JP2008001948A - 硬質皮膜 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐摩耗性に優れることは勿論のこと、摩擦発熱による高温発熱が発生しやすい状況下であっても酸化による特性劣化を招くことなく、しかも適度な潤滑性を有する硬質皮膜を提供する。
【解決手段】本発明の硬質皮膜は、基材表面に形成される硬質皮膜であって、相互に異なる2種以上の膜がそれぞれ1層または2層以上で積層されると共に、各層は下記(1)式で示される膜である。
(Al1-a-b-caSibc)(C1-xx)…(1)
但し、0.27≦a≦0.9、0≦b+c≦0.2、0.1≦x≦1.0
[式中の添字は、互いに独立した原子比を示す]
【選択図】なし

Description

本発明は、鍛造加工、プレス成形、押し出し成形等に用いられる金型や、打ち抜きパンチ等の塑性加工用治工具の基材表面に形成される硬質皮膜に関するものである。
上記のような各種塑性加工用治工具を用いた成形加工においては、生産性向上のためにより高速で且つ高面圧下での成形が行なわれており、しかも環境問題の観点からより少ない潤滑剤を使用して加工される傾向にある。こうした状況下では、金型の基材(高速度鋼や冷間、熱間金型鋼等)だけでは、表面の損傷が著しくなるので、窒化等の表面硬化処理を施したり、表面に硬質皮膜を被覆して表面の特性強化を図るのが一般的である。
このうち表面被覆法を適用したものとして、例えば特許文献1には、VC系皮膜を金型母材表面に形成することによって、耐摩耗性を高めることについて開示されており、またCrN系皮膜を適用し得ることも開示されている。一方、特許文献2には、(Al1-xx)(但し、x=0.24〜0.45)の窒化物、炭窒化物および炭酸化物等が切削工具向けの硬質皮膜として有用であることが示されている。
特開2002−371352号公報 特開2005−271106号公報
上記のようなVC系膜では耐酸化性が低く、400〜500℃付近において酸化を開始するので、塑性加工時における被加工材との摩擦に発熱によって、過酷な環境では皮膜の劣化が著しくなるという問題がある。また、Cr系皮膜は、低硬度で潤滑性(被加工材と皮膜との界面での摩擦抵抗)に乏しく、しかも耐食性が高いことから、除膜による再処理が困難である。特に、潤滑性が乏しい皮膜であると、上記のような各種塑性加工用治工具に適用した場合に、接触面での摩擦抵抗が高くなって、治工具への焼付きが発生することがある。一方、(Al1-xx)(但し、x=0.24〜0.45)の窒化物、炭窒化物および炭酸化物からなる硬質皮膜では、高温での耐酸化性は良好であるものの、潤滑性の点で依然として不十分である。
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、耐摩耗性に優れることは勿論のこと、摩擦発熱による高温発熱が発生しやすい状況下であっても酸化による特性劣化を招くことなく、しかも適度な潤滑性を有する硬質皮膜を提供することにある。
上記課題を解決し得た本発明の硬質皮膜は、基材表面に形成される硬質皮膜であって、相互に異なる2種以上の膜がそれぞれ1層または2層以上で積層されると共に、各層は下記(1)式で示される膜である点に要旨を有するものである。
(Al1-a-b-caSibc)(C1-xx)…(1)
但し、0.27≦a≦0.9、0≦b+c≦0.2、0.1≦x≦1.0
[式中の添字は、互いに独立した原子比を示す]
本発明の硬質皮膜においては、相互に異なる膜を積層するに当っては、前記(1)式におけるxの値を相互に異なるようにした2種以上の膜を、それぞれ1層または2層以上で積層するよって構成されたものが例示される。
上記のような本発明の硬質皮膜においては、下記(2)式で示され、且つ膜厚が5μm以上である膜が、基板表面に下地層として形成されたものであることが好ましい形態として挙げられる。また、この下地層として用いられる膜では、その膜を構成する元素Mとして、少なくともCrを含み、且つ元素M中に占めるCrの原子比が0.3以上であることが好ましい。
M(C1-y)…(2)
但し、0≦y≦1.0
[Mは、周期律表第4A族元素、5A族元素、6A族元素、Al、SiおよびBから選択される少なくとも1種の元素を示す;yは原子比を示す]
