JP2008012816A - セラミックグリーンシートの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の目的は、気泡の発生を顕著に低減でき、品質の高いセラミックグリーンシートが得られる製造方法を提供することにある。さらに本発明は、当該方法により製造されたセラミックグリーンシートを焼結したセラミックシートと、当該セラミックシートを固体電解質膜とする固体酸化物形燃料電池を提供することも目的とする。
【解決手段】本発明に係るセラミックグリーンシートの製造方法は、セラミックグリーンシートの原料スラリーを配管により輸送する前に、溶媒により輸送用配管の内部表面を処理することを特徴とする。
【選択図】なし
【解決手段】本発明に係るセラミックグリーンシートの製造方法は、セラミックグリーンシートの原料スラリーを配管により輸送する前に、溶媒により輸送用配管の内部表面を処理することを特徴とする。
【選択図】なし
Description
本発明は、セラミックグリーンシートを製造する方法と、当該方法で製造されたセラミックグリーンシートを焼結したセラミックシート、および当該セラミックシートを構成部材として用いた固体酸化物形燃料電池に関するものである。
近年、燃料電池はクリーンなエネルギー源として注目されており、その用途は家庭用発電から業務用発電、更には自動車用発電などを主体にして急速に改良研究や実用化研究が進められている。かかる燃料電池の中でも固体酸化物形燃料電池は、効率が高く長期安定性にも優れるものとして、家庭用や業務用の電力源として期待されている。
この固体酸化物形燃料電池の代表的な構造としては、平板状固体電解質膜の片面側に燃料極、他方面側に空気極を設けた自立膜型セルを縦方向に多数積層したスタックが基本である。そして、その発電性能を高めるには、燃料ガスと空気との混合を確実に阻止するため固体電解質膜を緻密にすると共に、イオン導電性を高めるため固体電解質膜の膜厚を極力薄くする傾向にあった。
しかし固体酸化物形燃料電池は、前述したように燃料極/固体電解質膜/空気極を有するセルと、燃料ガスと空気を分離・流通させるためのセパレータとを交互に多数積層した構造を有する。よって、固体電解質膜には大きな積層荷重がかかる他、作動温度は700〜1000℃程度と相当の熱ストレスを受けるので、高レベルの強度と耐熱性が要求される。そこで、比較的厚膜のセラミックシートも求められるようになった。
ところが、固体電解質膜として用いられるセラミックシートやその前駆体であるセラミックグリーンシートは、その膜厚が厚くなるほど表面欠陥が発生し易くなる。そこで、従来、かかる表面欠陥を抑制するための技術が種々開発されてきた。
例えば特許文献1には、300μmを超える厚膜セラミックグリーンシートを製造するためのセラミックスラリーであって、クラック等の欠陥を抑制すべく、水系ポリウレタン樹脂とセルロース誘導体を併用したものが記載されている。また、特許文献2には、セラミックグリーンシートを形成するためのものであり、クラックや柚子肌などの欠陥を抑制するためにノニオン性分散剤を配合したセラミック塗料が開示されている。
さらに特許文献3には、セラミックグリーンシートを製造するためのものではないが、塗料などの塗布膜におけるピンホールの発生を抑制できるドクターブレード装置が記載されている。この装置は、従来、塗布液の供給は上方から行われており、その際に外気を巻き込むことにより気泡が生じ易かったところ、塗布液を下部から供給することにより問題の解決を図っている。
特開2006−8490号公報(特許請求の範囲、段落0010)
特開2002−321980号公報(特許請求の範囲、段落0008)
特開2006−81956号公報(特許請求の範囲、段落0008〜0010、0036)
上述した様に、表面欠陥が低減されたセラミックグリーンシートを製造するための技術(特許文献1と2)は知られていた。また、セラミックグリーンシートに関する技術ではないものの、塗布液に混入する気泡を抑制するための技術(特許文献3)もあった。
