JP5297267B2 - 切削工具用または成型用金型用の耐摩耗性に優れる酸化物皮膜被覆材 - Google Patents

切削工具用または成型用金型用の耐摩耗性に優れる酸化物皮膜被覆材 Download PDF

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Description

本発明は、酸化物皮膜被覆材に関する技術分野に属するものであり、特には、耐摩耗性に優れ、切削工具用または成型用金型用に用いることができる酸化物皮膜被覆材に関する技術分野に属するものである。
従来から切削工具に酸化物を使用することは知られており、主にアルミ酸化物(アルミ
ナ)を主体とする酸化物皮膜をCVD法(化学的気相蒸着法)により形成していた。CV
D法は形成時の処理温度が通常1000℃以上と高いことから、刃先の鋭い工具や軸物工
具には使用できず、PVD法(物理的蒸着法)により形成する手法が検討されている。特
許第3323534 号公報では、(Al,Cr)酸化物をPVD法で形成する方法が提案されて
いる。また、特表2002-544379 号公報には、γアルミナをパルススパッタリング法により
工具上に形成する方法が記載されている。
特許第3323534 号公報 特表2002-544379 号公報
アルミの酸化物としてはαあるいはγ型がPVD法により形成できることが知られてい
るが、α型を形成するためには700℃超の高温が必要であり、γ型は低温で形成できる
が、高温での熱的安定性に劣る問題がある。先述の特許第3323534 号公報では、より低温
でα型酸化物結晶を形成できるCrを添加して(Al,Cr)酸化物とすることで、低温
でもα型構造が得られるとしているが、Crの添加により耐摩耗性は低下する。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、切削工具用または成型用金型用耐摩耗性に優れる酸化物皮膜被覆材を提供しようとするものである。
本発明者らは、上記目的を達成するため、鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。本発明によれば上記目的を達成することができる。
このようにして完成され上記目的を達成することができた本発明は、酸化物皮膜被覆材に係わり、請求項1記載の切削工具用または成型用金型用耐摩耗性に優れる酸化物皮膜被覆材(第1発明に係る切削工具用または成型用金型用耐摩耗性に優れる酸化物皮膜被覆材)であり、それは次のような構成としたものである。
請求項1に記載の切削工具用または成型用金型用耐摩耗性に優れる酸化物皮膜被覆材は、(Zr1-a-b-c Ala Mgb c )(O1-x x )からなり、ZrおよびAlとMg、Yの1種以上とを含有する金属ターゲットを使用し、カソード放電型のアークイオンプレーティング法によって形成され、下記式(1)〜(5)を満たすマイクロビッカース硬度が29〜33GPaである酸化物皮膜と基材との間に、4a、5a、6a族の元素、Al、Siの1種以上からなる皮膜(以下、「第1の皮膜」と称す)または4a、5a、6a族の元素、Al、Siの1種以上とC、N、Oの1種以上からなる皮膜(以下、「第2の皮膜」と称す)が形成され、前記酸化物皮膜側には、さらに前記第1の皮膜または第2の皮膜と、前記酸化物皮膜とがこの順番に交互に形成され、このように交互に積層された前記第1の皮膜または第2の皮膜と、前記酸化物皮膜との積層周期が10〜500nmであることを特徴とする切削工具用または成型用金型用耐摩耗性に優れる酸化物皮膜被覆材である〔第1発明〕。
0.1≦a≦0.7 ----------------- 式(1)
0≦b≦0.15 ------------------- 式(2)
0≦c≦0.15 ------------------- 式(3)
0<b+c --------------------- 式(4)
