JP2017179580A - 硬質皮膜及び硬質皮膜被覆部材 - Google Patents

硬質皮膜及び硬質皮膜被覆部材 Download PDF

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Abstract

【課題】耐摩耗性がより改善された硬質皮膜及び当該硬質皮膜が基材上に形成された硬質皮膜被覆部材を提供する。【解決手段】硬質皮膜3は、基材2の表面に形成される硬質皮膜であって、(TimSi1−m)(N1−a−bCaBb)[0.7≦m<1、0<1−a−b≦1]からなる第1皮膜層11と、(AlxCryM1−x−y)(N1−a−bCaBb)[0.7<x≦0.8、0<y、0<1−a−b≦1、MはTi、V、Zr、Nb、Mo、Ta、W、Y及びランタノイド(Pmを除く)からなる群より選択される少なくとも一種の金属元素]からなる第2皮膜層12と、が交互に積層されたものである。【選択図】図2

Description

本発明は、硬質皮膜及び硬質皮膜被覆部材に関する。
従来、切削工具や金型など、硬質物との擦れや摩耗が発生する治工具において、耐擦れ性や耐摩耗性を向上させるため、基材の表面にセラミックス材料などからなる硬質皮膜を形成することが知られている。例えば下記特許文献1には、AlCrNとTiSiNとが交互に形成された工作物が開示されている。また下記特許文献2には、TiNやAlNなどを含む超微粒積層膜を工具の基材の表面上に形成したものが開示されている。また下記特許文献3には、AlCrNとAlTiNとが工具基体の表面上において交互に形成されたものが開示されている。
特許第5648078号公報 特開平8−134629号公報 特開2014−87858号公報
上記特許文献1〜3に開示される従来の硬質皮膜では、耐摩耗性をある程度改善することはできるが、近年の過酷な使用環境下においては十分な耐摩耗性を発揮することが困難である。上記特許文献1の皮膜は耐熱性が不足するため摩耗量が多くなり、上記特許文献2の皮膜は六方晶主体の結晶構造に起因して硬度が低いため摩耗量が多くなり、上記特許文献3の皮膜はAlTiNを含むため摩耗抑制の効果が不十分である。従って、近年の過酷な使用環境にも対応できるようにするため、硬質皮膜の耐摩耗性を一層向上させるための改善策が必要である。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、耐摩耗性がより改善された硬質皮膜及び当該硬質皮膜が基材上に形成された硬質皮膜被覆部材を提供することである。
本発明の一局面に係る硬質皮膜は、基材の表面に形成される硬質皮膜である。上記硬質皮膜は、(TiSi1−m)(N1−a−b)[0.7≦m<1、0<1−a−b≦1]からなる第1皮膜層と、(AlCr1−x−y)(N1−a−b)[0.7<x≦0.8、0<y、0<1−a−b≦1、MはTi、V、Zr、Nb、Mo、Ta、W、Y及びランタノイド(Pmを除く)からなる群より選択される少なくとも一種の金属元素]からなる第2皮膜層と、が交互に積層されたものである。
本発明の他局面に係る硬質皮膜被覆部材は、基材の表面に上記硬質皮膜が形成されているものである。
本発明によれば、耐摩耗性がより向上した硬質皮膜及び当該硬質皮膜が基材上に形成された硬質皮膜被覆部材を提供することができる。
本発明の実施形態1におけるドリルの先端構造を示す拡大図である。 本発明の実施形態1における硬質皮膜の構造を示す断面図である。 上記硬質皮膜を成膜するための成膜装置の構造を示す平面図である。 本発明の実施形態2における硬質皮膜の構造を示す断面図である。 本発明の実施形態3における金型の構造を示す断面図である。
(本発明の実施形態の概要)
まず、本発明の実施形態に係る硬質皮膜及び硬質皮膜被覆部材の概要について説明する。
本発明の実施形態に係る硬質皮膜は、基材の表面に形成される硬質皮膜である。上記硬質皮膜は、(TiSi1−m)(N1−a−b)[0.7≦m<1、0<1−a−b≦1]からなる第1皮膜層と、(AlCr1−x−y)(N1−a−b)[0.7<x≦0.8、0<y、0<1−a−b≦1、MはTi、V、Zr、Nb、Mo、Ta、W、Y及びランタノイドからなる群より選択される少なくとも一種の金属元素]からなる第2皮膜層と、が交互に積層されたものである。ランタノイドは、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luの元素の総称であり、本実施形態に係る硬質皮膜では「Pm」は除かれる。
本発明者らは、硬質皮膜の耐摩耗性を改善するため、皮膜の組成範囲について鋭意検討を行った。その結果、(TiSi)(NCB)からなる皮膜層と、(AlCr)(NCB)からなる皮膜層と、を交互積層した硬質皮膜において、Ti及びAlの組成範囲を調整することにより耐摩耗性が著しく向上することを見出し、本発明に想到した。