しかし、特許文献3の技術は印刷などに関するものであり、そもそも用いる塗布液の粘度は非常に低く気泡は消失し易い。よって、セラミックスラリーなど粘度の高いものを用いる場合には、十分な結果が得られない。また、特許文献1と2ではクラック等の問題は認識されているものの気泡については認識されておらず、これら技術は十分に気泡を抑制できるものではなかった。とりわけ厚膜のセラミックシートを製造する場合には、原料スラリー中に混入した微細な空気の泡が抜けずに膜中に残存し易く、この気泡が乾燥段階で膨張して目視で確認できる大きさまで成長する。場合によっては気泡が破裂することにより窪みやピンホールが形成される。これらの欠陥はセラミックシートの強度を低下させるほか、固体酸化物形燃料電池とした際の発電性能を著しくおとしめるものである。これらに対処する方法として、気泡が生じた部分を除いてセラミックシートを切り出し、以降の工程に供することも可能ではあるが、気泡が多いと歩留が低下する。また、目視では観察できない微細な気泡が生じれば、これも強度低下の原因になると考えられる。
そこで本発明が解決すべき課題は、気泡の発生を顕著に低減でき、品質の高いセラミックグリーンシートが得られる製造方法を提供することにある。さらに本発明は、当該方法により製造されたセラミックグリーンシートを脱脂および焼結したセラミックシートと、当該セラミックシートを固体電解質膜とする固体酸化物形燃料電池を提供することも目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、セラミックグリーンシートに生じる気泡を低減できる方法につき鋭意研究を重ねた。その結果、気泡の原因となる空気は、主として原料スラリーがスラリータンクから輸送される際に混入し、気泡の発生には、輸送に用いられる配管の材質と原料スラリーとの相性や原料スラリーの粘度など複数の要因が関係するものの、輸送前に配管の内部表面を溶媒で処理することにより空気の混入を低減できることを見出して、本発明を完成した。
即ち、本発明に係るセラミックグリーンシートの製造方法は、
セラミックグリーンシートの原料スラリーを配管により輸送する前に、溶媒により当該配管の内部表面を処理することを特徴とする。
セラミックグリーンシートの原料スラリーを配管により輸送する前に、溶媒により当該配管の内部表面を処理することを特徴とする。
上記製法においては、原料を塗工ダムへ輸送する配管として、開閉バルブを有さない1本の配管を用いることが好ましい。気泡の原因となるスラリーへの空気の混入を、より一層低減できるからである。
上記製法は、特に膜厚350μm以上のセラミックグリーンシートの製造に適している。薄膜の場合、原料スラリーに混入した空気は厚膜の場合よりも抜け易く、気泡が生じる可能性は比較的低い。しかし、かかる厚膜のシートを製造する場合には気泡が発生しがちであり、本発明は、かかる厚膜シートの製造において特に効果を発揮できる。
本発明のセラミックシートは、上記製法で製造されたセラミックグリーンシートを焼結したものである。また、本発明の固体酸化物形燃料電池は、当該セラミックシートを固体電解質膜とする。
本発明によれば、気泡のない高品質なセラミックグリーンシートおよびセラミックシートを高い生産性で効率的に製造することができる。よって本発明は、固体酸化物形燃料電池において、特に耐久性の高い比較的厚膜の固体電解質膜として好適なセラミックシート、およびその前駆体であるセラミックグリーンシートの大量生産技術に適するものとして、産業上極めて有用である。
本発明に係るセラミックグリーンシートの製造方法は、
セラミックグリーンシートの原料スラリーを配管により輸送する前に、溶媒により当該配管の内部表面を処理することを特徴とする。
セラミックグリーンシートの原料スラリーを配管により輸送する前に、溶媒により当該配管の内部表面を処理することを特徴とする。
本発明のセラミックグリーンシート(以下、単に「グリーンシート」という場合がある)の原料スラリーは、少なくともセラミック粒子、バインダーおよび溶媒を有するものであれば特に制限されない。
