本発明の第1の実施例を図1から図13に従って説明する。図1は、加々速度情報を用いた運動制御システムの概念を示す全体構成図、図2は加々速度センサの全体構成図、図3は加速度が作用したときの釣合状態を示す図、図4はコイルの回路方程式の説明図、図5は内部抵抗を有する場合のコイルの回路方程式の説明図、図6は信号処理部分の回路構成図、図7は加々速度センサの他の全体構成図、図8はアナログ回路を用いた加々速度検出方法を示す図、図9はディジタル回路を用いた加々速度検出方法を示す図、図10は加々速度センサの出力と加速度の微分回路出力とを比較して示した図、図11は加々速度センサにより加々速度情報を得る構成を示す図、図12は加速度センサと微分手段により加々速度情報を得る構成を示す図、図13は加々速度情報を用いた運動制御システムの運動モデルを示す図である。
図1に示すように、本実施例の運動制御システムは、物体50に固定され、物体50の加々速度を検出する加々速度検出装置51と、物体50の運動を制御するコントローラ52と、物体に作用する力を発生するアクチェータ53で構成されている。コントローラ52は、加々速度検出装置51により検出された加々速度情報を入力し、コントローラ52からの出力によりアクチェータ53を用いて物体50の運動を制御する。
加々速度検出装置51を構成する加々速度センサは、図2に示すようにケーシング10aに継手13によって1自由度の運動が可能なように取付けられた振子1と、振子1に固定されたコイル3と、振子1の他端側の運動方向に取付けられた可動電極41と、マグネット2が取付けられたケーシング10と、ケーシング10に可動電極41と対面するように形成された固定電極42と、振子1の釣合い位置からの変位を検出する振子変位検出器40と、振子変位検出器40の出力側に直列に接続されさらにその出力側が前記コイル3の一方の側に接続するように配線されたサーボアンプ5と、一方が接地され他方がコイ
ル3の他方に接続されるように配線された読み取り抵抗6などから構成されている。そして、検出された加々速度情報は、図2に示すように、コイル3の端子電圧として取出すように構成されている。
前述したように、振子1は、1自由度の運動(紙面に水平方向)を行うように構成されているので、この方向がセンサ感度方向となる。又、振子1の両側に配置された可動電極41とケーシング10に固定されている固定電極42とで2組の平板コンデンサを形成している。平板コンデンサの静電容量Cは、数式1で示されるように空隙の大きさに反比例する。
ここで、εは空気の誘電率、Sは電極の面積、dは空隙寸法である。従って、可動電極41と固定電極42とで形成されている2組のコンデンサの静電容量の差ΔCを振子変位検出器40で検出することにより振子1の変位が検出できる。
また、振子1には、コイル3が配置されており、このコイル3に電流が流れると磁束が発生し、ケーシング10に固定されたマグネット2による磁界により力を受ける。したがって、サーボアンプ5により上述の振子変位検出器40で検出した2組のコンデンサの静電容量の差ΔCがΔC=0となるように、即ち上下の空隙の大きさが等しくなるように、コイル3に流れる電流をフィードバック制御することにより、外力の大きさにかかわらず振子1の位置を釣合いの位置に止めておくことができる。
ここで、加々速度センサが、ある運動をしている物体50に固定されている場合を考える。図3に示すように、時刻tにおいて左方向(センサ感度方向)からセンサ全体に加速度α(t)が作用したとすれば、振子1の質量をMとすると振子1には右向きにF(t)=M・α(t)の慣性力が働く。振子1について運動方程式を考えると数式2のようになる。
ここで、Mは振子1の質量、x(t)は時刻tにおける振子1の釣合位置からの変位、F(t)は振子1に働く慣性力、f(t)は位置フィードバックによる制御力である。制御力f(t)は、コイル3に流れる電流I(t)に比例するので数式3、数式4が成り立つ。
ここで、φは電磁鎖交係数、rはコイル3の半径、Bはマグネット2の磁束密度、Nはコイル3の巻き数で与えられる。
時々刻々変動するF(t)に対して、振子1が釣合位置にあるように制御力f(t)を追従させれば、数式2の左辺はゼロとなり、その結果、数式5が成立する。
したがって、加々速度センサ全体に働く加速度は、数式6となり、コイルを流れる電流値を測定することにより検出できる。
これに対し、加々速度センサ全体に働く加々速度をη(t)とすると、数式7となる。
いま、図4に示すようにコイル3に流れる電流について回路方程式をたてると、数式8となる。
ここで、Lはコイルのインダクタンスである。従って加々速度センサ全体に働く加々速度η(t)は、数式9となり、コイル3の両端の端子電圧を検出することにより、測定することができる。
図2に示す第1例の加々速度センサは、上記のように構成しているので、振子1の運動方向に沿って加速度が加わると振子1が変位し、この変位を変位検出器40で電圧信号として検出し、サーボアンプ5で増幅する。さらにサーボアンプ5では、この電圧信号を電流指令に変換する。この電流は、振子1に取付けられたコイル3に流れマグネット2との間に力が発生し、変位検出器40の出力が0となるように、即ち振子1を平衡位置になるように流れ続ける。上記したようにこのときコイル3に流れる電流値は、加わった加速度に比例追従し、コイル3の両端の電圧は、電流の微分値、すなわち加々速度に比例して追
従した値となる。
図5は、コイル3が内部抵抗Rを含んでいる場合の、加々速度情報を検出する方法を示したものである。図5に示すような回路について、回路方程式をたてると、数式10となる。
ここで、eはコイル3の両端の電圧、Rはコイル3の内部抵抗、Lはコイルのインダクタンスである。図5に示すようにコイル3を流れた電流は、すべて読み取り抵抗6を流れるとすると、数式11が成り立つ。
ここで、erは読み取り抵抗6の両端の電圧、rは取り抵抗6の内部抵抗である。したがって、図4に示した場合と同様に、加々速度センサに作用する加々速度は、数式12に示すように、コイル3の両端の電圧と、読み取り抵抗6両端の電圧を測定することにより検出可能である。
また、図6は、数式11で表される加々速度センサの信号処理部分をオペアンプを用いて構成したものである。このような構成とすることにより、コイル3の抵抗分が無視できないときでも、加々速度センサに作用する加々速度を検出することができる。
図7は、第2の例である加々速度センサの全体構成を示す図である。図2に示す加々速度センサと同様な構成であるが、この加々速度センサは、振子11と、振子11に固定されたマグネット12と、可動電極141と、ケーシング10と、ケーシング10に固定されたコイル130と、固定電極142と、振子の釣合位置からの変位を検出する振子変位検出器140とサーボアンプ15と、読み取り抵抗16で構成されている。すなわち、コイル130は、ケーシング10側に、マグネット12は振子11側に設けられている。この場合も図2に示す加々速度センサと同様に加々速度情報は、図7に示すようにコイル1
30の端子電圧として取り出すことによって得られる。
以上述べたことから分かるように、図2又は図7に示す加々速度センサにおいて、マグネット2、12は、永久磁石であっても、磁束密度を一定に保った電磁石であっても良い。また、本実施例においては、振子の変位検出に振子とケーシングで構成された静電容量の差分を用いた方法について言及したが、これに限定されるものではなく、例えば発光素子、レンズ、受光素子等を用いて光学的に検出する等の方法を用いてもよい。
また、数式8、数式12からわかるように、振子1の素材、構造的な特性(ヤング率、断面モーメントなど)は、考慮する必要がないので高精度の加々速度検出が可能となる。
また、数式6及び数式11より数式13が成立するので、読み取り抵抗6、16の端子電圧erは、電流、即ち加速度に比例した値となる。
以上のように、本実施例の加々速度センサは、加速度と加々速度を同時に検出可能である。
尚、上記した加々速度センサは、その検出方向が1軸に限定されているものについて言及したが、多軸方向の加々速度検出が必要でかつ、部品点数、コストを低減するなどの必要がある場合は、以下のような方法を用いて多軸加々速度センサを実現することができる。多軸方向の加速度に応じて、多軸方向に変位できる軸方向分の磁石、あるいはコイルを具備した振子を用い、この振子の磁石あるいは、コイルに各軸方向の力を独立して発生するような位置に軸方向分のコイル、あるいは磁石を設け、振子の基準位置からの各軸方向の変位を独立して検出する変位検出器と各軸方向のコイルに流れる電流を制御する各軸方