第1皮膜層において、「m」はTi、Siの合計に対するTiの原子比を示している。第1皮膜層において、「1−m」はTi、Siの合計に対するSiの原子比を示している。第1皮膜層において、「1−a−b」はN、C、Bの合計に対するNの原子比を示している。第1皮膜層において、「a」はN、C、Bの合計に対するCの原子比を示している。第1皮膜層において、「b」はN、C、Bの合計に対するBの原子比を示している。第2皮膜層において、「x」はAl、Cr、元素Mの合計に対するAlの原子比を示している。第2皮膜層において、「y」はAl、Cr、元素Mの合計に対するCrの原子比を示している。第2皮膜層において、「1−x−y」はAl、Cr、元素Mの合計に対する元素Mの原子比を示している。第2皮膜層において、「1−a−b」はN、C、Bの合計に対するNの原子比を示している。第2皮膜層において、「a」はN、C、Bの合計に対するCの原子比を示している。第2皮膜層において、「b」はN、C、Bの合計に対するBの原子比を示している。
上記硬質皮膜では、第2皮膜層におけるAlの組成範囲が0.7<x≦0.8の範囲に調整されている。Alの原子比xを0.7より大きくすることにより、立方晶中に微細な六方晶が生成し、立方晶の粒径が小さくなる。これにより、立方晶の硬度を保ちつつヤング率を下げることができ、皮膜の耐摩耗性を向上させることができる。またAlの原子比xを0.7より大きくすることにより、皮膜の耐酸化性及び耐熱性も向上させることができる。一方、Alの原子比xが0.8を超えると、粗大な六方晶が生成することにより硬度が低下し、皮膜の耐摩耗性が低下する。上記硬質皮膜は、Alの組成範囲を0.7<x≦0.8に調整することにより、従来の硬質皮膜よりも耐摩耗性が著しく向上したものとなっている。Alの組成範囲の上限は、x≦0.78であることが好ましく、x≦0.77であることがより好ましい。第2皮膜層におけるCrの組成範囲は、0<y<0.3の範囲に調整されている。また第2皮膜層におけるAlとCrの合計の原子比の範囲は、x+y≦1となっている。
また上記硬質皮膜では、第1皮膜層におけるTiの組成範囲が0.7≦m<1の範囲に調整されている。これにより、原子比mが0.7未満の場合に比べて皮膜の軟化を抑制することができ、高硬度を維持することができる。Tiの組成範囲の上限は、m<0.98であることが好ましく、m<0.95であることがより好ましい。また皮膜の硬度を高く維持するため、Tiの組成範囲の下限は、0.72≦mであることが好ましく、0.75≦mであることがより好ましい。
また上記硬質皮膜では、第1及び第2皮膜層のいずれもNの組成範囲が0<1−a−b≦1となっており、窒化物を含む高硬度な皮膜層となっているが、必要に応じてC、Bを含んでいてもよい。Cを添加することにより膜内に遊離炭素を形成することができ、摩擦係数をより低減することができる。しかし、Cの添加量が過剰になると皮膜の強度が低下するため、Cは原子比aが0.5未満の範囲で添加されることが好ましい。
またBは、膜中のNと結合することにより固体潤滑材であるBNを形成するため、摩擦係数をより低減することができる。しかし、Bの添加量が過剰になると皮膜が非晶質化することにより硬度が低下する。このため、Bは原子比bが0.1未満の範囲で添加されることが好ましい。
また元素Mは、Ti、V、Zr、Nb、Mo、Ta、W、Y及びランタノイド(Pmを除く)からなる群より選択される少なくとも一種の金属元素であり、これらの元素を第2皮膜層に添加することにより様々な特性を付与することができる。具体的には、Ti及びZrは、結晶構造の安定化に寄与する。Mo及びWは、耐酸化性の向上に寄与する。Vは、高温での潤滑性の向上に寄与する。Ta及びNbは、結晶格子の安定化に寄与する。Y及びランタノイド(Pmを除く)は、密着性の向上と耐酸化性の向上に寄与する。しかし、上記硬質皮膜は元素Mを含むものに限定されず、元素Mを含まなくてもよい(1−x−y=0)。
上記硬質皮膜において、最表層が前記第1皮膜層により構成されていてもよい。また前記基材の表面上に形成される下地層が前記第2皮膜層により構成されていてもよい。
上記構成によれば、密着力が高い(AlCr)(NCB)からなる第2皮膜層を下地層にすることにより硬質皮膜の密着性を確保することができる。また高硬度な(TiSi)(NCB)からなる第1皮膜層を最表層にすることにより、皮膜の耐久性をより向上させることができる。
上記硬質皮膜において、前記最表層と前記下地層との間に交互皮膜層が形成されていてもよい。前記交互皮膜層は、(TiSiAlCr1−s−t−u−w)(N1−a−b)からなる混合層、前記第1皮膜層、前記混合層、及び前記第2皮膜層がこの順に積層された積層単位を含んでいてもよい。前記混合層において、0<s<1、0<t<0.3、0<u<0.8、0<w<0.3及び0<1−a−b≦1の関係式が満たされてもよい。
上記構成によれば、第1皮膜層と第2皮膜層との間に混合層を形成することにより、第1皮膜層と第2皮膜層との密着性をより向上させることができ、皮膜の耐久性をより向上させることができる。