原料スラリーに含まれるセラミック粒子は、セラミックシートの強度や高い酸素イオン導電性を確保する上で重要な成分であり、その材質としては、ジルコニア、アルミナ、チタニア、セリア、アルミニウムマグネシウムスピネル、アルミニウムニッケルスピネルなどが、単独で或いは2種以上を混合して使用される。これらの中で最も汎用性の高いのは安定化ジルコニアである。
安定化ジルコニアとしては、ジルコニアに、安定化剤としてMgO、CaO、SrO、BaO等のアルカリ土類金属の酸化物;Y2O3、La2O3、CeO2、Pr2O3、Nd2O3、Sm2O3、Eu2O3、Gd2O3、Tb2O3、Dy2O3、Er2O3、Tm2O3、Yb2O3等の希土類元素の酸化物;Sc2O3、Bi2O3、In2O3等から選ばれる1種もしくは2種以上の酸化物を固溶させたもの、或いは、これらに分散強化剤としてアルミナ、チタニア、Ta2O5、Nb2O5などが添加された分散強化型ジルコニア等が好ましいものとして例示される。
また、CeO2やBi2O3にCaO、SrO、BaO、Y2O3、La2O3、Ce2O3、Pr2O3、Nb2O3、Sm2O3、Eu2O3、Gd2O3、Tb2O3、Dr2O3、Ho2O3、Er2O3、Yb2O3、PbO、WO3、MoO3、V2O5、Ta2O5、Nb2O5の1種もしくは2種以上を添加したセリア系またはビスマス系も使用可能である。これらの中でもより好ましいのは、2.5〜12モル%のイットリア、3〜15モル%のスカンジア、または8〜15モル%のスカンジアと0.2〜10モル%のセリアで安定化されたジルコニアであり;更に好ましいのは8〜12モル%のイットリア、8〜15モル%のスカンジア、または10〜11モル%のスカンジアと0.5〜2モル%のセリアで安定化されたジルコニア;或いは、安定化ジルコニアに対し分散強化剤としてアルミナ、チタニア、Ta2O5、Nb2O5などが0.01〜20質量%、好ましくは0.2〜5質量%添加された分散強化型ジルコニアである。
使用するセラミック粒子の平均粒子径としては、0.1〜3μmで90体積%の粒径が6μm以下が好ましく、より好ましくは0.15〜1.5μmで90体積%の粒径が3μm以下、更に好ましくは0.2〜1μmで90体積%の粒径が2μm以下である。
本発明で用いるバインダーも、セラミックシートの製造で通常用いられるものであればその種類は特に問わないが、有機質バインダーとしては、例えばエチレン系共重合体、スチレン系共重合体、アクリレート系またはメタクリレート系共重合体、酢酸ビニル系共重合体、マレイン酸系共重合体、ビニルブチラール系樹脂、ビニルアルコール系樹脂、ワックス類、エチルセルロース類などが例示される。
これらの中でもグリーンシートの成形性や打抜き加工性、強度、焼成時の熱分解性などの観点からは、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートのような炭素数10以下のアルキル基を有するアルキルアクリレート類;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレートのような炭素数20以下のアルキル基を有するアルキルメタクリレート類;ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレートのようなヒドロキシアルキル基を有するアクリレートまたはメタクリレート類;ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレートのようなアミノアルキルアクリレートまたはアミノアルキルメタクリレート類;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、モノイソプロピルマレートのようなカルボキシル基含有モノマーの少なくとも1種を重合または共重合させることによって得られる重合体が例示され、これらは単独で使用し得る他、必要により2種以上を適宜組み合わせて使用できる。
これらの中でも特に好ましいのは、数平均分子量が5,000〜200,000のもの、より好ましくは10,000〜100,000の範囲のアクリレート系またはメタクリレート系共重合体であり、中でも、モノマー成分としてイソブチルメタクリレートおよび/または2−エチルヘキシルメタクリレートを60質量%以上含む共重合体が好ましいものとして推奨される。
