JP2008012595A - ボーリングバイト及び同バイト用のホルダ - Google Patents

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泰彦 沖田
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朋弘 深谷
Koichi Sakikawa
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Abstract

【課題】スリーブによって形成されたホルダの刃具固定の安定性を高めて、そのホルダを用いたボーリングバイトの加工精度の向上や切れ刃の欠損防止を図ることを課題としている。
【解決手段】棒状刃具10をスリーブ2の中心孔6に挿入し、クランプ手段3でクランプして保持するボーリングバイト用ホルダ1の前記スリーブ2に、そのスリーブ2の中心孔6から外周面に至る領域を、スリーブの先端から長手途中まで縦に割るスリット7を設け、さらに、スリーブ2のスリット形成部を締付けて前記中心孔の内径を変化させる締付け具4を備えさせた。
【選択図】図4

Description

この発明は、小型部品の内径加工に利用するボーリングバイトとスリーブで形成された同バイト用のホルダに関する。
極小な内径を加工するのに適した小径ボーリングバイトが下記特許文献1に開示されている。
特許文献1が開示しているボーリングバイトは、内径加工用の棒状チップとスリーブを組み合わせたものであって、スリーブの中心孔に棒状チップのシャンク部を挿入し、そのシャンク部をホルダにねじ込んだビスで締付けて棒状チップをスリーブで保持する構造になっている。なお、スリーブの中心孔は貫通孔として形成され、また、棒状チップはスリーブの中心孔に挿入する部分の外周に面取り部を設けたチップとされ、前記中心孔の内面とチップ外周の面取り部との間に生じる空間がクーラント通路として使用されるものになっている。
同様のボーリングバイトは、下記特許文献2にも従来技術として記載されている。
特許第2784530号公報 特許第3330085号公報
特許文献1が開示しているボーリングバイトは、棒状チップのクランプを、スリーブにねじ込んだ2個のビスでチップを一方向に締付ける方法で行っている。ところが、この方法では、ビスによって締付けられたチップが孔の内面に線接触した状態となってそのチップの固定が不安定になる。棒状チップとスリーブの中心孔の内面との間にはチップを抜き差しするための隙間がある。この隙間のうち、締付け方向の隙間はビスによる締付けによって吸収されるが、締付け方向と直角方向の隙間は固定後も残されたままとなり、その隙間がチップの振れを許容する。そのために、チップの保持が不十分になって締付け方向と直角方向の力に対する剛性が低下し、それが原因で、加工中にバイトの所謂びびりが発生して切れ刃の欠損に至る。
最近は、高硬度材の加工のために、切れ刃の材質としてダイヤモンド焼結体やCBN(立方晶窒化硼素)焼結体を採用したバイトが採用される傾向が高まってきている。この種のバイトによる高硬度材の加工では切削抵抗が高くなり、加工精度の悪化や切れ刃の欠損につながるびびりが特に発生しやすい。
特許文献2が従来技術として開示しているボーリングバイトも、チップの固定の方法については言及していないが、その方法は特許文献1のボーリングバイトと同じと考えられ、従って、特許文献1のボーリングバイトと同じ不具合を有する。
この発明は、特許文献1、2が開示しているような、スリーブによって形成されたホルダの刃具固定の安定性を高めて、そのホルダを用いたボーリングバイトの加工精度の向上や切れ刃の欠損防止を図ることを課題としている。
上記の課題を解決するため、この発明においては、棒状刃具をスリーブの中心孔に挿入し、クランプ手段でクランプして保持するボーリングバイト用ホルダの前記スリーブに、そのスリーブの前記中心孔から外周面に至る領域を、スリーブの先端から長手途中まで縦に割るスリットを設け、さらに、スリーブのスリット形成部を締付けて前記中心孔の内径を変化させる締付け具を備えさせた。
このホルダの、好ましい態様を以下に列挙する。
(1)前記スリットを、前記スリーブの側方の一箇所に、スリーブを径方向に横切って設けたもの。
(2)スリーブの中心孔の中心から前記締付け具の設置点中心までの寸法をl1、前記中心孔の中心から前記スリットの径方向外端までの寸法をl2として、20%≦l1/l2≦80%の条件を満足するように前記l1とl2の寸法を設定したもの。
(3)前記クランプ手段として、前記棒状刃具のシャンク部に接触してシャンク部を軸直角向きに締付けるセットスクリュを少なくとも1個備えさせたもの。