上記硬質皮膜において、前記混合層の厚みが40nm以下であってもよい。
混合層の厚みが40nmを超えると、混合層内において亀裂が進展し易くなり、耐摩耗性を悪化させる虞がある。このため、混合層の厚みは40nm以下であることが好ましい。混合層の厚みの上限は、35nm以下であることがより好ましく、30nm以下であることがさらに好ましい。また混合層の厚みの下限は、5nm以上であることがより好ましく、10nm以上であることがさらに好ましい。
上記硬質皮膜では、前記交互皮膜層における前記第1皮膜層の厚みが5nm以上350nm以下であってもよい。
交互皮膜層における第1皮膜層の厚みが5nm未満になると擦れによる摩耗が早くなり、一方で350nmを超えるとチッピング(欠け)が起こり易くなる。このため、交互皮膜層における第1皮膜層の厚みは5nm以上350nm以下であることが好ましい。交互皮膜層における第1皮膜層の厚みの上限は、300nm以下であることがより好ましく、250nm以下であることがさらに好ましい。また交互皮膜層における第1皮膜層の厚みの下限は、10nm以上であることがより好ましく、50nm以上であることがさらに好ましい。
上記硬質皮膜において、前記交互皮膜層における前記第2皮膜層の厚みが50nm以上350nm以下であってもよい。
交互皮膜層における第2皮膜層の厚みが50nm未満になると摩耗が早くなり、一方で350nmを超えると擦れに対する摩耗に弱くなる。このため、交互皮膜層における第2皮膜層の厚みは50nm以上350nm以下であることが好ましい。交互皮膜層における第2皮膜層の厚みの上限は、325nm以下であることがより好ましく、300nm以下であることがさらに好ましい。また交互皮膜層における第2皮膜層の厚みの下限は、60nm以上であることがより好ましく、75nm以上であることがさらに好ましい。
上記硬質皮膜において、前記第2皮膜層におけるMの原子比が0<1−x−y<0.2であってもよい。
上述の通り、元素Mは硬質皮膜に様々な特性を付与するものであるが、その添加量が過剰になると結晶格子中のCrが減少し、CrNの格子構造を保つことが困難になる。このため、元素Mの組成範囲は0<1−x−y<0.2であることが好ましい。また元素Mの組成範囲の上限は、1−x−y<0.17であることがより好ましく、1−x−y<0.15であることがさらに好ましい。
本発明の実施形態に係る硬質皮膜被覆部材は、基材の表面に上記硬質皮膜が形成されているものである。
上記硬質皮膜被覆部材によれば、耐摩耗性に優れた上記硬質皮膜を基材の表面上に形成することにより、耐久性をより向上させることができる。
(本発明の実施形態の詳細)
次に、本実施形態に係る硬質皮膜及び硬質皮膜被覆部材の詳細について、図面に基づいて詳細に説明する。
<実施形態1>
[硬質皮膜被覆部材、硬質皮膜の構造]
まず、本発明の実施形態1に係る硬質皮膜被覆部材としてのドリル1について、図1及び図2を参照して説明する。図1は、ドリル1の先端部の構造を示している。図2は、ドリル1の任意の部分における断面構造を示している。ドリル1は、被削材の穴開け加工に用いられる切削工具であって、先端部1Aに切れ刃が形成されている。図2に示すように、ドリル1は、超硬合金などからなる基材2を有し、当該基材2の表面において耐摩耗性を向上させるための硬質皮膜3が形成されている。以下、硬質皮膜3の構造及び組成について詳細に説明する。
硬質皮膜3は、基材2の表面上に形成された下地層10と、最表層30と、下地層10と最表層30との間に形成された交互皮膜層20と、を有する。硬質皮膜3は、(TiSi1−m)(N1−a−b)からなる第1皮膜層11と、(AlCr1−x−y)(N1−a−b)からなる第2皮膜層12と、が交互に積層されたものとなっている。
下地層10は、基材2との密着性を向上させるための皮膜層であり、(AlCr1−x−y)(N1−a−b)からなる第2皮膜層12により構成されている。下地層10の厚みT2が小さくなり過ぎると十分な密着性が得られず、一方で厚みT2が大きくなり過ぎるとチッピングが起こり易くなる。このため、下地層10の厚みT2の上限は、4μm以下であることが好ましく、3.5μm以下であることがより好ましく、3μm以下であることがさらに好ましい。また下地層10の厚みT2の下限は、50nm以上であることが好ましく、100nm以上であることがより好ましく、200nm以上であることがさらに好ましい。なお、基材2と下地層10との間にさらに別の皮膜を形成することにより、基材2に対する密着性をさらに向上させてもよい。この皮膜は、例えばTiAlN、CrN、Cr又はTiなどからなるものでもよい。