バインダーの配合量は、上記セラミック粒子に対して10〜25質量%が好ましく、より好ましくは15〜20質量%である。バインダーの使用量が不足すると、グリーンシートの強度や柔軟性が不十分となり、逆に多過ぎるとスラリーの粘度調節が困難になるばかりでなく、焼成時のバインダー成分の分解放出が多く且つ激しくなり、表面性状の均質なグリーンシートが得られ難くなる。
原料スラリーの溶媒としては、例えば水;メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール(n−ブタノール)、1−ヘキサノール(n−ヘキサノール)、1−ヘプタノール(n−ヘプタノール)などのアルコール類;アセトン、2−ブタノン等のケトン類;ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル類などが適宜選択して使用できる。これらの溶媒は、単独で使用し得る他、必要に応じて2種以上を適宜組み合わせて使用できる。本発明において、これら溶媒の中でも好適にはエタノール、1−ブタノール、2−プロパノール、トルエン、酢酸エチルなどを用いる。
また、本発明で用いる溶媒は、輸送配管を実質的に溶解しないことも必要である。ここで「実質的」とは、配管の内部表面を処理する際に配管表面を溶解しなければ十分である意であり、例えば一昼夜といった長時間接触させた場合に配管を溶解するものであってもよいこととする。
溶媒の配合量は、主として原料スラリーの所望の粘度に応じて調整すればよい。
その他、分散作用や消泡作用を示す界面活性剤や可塑剤など、セラミックシートの原料として用いられる成分を配合してもよい。但し、本発明者らによる知見によれば、特に厚膜のグリーンシートを製造する場合、消泡剤としての界面活性剤の配合量を多くしても、気泡の発生を十分に抑制することはできなかった。なお、本発明で言う配合とは、分散、担持、付着、吸着、含浸、被覆、混合などの総称である。
また、分散剤や可塑剤を配合してもよい。分散剤としては、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸アンモニウムなどの高分子電解質;クエン酸、酒石酸などの有機酸;イソブチレンまたはスチレンと無水マレイン酸との共重合体やそのアンモニウム塩、アミン塩、ブタジエンと無水マレイン酸との共重合体などが使用できる。また可塑剤は、グリーンシートの柔軟性を高める作用があり、その具体例としてはフタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチルなどのフタル酸エステル類;プロピレングリコールなどのグリコール類やグリコールエステル類などが例示される。
原料スラリーは、上記成分を一般的な方法で均一混合すればよい。例えば、セラミック粒子、バインダーおよび溶媒等の構成成分を、ボールミル等を用いて同時に混合すればよい。
本発明の原料スラリーの粘度としては、常温、より具体的には室温において5,000〜25,000cPが好適である。本発明はグリーンシートの気泡を抑制することを目的としており、原料スラリー粘度が高いと混入した空気が抜けずに気泡の原因となるおそれがある。かかる観点から、本発明では好適な原料スラリー粘度を25,000cP以下とする。その一方で、5,000cP未満であると、乾燥効率が悪くなり生産性が低下する場合がある。より好ましくは、原料スラリー粘度は10,000〜22,000cP程度とする。
本発明のセラミックグリーンシートを製造する方法としては、ドクターブレード法、押出し成形法、スピンコーティング法、スプレー法、スクリーンプリンティング法などを利用することができる。本発明は、これら何れの方法にも適用できるが、厚膜シートを製造する場合にはドクターブレード法を用いることが好ましい。ドクターブレード法は、特に厚膜シートを製造するのに適するからである。