(4)前記中心孔の、前記棒状刃具を把持する把持面の面粗度(十点平均粗さによる)を、0.5Rz以上、12.5Rz以下にしたもの。
(5)前記スリーブの先端側外径と後部側外径を異ならせたもの。具体的には、スリーブの先端側外径を後部側外径よりも大きくするか、又は逆に小さくしたもの。
なお、この発明においては、先端部がダイヤモンド焼結体又はCBN焼結体で形成され、そのダイヤモンド焼結体又はCBN焼結体に切れ刃が形成された棒状刃具を、上述したこの発明のホルダで保持して構成されるボーリングバイトも併せて提供する。
この発明のホルダは、スリーブのスリット形成部を締付けるとスリーブの中心孔の内径が縮小する。そのために、中心孔の内面が棒状刃具のシャンク部外周に広い領域で密着し、棒状刃具との間にそのバイトのがたつきを許容する隙間ができない。このために、加工中の棒状刃具のびびりが減少し、びびりに起因した加工精度の低下や切れ刃の欠損が抑制される。
なお、前記スリットを、スリーブの側方の1箇所に設けたものは、中心孔周りの1箇所でのみスリーブが周方向に切り離されることになってスリット設置によるスリーブの剛性低下が小さく抑えられる。加えて、スリーブのスリット形成部を締付ける締付け具も1組で済む。また、前記スリーブの端面視においてスリーブを径方向に横切って設けたスリットは加工がし易い。
また、スリーブのスリット形成部を締付ける締付け具を20%≦l1/l2≦80%の条件を満足する位置に設置したものは、スリット形成部の締付けが適切な位置でなされ、
その条件を満たさないものよりも棒状刃具を把持する力(保持力)と保持の安定性が高まり、容易に棒状刃具を固定することができる。
さらに、スリーブのスリット形成部を締付ける締付け具で締付けるだけでは棒状刃具の回転防止や中心孔内軸方向での軸方向シフトの防止が不十分になるので、この発明のホルダには、前記締付け具とは別に棒状刃具を固定するクランプ手段を備えさせる。そのクランプ手段として、前記棒状刃具のシャンク部に接触してシャンク部を軸直角向きに締付けるセットスクリュを少なくとも1個備えさせたものは、棒状刃具が直接締付けられてその刃具の固定が確実になされる。
このほか、スリーブの中心孔の内面(把持面)の面粗度を、0.5Rz以上、12.5Rz以下にしたものは、棒状刃具との接触面積が増加し、それにより摩擦による刃具保持力が高まって刃具の固定がより安定する。
また、スリーブの先端側外径を後部側外径よりも大きくしたものは、ホルダを加工機の刃物台で支持するときにスリーブ先端の大径部を利用して刃物台に対するスリーブの挿入長さを一定させることができる。一方、スリーブの先端側外径を後部側外径よりも小さくしたものは、ワークサイズによる加工規制が緩和され、スリーブの先端径によってはスリーブの先端側をワークの内側に入り込ませて加工を行うことが許容されるようになる。そのような加工が許容されると、スリーブ先端からの刃具の突き出し量を小さくして加工中のバイトのびびりをより効果的に抑制することが可能になる。
この発明のボーリングバイトは、上述したホルダの作用効果によって、加工の安定性と加工精度が向上し、刃具の寿命も向上する。
以下、添付図面の図1〜図7に基づいてこの発明のホルダとそれを用いたボーリングバイトの実施の形態を説明する。図1はホルダの一例を示す斜視図、図2はホルダの平面図、図3はホルダの正面図である。例示のホルダ1は、スリーブ2とクランプ手段3と締付け具4とで構成されている。
スリーブ2は、図1及び図2に示すように、先端側に大径部2aを設け、加工機の刃物台で保持する後部側を小径部2bとして形成した段付きスリーブになっている。このスリーブ2の外周には、加工機の刃物台で挟みつける2面幅の面取り部5が設けられている。また、スリーブ2の中心には軸方向に貫通した中心孔6が設けられ、さらに、スリーブ2の先端側の一側部の中心孔6から外周面に至る領域は、図3の端面視において、その領域を径方向に横切るように設けられたスリット7によって縦に割られている。スリット7は、スリーブ2の先端から長手途中までの範囲に設けられており、スリーブ2の中心孔6の周りを1箇所で径方向に切り離すものになっている。
中心孔6は、図4〜図6に示す棒状刃具10のシャンク部11の外径とほぼ同径の孔(シャンク部11をスムーズに抜き差しするためにシャンク部外径よりも僅かに大きい孔)とされ、また、その孔の内面(棒状刃具を把持する把持面)は、十点平均粗さによる面粗度が0.5Rz以上、12.5Rz以下、より好ましくは、0.5Rz以上、3.2Rz以下となる面に形成されている。
