JP2008007813A - 磁場中成形方法、磁場中成形装置及び焼結磁石の製造方法 - Google Patents

磁場中成形方法、磁場中成形装置及び焼結磁石の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】キャビティ底部における自重圧力による配向障害を解消することができるとともに、焼結体毎の磁気特性のバラツキを低減し、かつより磁気特性を向上することができる磁場中成形方法を提供する。
【解決手段】キャビティC外を自由落下してきた磁性粉末Pを、キャビティC内で配向磁場Hを印加しながらキャビティCに充填させる工程と、配向磁場Hを印加しながら磁性粉末Pを加圧して成形する工程と、を備えることを特徴とする磁場中成形方法。磁性粉末Pは、キャビティCの上方であって、かつ配向磁場Hによる磁気的な影響を受ける領域外から自由落下をはじめ、さらに配向磁場Hによる磁気的な影響を受ける領域外を自由落下した後に、キャビティCに進入することが最も好ましい。
【選択図】図1

Description

本発明は、磁場を印加しながら加圧成形することにより成形体を作製する磁場中成形方法に関し、特に長尺の成形体を作製する際に成形体の長手方向における配向の差異を低減できるとともに、個体間の磁気特性のばらつきを低減できる磁場中成形方法に関するものである。
磁場中成形は、例えば異方性焼結磁石を製造する過程の一工程として行われる。異方性焼結磁石として代表的なR−Fe−B系焼結磁石(RはYを含む希土類元素)は、RFe14B化合物からなる主相結晶粒とRリッチな粒界相とを含む組織を有するが、その残留磁束密度(Br)を高めるためには、主相結晶粒の磁化容易軸方向への配向度を磁場中成形において高める必要がある。
従来、磁場中成形は一般に以下のようにして行われる。
図2(a)に示すように、ダイ40の上面に磁性粉末Pを配置する。磁性粉末Pは、図示を省略しているフィーダボックス(またはフィーダカップ)と称される容器内に収容されており、このフィーダボックスは、ダイ40上をスライド可能とされている。また、フィーダボックスは、ダイ40とのスライド面は開口されており、この開口部分が、ダイ40と下パンチ50とにより形成されるキャビティCに到達すると、図2(b)に示すように、内部に収容されている磁性粉末Pが、キャビティC内に落下する。図2(c)に示すように磁性粉末PのキャビティCへの充填が完了した後、図2(d)に示すように、配向磁場Hを印加する。配向磁場Hを印加したまま、上パンチ60を下降させて加圧する。このような従来のフィーダボックスを用いた充填法によれば、粉末をキャビティC内に確実に充填でき、しかも、充填粉末の体積を「摺り切り」によってほぼ一定に制御することが可能である。
しかしながら、特許文献1にも開示されるように、キャビティCの底部に近い位置ほど、粉末の自重によって強い圧力を受けて粉体の流動性が低下するため、磁場中で配向しにくい。その結果、充填された磁性粉末PのうちキャビティC底部に近い部位の配向度がその上の部位よりも低下し、最終的に得られるR−Fe−B系焼結磁石の磁気特性が部位によってばらつくという問題が発生する。この問題は、特に長尺のR−Fe−B系焼結磁石を製造する場合に顕著となる。長尺になるほどキャビティCの底部に近い位置で受ける自重圧力が大きいためである。また、R−Fe−B系焼結磁石の原料となる磁性粉末Pは、フェライト系焼結磁石の原料となる磁性粉末Pに比べて比重が大きいため、R−Fe−B系焼結磁石の原料粉末をキャビティC内に供給した場合、フェライト系焼結磁石の原料粉末に比べて、キャビティC底部に近い位置でより大きな自重圧力が発生する。
特許文献1は、このようなキャビティC底部における自重圧力による配向障害を解消する方法として、キャビティCの外部に磁性粉末Pを配置する工程と、キャビティCを含む空間に磁場を形成する工程と、磁場が磁性粉末Pに及ぼす力により、磁性粉末Pを磁場の向きに配向させながら、磁性粉末PをキャビティCの内部へ移動させる工程とを包含し、磁性粉末PのキャビティC内部への移動を、磁場の印加開始後に行うことを提案している。特許文献1の提案は、磁場を印加しながら磁性粉末Pを充填しようとするもので、充填完了時には磁性粉末Pの配向を終了させることにより、自重圧力による配向障害を解消しようというものである。具体的には以下の通りである。
特許文献1においては、配向磁場Hを印加する前に、図3(a)に示すように、ダイ40と下パンチ50とによって形成されたキャビティCの上方へ磁性粉末Pを配置する。
その後、図3(b)に示すように、配向磁場Hを印加し、磁性粉末Pに磁力を及ぼす。配向磁場Hは、キャビティCの鉛直方向の中心部付近で最大磁場強度を示すような磁場分布を示すため、磁性粉末PはキャビティC中心へ引き寄せられる向きの磁力を受ける。
次に、図3(c)に示すように、磁性粉末PをキャビティC中心へ引き寄せる力を利用して磁性粉末PをキャビティCの内部へ落下、充填させる。こうして、一定体積の磁性粉末PがキャビティC内に充填されることになる。磁性粉末Pは、キャビティC内に落下する間に配向磁場Hによってほぼ一方向に配向するため、キャビティCの深さ方向における充填位置に関係なく高い配向度が達成され、配向の均一性が向上する。
磁性粉末P充填の後、図3(d)に示すように、配向磁場Hを印加したままで上パンチ60を下降させる。キャビティC内に充填された磁性粉末Pは、上パンチ60と下パンチ50との間で圧縮され、配向磁場H中で成形される。落下、充填中に配向した磁性粉末Pの向きは、圧縮成形時に受ける摩擦力などによって変化し得る。これを避けるため、圧縮成形に際しても配向磁場Hの印加を継続させる。
特開2001−226701号公報