最表層30は、硬質皮膜3の耐擦れ摩耗性を向上させるための皮膜層であり、(TiSi1−m)(N1−a−b)からなる第1皮膜層11により構成されている。最表層30の厚みT3が小さくなり過ぎると十分な耐擦れ摩耗性が得られず、一方で厚みT3が大きくなり過ぎると内部応力により剥離が生じ易くなる。このため、最表層30の厚みT3の上限は、2μm以下であることが好ましく、1.5μm以下であることがより好ましく、1μm以下であることがさらに好ましい。また最表層30の厚みT3の下限は、10nm以上であることが好ましく、15nm以上であることがより好ましい。なお、最表層30の機能を確保可能な限度において、最表層30の上側にさらに別の皮膜層を形成してもよい。例えば、皮膜を色付けするため、TiOなどからなる皮膜層を形成してもよい。
交互皮膜層20は、積層単位20Aを含み、当該積層単位20Aが所定回数だけ繰り返されることにより構成されている。一つの積層単位20Aは、TiSiAlCr1−s−t−u−w)(N1−a−b)からなる混合層13、第1皮膜層11、混合層13及び第2皮膜層12の4つの層がこの順に積層されることにより構成されている。混合層13により、第1皮膜層11と第2皮膜層12との間の高い密着性が確保されている。
交互皮膜層20における第1皮膜層11の厚みT11は、5nm以上350nm以下であり、最表層30の厚みT3よりも小さくなっている。第1皮膜層11の厚みT11が5nm未満になると擦れによる摩耗が早くなり、一方で350nmを超えるとチッピングが起こり易くなる。このため、交互皮膜層20における第1皮膜層11の厚みT11の上限は、350nm以下であり、300nm以下であることが好ましく、250nm以下であることがより好ましい。また交互皮膜層20における第1皮膜層11の厚みT11の下限は、5nm以上であり、10nm以上であることが好ましく、50nm以上であることがより好ましい。
また交互皮膜層20における第2皮膜層12の厚みT12は、50nm以上350nm以下となっている。第2皮膜層12の厚みT12が50nm未満になると摩耗が早くなり、一方で350nmを超えると擦れに対する摩耗に弱くなる。このため、交互皮膜層20における第2皮膜層12の厚みT12の上限は、350nm以下であり、325nm以下であることが好ましく、300nm以下であることがより好ましい。また交互皮膜層20における第2皮膜層12の厚みT12の下限は、50nm以上であり、60nm以上であることが好ましく、75nm以上であることがより好ましい。
また混合層13の厚みT13は、40nm以下となっている。混合層13の厚みT13が40nmを超えると、混合層13の内部において亀裂が進展し易くなり、耐摩耗性を悪化させる虞がある。このため、混合層13の厚みT13の上限は40nm以下であり、35nm以下であることが好ましく、30nm以下であることがより好ましい。また混合層13の厚みT13の下限は、5nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましい。
交互皮膜層20における積層単位20Aの繰り返し数は、硬質皮膜3全体の厚みと各皮膜層11〜13の厚みにより決定される。繰り返し数が0である場合には混合層13による密着性向上の効果が得られず、一方で繰り返し数が多すぎると必然的に全体の厚みが大きくなり、膜内の応力によってチッピングが起こり易くなる。このため、積層単位20Aの繰り返し数の上限は、150以下であることが好ましく、120以下であることがより好ましく、100以下であることがさらに好ましい。また積層単位20Aの繰り返し数の下限は、1以上であることが好ましい。
次に、第1及び第2皮膜層11,12及び混合層13の各組成について詳細に説明する。第1皮膜層11において、Tiの組成範囲は0.7≦m<1の範囲に調整されている。これにより、原子比mが0.7未満の場合に比べて第1皮膜層11の軟化を抑制することができ、第1皮膜層11の硬度を高く維持することができる。このように第1皮膜層11の軟化を抑制する観点から、Tiの組成範囲の上限は、m<0.98であることが好ましく、m<0.95であることがより好ましい。またTiの組成範囲の下限は、0.72≦mであることが好ましく、0.75≦mであることがより好ましい。
第2皮膜層12において、Alの組成範囲は0.7<x≦0.8の範囲に調整されている。またCrの組成範囲は、0<y<0.3の範囲に調整されている。Alの原子比xを0.7より大きくすることにより、第2皮膜層12における立方晶中に微細な六方晶が生成し、立方晶の粒径が小さくなる。これにより、立方晶の硬度を保ちつつヤング率を下げることができ、第2皮膜層12の耐摩耗性を向上させることができる。またAlの原子比xを0.7より大きくすることにより、第2皮膜層12の耐酸化性及び耐熱性も向上させることができる。一方、Alの原子比xが0.8を超えると、粗大な六方晶が生成することにより硬度が低下し、第2皮膜層12の耐摩耗性が低下する。本実施形態に係る硬質皮膜3は、Alの組成範囲を0.7<x≦0.8に調整することにより、耐摩耗性が著しく向上したものとなっている。このように耐摩耗性を向上させる観点から、Alの組成範囲の上限は、x≦0.78であることが好ましく、x≦0.77であることがより好ましい。