0≦x≦0.5 --------------------- 式(5)
但し、上記(Zr1-a-b-c Ala Mgb c )(O1-x x )、上記式(1) 〜(5) において、aはAlの原子比、bはMgの原子比、cはYの原子比、1−a−b−cはZrの原子比を示し、xはNの原子比、1−xはOの原子比を示すものである。
発明に係る酸化物皮膜被覆材は、耐摩耗性に優れ、切削工具や成型用金型材として好適に用いることができ、それらの耐久性の向上がはかれる
化物皮膜は、Zr酸化物をベースとして、MgあるいはYを添加することにより、結晶系を単斜晶系から、皮膜の一部あるいは全体を、正方晶あるいは立方晶系に安定化させることにより、皮膜自身の強度が上がり、優れた耐摩耗性を有するものである。
MgあるいはYの添加により微量であっても皮膜の一部が結晶化し、効果が得られるこ
とから、MgおよびYの添加量は0超とした。即ち、金属元素(Zr,Al,Mg,Y)
中におけるMgの比率(原子比b)およびYの比率(原子比c)は、MgおよびYの比率
(原子比b+c)で、0超とした。MgおよびYの比率(原子比b+c)は、0.03以
上とすることが好ましく、0.05以上では皮膜が立方晶単相となることから、0.05
以上とすることが更に好ましい。ただし、Mg、Yを過度に添加すると、硬度が低下する
ことから、Mgの比率(原子比b)の上限値は0.15とし、Yの比率(原子比c)の上
限値は0.15とした。即ち、Mgの比率(原子比b)は0.15以下であると共にYの
比率(原子比c)は0.15以下であることとした。原子比bは0.1以下とすることが
好ましい。原子比は0.1以下とすることが好ましい。
Alを添加することにより皮膜中にAl−O結合を生成し、硬度が増加することから、
Al添加は推奨される。よって、Alを添加する。このとき、金属元素(Zr,Al,M
g,Y)中におけるAlの比率(原子比a)は0.1以上とすることが好ましく、0.2
以上とすることが更に好ましい。ただし、0.7を越えて添加すると皮膜全体が非晶質化
し、硬度が低下することから、Alの比率(原子比a)は0.7以下とする。好ましくは
0.5以下、より好ましくは0.3以下である。
化物皮膜は、酸化物をベースとするが、Nの添加により、酸化物より熱的安定性は低いものの、より高硬度の窒化物の結合を皮膜中に生成し、皮膜全体の硬度を高めてやることができる。Nの添加の割合、即ち、非金属元素(O,N)中におけるNの比率(原子比x)が0.1以上で皮膜の高硬度化が認められるが、0.5を超えると耐熱性が下がり、切削特性が低下するので、Nを添加する場合はNの比率(原子比x)は0.5以下とすることが必要であり、0.4以下とすることが望ましく、0.3以下とすることが更に望ましい。
上述した酸化物皮膜は、このような知見に基づき完成されたものである。このようにして完成された酸化物皮膜は、(Zr1-a-b-c Ala Mgb c )(O1-x x )からなり、ZrおよびAlとMg、Yの1種以上とを含有する金属ターゲットを使用し、カソード放電型のアークイオンプレーティング法によって形成され、下記式(1) 〜(5) を満たすマイクロビッカース硬度が29〜33GPaであることを特徴とする酸化物皮膜である。上記酸化物皮膜は、従来のアルミ酸化物ベースの酸化物皮膜よりも耐摩耗性に優れ、切削工具や成型用金型等の被覆皮膜として好適に用いることができ、それらの耐久性の向上がはかれる。上記酸化物皮膜は、高温での熱的安定性にも優れている。また、上記酸化物皮膜は、CVD法の場合よりも処理温度の低いPVD法(即ち、カソード放電型のアークイオンプレーティング法)で形成されており、このため、刃先の鋭い工具の皮膜被覆として好適に用いることができる。
0.1≦a≦0.7 ----------------- 式(1)
0≦b≦0.15 ------------------- 式(2)
0≦c≦0.15 ------------------- 式(3)
