmであることがより好ましい。
ここで、導電率を調整するための導電率調整剤として、有機酸のアルカリ金属塩類、無機酸のアルカリ金属塩類等を添加することが好ましい。
上記の現像液は、露光された平版印刷版原版の現像液及び現像補充液として用いることができ、自動現像機に適用することが好ましい。自動現像機を用いて現像する場合、処理量に応じて現像液が疲労してくるので、補充液又は新鮮な現像液を用いて処理能力を回復させてもよい。
更に、自動現像機を用いて、現像液の処理能力を回復させるためには、米国特許第4,882,246号に記載されている方法で補充することが好ましい。また、特開昭50−26601号、同58−54341号、特公昭56−39464号、同56−42860号、同57−7427号の各公報に記載されている現像液も好ましい。
本発明のより好ましい現像補充液は、アルミニウムイオンと水溶性キレート化合物形成能を有するオキシカルボン酸キレート剤と、アルカリ金属の水酸化物と、界面活性剤とを含有し、ケイ酸塩を含有せず、pH11〜13.5の水溶液であることを特徴とする現像補充液である。このような現像補充液を使用することにより、優れた現像性と版材の画像部の強度を損なうことの無い特性を有し、現像液のアルカリによりアルミニウム支持体が溶出されて形成する水酸化アルミニウムの析出が効果的に抑制され、自動現像機の現像浴ローラー表面への水酸化アルミニウムを主成分とする汚れの付着や、引き続く水洗浴内への水酸化アルミニウム析出物の蓄積が低減され、長期間安定に処理することができる。
このようにして現像処理された平版印刷版原版は、特開昭54−8002号、同55−115045号、同59−58431号等の各公報に記載されているように、水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体等を含む不感脂化液で後処理される。本発明に係る平版印刷版原版の後処理にはこれらの処理を種々組み合わせて用いることができる。このような処理によって得られた平版印刷版はオフセット印刷機に掛けられ、多数枚の印刷に用いられる。
本発明における平版印刷版の製版方法においては、画像強度・耐刷性の向上を目的として、現像後の画像に対し、全面後加熱若しくは、全面露光を行うこともできる。
現像後の加熱には非常に強い条件を利用することができる。通常は加熱温度が200〜500℃の範囲で実施される。現像後の加熱温度が低いと十分な画像強化作用が得られず、高すぎる場合には支持体の劣化、画像部の熱分解といった問題を生じるおそれがある。
以上の処理によって得られた平版印刷版はオフセット印刷機に掛けられ、多数枚の印刷に用いられる。
印刷時、版上の汚れ除去のため使用するプレートクリーナーとしては、従来知られているPS版用プレートクリーナーが使用され、例えば、マルチクリーナー、CL−1、CL−2、CP、CN−4、CN、CG−1、PC−1、SR、IC(富士写真フイルム株式会社製)等が挙げられる。
以下、実施例によって本発明を説明するが本発明はこれらに限定されるものではない。〔実施例1〕
(支持体の作製)
厚さ0.30mm、幅1030mmのJIS A 1050アルミニウム板を用いて、以下に示す表面処理を行った。
<表面処理>
表面処理は、以下の(a)〜(f)の各種処理を連続的に行った。なお、各処理及び水洗の後にはニップローラで液切りを行った。
(a)アルミニウム板を苛性ソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%、温度70℃でエッチング処理を行い、アルミニウム板を5g/m2溶解した。その後水洗を行った。
(b)温度30℃の硝酸濃度1質量%水溶液(アルミニウムイオン0.5質量%含む)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後水洗した。
(c)60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。この時の電解液は、硝酸1質量%水溶液(アルミニウムイオン0.5質量%、アンモニウムイオン0.007質量%含む)、温度30℃であった。交流電源は電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが2msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電流密度は電流のピーク値で25A/dm2、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で250C/cm2であった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。その後水洗を行った。
(d)アルミニウム板を苛性ソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%でスプレーによるエッチング処理を35℃で行い、アルミニウム板を0.2g/m2溶解し、前段の交流を用いて電気化学的な粗面化を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分の除去と、生成したピットのエッジ部分を溶解し、エッジ部分を滑らかにした。その後水洗した。