ドクターブレード法は、図1に示す通り、一般的にはスラリータンク中の原料スラリーを入れ、ここへ圧力をかけ、配管を介して原料スラリーを塗工ダムへ輸送し、ドクターブレードにより厚さの均一な膜にする。その後、ベルト式乾燥機、熱風乾燥機、マイクロウェーブ乾燥機等により30〜100℃程度でこの膜を乾燥し、セラミックシートとする。
押出し成形法は、溶融したバインダーとセラミック粒子等を含む混合物に圧力をかけて直線の形をした金型に通すことにより、シートを製造するものである。以降の工程は、ドクターブレード法と同様である。
スピンコーティング法は、回転しているフィルムまたは基板上に原料スラリーを置き、遠心力を利用してスラリーをフィルムまたは基板上に広げるものである。以降の工程は、ドクターブレード法と同様である。
スプレー法は、スプレーガンを用いて原料スラリーを基板上に吹付ける方法である。以降の工程は、ドクターブレード法と同様である。
スクリーンプリンティングは、スクリーンを通して原料スラリーをフィルムまたは基板上に塗布する方法である。以降の工程は、ドクターブレード法と同様である。
以下、ドクターブレート法を用いたセラミックグリーンシート製造方法について説明する。しかし、本発明は原料スラリーの輸送時における気泡の混入を抑制し、ひいてはグリーンシートの表面欠陥や強度の低下を改善するものであるので、当業者であれば下記の説明を参照してドクターブレード法以外の成形方法に適用することは容易である。
従来のドクターブレード法においては、スラリータンクから配管を介して原料スラリーを塗工ダムへ輸送する際、配管内でスラリーが空気を巻き込むことが起こっていた。その結果、特に厚膜グリーンシートの製造の際には、ドクターブレードにより厚さを均一にした後も微細な気泡が膜中に残留する。この気泡は乾燥段階で熱により膨張し、目視で確認できる大きさまで成長する。また、この気泡は膜を押し広げて膜表面に凹凸を形成し、或いは破裂してピンホールを形成することもある。これらの欠陥は、従来方法においては条件検討をしても3〜15個/m2程度発生し、歩留を低下させる原因となっていた。
一方、本発明では、原料スラリーを配管により輸送する前に、当該配管の内部表面を溶媒により処理する。それによって、上記欠陥を2個/m2程度以下にまで抑制することに成功した。つまり、グリーンシートに生じる上記欠陥の最大の原因は、原料スラリーをスラリータンクから塗工ダムへ最初に輸送する際に混入する空気であった。そこで本発明者らは、事前に輸送配管の内部表面を処理することにより原料スラリーと輸送配管との相性(濡れ性)を改善し、これにより輸送時における原料スラリーへの空気の混入を抑制し、結果として上記欠陥の発生を顕著に低減することに成功した。
原料スラリーの輸送に使用する配管の材質は、原料スラリーに用いた溶媒に実質的に溶解しないものである必要があるが、例えばウレタン樹脂;ナイロン樹脂;ポリ塩化ビニル;ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド12などのポリアミド;ポリウレタンなどを用いることができる。これらの中でも、溶媒との相性が良くグリーンシートの欠陥を最も抑制できることから、ポリアミド12製の配管を好適に使用できる。ここで「実質的」とは、原料スラリーが通過する際に配管の内部表面が溶解しなければ十分である意であり、例えば一昼夜といった長時間接触させた場合に溶解するものであってもよいこととする。
配管の内部表面処理に使用する溶媒は、配管を実質的に溶解せず、且つ配管内部表面と原料スラリーの両方に相性が良いものとする必要がある。ここで「実質的」とは、配管の内部表面を処理する際に配管表面を溶解しなければ十分である意であり、例えば一昼夜といった長時間接触させた場合に配管を溶解するものであってもよいこととする。