特許文献1に記載の提案により、キャビティC底部における自重圧力による配向障害を解消することができるが、本発明者等の検討によれば、成形体、換言すれば焼結体毎の磁気特性のばらつきが大きくなることが判明した。しかも、磁気特性をより向上したいという近時の要望を満足するものではない。
本発明は、以上の技術的課題に基づいてなされたもので、キャビティC底部における自重圧力による配向障害を解消することができるとともに、焼結体毎の磁気特性のばらつきを低減し、かつより磁気特性を向上することができる磁場中成形方法を提供することを目的とする。
本発明は、また、そのような磁場中成形方法を実施することのできる磁場中成形装置を提供することを目的とする。
さらにまた本発明は、そのような磁場中成形方法を利用した焼結磁石の製造方法を提供することを目的とする。
特許文献1に記載の磁場中成形方法は、磁性粉末が磁場によって配向しながら充填されることから、特に成形体下部に対応する位置の磁性粉末が自重による制約を受けないために配向が容易である。このため、磁性粉末の自重を利用してキャビティ内に自由落下させ、その後に配向磁場を印加する従来の方法(図2)より高い残留磁束密度を示す。しかしながら、本発明者等の検討によれば、上述したように、焼結体毎の残留磁束密度のばらつきが大きいという問題が見出された。その原因は、以下のように推測される。
キャビティの上方で磁性粉末に配向磁場が印加される際、磁性粉末の自重及び配向磁場が磁性粉末をキャビティ中心に引き寄せる力によって磁性粉末が一旦密に凝集する。このためキャビティ内に引き寄せられる前の磁性粉末に、密度分布が生じる。すなわち、引き寄せられる側は密に、それと離れた側の磁性粉末は粗というように、密度に分布が生じる。この状態で磁性粉末はキャビティ内に引き寄せられ、その過程で凝集した磁性粉末はある程度ほぐれて配向するが、この密度分布を原因とした配向乱れが生じる。ここで、配向磁場の強度が同じ場合、磁性粉末が密であるほど配向しにくく、その結果として1つの焼結体内において残留磁束密度にばらつきが生じる。このように1つの焼結体内における磁気特性を制御することができないために、磁気特性は高いものの、焼結体の磁気特性は個々にばらつく。
そこで本発明者等は、磁性粉末を磁場によって配向しながら充填することによる配向の容易性を享受しつつ、磁性粉末がキャビティに進入する以前には当該粉末に磁場が作用しないようにすれば、焼結体毎の磁気特性のばらつきを低減できるのではないかとの予測の基に検討を行った。その結果、後述する実施例に示すように、焼結体毎の磁気特性のばらつきを低減できることは勿論、磁気特性自体を絶対的に向上できるとの知見を得ることができた。
本発明は以上の知見に基づくものであり、キャビティ外を自由落下してきた磁性粉末を、キャビティ内で配向磁場を印加しながらキャビティに充填させる工程と、配向磁場を印加しながら磁性粉末を加圧して成形する工程と、を備えることを特徴とする磁場中成形方法である。
本発明の磁場中成形方法において、磁性粉末は、キャビティの上方であって、かつ配向磁場による磁気的な影響を受ける領域外から自由落下を始めることが好ましい。さらに、磁性粉末は、配向磁場による磁気的な影響を受ける領域外を自由落下した後に、キャビティに進入することが好ましい。
本発明の磁場中成形方法において、キャビティに配向磁場を印加した後に、磁性粉末を自由落下させることが好ましい。
本発明の磁場中成形方法は、磁性粉末が顆粒状の形態をなしている場合に、その効果が顕著となる。
本発明はまた、成形対象である磁性粉末を充填するキャビティを備えた金型と、キャビティに対して配向磁場を印加するコイルと、キャビティに磁性粉末を供給する供給管と、を備え、配向磁場をキャビティに印加した後に、磁性粉末をキャビティに供給、充填する磁場中成形装置であって、磁性粉末は、配向磁場による磁気的な影響を受けずに供給管を落下することを特徴とする。
供給管は、その内部を磁性粉末が重力によって落下可能に立設する形態とすることができる。
本発明はさらに、未配向状態の磁石原料粉末を配向磁場が印加されたキャビティに進入させ、充填した後に、配向磁場が印加されたままの状態で加圧して成形体を作製する工程と、成形体を焼結する工程と、を備えることを特徴とする焼結磁石の製造方法を提供する。
本発明の焼結磁石の製造方法において、未配向状態の磁石原料粉末を、重力を利用してキャビティに落下させることができる。そして、磁石原料粉末を、自由落下させることにより、磁石原料粉末の嵩密度よりも密度が粗な状態で、キャビティに進入させることができる。
以上説明したように、本発明によれば、磁性粉末を磁場によって配向しながらキャビティ内に充填するため、自重圧力による配向障害を低減することができる。この配向障害の低減は、焼結磁石であれば成形体の上部に該当する部分と成形体の下部に該当する部分の残留磁束密度(Br)の差が小さくなることとして把握することができる。
また本発明によれば、キャビティ進入前には磁性粉末が配向磁場からの磁気的な影響を受けずに自由落下することにより、焼結体毎の磁気特性のばらつきを低減し、かつ、より磁気特性が向上された焼結磁石を製造することができる。
はじめに、本発明の磁場中成形方法を図1に示す実施の形態に基づいて説明する。
図1は、本実施の形態による磁場中成形方法を工程順に示した図である。
本実施の形態による磁場中成形方法において、図1(a)に示すように、ダイ40と下パンチ50とによって成形されるキャビティCの上方に磁性粉末Pを配置する。本実施の形態は、磁性粉末Pを配置する位置に特徴を有している。すなわち、磁性粉末Pは、次のステップにおいて配向磁場Hを印加した際に、その配向磁場Hからの磁気的な影響を受ける領域外に配置される。