0<b+c --------------------- 式(4)
0≦x≦0.5 --------------------- 式(5)
但し、上記(Zr1-a-b-c Ala Mgb c )(O1-x x )、上記式(1) 〜(5) にお
いて、aはAlの原子比、bはMgの原子比、cはYの原子比、1−a−b−cはZrの
原子比を示し、xはNの原子比、1−xはOの原子比を示すものである。
上記酸化物皮膜において、皮膜中にNを含有させることにより高硬度となるものの、耐酸化性が低下することから、ドライ切削などの使用中に工具温度が上昇する場合には、窒素を含まないこと、即ち、非金属元素(O,N)中でのNの比率(原子比x)=0であることが好ましい形態となる。
記酸化物皮膜と基材との間に、{4a、5a、6a族の元素、Al、Siの1種以上からなる皮膜(第1の皮膜)または4a、5a、6a族の元素、Al、Siの1種以上とC、N、Oの1種以上からなる皮膜(第2の皮膜)(以下、これらの第1の皮膜や第2の皮膜を下地膜ともいう)}が形成されていることを特徴とする。この酸化物皮膜被覆材は、上記下地膜により、酸化物皮膜の密着性が向上し、より密着性に優れて耐久性に優れている。即ち、酸化物皮膜は形成時の自由エネルギーが負の大きな値を取り、不活性である一方、基材への密着性に劣るが、基材と酸化物皮膜間に上記下地膜を形成することにより、密着性を改善することができ、ひいては耐久性を向上することができる。尚、上記下地膜の中、4a、5a、6a族の元素、Al、Siの1種以上とC、N、Oの1種以上からなる皮膜としては、例えば、TiN、CrN、TiC、CrC、TiO2 、(Ti, Al)N、(Al, Cr)N、(Ti, Cr, Al)Nからなる皮膜等がある。上記下地膜としては、基材が超硬基材の場合、密着性向上の観点からは、(Ti, Al)N、(Al, Cr)N、(Ti, Cr, Al)N膜が好ましく、基材が鉄系基材の場合、密着性向上の観点からは、TiNあるいはCrNが好ましい。
本発明に係る切削工具用または成型用金型用耐摩耗性に優れる酸化物皮膜被覆材は、上記酸化物皮膜側に、さらに前記第1の皮膜または第2の皮膜(以下、他層ともいう)と、前記酸化物皮膜とがこの順番に交互に形成され、このように交互に積層された前記第1の皮膜または第2の皮膜と、前記酸化物皮膜との積層周期が10〜500nmであることを特徴とする〔第1発明〕。この切削工具用または成型用金型用耐摩耗性に優れる酸化物皮膜被覆材は、靭性が向上する。即ち、酸化物皮膜は一般的に皮膜の靭性が窒化物に比較して低いことから、断続切削用途においては刃先のチッピングなどの問題が生じる場合があるが、上記他層と上記酸化物皮膜とが交互に形成され、多層膜とすることにより、靭性を改善することができ、ひいては刃先のチッピングなどが生じ難くなって耐久性を向上することができる。基材直上の皮膜は、基材との密着性向上の点からは他層であることが望ましい。多層膜の最表面の皮膜は、使用当初の耐摩耗性の点からは上記酸化物皮膜であることが望ましい。なお、上記他層の中、4a、5a、6a族の元素、Al、Siの1種以上とC、N、Oの1種以上からなる皮膜としては、例えば、TiN、CrN、TiC、CrC、TiO2 、(Ti, Al)N、(Al, Cr)N、(Ti, Cr, Al)Nからなる皮膜等がある。
上記酸化物皮膜は、PVD法で形成されることが望ましく、中でもカソード放電型のアークイオンプレーティング(AIP)法で形成されることが望ましい。即ち、CVD法では処理温度が高いために、刃先の鋭い工具には適用できないが、これに対し、PVD法では処理温度が低いために、刃先の鋭い工具にも適用できるので、PVD法で形成することが望ましい。PVD法により、金属ターゲットを酸素雰囲気中で蒸発させて上記酸化物皮膜を成膜する場合、融点の異なる複数元素が含まれているために、電子ビーム蒸着などのターゲットを溶解させる方式では皮膜組成のコントロールが極めて難しいが、これに対し、カソード放電型アークイオンプレーティング法では皮膜組成のコントロールが容易であるので、PVD法の中でもカソード放電型アークイオンプレーティング法を採用することが望ましい。かかる点から、上記酸化物皮膜の形成方法は、カソード放電型アークイオンプレーティング法により形成することを特徴とする。