かかる溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール、1−ヘキサノール、1−ヘプタノールなどのアルコール類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類;アセトン、2−ブタノン等のケトン類;ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル類などから適切なものを選択して使用することができる。これらの溶媒は、単独で使用し得る他、必要に応じて2種以上を適宜組み合わせて使用できる。また、原料スラリーの溶媒と同一のものを用いてもよいし、別のものを用いてもよい。本発明において、これら溶媒の中でも、原料スラリーとの相性もよく配管内部表面を処理した後も直ぐに揮発することがないものが好ましい。例えば、ナイロン製の配管に対しては1−ブタノール、1−ヘキサノール、1−ヘプタノールが好適であり、ポリウレタン製の配管に対しては1−ブタノール、1−ヘキサノールが好適である。
溶媒による配管内部表面の処理は、スラリータンクに溶媒を入れて配管内を移動させてもよいが、原料スラリーの輸送直前に配管のみ取り出して内部に溶媒を適量入れ、数回往復させた後に溶媒を排出するという簡便な作業でもよい。
以上で説明した方法、より具体的には輸送配管の事前処理方法は、ドクターブレード法以外のセラミックグリーンシート製造方法においても同様に用いることができる。
本発明では、溶媒で輸送配管の内部表面を処理した後に、原料スラリーをスラリータンクから塗工ダムへ配管を介して輸送する。
原料スラリーを塗工ダムへ輸送する場合には、輸送配管にバルブを設けて輸送量を調節することが簡便である。また、2本以上の配管を継ぎ手で連結することも行われることがある。しかし、かかるバルブや継ぎ手があると、その部分で原料スラリー中に気泡が巻き込まれる場合があることが分かった。そこで本発明では、原料スラリーを塗工ダムへ輸送する配管としては、開閉バルブを有さない1本の配管を好適に用いることとした。
塗工ダムへ輸送した原料スラリーは、次にドクターブレード法等により原料スラリーの厚さを均一にする。この際の厚さは、例えば最終的に厚膜のグリーンシートおよびセラミックシートを製造することが目的とする場合には、乾燥による減厚を考慮して0.5〜1mm程度とする。
均一な厚さに引き伸ばされた原料スラリーは、通常、30〜100℃程度でベルト式乾燥機、熱風乾燥機、マイクロウェーブ乾燥機などで乾燥してセラミックグリーンシートとする。乾燥を常温で時間をかけて行なえば、気泡の発生を抑制できる。しかし、グリーンシートを連続的に製造する場合や大量生産する場合には、効率的に乾燥するために加熱する必要がある。本発明では、加熱乾燥する場合であっても、原料スラリーの輸送時における空気の混入が抑えられているので、気泡の発生を顕著に低減できる。但し、加熱乾燥時におけるグリーンシートの反りやうねりを抑制するために、例えば室温〜50℃で1010分間→50〜65℃で200分間→65〜80℃で200分間→80〜100℃で200分間と段階的に加熱温度を上昇することが好ましい。
本発明方法は、厚膜のグリーンシートを製造する場合であっても気泡の発生を顕著に抑制できることから、厚膜グリーンシートの製造において特に効果が高いといえる。例えば本発明は、350μm以上、特に500〜1000μmのグリーンシートの製造に好適に適用できる。
得られたグリーンシートは、所望の形状に切断すればよい。従来、この際に比較的小規模な製造においては気泡が生じた部分を切除すればよかったが、連続的に切断する場合や大量生産する場合には、気泡の存在を確認しつつ切断することが困難であり、気泡の存在がそのまま歩留の低下につながってしまう。一方、本発明方法によれば、気泡の発生を顕著に抑制できることから、連続的な製造等においても歩留を向上することができる。
本発明に係るグリーンシートの形状としては、円形、楕円形、角形、アールを有する角形など何れでもよく、これらの基板内に同様の円形、楕円形、角形、アールを有する角形などの穴を1つもしくは2以上有するものであってもよい。更に基板の面積は特に制限されないが、実用性を考慮して一般的なのは50cm2以上、より好ましくは100cm2以上である。なおこの面積とは、ドーナツ形状などの如く基板シート内に穴がある場合は、穴の面積を含んだ総面積を意味する。