次のステップでは、図1(b)に示すように、配向磁場Hを印加する。この配向磁場Hは、ダイ40と下パンチ50とによって成形されるキャビティCに対して印加される。配向磁場Hは、ダイ40の上方に漏洩していないことが本発明にとって最も好ましい。つまり、ダイ40(キャビティC)の上方は、配向磁場Hからの磁気的な影響を受ける領域外であることが好ましい。また、配向磁場Hは、静的な磁場であってもよいし、パルス状の磁場であってもよい。配向磁場Hは、キャビティCの鉛直方向の磁場強度が均等であってもよいし、磁場強度に分布があってもよい。磁場強度に分布がある場合として、キャビティCの鉛直方向の中心部付近で最大磁場強度を示す形態が一般的である。
次のステップでは、図1(c)に示すように、磁性粉末Pを当初の配置位置からキャビティCの内部へ落下させる。図1(c)は、落下する磁性粉末PのほとんどがキャビティC内に進入した状態を示している。磁性粉末Pは、キャビティC(ダイ40の上面)に到達するまでは、配向磁場Hの磁気的な影響を受けることなく、自由落下する。磁性粉末Pは、自由落下する以前にはその自重によって所定の密度をなしているが、自由落下する過程でその密度が相対的に粗となる。密度が粗となった磁性粉末Pは、配向磁場Hを受けた場合の配向が容易である。このとき、少なくとも、当該磁性粉末Pの嵩密度よりも粗である。しかも、磁性粉末Pは、キャビティC内を落下する間に配向磁場Hによって一方向に配向するため、キャビティCの鉛直方向における充填位置にかかわらず高い配向度が達成され、配向の均一性が向上する。
なお、本発明の要旨の理解を容易にするために図1には記載していないが、磁性粉末Pは、その当初の配置位置からキャビティCに到達までの間、キャビティCの開口面積と同等の管径を有する供給管内を通過させることができる。
磁性粉末PがキャビティC内に充填の後、図1(d)に示すように、配向磁場Hを印加したままで上パンチ60を下降させる。キャビティC内に充填された磁性粉末Pは、上パンチ60と下パンチ50との間で圧縮され、配向磁場H中で成形される。粉末充填中に配向した粉末粒子の向きは、圧縮成形時に受ける摩擦力などによって変化し得る。これを避けるため、圧縮成形に際しても配向磁場Hの印加を継続させる。
本実施の形態の磁場中成形方法を適用することにより、焼結磁石の残留磁束密度が高く、且つ焼結磁石毎の残留磁束密度のばらつきが減少する。これは次の原因によると解される。すなわち、本磁場中成形方法においては、磁性粉末Pの落下・充填前にキャビティCへの磁場印加を開始するが、その際に磁性粉末Pへは配向磁場Hが印加されない。このため、落下・充填前に磁性粉末Pには磁場による凝集は生じない。この結果、磁性粉末Pは粗なまま落下を開始し、自由落下の過程でさらに粗な状態となるために、磁性粉末Pを構成するそれぞれの粒子がまわりの粒子に拘束されない。しかも、キャビティCに向けて落下する磁性粉末Pは、その過程で配向磁場Hの影響を実質的に受けないため、キャビティC内に進入するまでの配向磁場Hによる影響は緩やかである。さらに、自由落下の途中で磁性粉末Pがほぐされ密度が粗になるため、磁性粉末PはキャビティCに進入すると十分に粗な状態で配向することができるので、配向度が向上する。
以上に対して、特許文献1の場合には、キャビティCに進入する以前に磁性粉末Pに相当の配向磁場Hを積極的に印加するため、キャビティCに進入する以前の磁性粉末Pにフィーダーボックス内で配向磁場Hの影響が急峻に作用し、磁性粉末Pは不完全な配向をなすとともに凝集を起こす。
したがって、本発明に比べて配向が不十分となるものと解される。
以上の説明は、あくまで本発明の好ましい実施の形態であり、その要素を以下のように適宜変更することができることはいうまでもない。
磁性粉末Pは、当初の配置からキャビティCに進入する間、配向磁場Hによる影響を全く受けない位置とすることが最も好ましい。しかし、現実にはキャビティCの上方への配向磁場Hの漏洩を皆無にすることは困難なこともあり、キャビティC中に印加される配向磁場Hの最大磁場の10%以下、好ましくは5%以下の強度の磁場がキャビティCに進入する過程で磁性粉末Pに印加されることを許容する。本発明において、配向磁場Hからの磁気的な影響を受けない、とはこのことを意味する。
また、図1の例では、配向磁場Hを印加した後に磁性粉末Pの落下を開始しているが、これは本発明の必須要素ではない。前述したように、磁性粉末PがキャビティC内に進入し、かつ下パンチ50に到達するまでの期間に、配向磁場Hが磁性粉末Pに印加されていればよい。したがって、磁性粉末Pの落下開始と同時に配向磁場HをキャビティCに向けて印加する、という方法を採用することもできる。
本発明の磁場中成形方法、例えば、焼結磁石、超磁歪材料に適用することができる。これらの焼結体は、原料合金を作製し、所定の粒度まで粉砕し、粉砕された合金粉末(磁性粉末P)を以上説明した磁場中成形方法により成形し、次いで焼結するという基本的な工程を経て製造される点で共通する。
本発明において、焼結磁石としては、特にR−Fe−B系焼結磁石に適用することができる。このR−Fe−B系焼結磁石は、希土類元素(R)を25〜37wt%含有する。ここで、RはYを含む概念を有しており、したがってY、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuの1種又は2種以上から選択される。Rの量が25wt%未満であると、R−Fe−B系焼結磁石の主相となるR14相の生成が十分ではなく軟磁性を持つα−Feなどが析出し、保磁力が著しく低下する。一方、Rが37wt%を超えると主相であるR14B相の体積比率が低下し、残留磁束密度が低下する。またRが酸素と反応し、含有する酸素量が増え、これに伴い保磁力発生に有効なRリッチ相が減少し、保磁力の低下を招く。したがって、Rの量は25〜37wt%とする。