向のサーボアンプを設けて、各軸方向の変位検出器により検出される、各軸方向の振子に作用する加速度によって生じる各軸方向の可動部材の各軸方向の変位が零になるように、各軸方向のコイルに流れる電流を各軸方向のサーボアンプにより制御し、その際に、各軸方向の誘導起電力検出器により検出される各軸方向のコイルの両端に生じる誘導起電力から、振子に作用する各軸方向の加々速度を検出すればよい。
図8、図9により、加々速度検出装置51の別の例を説明する。図8に示すように、加々速度検出装置51は加速度センサとアナログ微分回路を用いて構成することができ、一般の加速度センサにアナログ微分手段(フィルタ)を付加することにより、加々速度を検出することができる。また、図9は、本実施例に用いられる加々速度検出装置51のさらに別の例であり、加速度センサとディジタル微分回路を用いて構成している。すなわち、一般の加速度センサにA/Dコンバータを介してディジタル信号に変換し、ディジタル演算処理によって加々速度情報を得ることもできる。このように、加々速度微分情報は、加
々速度センサ出力の一階の微分回路出力として用いることができる。
図2、図7で示す本実施例の加々速度センサで検出された加速度と加々速度、加速度のアナログ微分回路出力を一例として比較して示すと図10のようになる。図10の(a)が本実施例の加々速度センサで検出された加速度出力で、(b)が(a)で示される加速度出力をアナログ微分回路に通した後の出力、(c)が本実施例の加々速度センサで検出された加々速度出力を示している。(c)で示される加速度アナログ微分出力と本実施例の加々速度センサで検出された加々速度出力は、共に(a)で示される加速度の微分出力となっており、非常に良く合致していることが分かる。
図11、図12は、それぞれコントローラ52を含めた加速度、加々速度情報検出方法の違いを示す図であり、図11は、本実施例の加々速度センサにより加々速度情報を得る構成を示す図であり、図12は図9に示すように、加速度センサとコントローラ52内部に微分手段を設け、その微分手段によりディジタル演算処理加々速度情報を得る構成を示している。図11の方法では、直接加々速度情報と加速度情報を得られるが入力ポート521、522とA/Dコンバータ524、525が2組必要であるのに対し、図12に示す方法では入力ポート523とA/Dコンバータ526は、1組で良いが加々速度情報を
得るためには、ある程度の演算527が必要である。以上のことより実際に適用する場合は、ハード構成とコントローラ52の演算速度、さらには必要とされる検出精度に応じていずれかの方法を用いればよい。
さて、図1に示す加々速度情報を用いた運動制御システムにおいて、一般的な運動形態としては、図12に示すように物体50が仮想的な固定面54にダンパ要素55とバネ要素56と拘束されている運動モデルを考える。
図12に示すように、物体の質量をM、物体の変位をx、アクチュエータ53の発生する力をFc(t)、物体50に作用する外力をfg(t)、ダンパ要素55の粘性減衰定数をC、バネ要素56のバネ定数をKとすると、物体50は以下の数式14に示す運動方程式に従って運動する。
今、図12に示される運動モデルでの位置制御を考え、コントローラ52の制御則が数式15のような伝達関数で与えられるとした場合のブロック線図を図13に示す。
ここで、K2、K3、K4は、おのおの加速度、速度、変位のフィードバックゲイン定数を表す。このブロック線図から、外力と変位との間の伝達関数を求めると、数式16となる。
数式16から分かるように、加速度フィードバックは、位置制御において能動的に質量を増加させる働きがあり、速度フィードバックは、位置制御において能動的にダンピングを増加させる働きがあり、位置フィードバックは、位置制御において能動的に剛性を増加させる働きがある。このように3つのゲイン定数の選択によって運動特性が自由に変えられることが分かる。
次に、図12に示される運動モデルでの速度制御を考える。数式14の両辺を時間tで微分すると数式17となる。
数式17について、数式18のごとき置き換えを行うと数式19となる。
コントローラ52の制御則が数式20のような伝達関数で与えられるとした場合のブロック線図を図14に示す。
ここでK1、K2、K3は、おのおの加々速度、加速度、速度のフィードバックゲイン定数を表す。このブロック線図から、外力と速度との間の伝達関数を求めると、数式21となる。
数式21からわかるように、加々速度フィードバックは、速度制御において能動的に質量を増加させる働きがあり、加速度フィードバックは、速度制御において能動的にダンピングを増加させる働きがあり、速度フィードバックは、速度制御において能動的に剛性を増加させる働きがある。このように3つのゲイン定数の選択によって運動特性が自由に変えられることが分かる。
次に、図12に示される運動モデルでの加速度制御を考える。数式20の両辺を時間tで微分すると数式22となる。
数式22について、数式23のごとき置き換えを行うと数式24となる。
コントローラ52の制御則が数式25のような伝達関数で与えられるとした場合のブロック線図を図15に示す。
ここで、K0、K1、K2、は、おのおの加々速度微分、加々速度、加速度のフィードバックゲイン定数を表す。このブロック線図から、外力と加速度との間の伝達関数を求めると、数式26となる。
数式26からわかるように、加々速度微分フィードバックは、加速度制御において能動的に質量を増加させる働きがあり、加々速度フィードバックは、加速度制御において能動的にダンピングを増加させる働きがあり、加速度フィードバックは、加速度制御において能動的に剛性を増加させる働きがある。このように3つのゲイン定数の選択によって運動特性が自由に変えられることが分かる。
以上、位置、速度、加速度の各運動制御について述べてきたが、従来までの位置、速度、加速度情報を用いた制御に加え、物体の運動状態を反映した新たな物理量である加々速度情報を加えることにより速度制御においては、能動的に質量を変化させ、加速度制御においては能動的にダンピングを変化させる等、制御効果が一段と向上できる。
本発明の第2の実施例を図17から図30により説明する。図17は、車両の1種である自動車の運動制御に用いた運動制御系の全体構成を示す図、図18は、限界走行時の車両制御を行う一例についての説明図、図19は、車両の横滑りを検出した状態を示す図、図20は、車両の横方向加々速度情報を用いた車両挙動変化を示す図、図21は車両のヨーレイト情報と車両の横方向の加速度、加々速度情報に基づいて車両の自転運動抑制方法の比較を示す図、図22は車両のヨーレイト情報と車両の横方向の加速度、加々速度情報に基づいて車両の公転運動抑制方法の比較を示す図、図23は発進、加速時の車輪空転を
検出する方法を示す図、図24は制動時の車輪ロックを検出する方法を示す図、図25は6自由度の加々速度センサを取付けた状態を示す斜視図である。
図17は、加々速度情報を車両の1種である自動車の運動制御に適用した場合の運動制御系の全体構成を示す図であるが、図17に示すように、車両100は、4輪操舵車であって、主としてエンジン101(ミッション系を含む)、各車輪102、各車輪のブレーキ103、ステアリング104、ステアリング104の舵角センサ105、アクセル106、ブレーキ107、後輪操舵モータ108、ブレーキ油圧制御部109、コントローラ110、横方向加々速度検出装置112と、前後方向加々速度検出装置111とで構成される。横方向加々速度検出装置112と、前後方向加々速度検出装置111は、それぞれ
図2から図9、あるいは図11に示すように構成されており、検出方向の加々速度以外に加速度を検出することができる。
車両100は、通常の運転時には、一般の車両と同様に運転者のステアリング104、あるいはアクセル106、あるいはブレーキ107を操作するのに伴い、4輪が操舵され、エンジンの回転が変化し、ブレーキがかかる等の操作が行われる。そして、車両運動の限界域近辺においては、横方向、前後方向の加々速度情報に基づいてコントローラ110により、後輪操舵モータ108、エンジン101、ブレーキ油圧制御部109を制御することにより、車両の運動性能を向上させることができる。