得られたグリーンシートは更に加熱することによりバインダー等を除去し、セラミックシートとする。一般的には、棚板上の多孔質セッターに載置し、あるいは多孔質セッターで挟持した状態で、温度を200〜500℃とし、15〜30時間程度かけて所定の温度まで徐々に加熱し、また、所定温度で1〜5時間程度維持する。そしてさらに、空気雰囲気下に1100〜1500℃、好ましくは1200〜1450℃程度の温度、最も一般的には1250〜1400℃程度で1〜5時間程度加熱することにより焼結する。
本発明のセラミックシートは気泡が顕著に抑制されており、従来の厚膜セラミックシートの様に局所的な低強度部分がないことから、特に、固体解質膜や電極が積層されたセルの状態で更に多数枚積層されることにより大きな荷重がかかる上に、発電時には高温下で酸化性雰囲気と還元性雰囲気に交互に曝される固体酸化物形燃料電池において、耐久性の高い比較的厚膜の固体電解質膜に適している。その他、グリーンシートの脱脂工程や焼成工程で用いられるセッターは、脱脂等されるシートと同様の材質のものが好ましいことから、本発明のセラミックシートは、本発明のグリーンシートを加熱する場合のセッターとしても利用できる。
そして本発明のセラミックシートは、固体電解質膜や電極を積層して固体酸化物形燃料電池セルとし、固体酸化物形燃料電池の構成部材として使用することができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例により制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
実施例1
1−ブタノール、およびトルエンとイソプロピルアルコールとの混合溶媒を用いてセラミックグリーンシートの製造を行なった。即ち、セラミック粒子(第一希元素製、10モル%Sc−1モル%Ce−安定化ジルコニア)100質量部に対し、メタクリレート系共重合体からなるバインダー(平均分子量:30,000、ガラス転位温度:−8℃、固形分濃度:50質量%)12質量部、可塑剤としてジブチルフタレート2質量部、分散媒としてトルエン/イソプロピルアルコール(質量比:60/40)の混合溶媒30質量部を、直径10mmのジルコニアボールが装入されたナイロンポットに入れ、約60rpmで40時間混練してスラリーを調製した。当該スラリーは更に減圧下において濃縮し、B型回転式粘度計で25℃において測定される粘度を11,000cPとした。このとき、スラリー中の可溶成分をキシレンで抽出した後に残留する固形分の質量を測定することにより得られる固形分濃度は、約50%であった。
1−ブタノール、およびトルエンとイソプロピルアルコールとの混合溶媒を用いてセラミックグリーンシートの製造を行なった。即ち、セラミック粒子(第一希元素製、10モル%Sc−1モル%Ce−安定化ジルコニア)100質量部に対し、メタクリレート系共重合体からなるバインダー(平均分子量:30,000、ガラス転位温度:−8℃、固形分濃度:50質量%)12質量部、可塑剤としてジブチルフタレート2質量部、分散媒としてトルエン/イソプロピルアルコール(質量比:60/40)の混合溶媒30質量部を、直径10mmのジルコニアボールが装入されたナイロンポットに入れ、約60rpmで40時間混練してスラリーを調製した。当該スラリーは更に減圧下において濃縮し、B型回転式粘度計で25℃において測定される粘度を11,000cPとした。このとき、スラリー中の可溶成分をキシレンで抽出した後に残留する固形分の質量を測定することにより得られる固形分濃度は、約50%であった。
図1に示すドクターブレード装置において、原料スラリー輸送用配管としては、ポリアミド12製配管(潤工社製、内径0.9cm、長さ2m)を用いた。この配管は、事前に適量の1−ブタノールを入れて数回往復させた後に排出し、配管内部表面が乾かない内に直ぐ配管を繋ぎ、上記濃縮操作から1時間以上静置したスラリーの入ったスラリータンクから、圧力ポンプによりタンクを加圧することにより原料スラリーを抜き出して、ドクターブレード装置の塗工ダムへ輸送した。この原料スラリーを、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に幅46cm、厚さ400μm、長さ8mに引き延ばした。次いで、40℃で100分間、60℃で200分間、70℃で200分間、80℃で200分間、段階的に連続乾燥を行い、ジルコニアグリーンシートとした。発生した気泡の数を目視により計測した。結果を表1に示す。