本発明の硬質皮膜(基材表面に形成される硬質皮膜)としては、下記(3)式で示される膜と、下記(4)式で示される膜が、それぞれ1層または2層以上で積層されるである構成であるものも含み、こうした構成の硬質皮膜であっても上記目的を達成することができる。
(Al1-a-b-caSibc)(C1-xx)…(3)
但し、0.27≦a≦0.9、0≦b+c≦0.2、0.1≦x≦1.0
[式中の添字は、互いに独立した原子比を示す]
M(C1-y)…(4)
但し、0≦y≦1.0
[Mは、周期律表第4A族元素、5A族元素、6A族元素、Al、SiおよびBから選択される少なくとも1種の元素を示す;yは原子比を示す]
また、こうした硬質皮膜の構成を採用する場合であっても、前記(4)で示され、且つ膜厚が5μm以上である膜が、基板表面に下地層として形成されたものであることが好ましく、この下地層として用いられる膜では、その膜を構成する元素Mとして、少なくともCrを含み、且つ元素M中に占めるCrの原子比が0.3以上であることが好ましい。
本発明の硬質皮膜は、所定の式で示されるAlV系膜を積層した構造とすることによって、耐摩耗性に優れることは勿論のこと、摩擦発熱による高温発熱が発生しやすい状況下であっても酸化による特性劣化を招くことなく、しかも適度な潤滑性を有する硬質皮膜が実現でき、こうした硬質皮膜は、鍛造加工、プレス成形、押し出し成形等に用いられる金型や、打ち抜きパンチ等の塑性加工用治工具の基材表面に形成されるものとして極めて有用である。
本発明者らは、耐高温性(耐酸化性)および潤滑性の両特性に優れた硬質皮膜を実現するべく、様々な角度から検討した。その結果、下記(1)式で示されるような膜であって、相互に異なる2種以上の膜を、それぞれ1層または2層以上で積層して積層型の皮膜とすれば、上記目的が見事に達成されることを見出し、本発明を完成した。尚、「相互に異なる2種以上の膜」とは、組成或は成膜条件を変化させることで、皮膜硬度等の等の特性や皮膜構造[結晶配向や性状(柱状、微結晶)]等が異なることを意味する。また、成膜条件とは、例えば成膜時に基板に印加するバイアス電圧、温度或は成膜時のガス圧力等である。
(Al1-a-b-caSibc)(C1-xx)…(1)
但し、0.27≦a≦0.9、0≦b+c≦0.2、0.1≦x≦1.0
[式中の添字は、互いに独立した原子比を示す]
本発明の硬質皮膜では、硬質皮膜を構成する各層が上記(1)式で示されるような組成を有するものである(以下、「AlV系膜」と呼ぶことがある)。こうしたAlV系膜におけるVの効果は、高温酸化環境でV25等の低融点酸化物を形成し、この低融点酸化物は軟質であるため、被加工材と皮膜との界面での摩擦抵抗を低減させて潤滑性を高めることにある。しかしながら、V単独では極めて酸化されやすく、耐酸化性の点で不十分となるので、Alを添加して上記のようなAlV系膜とすると共に、Alの添加量を調整することによって、膜の耐酸化性を制御し、加工条件に応じた特性を付与することができる。
従って、AlV系膜における特性はAl量(若しくはV量)に依存し、Al量が多くなれば耐酸化性がより高くなって高温で使用できるが、V量が相対的に少なくなって潤滑性が低くなる。こうしたことから、膜中におけるVの原子比の下限を0.27(即ち、添字aが0.27以上)とする必要がある。またAl量が少なくなると、膜の耐酸化性が低くなって、皮膜の酸化劣化が著しくなるので、膜中におけるV量の原子比の上限を0.9(即ち、a≦0.9)とする必要がある。V量における好ましい範囲は、原子比で0.4〜0.7(0.4≦a≦0.7)であり、より好ましくは0.5〜0.6(0.5≦a≦0.6)である。
Cは皮膜に潤滑性を付与する作用を発揮するものであるが、C量が増大するほど(即ち、上記(1)式の添字xの値が小さくなるほど)、不安定なAl化合物を形成することから、C量はV添加量と同程度とするのが目安であり、その上限を0.9(即ち、x≧0.1)とした。C量の好ましい上限は原子比で0.7であり(即ち、x≧0.3)であり、より好ましくは0.5以下(即ち、x≧0.5)とするのが良い。Cの添加がない場合(即ち、xの値が1で皮膜が窒化物の場合)、皮膜の潤滑性が若干低下し摩擦抵抗が増加することになるが、用途によっては問題なく使用できる。