限界走行時の車両100の挙動変化が生じた場合に、加々速度情報に基づいて車両制御を行う一例についての説明図である図18に示すように、定常状態で旋回している車両100の旋回中心方向の運動について着目すると、遠心力M・αと路面反力Fとの間で力の釣合いが保たれている。もし、この状態で路面状況の急な変化等により車両100が挙動変化を起こすと、力の釣合いは破綻する。
従来の車両運動制御においては、この力の釣合いの破綻点(限界域)の検出が不可能であったため、限界域からはるかに低い領域における制御しかなされていなかった。このことは、従来、熟練運転者が運転する競技車両には、ABS(Anti-lock Braking Systemの略)、TCS(Traction Control Systemの略)、4WS(4Wheel Systemの略)等の車両運動制御装置が用いられなかったことからも容易に推察できる。運転者が視覚情報以外に検出・認識できる情報として、加速度、加々速度が挙げられる。このうち、上述したように力の釣合いの破綻が生じたことは、加速度の瞬時変化、即ち加々速度を検出することにより可能である。従って、加速度情報、さらには加々速度情報を用いることにより、さらに高機能の車両運動制御が可能である。
横方向加々速度情報に基づいて、車両の横滑りを検出する方法を説明している図19に示すように、検出方法の対象として想定している道路は、緩やかな右廻りのコースであるが、このとき図19に示す(a)点で排水路が道路を横断しているとすると、この排水路で接地面積と摩擦係数が一瞬変わる。このようなコースを車両100で走行した際のステアリング角、ステアリング角速度、車両横加速度、車両横加々速度は図19に示すようになる。車両100の車輪102のタイヤに働くコーナリングフォースは、ステアリング舵角に比例して増加するのが一般的であるから、ステアリング舵角が一定(すなわち、ステ
アリング角速度がゼロ)のときは、旋回に伴う遠心力とコーナリングフォースは、路面状況が変化しない限り釣合いを保っている。今、排水路(a)点を通過するとき、車両100は一瞬横滑りを起こす。これに伴って、ステアリング舵角一定(ステアリング角速度ゼロ)にもかかわらず、車両100の横方向の加速度が一瞬小さくなり、車両100の横方向の加々速度に左向きの大きなピークが検出されることになる。従って、ステアリング角速度、車両100の横方向の加々速度を検出しておき、ステアリング角の増加分に対する車両100の横方向の加々速度を検出することにより車両100が滑り始める瞬間を検出
することができる。
図20は、車両100の横方向加々速度情報に基づいて後輪102の操舵機構108により修正舵をあてることにより、車両100の著しい挙動変化を防止する例を示しているが、ステアリング角速度と車両100の横方向の加々速度情報をフィードバックしてやり、後輪102c、102dをわずかに前輪操舵方向に転舵してやることにより、過度の挙動変化を防止することができる。
図21に、車両100のヨーレイト情報に基づいて車両100の自転運動を抑制する方法と、車両100の横方向の加速度、車両100の横方向の加々速度情報に基づいて車両の自転運動を抑制する方法を比較して示す。図21では、図面の下側から上側方向に車両100が進行するにつれて車両100が時計まわりに回転を始めた場合に、上記したそれぞれの方法によって制御された場合の自転運動の抑制について示している。
車両100のヨーレイトをコントローラ110に入力し、車両100のヨーレイトと反対の向きに(この場合をネガティブにともいう)制御力(あるいはトルクともいう)を発生させるように後輪102c、102dをわずかに右方向に転舵してやることにより、反時計回りの制御力を発生させることができ、自転運動を抑制することができる。
同様に、車両100が時計まわりに回転を始めると、車両100には左向きの横加々速度と加速度が発生する。この車両100の横方向の加速度、車両100の横方向の加々速度情報をコントローラ110に入力し、車両100の横方向の加速度と反対の向きに(右向きに)制御力(トルク)を発生させ、車両100の横方向の加々速度と同じ向きに(左向きに)制御力(トルク)を発生させるように各フィードバックゲインを適当に調整することにより、後輪102c、102dをわずかに右方向に転舵して反時計回りの制御力を発生させることができ、ヨーレイト情報に基づいて車両100の自転運動を抑制する方法
と同様に自転運動を抑制することができる。
図22に、車両100のヨーレイト情報に基づいて車両100の自転運動を抑制する制御が働いている状態で公転運動(通常の旋回運動)をした場合の車両100の運動と、車両100の横方向の加速度、車両100の横方向の加々速度情報に基づいて車両の自転運動を抑制する制御が働いている状態で公転運動(通常の旋回運動)をした場合の車両100の運動を比較して示す。図21では、車両100が右回りのカーブに進入進行する場合の、それぞれの制御を行った場合の車両100の運動について示している。
図21に示した場合と同様に、ヨーレイト情報に基づいた制御においては、車両100のヨーレイトをコントローラ110に入力し、車両100のヨーレイトと反対の向きに(ネガティブに)制御力(トルク)を発生させるように転舵制御を行っている。今、運転者は右回りのカーブに進入しようと、右方向にステアリング104を操舵する。これにより車両100には時計回りのヨーレイトが発生する。これに対して、制御実行時には反時計回りの制御力が発生し、時計回りの回転運動が抑制されてしまう。運転者がさらにステアリング104の舵角を増加させてカーブを曲がろうとしても、時計回りのヨーレイトが発
生した途端に反時計回りの制御力が発生し、時計回りの回転運動が抑制されてしまう。このようにヨーレイト情報を用いた制御においては、運転者の操作により発生したヨーレイトも抑制してしまい、運転者からみると舵角に対して回頭運動が追従しない車両となってしまう。このように、ヨーレイト情報を用いた自転運動の抑制制御では、公転運動(通常の旋回運動)の促進を目指した制御が実現できなく、ヨーレイト情報を用いた制御と自転運動の抑制制御との両立は不可能である。
これに対して、車両100の横方向の加速度、車両100の横方向の加々速度情報をコントローラ110に入力し、車両100の横方向の加速度と反対の向きに(ネガティブに)制御力(トルク)を発生させ、車両100の横方向の加々速度と同じ向きに(ポジティブに)制御力(トルク)を発生させるような制御を行った場合について、コーナリングの各段階における運転者のステアリング104の操作と、車両100の運動と、それに起因する制御内容について述べる。カーブの入口において運転者は、右側にステアリング104を操作する。これにより車両100は旋回を開始し、向心力が回転中心方向に働き車両
100に右方向の加々速度と加速度が発生する。この場合には、加速度ゼロからある値の加速度が発生するので、加々速度は、その変化率として大きな値をもつ。従って制御力としては、右側即ちカーブの内側に制御力が働き、車両100は俊敏にコーナリングを開始する。
次にコーナリング中は、向心力と遠心力が釣合い安定状態になる。この時、車両100で検出される横方向加速度は安定しており、その変化率である加々速度はゼロに近づく。従って制御力は、左側、即ち車両の過度の時計回りのヨーイングの発生を押さえる方向に働き、車両100の安定度を向上させることになる。最後にカーブの出口において運転者は、右側に切っていたステアリング104を中立位置へと操作する。これにより車両100は旋回を終了し、回転中心方向に働いていた向心力が減少し、車両100の右方向の加速度が減少し、右側に負の、即ち左方向に正の加々速度が発生する。この場合も、ある
値の加速度から加速度ゼロに減少するので、加々速度は大きな値をもつ。従って、制御力としては左側即ちカーブの外側に制御力が働き、車両100は俊敏にコーナリングを終了する。この一連のコーナリングは、コーナーの最速脱出法として良く知られているアウト・イン・アウト(すなわち、コーナー外側から進入し、素早くコーナー内側に車両を寄せ、素早くコーナー外側に脱出する方法)が実現していることになる。これにより車両100の横方向の加速度、車両100の横方向の加々速度情報をコントローラ110に入力し、車両100の横方向の加速度と反対の向きに(ネガティブに)制御力(トルク)を発生