本発明の実施例、参考例および比較例を以下説明する。なお、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
〔例1〕
Zr、及び、Al、Mg、Yの1種以上を含有する金属ターゲットを使用し、マグネト
ロンスパッタリングスパッタリング成膜装置やアーク式蒸発源を有するカソード放電型ア
ークイオンプレーティング成膜装置にて表1に示す組成の酸化物皮膜を形成した。
このとき、基材としては、皮膜の組成、硬度の調査用の皮膜形成の場合には鏡面研磨し
た超硬合金基板を用い、切削試験用の皮膜形成の場合には超硬合金製のインサート(SNGA
120408)を用い、この上に表1に示す組成の酸化物皮膜を形成した。いずれの皮膜の形成
の場合も、基板を成膜装置のチャンバー内に導入し、チャンバー内を真空引き(1×10-3
Pa以下に排気)した後、基材を約600℃まで加熱し、この後、Arイオンイオンを用い
てスパッタクリーニングを実施した。この後、アーク蒸発源による成膜の場合は、φ100m
m のターゲットを用い、アーク電流150Aとし、全圧力1PaのAr-O2 雰囲気(O2分圧:0.1
〜0.3Pa )中にて成膜を実施した。成膜時のアーク電流は100Aとし、基板へ印可するバイ
アスはパルスを用い、Duty77%で周波数30kHz のユニポーラバイアスを−50〜−100 Vの
範囲で印可した。一方、スパッタリングの場合は、全圧0.6Pa のAr-O2 雰囲気(O2分圧:
0.1 〜0.3Pa )中にて成膜を実施した。ただし、表1のいずれの酸化物皮膜の形成の場合
にも、この酸化物皮膜を形成する前に、アーク蒸発源を使用して基材上に下地膜としてTi
AlN 膜を形成した。
このようにして皮膜形成されたものについて、皮膜の硬度の測定および切削試験を行っ
た。皮膜の硬度の測定は、皮膜形成された超硬合金基板について、マイクロビッカース硬
度計を用いて、測定荷重0.25N、測定時間15秒の条件で測定することによって行っ
た。切削試験は、皮膜形成された超硬合金製インサートを切削工具として用い、下記切削
試験条件で行い、クレータ摩耗の深さで耐摩耗性を評価した。
〔切削試験条件〕
・被削材:FCD400
・切削速度:200m/分
・深さ切込:3mm
・送り:0.2mm/rev
・その他:ドライ切削、エアブロー無し、切削時間2分
上記試験の結果を表1に示す。なお、表1において、組成の欄での値は原子比での値である。表1からわかるように、表1に示す酸化物皮膜の中で参考例( No.13〜18, 20〜23)は、比較例(No.1〜2, 7, 11〜12, 19, 24 )に比較し、硬度が高く、切削試験でのクレータ摩耗深さが小さくて耐摩耗性に優れている。
なお、上記例1においては、切削試験条件を上記のとおりとしたが、これ以外の切削試
験条件とした場合〔例えば、被削材を高硬度材(SKD61、HRC50)を使用した場
合や、加工形態として断続切削であるエンドミルを使用した場合〕も、上記例2の場合と
同様の傾向の結果が得られる。
〔例2〕
Zr、AlおよびYを含有する金属ターゲットを使用し、マグネトロンスパッタリング
スパッタリング成膜装置やアーク式蒸発源を有するカソード放電型アークイオンプレーティング成膜装置にて表2に示す組成の酸化物皮膜、即ち、(Zr0.6 Al0.3 0.1 )Oからなる酸化物皮膜を形成した。この酸化物皮膜は、(Zr1-a-b-c Ala Mgb c )(O1-x x )からなる酸化物皮膜であって1−a−b−c=0.6(原子比)、a=0.3(原子比)、b=0、c=0.1(原子比)、1−x=1(原子比)である酸化物皮膜である。