また第2皮膜層12において、元素Mは、Ti、V、Zr、Nb、Mo、Ta、W、Y及びランタノイド(Pmを除く)からなる群より選択される少なくとも一種の金属元素である。元素MとしてTi、Zrを添加することにより結晶構造が安定化する。元素MとしてMo、Wを添加することにより皮膜の耐酸化性が向上する。元素MとしてVを添加することにより高温での潤滑性が向上する。元素MとしてTa、Nbを添加することにより結晶格子を安定化させることができる。元素MとしてY及びランタノイド(Pmを除く)を添加することにより、結晶粒を微細化して第1皮膜層11との密着性を高めることが可能になり、さらに耐酸化性を向上させることもできる。元素Mは、上記群より選択される一種の金属元素であってもよいし、複数種の金属元素であってもよい。
また第2皮膜層12における元素Mの組成範囲は、0<1−x−y<0.2に調整されている。元素Mの原子比が0.2を超えると、第2皮膜層12において結晶格子中のCrが減少し、CrNの格子構造を保つことが困難になる。このため、元素Mの組成範囲の上限は、1−x−y<0.2であることが好ましく、1−x−y<0.17であることがより好ましく、1−x−y<0.15であることがさらに好ましい。また元素Mを含む場合に限定されず、元素Mを含まなくてもよい(1−x−y=0)。
第1及び第2皮膜層11,12において、Nの組成範囲は0<1−a−b≦1となっている。また窒化物主体の皮膜にするため、第1及び第2皮膜層11,12におけるNの組成範囲の下限は、0.5≦1−a−bであることが好ましい。
また第1及び第2皮膜層11,12は、C、Bをさらに含んでいてもよい。Cを添加することにより膜内に遊離炭素を形成することができ、摩擦係数をより低減することができる。しかし、Cの添加量が過剰になると皮膜の強度が低下するため、Cは原子比aが0.5未満の範囲で添加されることが好ましい。またBは、膜中のNと結合することにより固体潤滑材であるBNを形成するため、摩擦係数をより低減することができる。しかし、Bの添加量が過剰になると皮膜が非晶質化することにより硬度が低下する。このため、Bは原子比bが0.1未満の範囲で添加されることが好ましい。なお、C、Bは添加されなくてもよい。
混合層13において、ターゲットに含まれる元素が全て存在する。各々の元素の上限は、第1皮膜層11及び第2皮膜層12と同様である。具体的には、混合層13の組成式(TiSiAlCr1−s−t−u−w)(N1−a−b)において、0<s<1、0<t<0.3、0<u<0.8、0<w<0.3の関係式が成立する。これにより、混合層13の硬度が高く維持されると共に、耐摩耗性も高くなっている。また混合層13において、Nの組成範囲は第1及び第2皮膜層11,12と同様に0<1−a−b≦1となっている。またC,Bが第1及び第2皮膜層11,12と同じ組成範囲で添加されてもよいし、元素Mが第2皮膜層12と同じ組成範囲で添加されてもよい。またC,B及び元素Mは、添加されなくてもよい。
[硬質皮膜の成膜方法]
次に、基材2上に硬質皮膜3を形成する方法について説明する。図3は、硬質皮膜3の成膜に使用される成膜装置6の構成を示している。まず成膜装置6の構成について、図3を参照して説明する。
成膜装置6は、チャンバー21と、複数(2つ)のアーク電源22及びスパッタ電源23と、ステージ24と、バイアス電源25と、複数(4つ)のヒータ26と、放電用直流電源27と、フィラメント加熱用交流電源28と、を有する。チャンバー21には、真空排気するためのガス排気口21Aと、チャンバー21内にガスを供給するためのガス供給口21Bと、が設けられている。アーク電源22には、成膜用のターゲットが配置されるアーク蒸発源22Aが接続されている。スパッタ電源23には、成膜用のターゲットが配置されるスパッタ蒸発源23Aが接続されている。ステージ24は、回転可能に構成され、被成膜物である基材2を支持するための支持面を有する。バイアス電源25は、ステージ24を通して基材2にバイアスを印加する。
次に、基材2上への硬質皮膜3の成膜プロセスについて説明する。まず、基材2がステージ24上にセットされる。一方、TiSiターゲット及びAlCrMターゲットがアーク蒸発源22Aにそれぞれセットされる。これらのターゲットは、第1及び第2皮膜層11,12及び混合層13の組成が上記範囲になるように各金属の成分範囲が調整されている。
次に、ガス排気口21Aから排気されることでチャンバー21内が所定の圧力まで減圧される。次に、ガス供給口21Bからアルゴン(Ar)ガスがチャンバー21内に導入され、ヒータ26により基材2が所定の温度にまで加熱される。そして、基材2の表面がArイオンにより所定時間エッチングされ、基材2の表面に形成された酸化皮膜などが除去される(クリーニング)。