させ、車両100の横方向の加々速度と同じ向きに(ポジティブに)制御力(トルク)を発生させるように各フィードバックゲインを適当に調整することにより自転運動の抑制制御と、公転運動(通常の旋回運動)の促進を目指した制御とが両立可能となる。
尚、横方向の制御力発生法には、4輪操舵の他、ブレーキ103の前後・左右のバランスを制御したり、タイヤ102による駆動力の前後・左右のバランスを制御しても良い。
図23に、車両100の前後方向の加々速度情報に基づいて、車両100の発進・加速時の車輪、特に駆動輪の空転を検出する方法を示す。図23に示すものは、道路が直線コースの場合を想定し、(a)点で排水路が道路を横断している場合を示しているが、この排水路で接地面積と摩擦係数が一瞬変わる。図23は、このようなコースを車両100で加速走行した際のアクセル開度、アクセル速度、駆動輪速、車両100の前後加速度、車両100の前後加々速度をそれぞれ示している。車両100の車輪102のタイヤに働くトラクションフォースはエンジントルクに比例して増加するのが一般的であるから、アク
セル開度がゼロでないときは、エンジン101によってタイヤを駆動したときに生じるトラクションフォースと路面反力は、路面状況が変化しない限り釣合いを保っている。しかし、上記のような排水路(a)点を通過するとき、駆動輪は空転(ホイルスピンともいう)を始める。この時、アクセル開度が正にもかかわらず、車両100の前後方向の加速度が一瞬小さくなり、車両100の前後加々速度に後ろ向きの大きなピークが検出できる。
従って、アクセル速度を検出しておき、アクセル開度の変化に対する車両100の前後方向の加々速度を検出することにより、駆動輪が滑り始める瞬間を検出することができる。その結果、コントローラ110により車両100の前後方向の加々速度情報に基づいてエンジン101の出力を減少させて、駆動輪102c、102dの空転を減少させ、車両100の著しい挙動変化を防止することができる。それに対して、従来提案されていた駆動輪の空転防止装置では、従動輪の回転数に対して駆動輪の回転数が増加すると空転を開始したと判断していたため、駆動輪空転の検出が遅くなってしまい、また、車輪100の
慣性モーメントのため、1度空転を開始するとなかなか空転が停止せず、駆動輪にブレーキをかける必要があったり、車両100の著しい挙動変化を防止するという目的を達成するのは困難であった。
このように本実施例では、車両100の前後方向の加々速度情報を用いているので、車輪102c、102dが空転を始める瞬間、あるいは最大摩擦力を越えた瞬間を検出できるため、駆動輪102c、102dの空転が始まる前にエンジン101のトルクをコントローラ110により低減させることができ、駆動輪102c、102dにブレーキをかける必要もなく発進・加速時の駆動輪102c、102dの空転を減少させ、車両100挙動変化を防止することを効果的に行うことが可能となる。
また、図24に示すように、車両100の前後方向の加々速度情報に基づいて、車両100の減速時の車輪ロックを検出することもできる。図24では、直線コースの道路を想定し、(a)点で排水路が道路を横断しており、この排水路で接地面積と摩擦係数が一瞬変わる場合を示している。また、図24には、このようなコースを車両100で減速走行した際のブレーキ油圧、ブレーキ油圧の変動、車輪102の回転速度、車両100の前後方向の加速度、車両100の前後方法の加々速度をそれぞれ示している。車両100の車輪102のタイヤに働く減速力はブレーキトルクに比例して増加するのが一般的であるか
ら、ブレーキ油圧がゼロでないときは、ブレーキ107によるタイヤ制動により生じる減速力と路面反力は、路面状況が変化しない限り、釣合いを保っている。しかし、上記のような排水路(a)点を通過するとき、駆動輪はロック(このとき車輪102の回転速度はゼロである)を始める。この時、ブレーキ油圧がゼロでないにもかかわらず、車両100の減速度が一瞬小さくなり、車両100の前後方向の加々速度に前方向の大きなピークが検出できる。
従って、ブレーキ油圧変動を検出しておき、ブレーキ油圧の変化に対する、車両100の前後方向の加々速度を検出することにより車輪102がロックし始める瞬間を検出することができる。従ってコントローラ110により車両100の前後方向の加々速度情報に基づいてブレーキ油圧制御部109を制御し、ブレーキ油圧を減少させ、車輪のロックを減少させ、車両挙動変化の防止を行うことができる。従来のABSにみられる車輪のロック防止装置では、従動輪の回転速度により推定される推定車体速度に対して車輪の回転数が極端に減少すると、車輪ロックしたと判断していたため、車輪ロックの検出が遅くなっ
てしまったり、推定車体速度の精度不足のため高精度の制御が行えず、タイヤの性能を十分に使いきっているとは言えなかった。これに対して、本実施例では車両100の前後方向の加々速度情報を用いているので、車輪102がロックを始める瞬間、あるいは、最大摩擦力を越える瞬間を検出できるため、車輪102のロックが始まる前にブレーキ油圧を低減させるため、制動時の車輪102のロックを減少させて、車両100の挙動変化の防止を効果的に行うことが可能となる。
以上、3つの例を用いて車両100の前後方向、左右方向の加々速度情報を用いた各種制御について述べたが、車両100には、前後方向、左右方向、上下方向の3つの並進運動とローリング、ヨーイング、ピッチングの3つの回転運動の6自由度の運動が考えられるため、図25に示すように、加々速度検出装置を6自由度の運動が検出できるように6個配置し、それぞれの検出手段の出力値を用いてそれぞれの自由度の加々速度情報を検出しても良い。
このように、加々速度情報を用いた車両100の運動制御を行った場合、車両100に働く力の瞬時的な変化を検出できるため、車両の限界域での挙動変化を瞬時に検出でき、タイヤ摩擦力の最大値近辺での制御が可能となる。また同時に、運転操作情報と照らし合わせることにより、運転者が意図しない、不意の外乱による挙動変化に対しても瞬時に補正制御を行うことができ、過大な挙動変化の発生を防止できる効果がある。
なお、上述した3つの例では、加々速度情報と運転操作情報のみを用いた車両運動制御について言及したが、従来の車両運動制御で用いていた車輪速情報等の各種情報に加え、加々速度情報を用いてさらに高機能・高精度の制御が可能であることは言うまでもない。
本発明の第3の実施例を図26から図30により説明する。図26は車両の乗り心地を制御する場合の全体構成図、図27はエンジン振動による車体振動を低減する場合の構成を示す図、図28はエンジン失火検出を示す図、図29は正常燃焼時のエンジン振動を示す図、図30は失火発生時のエンジン振動を示す図である。
図26に示すように、本実施例の車両300は、可変サスペンション機構301a、301bをもつ車両であり、その他の構成は図17に示すものと同様である。車両300には、複数個の加々速度検出装置(図26では、302a、302bの2個のみを取付けた場合を示しているが、これに限られるものではなく、又、場合によっては1個でもよい。)が取付けられ、i番目の加々速度検出装置の加速度出力をGi、加々速度出力をJiとし、数式27のように乗り心地評価関数Ψsを定義する。
ただし、di、eiは、それぞれi番目の観測点における加速度、加々速度情報に対する重み付け定数で、運転者ならびに同乗者の感性に合わせてチューニングするようになっている。
乗り心地評価関数Ψsを最も小さくするようにサスペンション機構301a、301bを制御することにより、車両300の振動特性と運転者ならびに同乗者の感性とを整合させることができ、乗り心地の最適化制御ができる。また、評価関数Ψsは、数式27に限定されるものではなく、運転者ならびに同乗者の感性とよく整合の取れた任意の関数で代用しても良い。
ここで、コントローラ303は、サスペンション機構301a、301bを制御する機能をもっているが、コントローラ303単体として車両300の各観測点における加速度、加々速度情報より乗り心地評価関数を計算し、計算結果を出力させる機能を持たせることにより、車両の乗り心地を評価する評価試験装置としても代用できる。