本発明の硬質皮膜では、上記(1)式で示されるような皮膜で、相互に異なる2種以上の膜を、それぞれ1層または2層以上で積層した積層型の皮膜であるが、こうした構成を採用することによって、単層の場合と比べて各特性(耐磨耗性、耐酸化性および潤滑性の)でより際立った特性を発揮することができる。即ち、硬度が低い皮膜では、摩擦係数が低く優れた潤滑性が発揮されるが、耐摩耗性が低く、硬度が高い皮膜では耐摩耗性が優れているが潤滑性が低いことから、両者を積層することによって、優れた耐摩耗性と潤滑性を発揮させることができたのである。
こうした観点からすれば、多層型の硬質皮膜を構成する各皮膜の種類は、少なくとも2種以上とすることが必要であるが、余り多くの種の皮膜を形成することは効果が飽和することから、3種程度までとするのが良い。また各層の膜厚は、2nm未満では均一な皮膜(単層皮膜)と特性上の違いがでないことから少なくとも2nm以上とすることが好ましく、より好ましくは5nm以上とするのが良い。但し、各層の膜厚があまり厚くなると積層の効果が小さくなることから、その上限は100nm程度とすることが好ましい。更に、このような積層型皮膜の全体膜厚は、摩耗による長期耐久性を加味すれば、最低でも3000nm程度必要であり、より好ましくは5000nmである。また、全体の膜厚が10000nm(10μm)を超えると、残留応力等により剥離し易くなることから、これ以下であることが好ましい。
ところで、相互に異なる2種以上の膜は、上述のように、組成が相互に異なることによって皮膜硬度等の特性や皮膜構造等が異なることを意味するが、「組成が相互に異なる」とは、上記(1)式におけるVの量(即ち、aの値)を相互に異なるようにしたり、Cの量(即ち、xの値)を相互に異なるようにして組成を異なるようにしたものである。このうち、C量を高めると潤滑性が向上し、C量を減らせば高硬度で耐摩耗性が向上することから、Cの量(即ち、xの値)を相互に異なるようにして形成することにより、潤滑性と耐摩耗性を両立可能であることから好ましい。但し、硬質皮膜を構成する各層は、いずれも上記(1)式で示される組成の範囲内のものである。
本発明の硬質皮膜では、各層を構成する皮膜中にSiおよび/またはBを添加することも有用である[即ち、上記一般式(1)においてb+cが0でないとき]。SiやBを添加すると、AlN系皮膜の結晶粒を微細化でき、硬度が更に向上したものとなる。SiやB添加による結晶粒微細化作用については、その詳細は明らかではないが、結晶粒界にSi−N結合やB−N結合が形成されることによって、結晶粒の成長が抑制されるものと考えられる。SiやBの添加量[上記(1)式における(b+c)]は、好ましくは原子比で0.01以上であるが、より好ましくは0.05以上とするのが良い。但し、SiやBの添加量が過剰になると、AlV系膜の結晶構造が高硬度の立方晶型から、六方晶型に転移して軟質化することになるので、b+cで0.2以下とする必要があり、好ましくは0.10以下とするのが良い。
上記のような硬質皮膜(積層型硬質皮膜)を、鉄系基材(冷間工具鋼、熱間工具鋼、高速度工具鋼等)の表面に形成する場合には、基材表面に析出した炭化物等に起因した基材表面に存在する機械的特性の不均一の影響を受けて皮膜剥離等の損傷が発生することがある。こうした不都合を回避するという観点から、下記(2)式で示されるような膜を、基板表面に下地層(即ち、硬質皮膜と基材との中間層)として形成されたものが好ましい。
M(C1-y)…(2)
但し、0≦y≦1.0
[Mは、周期律表第4A族元素、5A族元素、6A族元素、Al、SiおよびBから選択される少なくとも1種の元素を示す;yは原子比を示す]
上記(2)式において、Mは周期律表第4A族元素、5A族元素、6A族元素(Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W等)、Al、SiおよびBから選択される少なくとも1種の元素であるが、こうした元素の炭化物、窒化物、炭窒化物としては、代表的にはTi(CN)、TiAl(CN)、TiCrAl(CN)、V(CN)、TiSi(CN)、AlCr(CN)等が挙げられる。
下地層として用いられる皮膜は、基材表面に存在する機械的特性の不均一の影響を抑制する上で有効なものであるが、こうした下地層としての機能を発揮させるためには、その膜厚は5μm以上であることが好ましく、より好ましくは7μm以上とするのが良い。この膜厚の上限については、特に限定されるものではないが、50μmを超えるとその効果が飽和する傾向を示すことから、50μm以下とするのが良い。