また、このR−Fe−B系焼結磁石は、ホウ素(B)を0.5〜4.5wt%含有する。Bが0.5wt%未満の場合には高い保磁力を得ることができない。一方で、Bが4.5wt%を超えると残留磁束密度が低下する傾向がある。したがって、Bの上限を4.5wt%とする。好ましいBの量は0.5〜1.5wt%、さらに好ましいBの量は0.8〜1.2wt%である。
このR−Fe−B系焼結磁石は、Coを4.0wt%以下(0を含まず)、望ましくは0.1〜1.0wt%、さらに望ましくは、0.3〜0.7wt%含有することができる。CoはFeと同様の相を形成するが、キュリー温度の向上、粒界相の耐食性向上に効果がある。
また、このR−Fe−B系焼結磁石は、他の元素の含有を許容する。例えば、Al、Cu、Zr、Ti、Bi、Sn、Ga、Nb、Ta、Si、V、Ag、Ge等の元素を適宜含有させることができる。一方で、酸素、窒素、炭素等の不純物元素を極力低減することが好ましい。特に磁気特性を害する酸素は、その量を5000Pm以下、さらには3000Pmと以下とすることが好ましい。酸素量が多いと非磁性成分である希土類酸化物相が増大して、磁気特性を低下させるからである。
本発明は、上記したようなR−Fe−B系焼結磁石に限らず、他の希土類焼結磁石に適用することも可能である。例えば、R−Co系焼結磁石に本発明を適用することもできる。
R−Co系焼結磁石は、Rと、Fe、Ni、Mn及びCrから選ばれる1種以上の元素と、Coとを含有する。この場合、望ましくはさらにCu又は、Nb、Zr、Ta、Hf、Ti及びVから選ばれる1種以上の元素を含有し、特に望ましくはCuと、Nb、Zr、Ta、Hf、Ti及びVから選ばれる1種以上の元素とを含有する。これらのうち特に、SmとCoとの金属間化合物、望ましくはSmCo17金属間化合物を主相とし、粒界にはSmCo系を主体とする副相が存在する。具体的組成は、製造方法や要求される磁気特性等に応じて適宜選択すればよいが、例えば、R:20〜30wt%、特に22〜28wt%程度、Fe、Ni、Mn及びCrの1種以上:1〜35wt%程度、Nb、Zr、Ta、Hf、Ti及びVの1種以上:0〜6wt%、特に0.5〜4wt%程度、Cu:0〜10wt%、特に1〜10wt%程度、Co:残部の組成が好ましい。
以上、R−Fe−B系焼結磁石、R−Co系焼結磁石について言及したが、本発明は他の希土類焼結磁石への適用を妨げるものではない。
希土類焼結磁石は以下のような工程を経て製造することができる。
原料合金を、真空又は不活性ガス、望ましくはアルゴン雰囲気中でストリップキャスト法、その他公知の溶解法により作製する。
R−Fe−B系焼結磁石を得る場合、RFe14結晶粒を主体とする合金(低R合金)と、低R合金よりRを多く含む合金(高R合金)とを用いる所謂混合法を適用することもできる。
まず、原料合金は粉砕工程に供される。混合法による場合には、低R合金及び高R合金は別々に又は一緒に粉砕される。粉砕工程には、粗粉砕工程と微粉砕工程とがある。
粗粉砕工程では、原料合金を、粒径数百μm程度になるまで粗粉砕し、粗粉砕粉末を得る。この粗粉砕粉末が本発明における原料合金粉に該当する。粗粉砕は、スタンプミル、ジョークラッシャー、ブラウンミル等を用い、不活性ガス雰囲気中にて行うことが好ましい。粗粉砕に先立って、原料合金に水素を吸蔵させた後に放出させることにより粉砕を行うことが効果的である。なお、水素吸蔵処理、水素放出処理は必須の処理ではない。この水素粉砕を粗粉砕と位置付けて、機械的な粗粉砕を省略することもできる。
粗粉砕工程後、微粉砕工程に移る。微粉砕には主に気流式粉砕機が用いられ、粗粉砕粉末を微粉砕することで、平均粒径2.5〜6μm、望ましくは3〜5μmの微粉砕粉末(粉砕粉)を得る。気流式粉砕機は、高圧の不活性ガスを狭いノズルより開放して高速のガス流を発生させ、この高速のガス流により粗粉砕粉末を加速し、粗粉砕粉末同士の衝突やターゲットあるいは容器壁との衝突を発生させて粉砕する方法である。
混合法による場合、2種の合金の混合のタイミングは限定されるものではないが、微粉砕工程において低R合金及び高R合金を別々に粉砕した場合には、微粉砕された低R合金粉末及び高R合金粉末を窒素雰囲気中で混合する。低R合金粉末及び高R合金粉末の混合比率は、重量比で80:20〜97:3程度とすればよい。低R合金及び高R合金を一緒に粉砕する場合の混合比率も同様である。
以上のようにして得られた微粉砕粉末は、本発明による磁場中成形方法に供される。磁場中成形により得られた成形体を真空又は不活性ガス雰囲気中で焼結する。焼結温度は、組成、粉砕方法、平均粒径と粒度分布の違い等、諸条件により調整する必要があるが、真空中で、1000〜1200℃で1〜10時間程度焼結すればよい。
さて、焼結後には、得られた焼結体に時効処理を施すことができる。この工程は、保磁力を制御する重要な工程である。時効処理を2段に分けて行う場合には、750〜1000℃、500〜700℃での所定時間の保持が有効である。750〜1000℃での熱処理を焼結後に行うと、保磁力が増大するため、混合法においては特に有効である。また、500〜700℃の熱処理で保磁力が大きく増加するため、時効処理を1段で行う場合には、500〜700℃の時効処理を施すとよい。
また本発明は、RT(ここで、Rは1種類以上の希土類金属、Tは1種類以上の遷移金属であり、yは1<y<4を表す。)で示す組成の焼結体からなる超磁歪材料にも適用することができる。