また、図26に示すような構成に加え、車体300の前後方向、横方向の加々速度検出装置を設け、これら車体300の前後方向、横方向の加々速度に従ってコントローラ303によりサスペンション機構301a、301bを制御することにより車両運動性能の向上に役立てることもできる。
図27は、加々速度情報を用いて、エンジン振動に起因する車体振動をより効果的に低減させる実施例の全体構成を示す図である。この場合、車両は、可変エンジンマウント機構402a、402bをもつ車両である。今、エンジン401及び車体には、複数個の加々速度検出装置(図27では、403a、404a、404bの3個のみが取付けられた場合を示しているが、これに限られるものではなく、場合によっては1個でもよい。)が取付けられ、i番目の加々速度検出装置の加速度出力をGi、加々速度出力をJiとし、数式27と同様に乗り心地評価関数Ψmを数式28のように定義する。
ただし、dj、ejは、それぞれj番目の観測点における加速度、加々速度情報に対する重み付け定数で、運転者ならびに同乗者の感性に合わせてチューニングするようになっている。
乗り心地評価関数Ψmを最も小さくするように可変エンジンマウント機構402a、402bを制御することにより、車両の振動特性と運転者ならびに同乗者の感性とを整合させることができ、乗り心地の最適化制御ができる。
また、評価関数は、数式28に限定されるものではなく、エンジン振動が密接な関係がある燃焼周波数に相当するエンジン回転情報等を付加し、さらに運転者ならびに同乗者の感性とよく整合の取れた任意の関数で代用しても良い。さらに図27では加々速度検出装置は、エンジン、ステアリング、シートの振動を検出できるように設置したがこれに限定されるものではない。
ここで、コントローラ407は、可変エンジンマウント機構402a、402bを制御する機能をもっているが、コントローラ407単体として車両の各観測点における加速度、加々速度情報より乗り心地評価関数を計算し、計算結果を出力させる機能を持たせることにより、車両の乗り心地を評価する評価試験装置としても代用できる。
図28は、加々速度情報をエンジン失火検出に適用した実施例を示す図である。エンジン401は間欠的に燃焼しているため、燃焼に同期したトルク変動が発生する。このトルク変動の反作用がエンジン振動を引き起こし、この振動がエンジンマウント402を介して車体に伝達され車両全体の振動を引き起こす。ここで、エンジン401の振動に着目すると、エンジン401は燃焼周波数に同期したトルク変動により強制加振されており、燃焼周波数で振動している。したがって、この振動を検出することによりエンジンの燃焼状態が検出できる。
正常燃焼時のエンジン401のロール方向の振動加速度、加々速度を示す図29と失火発生時のエンジン401のロール方向の振動加速度、加々速度を示す図30との比較から分かるように、失火が発生すると、図30に示されるように、エンジン401のロール方向の加速度に変化がみられ、エンジン401のロール方向の加々速度には、大きなピークが観察される。失火検出装置503は、これら複数の信号を検出し、適当なフィルタリング演算を行うことにより、エンジン失火の検出が可能である。
また、エンジン401のロール方向の加速度、加々速度情報のみではなく、エンジンの他の自由度の加速度、加々速度情報や、車体振動、あるいはエンジン回転情報等を付加し、さらに高精度の失火検出を行うようにしても良い。
また、失火検出装置503に、可変エンジンマウント機構等を制御する機能をもたせ、エンジン401の失火に起因する乗り心地の悪化を低減するような乗り心地制御システムとしても良い。
本発明の第4の実施例を図31、図32により説明する。図31は、加々速度情報を用いたエレベータの乗り心地制御システムの概念図、図32は、加々速度情報を用いたエレベータの乗り心地制御システムの全体構成を示す図である。
図31、図32に示すように、エレベータかご201は、ワイヤ206でつり下げられ、コントローラ204によりモータ203が制御されワイヤ205を巻き上げ、巻き下げて運転される。205は重りで、エレベータかご201の重さと、ほぼ釣合うようになっており、モータ203の負荷を軽減する働きがある。モータ203には、コントローラ204より制御指令が入力され、コントローラ204には、モータ203の回転情報が入力される。モータ203の回転情報としては、モータ回転角度、モータ回転速度、モータ回転加速度、モータ回転加々速度等があるが、これらの情報は、モータ203に付随して
いるエンコーダ(図示せず)の出力パルスを検出し、各種演算を行うことにより可能である。
従来のエレベータでは、モータの回転情報よりエレベータかごの運動を推定し、各種乗り心地制御を行っていたが、モータとエレベータかごを結ぶワイヤが弾性体であり、ワイヤが伸び縮みするため、モータの回転情報がエレベータかごの運動を反映したものとは言えず、十分な性能を発揮できなかった。
本実施例においては、エレベータかご201に、複数の加々速度検出装置(図31では、202x、202yの2個を示している。)が搭載されており、搭乗者の乗り心地に直接影響を与えるエレベータかご201の加々速度情報を直接検出できるようになっている。これらの加々速度情報は、コントローラ204に入力されモータ203の制御指令に用いられる。これらの複数個の加々速度検出装置のうち、k番目の加々速度検出装置の加速度出力をGk、加々速度出力をJkとし、モータの回転速度をVとしたとき、数式29のように乗り心地評価関数Ψeを定義する。
ただし、aは、エレベータ巻き上げ巻き下げ速度に対する重み付け定数、bk、ckは、それぞれi番目の観測点における加速度、加々速度情報に対する重み付け定数で、搭乗者の感性に合わせてチューニングするようになっている。
乗り心地評価関数Ψeを最も小さくするようにモータ203を制御することにより、巻き上げ速度も速く、搭乗者の感性に合わせた巻き上げが実現でき、乗り心地最適化制御ができる。また、評価関数は、数式29に限定されるものではなく、搭乗者の感性とよく整合の取れた任意の関数で代用しても良い。
ここで、コントローラ204は、モータ203を制御する機能をもっているが、コントローラ204単体としてエレベータかご201の各観測点における加速度、加々速度情報より搭乗者乗り心地評価関数を計算し、計算結果を出力させる機能を持たせることにより、エレベータの乗り心地を評価する評価試験装置としても代用できる。また、環境的な問題より加々速度情報の検出が困難な場合は、モータ回転情報(モータ回転速度、モータ回転加速度、モータ回転加々速度等)を数式29にあてはめる方法でもよい。
本発明の第5の実施例を図33から図35により説明する。図33は、加々速度情報を用いた鉄道車両の構成を示す図、図34は、ばね下加々速度情報を用いた鉄道車両の構成を示す図、図35は、加々速度情報を用いた鉄道車両の動力制御系構成を示す図である。
図33に示すように、本実施例の鉄道車両は、枕バネアクチュエータ541、542を中心にして自由に転向できる前後2組の台車551、552の上に長い車体501をかけ渡した様式になっている。台車551、552は、車輪軸を支持する軸バネアクチュエータ543、544、545、546、547、548、549、550を介して車輪521、522、523、524により支持されている。車体501には、複数の加々速度検出装置(図33では531、532、533のことをいう。)が具備され、車体501の上下方向の加々速度情報が検出できる。コントローラ506は、積分回路等で構成される
信号処理装置を内蔵しており、車体501に配置される複数の加々速度検出装置(図33では531、532、533のことをいう。)からの情報より加速度、速度、変位情報を算出することができる。コントローラ506は、これらの情報に基づいて車両の走行に際して軌道に多少の不整があっても、乗り心地が低下しないように枕バネアクチュエータ541、542、軸バネアクチュエータ543、544、545、546、547、548、549、550を制御する。