クランプ手段3は、スリーブ2のホルダ使用時に上になる位置に設けられている。例示のクランプ手段3はセットスクリュであり、スリーブ2を径方向に貫通したねじ孔8(図6参照)にねじ込まれている。このクランプ手段3(セットスクリュ)の先端をスリーブの中心孔6に入り込ませ、その先端で中心孔6に挿入される棒状刃具のシャンク部を直接締付けてそのシャンク部を中心孔6の内面に押付ける。例示のホルダは、クランプ手段3による刃具の締付け方向をバイト使用時に主分力が働く方向と一致させており、主分力による刃具の動き止めの効果が高い。このクランプ手段3は、この発明のホルダの場合、中心孔6による刃具の把持もなされるので、1個あれば足りる。ただし、その数を複数にすることが制限されるものではない。
締付け具4は、スリーブ2のスリット形成部を締付けるもので、ここでは皿ねじを用いている。この締付け具4を図5のねじ孔9にねじ込んで締付けると、スリーブ2のスリット7を間にして対向した部分が互いに引き寄せられ、中心孔6の内径が縮小する。
締付け具4は、スリット形成部の締付けが適切な位置で行われるように、中心孔6の中心からその締付け具の設置点中心までの寸法をl1(図2参照)、中心孔6の中心からスリット7の径方向外端までの寸法をl2として、20%≦l1/l2≦80%の条件を満足する位置に設置しており、スリット形成部の締付けが適切な位置でなされ、棒状刃具の保持力と保持の安定性に優れる。
上述したホルダ1で棒状刃具(棒状チップ)10を保持して構成されるボーリングバイト20を、図4〜図6に示す。棒状刃具10はシャンク部11の先端にヘッド部12を有する。そのヘッド部12の一画は硬質焼結体(ダイヤモンド焼結体又はCBN焼結体)13によって形成されており、その硬質焼結体13に切れ刃14やすくい面15が設けられている。また、シャンク部の外周にシャンク部の全長にわたって面取り部16を設けたものになっている。面取り部16はこの部分をクランプ手段3で締付けることによって棒状刃具10の回転を確実に阻止するために設けられている。
この棒状刃具10のシャンク部11をホルダ1の中心孔6に挿入する。この状態で締付け具4を締付けると、中心孔6が縮径して中心孔6の内面がシャンク部11の外周に密着する。また、クランプ手段3を締付けることによって棒状刃具10の回転防止と固定もなされ、棒状刃具10の振れを許容するシャンク部外周の隙間が無くなって加工中のびびりが効果的に抑制される。
例示のボーリングバイト20は、スリーブ2の大径部2aと小径部2b間の段差部2cを位置決め用のストッパとして働かせて、ボーリングバイト20を加工機の刃物台にセットするときに刃物台に対するスリーブ2の挿入長さを一定させることができ、位置決めがしやすい。
ホルダ1は、図7に示すように、スリーブ2の先端側の外径を後部側の外径よりも小さくしたものも考えられる。この構造のホルダは、スリーブ2の先端側をワークの穴径よりも小さくすることでその先端側をワークの穴に入り込ませて加工を行うことができる。そのために、スリーブ2の先端からの刃具の突き出し量を小さくして加工中のバイトのびびりをより効果的に抑制することが可能になる。
なお、図1のホルダ1は、図2の各部の寸法が以下のように設定されたスリーブ2を採用したときのクランプ手段3や締付け具4の適切な設置点、スリット7の適切な長さ、スリット7の適切な幅などを調べた結果、
(1)クランプ手段3の中心をスリーブ2の先端から2mm以上、40mm以内に少なくとも1つ配置したもの。
(2)締付け具4の中心をスリーブ2の先端から5mm以上、50mm以内に少なくとも1つ配置したもの。
(3)スリット7のスリーブ軸方向長さを5mm以上、50mm以下としたもの。
(4)スリット7の幅W(図3参照)を0.2mm以上、3mm以下としたもの。
が、刃具の保持が安定して特に好ましかった。
スリーブ2の仕様 材質:調質鋼材(SCM440)、全長L4=100mm、大径部2aの長さL3=20mm、大径部2aの外径φD2=18mm、小径部2bの外径φD1=16mm、大径部2aの2面幅寸法W1=15mm、中心孔6の内径=φ3.0mm
なお、図1〜図6のホルダは、上記の仕様でスリーブ2の先端からクランプ手段3の中心までの距離L2を16mm、スリーブ2の先端から締付け具4の中心までの距離L1を4mmに設定した。
以下に、この発明のホルダについて行った性能評価試験について述べる。
−評価試験1−