次に、窒素(N)ガスがガス供給口21Bからチャンバー21内に導入される。そして、アーク蒸発源22Aに所定のアーク電流を流してアーク放電を開始させることによりターゲットが蒸発し、成膜が開始される。第1皮膜層11の成膜時にはTiSiターゲットのみを蒸発させ、第2皮膜層12の成膜時にはAlCrMターゲットのみを蒸発させ、混合層13の成膜時にはTiSiターゲット及びAlCrMターゲットを同時に蒸発させる。このようにして、基材2の表面上に下地層10、交互皮膜層20及び最表層30が順に形成される。なお、皮膜中にCを添加する場合には、メタンやアセチレンなどの炭化水素ガスがチャンバー21内に導入される。また皮膜中にBを添加する場合には、フッ化ホウ素ガス(BF)がチャンバー21内に導入されてもよいし、Bを含むターゲットが用いられてもよい。
そして、硬質皮膜3の膜厚が所望の値に達した後、アーク蒸発源22Aへのアーク電流の供給が停止される。その後、チャンバー21内が大気開放され、成膜後の基材2がチャンバー21の外に取り出される。以上のようなプロセスにより、基材2上に硬質皮膜3が成膜される。
またスパッタリング法により成膜する場合には、各ターゲットがスパッタ蒸発源23Aにセットされる。そして、スパッタ電源23からスパッタ蒸発源23Aに所定の電力を投入してターゲットを蒸発させることにより、上述のアークイオンプレーティングの場合と同様に硬質皮膜3を成膜することができる。
以上のように、上記本実施形態に係る硬質皮膜3は、第2皮膜層12におけるAlの組成範囲を0.7<x≦0.8に調整することにより、硬質でヤング率が低く、耐摩耗性に優れたものとなっている。ここで、図1に示したドリル1による穴開け加工においては、逃げ面において皮膜が摩耗すると共に、ドリル穴の内面に被削材よりも硬質な突起が形成され、当該突起がドリル1のマージン部1Bに擦れる。これにより、当該マージン部1Bにおいて線状のキズが発生する。これに対して、上述のように耐摩耗性に優れた硬質皮膜3をドリル1の逃げ面及びマージン部1Bの上に形成することにより、逃げ面摩耗を抑制することができると共に当該マージン部1Bにおけるキズの発生を抑制することができる。なお、本発明の硬質皮膜被覆部材は、ドリル1に限定されず、バイト、エンドミル、旋削用インサート又はフライス用チップなど他の切削工具にも同様に適用することができる。
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2に係る硬質皮膜3Aについて、図4を参照して説明する。実施形態2に係る硬質皮膜3Aは、上記実施形態1に係る硬質皮膜3と同様に、(TiSi1−m)(N1−a−b)からなる第1皮膜層11と、(AlCr1−x−y)(N1−a−b)からなる第2皮膜層12と、が交互に積層されたものである。しかし、この硬質皮膜3Aは、混合層13が形成されていない点で上記実施形態1と異なっている。
第2皮膜層12では、上記実施形態1と同様に、Alの組成範囲が0.7<x≦0.8に調整されることにより微細な六方晶が生成し、これによって立方晶が微細化されている。このため、混合層13を形成しない場合でも、第1皮膜層11と第2皮膜層12との十分な密着性を確保することができる。従って、上記実施形態1と異なり混合層13を成膜するプロセスを省略することができ、成膜プロセスをより効率化することができる。
<実施形態3>
次に、本発明の実施形態3に係る硬質皮膜被覆部材としての金型4について、図5を参照して説明する。
図5に示すように、金型4は、被プレス部材である金属板7をプレス成形するためのものであって、上金型(第1金型)4Aと、下金型(第2金型)4Bと、を有する。上金型4A及び下金型4Bは、上下方向に互いに離れて配置されている。上金型4Aには下金型4B側に出っ張った凸部4Cが形成されており、下金型4Bには上金型4Aと反対側に凹む凹部4Dが形成されている。凸部4C及び凹部4Dは、互いに嵌合可能な形状及び大きさに形成されている。
上金型4A及び下金型4Bは、不図示の駆動源からの駆動力によって互いに接近する方向又は離れる方向に相対移動するように構成されている。より具体的には、下金型4Bは水平面に設置され、上金型4Aが下金型4Bに向かって下方に可動するように構成されている。そして、図5に示すように金属板7が凹部4Dの開口を覆うように設置され、この状態で下金型4Bの位置を固定しつつ上金型4Aを下降させることにより、凸部4Cによって金属板7を押圧し、金属板7を凹部4Dの溝形状に沿って曲げ加工することができる。なお、金型4は、図5に示す曲げ型に限定されず、抜き型、絞り型又は圧縮型などの他のプレス金型であってもよい。
金型4は、冷間金型用鋼や熱間金型用鋼などからなる基材2Aと、基材2Aの表面上に形成された硬質皮膜3Bと、を有する。硬質皮膜3Bは、上記実施形態1,2と同様に、(TiSi1−m)(N1−a−b)からなる第1皮膜層11と、(AlCr1−x−y)(N1−a−b)からなる第2皮膜層12と、が交互に積層された皮膜であり、耐摩耗性に優れるものである。このように、耐摩耗性に優れる硬質皮膜3Bを基材2Aの表面に形成することにより、高張力鋼板などの強度が高い金属板の成形や熱間プレスなど、より過酷な状況で使用される場合でも、金型4の摩耗を抑制することができる。