加々速度情報を用いることにより、加速度の微妙な変化が検出できるので従来の鉄道車両より振動低減効果が大きい鉄道車両を実現することができる。また、これと同時に車体の沈み込み、姿勢変化等を積極的に制御できるので脱線しにくい車両の実現にもつながる。
また、図34に示す鉄道車両は、図33に示す鉄道車両と同様な構成であるが、より乗り心地のよい制御を可能とするために車体501、台車555、軸受け551、552の加々速度を検出するように構成したものである。車体501、台車555、軸受け551、552には、複数の加々速度検出装置(図34では、それぞれ531、534、535、536のことをいう)が設置されている。通常、車体、台車、軸受けは、それぞれ異なる共振点を持っており、これらの振動を加々速度検出装置で検出し、コントローラ506側にフィードバックすることにより、より乗り心地の良い制御が達成される。
ここで、コントローラ506は、各アクチュエータを制御する機能をもっているが、コントローラ506単体として鉄道車両の各観測点における加速度、加々速度情報より搭乗者乗り心地評価関数を計算し、計算結果を出力させる機能を持たせることにより、鉄道車両の乗り心地を評価する評価試験装置としても代用できる。
図35に示す鉄道車両は、特に始動、制動時を考慮して加々速度情報を用いることにより鉄道車両の動力を制御した場合の構成を示している。図35に示すように、動輪521、522は、コントローラ506により制御されるモータ503により駆動され、制動輪523、524は、コントローラ506により制御されるブレーキ504により制動される。
車体501には、複数の加々速度検出装置(図35では505のみを図示している。)が具備され、車体501の進行方向の加々速度情報が検出できる。コントローラ506は、積分回路等で構成される信号処理装置を内蔵しており、車体に配置される加々速度検出装置からの情報より加速度、速度、変位情報を算出することができる。
図36では、鉄道車両501の運転状態として、車輪521、522、523、524がレール面上を転がろうとする状態を示している。車輪とレールとの間の粘着係数をμ、軸重をWで表すと、この車輪とレールの摩擦力により出すことのできる引張力の最大値Fは、数式30のようになる。
したがって、引張力の最大値以上の引張力を得ようとして回転力を大きくしても動輪が空転するだけである。今、動輪の回転力をゼロから徐々に増加させると車体の加速度は増加していく。しかし、上記のように動輪が空転を開始すると一気に加速度が減少する。すなわち、この瞬間を進行方向の加々速度情報で検出できるということである。自動車で説明したのと同様に、鉄道車両においても進行方向の加々速度を検出し、モータ503を制御することにより粘着性能を向上させることができる。
制動についても同様なことが言える。引張力の最大値Fを越えるような制動力を得ようとして制動トルクを大きくしても制動輪がスリップするだけである。今、制動輪の制動トルクをゼロから徐々に増加させると、車体の減速度は増加していく。しかし、上記のように制動輪がスリップ(ロックともいう)を開始すると一気に減速度が減少する。すなわち、この瞬間を進行方向の加々速度情報で検出できるということである。自動車で説明したのと同様に、鉄道車両においても進行方向の加々速度を検出し、ブレーキを制御することにより粘着性能を向上させることができる。
また、発進、制動のフィーリングを向上するためにも加々速度情報を用いることができるのは、自動車と同様である。上述の実施例では、駆動輪、制動輪を別に考えているが、同一車輪が駆動輪、制動輪を兼ねている場合にも適用できる。
本発明の第6の実施例を図37により説明する。図37は、加々速度情報を用いた磁気浮上車両の構成を示す図である。
図37に示すように、磁気浮上車両は、車体601は浮上用地上コイル673、674と超電動磁石633、634の磁気的な同極反発力により浮上している。そして、地上の推進案内用コイル671、672に電流を流し、車上の超電動磁石631、632と引き合う力が生じるのでその力を利用して前進する。
車体601には、複数の加々速度検出装置(図37では621、622、623、624、625のことをいう)が具備され、車体601の前後、上下、横方向の加々速度情報が検出できるようになっている。コントローラ604は、積分回路等で構成される信号処理装置を内蔵しており、車体601に配置される加々速度検出装置からの情報より加速度、速度、変位情報を算出することができる。コントローラ604は、これらの情報にもとづいて超電動磁石633、634の磁力を制御すると同時に、この情報をアンテナ605より地上側コントローラ606に向けて発信する。地上側コントローラ6ではこれらの情
報に基づいて推進案内用地上コイル671、672、浮上用地上コイル673、674に流入する電流を制御し、磁力を制御することにより車体の浮上姿勢、位置、速度、加速度を正確に制御することができる。
また、加々速度情報を用いることにより、加速度の微妙な変化が検出できるので、より振動低減効果が大きい磁気浮上車両を実現することができる。さらに車体の沈み込み、姿勢変化等を積極的に制御できるので車両運動性能の向上にもつながる。
ここで、コントローラ606は、各磁力発生手段を制御する機能をもっているが、コントローラ606単体として磁気浮上車両の各観測点における加速度、加々速度情報より搭乗者乗り心地評価関数を計算し、計算結果を出力させる機能を持たせることにより、磁気浮上車両の乗り心地を評価する評価試験装置としても代用できる。
本発明の第6の実施例を図38により説明する。図38は、加々速度情報を用いた地震シミュレータの構成を示す図である。
図38に示すように、地震シミュレータは、あらかじめコントローラ703に入力されている地震加速度、地震加々速度または変位入力を忠実に再現するように、振動台700の動きを制御するものである。振動台700は、コントローラ703により駆動される油圧アクチュエータ741、742によってX軸方向の動きを、油圧アクチュエータ743、744によってy軸方向の動きを制御される。油圧アクチュエータ743、744内には変位検出器が具備され、変位情報がコントローラ703に入力される。振動台700上の加々速度検出装置(図38では、701、702のことをいう)からは、振動台700
のx軸、y軸方向の加々速度が検出される。これらの加々速度情報は、積分器761、762、763、764によりそれぞれ、振動台700のx軸、y軸方向の加速度、速度に変換されコントローラ703に入力される。さらに速度情報に直列に積分器を挿入することにより位置情報を得るようにしてもよい。これら各自由度に対して4種類の信号は、コントローラ703にフィードバックされ、コントローラ703にあらかじめ入力されている地震加速度、地震加々速度または変位入力と比較され、振動台は、目標値どおりに駆動(加振ともいう)される。
このようなシステム構成により、従来のシミュレータに加えて加速度の変化分を情報として取り込めるため、応答性、安定性に優れた地震シミュレータを実現することができる。また、この実施例では2次元の地震シミュレータについて述べているが、1次元、3次元の地震シミュレータでも同様に、従来の情報に加え、加々速度情報を用いて制御することにより応答性、安定性に優れた地震シミュレータを実現することができる。
ここで、コントローラ703は、各油圧アクチュエータを制御する機能をもっているが、コントローラ703単体として振動台の各観測点における加速度、加々速度情報より制御性能評価関数を計算し、計算結果を出力させる機能を持たせることにより、地震シミュレータ制御性能を評価する評価試験装置としても代用できる。
また、人間が搭乗したかごを車両、あるいは飛行物体の運動を模して外部アクチュエータを用いて動揺させることにより、かご内の人間の運転訓練を行ったり、アミューズメントを与える運動シミュレータにおいても、従来の情報に加え、このかごの加々速度情報を用いて制御することにより応答性、安定性に優れた運動シミュレータを実現することができる。
本発明の第7の実施例を図39により説明する。図39は、加々速度情報を用いたXYステージの構成を示す図である。