ここで、Rは、Yを含むランタノイド系列、アクチノイド系列の希土類金属から選択される1種以上を表している。これらの中で、Rとしては、特に、Nd、Pr、Sm、Tb、Dy、Hoの希土類金属が望ましく、Tb、Dyがより一層望ましく、これらを複合して用いることができる。Tは、1種以上の遷移金属を表している。これらの中で、Tとしては、特に、Fe、Co、Ni、Mn、Cr、Mo等の遷移金属が望ましく、Fe、Co、Niが一層望ましく、これらを複合して用いることができる。
以上、本発明が適用される材料の例を説明したが、本発明は材料の種類に係らず、磁場中成形が適用される磁性材料に広く適用することができる。
さて、本発明の磁場中成形方法に適用される磁性粉末Pの形態は特に限定されないが、顆粒の形態をなした磁性粉末Pに適用することにより好ましい効果を得ることができる。一般に、顆粒は嵩密度が高いために磁場印加による配向度が低くなるといわれている。ところが、後述する実施例に示すように、本発明の磁場中成形方法を適用することにより、顆粒を用いても、顆粒を用いないで作製された焼結磁石と同等の残留磁束密度を得ることができる。
顆粒は公知の種々の方法により作製することができるが、一次粒子を有機液体で付着させて顆粒を作製することができる。有機液体としては、炭化水素系化合物、アルコール系化合物、エーテル系化合物、エステル系化合物、ケトン系化合物、脂肪酸系化合物、テルペン系化合物の1種又は2種から選択されたものを使用することができる。
磁性粉末Pに対する有機液体の量は特に制限されないが、有機液体の量が少なすぎると、磁性粉末P同士に液体架橋を生じさせるに足る液量を確保することができないために、顆粒化が困難である。一方、有機液体の量が多すぎると、得られた顆粒をそのまま磁場中成形する場合に液体が過剰に存在して成形を阻害するおそれがある。以上より、磁性粉末Pに対する有機液体の量は1.5〜12wt%とすることが好ましい。より好ましい有機液体の量は1.5〜8wt%、さらに好ましい有機液体の量は2〜6wt%である。なお、有機液体の量が多い場合は、磁場中成形までにその一部を除去すればよいので、量が少ない場合に比べると本質的な問題とは言えない。なお、添加量の好ましい範囲は、有機液体の種類によって変わり、例えばオクタノールなら2〜6wt%、エタノールなら2〜12wt%である。
次に、本発明による磁場中成形方法を実施するための磁場中成形装置のより具体的な形態について図4及び図5を参照しつつ説明する。図4は、本実施の形態における磁場中成形装置20の構成を示す正面図、図5はその側面部分断面図である。
磁場中成形装置20は、角柱状の成形体を形成するためのもので、金型によって形成されるキャビティC内に磁性粉末Pを供給し、磁場を印加しながらキャビティC内の磁性粉末Pを加圧することで磁場中成形を行い、成形体を作製するものである。
図4、図5に示すように、金型はダイ1、下パンチ2、上パンチ3によって構成される。
図示しないアクチュエータ装置により昇降可能なダイ1は、その鉛直方向の中心が、コイル5a,5bによって発生される配向磁場Hの中心に合致するよう配設されている。
非磁性体で構成されるダイ1には、成形すべき成形体の形状に対応した形状の貫通孔であるダイホールが形成されている。本実施の形態は角柱状の成形体を作製するため、ダイホールは開口形が角形状をなしている。また、このダイホールの中心軸は、ダイ1の中心軸と一致する。
ダイ1の上面には、テーブル4が配設されている。このテーブル4は、ダイ1の側方に延設されており、テーブル4上を後述する供給管8が往復動可能に配設されている。
ダイ1の周囲には、キャビティC内の磁性粉末Pを配向させるための磁場発生装置が設けられている。磁場発生装置は、ダイ1の両側から挟むように対称的に配置される一対のヨーク6a及び6bを有している。ヨーク6a及び6bは、透磁率の高い軟磁性材料から形成される。ヨーク6a及び6bには、それぞれ、コイル5a及び5bが巻き回されており、通電により、下パンチ2及び上パンチ3による加圧方向と直交する方向の磁場が発生し、キャビティC内の磁性粉末Pを配向する。ヨーク6a及び6bの各々とダイ1との間には、コイル5a及び5bで発生された配向磁場HをキャビティCに導くためのホールピース7a及び7bが配設されている。ホールピース7a及び7bによって、配向磁場HをキャビティC内に水平に導くことができる。
下パンチ2は、ダイ1のダイホールに対応する位置に配置され、その上端部がダイ1のダイホール内に挿入されている。ダイ1と下パンチ2とで形成された空間がキャビティCを形成する。
図4及び図5において、図示しないアクチュエータ装置によって昇降可能な上パンチ3はダイ1の上方にて待機している。磁性粉末PがキャビティC内に充填された後に、図示しないアクチュエータ装置によって下降し、その先端がダイ1のダイホールに進入することができる。
磁場中成形装置20は、磁性粉末Pを収容しておく磁性粉末収容タンク9を備えている。磁性粉末収容タンク9は、ダイ1の上方であって、上パンチ3の動作の障害とならない所定位置に配設されている。
磁性粉末収容タンク9の下端部には、1度の成形動作で使用される磁性粉末Pを秤量する秤量機10が配設されている。
秤量機10で秤量された磁性粉末Pは、供給管8に供給される。秤量機10は、コイル5a,5bから発生される配向磁場Hによる磁気的な影響を受けない位置に配設されている。
供給管8は、その上端が秤量機10に対向し、その下端がキャビティCの開口に対向して立設しており、秤量機10で秤量された磁性粉末PをキャビティCまで供給する管状の部材である。秤量機10から供給された磁性粉末Pは、供給管8内を自由落下してキャビティCに進入する。供給管8は、磁性粉末PをキャビティCに充填する際には図5の実線で示す位置に配置される。磁性粉末Pの充填が終了すると、供給管8は、その下端がテーブル4上をスライドしながら、破線で示すように、上パンチ3の動作の支障にならない位置まで退避する。