(実施例1)
<硬質皮膜の成膜>
下記表1のNo.1〜22に示す組成の硬質皮膜を、図3の成膜装置6を用いたAIP法により成膜した。まず、切削工具(オイルホール付2枚刃超硬ドリルφ8.50)及び断面評価用の鏡面の超硬試験片(13mm×13mm、厚み5mm)を準備し、これらをエタノール中にて超音波洗浄し、成膜装置6のチャンバー21内に導入した。また、AlCrターゲット(ターゲット径100mmφ)を一方のアーク蒸発源22Aに取り付け、TiSiターゲット(ターゲット径100mmφ)を他方のアーク蒸発源22Aに取り付けた。TiSiターゲット及びAlCrターゲットは、下記表1のNo.1〜22に示す組成のものを準備した。
表1では、Alの原子比が「x×100(at%)」により表記されている。またCrの原子比が「y×100(at%)」により表記されている。またTiの原子比が「m×100(at%)」により表記されている。またSiの原子比が「(1−m)×100(at%)」により表記されている。この表記方法は、以下の説明において他元素についても同様である。
次に、真空ポンプ(図示しない)を用いてチャンバー21内を5×10−3Paまで排気した後、ヒータ26により基材2(切削工具又は超硬試験片)を500℃まで加熱し、基材2の表面をArイオンによりエッチングした。その後、チャンバー21内が4Paになるまで窒素ガスをチャンバー21内に導入した。そして、ステージ24を回転速度5rpmで回転させつつアーク電源22により150Aの放電電流を流すことにより、AlCrターゲット及びTiSiターゲットをそれぞれ蒸発させた。これにより、図2に示すように下地層10、交互皮膜層20及び最表層30からなる硬質皮膜3を成膜した。
第1皮膜層11は、TiSiターゲットのみを放電させることにより成膜した。第2皮膜層12は、AlCrターゲットのみを放電させることにより成膜した。混合層13は、TiSiターゲット及びAlCrターゲットを同時に放電させることにより成膜した。
第1皮膜層11の成膜時は基材2に印加されるバイアスを−50Vとし、第2皮膜層12及び混合層13の成膜時は−70Vとした。下地層10の厚みT2は0.5μm、交互皮膜層20の厚みT1は2.25μm、最表層30の厚みT3は0.25μmとし、硬質皮膜3全体の厚みを3μmとした。また交互皮膜層20において、第1皮膜層11の厚みT11は0.1μm、第2皮膜層12の厚みT12は0.15μm、混合層13の厚みT13は0.03μmとした。各層の厚みは成膜時間により調整した。
<評価方法>
上記硬質皮膜3を成膜したドリルを用いて以下の条件で切削試験を行った。
工具:オイルホール付2枚刃超硬ドリルφ8.50
被削材:機械構造用炭素鋼 JIS S50C
硬さ:HB200±10
切削速度:100m/min、3745rpm
送り:0.255mm/rev、955mm/min
ステップ量:ノンステップ
穴深さ:25.5mm、止まり穴
加工数:1000穴
冷却:水溶性切削液(20倍希釈)、内部給油圧1.5MPa
下記表1のNo.1〜22の各々について、上記切削試験後における最大逃げ面摩耗幅Vb(μm)とマージン部のキズ深さ(μm)を評価した。最大逃げ面摩耗幅Vbは、全刃について逃げ面における最大摩耗幅を測定し、その平均値により評価した。マージン部のキズ深さは、刃先に最も近いキズの中央部を触針式粗さ計により全刃同様に測定し、これらの最大深さの平均値により評価した。
Figure 2017179580
<考察>
No.1では、Alの量が少ないため耐熱性に劣り、逃げ面摩耗幅及びキズ深さが大きくなった。一方、No.9〜11では、Alの量が過剰になるため皮膜が軟化し、逃げ面摩耗幅及びキズ深さが大きくなった。これに対して、No.2〜8のようにAlの原子比を70〜80at%の範囲にすることにより、逃げ面摩耗幅及びキズ深さのいずれも良化することが分かった。
またNo.12では、Siが含まれないため逃げ面摩耗幅及びキズ深さのいずれも悪化し、一方でNo.20ではSiを多く含むため皮膜の強度が低下し、キズ深さが大きくなった。またNo.21のAlCrNの単層膜、及びNo.22のTiSiNの単層膜(いずれも3μmの厚み)では、1000穴まで加工できずに折損した。これに対して、No.13〜19のように、Tiの原子比を70〜100at%未満の範囲に調整することにより、逃げ面摩耗幅及びキズ深さのいずれも良化することが分かった。
(実施例2)
交互皮膜層20における各層(第1及び第2皮膜層、混合層)の厚みを下記の表2のNo.23〜49に示す通り変化させた点以外は上記実施例1と同様である。第2皮膜層12においては、Alの原子比を75at%とし、Crの原子比を25at%とした。第1皮膜層11においては、Tiの原子比を80at%とし、Siの原子比を20at%とした。また下地層10の厚みT2は0.5μmとし、最表層30の厚みT3は0.25μmとし、硬質皮膜3全体の厚みが3μmになるように調整した。