このとき、基材としては、鏡面研磨した超硬合金基板またはHSS(高速度工具鋼)を
用いた。酸化物皮膜の成膜に際しては、その前に、基板を成膜装置のチャンバー内に導入
し、チャンバー内を真空引き(1×10-3Pa以下に排気)した後、基材を約600℃まで加
熱し、この後、Arイオンイオンを用いてスパッタクリーニングを実施した。この後、ア
ーク蒸発源による成膜の場合は、φ100mm のターゲットを用い、アーク電流150Aとし、全
圧力1PaのAr-O2 雰囲気(O2分圧:0.1Pa )中にて成膜を実施した。成膜時のアーク電流
は100Aとし、基板へ印可するバイアスはパルスを用い、Duty77%で周波数30kHz のユニポ
ーラバイアスを−50〜−100 Vの範囲で印可した。一方、スパッタリングの場合は、全圧
0.6Pa のAr-O2 雰囲気(O2分圧:0.1Pa )中にて成膜を実施した。ただし、一部のものを
除き、上記酸化物皮膜を形成する前に、アーク蒸発源を使用して基材上に表2に示す組成
の下地膜(層)を形成し、この上に上記酸化物皮膜を形成した。一部のものは、下地膜(
層)を形成しなかった。
このようにして皮膜形成されたものを試料とし、この試料について被膜の密着性の測定
を次のようにして行った。即ち、スクラッチ試験装置を用い、先端半径200μmRのダ
イヤモンド圧子を速度10mm/分、荷重増加速度100N/分で100Nまで試料表面
を引っ掻き、被膜に剥離が生じる臨界荷重(N)を求め、この臨界荷重(N)にて密着性
を評価した。この結果を表2に示す。
表2からわかるように、第発明の要件を満たす酸化物皮膜被覆材、即ち、第発明例(No.2〜6, 8〜12)は、第発明の要件を満たさない酸化物皮膜被覆材(比較例としてのNo.1,7)に比較し、密着性測定試験において被膜剥離が生じる臨界荷重(N)が高くて密着性に優れている。
なお、上記例2においては、酸化物皮膜としては(Zr0.6 Al0.3 0.1 )Oからなる酸化物皮膜を用いたが、これ以外の酸化物皮膜を用いた場合も、上記例2の場合と同様の傾向の結果が得られる。また、上記例2においては、下地膜(層)の厚みは3μm であるが、下地膜(層)の厚みを他の厚み(例えば、1μm 、5μm )とした場合も、上記例2の場合と同様の傾向の結果が得られる。
〔例3〕
マグネトロンスパッタリングスパッタリング成膜装置やアーク式蒸発源を有するカソード放電型アークイオンプレーティング成膜装置にて表3に示す組成のA層(酸化物皮膜)とB層(他層)とを交互に形成した多層構造の皮膜(多層膜)を、基材上に形成した。また、A層(酸化物皮膜)のみを、基材上に形成した。このA層は、いずれの場合も、(Zr0.6 Al0.3 0.1 )Oからなる酸化物皮膜である。B層は、(Ti0.5Al0.5)N、CrN、(Ti0.1Cr0.2Al0.7 、(Al0.7Cr0.3)Nよりなる膜等である。多層膜の場合、A層の膜厚、B層の膜厚、積層数は、表3に示すとおりである。なお、この積層数は、(A層の数+B層の数)/2である。基材直上の皮膜はB層であり、多層膜の最表面の皮膜はA層である。
このとき、基材としては、皮膜の組成、硬度の調査用の皮膜形成の場合には鏡面研磨し
た超硬合金基板を用い、切削試験用の皮膜形成の場合には超硬合金製のインサート(SNGA
120408)を用い、この上に表1に示す組成の酸化物皮膜を形成した。いずれの皮膜の形成
の場合も、基板を成膜装置のチャンバー内に導入し、チャンバー内を真空引き(1×10-3
Pa以下に排気)した後、基材を約600℃まで加熱し、この後、Arイオンイオンを用い
てスパッタクリーニングを実施した。この後、アーク蒸発源による成膜の場合は、φ100m
m のターゲットを用い、アーク電流150Aとし、全圧力1PaのAr-O2 雰囲気(O2分圧:0.1