(e)温度60℃の硫酸濃度25質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後スプレーによる水洗を行った。
(f)硫酸濃度170g/リットル(アルミニウムイオンを0.5質量%を含む)、温度33℃、電流密度が5(A/dm2)で、50秒間陽極酸化処理を行った。その後水洗を行った。この時の陽極酸化皮膜重量が2.7g/m2であった。
このようにして得られたアルミニウム支持体の表面粗さRaは0.27(測定機器;東京精密(株)製サーフコム、蝕針先端径2ミクロンメーター)であった。
<下塗り層>
次に、このアルミニウム支持体に下記下塗り層用塗布液をワイヤーバーにて塗布し、90℃30秒間乾燥した。塗布量は10mg/m2であった。
(下塗り層用塗布液)
・下記構造の高分子化合物A 0.05g
・メタノール 27g
・イオン交換水 3g
Figure 2007268993
(感光層)
次に、下記感光層塗布液[P−1]を調製し、上記のアルミニウム支持体にワイヤーバーを用いて塗布した。乾燥は、温風式乾燥装置にて115℃で34秒間行った。乾燥後の感光層の被覆量は1.4g/m2であった。
<感光層塗布液[P−1]>
・赤外線吸収剤(IR−1) 0.074g
・重合開始剤(OS−12) 0.280g
・添加剤(PM−1) 0.151g
・重合性化合物(AM−1) 1.00g
・特定バインダーポリマー(BT−1) 1.00g
・エチルバイオレット(C−1) 0.04g
・フッ素系界面活性剤 0.015g
(メガファックF−780−F 大日本インキ化学工業(株)、
メチルイソブチルケトン(MIBK)30質量%溶液)
・メチルエチルケトン 10.4g
・メタノール 4.83g
・1−メトキシ−2−プロパノール 10.4g
なお、上記感光層塗布液に用いた重合開始剤(OS−12)は、前述の一般式(1)で表されるオニウム塩の化合物例として挙げられているものを指す。また、赤外線吸収剤(IR−1)、添加剤(PM−1)、重合性化合物(AM−1)、バインダーポリマー(BT−1)、及びエチルバイオレット(C−1)の構造を以下に示す。
Figure 2007268993
(中間層)
前述の感光層表面に、合成雲母(ソマシフME−100、8%水分散液、コープケミカル(株)製)と、ケン化度が91モル%以上の特定ポリビニルアルコール(ゴーセランCKS−50:ケン化度99モル%、重合度300、スルホン酸変性ポリビニルアルコール日本合成化学工業株式会社製)と、界面活性剤(日本エマルジョン社製、エマレックス710)と、の混合水溶液(保護層用塗布液)をワイヤーバーで塗布し、温風式乾燥装置にて125℃75秒間乾燥させた。
この混合水溶液(保護層用塗布液)中の、雲母固形分/特定ポリビニルアルコール/界面活性剤の含有量割合は、18/80/2(質量%)であり、中間層の全塗布量は(乾燥後の被覆量)は0.5g/m2であった。
(保護層)
上記中間層表面に、ポリビニルアルコール(ゴーセランCKS−50:ケン化度99モル%、重合度300、スルホン酸変性ポリビニルアルコール日本合成化学工業株式会社製)と界面活性剤(日本エマルジョン社製、エマレックス710)とフィラー(ケミパールW−308、粒子径6μの高密度ポリエチレン粒子、三井化学社(株)製、以下、単に「W−308」と記載する。)と、の混合水溶液(保護層用塗布液)をワイヤーバーで塗布し、温風式乾燥装置にて125℃75秒間乾燥させた。この混合水溶液(保護層用塗布液)中の、フィラー/ポリビニルアルコール/界面活性剤の含有量割合は、5/90.5/4.5(質量%)であり、保護層の全塗布量は(乾燥後の被覆量)は1.6g/m2であった。
以上のようにして、塗工ウェブを作製した。
〔中間層の酸素透過率測定条件〕
得られた塗工ウェブの両面を約20μmのポリエチレンでコートした約200μmの印画紙に、感光層上に塗布するのと同様に中間層を塗布乾燥し、測定用のサンプルを作成した。印画紙の酸素透過率は、下記条件下で約700ml/(m2・day・atm)であるので、中間層の測定には十分無視できる。
JIS K7126B及びASTM D3985に記載の気体透過度試験方法に則り、モコン社製 OX−TRAN2/20を用い、25℃60%RHの条件で酸素透過率ml/(m2・day・atm)を測定した。
下記のように塗工ウェブをカットした。合紙を挟まない、厚さ0.3mm、幅90cmのコイル状の塗工ウェブを幅80cmに、図1のスリッタ装置と図2の裁断刃を用いて、両端を連続してスリットした。その後、110cmに裁断、(110×80cm)集積し、平版印刷版原版を得た。
得られた平版印刷版原版に対して、以下の評価を実施した。
保護層側の最表面におけるベック平滑度を既述の方法で評価した。その結果を表1に示す。
エッジ汚れ評価は、得られた平版印刷版原版を、Creo社製Trendsetter800II Quantumにて、解像度2400dpi、外面ドラム回転数200rpm、出力5Wの条件で露光した。なお、露光は25℃50%RHの条件下で行った。