磁場中成形装置20は、その動作を制御するコントローラ11を備えている。このコントローラ11は、図示しないアクチュエータ装置を作動させることにより、ダイ1の昇降運動、上パンチ3の昇降運動、供給管8の往復運動を制御する。また、コントローラ11は、図示しない電源からコイル5a,5bへの通電を制御することにより、所定のタイミングでキャビティCへ配向磁場Hを印加する。また、コントローラ11は、磁性粉末Pの供給管8への供給動作を制御する。この制御を図6に占めす制御フロー、さらに磁場中成形装置20の動作を示す図7及び図8をも参照しながら説明する。
磁場中成形を開始する際には、コントローラ11は、ダイ1、下パンチ2及び上パンチ3からなる金型を初期状態に設定する(図6 S101、図7(a))。金型は初期状態において、下パンチ2はダイ1に対して所定の位置に配置することにより、下パンチ2とダイ1によりキャビティCを形成する。このとき、上パンチ3はダイ1の上方に退避している。また、供給管8は、図7(a)に示す位置に退避している。
次いで、秤量機10により、磁性粉末Pを所定量秤量する(図6 S103、図7(a))。ただし、この段階で秤量された磁性粉末Pは、秤量機10内に保持されている。所定量の磁性粉末Pが秤量された後に、コントローラ11は、供給管8を図7(b)に示す位置に移動させる(図6 S105、図7(b))。この位置にある供給管8は、秤量機10から磁性粉末Pを受け入れ、かつ、キャビティCに送り込むことができる。
供給管8の移動後、コントローラ11は、図示しない電源からコイル5a,5bに通電することにより、配向磁場HをキャビティCに印加する(図6 S107)。配向磁場Hの印加後に、秤量機10は、供給管8に向けて磁性粉末Pを供給する。供給管8に供給された磁性粉末Pは、供給管8内を自由落下しながら下パンチ2とダイ1により形成されているキャビティC内に落下・充填される(図6 S109、図7(c))。
供給管8内を自由落下する磁性粉末Pは、配向磁場Hによる磁気的な影響を受けないが、キャビティC付近から徐々に配向磁場Hによる磁気的な影響を受けて配向される。この配向が始まる時点で磁性粉末Pを構成する個々の粒子は他の粒子から機械的な拘束を実質的に受けていない。つまり、磁性粉末Pは、自由な状態で配向磁場Hによる磁気的な影響を受けることができる。そのために、磁性粉末Pの配向は容易に行われる。
磁性粉末PのキャビティCへの充填終了後、コントローラ11は、供給管8を退避させる(図6 S111、図7(d))。供給管8を退避させることにより、加圧成形の準備が整う。そこで、コントローラ11は、上パンチ3を下降させる(図6 S113、図8(a))。上パンチ3は、ダイ1のダイホールに挿入され、ダイ1、下パンチ2と協働して磁性粉末Pを加圧成形する(図6 S115、図8(a))。加圧成形の過程で、配向磁場Hは継続して印加される。
所定の加圧を行うと加圧を停止し、次いでコントローラ11は電源を制御することにより、コイル5a及び5bから、それまでと逆向きの磁場を成形体(磁性粉末P)に印加することによる脱磁を行う(図6 S117)。
所定時間の脱磁を行った後に、磁場印加を停止し、次いでダイ1を下降させ、さらに上パンチ3を上昇させる(図6 S119、図8(b))。そうすることにより、成形体をキャビティCから排出し、磁場中成形装置20から取り出すことができる(図6 S121、図8(b))。
以上で、磁場中成形の1サイクルの工程が終了する。1サイクルの工程が終了すると、次のサイクルの磁場中成形を行うため、コントローラ11は、金型を初期状態に設定する(図6 S101、図7(a))。以後、後続する各工程が実行されるように、コントローラ11は、ダイ1、下パンチ2及び上パンチ3等の動作を制御する。
以下、本発明を具体的な実施例に基づいて説明する。
ストリップキャスト法により、26.5wt%Nd−5.9wt%Dy−0.25wt%Al−0.5wt%Co−0.07wt%Cu−1.0wt%B−Feの組成を有する原料合金を作製した。
次いで、原料合金に水素を室温にて吸蔵させた後、Ar雰囲気中で600℃×1時間の脱水素を行なう水素粉砕処理を行なった。
水素粉砕処理が施された合金に、粉砕性の向上並びに成形時の配向性の向上に寄与する潤滑剤を0.05〜0.1%混合した。潤滑剤の混合は、例えばナウターミキサー等により5〜30分間ほど行なう程度でよい。その後、ジェットミルを用いて平均粒径が5.0μmの微粉砕粉末を得た。
以上の微粉砕粉末を造粒装置のチャンバ内に入れ、酸化防止のためチャンバ内部を窒素で満たした。造粒装置は、チャンバ容積が4リットルの高速流動型スパルタンリューザ(ダルトン社製)を用いた。オクタノールを添加して造粒を行い、平均粒径350μmの顆粒を作製し、所定時間乾燥して、この顆粒におけるオクタノールの残留量を0.5wt%に調整した。
以上で得られた微粉砕粉末(以下、通常粉)及び顆粒(以下、顆粒粉)の2種類の原料粉末を用い、以下の3種類の磁場中成形法によって成形体を得た。通常粉及び顆粒粉の嵩密度はそれぞれ1.80g/cm、2.28g/cmであった。通常粉及び顆粒粉のキャビティへの投入量は20gとした。また、金型キャビティの開口部は20mm×18mmである。また、いずれの磁場中成形においても、配向磁場を加圧方向に対して垂直な方向とし、磁場強度を1.46T(静磁場)とした。
通常成形法:図9に示す磁場中成形装置を用い以下の要領で成形体を作製した。すなわち、所定量の原料粉末をフィーダボックスFBからキャビティC中に供給し、充填が完了した後にコイル5a,5bにより1.46Tの配向磁場を印加した。上パンチ3を下降させることによって原料粉末を磁場中で圧縮し、成形体を得た。なお、図9において、図4及び図5と同一部分には同一の符号を付している。以下の図10も同様である。