本実施例のXYステージは、図39に示すように、あらかじめコントローラ803に入力されている位置入力に忠実に追従するように、ステージ800の動きを制御するものである。ステージ800は、コントローラ3により駆動されるリニアアクチュエータ841、842によってX軸方向の動きを、リニアアクチュエータ843、844によってy軸方向の動きを制御される。リニアアクチュエータ内には変位検出器が具備され、変位情報がコントローラ803に入力される。ステージ800上の複数の加々速度検出装置(図39では、801、802のことをいう)からは、ステージ800のx軸、y軸方向の加々
速度が検出される。これらの加々速度情報は、積分器861、862、863、864により、それぞれステージのx軸、y軸方向の加速度、速度に変換されコントローラに入力される。さらに速度情報に直列に積分器を挿入することによりステージ800の位置情報を得るようにしてもよい。また、コントローラ内部でこれらの積分動作を行ってもよい。これら各自由度に対して4種類の信号は、コントローラ803にフィードバックされ、コントローラ803にあらかじめ入力されている位置入力と比較され、ステージ800は、目標値どおりに位置決めされる。このようなシステム構成により従来のXYステージに加
えて加速度の変化分を情報として取り込めるため、応答性(即応性ともいう)、安定性に優れたXYステージを実現することができる。
また、本実施例では、2次元のXYステージについて述べているが、1次元のリニアステージ、3次元のステージでも同様に、従来の情報に加え、加々速度情報を用いて制御することにより応答性(即応性)、安定性に優れたステージを実現することができる。ここで、コントローラ803は、各油圧アクチュエータを制御する機能をもっているが、コントローラ803単体としてステージの各観測点における加速度、加々速度情報より制御性能評価関数を計算し、計算結果を出力させる機能を持たせることにより、XY−ステージの制御性能を評価する評価試験装置としても代用できる。
本発明の第8の実施例を図40により説明する。図40は、加々速度情報を用いた制振装置つきビルの構成を示す図である。
図38に示すように、ビルの適当なフロアーには、油圧アクチュエータ903とアクティブマス904が具備されている。油圧アクチュエータ903はビルに固定されており、アクティブマスはビルに対して相対的に可動可能に設置されている。コントローラ902は、積分回路等で構成される信号処理装置を内蔵しており、各フロアに複数個(図40では、911、912、913、914の4個設置した場合を示している。)配置される加々速度検出装置からの情報より従来と同様な加速度、速度、変位情報を算出することができる。コントローラ902は、これらの情報にもとづいてビル全体の振動が小さくなるよ
うに油圧アクチュエータ903の油圧を制御する。加々速度情報を用いることにより、加速度の微妙な変化が検出できるので、従来の制御に比べてより振動低減効果の大きい制振装置を実現することができる。また、アクティブマス904の加々速度情報を検出するような加々速度検出装置(図示せず)を用いて正確にアクティブマス904の運動を制御することにより、さらに振動低減効果の大きい制振装置を実現することができる。
ここで、コントローラ902は、油圧アクチュエータ903を制御する機能をもっているが、コントローラ902単体としてビルの各観測点における加速度、加々速度情報より制御性能評価関数を計算し、計算結果を出力させる機能を持たせることにより、制振装置つきビルの制御性能を評価する評価試験装置としても代用できる。
本発明の第9の実施例を図41により説明する。図41は、加々速度情報を用いたロボットアームのマニピュレータの構成を示す図である。
図41に示すように、マニピュレータ1001は、あらかじめコントローラ1003に入力されている位置入力に忠実に追従するように、マニピュレータ1001の動きを制御するものである。マニピュレータ1001は、コントローラ1003により駆動される関節駆動用DDモータ(Direct Drive モータの略)1041、1042、1043により動きを制御される。各々のDDモータ内にはエンコーダ(図示せず)が具備され、回転角度位置情報がコントローラ1003に入力される。マニピュレータ手先1011に具備された複数の加々速度検出装置(図41では、1021、1022、1023の
ことをいう)からは、マニピュレータ手先1011の座標系におけるx'軸、y'軸、z'軸方向の加々速度が検出される。コントローラ1003は、積分回路等で構成される信号処理装置を内蔵しており、加々速度検出装置からの情報より加速度、速度、変位情報を算出することができる。
これら4種類の信号は、コントローラ1003にフィードバックされ、コントローラ1003にあらかじめ入力されている位置、速度、加速度入力と比較され、マニピュレータ1001は、目標値どおりに位置決めされる。このようなシステム構成により従来のマニピュレータに加えて加速度の変化分を情報として取り込めるため、応答性(即応性)、安定性に優れたマニピュレータを実現することができる。なお、図41では、マニピュレータ手先1011に具備された加々速度検出装置は、1021、1022、1023の3つの場合を示しているが、図25に車両の6自由度の加々速度情報の検出方法として示した
ものと同様に、マニピュレータ手先1011の6自由度の運動を検出してさらに高精度の制御を行ってもよい。
ここで、コントローラ1003は、各モータを制御する機能をもっているが、コントローラ1003単体としてマニピュレータ手先の各観測点における加速度、加々速度情報より制御性能評価関数を計算し、計算結果を出力させる機能を持たせることにより、マニピュレータ制御性能を評価する評価試験装置としても代用できる。
本発明の第10の実施例を図42、図43により説明する。図42、図43は、それぞれ加々速度情報を用いた航空機の構成を示す図である。
図42、図43に示すように、機体1101には、複数の加々速度検出装置(図42、図43では1121、1122、1123のことをいう)が具備され、機体の前後、上下、横方向の加々速度情報が検出できるようになっている。また、主翼1142にも主翼の捩れや曲げモーメントを検出するための加々速度検出装置1124、1125が具備されている。コントローラ1103は、積分回路等で構成される信号処理装置を内蔵しており、機体に配置される各加々速度検出装置からの情報より加速度、速度、変位情報を算出することができる。加々速度情報を用いることにより、機体に加わる微妙な力の変化を加速
度の微妙な変化として検出できる。コントローラ1103は、これらの情報にもとづいて水平カナード1141、フラッペロン1142、垂直カナード1143、水平スタビライザ1144、垂直スタビライザ1145、さらには、エンジン(図示せず)の出力を制御する。これにより、機体の6自由度を独立にコントロールし、姿勢制御と飛行経路が完全に分離した飛行ができ、従来のCCV(Control Configured Vehicleの略)をさらに高機能化できる。例えば高精度な直接力制御(direct force controlともいう)、首振り制御(airplane pointing controlともいう)、遷移制御(airplane translation controlともいう)等が可能となる。
また、主翼1142にも主翼1142の捩れや曲げモーメントを検出するための加々速度検出装置が具備されているので、この信号に基づき舵面を駆動してフラッタ減少のダンピングを強くすることにより機体構造に重大な影響を与える臨界フラッタモードを制御によって人工的に減少させてフラッタを防止することもできる。
本発明の第11の実施例を図44、図45により説明する。図44は、角加々速度センサの全体構成を示す図、角加速度が作用した場合の回転振子の釣合いを示す図である。
図44、図45に示されるように本実施例の角加々速度センサは、回転振子1201と、回転振子1201に固定されたコイル1202と、可動電極1204と、ケーシング1200と、ケーシング1200に固定されたマグネット1203と、固定電極1205と、振子の釣合位置からの変位を検出する振子変位検出器1206とサーボアンプ1207と、読み取り抵抗1208で構成されている。角加々速度情報は、図44に示すように、コイル1202の端子電圧として取り出す。