下地層として用いられる膜は、上記(2)式で示される膜のうち、その膜を構成する元素Mとして、少なくともCrを含み、且つ元素M中に占めるCrの原子比が0.3以上であるもの(炭化物、窒化物、炭窒化物)が好ましい。特に、Crを原子比で0.3以上含むような炭化物、窒化物、炭窒化物では、鉄系基材との密着性に優れたものとなる。即ち、Crの原子比が0.3未満となるような膜では、鉄系基材との密着性が低下すると共に、皮膜が高硬度化し過ぎて残留応力が高くなって、膜厚が5μm以上の皮膜形成が困難となる。
尚、元素M中に占めるCrの原子比が0.3以上であるもののうち、例えばCrNは本来耐食性に優れる物質であることから、湿式法による除膜が困難になる。こうした事態が予想される場合には、Crを原子比で0.3以上含む膜に更にAlやW等の元素を添加することによって、除膜を容易に行なうこともできるようになる。こうした作用を発揮させるためには、元素M(AlやW)の添加量は原子比で0.05以上であることが好ましく、より好ましくは0.1以上である。
本発明の硬質皮膜としては、前記(3)式で示される膜[実質的に前記(1)式で示された膜と同じ]と、前記(4)式で示される膜[実質的に前記(2)式で示された膜と同じ]が、それぞれ1層または2層以上で積層された構成であるものも有用である。こうした積層型硬質皮膜であっても、使用条件に応じて潤滑性若しくは耐酸化性を選択的に付与することができ、その結果として単層の硬質皮膜に比べて長寿命化を実現できるものとなる。こうした構成の積層型硬質皮膜において、前記(4)式で示される膜については、基本的には下地層として適用する組成のものが挙げられるが、高温下における耐熱性(耐酸化性)を優先的する場合には、元素Mに対する原子比で0.4以上のAlを含有するTiAl(CN)皮膜やTiCr(CN)皮膜や、元素Mに対する原子比で0.03以上のSiを含有するTiAlSi(CN)皮膜やTiSi(CN)皮膜であることが好ましい。また潤滑性を優先する場合には、V,W,Moの1種以上を元素Mに対する原子比で0.2以上含有する炭化物、窒化物、炭窒化物であることが好ましい。
こうした構成の硬質皮膜を構成する場合においても、各層の膜厚は、均一な皮膜(単層皮膜)と特性上の違いを出すという観点から、2nm以上であることが好ましく、より好ましくは5nm以上とするのが良い。また、こうした硬質皮膜を構成する場合においても、前記(4)式で示されるような膜を、基板表面に下地層(即ち、硬質皮膜と基材との中間層)として形成されたものが好ましい。また全体の膜厚の好ましい範囲についても、前記と同様である。
本発明の各種硬質皮膜は、物理的気相成長法(PVD法)や化学的気相成長法(CVD法)等公知の方法によって製造できる。皮膜密着性の観点からすれば、PVD法を用いて製造することが好ましい。具体的には、スパッタリング法や真空蒸着法、イオンプレーティング法等が挙げられるが、好ましくは気相コーティング法[スパッタリング法やイオンプレーティング法(特に、アークイオンプレーティング法)]を採用することが推奨される。
図1は、本発明の硬質皮膜を製造するためのアークイオンプレーティング装置(AIP装置)の構成例を示す概略説明図である。図1に示した装置では、真空チャンバー1内に回転盤2が配置されており、この回転盤2に4個の回転テーブル3が対称に取り付けられる。各回転テーブル3には、被処理体(基材)5が取り付けられている。回転盤2の周囲には、複数(図1では4つ)のアーク蒸発源6a,6b,6c,6d(カソード側)、およびヒータ7a,7b,7c,7dが配置されている。また各アーク蒸発源6a,6b,6c,6dには、夫々を蒸発させるためのアーク電源8a,8b,8c,8dが配置されている。真空チャンバー1内は、真空ポンプPによって、その内部が真空にされると共に、各種成膜用ガスがマスフローコントローラー9a,9b,9c,9dから導入されるように構成される。
そして、各アーク蒸発源6a,6b,6c,6dに、各種組成のターゲットを用い、これらを成膜用ガス(N源含有ガス、C源含有ガスおよびN源含有ガス、またはこれらを不活性ガスで希釈したもの等)中で蒸発させながら、回転盤2および回転テーブル3を回転させれば、被処理体5の表面に硬質皮膜を形成することができる。尚、図中10は、基材5に負の電圧(バイアス電圧)を印加するために備えられたバイアス電源である。