0030段落の仕様のスリーブを用いた発明品のホルダと、スリットの無いスリーブに棒状刃具(棒状チップ)を固定し、その固定(クランプ)を、スリーブにねじ込んだビスで刃具を一方向に締付ける方法で行った従来品のホルダをそれぞれ棒状刃具と組み合わせたボーリングバイトを使用して下記の条件で切削試験を行った。そして、その試験で送り量を変化させ、加工中のボーリングバイトのびびりの発生の有無を確認した。その結果を、表1に示す。
切削条件 被削材:SCM415 浸炭材HRC60
加工径:4.1mm
切削速度:50m/min
切込み:0.02mm
Figure 2008012595
この試験では、発明品のスリーブホルダを使用したバイトは、棒状刃具の保持力と保持安定性が高く、送り量を増加させてもびびりを生じていないが、従来品のスリーブホルダを使用したバイトは、送りを大きくすると、びびりが発生している。
−評価試験2−
評価試験1と同じ発明品のホルダと従来品のホルダを採用したボーリングバイトを使用し、棒状刃具の刃先のホルダ先端からの突き出し量L(棒状刃具の直径Dとの比)を変化させて下記の条件で切削を行い、このときのバイトのびびりの有無を調べた。その結果を表2に示す。
切削条件 被削材:SCM415 浸炭材HRC60
加工径:4.1mm
切削速度:70m/min
送り:0.002mm/rev
切込み:0.02mm
Figure 2008012595
この試験では、発明品のスリーブホルダを使用したバイトは、L/Dの値を3.5まで大きくしてもびびりを生じていないが、従来品のスリーブホルダを使用したバイトは、L/Dの比を2以上に大きくすると、びびりが発生している。なお、L/Dの値を大きく設定できるようにしたものは、同じバイトを使用して径比深さのより深い穴を加工することができ、バイトの利用範囲が拡大する。
この評価試験1、2からわかるように、スリーブにスリットをつけたこの発明のホルダを使用すると、ホルダによる棒状刃具の保持力と保持の安定性が高まって加工中のバイトのびびりが抑制される。そのために、びびりに起因した切れ刃の欠損が減少し、加工精度も向上する。
この発明のホルダの一例を示す斜視図 図1のホルダの平面図 図1のホルダの正面図 図1のホルダを使用したボーリングバイトの斜視図 図4のV−V線に沿った位置の断面図 図4のVI−VI線に沿った位置の断面図 この発明のホルダの他の形態を示す斜視図
符号の説明
1 ホルダ
2 スリーブ
2a 大径部
2b 小径部
2c 段差部
3 クランプ手段
4 締付け具
5 面取り部
6 中心孔
7 スリット
8、9 ねじ孔
10 棒状刃具
11 シャンク部
12 ヘッド部
13 硬質焼結体
14 切れ刃
15 すくい面
16 面取り部
20 ボーリングバイト

Claims (7)

  1. スリーブ(2)の中心孔(6)に棒状刃具(10)のシャンク部(11)を挿入し、そのシャンク部をクランプ手段(3)でクランプして前記棒状刃具(10)を前記スリーブ(2)で保持するボーリングバイト用ホルダにおいて、
    前記スリーブ(2)に、そのスリーブの前記中心孔(6)から外周面(2c)に至る領域をスリーブの先端から長手途中まで縦に割るスリット(7)を設け、さらに、スリーブ(2)のスリット形成部を締付けて前記中心孔(6)の内径を変化させる締付け具(4)を備えさせたことを特徴とするボーリングバイト用ホルダ。
  2. 前記スリット(7)を、前記スリーブ(2)の側方の1箇所に、スリーブを径方向に横切って設けた請求項1に記載のボーリングバイト用ホルダ。
  3. 前記中心孔(6)の中心から前記締付け具(4)の設置点中心までの寸法をl1、前記中心孔(6)の中心から前記スリット(7)の径方向外端までの寸法をl2として、20%≦l1/l2≦80%の条件を満足するように前記l1とl2の寸法を設定した請求項1又は2に記載のボーリングバイト用ホルダ。
  4. 前記クランプ手段(3)として、前記棒状刃具のシャンク部に接触してシャンク部(11)を軸直角向きに締付けるセットスクリュを少なくとも1個備えさせた請求項1又は2に記載のボーリングバイト用ホルダ。
  5. 前記中心孔(6)の、前記棒状刃具(10)を把持する把持面の面粗度を、0.5Rz以上、12.5Rz以下にした請求項1〜4のいずれかに記載のボーリングバイト用ホルダ。
  6. 前記スリーブ(2)の先端側外径と後部側外径を異ならせた請求項1〜5のいずれかに記載のボーリングバイト用ホルダ。
  7. ヘッド部(12)の一画がダイヤモンドやCBNの硬質焼結体(13)によって形成され、その硬質焼結体(13)に切れ刃(14)が形成された棒状刃具(10)を、請求項1〜6のいずれかに記載のホルダ(1)で保持したボーリングバイト。
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