Figure 2017179580
<考察>
No.23,24では、第2皮膜層12の厚みT12が小さ過ぎるため逃げ面摩耗幅が大きくなり、一方でNo.32では第2皮膜層12の厚みT12が大き過ぎるため逃げ面摩耗幅及びキズ深さのいずれも悪化した。これに対して、No.25〜31のように第2皮膜層12の厚みT12を50〜350nmの範囲に調整することにより、逃げ面摩耗幅及びキズ深さのいずれも良化した。
No.33では、第1皮膜層11の厚みT11が小さ過ぎるため逃げ面摩耗幅及びキズ深さがいずれも悪化し、一方でNo.43では第1皮膜層11の厚みT11が大き過ぎるため逃げ面摩耗幅及びキズ深さがいずれも悪化した。これに対して、No.34〜42のように第1皮膜層11の厚みT11を5〜350nmの範囲に調整することにより、逃げ面摩耗幅及びキズ深さのいずれも良化した。
No.44では、混合層13の厚みT13が大き過ぎるため亀裂が伝播し易くなり、逃げ面摩耗幅及びキズ深さがいずれも悪化した。これに対して、No.45〜49のように混合層13の厚みT13を40nm以下にすることにより、逃げ面摩耗幅及びキズ深さがいずれも良化した。
(実施例3)
下記表3のNo.50〜71に示すように、第2皮膜層12に金属元素Mを添加し、またC、Bを添加した以外は上記実施例1と同様である。第1皮膜層11においては、Tiの原子比を80at%とし、Siの原子比を20at%とした。下地層10の厚みT2は0.5μmとし、最表層30の厚みT3は0.25μmとした。また交互皮膜層20においては、第1皮膜層11の厚みT11を100nmとし、第2皮膜層12の厚みT12を150nmとし、混合層13の厚みT13を30nmとした。そして、硬質皮膜3全体の厚みが3μmとなるように調整した。
Figure 2017179580
<考察>
No.50〜56,58,63〜71では元素Mを添加し、且つ元素Mの原子比を20at%未満にすることにより、元素Mの原子比が20at%であるNo.57に比べて逃げ面摩耗幅及びキズ深さがいずれも良化した。またNo.61ではCが過剰に添加されたため、No.62ではBが過剰に添加されたため、耐摩耗性が悪化した。これらの結果より、元素Mの原子比を20at%未満、Cの原子比を55at%未満、Bの原子比を30at%未満にすることにより耐摩耗性が良化することが分かった。
今回開示された実施形態及び実施例は、全ての点で例示であって制限的なものではないと解されるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
1 ドリル(硬質皮膜被覆部材)
2,2A 基材
3,3A,3B 硬質皮膜
4 金型(硬質皮膜被覆部材)
10 下地層
11 第1皮膜層
12 第2皮膜層
13 混合層
20 交互皮膜層
20A 積層単位
30 最表層

Claims (8)

  1. 基材の表面に形成される硬質皮膜であって、
    TiSi1−m1−a−bからなる第1皮膜層と、AlCr1−x−y1−a−bからなる第2皮膜層と、が交互に積層され、
    前記第1皮膜層において、0.7≦m<1、0<1−a−b≦1の関係式が満たされ、
    前記第2皮膜層において、0.7<x≦0.8、0<y及び0<1−a−b≦1の関係式が満たされ、MはTi、V、Zr、Nb、Mo、Ta、W、Y及びランタノイド(Pmを除く)からなる群より選択される少なくとも一種の金属元素であることを特徴とする、硬質皮膜。
  2. 最表層が前記第1皮膜層により構成され、
    前記基材の表面上に形成される下地層が前記第2皮膜層により構成されることを特徴とする、請求項1に記載の硬質皮膜。
  3. 前記最表層と前記下地層との間に交互皮膜層が形成され、
    前記交互皮膜層は、TiSiAlCr1−s−t−u−w1−a−bからなる混合層、前記第1皮膜層、前記混合層、及び前記第2皮膜層がこの順に積層された積層単位を含み、
    前記混合層において、0<s<1、0<t<0.3、0<u<0.8、0<w<0.3及び0<1−a−b≦1の関係式が満たされることを特徴とする、請求項2に記載の硬質皮膜。
  4. 前記混合層の厚みが40nm以下であることを特徴とする、請求項3に記載の硬質皮膜。
  5. 前記交互皮膜層における前記第1皮膜層の厚みが5nm以上350nm以下であることを特徴とする、請求項3又は4に記載の硬質皮膜。
  6. 前記交互皮膜層における前記第2皮膜層の厚みが50nm以上350nm以下であることを特徴とする、請求項3〜5の何れか1項に記載の硬質皮膜。
  7. 前記第2皮膜層における元素Mの原子比が0<1−x−y<0.2であることを特徴とする、請求項1〜6の何れか1項に記載の硬質皮膜。
  8. 基材の表面に請求項1〜7の何れか1項に記載の硬質皮膜が形成されていることを特徴とする、硬質皮膜被覆部材。
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