磁場中充填法:図10に示す磁場中成形装置を用い以下の要領で成形体を作製した。すなわち、フィーダボックスFB下部にスライド式のシャッタ(図示省略)を設けた。フィーダボックスFB内に所定量の原料粉末を収容した状態で、キャビティC上方に移動した。1.46Tの配向磁場(矢印で示す)をキャビティCに印加し、その後フィーダボックスFB下部のスライド式シャッタを開け、配向磁場が原料粉末を引き寄せる力を利用して原料粉末をキャビティC中に充填した。配向磁場を印加したまま、上パンチ3を下降させることによって粉体を磁場中で圧縮し、成形体とした。
落下・磁場中充填法:図4、図5に示す磁場中成形装置20を用いて成形体を作製した。つまり、キャビティC上方に、キャビティCと配向磁場の影響を受けない距離(約350mm)だけ離れた位置との間を供給管8で繋いだ。1.46Tの配向磁場をキャビティCに印加し、その後所定量の原料粉末を供給管8中を自由落下させた。配向磁場を印加したまま、上パンチ3を下降させることによって原料粉末を磁場中で圧縮し、成形体を得た。なお、配向磁場を印加しているときのキャビティCの直上10mmの位置の磁場強度は0.6Tである。
得られた各成形体を1070℃で4時間、真空中で焼成した後、800℃×1時間と560℃×1時間(ともにAr雰囲気中)の2段時効処理を施した。こうして作製された焼結体試料について、磁場中成形時の状態で上・下に2分割して、分割された焼結磁石の各々について表面を研磨しB−Hトレーサにて磁気特性を測定した。この磁気特性の測定は、各々3個の試料について行った。得られた残留磁束密度Brを表1に示す。また、各々100個の試料について磁気特性を測定し、残留磁束密度Brの平均値及び平均値からのばらつきを表2に示している。
Figure 2008007813
Figure 2008007813
磁場中充填法では、原料粉末が磁場によって配向されながらキャビティCに充填されることから、特に成形体下部に相当する原料粉末が自重による制約を受けないために配向が容易である。このため通常成形法に比べて、上・下間の残留磁束密度Brのばらつきが小さく、かつ高い残留磁束密度Brを得ることができる。しかしながら、表2に示されるように焼結磁石毎のばらつきが大きいという問題がある。これは前述したように、キャビティCに落下する以前にその上方で原料粉末に磁場が印加されるため、原料粉末の自重及び磁場が原料粉末を引き寄せる力によって原料粉末が凝集する。このとき、引き寄せられる側の原料粉末は密に、それと離れた側の原料粉末は粗となる。この密度に分布がある状態で原料粉末はキャビティC内に引き寄せられる。この過程で凝集した原料粉末の凝集はある程度解けるが、この密度分布に起因して配向は不均一になる。そのため、磁場中充填によれば、磁気特性を高くすることができるが、焼結磁石毎の磁気特性にばらつきが生じる。
落下・磁場中充填法においては、磁場中充填法よりも残留磁束密度Brがさらに高く、且つ焼結磁石毎の残留磁束密度Brのばらつきが減少する。これは、前述したように、キャビティCへの落下・充填前に配向磁場印加を開始するが、その際に原料粉末へは配向磁場が印加されない。このため、落下・充填前に原料粉末は磁場による凝集は生じない。加えて、自由落下の過程で原料粉末の密度はさらに粗な状態となってキャビティC中に落下・充填するので、配向磁場中での配向が極めて容易になる。この結果、磁場中充填法に比べても高い残留磁束密度Brが得られる。
以上の本発明による効果は、表2に示すように、顆粒粉を使用したときにより顕著となる。顆粒粉は1次粒子の凝集体であるため、1次粒子がばらばらに存在している場合に比べ、配向磁場による配向性がどうしても劣る。つまり、磁気特性が通常粉より悪くなる。しかしながら、磁場中充填法及び本発明による落下・磁場中充填法においては原料粉末が磁場により配向されつつ充填されるため、通常粉との残留磁束密度Br差が減少し、落下・磁場中充填法においては通常粉との特性差は消失している。
磁場中充填法を行うには、キャビティC上方の原料粉末をキャビティC内に引き寄せるために、キャビティC外部にまで配向磁場が印加されなければならない。この場合、キャビティC内部の配向磁場がもっとも強く、キャビティC入口に近づくにつれて磁場が弱くなり、かつキャビティC外部(上方)にまで磁束の漏れを生じさせる。この磁束の漏れが十分でないと、キャビティC内部に原料粉末を引き寄せることができない。このようにキャビティCの深さ方向に磁場強度の分布があると、成形時に深さ方向に配向の分布ができてしまい、これが焼結磁石の磁気特性の低下・ばらつきの原因となる。しかしながら、落下・磁場中充填ではキャビティC外部に磁束が漏れている必要がない。また、キャビティC内部においても磁場分布(すなわち内部ほど磁場が強い)がある必要がない。深さ方向の磁場変化をゼロ、もしくはできるだけ少なくホールピースや金型の設計をすることが可能である。このようなことから、本発明の磁場中成形方法は、長物の成形においても高い磁気特性・低ばらつきを実現することが可能である。
上記磁場中成形を行った際の、原料粉末の充填重量ばらつき(成形体重量ばらつき=標準偏差)を調べた。この結果を表3に示す。