〜0.3Pa )中にて成膜を実施した。成膜時のアーク電流は100Aとし、基板へ印可するバイ
アスはパルスを用い、Duty77%で周波数30kHz のユニポーラバイアスを−50〜−100 Vの
範囲で印可した。一方、スパッタリングの場合は、全圧0.6Pa のAr-O2 雰囲気(O2分圧:
0.1 〜0.3Pa )中にて成膜を実施した。ただし、表3のいずれの酸化物皮膜の形成の場合
にも、この酸化物皮膜を形成する前に、アーク蒸発源を使用して基材上に下地膜としてTi
AlN 膜を形成した。
このようにして皮膜形成されたものについて、皮膜の硬度の測定および切削試験を行っ
た。皮膜の硬度の測定は、例1の場合と同様の方法により行った。切削試験は、皮膜形成
された超硬合金製インサートを切削工具として用い、例1の場合と同様の方法により行な
い、例1の場合と同様、クレータ摩耗の深さで耐摩耗性を評価した。
表3からわかるように、第発明の要件を満たす酸化物皮膜被覆材、即ち、第発明例(No.4〜8 )は、第発明の要件を満たさない酸化物皮膜被覆材(但し、酸化物皮膜自体は要件を満たす)、即ち、比較例(No.1)と比較し、同等もしくはそれ以上に切削試験でのクレータ摩耗深さが小さくて耐摩耗性に優れている。なお、前者(No.4〜8 )は、後者の比較例(No.1)よりも、切削試験でのクレータ摩耗深さが小さくて耐摩耗性に優れている。
なお、上記例3においては、基材直上の皮膜はB層であり、多層膜の最表面の皮膜はA
層であるが、これに代えて、多層膜の最表面の皮膜をB層とした場合も、上記例3の場合
と同様の傾向の結果が得られる。基材直上の皮膜をA層とした場合も、上記例3の場合と
同様の傾向の結果が得られる。基材直上の皮膜をA層とし、多層膜の最表面の皮膜をB層
とした場合も、上記例3の場合と同様の傾向の結果が得られる。
Figure 0005297267
Figure 0005297267
Figure 0005297267
本発明に係る酸化物皮膜被覆材は、耐摩耗性に優れ、切削工具用または成型用金型用に用いることができ、それらの耐久性の向上がはかれて有用である。

Claims (1)

  1. (Zr1-a-b-c Ala Mgb c )(O1-x x )からなり、ZrおよびAlとMg、Yの1種以上とを含有する金属ターゲットを使用し、カソード放電型のアークイオンプレーティング法によって形成され、下記式(1)〜(5)を満たすマイクロビッカース硬度が29〜33GPaである酸化物皮膜と基材との間に、4a、5a、6a族の元素、Al、Siの1種以上からなる皮膜(以下、「第1の皮膜」と称す)または4a、5a、6a族の元素、Al、Siの1種以上とC、N、Oの1種以上からなる皮膜(以下、「第2の皮膜」と称す)が形成され、前記酸化物皮膜側には、さらに前記第1の皮膜または第2の皮膜と、前記酸化物皮膜とがこの順番に交互に形成され、このように交互に積層された前記第1の皮膜または第2の皮膜と、前記酸化物皮膜との積層周期が10〜500nmであることを特徴とする切削工具用または成型用金型用耐摩耗性に優れる酸化物皮膜被覆材。
    0.1≦a≦0.7 ----------------- 式(1)
    0≦b≦0.15 ------------------- 式(2)
    0≦c≦0.15 ------------------- 式(3)
    0<b+c --------------------- 式(4)
    0≦x≦0.5 --------------------- 式(5)
    但し、上記(Zr1-a-b-c Ala Mgb c )(O1-x x )、上記式(1) 〜(5) において、aはAlの原子比、bはMgの原子比、cはYの原子比、1−a−b−cはZrの原子比を示し、xはNの原子比、1−xはOの原子比を示すものである。
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