実施例2
上記実施例1において、濃縮直後におけるスラリー粘度を21,500cPにしたこと以外は同様にして、得られたジルコニアグリーンシートに生じた気泡の数を計測した。結果を表1に示す。
上記実施例1において、濃縮直後におけるスラリー粘度を21,500cPにしたこと以外は同様にして、得られたジルコニアグリーンシートに生じた気泡の数を計測した。結果を表1に示す。
実施例3
上記実施例1において、濃縮直後におけるスラリー粘度を21,500cPにしたことと、スラリータンクとスラリーダム間の輸送配管にステンレス製開閉バルブを介在させた以外は同様にして、得られたジルコニアグリーンシートに生じた気泡の数を計測した。結果を表1に示す。
上記実施例1において、濃縮直後におけるスラリー粘度を21,500cPにしたことと、スラリータンクとスラリーダム間の輸送配管にステンレス製開閉バルブを介在させた以外は同様にして、得られたジルコニアグリーンシートに生じた気泡の数を計測した。結果を表1に示す。
実施例4
上記実施例1において、配管の材質をウレタンとした以外は同様にして、得られたジルコニアグリーンシートに生じた気泡の数を計測した。結果を表1に示す。
上記実施例1において、配管の材質をウレタンとした以外は同様にして、得られたジルコニアグリーンシートに生じた気泡の数を計測した。結果を表1に示す。
比較例1
上記実施例1において、1−ブタノールによる配管内部表面の事前処理を行なった以外は同様にして、得られたジルコニアグリーンシートに生じた気泡の数を計測した。結果を表1に示す。
上記実施例1において、1−ブタノールによる配管内部表面の事前処理を行なった以外は同様にして、得られたジルコニアグリーンシートに生じた気泡の数を計測した。結果を表1に示す。
以上の結果の通り、原料スラリーを輸送する前に輸送配管の内部表面を適切な溶媒で処理しない場合には、セラミックグリーンシートに、歩留が問題となる程度に気泡が発生してしまう。それに対して、使用する輸送配管との相性が良い溶媒により輸送配管の内部表面を処理すれば、セラミックグリーンシートの気泡の発生を顕著に抑制できることが実証された。さらに、気泡が抑制されたセラミックグリーンシートでは、当然、目視により確認できない内部の気泡や微細な気泡も抑制されていると考えられることから、これを焼結すれば、高強度のセラミックシートが得られる。
Claims (5)
- セラミックグリーンシートの原料スラリーを配管により輸送する前に、溶媒により当該配管の内部表面を処理することを特徴とするセラミックグリーンシートの製造方法。
- 原料を塗工ダムへ輸送する配管として、開閉バルブを有さない1本の配管を用いる請求項1に記載の製造方法。
- 膜厚350μm以上のセラミックグリーンシートを製造するためのものである請求項1または2に記載の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の方法で製造されたセラミックグリーンシートを焼結したセラミックシート。
- 請求項4に記載のセラミックシートを固体電解質膜とする固体酸化物形燃料電池。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006186937A JP2008012816A (ja) | 2006-07-06 | 2006-07-06 | セラミックグリーンシートの製造方法 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN103770193A (zh) * | 2012-10-26 | 2014-05-07 | 柯炯标 | 一种陶瓷器具的内注浆装置及方法 |
-
2006
- 2006-07-06 JP JP2006186937A patent/JP2008012816A/ja not_active Withdrawn
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