また、硬質皮膜を積層型にするには、(1)異なる複数のアーク蒸発源6a,6b,6c,6dを用いることによって実現できるが、(2)被処理体5に印加する負の電圧(バイアス電圧)を周期的に変化させたり、(3)雰囲気ガスを変化させることによっても実現できる。特に前記(1)式におけるxの値が相互に異なる2種以上の膜を積層するためには、雰囲気ガス中のC源含有ガスの割合を周期的に変化させることになる。
積層型硬質皮膜の周期(積層の繰り返し周期)および各層の厚さを制御するには、上記(1)では回転盤および回転テーブルの回転数および各々の蒸発源の投入電力(蒸発量に比例)、(2)ではバイアス電圧の印加時間、(3)では雰囲気ガスの導入時間、等によって実現できる。
本発明の硬質皮膜を形成する基材としては、前述した冷間工具鋼、熱間工具鋼、高速度工具鋼(例えば、SKH51やSKD11、SKD61等)が代表的なものとして挙げられるが、超硬合金等にも適用できるものである。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
[実施例1]
前記図1に示した装置(AIP装置)のカソードに、各種合金若しくは金属からなるターゲットを配置し、回転する回転盤2に被処理体5として、超合金製チップおよび摺動試験用のディスク(SKD11製:φ55mm×5mm厚み、片面鏡面研磨)を取り付け、チャンバー1内を真空状態にした。その後チャンバー1内に配置されたヒーター7a〜7dで被処理体5の温度を500℃に加熱し、窒素ガス(C含有膜の場合には、N2−CH4の混合ガス)を導入してチャンバー1内の圧力を2.66Paにして、アーク放電を開始し、基材(被処理体5)の表面に下記表1に示した各種積層型硬質皮膜(A層およびB層を積層単位とする硬質皮膜)を膜厚約5μm(5000nm)程度に形成した。このとき、積層型の硬質皮膜にする手段については、前述した(1)〜(3)のいずれかによって制御を行った。
得られた硬質皮膜について、膜中の金属成分組成をEPMAによって測定すると共に、膜の結晶構造、ビッカース硬度(荷重:0.25N、保持時間:15秒)を調査した。また、下記の条件によって、皮膜の高温摺動特性について評価した。
[皮膜の高温摺動特性評価条件]
試験方法 :ベーンオンディスク
ディスク :上記によって得られた各種皮膜をコーティングしたディスク
ベーン :SKD11 先端半径10R 硬度HRC52
垂直荷重 :400N
摺動速度 :0.1m/s
雰囲気温度:500℃
摺動距離 :500m
評価項目 :摩擦係数、ディスク、ベーンの摩耗量
尚、ベーンの摩耗量が2本のベーンの摩耗による重量減少の平均値(mg)とし、ディスク側の摩耗量は、ディスクに形成された摺動痕の摩擦断面(厚さ方向断面)を各々直角方向に4箇所測定し、摺動痕の周囲長さを乗じて摩耗体積とした。
これらの結果を、一括して下記表1に示す。尚、試料No.3のものは、A層がバイアス電圧:20Vで結晶構造が六方晶であり、B層がバイアス電圧:80Vで結晶構造が立方晶のものであり、試料No.4のものは、A層がバイアス電圧:80Vで結晶構造が立方晶であり、B層がバイアス電圧:20Vで結晶構造が六方晶のものであるが、他の試料No.のものは、いずれも(A層およびB層)バイアス電圧が80Vで結晶構造が立方晶のものである。
Figure 2008001948
この結果から明らかなように、本発明で規定する要件を満足するもの(試料No.3〜8、10〜26)では、いずれも硬度が高く、摩擦係数が小さく、摩耗量も少なくなっていることが分かる。
[実施例2]
前記図1に示した装置(AIP装置)のカソードに、各種合金若しくは金属からなるターゲットを配置し、回転する回転盤2に被処理体5として、超合金製チップおよび摺動試験用のディスク(SKD11製:φ55mm×5mm厚み、片面鏡面研磨)と取り付け、チャンバー1内を真空状態にした。その後チャンバー1内に配置されたヒーター(図示せず)で被処理体5の温度を500℃に加熱し、窒素ガス(C含有膜の場合には、N2−CH4の混合ガス)を導入してチャンバー内の部圧力を2.66Paにして、アーク放電を開始し、基材(被処理体5)の表面に下記表2に示すようなCr含有下地層を形成し、その上に各種の硬質皮膜(前記表1に示した試料No.3〜23)を形成した。