露光後、加熱処理、水洗処理は行わず、富士フイルム(株)社製自動現像機LP−1310HIIを用い搬送速度(ライン速度)2m/分、現像温度30℃で現像処理した。なお、現像液はDH−Nの1:4水希釈液を用い、現像補充液はFCT−421の1:1.4水希釈、フィニッシャーは富士フイルム(株)社製GN−2Kの1:1水希釈液を用いた。
印刷機は東京機械(株)製の4色タワー型輪転機CT7000(17万機)、インキは大日本インキ(株)製新聞用インキ、湿し水は東洋インキ(株)製新聞用ニュースキングアルキー(pH=10.2)、紙は王子製紙製“苫小牧”(重さ44g/m2)、ブランケットは金陽社MP−75R、2.07mmを用い、10万部印刷した後、印刷版の端部に相当する部分の汚れを以下の基準で目視官能評価した。その結果を表1に示す。
○:実用上好ましいレベル
△:実用下限レベル
×:実用上不可レベル
傷評価は、Creo社製Trendsetter800II Quantumにて、解像度2400dpi、外面ドラム回転数200rpm、出力5Wの条件で全面露光した。なお、露光は25℃50%RHの条件下で行った。評価は、上記露光したサンプルの500枚当りの傷発生個数を目視で検査し評価した。その結果を表1に示す。
セッター搬送性は、NEC社製AMIZSETTERにて、搬送速度が120版/時の条件で100版連続処理し、100枚全て問題なく搬送できたか否かを以下の基準で評価した。その結果を表1に示す。
○:すべて問題なく搬送できた
△:うまく搬送できなかったものが3枚以下であった
×:うまく搬送できなかったものが3枚より多かった
ズレ評価は、スキッド上に500枚積載した集積品を集積部から包装工程まで運搬後、端部のずれ量を以下の基準で目視評価した。その結果を表1に示す。
○:0(ズレ発生なし)
△:0.5mm未満のズレが発生した
×:0.5mm以上のズレが発生した
〔比較例1〕
実施例1において、混合水溶液(保護層用塗布液)のW−308のフィラーを除き、混合水溶液(保護層用塗布液)中のポリビニルアルコール/界面活性剤の含有量割合を、98/2(質量%)に変更し、さらに保護層の全塗布量(乾燥後の被覆量)が1.6g/m2となるように変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例1の平版印刷版原版を得た。得られた平版印刷版原版について実施例1と同様の評価を実施した。その結果を表1に示す。
[比較例2]
実施例1において、中間層の中の雲母を除き、また混合水溶液(保護層用塗布液)のW−308のフィラーを除き、混合水溶液(保護層用塗布液)中のポリビニルアルコール/界面活性剤の含有量割合を、98/2(質量%)に変更し、さらに保護層の全塗布量(乾燥後の被覆量)が1.6g/m2となるように変更して、比較例2の平版印刷版原版を得た。得られた平版印刷版原版について実施例1と同様の評価を実施した。その結果を表1に示す。
Figure 2007268993
表1からわかるように、実施例1の平版印刷原版は、ズレ性、耐キズ性、エッジ汚れ性、セッター搬送性とも良好であることがわかった。
これに対し、フィラーを含まない比較例1の平版印刷版原版では、ズレ性、耐キズ性が満足のいくものではなかった。
中間層に雲母を含有せず、更にフィラーを含まない比較例2の平版印刷版原版では、ズレ性、エッジ汚れ性が満足のいくものではなかった。
スリッタ装置の裁断部を示す断面図である。 本発明の下側裁断刃の先端部形状の一実施態様を示す斜視図である。 図2における下側裁断刃の先端部形状のA部の拡大図である。 本発明の感光性平版印刷版端部の一実施態様の形状を示す概略断面図である。
符号の説明
10a、10b……上側裁断刃
11……回転軸
20(20a、20b)……下側裁断刃
21……回転軸
25……下側裁断刃
30……平版印刷版

Claims (5)

  1. 親水性表面を有するアルミニウム支持体上に、感光層、無機層状化合物を含む中間層、フィラーを含む保護層をこの順に積層した塗工ウェブを、該保護層表面に合紙を介在させずに裁断部材で板厚方向に挟み付けて裁断して製造されたことを特徴とする平版印刷版原版。
  2. 前記フィラーが、有機樹脂微粒子であることを特徴とする請求項1に記載の平版印刷版原版。
  3. 前記保護層側の最表面におけるベック平滑度が、100秒以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の平版印刷版原版。
  4. 前記感光層が、下記(イ)〜(ニ)の各成分を含有する重合性ネガ型感光層であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の平版印刷版原版。
    (イ)赤外線吸収剤
    (ロ)重合開始剤
    (ハ)重合性化合物
    (ニ)バインダーポリマー
  5. 請求項1〜4の何れか1項に記載の平版印刷版原版を、アルミニウム支持体裏面側最表面と保護層側最表面とを直接接触させて、複数枚積層してなることを特徴とする平版印刷版原版積層体。
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