磁場中充填の場合、フィーダボックスFB内で水平方向に磁場が印加されるため、原料粉末がフィーダボックスFBの側壁に引き寄せられる。キャビティC内部の磁場の方が強いため、スライド式シャッタ解放後、フィーダボックスFB内部の原料粉末の大部分はキャビティC内部に移動する(引き寄せられる)。しかし、フィーダボックスFBの側壁との摩擦もあり、側壁に引き寄せられた粉末の一部はキャビティC内に移動することができず、フィーダボックスFB内に残留する。このため、磁場中充填の場合、キャビティCへの充填量が低下する。またフィーダボックスFBは、フィーダボックスFB中に残った原料粉末が磁化されたまま、上パンチ3の下降を避けるために、キャビティC上方から移動、退避する。このため成形後に逆磁場が印加されることが無く、残留した原料粉末は磁化されたままフィーダボックスFB内に残る。この残留粉末は新たにフィーダボックスFBに供給された原料粉末と、凝集を起こす。この凝集がさらに充填ばらつき・磁気特性のばらつきを誘引する。しかしながら落下・磁場中充填においては、原料粉末が自由落下によってキャビティC内に供給されるため、充填量は低下しない。特に流動性の高い顆粒においてその効果は顕著である。
Figure 2008007813
よりキャビティCの開口部が狭いダイ1で成形を行う場合、磁場中充填のフィーダボックス下部開口部はより狭くなり、また、落下・磁場中充填法に用いる供給管8の内径は細くなる。このため、流動性の悪い原料粉末を用いた場合には、所定量の原料粉末がすべてキャビティCに入り切れないという問題が生じる。ダイ1のキャビティ開口径が20mmφ、10mmφ及び5mmφの金型にそれぞれ20g、10g及び5gの原料粉末を充填した際の(成形体重量ばらつき)(%)=(成形体重量標準偏差/成形体重量平均値)を表4に示す。このとき、供給管8の内径とダイ1のキャビティ開口径を同等した。
Figure 2008007813
ダイ1のキャビティ開口径が小さくなると結果、原料粉末がキャビティCに入りにくくなり、充填ばらつきが悪化する傾向が表4からわかるが、顆粒を用いた落下・磁場中充填法においては成形体重量ばらつきが小さい。これは顆粒の高流動性のためである。このように、キャビティ開口部が狭い成形を行う場合、顆粒と落下・磁場中充填法の組み合わせが好ましい。
本実施の形態における磁場中成形方法を工程順に示す模式図である。 従来の一般的な磁場中成形方法を工程順に示す模式図である。 特許文献1における磁場中成形方法を工程順に示す模式図である。 本実施の形態における磁場中成形方法を実施する磁場中成形装置の概略構成を示す正面図である。 本実施の形態における磁場中成形方法を実施する磁場中成形装置の概略構成を示す部分断面側面図である。 図4、図5に示す磁場中成形装置を用いた磁場中成形方法の動作手順を示すフローチャートである。 図4、図5に示す磁場中成形装置の動作過程を示す図である。 図4、図5に示す磁場中成形装置の動作過程を示す図である。 通常成形法を行う磁場中成形装置の概略構成を示す正面図である。 磁場中充填法を行う磁場中成形装置の概略構成を示す正面図である。
符号の説明
1…ダイ、2…下パンチ、3…上パンチ、4…テーブル、5a,5b…コイル、6a,6b…ヨーク、7a,7b…ホールピース、8…供給管、9…磁性粉末収容タンク、10…秤量機、20…磁場中成形装置、40…ダイ、50…下パンチ、60…上パンチ、C…キャビティ、H…配向磁場、P…磁性粉末

Claims (10)

  1. キャビティ外を自由落下してきた磁性粉末を、前記キャビティ内で配向磁場を印加しながら前記キャビティに充填させる工程と、
    前記配向磁場を印加しながら前記磁性粉末を加圧して成形する工程と、
    を備えることを特徴とする磁場中成形方法。
  2. 前記磁性粉末は、前記キャビティの上方であって、かつ前記配向磁場による磁気的な影響を受ける領域外から自由落下することを特徴とする請求項1に記載の磁場中成形方法。
  3. 前記磁性粉末は、前記配向磁場による磁気的な影響を受ける領域外を自由落下した後に、前記キャビティに進入することを特徴とする請求項2に記載の磁場中成形方法。
  4. 前記キャビティに前記配向磁場を印加した後に、前記磁性粉末を自由落下させることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の磁場中成形方法。
  5. 前記磁性粉末は、顆粒状の形態をなしていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の磁場中成形方法。
  6. 成形対象である磁性粉末を充填するキャビティを備えた金型と、
    前記キャビティに対して配向磁場を印加するコイルと、
    前記キャビティに前記磁性粉末を供給する供給管と、を備え、
    前記配向磁場を前記キャビティに印加した後に、前記磁性粉末を前記キャビティに供給、充填する磁場中成形装置であって、
    前記磁性粉末は、前記配向磁場による磁気的な影響を受けずに前記供給管を落下することを特徴とする磁場中成形装置。
  7. 前記供給管は、その内部を前記磁性粉末が重力によって落下可能に立設してあることを特徴とする請求項6に記載の磁場中成形装置。
  8. 未配向状態の磁石原料粉末を配向磁場が印加されたキャビティに進入させ、充填した後に、前記配向磁場が印加されたままの状態で加圧して成形体を作製する工程と、
    前記成形体を焼結する工程と、
    を備えることを特徴とする焼結磁石の製造方法。
  9. 前記未配向状態の前記磁石原料粉末を、重力を利用して前記キャビティに落下させることを特徴とする請求項8に記載の焼結磁石の製造方法。
  10. 前記磁石原料粉末を、自由落下させることにより、前記磁石原料粉末の嵩密度よりも密度が粗な状態で、前記キャビティに進入させることを特徴とする請求項8又は9に記載の焼結磁石の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN118699366A (zh) * 2024-08-29 2024-09-27 长春电子科技学院 一种金属粉末加工的摊铺成型设备

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