得られた硬質皮膜について、実施例1と同様にして、金属成分組成を測定すると共に、膜の結晶構造、ビッカース硬度(荷重:0.25N、保持時間:15秒)を調査した。また、下記の条件によって、皮膜の高温摺動特性および皮膜密着性(基材との密着性)について評価した。
[皮膜の高温摺動特性評価条件]
試験方法 :ベーンオンディスク
ディスク :上記によって得られた各種皮膜をコーティングしたディスク
ベーン :SKD11 先端半径10R 硬度HRC52
垂直荷重 :500N
摺動速度 :0.1m/s
雰囲気温度:400℃
摺動距離 :1000m
評価項目 :摩擦係数、ディスク、ベーンの摩耗量
[皮膜の密着性評価条件]
試験方法 :スクラッチ試験
圧子 :ダイヤモンド先端半径:200μmR
荷重 :最大200N
荷重増加速速度:100N/分
スクラッチ速度:10mm/分
評価項目 :光学顕微鏡(200倍)で確認できる皮膜隔離点の垂直荷重(N)が
高い方が、皮膜の密着性が良好であることを示している。
これらの結果を、一括して下記表2に示す。尚、下記表2には、比較のために、前記表1の試料No.1、2のもの(下地層なし)、硬質皮膜としてVCを形成したもの(試料No.27)、硬質皮膜として(Al0.60.4)N膜を形成したもの(試料No.49、50)についての評価結果についても示した。
Figure 2008001948
この結果から明らかなように、本発明で規定する要件を満足するもの(試料No.29〜46)のものでは、いずれも硬度が高く、摩擦係数が小さく、摩耗量も少なくなっており、しかも基材との密着性も良好(皮膜剥離点垂直荷重が大きい)となってことが分かる。
本発明の硬質皮膜を製造するためのアークイオンプレーティング装置(AIP装置)の構成例を示す概略説明図である。
符号の説明
1 真空チャンバー
2 回転盤
3 回転テーブル
5 被処理体(基材)
6a,6b,6c,6d アーク蒸発源
7a,7b,7c,7d ヒータ
8a,8b,8c,8d アーク電源
9a,9b,9c,9d マスフローコントローラー
10 バイアス電源

Claims (7)

  1. 基材表面に形成される硬質皮膜であって、相互に異なる2種以上の膜がそれぞれ1層または2層以上で積層されると共に、各層は下記(1)式で示される膜であることを特徴とする硬質皮膜。
    (Al1-a-b-caSibc)(C1-xx)…(1)
    但し、0.27≦a≦0.9、0≦b+c≦0.2、0.1≦x≦1.0
    [式中の添字は、互いに独立した原子比を示す]
  2. 前記(1)式におけるxの値が相互に異なる2種以上の膜が、それぞれ1層または2層以上で積層されたものである請求項1に記載の硬質被膜。
  3. 下記(2)式で示され、且つ膜厚が5μm以上である膜が、基板表面に下地層として形成されたものである請求項1または2に記載の硬質皮膜。
    M(C1-y)…(2)
    但し、0≦y≦1.0
    [Mは、周期律表第4A族元素、5A族元素、6A族元素、Al、SiおよびBから選択される少なくとも1種の元素を示す;yは原子比を示す]
  4. 前記Mとして少なくともCrを含み、且つ元素M中に占めるCrの原子比が0.3以上である請求項3に記載の硬質皮膜。
  5. 基材表面に形成される硬質皮膜であって、下記(3)式で示される膜と、下記(4)式で示される膜が、それぞれ1層または2層以上で積層されたものであることを特徴とする硬質皮膜。
    (Al1-a-b-caSibc)(C1-xx)…(3)
    但し、0.27≦a≦0.9、0≦b+c≦0.2、0.1≦x≦1.0
    [式中の添字は、互いに独立した原子比を示す]
    M(C1-y)…(4)
    但し、0≦y≦1.0
    [Mは、周期律表第4A族元素、5A族元素、6A族元素、Al、SiおよびBから選択される少なくとも1種の元素を示す;yは原子比を示す]
  6. 前記(4)式で示され、且つ膜厚が5μm以上である膜が、基板表面に下地層として形成されたものである請求項5に記載の硬質皮膜。
  7. 前記下地層中のMとして少なくともCrを含み、且つ元素M中に占めるCrの原子比が0.3以上である請求項6に記載の硬質皮膜。
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