振子1201は、図44、図45の紙面に垂直な軸回りに回転できる(この方向を以下では、センサ感度方向という。)。また、振子1201の両側に配置された可動電極1204と、ケーシング1200に固定されている固定電極1205とは、2組の平板コンデンサを形成している。可動電極1204と固定電極1205とで形成されている2組のコンデンサの静電容量の差ΔCを振子変位検出器1206で検出することにより振子1201の変位が検出できる。
また、振子1201には、コイル1202が配置されており、このコイル1202に電流が流れると磁束が発生し、ケーシング1200に固定されたマグネット1203による磁界によりトルクを受ける。したがって、サーボアンプ7により振子変位検出器1206で検出し、ΔC=0、即ち上下の空隙の大きさが等しくなるように、コイル1202に流れる電流をフィードバック制御することにより、慣性力によるモーメントにかかわらず振子1201の位置を釣合いの位置に止めておくことができる。
ここで、本発明の角加々速度センサが、ある回転運動をしている物体に固定されている場合を考える。図45に示すように、時刻tにおいて反時計回りにセンサ全体に角加速度β(t)が作用したとすれば、慣性質量Iの回転振子1201には数式31で表される慣性力によるモーメントが右向きに働く。
回転振子1201について運動方程式を考えると数式32のようになる。
ここで、Jは回転振子1の慣性質量、θ(t)は時刻tにおける回転振子1201の釣
合位置からの変位角、W(t)は回転振子1201に働く慣性力によるモーメント、w(t)は位置フィードバックによる制御力である。制御力w(t)は、コイル1203に流れる電流I(t)に比例するので数式33、数式34が成り立つ。
ここで、φは電磁鎖交係数、rはコイル1203の半径、Bはマグネット1203の磁束密度、Nはコイル1202の巻き数で与えられる。
時々刻々変動するW(t)に対して、回転振子1が釣合位置にあるように制御力w(t)が追従すれば、数式32の左辺はゼロとなり、結局数式35が成立する。
したがって、センサ全体に働く角加速度は、数式36のようになり、コイル1203を流れる電流より検出できる。
ここで、センサ全体に働く角加々速度をγ(t)とすると、数式37となる。
いま、図のようにコイル3に流れる電流について回路方程式をたてると、数式38となる。
ここで、Lはコイルのインダクタンスである。従ってセンサ全体に働く角加々速度γ(t)は数式39となり、コイル1203の両端の端子電圧を検出することにより測定することができる。
本実施例においては、回転振子にコイルが具備され、ケーシングに磁石が具備されている例について言及しているが、回転振子に磁石が具備され、ケーシングにコイルが具備され、あるいは、磁石が永久磁石であっても電磁石であっても、変わらず角加々速度を検出できる。
尚、角加々速度情報は、加々速度情報と同様に、一般の角速度センサに2階のアナログ微分手段(フィルタ)を付加する、あるいは、A/Dコンバータを介してディジタル信号に変換し、ディジタル演算処理によっても得ることができる。また、角加速度センサに1階のアナログ微分手段(フィルタ)を付加する、あるいは、A/Dコンバータを介してディジタル信号に変換し、ディジタル演算処理によっても得ることができる。
従って、ハード構成とコントローラの演算速度、さらには必要とされる検出精度に応じていずれかの方法を用いればよい。また、本発明の他の実施例の中で示した加々速度情報を用いた各種制御に加え、角加々速度情報を用いることにより、さらに高精度の運動制御、運動制御装置が実現されたり、高性能な評価試験装置が実現される。
以上、本発明の各実施例について、加々速度の検出方法、加々速度を用いた一般的な運動モデルに対する運動制御の優位性、加々速度情報を用いた車両、エレベータ、鉄道車両、磁気浮上車両、地震シミュレータ、ステージ、ビル制振システム、ロボットアーム、航空機の運動制御及び運動評価装置、そして、角加々速度センサについて述べてきた。上述したように、従来用いられていなかった物体の運動を記述する新たなる物理量である加々速度あるいは角加々速度が検出可能となり、従来の運動制御で用いていた各種情報に加え、加々速度、角加々速度を運動制御に用いることにより従来の運動制御に対し、さらに高
精度の運動制御が実現される。また、従来の運動評価で用いていた各種情報に加え、加々速度、角加々速度を運動評価に用いることにより、従来の運動評価試験装置に対し、さらに、高性能な運動評価試験装置が実現される。
50…物体、51…加々速度検出装置、52、303、407、204、506、604…コントローラ、53…アクチュエータ、1…振子、2…磁石、3…コイル、40…振子変位検出器、41…可動電極、42…固定電極、5、1207…サーボアンプ、6、1208…読み取り抵抗、13…つぎ手、521、522、523…入力ポート、524…加々速度情報用A/Dコンバータ、525…加速度情報用A/Dコンバータ、526…加速度/加々速度用A/Dコンバータ、527…ディジタル微分演算、54…仮想固定ベース、55…仮想バネ要素、56…仮想ダンパー要素、100、300…車両、101…エンジン系、102…車輪、103…車輪ブレーキ、104、406…ステアリング、ステアリング舵角センサ、106…アクセル、107…ブレーキ、108…後輪操舵用アクチュエータ、111…横方向加々速度検出装置、112…前後方向加々速度検出装置、111a、111b…前後方向、ヨー加々速度検出装置、112a、112b…横方向、ロール加々速度検出装置、111a、111b…上下方向、ピッチ加々速度検出装置、301a、301b…可変サスペンション機構、302a、302b…車体加々速度検出装置、401…エンジン本体、402a、402b…可変エンジンマウント、403、403a…エンジン加々速度検出装置、404a、404b…車体側加々速度検出装置、405…座席、503…失火検出装置、201…かご、202x、202y…エレベータかご加々速度検出装置、203…モータ、205…重り、206…ロープ、501…鉄道車両車体、521、522、523、524…鉄道車両車輪、531、532、533…鉄道車両加々速度検出装置、541、542…枕バネアクチュエータ、543、544、545、546、547、548、549、550…軸バネアクチュエータ、551、552、553、554…軸受、555、556…台車、534…台車加々速度検出装置、535、536…軸受加々速度検出装置、521、522…動輪、523、524…制動輪、503…モータ、504…ブレーキ、505…鉄道車両前後方向加々速度検出装置、601…磁気浮上車両車体、621、622、623、624…磁気浮上車両加々速度検出装置、631、632、633、634…超電動磁石、605…送信用アンテナ、606…地上側コントローラ、671、672…推進案内用地上コイル、673、674…浮上用地上コイル、700…振動台701…振動台のy軸方向の加々速度検出用加々速度検出装置、702…振動台のx軸方向の加々速度検出用加々速度検出装置、703…振動台コントローラ、741、742、743、744…油圧アクチュエータ、705…固定フレーム、761、762、763、764…積分器、800…ステージ、801…ステージy軸方向の加々速度検出用加々速度検出装置、802…ステージのx軸方向加々速度検出用加々速度検出装置、803…振動台コントローラ、841、842、843、844…リニアアクチュエータ、845…固定フレーム、861、862、863、864…積分器、900…ビル、911、912、913、914…ビル加々速度検出装置、902…ビル制振コントローラ、903…油圧アクチュエータ、904…アクティブマス、1001…マニピュレータ、1011…マニピュレータ手先、1021、1022、1023…手先加々速度検出装置、1003…アームコントローラ、1041、1042、1043…関節駆動用DDモータ、1121、1122、1123、1124、1125…航空機機体加々速度検出装置、1103…航空機コントローラ、1141…水平カナード、1142…フラッペロン、1143…垂直カナード、1144…水平スタビライザ、1145…垂直スタビライザ、1200…ケーシング、1201…回転振子、1202…コイル、1203…マグネット、1204…可動電極、1205…固定電極、1206…振り子変位角検出装置。